説明

運動器具

【課題】手首の運動方向に自由度を持たせることができ、しかも手首の運動における負荷の大きさを容易に変更することができるようにすることで、インナーマッスルをより効果的に鍛えることができるようにする。
【解決手段】第1棒体10と第2棒体20とが弾性部材であるコイルバネ70の付勢力に抗して互いに逆方向に回動自在とされるとともに、互いに離れる方向に移動自在とされるようにし、手首の運動方向に自由度を持たせるとともに、コイルバネ70の一端側のリング状の係止部71及び他端側のリング状の係止部72が第1弾性部材係止体50及び第2弾性部材係止体60に対して着脱自在に係止されるようにし、弾性力の異なる他のコイルバネ70への交換が容易となり、手首の運動における負荷の大きさを容易に変更することができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば手首の回旋運動に適した運動器具に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の筋肉は、体の中心に近い部分である骨に近い部分から、何層にも重なって体を覆っている。比較的深い部分にある筋肉はインナーマッスルと呼ばれ、体の表面近くにある筋肉はアウターマッスルと呼ばれている。
【0003】
インナーマッスルは主に姿勢を細かく調節したり、関節の位置を正常に保ったりするという働きをし、アウターマッスルは大きな力を出すという働きをする。
【0004】
ところで、これらインナーマッスルやアウターマッスルの働きを維持するためには、適度なトレーニングが必要となるが、インナーマッスルとアウターマッスルとではそれぞれの働きが異なるために、トレーニングも異なるものとなる。
【0005】
すなわち、アウターマッスルはベンチプレスやスクワットのように、高重量や高負荷を用いたトレーニングが必要となるが、インナーマッスルは高重量や高負荷を用いたトレーニングを必要としない。
【0006】
なぜなら、インナーマッスルは元々補助的な動作を行うときに働く筋肉であり、大きくて太いアウターマッスルのように、大きな力を出すようにはできていないからである。
【0007】
このようなインナーマッスルのトレーニングに用いられるものとして、特許文献1では、巻き向きが相対向する2個のコイルバネの各々一端を回転伝動軸に止着し、各々他端を、予巻きし反発力を与えて2個の連設支持された外筒に軸受板を介して止着し、該バネ端と前記回転伝動軸の両端部に設けた軸の抜け止めピンとにより逆転及び回転限界停止部を構成するようにした手首の捩り運動器具を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平06−246017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した特許文献1の手首の捩り運動器具によれば、筒内部にコイルバネが反発力を保持して取り付けられているので、2個の外筒を各々右手と左手で握り回旋運動を行うと、回動始めより反発抵抗を有するように働くことから、手首等への負荷を効果的に与えることが可能となっている。
【0010】
ところが、このような手首の捩り運動器具では、コイルバネの巻回方向に逆らう方向に外筒を回動させた場合に限り、コイルバネの負荷が作用する構成であるため、左右の手の回動方向が一方向に限定されてしまうという問題があった。すなわち、たとえば右手を奥側に回動させ、左手を手前側に回動させたとき、コイルバネの負荷が作用するが、右手を手前側に回動させ、左手を奥側に回動させたとき、コイルバネの負荷が作用しないことになる。この場合、それぞれの外筒を握った状態で、左右の手を奥側と手前側に交互に回動させることができないことになり、運動方向における自由度が無くなってしまうことになる。
【0011】
また、外筒を回動させたときのみに、コイルバネの負荷が作用する構成であるため、手首の回旋運動以外の運動を行うことができないことからも、運動方向における自由度が無くなってしまうことになる。
【0012】
また、コイルバネは外筒に内装されているため、コイルバネの交換が不可能となり、負荷の大きさを容易に変更することができないという問題もあった。
【0013】
このように、手首の運動方向に自由度が持たされていなかったり、手首の運動における負荷の大きさを容易に変更することができなかったりすると、インナーマッスルをより効果的に鍛えることが不完全となってしまうことになる。
