説明

遊離形態またはエタノール溶媒和物である4’−デメチルエピポドフィロトキシン2”,3”−ビスペンタフルオロフェノキシアセチル−4”,6”−エチリデン−β−D−グルコシド4’−ホスフェートエーテルの結晶性化合物

本発明は、遊離形態またはエタノール溶媒和形態、有利にはヘミエタノレート溶媒和物形態で提供される4’−デメチル−4’−ホスフェート−2”,3”−ビスペンタフルオロフェノキシアセチル−4”,6”−エチリデン−β−D−エピポドフィロトキシングルコシドの結晶性化合物に関する。本発明はまた、これらの化合物の製造方法および抗腫瘍薬としてのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
式1で示される、N−メチル−D−グルカミン二塩形態の4’−デメチルエピポドフィロトキシン2”,3”−ビスペンタフルオロフェノキシアセチル−4”,6”−エチリデン−β−D−グルコシド4’−ホスフェートはその構造的価値、その製造方法およびその抗癌活性により知られている(WO96/12727)。また、この化合物を製造する別法が特許FR2791682にも記載されている。
【化1】

式1
【0002】
この式1の化合物は特に著しい抗癌活性を有する。その抗癌活性はin vivoで証明されている。特に、それはP388白血病モデルを移植したマウスにおいて長期生存を可能とする(British Journal of Cancer (2000), 83(11), 1516-1524)。さらに、in vitroにおいてトポイソメラーゼ1および2活性の阻害能がこの化合物で示されている(Biochem. Pharmacol. (2000), 59, 807)。
【0003】
この化合物1は、中性および酸性pHに関して、また、温度に関しての通常条件下で安定である。しかし、長期間の保存が望まれる場合には、−20℃の乾燥した場所にて、気密性ベルボトル中で保存する必要がある。一方、4℃で保存する場合や周囲温度で保存する場合にはなおのこと、この化合物は時間が経つにつれて分解する。従って、病院環境で抗癌治療プロトコールに用いるために満足のいく方法で取り扱うことができない。よって、使用時に製造しなければならないが、これは不利なことである。
【0004】
この化合物の化学前駆体は式2の遊離型リン酸誘導体:4’−デメチルエピポドフィロトキシン2”,3”−ビスペンタフルオロフェノキシアセチル−4”,6”−エチリデン−β−D−グルコシド4’−ホスフェートである。
【化2】

式2
【0005】
この化合物は単離せず、そのまま非晶質形態で、式1のそのN−メチル−D−グルカミン塩の製造に用いられる(WO96/12727)。式2のこの遊離型のリン酸誘導体は、一度単離すると、吸湿性で、比較的不安定な非晶質形態となる。その後は、すぐに、無水条件下でN−メチル−D−グルカミン塩を形成させ、低温で保存するか、または、すぐに使用する必要がある。従って、この非晶質形態の式2の誘導体は、それ自体、工業水準では良好な条件下で保存も取り扱いもできない。さらに、非晶質形態の式2の化合物は式1の化合物の重要な生物特性を示さないことが見出されている。従って、結晶形態の式2の化合物を得るという、解決すべき問題がなお残っている。
【0006】
従来、非晶質化合物の結晶化には非常に困難な点があり、いつも最初の結晶得るのが問題であることが知られている。
その後の結晶化は、シーディングにより容易に起こる。
【0007】
2分子のエタノールを含む溶媒和物は、エトポシド(etoposide)のプロドラッグである化合物エトポホス(etopophos)に関して、特許EP537555に記載されている。この特許に記載されている方法と同様の手順を行うことにより、式2の化合物の結晶化を得ることを期待するというのが論理的である。
【0008】
その特許に明示されている溶媒和物としてのジエタノレートを得るための方法(補助溶媒または水を含んだエタノールによる治療)は、本発明者らの場合には適さない。
エトポホスと式2の生成物の溶解度には実質的に大きな違いがある。
【発明の概要】
【0009】
エトポホスは水溶性(100mg/ml)であるが、非晶質である式2の化合物は水溶性ではない。後者はエタノールに可溶であるが、本発明者らの場合、エトポホスの溶媒和物を得るために奨励されている水を加えると、結晶化できないガム質が得られた。
【0010】
