説明

運動動機付けシステム及びそのためのプログラム

【課題】 歩くあるいは走るといった身体運動について明確な動機付けを与える運動動機付けシステム及びそのためのプログラムを提供する。
【解決手段】 使用者が、表示部28の画面に表示された地図を見ながら、操作部30により所望の位置を指定すると、クイズデータ処理部22がこの位置に関連したクイズを表示部28に表示し、使用者は移動端末を携帯して自分で指定した位置まで出かけ、クイズの解答を探索する。位置情報取得部10は、使用者が携帯した移動端末の位置情報を取得し、上記指定した位置の近傍領域に移動端末が進入したと進入判定部14が判定すると、クイズデータ処理部22がクイズの解答を表示可能な状態に設定し、使用者は解答を表示部28で確認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者に歩行等の運動の動機付けを行い、健康の維持増進に資する運動動機付けシステム及びそのためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、散歩等により歩くことが人の健康の維持増進にとって有意義であることが強く認識されている。特に、高齢者の健康の維持増進のためには、積極的に外出し、行動範囲を拡大することが重要である。
【0003】
このため、例えば歩数計のように、歩いた歩数を測定し、歩く距離、範囲の目安にする装置が知られていた。このように、歩行等の運動の動機付けを行うことが行動範囲を拡大し、健康を維持増進するために有益である。
【0004】
ところで、下記特許文献1には、移動端末が地図空間をメッシュ状に区切った単位エリアを越境することを検知したときに、該移動端末の現在位置に関連する位置依存性情報を該移動端末に配信する位置依存性情報の提供方法が開示されている。この方法によれば、移動端末の所持者がどの単位エリアを通過したかを把握することができるので、ある程度運動の動機付けを行うことも期待できる。
【特許文献1】特開2003−122656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の技術においては、いずれも歩くあるいは走るといった身体運動による行動範囲の拡大について明確な動機付けを与えるものではなく、人の健康の維持増進に積極的に働きかけるものとはいえなかった。
【0006】
本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、歩くあるいは走るといった身体運動について明確な動機付けを与える運動動機付けシステム及びそのためのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、運動動機付けシステムであって、使用者が所定の地図上の任意の位置を指定するための位置指定手段と、前記位置に関連したクイズデータを表示手段に表示させるクイズ表示制御手段と、使用者が所持する位置検出端末の位置情報を取得する位置情報取得手段と、前記位置情報取得手段が取得した位置情報に基づき、前記位置の近傍に設定された所定の領域内に前記位置検出端末が進入したか否かを判定する進入判定手段と、前記進入判定手段が、前記位置検出端末が前記所定の領域内へ進入したと判定した場合に、前記クイズの解答を表示可能な状態に設定する解答表示制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
ここで、上記運動動機付けシステムが、地図データにより表される地図に対して所定形状の領域を設定する領域設定手段を有し、前記位置の近傍の所定の領域は、前記領域設定手段により設定される構成としてもよい。また、上記運動動機付けシステムが、地図データにより表される地図を複数の分割領域に分割する領域設定手段を有し、前記位置の近傍の所定の領域は、使用者が地図上で指定した位置を含む分割領域として設定される構成としてもよい。
【0009】
また、本発明は、コンピュータを、使用者が所定の地図上の任意の位置を指定するための位置指定手段、前記位置に関連したクイズデータを表示手段に表示させるクイズ表示制御手段、使用者が所持する位置検出端末の位置情報を取得する位置情報取得手段、前記位置情報取得手段が取得した位置情報に基づき、前記位置の近傍に設定された所定の領域内に前記位置検出端末が進入したか否かを判定する進入判定手段、及び前記進入判定手段が、前記位置検出端末が前記所定の領域内へ進入したと判定した場合に、前記クイズの解答を表示可能な状態に設定する解答表示制御手段、として動作させるプログラムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、所定の地域において使用者が指定した位置にちなんだクイズを出題し、使用者が当該位置に実際に出かけることによりクイズの答えを探索するよう構成されているので、使用者に当該位置まで出かけるという運動を行う明確な動機付けが可能となり、行動範囲の拡大に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0012】