【0014】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、手首の運動方向に自由度を持たせることができ、しかも手首の運動における負荷の大きさを容易に変更することができるようにすることで、インナーマッスルをより効果的に鍛えることができる運動器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の運動器具は、第1棒体と、該第1棒体の一部を回動自在及びスライド自在に支持する第2棒体と、前記第1棒体の外部に設けられる第1弾性部材係止体と、前記第2棒体の外部に設けられる第2弾性部材係止体と、前記第1弾性部材係止体に一端側が着脱自在に係止され、前記第2弾性部材係止体に他端側が着脱自在に係止される弾性部材とを備え、前記第1棒体と前記第2棒体とが前記弾性部材の付勢力に抗して互いに逆方向に回動自在とされるとともに、互いに離れる方向に移動自在とされていることを特徴とする。
【0016】
また、前記第1棒体は、内径の大きい筒部と内径の小さい筒部とが一体化された構成とされ、前記第2棒体は、前記内径の小さい筒部を遊挿できる内径を有する筒体とされ、前記内径の小さい筒部が前記第2棒体側に遊挿され、前記内径の大きい筒部が外部に露出され、前記第1弾性部材係止体が前記内径の大きい筒部の外周に設けられ、前記第2弾性部材係止体が前記筒体の外周に設けられているようにすることができる。
【0017】
また、前記第1棒体の先端部には第1グリップが設けられ、前記第2棒体の先端部には第2グリップが設けられているようにすることができる。
【0018】
本発明の運動器具では、第1棒体と第2棒体とが弾性部材の付勢力に抗して互いに逆方向に回動自在とされるとともに、互いに離れる方向に移動自在とされることから、手首の運動方向に自由度を持たせることができる。また、弾性部材の一端側及び他端側が第1弾性部材係止体及び第2弾性部材係止体に対して着脱自在に係止されているため、弾性力の異なる他の弾性部材への交換が容易となり、手首の運動における負荷の大きさを容易に変更することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の運動器具によれば、手首の運動方向に自由度を持たせることができ、しかも手首の運動における負荷の大きさを容易に変更することができるようにしたので、インナーマッスルをより効果的に鍛えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の運動器具の第1実施形態を示す正面図である。
【図2】図1の運動器具の一部を切り欠いて示す一部切欠断面図である。
【図3】図1及び図2の運動器具の使用方法について説明するための図である。
【図4】図1及び図2の運動器具を使用する際の運動姿勢の各種例を示す図である。
【図5】図1及び図2の運動器具の構成を変えた場合の第2実施形態を示す図である。
【図6】図5の運動器具の使用方法を説明するための図である。
【図7】図1及び図2の運動器具の構成を変えた場合の第3実施形態を示す図である。
【図8】図7の運動器具の使用方法を説明するための図である。
【図9】図1及び図2の運動器具の第1棒体及び第2棒体の内部構成を変えた場合の第4実施形態を示す断面図である。
【図10】図9の運動器具におけるコイルバネの弾性力を変更する場合を説明するための図である。
【図11】図1及び図2の運動器具にカバーを装着した場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態の詳細について説明する。図1は本発明の運動器具の第1実施を示す正面図、図2は図1の運動器具の一部を切り欠いて示す一部切欠断面図である。
【0022】
まず、図1に示すように、運動器具1は、第1棒体10、第2棒体20、第1グリップ30、第2グリップ40、第1弾性部材係止体50、第2弾性部材係止体60、コイルバネ70を備えている。
【0023】
同図に示す運動器具1の詳細については後述するが、第1棒体10と第2棒体20とがコイルバネ70の付勢力に抗して互いに逆方向に回転可能となっている。また、その第1棒体10と第2棒体20とが弾性部材であるコイルバネ70の付勢力に抗して互いに離れる方に移動自在となっている。また、コイルバネ70は弾性力の異なるものに交換可能とされている。
【0024】
