説明

遊離脂肪酸のブレンド及びその使用

乳清脂質から誘導可能な二つ以上の天然遊離脂肪酸のブレンド、前記遊離脂肪酸は、酪酸(C4);カプロン酸(C6);カプリル酸(C8);カプリン酸(C10);ラウリン酸(C12);ミリスチン酸(C14);パルミチン酸(C16);パルミトレイン酸5(C16:1);ステアリン酸(C18);オレイン酸(C18:1);リノール酸(C18:2);リノレン酸(C18:3);及びそれらのエステル化誘導体から選ばれる、及び前記遊離脂肪酸の乳化剤として乳タンパク質を含む抗菌性組成物であって、全脂質含有量の少なくとも35%は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸の一つ又は複数から選ばれる遊離脂肪酸で構成される抗菌性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊離脂肪酸のブレンド及びその使用に関する。特に、本発明は、抗菌性遊離脂肪酸のブレンドに関する。
【背景技術】
【0002】
バター酸(butter acid)は遊離脂肪酸(カルボン酸)で、天然では通常アルコールエステルとして存在し、植物及び動物油脂の主成分を構成する。これらは従来、短鎖、中鎖又は長鎖炭素分子として分類され、一方の末端にカルボン酸(極性)基を、他端にメチル(非極性)基を有する。この極性が両親媒性に寄与し、カルボン酸末端は水溶性、メチル末端は脂溶性となる。親水性の酸末端にもかかわらず、ごく短鎖の酸(酪酸)を除いて、脂肪酸は一般的に水に不溶であるが、有機溶媒及び油に可溶である。
【0003】
脂肪酸の炭素鎖は、単共有結合で連結され、炭素の全原子価が−CH−の配座で水素によって占有されている場合、‘飽和’されている。炭素が二重結合によって連結されている場合、炭素の全原子価は占有されておらず、その炭素は不飽和と表現される。従って、脂肪は伝統的に飽和又は不飽和と表現される。
【0004】
脂肪酸をその分子構造中の炭素の数、すなわちC数と、それに続けて分子中に含有される二重結合の数によって表現するのも慣習である。C18:2はリノール酸で、18個の炭素の鎖長と2個の二重結合、すなわち2個の不飽和C=C結合を有する。飽和脂肪酸は、直鎖分子の傾向にあるため互いに密集している。不飽和脂肪は、二重結合のところで通常ねじれており、あまり密集せずに存在する。炭素鎖長が増加すると、脂肪の総体的分子量も増加し、総体的融点も高くなる。しかしながら、不飽和脂肪は例外で、それらの(通常)非線形的配座のために、それらはあまり密集せずに存在するので、かなり低い融点を有する。
【0005】
植物及び動物油脂では、脂肪酸は、1、2又は3個の脂肪酸と結合できるグリセロール(三価アルコール)のようなアルコールとエステル結合し、モノ、ジ又はトリグリセリドとなっている。天然の場合、これらは通常、各アルコール基に異なる脂肪酸を有する混合トリグリセリドである。当然、任意のトリグリセリドの融点は、エステル化された脂肪酸の融点の特徴を反映することになり、油脂の総体的硬度は、従って、異なる脂肪酸の比率及びこれらが飽和であるか否かの特徴を反映することになる。トリグリセリドは、室温で液体であると油と言われ、固体であると脂肪と言われる。
【0006】
哺乳動物の乳由来のバター脂は、植物又は野菜由来では見られない短〜中鎖酸を含む広範囲の脂肪酸を提供する。多少の種のばらつきはあるが、一般的に、酪酸(C4)、カプロン酸(C6)、カプリル酸(C8)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、ステアリン酸(C18)、オレイン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2)、リノレン酸(C18:3)及びいくつかの低濃度の高級酸で構成される。わずか三つの不飽和脂肪酸は、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸であること、そしてこれらが全体の約30%以下を占めることは注目に値する。以下の表(表1)にウシのバター脂の脂肪酸含有量の典型的なプロフィールを示す。
【0007】
【表1】

【0008】
脂肪含有量の65%が飽和であるという事実にもかかわらず、バターは特に固い脂肪でもなく、37℃の領域の温度で液化する。この理由の一部は、不飽和酸のほかに、短〜中鎖飽和酸(C:10以下)がすべて37℃未満の融点を有しており(短鎖長であるため)、これらが全脂肪含有量の10%を占めるためである。
【0009】
バター脂による高コレステロール血症への寄与は、主にミリスチン酸成分及び程度は少ないがパルミチン酸が原因である。ステアリン酸もいずれの短鎖酸(C:12以下)も血清コレステロールの上昇に寄与しない(参考文献9)。それどころか、短鎖酸(C:4〜C:12)は、それらの抗菌性及びそれらの容易に利用可能なエネルギー含量の点で著しい潜在的利益を有している。短鎖飽和遊離脂肪酸の吸収及び代謝の様式には長鎖酸と比べて違いがある。胃リパーゼによってトリグリセリドコアから放出された短鎖脂肪酸は腸細胞で吸収され、肝門静脈に乗って肝臓に直接輸送され、そこで当量の炭水化物の約2.5倍の熱量の即時及び強力なエネルギー源となる。長鎖酸は腸細胞でトリグリセリドとして再構築され、リンパ中のカイロミクロンとして脂肪組織に輸送される(参考文献8)。
【0010】
天然では、ほとんどの脂肪酸はトリグリセリドとして存在する。トリグリセリドは脂肪又は油の脂質画分の主成分である。摂取すると、脂質はリパーゼ酵素によって分解され、グリセリドから遊離脂肪酸が放出される。加水分解のプロセスは前胃(唾液)リパーゼの作用から始まる。ほとんどの唾液リパーゼは乳脂質から短〜中鎖酸を優先的に放出すること、及びこれらの短〜中鎖酸はグラム陽性腸球菌及びグラム陰性大腸菌に対して強力な阻害特性を有していることが知られている(参考文献1&2)。短鎖酸のほか、リノール酸及びリノレン酸も虫歯菌ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)に対して阻害効果を有していることが知られている(参考文献3)。遊離短鎖酸だけでなく脂肪酸のモノグリセリドも抗真菌活性を有していることが知られている(参考文献4)。エンベロープを持ったウィルスに対する殺ウィルス活性も報告されている(参考文献7)。
【0011】
唾液リパーゼによる早期及び優先的な殺微生物性短鎖脂肪酸(C:4〜C:12)の放出は、新生児動物の腸における保護機構を提供し、胃腸感染の予防に著しく貢献する。遊離脂肪酸は一般的に水性媒体に不溶性なので、それらの輸送及びバイオアベイラビリティはそれらの乳化に依存する。
【0012】
WO03/018049には、ヒト又は動物の上皮膜への潜在的病原菌の接着を阻害するための乳清アポタンパク質の使用が開示されている。アポタンパク質は、乳清リポタンパク質からブタの膵臓エキス由来のリパーゼによって酵素的に生じたものである。アポタンパク質は、通常結合されている非タンパク質物質(脂質/炭水化物/多糖/金属イオン)が除去された後に残る残存タンパク質‘骨格’である。アポタンパク質は通常、特定の非タンパク質複合体に大きい親和性を有している。アポリポタンパク質の場合、この親和性は、脂質、脂肪又は遊離脂肪酸の結合及び水性媒体中での輸送を容易にする極性及び非極性又は両親媒性部分に基づいている。
【0013】
乳加工中、バターの製造は、機械的手段によって脂肪球の膜を引き裂き、バター脂肪球を融合させ、表面に浮上させて、そこでバターとして回収することを含む。残ったバターミルクは、酸性化して酸不溶性のカゼインタンパク質を沈殿させ、乳清タンパク質、乳糖ラクトース及び引き裂かれた脂肪球の膜成分を含む‘酸ホエー’にすることが多い。ホエータンパク質は、カゼイン及び脂肪の凝固にレンネットを使用するチーズ製造におけるカードからの流出液からも回収される。この‘スイートホエー’も脂肪球膜の成分を含有している。ホエータンパク質は、さらに加工して残存ラクトース及び脂質を除去した後、スプレー乾燥し、非タンパク質物質を最小化するように加工すると、ホエータンパク質コンセントレート(WPC)又はホエータンパク質アイソレート(WPI)を形成できる。
【0014】
全乳は別として、商業的酪農業における‘一次的’製品はバターとチーズである。バターミルク及び酸カゼイン、ラクトース、ミネラル及び酸ホエーは、バター製造からの‘二次的’製品であり、一方、スイートホエー、ミネラル及びラクトースは、チーズ製造からの‘二次的’製品である。現代の酪農業においては、一次的及び二次的という用語は誤解を招くおそれがある。なぜならば、二次的‘副産物’が非常に重要な経済的貢献をしているからである。さらに、現代の酪農業は、ますます高度な技術的方法を利用して、伝統的製品の価値を変更及び増大している。一つのそのような変更は、酵素を使用してバター脂から遊離脂肪酸を生成させ、食品加工、風味良好なスナックの製造、及び調理済み食品に使用するためのチーズフレーバー(酵素処理チーズ、Enzyme Modified Cheese)を得るというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】WO03/018049
【発明の概要】
【0016】
本発明は、酪酸(C4);カプロン酸(C6);カプリル酸(C8);カプリン酸(C10);ラウリン酸(C12);ミリスチン酸(C14);パルミチン酸(C16);パルミトレイン酸(C16:1);ステアリン酸(C18);オレイン酸(C18:1);リノール酸(C18:2);リノレン酸(C18:3);及びそれらのエステル化誘導体から選ばれる乳清脂質から誘導可能な二つ又はそれを超えるの天然遊離脂肪酸のブレンド、及び前記遊離脂肪酸の乳化剤として乳タンパク質を含む抗菌性組成物であって、全脂質含有量の少なくとも35%は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸の一つ又は複数から選ばれる遊離脂肪酸で構成される抗菌性組成物を提供する。
【0017】
全脂質含有量は、酪酸、カプロン酸、カプリン酸及びラウリン酸の一つ又は複数から選ばれる少なくとも50%の遊離脂肪酸を含みうる。