図1には、本発明にかかる運動動機付けシステムの構成のブロック図が示される。図1において、運動動機付けシステムは、位置情報取得部10、位置指定制御部12、進入判定部14、地図データ記憶部16、地図データ取得部18、領域設定部20、クイズデータ処理部22、クイズデータ記憶部24、表示制御部26、表示部28、操作部30、通信部32を含んでいる。この運動動機付けシステムは、使用者が指定した地図上の位置に関連したクイズを表示し、使用者がそのクイズの解答を上記指定した位置に出かけて探索し、解答を見つけて帰ってくる。運動動機付けシステムでは、使用者が実際に上記指定した位置まで出かけたことを確認すると、クイズの解答を表示可能な状態に設定する。これにより、使用者が解答を確認できるようになる。以上の構成により、使用者にいろいろな場所に出かける動機付けが可能となり、使用者に対して運動の動機付けができるので、行動範囲の拡大、健康の維持増進に寄与できる。
【0013】
運動動機付けシステムを構成する位置情報取得部10は、GPS(Global Positioning System)またはPHS(Personal Handyphone System)等を使用して現在位置情報を演算することができる携帯可能な移動端末から、該移動端末の位置情報を取得する。位置情報の取得は、コンピュータネットワーク、有線または無線通信、磁気記憶媒体等を介して行うことができる。また、位置情報取得部10が移動端末から直接位置情報を取得してもよいし、移動端末から所定の管理センターに一旦位置情報が集められ、位置情報取得部10が管理センターから位置情報を取得する構成としてもよい。上記移動端末は、本発明の位置検出端末に相当する。
【0014】
位置指定制御部12は、使用者が操作部30により、表示部28に表示された所定の地図上の任意の位置を指定した場合に、当該操作入力を受け取り、クイズデータ処理部22に位置指定イベントを出力する等の動作を制御する。この位置指定制御部12及び操作部30により、本発明の位置指定手段が構成される。
【0015】
進入判定部14は、位置情報取得部10が取得した移動端末の位置情報に基づき、上記指定した位置の近傍に設定された所定の領域(近傍領域)内に移動端末が進入したか否かを判定する。
【0016】
地図データ記憶部16は、移動端末を所持する使用者が歩く領域を含む地域の地図データを格納している。なお、この地図データ記憶部16は、運動動機付けシステム内ではなく、所定の管理センターに配置して複数の運動動機付けシステムにより共用する構成としてもよい。
【0017】
地図データ取得部18は、地図データ記憶部16から所定の地図データを読み出し、領域設定部20に出力する。領域設定部20は、地図データ取得部18から受け取った地図データにより表される地図に対して所定形状の領域を設定し、設定された領域を特定するための領域特定情報を発生する。この領域特定情報としては、領域の境界線を特定する情報であり、例えば境界線の座標情報であってよい。このようにして領域設定部20は、使用者が地図上で指定した位置の近傍領域を設定する。
【0018】
なお、地図を予め複数の領域に分割しておき、使用者が地図上で指定した位置を含む領域を上記近傍領域としてもよい。分割形状としては、特に限定されず、例えば地図情報上互いに重畳しないように形成された任意の閉領域としてもよい。
【0019】
以上に述べた近傍領域の境界線の座標情報は進入判定部14に出力され、近傍領域に移動端末が進入したか否かの判定に使用される。
【0020】
クイズデータ処理部22は、使用者が指定した地図上の位置に関連したクイズを表示部28に表示し、及び使用者が所持する移動端末が上記位置の近傍領域に進入したことを進入判定部14の判定結果から確認できるまでクイズの解答の表示部28への表示を禁止し、進入が確認できたときに上記クイズの解答を表示可能な状態に設定する動作を制御する。クイズデータ処理部22は、本発明のクイズ表示制御手段及び解答表示制御手段として動作する。
【0021】
クイズデータ記憶部24は、上記クイズデータ処理部22が処理するクイズのデータを記憶している。このクイズのデータは、上述のように、地図上の所定の位置に関連した内容とされている。