すなわち、図2に示すように、第1棒体10は、中空の筒体11を有している。この筒体11は、たとえばアルミ合金ダイキャストで形成されている。なお、筒体11は、ある程度の剛性があればよく、アルミ合金ダイキャストに限らず、ステンレス製、プラスチック製、木製等で形成されていてもよい。
【0025】
筒体11は、内径の大きい筒部11aと内径の小さい筒部11bとが一体化された構成となっている。内径の小さい筒部11bは第2棒体20側に遊挿され、内径の大きい筒部11aは外部に露出される。
【0026】
筒部11aの中空部11cには、閉塞部材12が装填されている。この閉塞部材12は、上述したアルミ合金であってもよく、さらにはアルミ合金に限らず、ステンレス製、プラスチック製、木製等であってもよい。また、筒部11aと閉塞部材12には、第1棒体10の外周から突出するように設けられた第1弾性部材係止体50のネジ棒51が挿入される連通孔11d、12aが形成されている。
【0027】
なお、ネジ棒51の両端部にはネジ部が刻設されており、それぞれのネジ部にカラー52を介してナット53を装着することで、ネジ棒51が第1棒体10に取り付けられるようになっている。
【0028】
また、ナット53を装着する際、コイルバネ70の一端側のリング状の係止部71をナット53とカラー52との間に挟み込むようにすることで、コイルバネ70の一端側が第1弾性部材係止体50に係止されるようになっている。よって、コイルバネ70を弾性力の異なる他のコイルバネ70に交換する際、ナット53を緩めてネジ棒51からナット53を取り外すことで、コイルバネ70の一端側の係止部71の抜き差しを行うことができ、コイルバネ70の交換を容易に行えるようになっている。なお、コイルバネ70の一端側は、リング状に限らず、フック状であってもよいことは勿論である。
【0029】
一方、筒部11bの他端側11eには、中空部11fを閉塞するように緩衝性を有するゴム等のストッパ部材13が装填されている。このストッパ部材13を装填することで、第1棒体10と第2棒体20とがコイルバネ70の付勢力によって戻される際、第2棒体20の後述の閉塞部材22への衝撃が和らげられるようになっている。
【0030】
また、筒部11bの他端側11eの外周には、リング部材14が装着されている。このリング部材14は、第2棒体20側の後述の筒体21のリング部材24と共に、筒部11bとその筒体21の内側との間に所定の隙間の形成を維持し、その筒体21の内部での筒部11bのガタ付きを防止するようになっている。
【0031】
また、そのリング部材14と後述のリング部材24は共に、摩擦係数の小さい部材で構成されることが好ましい。このように、そのリング部材14と後述のリング部材24とを摩擦係数の小さい部材で構成することで、上述した第1棒体10と第2棒体20とがコイルバネ70の付勢力に抗して互いに逆方向に回転する動作や、その第1棒体10と第2棒体20とがコイルバネ70の付勢力に抗して互いに離れる方に移動する動作をスムーズに行わせることができる。
【0032】
なお、上述したように、筒部11a及び筒部11bに中空部11c及び中空部11fを設けることで、第1棒体10の軽量化が図れるが、軽量化が不要の場合はこれらの中空部11c及び中空部11fは必ずしも設ける必要はない。
【0033】
筒部11bの一端側11g(第1棒体10の先端部)には、上述した第1グリップ30が装着されている。すなわち、第1グリップ30には、筒部11bの一端側11gと閉塞部材12のそれぞれの外周縁部の形状に合わせた窪み31が形成され、その窪み31が筒部11bの一端側11gに嵌め合わされている。
【0034】
また、第1グリップ30の中心部には、閉塞部材12側のネジ装着孔12bに連通する連通孔32が形成されており、その連通孔32に挿入したネジ33をネジ装着孔12bに螺着することで第1グリップ30が筒部11bの一端側11gに固定されるようになっている。また、第1グリップ30の表面側には、たとえばラベル34が貼着されており、連通孔32及びその連通孔32に挿入されたネジ33が覆い隠されるようになっている。
【0035】
ここで、第1グリップ30は円盤型とされている。なお、第1グリップ30は手で掴みやすい形状であれば、円盤型以外の形状であってもよいことは勿論である。また、第1グリップ30は、アルミ合金ダイキャストに限らず、ステンレス製、プラスチック製、木製等で形成されるようにすることができる。
【0036】
