説明

運動生理機能向上剤

本発明は、プロアントシアニジンを有効成分として含有することを特徴とする運動生理機能向上剤を提供する。運動時の乳酸値等の上昇を抑制することにより筋肉疲労を軽減し、継続的な運動を容易にするための疲労防止・改善剤、特に筋肉疲労防止・改善剤及び疲労防止・改善用健康食品として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロアントシアニジン(proanthocyanidin)を有効成分とし、運動生理機能の向上に作用する組成物、すなわち、運動生理機能向上剤に関する。より詳しくは、運動時の乳酸値等の上昇を抑制することにより筋肉疲労を軽減し、継続的な運動を容易にするための疲労防止・改善剤、特に筋肉疲労防止・改善剤及び疲労防止・改善用健康食品に関する。
【背景技術】
【0002】
プロアントシアニジンは植物中に含有されるポリフェノールの一種で、抗酸化作用などの種々の活性を有することが知られている(非特許文献1及び非特許文献2)。プロアントシアニジンは、その作用として、スパーオキシドラジカル消去活性が報告されており、抗酸化作用をもつビタミンCとの相乗作用が報告されている(非特許文献1)。また、臨床作用として慢性膵炎に対する治療効果が知られている(非特許文献1及び非特許文献2)。
【非特許文献1】Bagchi D.et.al,Toxicology,2000年,第148巻,p.187−197
【非特許文献2】Fremont L.et.al,Life Sci.1999年,第64巻,p.2511−2521
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、健康志向の高まりとともに、老若男女を問わず、健康維持や体力増強を目的として積極的に運動を取り入れる動きが見られる。例えば、高齢者に対しては寝たきり防止や健康増進のため、適度なトレーニングにより有酸素性作業能の向上や筋力増加を図ることが奨励されている。しかし、急激に運動を開始すると、筋細胞中でのフリーラジカルの過剰産生や筋肉組織への疲労物質の蓄積により、筋細胞の崩壊や筋肉疲労をきたすことが問題となっている。
【0004】
スポーツ選手においては一定時期に照準を合わせて筋力および持久力の強化を図るために集中トレーニングを実施する。しかしながら筋肉組織に過度の負担がかかると、筋肉疲労や筋細胞の崩壊をもたらし運動の継続が困難になったり、思わぬ故障の原因となるおそれがある。運動を効果的にするためには、筋細胞および筋肉組織への負担を軽減し、全身に適度な負荷をかけつつ継続的に運動を実施することが重要である。本発明は、運動によって引き起こされる筋細胞への損傷を軽減する新規な組成物、すなわち運動生理機能向上剤、さらに詳しくは疲労防止・改善剤、特に筋肉疲労防止・改善剤及び疲労防止・改善用健康食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、筋細胞の過酸化障害を抑制することは運動の弊害を除くとともにトレーニングの継続にも寄与するものと推察し、上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、強力な抗酸化作用を有するプロアントシアニジンを摂取させることにより運動初期の筋損傷と長期摂取後の過酸化障害を軽減し、継続的な運動の実施を容易にすることを確認して、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)プロアントシアニジンを有効成分として含有することを特徴とする運動生理機能向上剤、
(2)疲労が防止・改善されることを特徴とする上記(1)に記載の運動生理機能向上剤、
(3)筋肉疲労が防止・改善されることを特徴とする上記(1)に記載の運動生理機能向上剤、
(4)プロアントシアニジンを有効成分として含有することを特徴とする疲労防止・改善用健康食品、
(5)健康食品が固形食品、ゲル状食品又は飲料であることを特徴とする上記(4)に記載の疲労防止・改善用健康食品、
(6)飲料が清涼飲料又は茶飲料であることを特徴とする上記(5)に記載の疲労防止・改善用健康食品、
(7)錠剤、ピル、カプセル、顆粒、粉末、散剤、液剤の形態で使用されることを特徴とする上記(1)に記載の運動生理機能向上剤、
(8)錠剤、ピル、カプセル、顆粒、粉末、散剤、液剤の形態で使用されることを特徴とする上記(4)に記載の疲労防止・改善用健康食品、
(9)プロアントシアニジンが、松樹皮由来抽出物であることを特徴とする上記(1)に記載の運動生理機能向上剤、