式2の化合物の結晶化を試みるため、本実験室では多くの試験を行った。メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールまたはブタノールのようなアルコール類を用いたが、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトンまたはジオキサンのような他種の溶媒を含む場合でも成功はしなかった。エチルエーテルもしくはイソプロピルエーテルのようなエーテル類、またはペンタン、ヘプタンもしくは石油エーテルのようなアルカン類を用いた場合にのみ、固形粉末ではあるが、非晶質形態の生成物が得られる。
【0011】
従って、驚くべきことに、式2の遊離ホスフェートが特定の条件下でエタノール1/2分子を含む溶媒和物を形成する特性を有し、その結果、式3の、結晶性で安定なそのヘミエタノレート誘導体が得られ、この誘導体を乾燥させると、結晶形態の式2の誘導体が得られることが見出された。さらに、式2または3の結晶性化合物を用いてシーディングすることにより、4’−デメチルエピポドフィロトキシン2”,3”−ビスペンタフルオロフェノキシアセチル−4”,6”−エチリデン−β−D−グルコシド4’−ホスフェートのヘミエタノレート溶媒和物以外の結晶性のエタノール溶媒和物が取得可能であった。
【0012】
よって、本発明は、下式2の遊離形態またはエタノール溶媒和形態である結晶性化合物4’−デメチルエピポドフィロトキシン2”,3”−ビスペンタフルオロフェノキシアセチル−4”,6”−エチリデン−β−D−グルコシド4’−ホスフェートに関する:
【化3】

【0013】
有利には、このエタノール溶媒和物は下式3のヘミエタノレート溶媒和物である:
【化4】

【0014】
有利には、式2の遊離形態の結晶性化合物のX線図は、実質的に図2のものに相当し、式3のヘミエタノレート溶媒和物形態の結晶性化合物のX線図は、実質的に図3のものに相当する。有利には、式3のヘミエタノレート溶媒和物以外のエタノール溶媒和形態の4’−デメチルエピポドフィロトキシン2”,3”−ビスペンタフルオロフェノキシアセチル−4”,6”−エチリデン−β−D−グルコシド4’−ホスフェートの結晶性化合物のX線図は、実質的に図4のものに相当する。
【0015】
本発明の他の課題および利点は、当業者ならば、以下の詳細な説明から、また、以下の図面を参照すれば、明らかとなろう。
【発明の具体的説明】
【0016】
本発明はまた、式3のヘミエタノレート溶媒和物形態の結晶性化合物を製造する方法であって、非晶質形態の式2の化合物を超音波の存在下で無水エタノールに溶解させることからなる工程を含む方法に関する。
有利には、超音波は少なくとも20分間適用する。
【0017】
本発明はまた、式2の遊離形態の結晶性化合物を製造する方法であって、式3のヘミエタノレート溶媒和物形態の結晶性化合物を、有利には真空下で乾燥させることからなる工程を含む方法に関する。
【0018】
事実、式2の遊離型ホスフェートを無水エタノール溶液中、超音波の存在下で、有利には20分間処理すると、結晶性形態の出現が促進される。それは結晶化のためにエタノール1/2分子と溶媒和物を形成する。この現象は、メタノールでの比較試験を行ったところ、全般的なものであるとは考えにくい。その後、結晶化は見られなかった。同様に、式2の生成物系の種々の化合物、例えば、特許出願WO96/12727に記載されている生成物である、ペンタフルオロフェノキシアセテート鎖の代わりにフェノキシアセテート、4−トリフルオロメトキシフェノキシアセテートまたは4−メトキシフェノキシアセテート鎖を有する生成物にも同等の条件を適用した。これらの類似の構造では結晶化は起こらない。ペンタフルオロフェノキシアセテート鎖を有する式2の化合物だけが、上記の処理によって結晶を形成する特殊性を有している。
【0019】
数回結晶化させた後、周囲温度で真空乾燥させた後であっても、この化合物はなお、同じエタノール化学量、すなわち、化合物1モル当たり溶媒1/2モルを維持している。この段階で、溶媒和物、式3のヘミエタノレートが得られる。
【0020】
さらに、40℃で10日間、徹底的に真空乾燥させると、困難ではあるが、エタノールを完全に除去できることが明らかになった。よって、溶媒を含まない結晶形態を得る前に、溶媒和物としての結晶形態を経由する必要がある。この化合物は直接得ることはできない。
【0021】
結晶化における主要な難しさは最初の結晶を得ることにあること、そして、他の結晶化技術は、すべての形成されている結晶によるシーディングを含めることができ、そのシーディングにより将来のバッチの結晶化が起こり得る。よって、本発明はまた、エタノール溶媒和形態の4’−デメチルエピポドフィロトキシン2”,3”−ビスペンタフルオロフェノキシアセチル−4”,6”−エチリデン−β−D−グルコシド4’−ホスフェートの結晶性化合物を製造する方法であって、下記の一連の工程:
a)非晶質形態の式2の化合物にエタノールを加え、
b)溶液を濃縮し、
c)エタノール溶媒和物形態の4’−デメチルエピポドフィロトキシン2”,3”−ビスペンタフルオロフェノキシアセチル−4”,6”−エチリデン−β−D−グルコシド4’−ホスフェートを、濃縮溶液を10℃で1.5時間冷却し、遊離形態の式2の化合物の結晶、またはヘミエタノレート溶媒和物形態の式3の化合物の結晶からなるイニシエーターを加えることにより結晶化し、
d)10℃で濾過して、エタノールですすぎ、
e)得られた生成物を乾燥させる
ことを含んでなる方法に関する。
【0022】
溶液の濃縮からなる工程(a)は、有利には、約50%の溶液の蒸発により行われる。
有利には、本発明の方法によって得られた結晶性生成物に同調性がない場合、アセトンに再溶解させ、得られた溶液を再濃縮し、有利には、溶液の75%を蒸発させ、その後、工程(a)〜(e)を繰り返すことにより2回目の結晶化を行う。
有利には、生成物の乾燥からなる工程(e)は、炉中、真空下、40℃で行う。
【0023】
また、真空下で徹底的に乾燥させると(有利には40℃で10日間)、困難ではあるが、エタノールを完全に除去できることも明らかになった。このようにして、溶媒を含まない結晶性形態、すなわち、遊離形態の式2の結晶性化合物が得られる。
【0024】
本願はまた、本願の結晶性化合物(有利には、式2または3)を含んでなる医薬品に関する。
【0025】
有利には、この医薬品は、有利には液性腫瘍または固形腫瘍、特に、小細胞性肺癌、胚性腫瘍、神経芽細胞腫、腎臓癌、小児癌、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫、急性白血病、胎盤絨毛癌、および乳腺癌の抗癌治療に用いるためのものである。
【0026】
特に、この医薬品は、結腸直腸癌、黒色腫、神経膠腫、前立腺癌および乳癌など、通常の治療に対して治療抵抗性(refractory)である腫瘍の治療のために、トポイソメラーゼ1または2阻害化合物の治療効果を高めることを意図したものである。
【0027】
有利な一実施形態では、本医薬品は、液性腫瘍であれ固形腫瘍であれ、いずれの腫瘍種も治療するのに用いられる抗癌剤である。
【0028】
有利には、本発明の医薬品は、経口投与を意図した形態、有利には、ゼラチンカプセル、カプセルもしくは錠剤の形態、または非経口投与を意図した形態であり、有利には、経口投与としては、24時間ごとの用量が5〜400mg/mであり、注射による投与としては、2〜200mg/mである。
【0029】
本発明の医薬品は、第一治療として患者に投与することもできるし、あるいは、外科術、放射線療法または化学療法による1以上の治療の後に投与することもできる。それは単独で投与することもできるし、あるいは、他の化学療法と組み合わせて投与することもできる。従って、この医薬品は別の抗癌剤も含むことができる。
【0030】
以下の実施例は非限定的に示すものである。
【実施例】
【0031】
製造方法
実施例1:
非晶質形態の4’−デメチルエピポドフィロトキシン2”,3”−ビスペンタフルオロフェノキシアセチル−4”,6”−エチリデン−β−D−グルコシド4’−ジベンジルホスフェートからの4’−デメチルエピポドフィロトキシン2”,3”−ビスペンタフルオロフェノキシアセチル−4”,6”−エチリデン−β−D−グルコシド4’−ホスフェートのヘミエタノレートの製造
非晶質形態の式2の遊離型ホスフェートを、特許出願WO96/12727の実施例22に記載の方法か、または特許FR2791682の実施例8に記載の方法かのいずれかに従って得る。例えば、15g(11.6mmol)の4’−デメチルエピポドフィロトキシン2”,3”−ビスペンタフルオロフェノキシアセチル−4”,6”−エチリデン−β−D−グルコシド4’−ジベンジルホスフェートを、水素化のため、常圧、水素雰囲気下、酢酸エチル−エタノール(1/3)混合物200ml中に、10%パラジウム/炭1.2gとともに、攪拌しながら30分間置く。反応媒体を濾過し、濾液を蒸発させ、イソプロピルエーテルでトリチュレートし、式2の非晶質粉末を得た。
【0032】
融点(エレクトロサーマル9300キャピラリー融点装置):〜138℃(軟化)。分析的HPLC純度:99.5%。TLC:Rf0.5、溶媒;ジクロロメタン−メタノール−酢酸90/10/5。X線図:図1。
【0033】