前記組成物の全脂質含有量の残り部分は、C14以上の非抗菌性遊離脂肪酸、非加水分解脂質成分、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドなど、又はそれらの組合せを含みうる。
【0018】
前記ブレンドは、カプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸の混合物を含みうる。
前記遊離脂肪酸のブレンドの融点は、個々の遊離脂肪酸のいずれか一つの最も高い融点未満でありうる。前記ブレンドの融点は45℃未満、例えば37℃未満、例えば18℃未満でありうる。
【0019】
カプリル酸:カプリン酸:ラウリン酸の比率は、約40:30:30でありうる。
前記ブレンド中の遊離脂肪酸の少なくとも一部はエステル化されうる。エステル化された遊離脂肪酸は、モノ−及び/又はジ−及び/又はトリ−グリセリド形でありうる。遊離脂肪酸:エステル化グリセリドの比率は約50:50でありうる。
【0020】
前記組成物は水分散性でありうる。
前記乳化剤は乳清タンパク質でありうる。例えば、前記乳化剤はアポリポタンパク質でありうる。あるいは、前記乳化剤はカゼインであってもよい。前記乳化剤は約5〜45重量%の濃度範囲で存在しうる。
【0021】
前記組成物のpHは約4.5〜5.0でありうる。
本発明はさらに、本明細書中に記載の組成物及び担体を含む医薬製剤も提供する。前記組成物は約0.5%〜10%重量/体積の濃度範囲で存在しうる。
【0022】
前記製剤は、溶液、石鹸、ゲル、ペースト、軟膏、泡沫、スプレー、粉末、ペッサリー、包帯、錠剤又は食品の形態でありうる。
本発明はさらに、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)感染の予防又は治療における製剤の使用も提供する。前記製剤は膣内クリーム又はゲル又はペッサリーの形態でありうる。本発明は、非特異的細菌性膣炎の予防又は治療における製剤の使用も提供する。前記製剤は膣内クリーム又はゲル又はペッサリーの形態でありうる。本発明はさらに、皮膚感染の予防又は治療における製剤の使用も提供する。前記製剤は局所適用に適切な形態でありうる。本発明は、火傷の治療における製剤の使用も提供する。前記製剤は局所適用に適切な形態でありうる。本発明はさらに、感染の予防又は治療における製剤の使用も提供する。前記製剤は外科用包帯の形態でありうる。前記製剤は、眼、鼻、口、腸、又は性器への粘膜適用のための、例えば淋病、梅毒、クラミジア、ヘルペス及びHIVの一つ又は複数のような性感染症の予防又は治療に使用するための医薬品の形態でありうる。
【0023】
本発明は、胃腸感染の予防又は治療における製剤の使用も提供する。前記製剤は食品又は飲料の形態でありうる。本発明はさらに、口腔疾患の予防又は治療における使用も提供する。前記製剤は、練り歯磨き、チューインガム、洗口液又はその他の歯磨剤から選ばれる口腔ヘルスケア用製剤の形態でありうる。
【0024】
更なる側面において、本発明は、本明細書中に記載の組成物を含む健康補助食品を提供する。前記組成物は約0.5%〜10%重量/体積の濃度範囲で存在しうる。本発明はまた、乳タンパク質由来乳化剤と、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸の混合物とを含む健康補助食品も提供する。前記健康補助食品は油の形態でありうる。
【0025】
前記健康補助食品は、酪農乳(dairy milk)を再構成するのに使用できる。酪農乳はスキムミルク又はバターミルクでありうる。再構成乳は、20%(w/v)以下の健康補助食品、例えば10%(w/v)以下の健康補助食品を含みうる。本明細書中に記載の組成物を用いるミルクの再構成は、ミルク中の天然のオリゴ糖、ミルクミネラル及びビタミンのレベルを増強することができる。
【0026】
本発明はさらに、本明細書中に記載の組成物を含む再構成乳も提供する。前記再構成乳はさらにオリゴ糖も含みうる。前記再構成乳はさらにミルクミネラルも含みうる。前記再構成乳はさらにビタミンも含みうる。
【0027】
別の側面において、本発明は、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びオレイン酸から選ばれる少なくとも二つの異なる遊離脂肪酸の非水性混合物を含む消毒スプレーを提供する。前記スプレーはさらに有機溶媒の希釈剤を含みうる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、新鮮な殺菌生クリームから様々な酵素を用いて得られた遊離脂肪酸の収量を示すグラフである。
【図2】図2は、酪酸の削減率(%)を示す水分配のグラフである。
【図3】図3は、洗浄加水分解バター脂の分別蒸留後の脂肪酸含有量を示すグラフである。
【図4】図4は、様々な脂肪酸に2分間暴露された黄色ブドウ球菌の接触生存率を示すグラフである。
【図5】図5は、カプリル酸の割合の増加に伴うパルミチン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸及びカプリン酸の融点降下を示すグラフである。
【図6】図6は、カプリル酸、カプリン酸、又はオレイン酸の濃度の増加に伴うラウリン酸の融点降下を示すグラフである。
【図7】図7は、オレイン酸の濃度の増加に伴うカプリル酸、カプリン酸又はラウリン酸の抗菌効力の低下を示すグラフである。
【図8】図8は、各種遊離脂肪酸エマルジョンに2分間暴露後のカンジダ・アルビカンスの接触生存率を示すグラフである。
【図9】図9は、腸管出血性大腸菌O157(EHEC)に対する牛枝肉用消毒剤としての遊離脂肪酸油の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
市販のリパーゼ酵素を用いてバター脂から遊離脂肪酸の組成物を生成させることは可能である。そのような酵素的加水分解は、酵素処理チーズの製造の基礎となっている。生成する遊離脂肪酸の比率及び組成は、酵素の種類、基質濃度及びその他の生理化学的条件、例えば温度及びpHに依存する。真菌リパーゼ及び食肉処理場で子ウシ、子ヤギ及び子ヒツジの舌下腺から抽出される天然の動物前胃(唾液)リパーゼは、フレーバー生成のためにチーズ産業で日常的に使用されている。特定のフレーバーは、酵素の選択及び短〜中鎖遊離脂肪酸の放出特性に影響される。酪酸(C4)は特に鼻を突く‘チーズ様’臭を有している。カプロン酸(C6)及びカプリル酸(C8)も臭気を発するが、より‘heady’である。一方、他の短鎖揮発性酸(プロピオン酸)も微生物作用を通じて間接的に発生し、これらすべてが地方色豊かなチーズフレーバーの国際的レパートリーに貢献している。
【0030】
短〜中鎖酸(C4〜C12)は、フレーバーにおけるそれらの使用は別にして、特に強力な抗菌効果を有している。しかしながら、この目的のためにそれらを医薬用途に使用することは、水性媒体中でそれらが不溶性であること及びさらに特にそれらが局所用途に望ましくない臭気を有することによって制限されている。唾液リパーゼの加水分解作用による短〜中鎖遊離脂肪酸の早期放出は、潜在的病原菌から新生児の腸を保護する‘母から与えられた’先天性の免疫能力の一部であると認識されている(参考文献1&2)。
【0031】
我々は、酵素加水分解されたバター脂のより多くの臭気含量を、その加水分解脂肪を数容量の水で洗浄又は‘カット’することによって、どのように削減できるかについて記載する。酪酸は水に比較的可溶なので、水性相に分配される。カプリル酸は水溶液に難溶であるが、カプリル酸の一部も同様に水性相に分配される。我々は、酪酸の存在は、酪酸が有機溶媒として作用してカプリル酸の溶解度を増大するので、カプリル酸の分配を可能にすることを見出した。
【0032】
酵素反応は、基質の完全加水分解を達成するように推進することができる。これは、通常、酵素反応の生成物を結合させるか又は反応混合物から生成物を除去するかのいずれかによって行われる。酵素加水分解された脂肪酸混合物の分別蒸留は、より揮発性の短鎖遊離脂肪酸を除去するのに使用でき、及び/又は反応混合物中における胆汁酸又はホエータンパク質アイソレートのような乳化剤の存在は反応生成物を結合する役割を果たし、そうすることによって基質の完全加水分解が可能になる。
【0033】
酵素加水分解による遊離脂肪酸の生成は比較的直接的であるが、加水分解された遊離脂肪酸と加水分解されていない脂質の比率は、高い抗菌効力を達成するのに極めて重要である。混合物中に過剰の非加水分解脂質が存在する場合、その非加水分解脂質は、それらの親油性のために、遊離脂肪酸を捕らえ込む(隔離する)シンクとして作用する。抗菌用途には高い遊離酸の比率を必要とするので、遊離酸の含有量は混合物の総脂質含有量の約35%を上回るべきである。実施例4で、図6及び7を参照しながらさらに詳細に記載されるように、異なる融点を有する遊離脂肪酸を組み合わせると、個々の遊離脂肪酸成分のいずれか一つの融点より低い融点を有する組成物を製造することができる。この融点降下を使用すれば、遊離脂肪酸の抗菌性組成物を形成することができる。なぜならば、個々の遊離脂肪酸はそれらが液体形であるときにのみ抗菌効果を示すからである。低融点を有する個々の遊離脂肪酸は、高融点を有する酸の溶媒として働くので、低融点を有する遊離脂肪酸は抗菌性脂肪酸を隔離するように働くことができ、一定の比率を下回るとそれらを不活性にする。従って、隔離作用を克服するために、抗菌性遊離脂肪酸は組成物の総脂質含有量の少なくとも35%を構成すべきである。
【0034】
遊離脂肪酸は水に不溶性で、このことが抗菌剤としてのそれらの医薬的用途を制限している。我々は、遊離酸の組成物を水性ベースの溶液中で乳化することによって、増大した表面積を有する脂肪球が形成され、その結果増強された抗菌効果が得られることを示した。適切な乳化剤は乳タンパク質、例えば酪農ホエーからの乳清タンパク質又は乳清アポリポタンパク質である。
【0035】
遊離脂肪酸の組成物は市販されており、食品製造におけるフレーバー用の‘バター酸’として販売及び使用されている。バター酸は、米国FDAにより食品用として安全食品認定(GRAS)の認可を得ている。
【0036】