(10)プロアントシアニジンが、オリゴメリックプロアントシアニジンであることを特徴とする上記(1)に記載の運動生理機能向上剤、
(11)プロアントシアニジンが、松樹皮由来抽出物であることを特徴とする上記(1)に記載の疲労防止・改善用健康食品、及び
(12)プロアントシアニジンが、オリゴメリックプロアントシアニジンであることを特徴とする上記(1)に記載の疲労防止・改善用健康食品、
に関する。
また、本発明は、
(13)プロアントシアニジンをヒトに投与することを特徴とする運動生理機能を向上させる方法、
(14)疲労が防止・改善にされることを特徴とする上記(13)に記載の運動生理機能を向上させる方法、
(15)筋肉疲労が防止・改善されることを特徴とする上記(13)に記載の運動生理機能を向上させる方法、
(16)プロアントシアニジンを有効成分とする健康食品をヒトに投与することを特徴とする疲労防止・改善方法、
(17)健康食品が固形食品、ゲル状食品又は飲料であることを特徴とする上記(16)に記載の疲労防止・改善方法、
(18)飲料が清涼飲料又は茶飲料であることを特徴とする上記(17)に記載の疲労防止・改善方法、
(19)錠剤、ピル、カプセル、顆粒、粉末、散剤、液剤の形態で使用されることを特徴とする上記(13)に記載の運動生理機能を向上させる方法、
(20)錠剤、ピル、カプセル、顆粒、粉末、散剤、液剤の形態で使用されることを特徴とする上記(16)に記載の疲労防止・改善方法、
(21)プロアントシアニジンが、松樹皮由来抽出物であることを特徴とする上記(13)に記載の運動生理機能を向上させる方法、
(22)プロアントシアニジンが、オリゴメリックプロアントシアニジンであることを特徴とする上記(13)に記載の運動生理機能を向上させる方法、
(23)プロアントシアニジンが、松樹皮由来抽出物であることを特徴とする上記(16)に記載の疲労防止・改善方法、及び
(24)プロアントシアニジンが、オリゴメリックプロアントシアニジンであることを特徴とする上記(16)に記載の疲労防止・改善方法、
に関する。
また、本発明は、
(25)運動生理機能を向上させる医薬を製造するためのプロアントシアニジンの使用、
(26)疲労が防止・改善される医薬であることを特徴とする上記(25)に記載の使用、
(27)筋肉疲労が防止・改善される医薬であることを特徴とする上記(25)に記載の使用、
(28)疲労を防止・改善する健康食品を製造するためのプロアントシアニジンの使用、
(29)健康食品が固形食品、ゲル状食品又は飲料であることを特徴とする上記(28)に記載の使用、
(30)飲料が清涼飲料又は茶飲料であることを特徴とする上記(29)に記載の使用、
(31)医薬が錠剤、ピル、カプセル、顆粒、粉末、散剤、液剤の形態であることを特徴とする上記(25)に記載の使用、
(32)健康食品が錠剤、ピル、カプセル、顆粒、粉末、散剤、液剤の形態であることを特徴とする上記(28)に記載の使用、
(33)プロアントシアニジンが、松樹皮由来抽出物であることを特徴とする上記(25)に記載の使用、
(34)プロアントシアニジンが、オリゴメリックプロアントシアニジンであることを特徴とする上記(25)に記載の使用、
(35)プロアントシアニジンが、松樹皮由来抽出物であることを特徴とする上記(28)に記載の使用、及び
(36)プロアントシアニジンが、オリゴメリックプロアントシアニジンであることを特徴とする上記(28)に記載の使用、
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の組成物は、運動時の乳酸値等の上昇を抑制し、継続的かつ効果的な運動の実施を容易にすることができる。特に新しい運動を開始する場合には局所的に筋肉組織への負荷が急激に高まるため、疲労感が高まり運動継続の障害になりがちであるが、本発明の組成物はこのような障害を抑制し、運動生理機能を高めて継続的な運動を容易に遂行できる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において使用するプロアントシアニジンとは、フラバン−3−オールおよび/またはフラバン−3,4−ジオールを構成単位とする重合度が2以上、好ましくは2〜10量体、さらに好ましくは2〜4量体の縮重合体からなる化合物群、誘導体及びそれらの立体異性体を指称する。プロアントシアニジンのうち、フラバン−3−オールおよび/またはフラバン−3,4−ジオールを構成単位とする重合度が2〜4の縮重合体をOPC(オリゴメリックプロアントシアニジン;oligomeric proanthocyanidin)という。OPCは強力な抗酸化物質であり(参照:特公平3−7232)、植物の葉、樹皮、果物の皮もしくは種子の部分に豊富に含有されている。具体的には、ブドウ、松の樹皮、ピーナッツの薄皮、イチョウ、ニセアカシアの果実、コケモモ、ブルーベリー、イチゴ、アボガド、大麦、小麦、大豆、黒大豆、カカオなどに含まれている。また、西アフリカのコーラナッツ、ペルーのラタニアの根にもOPCが含まれていることが知られている。OPCはヒトの体内では生成することができない物質である。