一方、第2棒体20は、中空の筒体21を有している。この筒体21は、上記同様に、たとえばアルミ合金ダイキャストで形成されている。なお、筒体21は、ある程度の剛性があればよく、上記同様に、アルミ合金ダイキャストに限らず、ステンレス製、プラスチック製、木製等で形成されていてもよい。
【0037】
また、筒体21の中空部21aには、閉塞部材22が装填されている。この閉塞部材22は、筒体21の中空部21aのほぼ中程までの長さとされていることで、図中左側部分に上述した第1棒体10の筒部11bがスライド自在及び回動自在に遊挿される遊挿孔21bが形成されるようになっている。
【0038】
また、閉塞部材22の端面には、緩衝性を有するゴム等のストッパ部材23が装着されている。このストッパ部材23を装着することで、上記同様に、第1棒体10と第2棒体20とがコイルバネ70の付勢力によって戻される際、第2棒体20の閉塞部材22への衝撃が和らげられるようになっている。
【0039】
また、筒体21の他端側21cの内周には、リング部材24が装着されている。このリング部材24は、上述したように、筒部11bのリング部材14と共に、筒体21の内部での筒部11bのガタ付きを防止するようになっている。
【0040】
なお、第2棒体20の筒体21の他端側21cと、第1棒体10の内径の大きい筒部11aとの間に隙間が形成されている。この隙間は必ずしも形成される必要はないが、この隙間を設けることで、第1棒体10と第2棒体20とをコイルバネ70の付勢力に抗して互いに離れる方向に引っ張る運動を繰り返す際に、誤って指が挟まれないようにすることができる。
【0041】
また、筒体21と閉塞部材22には、第2棒体20の外周から突出するように設けられた第2弾性部材係止体60のネジ棒61が挿入される連通孔21d、22aが形成されている。
【0042】
なお、ネジ棒61の両端部にはネジ部が刻設されており、それぞれのネジ部にカラー62を介してナット63を装着することで、ネジ棒61が第2棒体20に取り付けられるようになっている。
【0043】
また、ナット63を装着する際、コイルバネ70の他端側のリング状の係止部72をナット63とカラー62との間に挟み込むようにすることで、コイルバネ70の他端側が第2弾性部材係止体60に係止されるようになっている。よって、コイルバネ70を弾性力の異なる他のコイルバネ70に交換する際、ナット63を緩めてネジ棒61からナット63を取り外すことで、上記同様に、コイルバネ70の他端側の係止部72の抜き差しを行うことができ、コイルバネ70の交換を容易に行えるようになっている。なお、コイルバネ70の他端側は、リング状に限らず、フック状であってもよいことは勿論である。
【0044】
ここで、上述した第1弾性部材係止体50のネジ棒51及び第2弾性部材係止体60のネジ棒61の両端部にコイルバネ70の両端を係止することで、運動器具1には2本のコイルバネ70が設けられる構成となっているが、1本のコイルバネ70のみを第1弾性部材係止体50及び第2弾性部材係止体60に取り付けるようにしてもよい。
【0045】
また、第1弾性部材係止体50及び第2弾性部材係止体60をさらに増やすことで、コイルバネ70を3〜4本程度取り付けられる構成とすることも可能である。具体的には、ネジ棒51及びネジ棒61に対してそれぞれほぼ直交する方向に別のネジ棒51及びネジ棒61を設けるようにすることで、運動器具1に最大4本のコイルバネ70を取り付けることが可能となる。また、コイルバネ70に限らず、ゴム等の弾性部材に置き換えることも可能である。
【0046】
筒体21の一端側21eには、上述した第2グリップ40が装着されている。すなわち、第2グリップ40には、筒体21の一端側21eと閉塞部材22のそれぞれの外周縁部の形状に合わせた窪み41が形成され、その窪み41が筒体21の一端側21eに嵌め合わされている。
【0047】
また、第2グリップ40の中心部には、閉塞部材22側のネジ装着孔22bに連通する連通孔42が形成されており、その連通孔42に挿入したネジ43をネジ装着孔22bに螺着することで第2グリップ40が筒体21の一端側21eに固定されるようになっている。また、第2グリップ40の表面側には、たとえばラベル44が貼着されており、連通孔42及びその連通孔42に挿入されたネジ43が覆い隠されるようになっている。
【0048】