我々は、抗菌効果のために最適化されうるバター酸の製剤について記載する。遊離脂肪酸の組成物は、乳脂質の酵素加水分解によって、又は真空蒸発下での遊離脂肪酸の抽出及び濃縮によって製造できる。市販の遊離酸のブレンドを結集することもできる。遊離脂肪酸のブレンドを結集する場合、臭気の強い酪酸及びカプロン酸は、特に用途が局所的な抗菌目的の場合、除外するのが望ましいであろう。増強された抗菌効果のためには、抗菌性であることが知られている遊離脂肪酸の含有量をブレンド内で増加するのが望ましい。これらは低臭性のカプリル酸、カプリン酸、及びラウリン酸である。我々は、これら三つの脂肪酸(カプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸)の混合物の融点は、組み合わされた個々の融点の産物であること、遊離脂肪酸のブレンドの総体的融点は、混合物内での遊離脂肪酸の比率を変えることによって調整できることを示した。
【0037】
遊離脂肪酸ブレンドの総体的融点は、これらのブレンドの抗菌効力に極めて重要な影響を持つ。カプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸のブレンドで、カプリン酸及びラウリン酸が主要であるブレンドは、カプリル酸が主要である同じ酸の混合物よりも高い融点を有する。そのようなブレンドの抗菌効果は、混合物の融点未満では数桁低下する。反対に、融点より上では数桁増幅する。
【0038】
哺乳動物の体内温度は通常37℃であるが、皮膚温度は18℃〜20℃ほどの低さになりうる。遊離脂肪酸の混合物が皮膚での抗菌効果を提供するために製剤化される場合、該遊離脂肪酸混合物の融点は約18℃未満であるべきである。体内使用の場合、該混合物の融点はもっと高くてもよい(すなわち、該混合物は高比率の高融点酸を含むべきである)が、いずれにしても体内(胃腸)での抗菌効果が必要な場合37℃を超えるべきでない。
【0039】
遊離脂肪酸は苦い‘ペッパー様’のフレーバーを有しており、濃縮形では哺乳動物の組織に対して刺激性がある。遊離脂肪酸の不快な味及び刺激性は、乳化タンパク質の添加によって多少改善されうる。しかし、遊離脂肪酸は酸性のpHを有しているので、カゼインのような酸不溶性タンパク質及びカルシウム塩のようなその他の望ましい賦形剤と適合しない。天然では、脂肪酸はほとんどアルコールエステルの形態で存在する(乳バター脂では三価アルコールのグリセロールのエステルとして)。これらはほとんどいつも、各グリセロールに共有結合された三つの異なる脂肪酸を有する混合エステルである。望ましくない特徴である酸性度、味及び刺激性を取り除くために、混合物中の一部又はすべての遊離脂肪酸をモノ、ジ又はトリグリセリドのエステル形に戻すことが望ましいであろう。
【0040】
グリセロール中での還流蒸留を用い、縮合反応を促進するために硫酸、無水硫酸ナトリウム又はその他の適切な乾燥剤の存在下で、遊離脂肪酸をグリセリドに再エステル化することは可能である。リパーゼ酵素は、グリセリドに対するそれらの加水分解活性のほかに、エステラーゼとしても作用するので、遊離脂肪酸とグリセロールの組合せからグリセリドを合成するのに使用することができる(参考文献5)。形成されるグリセリドの種類及び受けるエステル化の程度は、遊離脂肪酸対グリセロールの化学量論比;反応条件;及び溶媒の選択を変えることによって制御することができる。
【0041】
個々の遊離脂肪酸のモノ、ジ−又はトリグリセリドエステルを構築し、これらを任意の所望比にブレンドすること、又は遊離脂肪酸の所望混合物を起点にして混合トリグリセリドエステルを形成することは可能である。
【0042】
脂肪酸のグリセリドは、遊離脂肪酸に比べてずっと低い抗菌効力しか持たないが、摂取すると、前胃唾液リパーゼ及び腸内の膵リパーゼによって遊離酸に迅速に加水分解される。腸内抗菌効果が望ましい場合、例えば胃腸炎の予防及び/又は治療の場合、短〜中鎖脂肪酸のグリセリドの摂取は、レシピエントを遊離脂肪酸の望ましくない感覚刺激性にさらすことなく、腸管腔に遊離脂肪酸の局所化及び制御された送達をもたらすであろう。
【0043】
我々は、市販のホエータンパク質アイソレート(乳清タンパク質)を用いて、選択された比率の遊離脂肪酸、それらの様々な組合せ及び比率のモノ、ジ−又はトリグリセリドを乳化するためのプロセスを記載する。安定剤、抗酸化剤、微量栄養素、フレーバー及び/又は香料を該エマルジョンと組み合わせて、摂取すると強力な抗菌特性を持つバルク中間体を提供することができる。
【0044】
酪農乳は、ミルクカゼイン及びミルクミネラルの水性製剤中に分散された、乳糖、ラクトースを含んでも含まなくてもよい、調整された遊離脂肪酸及び/又はそれらのモノグリセリドブレンドのホエータンパク質エマルジョンを用いて再構築することができる。ホエータンパク質エマルジョン中の目的に沿って調整された再エステル化遊離脂肪酸及び/又は遊離脂肪酸を用いて、又はスキムミルク又はバターミルク中に油として遊離脂肪酸を分散又は乳化させることによって、酪農乳を再構築することも可能である。そのような製剤は、食品媒介病原菌からの増強されたGI(胃腸)保護を提供するので、相当の商業的価値を有する。
【0045】
一態様において、本発明は、乳脂質中に存在する天然の遊離脂肪酸から選ばれる遊離脂肪酸の組成物に関する。前記組成物は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸から選ばれる二つ以上の遊離脂肪酸の組合せである。乳脂質は、好ましくは、ウシ、ヤギ又はヒツジ種のミルク由来であるが、任意の哺乳動物種由来であってもよい。
【0046】
遊離脂肪酸は、乳脂質の酵素的又は化学的加水分解によって製造でき、部分水素化乳脂質の製剤として使用できる。又は、それらは粗加水分解物から真空下での分別蒸留によって抽出及び精製することもできる。遊離脂肪酸は商業的に入手することもできる。これらの起源は、コーン油、ヤシ油、パーム核油、ココナツキャノーラ油などの植物油の加水分解物に由来することもあるが、いずれにしても天然起源で、商業的にバター酸と言われる乳脂質中に天然に存在する脂肪酸に限られる。
【0047】
遊離脂肪酸の組成物は、ブレンドの総体的融点が好ましくは通常の生理的温度である約37℃未満になるように、及びいずれにしても約45℃を超えないように、組合せ中の酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸の他の遊離脂肪酸に対する比率を高めることによって、増強された抗菌効果のために最適化することができる。
【0048】
抗菌性遊離脂肪酸の組成物は、組成物の臭気発散性を最小化するために、好ましくはカプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸に制限されうる。これに関して、酪酸及びカプロン酸は、粗加水分解物から水性分配、分別蒸留、又は市販ストック中からの除外によって除去されうる。
【0049】
抗菌性遊離脂肪酸の組成物は、そのまま使用しても、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸及び又はリノレン酸又はそれらの誘導体から選ばれる一つ又は複数のその他の天然遊離脂肪酸と組み合わせて使用してもよい。抗菌効果のために結集する場合、抗菌性遊離脂肪酸(C4〜C12遊離脂肪酸)又はそれらの誘導体の組成物は、好ましくは総遊離脂肪酸、遊離脂肪酸誘導体及び/又は非加水分解脂質成分の約80%超を構成すべきである。いずれにしても抗菌性遊離脂肪酸又はそれらの誘導体は、組成物の総脂質又は脂質様物質の含有量の約35%、好ましくは50%、例えば80%を下回るべきでない。
【0050】
更なる態様において、選択された個々の遊離脂肪酸又はそれらの混合物は、酸還流縮合又は酵素的手法のいずれかによってグリセロールでエステル化し、モノ−、ジ−又はトリグリセリドにすることができる。これは、脂肪酸原料の組成及び濃度によって均一グリセリドのことも混合グリセリドのこともある。食品に入れるために抗菌性遊離脂肪酸の組合せを結集する場合、及び遊離酸の酸性度、刺激性及び又は味を低減することが望ましい場合、エステル化は好ましいが必須ではない。
【0051】
遊離脂肪酸のブレンドからの混合トリグリセリドの再構築は、それらの抗菌効果とは別に又は抗菌効果と組み合わせて、医学用途における増強された有用性を有する調整された脂質の再構築を容易にする。主として短〜中鎖脂肪を基にした脂質は、肝門静脈を通って肝臓に直接輸送されるため、ずっと速い代謝エネルギー産生をもたらすであろう。同様に、ミリスチン酸又はパルミチン酸を含有しないような脂肪酸の選択から再構築された脂質は、血清コレステロールが高い傾向の人に、より受け入れられやすいだろう。
【0052】
賦形剤を含む又は含まない抗菌性遊離脂肪酸及び/又はその誘導体の組成物は、食肉処理場における動物屠体上の潜在的病原菌のバイオバーデン(bio-burden)を削減するためのスプレー又は洗浄液として使用できる。同様の理由で収穫したての果物及び野菜にも使用できる。
【0053】
抗菌効果及び又は栄養学的効果のために、加水分解脂質、遊離脂肪酸及び又はそれらの誘導体を乳化してそれらのバイオアベイラビリティを増大させることは、望ましいであろうが必須ではない。適切な乳化剤は、ミルク、乳タンパク質、ミルクカゼイン、乳清タンパク質、乳清アポタンパク質及び乳加工由来のミルクホエーなどである。
【0054】
遊離脂肪酸の製剤は、従来の医薬品、医療機器、化粧品又は食事成分の形態で提供できる。食事成分として使用される場合、高熱量のような栄養学的効果及び又は腸における抗菌効果、又はその両方を達成するように製剤化されうる。
【0055】
一態様において、抗菌性遊離脂肪酸、又はそれらのグリセリド及び/又は乳脂質の粗加水分解物の選択的組成物は、ホエータンパク質中に乳化され、皮膚、髪、及び爪の感染の局所治療及び/又は予防用の、軟膏、ローション、ゲル、クリーム、ペースト又はその他の医薬品の成分として使用される。
【0056】
さらなる態様において、選択的抗菌性遊離脂肪酸のホエータンパク質エマルジョンは、口腔衛生用の練り歯磨き又は洗口液又は義歯接着剤もしくは固定剤の抗菌性成分として、及び虫歯、歯肉炎、歯周炎、鵞口瘡及びアフタ性潰瘍の治療及び/又は予防用の医薬品として使用される。