【0009】
本発明に係る運動生理機能向上剤等に含有されるプロアントシアニジンとしては、原料の由来あるいは原料の利用部分、製造法、精製法については何ら制限されないが、上記の樹皮、果実もしくは種子の粉砕物、またはこれらの抽出物のような食品原料を使用することができる。特に松樹皮、さらに好ましくはOPCが豊富に含まれているフランス海岸松樹皮の抽出物を用いることが好ましい。フランス海岸松樹皮はプロアントシアニジンの原料として好ましく用いられる。
【0010】
プロアントシアニジンは、公知の方法[例えば、特公平3−7232に記載の方法あるいは松の樹皮からの抽出法(R.W.Hemingway等,フィトケミストリー(Phytochemistry),1983年,第22巻,275−281頁]あるいはそれに準じた方法を採用することによって上記各種植物体から容易に得ることができる。
以上のようにして得られたプロアントシアニジンは、液状もしくは半固形状の形態で得られるが、このものから抽出溶媒を減圧留去、スプレードライ、凍結乾燥等の公知の方法によって除去すれば、そのままプロアントシアニジン含有濃縮物や乾燥物として使用することができる。さらに精製するには、カラムクロマトグラフィー、向流分配法等の公知の精製手段を採用して、目的を達成することができる。
【0011】
本発明の運動生理機能向上剤等の組成物中のプロアントシアニジンは水によく溶解し、生体への吸収性が高い。酸性、中性、アルカリ性のいずれの条件においても安定性が高く、その機能を維持した状態で飲食物に配合することが容易である。また、摂取開始後短期間で効果が期待でき、少量の摂取でも十分な効果を得られるため、飲食物としての摂取許容量および摂取形態に制限のある幼児や老人等への食事素材として、運動部員の合宿中の携帯食品として継続摂取する場合においても、利用価値が高い。
【0012】
本発明の運動生理機能向上剤等の組成物は、運動生理機能を向上させるためのいかなる用途の組成物であってもよく、例えば飲食品、健康食品、機能性食品、医薬組成物等であってよい。いずれの用途においても、組成物は、錠剤、ピル、カプセル、顆粒、粉末、散剤、液剤等の固形又は溶液の形態に公知の方法により適宜調製することができる。即ち、本発明の運動生理機能向上剤として有用な固形製剤又は液状製剤は、プロアントシアニジンと所望により種々の添加剤とを混合し、従来充分に確立された公知の製剤製法を用いることにより製造される。例えば賦形剤、pH調整剤、清涼化剤、懸濁化剤、希釈剤、消泡剤、粘稠剤、溶解補助剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、抗酸化剤、コーティング剤、着色剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、可塑剤又は香料などと混合した上記組成物として用いてよい。
【0013】
上記賦形剤としては、例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール或いはキシリトールなどの糖アルコール、ブドウ糖、白糖、乳糖或いは果糖などの糖類、結晶セルロース、カルメロースナトリウム、リン酸水素カルシウム、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、β−シクロデキストリン、軽質無水ケイ酸、酸化チタン、又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0014】
上記pH調整剤としては、例えばクエン酸、リンゴ酸、リン酸水素ナトリウム又はリン酸二カリウムなどが挙げられる。
上記清涼化剤としては、例えば1−メントール又はハッカ水などが挙げられる。
上記懸濁化剤としては、例えば、カオリン、カルメロースナトリウム、キサンタンガム、メチルセルロース又はトラガントなどが挙げられる。
上記希釈剤としては、例えば精製水、エタノール、植物油又は乳化剤等が挙げられる。