ここで、第2グリップ40は第1グリップ30と同様に、円盤型とされている。なお、第1グリップ40は上記同様に、手で掴みやすい形状であれば、円盤型以外の形状であってもよいことは勿論である。また、第1グリップ40は、上記同様に、アルミ合金ダイキャストに限らず、ステンレス製、プラスチック製、木製等で形成されるようにすることができる。
【0049】
次に、上述した運動器具1の使用方法について、図3及び図4を参照しながら説明する。ここで、図3(a),(b)は手首の回旋運動を行う場合を示し、図3(c)は手首の引っ張り運動を行う場合を示している。また、図4は、運動器具1を使用する際の運動姿勢の各種例を示している。
【0050】
まず、図3(a)に示すように、第1グリップ30を左手で掴み、第2グリップ40を右手で掴む。なお、ここでは、第1グリップ30を左手で掴み、第2グリップ40を右手で掴む場合としているが、運動器具1の向きを逆にし(第1グリップ30が右で、第2グリップ40が左に位置するようにする)、第1グリップ30を右手で掴み、第2グリップ40を左手で掴むようにしてもよい。
【0051】
ここで、第1グリップ30と第2グリップ40とを互いに逆向きに回動させると、第1棒体10の筒部11bが第2棒体20の筒体21の遊挿孔21bに遊挿された状態で、第1棒体10と第2棒体20とが逆向きに回動する。このとき、上述した第1棒体10の筒部11bの他端側11eの外周に設けられているリング部材14と、第2棒体20の筒体21のリング部材24と共に、筒部11bとその筒体21の内側との間に所定の隙間の形成が維持されることで、その筒体21の内部での筒部11bのガタ付きが防止されることから、第1棒体10と第2棒体20との逆向きの回動がスムーズに行われる。
【0052】
また、第1棒体10と第2棒体20とを互いに逆向きに回動されると、第1弾性部材係止体50と第2弾性部材係止体60の位置が変化することに伴い、コイルバネ70が引張される。このコイルバネ70が引張されることで、第1棒体10と第2棒体20の回動に負荷が作用し、その負荷が手首等に伝わる。
【0053】
このとき、第1弾性部材係止体50と第2弾性部材係止体60の位置が変化することに伴い、引張されたコイルバネ70が第2棒体20の外周面にスパイラル状に巻き付くことになる。このように、コイルバネ70が第2棒体20の外周面にスパイラル状に巻き付くことで、第1棒体10と第2棒体20とによる回動角度が小さくても、第1棒体10と第2棒体20への回動に大きな負荷が作用することになり、手首の回旋運動をより効果的に行わせることができる。
【0054】
また、手首の回旋運動がより効果的に行われることで、手首は勿論のこと、指、肘、肩関節、肩甲骨周辺を含めたインナーマッスルを効果的に鍛えることが可能となる。
【0055】
また、図3(b)に示すように、第1グリップ30と第2グリップ40のそれぞれに左右の手の平を押し当てつつ、上記同様に、第1グリップ30と第2グリップ40とを互いに逆向きに回動させるようにすることもできる。
【0056】
この場合には、指を広げた状態で手首の回旋運動が行われることから、手首は勿論のこと、指、肘、肩関節、肩甲骨周辺を含めたインナーマッスルへの負荷がより効果的に作用することになり、これらのインナーマッスルをより効果的に鍛えることが可能となる。
【0057】
また、図3(c)に示すように、たとえば第1グリップ30を左手で掴み、たとえば第2グリップ40を右手で掴んだ状態で、第1グリップ30及び第2グリップ40を互いに離れる方向に引っ張る。このとき、第1弾性部材係止体50と第2弾性部材係止体60の位置が離れることに伴い、コイルバネ70が引張されることで、第1グリップ30及び第2グリップ40を介して左右の手首等に適度な負荷を与えることができる。
【0058】
また、図3(a)〜(c)に示した各種運動を行う際には、上述したように、第1弾性部材係止体50及び第2弾性部材係止体60のナット53,63を緩めてネジ棒51,61からナット53,63を取り外し、弾性力の異なる別のコイルバネ70への交換を行うことで、たとえば個人差に応じたインナーマッスルの運動を効果的に行うことができる。
【0059】
また、図3(a)〜(c)に示した各種運動を行う際には、図4に示すような様々な運動姿勢をとることで、インナーマッスルをより効果的に鍛えることが可能となる。すなわち、図4(a)のように、運動器具1を胸の前で水平にした状態で上述した各種運動を行うことができる。
【0060】