【0057】
さらなる態様において、抗菌性遊離脂肪酸のホエータンパク質エマルジョンは、ゲル又はペッサリーに配合して酵母菌性膣炎及び非特異的細菌性膣炎などの膣感染症の予防及び/又は治療に、及び類似の形態で淋病、梅毒、クラミジア、ヘルペス及びHIVなどの性感染症の予防のためのバリアとして使用できる。
【0058】
抗菌性遊離脂肪酸のホエータンパク質エマルジョンは、病院及び患者ケア施設における抗生物質耐性菌の二次感染防止のために、石鹸、ハンドゲル及びウェット手拭きの成分として使用できる。また、抗生物質耐性菌の知られている無症候性キャリアの脱コロニー化にも使用できる。
【0059】
遊離脂肪酸の抗菌性組成物は、熱処理されたホエータンパク質及びその他の賦形剤を用いて泡沫として乳化し、感染性下痢症、偽膜性大腸炎及びその他の腸感染症の予防及び/又は治療に適切な浣腸を製造することもできる。
【0060】
本発明は以下の実施例からより明確に理解されるであろう。
【実施例】
【0061】
方法
脂肪酸のガスクロマトグラフ分析
サンプルの脂質成分(遊離脂肪酸を含有する)を、元のサンプル中に存在するあらゆる非脂質物質から抽出した後、ガスクロマトグラフィー(GC)分析にかける。使用される方法はDeJong及びBadings(参考文献6)から適応する。サンプル(0.1〜0.5g)を量り取り、10mlのエタノール、1.0mlの2.5M硫酸、15.0mlの50:50ジエチルエーテル:ヘプタン及び1mlの内部標準(すなわち、吉草酸(C5:0)、マルガリン酸(C7:0)及びウンデカン酸(C11:0)、すべて1mg/mlヘプタン中)を含有する溶液に加えた。該溶液をよく混合し、遠心分離して上清を回収した。脂質を含有する上相をパスツールピペットを用いて1gの無水硫酸ナトリウム(乾燥剤)入りビーカーに移した。
【0062】
500mg、3mlの Strataアミノプロピルカラム(Phenomenex、英国チェシャー州マックルズフィールド)を用いて固相抽出(SPE)を実施した。これらのSPEカラムをまず2×10mlのヘプタンでコンディショニングした後、上記のビーカーからの脂質画分をカラムに加え、真空によって引いた。中性脂質は2×10mlのヘキサン:プロパノール(3:2v/v)のフラッシュを用いて溶出した。次に脂肪酸をSPEカラムから5mlのジエチルエーテル中2%v/vギ酸を用いて溶出した。
【0063】
個々の遊離脂肪酸(C4:0、C6:0、C8:0、C10:0、C12:0、C14:0、C16:0、C18:0、C18:1、C18:2及びC18:3)は、水素炎イオン化検出、Varian 1079 Universal キャピラリーインジェクター、Varian 8410 液体オートサンプラー及びVarian Star オペレーティングソフトウェアを備えたVarian 3800 ガスクロマトグラフ(Varian Analytical Instruments、米国カリフォルニア州ハーバーシティ)を用いてGCによって定量した。使用したカラムは、直接オンカラム注入付きのChrompack WCOT 溶融石英キャピラリーカラムCP FFAP−CB、25m×内径32mm、0.3DF(Varian Analytical Instruments、米国カリフォルニア州ハーバーシティ)であった。インジェクター温度は65℃(0.1分間保持)で、200℃/分で250℃に上げ(1分間保持)、その後200℃/分で65℃に冷却した(20分間保持)。フロー圧は8psiに固定した。オーブン温度は65℃(1.5分間保持)で、その後10℃/分で240℃に加熱した。全運転時間は44分であった。検出器温度は300℃であった。全サンプルとも三重に分析した。
【0064】
抗菌分析
二つの技術を日常的に使用して個々のサンプルの抗菌効果を評価し、効力を比較した。これらは増殖阻害アッセイ、接触生存率アッセイ及び最小阻止濃度(MIC)のためのアッセイであった。いくつかの指標細菌も日常的に使用した。これらは、グラム陽性菌(ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans))、グラム陰性菌(ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium))及び酵母(カンジダ・アルビカンス(Candida albicans))であった。試験細菌をMicroBankの抗凍結剤バイアル(cryoprotectant vial)(Pro−Lab、カナダ・オンタリオ州)中に80℃で保持し、適切な寒天上で培養した後、アッセイに使用するために液体培養物の接種を行った。細菌は、Brain Heart Infusionの寒天及びブロス(英国Oxoid社)上で増殖させ、酵母はYEPD(英国Oxoid社製、1%W/V酵母エキス、1%W/Vペプトン、及び2%W/Vグルコース、必要な場合Bacteriological寒天1.8%W/V)上で増殖させた。
【0065】
接触生存率アッセイ
このアッセイ手順を用いて、遊離脂肪酸及び/又はその誘導体を含有する製剤に所定期間暴露された標準化微生物集団の生存率(生残率)の減少を測定する。前記製剤は、治療的又は栄養的使用のための送達システムを構成しうるその他の活性又は非活性成分を含むことも含まないこともある。
【0066】
手順は、適切な培地中で増殖した後期対数期の細菌又は酵母から調製された接種材料中のコロニー形成単位(CFU)の数を計数し、これを、所定量の試験物質に所定時間暴露された後の同じ接種材料から得られたCFUの数と比較することに基づいている。CFUの計数は、連続希釈及びプレートカウンティングの標準微生物学的手順によって達成される。この手順は、使用予定濃度のゲル、軟膏及びその他の粘稠及び不透明組成物の総体的抗菌効力の直接及び比較測定を可能にする。結果は、通常、接種材料と試験物質間のCFUのログ数の減少として表される。
【0067】
試験細菌又は酵母のストック培養物を寒天斜面及びプレート上に保持する。アッセイの前に、ブロス培養物を適切な液体培地中に調製し、適切な条件下でインキュベートして後期対数期の密度を達成する。培養物は遠心分離によって収穫し、そのものの上清の10分の1の体積に再懸濁して10倍の濃度を達成する。10倍の接種材料を1グラム(又は1ml)の試験物質のサンプルに加え、よく混合し、しばらくの間インキュベートする。この時間は30秒から数分間以上に延長されてもよい。暴露期間の終了時、9mlの適切な(増殖を支持しない)希釈剤を各試験サンプルに加え、よく混合する。その後、1:10の希釈を連続式に行い、各希釈の一部を無菌ペトリ皿に加える。適切な(増殖を支持する)寒天を45℃で加え、これと希釈細胞の一部を振り廻すことによって混合する。固まったら、寒天プレートを適切な条件下で(好気的又は嫌気的)インキュベートし、個々のコロニーが見えたら、30〜300の可視コロニーを示す希釈点でそれらをカウントする。希釈係数を乗じたカウント数が試験又は対照サンプル中の生存細胞数の測定値である。
【0068】
最小阻止濃度(MIC)アッセイ
微生物に対する試験サンプルのMICは、標準の寒天希釈法を用いて実施した。試験法は、米国臨床検査標準委員会(National Committee for Clinical Laboratory Standard,NCCLS)の文献M7−A6−希釈抗菌薬感受性試験法(Methods for Dilution Antimicrobial Susceptibility Tests)に基づく。
【0069】
サンプルを水中で1:2〜1:24に希釈し、さらに抗菌活性を1:20〜1:240の濃度範囲にわたって評価できるように、溶融寒天培地で10倍に希釈した。細菌用に使用された寒天培地は、細菌の良好な増殖に必要な場合5%のヤギ血液を補給されたミュラー・ヒントン(Mueller Hinton)寒天であった。酵母を含む真菌はサブロー(Sabouraud)・デキストロース培地上で増殖させた。微生物は、寒天培地のプレート上、35℃±2℃で、適当な環境条件下、16〜24時間培養された。各培養物の生存性と純度をチェックした後、微生物を0.9%w/v生理食塩水中に、光学濃度が0.5のマクファーランド標準液(McFarland standard)になるように懸濁させた。次に、各微生物の懸濁液を、一連の試験物質希釈液を含有する寒天プレートに、マルチポイントイノキュレーター(multipoint inoculator)を用いて適用した。マルチポイントイノキュレーターは約0.3μLの懸濁液をプレート表面にスポットとして送達する。これは、スポットあたり約10コロニー形成単位に相当する。接種材料の生存性と寒天培地の増殖促進能力を示すための対照として、試験物質を含有していない培地にも微生物を接種した。懸濁液のスポットを層流キャビネット内の寒天プレート内部で乾燥させ、該プレートを逆さにして、各微生物の増殖に適切な、すなわち好気的、微好気的又は嫌気的条件下のインキュベーターに入れた。
【0070】
試験物質を含有していない対照プレート上で増殖が明らかに目視できるようになるまで約24〜48時間インキュベーションした後、プレートをインキュベーターから取り出した。増殖の遅い真菌の毛瘡白癬菌(Trichophyton mentagrophytes)及び紅色白癬菌(Trichophyton rubrum)の場合、プレートを8日間インキュベートした後評価した。インキュベートされたプレートは4℃で保管され、目視検査によって及びMICデータ記録用に構成された専用イメージ分析システムを用いて評価された。
【0071】
接種スポットにおける増殖の有無を記録し、試験された各微生物に対してLactiSALのMICを決定した。抗菌物質のMICは、目に見える微生物増殖を完全に阻止する試験物質の最低濃度と定義される。これは接種スポット領域内の単一コロニー又は薄い曇りは無視して、眼で判断される。
【0072】
実施例
実施例1−バター脂から遊離脂肪酸の脂肪分解的生成
酵素の選択