上記消泡剤としては、例えばジメチルポリシロキサン又はシリコン消泡剤などが挙げられる。
【0015】
上記粘稠剤としては、例えばキサンタンガム、トラガント、メチルセルロース又はデキストリンなどが挙げられる。
上記溶解補助剤としては、例えばエタノール、ショ糖脂肪酸エステル又はマクロゴールなどが挙げられる。
上記崩壊剤としては、例えば低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ又は部分アルファー化デンプンなどが挙げられる。
上記結合剤としては、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニールピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、プルラン、アルファー化デンプン、カンテン、トラガント、アルギン酸ナトリウム又はアルギン酸プロピレングリコールエステルなどが挙げられる。
【0016】
上記滑沢剤としては、例えばステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ポリオキシル、セタノール、タルク、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、ジメチルポリシロキサン、ミツロウ又はサラシミツロウなどが挙げられる。
上記抗酸化剤としては、例えばジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロール、アスコルビン酸又はクエン酸などが挙げられる。
上記コーティング剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、メタアクリル酸コポリマー、ポリビニルアセタートジエチルアミノアセテート又はセラックなどが挙げられる。
上記着色剤としては、例えばウコン抽出液、リボフラビン、酸化チタン又はカロチン液などが挙げられる。
【0017】
上記矯味矯臭剤としては、例えば果糖、D−ソルビトール、ブドウ糖、サッカリンナトリウム、単シロップ、白糖、ハチミツ、アマチャ、カンゾウ、クエン酸、アジピン酸、アスコルビン酸、オレンジ油、トウヒチンキ、ウイキョウ油、ハッカ又はメントールなどが挙げられる。
上記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、ポリソルベート類、ラウリル硫酸ナトリウム、マクロゴール類又はショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。
上記可塑剤としては、例えばクエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール、トリアセチン又はセタノールなどが挙げられる。
上記香料としては、例えば、動物性香料或いは植物性香料等の天然香料、又は単離香料或いは純合成香料等の合成香料などが挙げられる。
【0018】
製剤中のプロアントシアニジンの量は、製剤全体に対して、通常約1〜80重量%、好ましくは約2〜40重量%である。
飲食品の場合は、飲食品製造時にプロアントシアニジン又は上記プロアントシアニジン含有製剤を配合することにより製造される。例えば、パン、チューインガム、クッキー、チョコレート、シリアル等の固形食品、ジャム、アイスクリーム、ヨーグルト、ゼリー等のジャム状、クリーム状又はゲル状食品、ジュース、コーヒー、ココア、緑茶、ウーロン茶、紅茶等の飲料等あらゆる食品形態にすることが可能である。また、調味料、食品添加物等に配合することもできる。
【0019】
本発明の運動生理機能向上剤は、その種類、その剤型、また患者もしくは摂取者の年令、体重、適応症状または状態などによって異なるが、例えば内服剤の場合は、成人1日数回、1回量約1〜500mg、好ましくは3〜200mg程度投与するのがよい。また健康食品として摂取する場合も、副作用の心配がないことから内服剤と同等の量を摂取しても問題ない。摂取タイミングは、特に設定しないが、特に運動の前後1時間の間に摂取することで、より高い効果が期待できる。
以下、OPCを豊富に含むフランス海岸松樹皮の抽出物を例に挙げて、実施例により本発明を詳しく説明するが、発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
錠剤の製造
プロアントシアニジンを40重量%以上(OPCとして20重量%以上)含有し、かつカテキンを5重量%以上含有するフランス海岸松樹皮抽出物を8重量%、結晶セルロース22重量%、乳糖66重量%、ショ糖エステル3重量%、二酸化ケイ素1重量%配合する錠剤(1錠あたり250mg)を製造した(試験食品)。