また、図4(b)のように、左手を下にし、右手を上にして運動器具1を垂直に支持した状態で上述した各種運動を行うことができる。また、図4(c)のように、右手を下にし、左手を上にして運動器具1を垂直に支持した状態で上述した各種運動を行うことができる。
【0061】
また、図4(d)のように、運動器具1を頭の上で水平にした状態で上述した各種運動を行うことができる。また、図4(e)のように、運動器具1を背面側で水平にした状態で上述した各種運動を行うことができる。また、図4(f)のように、運動器具1を右肩上で垂直に支持した状態で上述した各種運動を行うことができる。
【0062】
また、図4(g)のように、運動器具1を左肩上で垂直に支持した状態で上述した各種運動を行うことができる。また、図4(h)のように、運動器具1を右脇腹横で水平にした状態で上述した各種運動を行うことができる。また、図4(i)のように、運動器具1を左脇腹横で水平にした状態で上述した各種運動を行うことができる。また、図4(j)のように、椅子に腰掛けた状態で、運動器具1を胸の前で水平にした状態で上述した各種運動を行うことができる。
【0063】
このように、第1実施形態では、第1棒体10と第2棒体20とが弾性部材であるコイルバネ70の付勢力に抗して互いに逆方向に回動自在とされるとともに、互いに離れる方向に移動自在とされるようにし、手首の運動方向に自由度を持たせるとともに、コイルバネ70の一端側のリング状の係止部71及び他端側のリング状の係止部72が第1弾性部材係止体50及び第2弾性部材係止体60に対して着脱自在に係止されるようにし、弾性力の異なる他のコイルバネ70への交換が容易となり、手首の運動における負荷の大きさを容易に変更することができるようにしたので、インナーマッスルをより効果的に鍛えることができる。
【0064】
また、第1実施形態では、第1棒体10の先端部に第1グリップ30を設け、第2棒体20の先端部に第2グリップ40を設けているので、第1グリップ30及び第2グリップ40を掴み易くすることができるばかりか、コイルバネ70の付勢力による手首等への負荷をより効果的に与えることができる。
【0065】
(第2実施形態)
次に、図5及び図6を参照し、第2実施形態について説明する。ここで、図5は図1及び図2の運動器具1の構成を変えた場合の第2実施形態を示す図であり、図6は図5の運動器具1の使用方法を説明するための図である。なお、以下に説明する図において、図1及び図2と共通する部分には同一符号を付し重複する説明は適宜行うものとする。
【0066】
まず、図5に示すように、第2実施形態は、運動器具1の第1棒体10の内径の大きい筒部11aが、図1及び図2の運動器具1と比較して分かる通り、長めに形成されている点で、図1及び図2の運動器具1とは構成が異なっている。他の構成は、図1及び図2の運動器具1とほぼ共通している。ここで、筒部11aの長さは、手の平全体で握ることができる程度であればよい。
【0067】
このような運動器具1では、図6に示すように、たとえば第1グリップ30を左向きとした場合、第1棒体10の筒部11aを左手で握り、第2グリップ40を右手で掴むようにする。この状態で、右手を動かさずようにすることで、左手を前後に回動させることができる。
【0068】
また、右手を前後に回動させる場合は、第1グリップ30を右向きとし、第1棒体10の筒部11aを右手で握り、第2グリップ40を左手で掴むようにし、左手を固定すれば、上記とは逆に右手を前後に回動させることができる。
【0069】
このように、第2実施形態では、第1棒体10の筒部11aを左手又は右手で握ることができるようにしたので、上述した各種運動に加え、左手又は右手の平又は甲を前後に回動させるような運動をさらに行うことができる。
【0070】
(第3実施形態)
次に、図7及び図8を参照し、第3実施形態について説明する。ここで、図7は図1及び図2の運動器具1の構成を変えた場合の第3実施形態を示す図であり、図8は図7の運動器具1の使用方法を説明するための図である。
【0071】
まず、図7に示すように、第3実施形態は、図1及び図2の運動器具1で用いられていたコイルバネ70がゴム等の弾性部材73に置き換えられている点と、第2棒体20の筒体21にコイルバネ76が内装されている点で、図1及び図2の運動器具1とは構成が異なっている。他の構成は、図1及び図2の運動器具1とほぼ共通している。
【0072】