【0022】
表示制御部26は、地図データ、クイズ及びその解答等を表示部28に表示する制御を実行する。
【0023】
操作部30は、マウス等の領域指定手段、キーボード等で構成され、使用者が動作指示その他の入力を行うために使用する。
【0024】
通信部32は、移動端末または管理センター等との間で通信を行い、移動端末の位置情報その他のデータのやり取りを実行する。
【0025】
図2には、使用者が地図上で指定した位置に基づいて領域設定部20が設定した近傍領域の例が示される。なお、この地図は、地図データ取得部18が地図データ記憶部16から読み出した地図データにより表示部28に表されている。図2において、使用者が地図上で指定した位置は「市役所」であり、その近傍領域Aは破線で示されている。領域設定部20は、地図データにより示される地図の一部の領域、図2では「市役所」の周囲の円形領域を近傍領域として設定している。
【0026】
図3には、近傍領域の他の例が示される。図3において、地図は予め複数の矩形領域に分割されており、使用者が指定した市役所が含まれる領域が近傍領域Aとして設定されている。なお、各矩形領域は破線で示されており、近傍領域Aは実線で示されている。
【0027】
図4(a)、(b)には、クイズデータ記憶部24の記憶領域の一部の例が示される。図4(a)では、クイズを識別するためのクイズID毎にクイズ内容のデータ及び解答データが記憶された例が示されている。また、図4(b)では、地図上の所定の位置毎に、その位置に関連するクイズのクイズIDが対応付けて記憶されている。また、各クイズID毎に、解答許可フラグも記憶される。進入判定部14が、使用者が指定した位置の近傍領域内に使用者が進入したと判断したときに、クイズデータ処理部22が解答許可フラグをオン(ON)とする。解答許可フラグがオンとなると、解答データの表示部28への表示が許可され、表示可能な状態に設定される。
【0028】
図5には、本発明にかかる運動動機付けシステムの動作の例のフロー図が示される。図5において、地図データ取得部18が、地図データ記憶部16から所定の地図データを読み出して表示制御部26に渡し、表示制御部26が表示部28に地図データにより表される地図を表示する(S1)。
【0029】
次に、使用者が、表示部28の画面に表示された地図を見ながら、操作部30により所望の位置を指定すると(S2)、位置指定制御部12がクイズデータ処理部22に位置指定イベントを出力する。クイズデータ処理部22は、位置指定イベントを受け取ると、使用者が指定した地図上の位置に関連したクイズ内容のデータを、図4(a)、(b)に示されたクイズデータ記憶部24から読み出し(S3)、表示部28にクイズを表示する(S4)。
【0030】
クイズを見た使用者は、クイズの解答を探索するために、自分で指定した位置まで出かけて行く。その際、前述した移動端末を携帯して行く。
【0031】
また、領域設定部20は、使用者が上記地図上で指定した位置の近傍領域を設定する(S5)。
【0032】
位置情報取得部10は、使用者が携帯した移動端末の位置情報を取得する(S6)。位置情報の取得方法としては特に限定されないが、例えば移動端末と交信可能な所定の管理センターと通信部32が通信する方法、通信部32が移動端末と直接通信する方法等が可能である。また、使用者が上記指定した位置から帰宅した後、移動端末と本発明にかかる運動動機付けシステムがインストールされたコンピュータとを所定のケーブルで接続して位置情報を取得してもよい。さらに、メモリカード等により位置情報を取得する構成としてもよい。
【0033】
位置情報取得部10が移動端末の位置情報を取得すると、この位置情報を進入判定部14に出力する。進入判定部14では、上記位置情報に基づき、使用者が指定した位置の近傍に設定された近傍領域内に移動端末が進入したか否かを判定する(S7)。この判定は、例えば領域設定部20が上記近傍領域の領域特定情報として発生した境界線の座標情報と移動端末の位置情報とに基づき、移動端末がこの境界線を越えたか否かにより実行することができる。
【0034】
使用者が携帯した移動端末が上記近傍領域内に進入したと進入判定部14が判定すると、クイズデータ処理部22が図4(b)に示される解答許可フラグをオンとし、クイズの解答を表示可能な状態に設定する(S8)。これに対して、移動端末が上記近傍領域内に進入していないと判定した場合は、S6からの動作を繰り返す。
【0035】