〔比較例〕
また、プラセボ食品としては、フランス海岸松樹皮抽出物の替わりに結晶セルロースを配合したものを製造した(比較食品)。
【実施例2】
【0021】
ラットを用いたFRAP活性試験;抗酸化評価試験
Wistar系ラット、雄性、9週齢を一晩絶食後、実施例1に記載の松樹皮抽出物もしくはビタミンCを強制経口投与し、経時的に尾静脈より採血して血漿サンプルを得た。血漿サンプルのFRAP値をBenzieの方法(Benzie I.F.F.and Strain J.J.,Anal.Biochem.,1996年,第239巻,p.70−76)により測定し、血中の抗酸化活性の指標としてその経時変化を追跡した。
【0022】
20mM FeClを含有するFRAP試薬990μLに血漿サンプル10μLを添加し、37℃で4分間静置して593nmの吸光度の変化を測定した。標準サンプルとして所定濃度のFeClを含有する溶液で同様の操作を行ない、吸光度の変化からFRAP値の検量線を作成した。その結果、松樹皮抽出物20mg/kg以上で投与後60〜120分後に血中のFRAP値が上昇し、松樹皮抽出物100mg/kgでは投与30〜60分後にはFRAP値が約10%、90〜120分後には約20%の上昇がみられた(図1)。なお、100mg/kgのビタミンC投与でもFRAP値の上昇が見られたが、同じ濃度でも松樹皮抽出物投与のほうが速やかにFRAP値の上昇が観察された。
【実施例3】
【0023】
高齢者の運動トレーニングに対する効果
70−86歳の被験者26名にステップ台を用いた昇降運動トレーニングを1週間実施させた。被験者をサンプル摂取群とプラセボ摂取群の2群に分け、トレーニング開始日からサンプル群には実施例1に記載の錠剤(試験食品)を、プラセボ群には比較例に記載の比較食品を、毎日2粒ずつ摂取させた。トレーニング開始日および終了日に被験者から採血し、疲労の指標としてサンプル群とプラセボ群の血漿中乳酸脱水素酵素(LDH)の変化を比較した。その結果、プラセボ群ではLDHの有意な上昇が見られたのに対してサンプル群ではLDHの上昇が抑制された(図2)。
【実施例4】
【0024】
70歳以上の被験者25名にステップ台を用いた昇降運動トレーニングを12週間実施させた。被験者をサンプル摂取群と非摂取群の2群に分け、サンプル摂取群にはトレーニング開始日から実施例1に記載の錠剤(試験食品)を毎日2粒ずつ摂取させた。トレーニング開始日および終了日に被験者から採血し、筋肉疲労に関わる指標として各群の血清中ミオグロビンおよび過酸化脂質を測定した。その結果、サンプル摂取によりミオグロビンの上昇が抑制され、過酸化脂質が低下することが確認された(図3)。
【実施例5】
【0025】
長距離ランナーのトレーニングにおける運動生理機能に及ぼす効果
男子長距離ランナー12名を被験者として実施例1に記載の錠剤(試験食品)およびプラセボとして比較例に記載の比較食品を1日あたり4粒、各7日間摂取させるダブルブラインド・クロスオーバー試験を実施した。被験者に各7日間の試験食品摂取期間と比較食品摂取期間に同一トレーニングを実施し、各期間の前後に血液検査を実施した。
血液生化学検査により、疲労の指標として血漿中乳酸脱水素酵素(LDH)およびクレアチニンキナーゼ(CPK)を測定した結果、比較食品摂取期間の前後ではLDHおよびCPKともに変化は見られなかった。一方、試験食品摂取期間終了時において、LDHおよびCPKが摂取前と比較して有意に低下した(図4)。
さらに、筋肉疲労の指標として、各期間の最終日に最大下負荷運動を実施し、前後の血中乳酸濃度を経時的に測定した。その結果、運動負荷前の安静時血中乳酸値は両期間で差が見られなかったが、乳酸値の上昇がみられる運動2分後から15分後において、試験食品摂取時は比較食品摂取時よりも有意な低値を示した。(図5)
なお、試験期間中、各被験者にはブラインドで試験食品および比較食品をクロスオーバーで摂取させ、測定者に対しても各被験者がいずれの錠剤を摂取しているかを告知せずに試験を実施したが、トレーニング時の疲労度の違いから被験者および測定者ともに試験食品摂取期間を言い当てることができた。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の組成物は、運動時の乳酸値等の上昇を抑制することにより筋肉疲労を軽減し、継続的な運動を容易にするための疲労防止・改善剤、特に筋肉疲労防止・改善剤、及び疲労防止・改善用健康食品として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