同図に示す弾性部材73は、両端にリング状の係止部74,75が設けられている。なお、これらの係止部74,75はリング状に限らず、フック状であってもよいことは勿論である。そして、弾性部材73の係止部74,75を、上記同様に、第1弾性部材係止体50及び第2弾性部材係止体60のナット53,63とカラー52,62との間に挟み込むようにすることで、弾性部材73の両端が第1弾性部材係止体50及び第2弾性部材係止体60に係止されるようになっている。
【0073】
よって、弾性部材73の弾性力の異なる他の弾性部材73に交換する際、上記同様に、ナット53,63を緩めてネジ棒51,61からナット53,63を取り外すことで、弾性部材73の両端側の係止部74,75の抜き差しを行うことができ、弾性部材73の交換を容易に行えるようになっている。
【0074】
また、このような運動器具1では、図8に示すように、第1グリップ30及び第2グリップ40を両手で掴み、それぞれの手の平で第1グリップ30及び第2グリップ40を互いに近づけるようにすると、第2棒体20の筒体21に内装されているコイルバネ76によっての負荷が与えられる。
【0075】
当然、コイルバネ70の代わりに弾性部材73が用いられているため、図3で説明した各種運動も併せて行うことができる。
【0076】
このように、第3実施形態では、第2棒体20の筒体21にコイルバネ76が内装されるようにしているので、上述した各種運動に加え、第1グリップ30及び第2グリップ40を両手で掴み、それぞれの手の平で第1グリップ30及び第2グリップ40を互いに近づけるような運動をさらに行うことができる。
【0077】
(第4実施形態)
次に、図9及び図10を参照し、第4実施形態について説明する。ここで、図9は図1及び図2の運動器具1の第1棒体及び第2棒体の内部構成を変えた場合の第4実施形態を示す断面図であり、図10は図9の運動器具1におけるコイルバネの弾性力を変更する場合を説明するための図である。
【0078】
まず、図9に示すように、第4実施形態は、第2棒体20の筒体21に内装されている閉塞部材22に、内面にネジ部を有するネジ凹部25が形成され、ストッパ部材23には外周にネジ部を有するネジ軸23aが形成され、そのネジ軸23aがネジ凹部25に螺着され、さらに、第2グリップ40の連通孔42に連通するネジ装着孔22bがネジ凹部25まで貫いて形成されている点で、図1及び図2の運動器具1とは構成が異なっている。他の構成は、たとえば図1及び図2の運動器具1とほぼ共通している。
【0079】
このような構成の運動器具1では、図10に示すように、第2グリップ40からネジ43を取り外すと、第2グリップ40を第2棒体20から取り外すことができる。このとき、閉塞部材22に設けられ、ネジ凹部25に連通しているネジ装着孔22bが外部に露出する。ここで、ストッパ部材23に取り付けられているネジ軸23aの端部23bに、+ドライバ又は−ドライバの先端形状に合わせた溝が形成されているとすると、そのネジ装着孔22bから+ドライバ又は−ドライバを差し込むことで、ネジ軸23aを時計回り又は反時計回りに回すことができる。
【0080】
たとえばネジ軸23aを時計回りに回したとき、ネジ軸23aがネジ凹部25のネジ部に噛み合いつつ矢印方向に移動するものとするとき、ネジ軸23aの矢印方向への送り量を調整することで、コイルバネ70を取り替えることなくその弾性力を容易に変更することが可能となる。
【0081】
このように、第4実施形態では、ネジ凹部25に螺着されているネジ軸23aを+ドライバ又は−ドライバで回すことにより、ネジ軸23aの矢印方向への送り量を調整することができるようにしたので、コイルバネ70を取り替えることなくその弾性力を容易に変更することができる。
【0082】
(第5実施形態)
次に、図11を参照し、第5実施形態について説明する。ここで、図11は、図1及び図2の運動器具1にカバーを装着した場合を示す図である。
【0083】
図11に示すように、第1棒体10及び第2棒体20と、コイルバネ70とはカバー80によって覆われるようにすることができる。このように、第1棒体10及び第2棒体20と、コイルバネ70とをカバー80によって覆われるようにすることで、上述した回旋運動等が行われるとき、コイルバネ70の周囲がカバー80によって隔離されるため、引張しているコイルバネ70により誤って指が挟み込まれるといったようなことが無くなり、安全性が高められることになる。
【0084】