ヘミエタノレートの製造:
上記で得られた非晶質形態10gを500mlのエタノールに溶解した。この溶液を、30℃の超音波槽(バイオブロック−サイエンティフィックT700型、周波数35kHz)中に20分間置く。厚い沈殿が現れ、次に、これを濾過し、真空乾燥させた。7gの結晶が得られる。融点:161℃。NMRスペクトルは、1/2モルのエタノールの存在を示す。これらの結晶をもう一度結晶化した後、還流下、130mlのエタノールから3回目の結晶化を行い、その後、12時間ゆっくり冷却する。濾過および真空乾燥後、結晶が得られた。
融点165〜166℃。NMRスペクトルは、ここでも、1/2モルのエタノールの存在を示す。X線図:図3。
【0034】
実施例2:
結晶性形態の4’−デメチルエピポドフィロトキシン2”,3”−ビスペンタフルオロフェノキシアセチル−4”,6”−エチリデン−β−D−グルコシド4’−ホスフェートのヘミエタノレートからの結晶性形態の4’−デメチルエピポドフィロトキシン2”,3”−ビスペンタフルオロフェノキシアセチル−4”,6”−エチリデン−β−D−グルコシド4’−ホスフェートの製造
上記で得られた結晶のアリコートを薄層として、10日間、40℃の加熱デシケーター中に置いた。NMRスペクトルはエタノールが存在しないことを示す。融点169℃。X線図:図2。
【0035】
実施例3:
ヘミエタノレート以外の4’−デメチルエピポドフィロトキシン2”,3”−ビスペンタフルオロフェノキシアセチル−4”,6”−エチリデン−β−D−グルコシド4’−ホスフェートの結晶性エタノール溶媒和物の製造
非晶質形態の式2のホスフェートを、特許出願WO96/12727の実施例22に記載の方法か、または特許FR2791682の実施例8に記載の方法かのいずれかに従って得る。その後の結晶化工程は次の通りである:
・EtOHの添加:濃縮前の最初の容量に対して約1容量、
・溶液の濃縮:溶液の約50%の蒸発、
・溶液を10℃まで冷却し、この溶液を1.5時間10℃に維持すると同時に、実施例1または2に従って得られた化合物の結晶を用いてシーディング、
・得られた結晶性生成物を10℃で濾過し、エタノールですすぐ(生成物に同調性がなければ、アセトンに再溶解し、予備濃縮した後、上記で示した工程を繰り返すことにより2回目の再結晶化を行う、
・精製物を炉中、真空下40℃で乾燥。
結晶性エタノール溶媒和物が得られた。
【0036】
X線図:図4および5
HPLC純度:99.1%
エタノール含量:1.4%
水分含量:1%未満
【0037】
実施例4:
結晶性形態の4−デメチルエピポドフィロトキシン2”,3”−ビスペンタフルオロフェノキシアセチル−4”,6”−エチリデン−β−D−グルコシド4’−ホスフェートのエタノール溶媒和物(実施例3)からの結晶性形態の4’−デメチルエピポドフィロトキシン2”,3”−ビスペンタフルオロフェノキシアセチル−4”,6”−エチリデン−β−D−グルコシド4’−ホスフェートの製造
上記で得られた結晶12g(実施例3)を、加熱プラットフォームを備えた真空ベルジャー内の大型の結晶化鉢に置いた。真空にし、温度を40℃で一定とした。
この結晶を10日間乾燥させる。この10日の終了時に、エタノールを完全に蒸発させた。X線回折図を作製すると、完全な結晶性を示す(図6)。
【0038】
実施例5:
4’−デメチルエピポドフィロトキシン2”,3”−ビスフェノキシアセチル−4”,6”−エチリデン−β−D−グルコシド4’−ホスフェート、4’−デメチルエピポドフィロトキシン2”,3”−ビス(4−トリフルオロメトキシフェノキシアセチル)−4”,6”−エチリデン−β−D−グルコシド4’−ホスフェート、および4’−デメチルエピポドフィロトキシン2”,3”−ビス(4−メチルフェノキシアセチル)−4”,6”−エチリデン−β−D−グルコシド4’−ホスフェートの結晶化試験
非晶質形態の4’−デメチルエピポドフィロトキシン2”,3”−ビスフェノキシアセチル−4”,6”−エチリデン−β−D−グルコシド4’−ホスフェート、4’−デメチルエピポドフィロトキシン2”,3”−ビス(4−トリフルオロメトキシフェノキシアセチル)−4”,6”−エチリデン−β−D−グルコシド4’−ホスフェート、および4’−デメチルエピポドフィロトキシン2”,3”−ビス(4−メチルフェノキシアセチル)−4”,6”−エチリデン−β−D−グルコシド4’−ホスフェートを、特許出願WO96/12727に記載の方法に従って得た。
【0039】