市販の六つの脂肪分解酵素製剤を本実施例に使用した。Lipomod 187(混合真菌由来);Lipomod 338(ペニシリウム・ロックフォルティ(Penicillium roqueforti));Lipomod 621(カンジダ・シリンドリシア(Candida cylindricia)及びペニシリウム・ロックフォルティ)は、Biocatalysts Ltd(英国カーディフ)から入手した。Lipase AY 30(カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)由来)及びLipase R(黒色アスペルギルス(Aspergillus niger))は、Amano−Enzyme Europe Ltd(英国チッピングノートン)から入手した。子ウシ前胃酵素はRenco(ニュージーランド)から入手した。手順はこれらの特定酵素に限定されず、最適収率を達成するために、その他の酵素、例えば、膵リパーゼのほかプロテアーゼ及びアルファ−アミラーゼも含有するSigma(英国)の粗ブタパンクレアチン、並びにこれらの混合物を使用できる。
【0073】
本実施例では新鮮な殺菌生クリームを基質として使用したが、酵素加水分解による遊離脂肪酸の供給源として、他のバター脂由来物、植物又は動物脂質も使用できる。クリームは50%w/wの乾燥物質を含有し、そのうちの40%はバター脂である。各分解物に添加される酵素の量は、存在するバター脂の濃度との関連で見積もられた。例えば、特定の脂肪分解製剤の1%w/wの投与量は、バター脂含有量の1%、例えば0.4g/100mlクリームであった。
【0074】
加水分解手順
加水分解反応は、100mlのクリームを入れた250mlのエルレンマイヤーフラスコで三重に実施した。本実施例での加水分解温度は45℃に設定されたが、プロセスは適切な収率を与える任意の温度で実施できる。フラスコ及び内容物をその温度にした後、酵素製剤を加えた。フラスコは処理中、150rpmのロータリーインキュベーター(Stuart Scientific)でインキュベートされた。サンプルを指定時間間隔で取り出し(約10ml)、水浴中85℃で10分間熱処理して酵素を不活化した。次にこれらを方法の項で記載したようにGCによる脂肪酸分析にかけた。
【0075】
図1に、各種の酵素により45℃で8時間分解した後の脂肪酸プロフィールのまとめを示す(三つの分解物の平均)。抗菌性遊離脂肪酸は、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸(C:6〜C:12)である。これらの最大収率は、Amano AY、Lipomod 187及びLipomod 621による分解で観察され、最小収率はAmano Rを使用した場合に観察された。
【0076】
実施例2−酵素加水分解されたバター脂からの短〜中鎖遊離脂肪酸の分離及び抗菌評価
水分配
酪酸は、最も臭気が強く、抗菌的観点からすると最も低活性であるが、遊離脂肪酸の中で最も水溶性でもあり、水分配によって分離できる(相分離)。上記実施例1のAmano AYから得られた分解物を用いて、4容量の水を40℃で加え、混合物を激しく撹拌して脂質成分を水中に分散させた後、室温で放置して分離(分配)させた。
【0077】
水相をデカントし、4容量の水で2連続洗浄を実施した。図2に示すように、この方法で分解物から80%の酪酸及び約18%のカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸(C:6〜C:12)が除去された。
【0078】
上記第三の洗浄(図2)からの洗浄バター脂の分別蒸留
分別蒸留の方法は当業者には周知である。その手順は、遊離脂肪酸などの揮発性物質の粗混合物を加熱することを含む。前記混合物は、その他の脂肪、油及び又は脂質、及び/又は水、有機溶媒などのその他の流体及び固体を含むことも含まないこともある。最も低い沸点を有する成分が混合物から最初に蒸発し、混合物の温度が上昇するに従って順に各高沸点の蒸発が続く。蒸発した揮発性物質は冷却コイル上で凝縮され、適切な受け器に回収される。加熱及び冷却の閉鎖系に対して真空ポンプを用いて最も適切に達成される様式で加熱混合物への圧力を減じることにより、すべての成分の沸点は一定量低下する。その量は、大気圧における沸点、真空の程度(トルートンの等式)及び共沸混合物として知られる揮発性物質とその他の溶媒との間の会合の程度による。高機能システムでは、蒸発カラムの最頂部の温度がモニターされており、必要成分が蒸発及び凝縮するときに凝縮物の回収が開始できるようになっている。
【0079】
遊離脂肪酸を蒸留するための適切な装置は、スイスのBuchiから入手でき、Kjeldahl K−355水蒸気蒸留を含む。これは基本的に、揮発性物質の粗組成物を生蒸気でパージし、これを凝縮して揮発性の遊離脂肪酸と水の混合物を得るという方法である。脂肪酸は水中で不溶性なので、冷却され分離されたら混合物からデカントによって回収できる。
【0080】
Buchiの、バキュームコントローラーV−855を備えたRotavapor R−210のようなロータリーエバポレーターを用いると、蒸留に対してさらに大きい制御が達成できる。ロータリーエバポレーターは、回転する丸底フラスコ内の粗混合物を水浴中で一定温度に保つことができ、一方、閉鎖系に対して引かれる真空は低〜中真空、すなわち3,000〜0.1パスカル(大気圧は1バール/100,000パスカル)に調整することができる。圧力が減少すると、各成分の沸点が低下し、共沸混合物が形成されなければ、それらは順次蒸発する。共沸混合物の形成は他の溶媒の添加によって防止できる。
【0081】
洗浄バター脂の分別蒸留の例を図3に示す。
留出物中、酪酸は全体の9.8%で、洗浄バター脂の元の4.5%から増加した。抗菌グループ(C:6〜C:12)は全留出物の81%で、洗浄濃縮物の32%から増加したが、長鎖脂肪酸(C:14〜C:18.1)は、91%から8.5%に減少した。総体的濃度に関しては、洗浄濃縮物中の抗菌グループは、元の99%で本質的に未変化であったが、残留物(retentate)は26%(−3.8倍)及び留出物は251%(+2.5倍)であった。
【0082】
留出物中の遊離脂肪酸(C:4〜C:12)の組成は:
酪酸 9.8%
カプロン酸 5%
カプリル酸 10%
カプリン酸 24%
ラウリン酸 38%
であった。
【0083】
抗菌評価
前記の最小阻止濃度(MIC)法を用いて、濃縮物、洗浄濃縮物、残留物及び留出物の相対的抗菌効力を比較した。実際的には、留出物を溶融寒天と混合するのは、遊離脂肪酸が水に不溶性であるために困難であることが分かった。界面活性剤を使用して可溶性を促進することはほとんど無益であった。なぜならば、界面活性剤は遊離脂肪酸の抗菌効果を不活性化することが分かったからである。そこで、濃縮脂肪酸を溶融寒天に、寒天の凝固点のすぐ上の温度で激しく撹拌することによって分散させることが必要であった。抗菌効力は、抗菌グループの濃度に直接相関していることが予想されたが、驚くべきことにそうではなかった。
【0084】
【表2】

【0085】
表3に示されているように、留出物は元の濃縮物より2.5倍以上濃縮されているにもかかわらず、1.3倍強力なだけであった。更なる評価によれば、元の濃縮物における乳清タンパク質の存在に関して説明のつかない差が示唆された。すなわち、これらは洗浄濃縮物へは部分的に持ち越されるが、留出物には存在しないのである。更なる研究で、遊離脂肪酸と元の生クリームのその他の脂質又は非脂質巨大分子との間に何らかの形態の相乗効果があることが明らかとなった。これについては以下の実施例で示す。
【0086】
実施例3−抗菌性遊離脂肪酸と生クリームの脂質又は非脂質成分との組合せ
生クリームの非脂質成分は、乳清タンパク質、リポタンパク質、プロテオグリカン、オリゴ糖及び乳脂肪球膜の成分などである。遊離脂肪酸の濃縮物を乳清タンパク質の組成物(ホエー)で乳化することは比較的容易であること、及び以下に示すように、これらはかなり増幅された抗菌効果をもたらすことが分かった。説明によって縛られたくはないが、乳清成分は遊離脂肪酸の抗菌効果を次の理由で促進できるようである。その理由とは、乳清成分の一部は両親媒性なので、不溶性の脂肪酸を非常に増大した表面積を有する液滴で分散させることを容易にする、又はそれらは脂肪酸と抗菌細胞表面との間に架橋作用を有する、のいずれか又は両方である。
【0087】
精製乳清の適切な供給源は精製ホエータンパク質アイソレート(WPI)‘Provon 190’で、Glanbia PLC(アイルランド・キルケニー)から市販されている。
【0088】
乳化法1
脱イオン水中WPIの20%W/V分散物を一定の撹拌下で4〜6時間水和させる。ある量のポリソルベート(Tween 20)、最も適切には0.2%W/V、を加え、10分後、10%V/Vの適切な塩、又は溶媒又はその他の浸透剤を一定の撹拌下でゆっくり加える。適切な浸透剤は、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム、リン酸ナトリウム、エタノール、メタノール、グリセリン又はラクトースでありうる。ポリソルベートは表面張力を下げるのに必要で、浸透剤はWPI溶液のオスモル濃度を上げ、それをその溶解限度に近づけるために必要である。30分後、実施例2の留出物中に得られたような遊離脂肪酸の30%V/V組成物を、高速ホモジナイザーによって作り出された渦流中に1滴ずつ加える。適切なホモジナイザーは、Ultra−Turax Model T18(IKA Works,Wilmington,NC 28405,USA)であり、S18N−19G分散ツールを備え、6,000〜8,000RPMで運転される。手順は周囲温度(18℃〜22℃)で実施され、生成物は生クリームのそれに近似した稠度を有する白色エマルジョンである。
【0089】
乳化法2
上で乳化法1として記載された方法は、周囲温度で液体の脂肪酸の組成物には最も適切である。周囲温度より高い融点を有する個別の脂肪酸又は組合せ(C:8より大きい飽和脂肪)のエマルジョンの製造が必要な場合、乳化プロセスは、個別の又は組み合わせた融点より高い温度で実施されなくてはならない。カプリン酸及びラウリン酸はそれぞれ31.4℃及び44℃の融点を有し、これらは46℃で全成分と乳化される。WPIの20%W/V懸濁液は50℃を超える温度で変性し始めるので、この方法ではWPIの濃度を10%W/Vに下げる。
【0090】