ここで、カバー80は、たとえば透明なプラスチック製とすることができる。また、カバー80に、第1棒体10又は第2棒体20に対して仮止めできる仮止め部材を設けるようにすることができる。このように、カバー80に仮止め部材を設けることで、運動器具1を使用中にカバー80が容易に離脱しないようにすることができる。
【0085】
また、カバー80は、透明なものであってもよいし、不透明なものであってもよい。透明なものとした場合は、外部から第1棒体10及び第2棒体20と、コイルバネ70の動き具合を確認することができる。
【0086】
このように、第5実施形態では、少なくともコイルバネ70の周囲がカバー80によって隔離されるようにしているので、引張しているコイルバネ70により誤って指が挟み込まれるといったようなことが無くなり、安全性を高めることができる。
【0087】
なお、以上の各実施形態においては、第1棒体10及び/又は第2棒体20から回旋運動や引っ張りによる運動に応じた音が発せられるようにすることができる。この場合、第1棒体10及び/又は第2棒体20の内部に、回旋運動や引っ張りによる運動に応じて内圧が変化する機構部品とこの機構部品により音が発せられる部材とを設けることで実現することができる。
【0088】
この場合、1回毎の回旋運動や引っ張りによる運動に応じて音が発せられるようにすると、たとえば回旋運動や引っ張りによる運動にメリハリを持たせることができたり、その音を確認して運動回数をカウントしたりすることができる。
【0089】
また、第1棒体10及び/又は第2棒体20の外周にLED等の発光体を設け、さらに第1棒体10と第2棒体20に、コイル及び磁石からなる簡易な発電回路を設け、回旋運動や引っ張りによる運動に応じてその簡易な発電回路によりLED等の発光体が光るようにすることも可能である。
【0090】
この場合、1回毎の回旋運動や引っ張りによる運動に応じてLED等の発光体が光るようにすると、上記同様に、たとえば回旋運動や引っ張りによる運動にメリハリを持たせることができたり、その光を確認して運動回数をカウントしたりすることができる。
【符号の説明】
【0091】
10 第1棒体
11 筒体
11a,11b 筒部
20 第2棒体
21 筒体
30 第1グリップ
40 第2グリップ
50 第1弾性部材係止体
51 ネジ棒
52 カラー
53 ナット
60 第2弾性部材係止体
61 ネジ棒
62 カラー
63 ナット
70 コイルバネ
71,72 係止部
73 弾性部材
74,75 係止部
76 コイルバネ
80 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1棒体と、
前記第1棒体の一部を回動自在及びスライド自在に支持する第2棒体と、
前記第1棒体の外部に設けられる第1弾性部材係止体と、
前記第2棒体の外部に設けられる第2弾性部材係止体と、
前記第1弾性部材係止体に一端側が着脱自在に係止され、前記第2弾性部材係止体に他端側が着脱自在に係止される弾性部材とを備え、
前記第1棒体と前記第2棒体とが前記弾性部材の付勢力に抗して互いに逆方向に回動自在とされるとともに、互いに離れる方向に移動自在とされている
ことを特徴とする運動器具。
【請求項2】
前記第1棒体は、内径の大きい筒部と内径の小さい筒部とが一体化された構成とされ、
前記第2棒体は、前記内径の小さい筒部を遊挿できる内径を有する筒体とされ、
前記内径の小さい筒部が前記第2棒体側に遊挿され、前記内径の大きい筒部が外部に露出され、
前記第1弾性部材係止体が前記内径の大きい筒部の外周に設けられ、
前記前記第2弾性部材係止体が前記筒体の外周に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の運動器具。
【請求項3】
前記第1棒体の先端部には第1グリップが設けられ、
前記第2棒体の先端部には第2グリップが設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の運動器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−87668(P2011−87668A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−241983(P2009−241983)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(391005248)三力工業株式会社 (5)
【出願人】(509292009)