これらの化合物100mgを周囲温度で5mlのエタノールに溶解した。これら種々の溶液を超音波槽内に20分間置く。結晶化を開始させる常法に従い、壁のトリチュレーションを行っても、または数日間静置しても結晶化は見られなかった。
【0040】
結晶性形態の研究
結晶性形態の存在を証明するため、上記で得られた種々の形態(非晶質形態、結晶性形態の式2、結晶性形態の式3、およびエタノール溶媒和形態の他の結晶性化合物)に対するX線回折研究、また、熱顕微鏡研究を行った。
【0041】
X線回折:
非晶質形態と結晶性形態の式2の化合物、式3のヘミエタノレート化合物、および上記で得られたヘミエタノレート以外の、化合物4’−デメチルエピポドフィロトキシン2”,3”−ビスペンタフルオロフェノキシアセチル−4”,6”−エチリデン−β−D−グルコシド4’−ホスフェートの結晶性エタノール溶媒和物をX線粉末回折分析により研究した。
【0042】
装置は、銅対陰極を持つC型水平CGR角度計を備えたPhilips PN1730である(λ=1.54051オングストローム、I=20mAおよびV=40kV)(図1〜4)。
【0043】
サンプルに対し、以下の操作条件下で分析を行った。
・探査角範囲3〜25°θ
・取得時間500msごと
・取得数5(図1〜4)
【0044】
図5に関しては、装置は、銅対陰極を持つ角度計を備えたPhilips X’Pert PW3040である(Kαライン)。探査角範囲は2〜50°θである。カウントは各段階2または2.4sであり、各段階は0.02°2θの値を有する。サンプルは、平面を得るために弱い圧力をかけること以外は特別な処理を施さずに測定した。静菌サンプルによるチャンバーの汚染を防ぐため、サンプルの上にカプトンシートをかけた。使用大気は周囲空気である。
【0045】
図6に関しては、モノクロメーターを用いず、ニッケルフィルターを用い、エクセレレーター(Xcelerator)検出器と銅対陰極を備えたPhilips X’Pert MPD装置(Kαライン、強度:20mA、電圧:40kV、波長λ:1.5418367オングストローム)で線図を記録した。
【0046】
記録は連続モードで行った。スキャンはω2θである。
カウントは各段階で100sとし、各段階の値は0.02°2θである。
100%強度は、カウント数の最高値を有するラインによる。このカウント数はこれら各ラインの絶対強度に比例する。
【0047】
結果:
回折図は、結晶性(100%ラインのカウント数に関する)は、式2のサンプルの場合(図2および6)、また、式3の溶媒和物サンプルの場合(図3)、および他の溶媒和物の場合(図4および5)に明らかに極めて大きいことを示す。式2の非晶質サンプルでは、このようなラインを示さない(図1)。
【0048】
熱顕微鏡観察:
物理化学的熱顕微鏡観察研究を行ったところ、温度の上昇とともに式3のヘミエタノレートを伴う結晶状態が示された。
用いた装置は、FP5プログラミング装置(Mettler)に接続したFP52システムである。サンプルをスライディングカバースリップの間に挟み、30〜150℃の間のプログラムされた速度に従って加熱する。
【0049】
非晶質形態の式2のサンプルは非晶質のままであり、温度が上昇しても結晶化はしない。
式3のヘミエタノレートは結晶性である。それは150℃まで溶媒の損失を示し、165℃前後で、分解を伴った融解が見られる。
【0050】
安定性試験
粉末形態の安定性の実証
上記で得られた非晶質形態の式2の化合物と結晶性形態の式3の化合物に対して、次のような条件下で粉末形態における安定性の研究を起こった。
・40℃、密閉瓶で1ヶ月、
・30℃、相対湿度75%、開放瓶で1ヶ月。
【0051】
密閉瓶安定性試験では、サンプルを琥珀色のガラスバイアル(Alltech ref. vial 98037, ref. stopper 6687)中に密閉する。
【0052】
開放安定性試験は、NaClで飽和させた塩水を含むデシケーター内に粉末を保存することにより行う(相対湿度75%/30℃)。
式2の遊離ホスフェート化合物の含量を、次のHPLCクロマトグラフィーシステムを用いた内部標準化により評価する。
【0053】
カラム:Cシンメトリー、5μ、250×4.6mm(Waters)
溶離剤:CHCN/HO/KHPO 600/400/3.4(ml/ml/g)、
10%HPOでpH4に調整
流速:1ml/分、
検出:220nm。
【0054】
分析は、L−7100ポンプ、L−7200オートサンプラー、L−7450ダイオードアレイ検出器およびHSM D−7000システム管理ソフトウエアを備えたMerck Hitachi Lachrom HPLCシステムにて行う。