脱イオン水中Provon 190の10%W/V懸濁液を周囲温度で一定の撹拌下、4〜6時間水和させる。方法1とは異なり、表面張力又はオスモル濃度の変更は必要ない。溶液を46℃で平衡化する。10%W/V(最終体積)のラウリン酸をそれが液化する46℃で平衡化する。方法1に記載のUltra Turaxのような適切なホモジナイザーを用いて、ホエータンパク質溶液に渦流を発生させ、ある体積の溶融ラウリン酸をこの渦流に迅速に一度に加える。ラウリン酸の添加後すぐに、ホエータンパク質とラウリン酸の合計体積に等しい体積の砕氷を加え、ホモジナイズして全液体を8℃未満に冷やす。生成物は生クリームのそれに近似した稠度を有する白色エマルジョンである。
【0091】
上記の方法1を用いた実施例2の留出物からの遊離脂肪酸の乳化組成物は、そのままの遊離酸の約半分のMIC(効力2倍)を有していた。このエマルジョンは30重量%の遊離酸を含有しているので、MICアッセイの用量は、遊離酸と試験手順による乳化酸が等用量になるように、それに応じて調整されなければならない。
【0092】
30mg/mlのMICを有するそのままの留出物と比べて、乳化留出物の観察されたMICは15mg/mlであった。これは4.5mg/mlの遊離酸用量と等価なので、3.3倍して調整されなければならない。すなわち留出物の6.6倍の効力を有することになる。
【0093】
実施例4−抗菌効力に影響を及ぼす遊離脂肪酸の組成物の物理的性質
実施例3に記載の乳化手順を用いて遊離脂肪酸の様々な組成物の抗菌特性を評価したところ、さらに三つの予期せぬ特徴が明らかになった。すなわち、
A)遊離脂肪酸の乳化組成物は、それらの合同融点未満の温度ではほとんど又は全く抗菌効力を持たない。例えば、カプリン酸のエマルジョンは31.4℃未満では抗菌効果を持たないが、それより高い温度、例えば生理的正常温度の37℃では顕著な効果を持つ。
【0094】
B)総体的比率によって、遊離脂肪酸の組成物は、最低融点を有する成分の融点よりも低い合同融点を有することがある。組成物の融点を降下する明らかな溶媒効果がある。
C)遊離脂肪酸の組成物がかなりの割合の非抗菌性遊離酸又は非加水分解脂質を含む場合、明らかな隔離効果がある。抗菌性脂肪酸の親油性のために、それらは残留脂質又は非抗菌性遊離酸に優先的に溶解される。それによって抗菌効果は重度に低減されるか又は失われる。
【0095】
実施例2に記載の分別蒸留によって個々の抗菌性遊離脂肪酸を精製することは技術的に実行可能であるが、これらを市販のストックから‘バター酸’ブレンドの成分として得る方が好都合である。天然遊離脂肪酸の適切な供給元はAdvanced Biotech Inc.(米国ニュージャージー州)である。
【0096】
上記の乳化法2を用いて、天然のカプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸の別々のエマルジョンを製造した。実施例2の留出物のエマルジョンも方法2によって製造して、比較目的のために以下のアッセイで使用した。これらの‘個別’エマルジョン(及び留出物)はすべて46℃で製造され、5%W/Vの個別酸を含有していた。これに対し、方法1によって製造されたエマルジョンは30%W/Vを含有していた。
【0097】
接触生存率アッセイ法を用いて、各エマルジョンの水中2%W/V懸濁液の抗菌効力を18℃、35℃及び46℃で評価した。アッセイはガラス管の中で実施され、全試験成分は、接種前及び懸濁期間中(2分間)、水浴中で試験温度に平衡化された。接種材料は、Brain Heart Infusion Broth中で増殖された黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の18時間培養物である。CFUの減少を図4に示す。
【0098】
図4には、18℃から35℃を通って46℃までのアッセイ温度の変化は、CFU(N=3)がログ8である接種材料の生存性に何の顕著な影響も与えなかったことが示されている。カプリル酸(MP=16.7℃)のエマルジョンは試験した全温度で3ログの低下を示したが、カプリン酸及びラウリン酸は18℃では何の影響も及ぼさず、カプリン酸は35℃及び46℃で3ログの低下を示し、ラウリン酸は46℃でのみ有効であった。留出物は16℃の融点を有しており、18℃で2ログの低下、35℃で3ログの低下、及び46℃で4ログの低下を示した。結果は、脂肪酸は、それらの融点未満では、あったとしてもごくわずかな抗菌効果しか持たないことを示している。
【0099】
脂肪酸の組合せと融点の降下
異なる融点の個々の脂肪酸を様々な比率で組み合わせることにより、組合せの融点に対する個々の成分の相対効果の実態を構築することが可能である。融点測定用の様々な市販装置があるが、これらの値は、50マイクロリットルの体積の溶融組合せを96穴マイクロタイタープレート(Nunc Nalgene)のウェルに入れることによって測定することもできる。プレートを最も低い公知成分の融点未満に冷やし(ここでは全ウェルが固体)、該プレートを氷水浴(4℃)に浮かべて、サーモスタット制御のヒーターの助けを借りて徐々に温める。加熱速度は1℃/分以上にならないようにすべきである。注意深く観察することにより、ウェルが液体になる点は、不透明から透明に変化するために明白である。
【0100】
図5に、カプリル酸(MP=16.7℃)の比率(W/W)の増加が、パルミチン酸(63.5℃)、ミリスチン酸(58.5℃)及びラウリン酸(44℃)の融点に及ぼす影響を示す。
【0101】
関係は、一方の純粋な高融点実体と他方の純粋な低融点実体との間で直線になるであろうと予想された。驚くべきことに、関係は直線ではなく、さらに予期せぬ効果がある。これは、比較的近い融点を有する二つの脂肪酸で最も容易に実証される。この場合、カプリン酸とカプリル酸である。
【0102】
低融点のカプリル酸の比率が50%から60%を通って70%に増加するに従って、組合せの融点は純カプリル酸の融点未満に下がる。正確な値は、
カプリン酸50%:カプリル酸50% 15℃
カプリン酸40%:カプリル酸60% 14℃
カプリン酸30%:カプリル酸70% 12℃
カプリン酸20%:カプリル酸80% 14℃
カプリン酸0%:カプリル酸100% 16℃
である。
【0103】
同様の効果が、ラウリン酸とカプリン酸の間の関係、及びカプリン酸:ラウリン酸が50:50混合物でカプリル酸の濃度が増加する間の関係においても明白である。これら二つは図6に示されている。ラウリン酸とカプリン酸の50:50混合物は26℃の融点を有する。これはカプリン酸の融点31.4℃よりほぼ5℃低い。カプリン酸の比率が60%、70%及び80%に増大すると、融点は27、29及び30℃に上昇する(カプリン酸の融点より4、2及び1℃低い)。
【0104】
混合物の複雑さが2個から3個の脂肪酸に増加した場合も類似の融点降下が検出可能である。図6に、ラウリン酸とカプリン酸が50:50混合物(融点26℃)でカプリル酸の濃度が増加する場合の関係が示されている。最も低い融点12℃は、50%のカプリル酸と50%のラウリン酸:カプリン酸(すなわちラウリン酸25%、カプリン酸25%)の濃度で検出できる。同じ値が60%のカプリル酸でも存在し、70%及び80%のカプリル酸では15℃に、100%のカプリル酸では16.7℃に上昇する。
【0105】
図6は、ラウリン酸及びカプリン酸の希釈剤としてのオレイン酸の使用も示している。オレイン酸は4℃の融点を有するC18:1不飽和脂肪酸で、ラウリン酸及びカプリン酸の融点に対して顕著な効果を有するであろうことが予想された。この組合せでは最低融点の降下は明らかでなかったが、オレイン酸の濃度が50%より高くなると、カプリン酸の融点に対して顕著な急激な効果がある。
【0106】
しかしながら、抗菌性脂肪酸の組合せにおける希釈剤としてのオレイン酸の価値は限定的である。なぜならば、オレイン酸はそれ自体で有意の抗菌効果を持たない上に、他の抗菌性脂肪酸をその中に隔離できる脂質の‘シンク’として作用するからである。
【0107】
図7に、カプリル酸:オレイン酸、カプリン酸:オレイン酸及びラウリン酸:オレイン酸でオレイン酸の濃度が変動するエマルジョンの抗菌効果を示す。エマルジョンは実施例3の方法2によって製造された。2分間の接触生存率アッセイ手順を用いて、各エマルジョンの水中2%W/Vの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対する効力を評価した。試験は45℃で実施した。結果は、三つの遊離脂肪酸(カプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸)のそれぞれの効力は、オレイン酸の濃度が60%W/Vを超えると、ひどく低下したことを示している。
【0108】
実施例5−遊離脂肪酸、又はそのグリセリド、又はその両方のエマルジョンの抗菌性製剤
前の実施例で示したように、乳脂質(トリグリセリド)中の脂肪酸を分解し、そして望ましくない成分を選択的に除去又は除外するためにこれらを分別することは可能である。特に、酪酸は酵素加水分解画分から分離されうる。又は、個々の遊離脂肪酸をバター酸の市販ストックから選択し、様々な比率で一緒にブレンドすることもできる。このことは、硬度(融点)、臭気(酪酸及びカプロン酸の低減)、フレーバー(低酪酸の維持)及び抗菌効果(C:6〜C:12の比率>50%)といった様々な物理的及び化学的性質の操作を容易にする。
【0109】
また、個々の遊離脂肪酸の選択的ブレンドはホエータンパク質で乳化できることも前の実施例で示した。これらのエマルジョンは、主要乳タンパク質のカゼイン及びミルクミネラルの組成物を用いて酪農乳を再構築するのに使用することもできる。その場合、自由選択として、ラクトースを含めてもよいし又はそれを他のオリゴ糖、例えばポリオール又は長鎖多糖類(可溶性繊維)、又は代謝的に不活性な巨大分子、例えばポリエチレングリコール又はこれらの組合せと置換してもよく、ビタミン及び/又は抗酸化剤で強化することもしないこともある。あるいは、より単純に、それらは、スキムミルクを再構成するのに使用することもできる。
【0110】