なお、クイズの解答が表示可能な状態に設定されると、使用者は自分の端末すなわち本発明にかかる運動動機付けシステムがインストールされたコンピュータの画面にこの解答を表示して確認することができる。以上の構成により、使用者は自分で指定した位置に関連するクイズの解答を探索するという目的により、その位置まで歩いて出かける動機が与えられる。これにより、使用者の行動範囲が拡大し、運動による健康の維持増進を図ることができる。
【0036】
なお、複数の使用者の運動動機付けシステムがインストールされたコンピュータ端末をネットワークを介して接続し、または所定の管理センターに必要な地図データ、移動端末の位置情報等を記憶しておき、管理センターから各コンピュータ端末が該データを取得する等の構成により、複数の使用者に共通のクイズを出題するようにすると、使用者間で競争意識を喚起でき、さらに強く身体運動についての動機付けを行うことができる。
【0037】
また、本発明にかかる運動動機付けシステムを構成する位置情報取得部10、位置指定制御部12、進入判定部14、地図データ記憶部16、地図データ取得部18、領域設定部20、クイズデータ処理部22、クイズデータ記憶部24、表示制御部26、表示部28、操作部30、通信部32等は、一または複数の端末に任意に配置してよく、また運動動機付けシステムの全部または一部の構成を移動端末と一体的に備える装置としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明にかかる運動動機付けシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】地図上に表された近傍領域の例を示す図である。
【図3】地図上に表された近傍領域の例を示す図である。
【図4】図1に示されたクイズデータ記憶部の記憶領域の一部の例を示す図である。
【図5】本発明にかかる運動動機付けシステムの動作の例のフロー図を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
10 位置情報取得部、12 位置指定制御部、14 進入判定部、16 地図データ記憶部、18 地図データ取得部、20 領域設定部、22 クイズデータ処理部、
24 クイズデータ記憶部、26 表示制御部、28 表示部、30 操作部、32 通信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が所定の地図上の任意の位置を指定するための位置指定手段と、
前記位置に関連したクイズデータを表示手段に表示させるクイズ表示制御手段と、
使用者が所持する位置検出端末の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記位置情報取得手段が取得した位置情報に基づき、前記位置の近傍に設定された所定の領域内に前記位置検出端末が進入したか否かを判定する進入判定手段と、
前記進入判定手段が、前記位置検出端末が前記所定の領域内へ進入したと判定した場合に、前記クイズの解答を表示可能な状態に設定する解答表示制御手段と、
を備えることを特徴とする運動動機付けシステム。
【請求項2】
請求項1記載の運動動機付けシステムが、地図データにより表される地図に対して所定形状の領域を設定する領域設定手段を有し、前記位置の近傍の所定の領域は、前記領域設定手段により設定されることを特徴とする運動動機付けシステム。
【請求項3】
請求項1記載の運動動機付けシステムが、地図データにより表される地図を複数の分割領域に分割する領域設定手段を有し、前記位置の近傍の所定の領域は、使用者が地図上で指定した位置を含む分割領域として設定されることを特徴とする運動動機付けシステム。
【請求項4】
コンピュータを、
使用者が所定の地図上の任意の位置を指定するための位置指定手段、
前記位置に関連したクイズデータを表示手段に表示させるクイズ表示制御手段、
使用者が所持する位置検出端末の位置情報を取得する位置情報取得手段、
前記位置情報取得手段が取得した位置情報に基づき、前記位置の近傍に設定された所定の領域内に前記位置検出端末が進入したか否かを判定する進入判定手段、及び
前記進入判定手段が、前記位置検出端末が前記所定の領域内へ進入したと判定した場合に、前記クイズの解答を表示可能な状態に設定する解答表示制御手段、
として動作させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−58806(P2006−58806A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−243238(P2004−243238)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【出願人】(000135771)株式会社パスコ (102)
【Fターム(参考)】