この試験結果を下表1にまとめる。
【0055】
【表1】

【0056】
粉末形態における安定性試験は、安定性条件にかかわらず、非晶質形態の式2の化合物が、結晶性形態の式3のヘミエタノレート化合物より安定性が低いことを示す。
40℃、密閉瓶中で1ヶ月後、非晶質形態の式2の化合物では11.9%の分解産物が見られたのに対し、結晶性形態の式3のヘミエタノレート化合物では1.5%であった。
【0057】
30℃、相対湿度の存在下で1ヶ月後、非晶質形態の式2の化合物では50%の分解産物が見られたのに対し、結晶性形態の式3のヘミエタノレート化合物では1.8%であった。
よって、本発明の特徴は、その非晶質遊離形態(式2)と比べて、式3のヘミエタノレート結晶性形態が安定であるという点で利点がある。
【0058】
薬理試験
臨床試験段階では、式1のN−メチル−D−グルカミンで塩化したホスフェート形態は良好な条件で使用することができないことから、式2の非晶質遊離ホスフェート形態の試験が考えられる。薬理試験の過程で、その非晶質遊離ホスフェート形態のこの化合物は、British Journal of Cancer (2000), 83(11), 1516-1524で公開されているような、そのN−メチル−D−グルカミン塩で証明されたin vivo活性を持たないことが明らかとなった。他方、式3のヘミエタノレート形態か、または式2の遊離形態のいずれかで得られた結晶性形態は、必要とされる薬理活性を示す。
【0059】
材料および方法
in vivo評価のための化合物の溶解
式2および3の化合物の種々の非晶質形態および結晶性形態を、Tween 80 5%と、5%グルコース含有血清95%とを含む混合物に溶解/懸濁させる。
【0060】
試験腫瘍モデル
用いたモデルはP388白血病(Dykes, D.J. and Waud, W.R.: Murine L1210およびP388 Leukemias. In Tumor Models in Cancer Research, Teisher, B. A. ed, Humana Press Inc., Totowa, NJ, pp. 23-40, 2002)を、これまでに記載されているような(Kruczynski, A, and Hill, B.T,: Classic in vivo cancer models: Three examples of mouse models used in experimental therapeutics. Current Protocols in Pharmacology Unit 5.24:5.24.1-5.24.16, 2001)、DBA/2マウス(DBA/2JIco, Charles River)に対する一連の腹腔内移植により維持したものである。
【0061】
試験化学療法
これらの動物は、実験動物管理者として認可を受けた研究者の指示の下、the Guidelines for the Welfare and Use of Laboratory Animals (National Research Council, 1996)およびEuropean directive EEC/86/609に準拠して飼育、維持管理、取り扱いを行う。さらに、試験は総て、仏国法律、および実験腫瘍学における動物の健康に関するUKCCCK(United Kingdom Coordinating Commitee on Cancer Research)の指示に基づく(Workman, p,, Twentyman, P., Balkwill, F,, Balmain, A., Chaplin, D., Double, J., Embleton, J., Newell, D., Raymond, R., Stables, J., Stephens, T., およびWallace, J,,; United Kingdom coordinating committee on cancer research (UKCCCR) guidelines for the welfare of animals in experimental neoplasia. Br. J. Cancer 77; 1-10, 1998))、the Centre de Recherche Pierre Fabre [PF Research Center]の倫理委員会の規則に準拠して行う。