もともと遊離脂肪酸は酸性のpHを有しているが、主要乳タンパク質であるカゼインは酸に不溶性のタンパク質として特徴付けられ、pH4.5未満で容易に沈殿する。遊離脂肪酸の組成物をカゼインの溶液に直接加えると、すぐに凝固する(凝乳になる)。従って、これら二つは不適合であると仮定するのは理にかなっている。実際、遊離脂肪酸をホエータンパク質中で乳化させると、それらは効果的にコンパートメント化され、それらの酸性pH効果が最小限に抑えられる。その結果、実施例3の方法1によって製造された濃縮エマルジョンの20%W/Vまでの量であれば、カゼイン成分に何の悪影響もなしにスキムミルクに加えることができる。
【0111】
表4に、通常の酪農乳中の脂肪酸及びそれらの比率のリストと、増幅された抗菌効果を有し、ラウリン酸及びステアリン酸の含有量を増加させ、オレイン酸をわずかに減少させたおかげで通常の組成物に近い物理的特徴(硬度)も有する市販ストック由来の選択天然遊離脂肪酸の比率の一例とを示す。
【0112】
表4にリストされているような脂肪酸の組成物は、再構成乳に刺激的な味又は苦味を付与する。必要であれば、これは、これらの遊離酸を、Yangら(参考文献5)によって適切に記載された酵素的再エステル化法を用いて、モノ、ジ又はトリ−グリセリドに変換することによって改善することができる。アシルエステラーゼ酵素はリパーゼとしても作用するので、再エステル化の程度は脂肪酸とグリセロールの化学量論比に依存すること、また、混合グリセリドのタイプは、いずれの脂肪酸混合物でもモル比の特徴であり、重量パーセント比ではないことに注意すべきである。
【0113】
【表3】

【0114】
再構成された抗菌性スキムミルク
オスモル濃度の調整に塩化ナトリウムを用い、実施例3の方法1によってホエータンパク質中のエマルジョンとして製造された場合、表4のカラム4の改正された遊離脂肪酸組成物は、元の乳脂の代わりにスキムミルクに加え、増強された抗菌効果を有する乳製品を達成することができる。
【0115】
Marvelという商標名の市販粉末スキムミルクは、Premier International Foods(UK)Ltd(英国リンカーンシャー州スポールディング)から入手できる。これを用いて、乳化遊離脂肪酸と、酸不溶性カゼインを含む他の乳成分との適合性を示すことができる。
【0116】
【表4】

【0117】
実施例6−遊離脂肪酸又はグリセリド又はその両方の抗菌性エマルジョン
実施例4での詳細な検討に基づき、遊離脂肪酸の組成物は、市販ストックから構築でき、これらの比率は抗菌効果のために最適化できる。適切な抗菌性組成物の例を表5に示す。これは、10℃の融点と、3:1の抗菌性脂肪酸対非抗菌性酸の比率を有する。
【0118】
【表5】

【0119】
実施例3の方法1によってホエータンパク質で乳化した場合、該エマルジョンは、新鮮な生クリームに近似した硬度と、4.2〜4.8のpHを有する。方法の項に記載したMIC技術を用いると、該エマルジョンは、グラム陰性及び陽性菌、酵母及び真菌を含む広範囲の微生物種に対して強力な抗菌効果を提示することを示すことができる。このデータを表6に示す。抗生物質耐性黄色ブドウ球菌MRSAを含め、ほとんどの微生物種は1:240(0.4%W/V)希釈液に感受性を有する。最大耐性種は、1:60(1.6%W/V)のシュードモナス(Pseudomonas)及び1:100(1%W/V)の大腸菌(E.coli)である。従って、0.5%W/V〜10%W/V(これらの数値を含む)のエマルジョンを含有する抗菌性製剤は、望ましい抗菌効果を提供し、病原体、及び個人の正常免疫能力が何らかの理由で衰弱している場合には病原性となりうる又は病原性ではないが美容上の理由から望ましくないヒト及び動物組織の日和見コロナイザーに対して治療的及び予防的様式の両方で使用できる。
【0120】
【表6】

【0121】
乳化遊離脂肪酸に基づく抗菌性製剤
本実施例に記載の抗菌性エマルジョンは、濃縮形又は水性製剤中0.5%W/V〜10%W/Vの希釈液で使用できる。前記製剤は、賦形剤、湿潤剤、軟化剤、酸度調節剤、抗酸化剤、保存剤、香料及び/又は一緒に用いると増強効果を有するその他の抗菌物質、例えば消毒剤、防腐剤、抗生物質、抗真菌剤、抗原虫剤及び抗ウィルス剤を含むことも含まないこともある。
【0122】
抗菌性エマルジョンは、実施例3に記載したタイプのホモジナイザーの助けを借りて水性媒体中に分散されるべきである。分散されると、エマルジョンは時間経過とともに沈降する傾向にあるが、これはゲルを使用して媒体の粘度を増大することによって防止することができる。医薬製剤又は化粧剤に通常使用されている多くの従来型ポリマーがあり、これらは当業者には周知である。誘導体化セルロースポリマーが通常使用されており、これらは、米国The Dow Chemical Companyから入手できるカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピル及びヒドロキシエチルセルロースなどのメチル、エチル及びプロピル誘導体などであるが、これらに限定されない。一部の従来型賦形剤は遊離脂肪酸のエマルジョンと適合性がない。これらは、脂肪、脂質及び遊離脂肪酸に拮抗するほとんどの界面活性剤などである。脂肪酸の抗菌効果に最適なpHは4.5〜5.0の領域で、これは、たとえ正常の生理的pHが7.0の領域にある場合でも、0.01M〜0.1Mのクエン酸ナトリウムのような緩衝液を含めることにより、製剤の使用時に一時的に維持することができる。
【0123】
抗生物質を含む多数の従来型抗菌剤の効力及び効能は、主として標的微生物種によるこれらの化合物に対する耐性(又は部分耐性)発現のために、使用していると徐々に損なわれていく。これに関しては、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin Resistant Staphylococcus aureus(MRSA))、バンコマイシン耐性腸球菌(Vancomycin Resistant Enterococcus faecalis(VREF))及び多くのその他の院内感染の出現を含む多数の例があり、現代の医療業務における問題の主因となっている。
【0124】
その標的種に対して部分阻害効果を有する抗菌剤の例は、酵母のカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)の感染の治療に通常使用されるアゾール化合物のクロトリマゾールである。クロトリマゾールの一つの店頭販売(OTC)製剤は、Bayer AG(ドイツ)社製のCanestanで、1%〜2%W/Vの抗真菌剤が配合されている。方法の項に記載されている接触生存率法を用いて、カンジダ・アルビカンスの新鮮な臨床分離株に対する1%Canestanクリームの抗菌効果を評価した。図8に、前記製剤は2分間にわたって生存率を1ログのオーダーで減少させ、遊離脂肪酸エマルジョンの1%水性分散物は生存率をそれ自体で3ログ減少させたが、0.2%W/V遊離脂肪酸エマルジョンをCanestanに添加すると、抗真菌効力を1から3ログに増大する影響を及ぼし、0.2%W/Vのエマルジョンはそれ自体で生存率を1ログ弱減少させることが示されている。
【0125】
遊離脂肪酸エマルジョンの単純なゲル製剤は、3%W/Vのカルボキシメチルセルロースポリマーを用い、これをまず5%W/VグリセリンBPで粉砕して構築することができる。84ml(体積%)の0.1モルクエン酸ナトリウム(pH4.5)を45℃に加熱し、これに5%W/Vのポリエチレングリコール900を溶解する。これに1%W/Vフェノキシエタノールを加え、ホモジナイズすることによって分散させ、その後2%W/Vの遊離脂肪酸エマルジョンを加え、またホモジナイズして分散させる。次に、ポリエチレングリコール、フェノキシエタノール及び遊離脂肪酸エマルジョンの懸濁液を、グリセリン中の粉砕カルボキシメチルセルロースに加え、よく撹拌して分散させる。ゲルは完全に水和するのにおよそ60分を必要とする。
【0126】
類似の方法を使用し、賦形剤の適合性に十分な配慮がなされるならば、遊離脂肪酸エマルジョンを配合した多様な医薬品が構築できる。例えば、ゲル、クリーム、ペースト、軟膏、ローション、泡沫、スプレー、坐剤、ペッサリー及び創傷包帯などであるが、これらに限定されない。これらは、皮膚、粘膜、眼、耳、鼻、口腔、歯、胃腸及び膣のヘルスケアにおける用途を有する。
【0127】
実施例7−遊離脂肪酸の非乳化組成物の抗菌用途
遊離脂肪酸のエマルジョンを栄養及びヘルスケア用途に使用することにはいくつかの望ましい理由があるが、濃縮形又は有機酸を含む有機溶媒中に希釈された非乳化油は、表面消毒、特に食品加工におけるバイオバーデンの削減に特定の用途を有する。一部の例外は、例えば帯状疱疹における緊急介入で、濃縮形の遊離脂肪酸は、一般的に日常のヘルスケア使用には攻撃的すぎる。
【0128】
食品加工において、特に食用動物が解体される食肉処理場では、腸内容物による新鮮屠体の汚染の可能性が大きい。そのような糞便は、しばしばサルモネラ種(Salmonella species)及び腸管出血性大腸菌(Enterohemorrhagic E.coli)O157(EHEC)によって汚染されている。そのような食品媒介病原菌は、商業的な食品加工においても家庭の台所においても大きな危険源である。EHECは5歳未満の小児では命に関わる可能性がある。遊離脂肪酸の抗菌性組成物は屠体処理における使用に特に適している。なぜならば、該組成物は本質的に食品グレードの‘バター酸’であり、解体したての及び精肉された牛肉、ブタ、ラム及び家禽、狩猟の獲物及び魚の表面全体にスプレーとして適用できるからである。
【0129】
表5に示された遊離脂肪酸組成物は油なので、新鮮な肉又は食品加工表面にスプレーして強力な消毒を達成することができる。同じ油は、オレイン酸及びラウリン酸の比率を比例的に(低融点を維持するために)削減することによって、その抗菌効果を増強するために有効にに変更されてもよい。同じく、該油は、抗菌効力を著しく喪失することなしに、濃乳酸又は他の有機酸で50%まで希釈することもできる。
【0130】