試験は、すでに記載されているプロトコール(Kruczynski, A., Colpaert, F., Tsrayre, J.P., Mouillard, P., Fahy, J., and Hill, B.T.: Preclinical in vivo antitumor activity on vinflumine, a novel fluorinated. Vinca alkaloid. Cancer Chemother. Pharmacol. 41: 437-447, 1936)に従って行う。これは、第0日にC2DF1ハイブリッドマウス(CD2F1/CrlBR, Charles River, St Aubin-les-Elbeuf, France)において10個のP388白血病細胞を静脈移植することからなる。治療ケージと対照ケージに動物を無作為に分けた後、腫瘍の移植の翌日、すなわち第1日に1回の腹腔内注射で評価する化合物を投与する。その後、動物を毎日モニタリングし、1週間に2回秤量し、臨床反応を記録した。
【0062】
抗腫瘍活性の評価
生存率は抗腫瘍活性を評価するためのパラメーターである。生存率の増加は、(処理群の生存率の中間値/対照群の生存率の中間値)×100に相当するT/C比(%)で定義される。
【0063】
結果
in vivoにおける失血病モデルに対する、種々の形態の式2および3の化合物の抗腫瘍活性の評価
3形態の化合物、すなわち、非晶質形態の式2の化合物(非晶質式2)、結晶性形態の式2の化合物を乾燥させてエタノール溶媒の痕跡を総て除去したもの(結晶性式2)および1/2モルのエタノールを含有する結晶性形態の式3の化合物(結晶性式3)をin vivoにおいて評価した。結果を下表2に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
これらの結果は、結晶性形態の式2および3の2つの化合物が、40mg/kgの用量から動物の生存率の有意な上昇を誘導することを示し、これはT/Cの比の値143%で示され、結晶性形態のこの2つの化合物の一方または他方で動物を処理することで、動物の生存を43%引き延ばすことができたことを示している。実際、NCI(National Cancer Institute)の判定基準によれば、T/C値は、少なくとも120%より大きければ有意であると見なされ、175%よりも大きければ有意性が極めて高い、または高レベルの抗腫瘍活性を反映していると見なされる(Venditti, J.M. : Preclinical drug development : Rationale and methods. Semin. Oncol. 8: 349-361, 1981)。結晶性形態の式2または3の化合物によって誘導される抗腫瘍活性は化合物用量とともに高まり、用量160mg/kgで最適値に達し、これは結晶性形態の式3の化合物ではT/C比329%、そして、結晶性形態の式2の化合物では300%で表される。これらの値は、P388白血病を患う動物を結晶性形態の式2または3の化合物で処理することで、 動物の生存をそれぞれ200%または229%引き延ばすことができたことを示している。
【0066】
結晶性形態とは異なり、非晶質形態の式2の化合物は用量40および80mg/kg(それぞれT/C値120%未満、すなわち、100%および114%で表される)で有意な抗腫瘍活性を誘導しない。非晶質形態の式2の化合物は用量160mg/kgのみで抗腫瘍活性を誘導するが、この活性は同じ用量で結晶性形態の式2または3の化合物で得られる活性よりずっと低い。具体的には、非晶質形態の式2の化合物で用量160mg/kgにおいて得られたT/C値は157%であるのに対し、結晶性形態の式3および2の化合物では、それぞれ329%と300%であった。
【0067】
これらの活性は動物の有意な体重減を誘導せず、このことはこれらの化合物が動物に十分許容されることを示唆することに注目すべきである。
【0068】
結論としては、結晶性形態の式2または3の化合物はP388白血病モデルにおいて高レベルの抗腫瘍活性を誘導し、この活性は非晶質形態の式2の化合物の活性よりも明らかに高い。
【0069】
よって、これらの化合物は癌に対する治療兵器庫に大きな利点をもたらす。点滴として非経口投与または経口投与すると、液性腫瘍であれ固形腫瘍であれ、あらゆるタイプの癌の治療が可能となる。それらは第一治療として患者に投与することもできるし、あるいは、外科術、放射線療法または化学療法による1以上の治療の後に投与することもできる。これらの化合物は単独で投与することもできるし、あるいは、他の化学療法と併用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】非晶質形態の式2の化合物のX線図を示す。