牛枝肉の洗浄試験で、後期対数期の大腸菌O157:H7(EHEC)培養物を感染させた新鮮牛肉の部分に遊離脂肪酸の油をスプレーした。細菌を牛肉の部分に30分間接着させた後、スプレーを全試験部分に適用した。対照は蒸留水のみでスプレーした。60分後、処理された牛肉の部分を浸軟し(macerated)、残留細菌について評価した。
【0131】
図9に、大腸菌O157:H7を用いた四つの別個の試験を図示する。水洗対照中の残留大腸菌は、1時間後、1平方インチあたり最大8ログの生存細胞数であった。処理部分は、浸軟から取り出した後、連続希釈及びプレートカウンティングで、生存細胞に4〜5(99.99%)ログの減少を示した。同様の結果が、サルモネラ種を含むその他の細菌についても得られた。
【0132】
本発明は、本明細書の上文に記載された態様に限定されず、構成及び詳細において変動しうる。
【0133】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酪酸(C4);カプロン酸(C6);カプリル酸(C8);カプリン酸(C10);ラウリン酸(C12);ミリスチン酸(C14);パルミチン酸(C16);パルミトレイン酸(C16:1);ステアリン酸(C18);オレイン酸(C18:1);リノール酸(C18:2);リノレン酸(C18:3);及びそれらのエステル化誘導体から選ばれる乳清脂質から誘導可能な二つ以上の天然遊離脂肪酸のブレンド、及び前記遊離脂肪酸の乳化剤としての乳タンパク質を含む抗菌性組成物であって、全脂質含有量の少なくとも35%は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸の一つ又は複数から選ばれる遊離脂肪酸で構成される、抗菌性組成物。
【請求項2】
全脂質含有量の少なくとも50%が、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸の一つ又は複数から選ばれる遊離脂肪酸で構成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ブレンドが、カプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸の混合物を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記遊離脂肪酸のブレンドの融点が、個々の遊離脂肪酸のいずれか一つの最も高い融点未満である、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記ブレンドの融点が45℃未満である、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記ブレンドの融点が37℃未満である、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記ブレンドの融点が18℃未満である、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
カプリル酸:カプリン酸:ラウリン酸の比率が、約40:30:30である、請求項3〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも一部の遊離脂肪酸がエステル化されている、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
エステル化された遊離脂肪酸が、モノ−及び/又はジ−及び/又はトリ−グリセリド形である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
遊離脂肪酸:エステル化グリセリドの比率が約50:50である、請求項9又は10に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が水分散性である、請求項1〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記乳化剤が乳清タンパク質である、請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
前記乳化剤がアポリポタンパク質である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記乳化剤がカゼインである、請求項1〜13のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
前記乳化剤が約5〜45重量%の濃度範囲で存在する、請求項1〜15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物のpHが約4.5〜5.0である、請求項1〜16のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載の組成物及び担体を含む医薬製剤。
【請求項19】
前記組成物が約0.5%〜10%(w/v)の濃度範囲で存在する、請求項18に記載の医薬製剤。
【請求項20】
溶液、石鹸、ゲル、ペースト、軟膏、泡沫、スプレー、粉末、ペッサリー、包帯、錠剤又は食品の形態の請求項18又は19に記載の製剤。
【請求項21】
カンジダ・アルビカンス感染の予防又は治療のための、請求項18〜20のいずれかに記載の製剤の使用。
【請求項22】
前記製剤が、膣内クリーム又はゲル又はペッサリーの形態である、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
非特異的細菌性膣炎の予防又は治療のための、請求項18〜20のいずれかに記載の製剤の使用。
【請求項24】
前記製剤が、膣内クリーム又はゲル又はペッサリーの形態である、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
皮膚感染の予防又は治療のための、請求項18〜20のいずれかに記載の製剤の使用。
【請求項26】
前記製剤が局所適用に適切な形態である、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
火傷の治療のための、請求項18〜20のいずれかに記載の製剤の使用。
【請求項28】
前記製剤が局所適用に適切な形態である、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
感染の予防又は治療のための、請求項18〜20のいずれかに記載の製剤の使用。
【請求項30】
前記製剤が外科用包帯の形態である、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
眼、鼻、口、腸又は性器への粘膜適用のための医薬品の形態の、請求項18〜20のいずれかに記載の製剤の使用。
【請求項32】
性感染症の予防又は治療のための、請求項26に記載の使用。
【請求項33】
前記性感染症が、淋病、梅毒、クラミジア、ヘルペス及びHIVの一つ又は複数である、請求項27に記載の使用。
【請求項34】
胃腸感染の予防又は治療のための、請求項18〜20のいずれかに記載の使用。
【請求項35】
前記製剤が食品又は飲料の形態である、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
口腔疾患の予防又は治療のための、請求項18〜20のいずれかに記載の使用。
【請求項37】
前記製剤が、練り歯磨き、チューインガム、洗口液又はその他の歯磨剤から選ばれる口腔ヘルスケア用製剤の形態である、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
請求項1〜17のいずれかに記載の組成物を含む健康補助食品。
【請求項39】
前記組成物が約0.5%〜10%(w/v)の濃度範囲で存在する、請求項38に記載の健康補助食品。
【請求項40】
乳タンパク質由来乳化剤と、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸の混合物とを含む健康補助食品。
【請求項41】
前記健康補助食品が油の形態である、請求項38〜40のいずれかに記載の健康補助食品。
【請求項42】
酪農乳を再構成するための、請求項38〜41のいずれかに記載の健康補助食品の使用。
【請求項43】
前記酪農乳がスキムミルク又はバターミルクである、請求項42に記載の使用。
【請求項44】
前記再構成乳が20%(w/v)以下の前記健康補助食品を含む、請求項42又は43に記載の使用。
【請求項45】
前記再構成乳が10%(w/v)以下の前記健康補助食品を含む、請求項42〜44のいずれかに記載の使用。
【請求項46】
再構成が、ミルク中の天然のオリゴ糖、ミルクミネラル及びビタミンのレベルを増強する、請求項42〜44のいずれかに記載の使用。
【請求項47】
請求項1〜17のいずれかに記載の組成物を含む再構成乳。
【請求項48】
さらにオリゴ糖を含む、請求項47に記載の再構成乳。
【請求項49】
さらにミルクミネラルを含む、請求項47又は48に記載の再構成乳。
【請求項50】
さらにビタミンを含む、請求項47〜49のいずれかに記載の再構成乳。
【請求項51】
カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びオレイン酸から選ばれる少なくとも二つの異なる遊離脂肪酸の非水性混合物を含む消毒スプレー。
【請求項52】
さらに有機溶媒の希釈剤を含む、請求項51に記載のスプレー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−505415(P2011−505415A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536584(P2010−536584)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際出願番号】PCT/IE2008/000118
【国際公開番号】WO2009/072097
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(510156848)ウエストゲート・バイオロジカル・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】