【図2】結晶形態の式2の化合物のX線図を示す。
【図3】結晶形態の式3の化合物のX線図を示す。
【図4】式3のヘミエタノレート溶媒和物以外のエタノール溶媒和形態の4’−デメチルエピポドフィロトキシン2”,3”−ビスペンタフルオロフェノキシアセチル−4”,6”−エチリデン−β−D−グルコシド4’−ホスフェートの結晶性化合物のX線図を示す。
【図5】式3のヘミエタノレート溶媒和物以外のエタノール溶媒和形態の4’−デメチルエピポドフィロトキシン2”,3”−ビスペンタフルオロフェノキシアセチル−4”,6”−エチリデン−β−D−グルコシド4’−ホスフェートの結晶性化合物のX線図を示す。
【図6】結晶形態の式2の化合物のX線図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式2の、遊離形態またはエタノール溶媒和形態である、結晶性化合物4’−デメチルエピポドフィロトキシン2”,3”−ビスペンタフルオロフェノキシアセチル−4”,6”−エチリデン−β−D−グルコシド4’−ホスフェート:
【化1】

【請求項2】
エタノール溶媒和物が、下式3のヘミエタノレート溶媒和物である、請求項1に記載の結晶性化合物:
【化2】

【請求項3】
X線図が図2または6のものに実質的に相当する、式2の遊離形態の請求項1に記載の結晶性化合物。
【請求項4】
X線図が図3のものに実質的に相当する、式3のヘミエタノレート溶媒和物形態の請求項1または2に記載の結晶性化合物。
【請求項5】
非晶質形態の式2の化合物を超音波の存在下で無水エタノールに溶解させることを特徴とする、ヘミエタノレート溶媒和物の形態の請求項1、2または4に記載の結晶性化合物を製造する方法。
【請求項6】
超音波を少なくとも20分間適用する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
式3のヘミエタノレート溶媒和物形態の結晶性化合物を有利には真空下で乾燥することを特徴とする、請求項1または3に記載の結晶性化合物を製造する方法。
【請求項8】
エタノール溶媒和物形態の請求項1、2または4に記載の結晶性化合物を製造する方法であって、
下記の一連の工程:
a)非晶質形態の式2の化合物にエタノールを加え、
b)溶液を濃縮し、
c)エタノール溶媒和物形態の4’−デメチルエピポドフィロトキシン2”,3”−ビスペンタフルオロフェノキシアセチル−4”,6”−エチリデン−β−D−グルコシド4’−ホスフェートを、濃縮溶液を10℃で1.5時間冷却し、遊離形態の式2の化合物の結晶、またはヘミエタノレート溶媒和物形態の式3の化合物の結晶からなるイニシエーターを加えることにより結晶化し、
d)10℃で濾過して、エタノールですすぎ、
e)得られた生成物を乾燥させる
ことを含んでなる、方法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の結晶性化合物を含んでなる、医薬品。
【請求項10】
液性腫瘍または固形腫瘍、特に、小細胞性肺癌、胚性腫瘍、神経芽細胞腫、腎臓癌、小児癌、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫、急性白血病、胎盤絨毛癌、および乳腺癌の抗癌治療に用いるための、請求項9に記載の医薬品。
【請求項11】
結腸直腸癌、黒色腫、神経膠腫、前立腺癌および乳癌のように、通常の治療に対して治療抵抗性である腫瘍を治療するために、トポイソメラーゼ1および2阻害化合物の治療効果を高めることを意図した、請求項9に記載の医薬品。
【請求項12】
経口投与または非経口投与を意図した形態の、請求項9〜11のいずれか一項に記載の医薬品。
【請求項13】
別の抗癌剤も含んでなる、請求項9〜11のいずれか一項に記載の医薬品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−505868(P2007−505868A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526665(P2006−526665)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002349
【国際公開番号】WO2005/028492
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(500033483)ピエール、ファーブル、メディカマン (73)
【Fターム(参考)】