[図1]図1は、松樹皮抽出物投与ラットのFRAP値の経時変化を示す。図中、●は松樹皮抽出物20mg/kg投与群、■は松樹皮抽出物50mg/kg投与群、▲は松樹皮抽出物100mg/kg投与群、○はビタミンC100mg/kg投与群を示す。
[図2]図2は、1週間トレーニングによる血漿中乳酸脱水素酵素上昇に対する松樹皮抽出物の摂取の影響を示す。
[図3]図3は、12週間トレーニング時の血清中ミオグロビンおよび過酸化脂質上昇に対する松樹皮抽出物の摂取の影響を示す。
[図4]図4は、長距離ランナーの血漿中乳酸脱水素酵素(LDH)およびクレアチニンキナーゼ(CPK)に対する松樹皮抽出物の摂取の影響を示す。
[図5]図5は、長距離ランナーの血中乳酸値上昇に対する松樹皮抽出物の摂取の影響を示す。横軸は、運動負荷開始後の時間を示す。図中、■は試験食品摂取群、○は比較食品摂取群を示す。*は比較食品接種群に対する有意差p<0.05を示し、**は比較食品接種群に対する有意差p<0.01を示す。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロアントシアニジンを有効成分として含有することを特徴とする運動生理機能向上剤。
【請求項2】
疲労が防止・改善にされることを特徴とする請求項1に記載の運動生理機能向上剤。
【請求項3】
筋肉疲労が防止・改善されることを特徴とする請求項1に記載の運動生理機能向上剤。
【請求項4】
プロアントシアニジンを有効成分として含有することを特徴とする疲労防止・改善用健康食品。
【請求項5】
健康食品が固形食品、ゲル状食品又は飲料であることを特徴とする請求項4に記載の疲労防止・改善用健康食品。
【請求項6】
飲料が清涼飲料又は茶飲料であることを特徴とする請求項5に記載の疲労防止・改善用健康食品。
【請求項7】
錠剤、ピル、カプセル、顆粒、粉末、散剤、液剤の形態で使用されることを特徴とする請求項1に記載の運動生理機能向上剤。
【請求項8】
錠剤、ピル、カプセル、顆粒、粉末、散剤、液剤の形態で使用されることを特徴とする請求項4に記載の疲労防止・改善用健康食品。
【請求項9】
プロアントシアニジンが、松樹皮由来抽出物であることを特徴とする請求項1に記載の運動生理機能向上剤。
【請求項10】
プロアントシアニジンが、オリゴメリックプロアントシアニジンであることを特徴とする請求項1に記載の運動生理機能向上剤。
【請求項11】
プロアントシアニジンが、松樹皮由来抽出物であることを特徴とする請求項54に記載の疲労防止・改善用健康食品。
【請求項12】
プロアントシアニジンが、オリゴメリックプロアントシアニジンであることを特徴とする請求項4に記載の疲労防止・改善用健康食品。
【請求項13】
プロアントシアニジンをヒトに投与することを特徴とする運動生理機能を向上させる方法。
【請求項14】
疲労が防止・改善にされることを特徴とする請求項13に記載の運動生理機能を向上させる方法。
【請求項15】
筋肉疲労が防止・改善されることを特徴とする請求項13に記載の運動生理機能を向上させる方法。
【請求項16】
プロアントシアニジンを有効成分とする健康食品をヒトに投与することを特徴とする疲労防止・改善方法。
【請求項17】
健康食品が固形食品、ゲル状食品又は飲料であることを特徴とする請求項16に記載の疲労防止・改善方法。
【請求項18】
飲料が清涼飲料又は茶飲料であることを特徴とする請求項17に記載の疲労防止・改善方法。
【請求項19】
錠剤、ピル、カプセル、顆粒、粉末、散剤、液剤の形態で使用されることを特徴とする請求項13に記載の運動生理機能を向上させる方法。
【請求項20】
錠剤、ピル、カプセル、顆粒、粉末、散剤、液剤の形態で使用されることを特徴とする請求項16に記載の疲労防止・改善方法。
【請求項21】
プロアントシアニジンが、松樹皮由来抽出物であることを特徴とする請求項13に記載の運動生理機能を向上させる方法。
【請求項22】
プロアントシアニジンが、オリゴメリックプロアントシアニジンであることを特徴とする請求項13に記載の運動生理機能を向上させる方法。
【請求項23】
プロアントシアニジンが、松樹皮由来抽出物であることを特徴とする請求項16に記載の疲労防止・改善方法。
【請求項24】
プロアントシアニジンが、オリゴメリックプロアントシアニジンであることを特徴とする請求項16に記載の疲労防止・改善方法。
【請求項25】
運動生理機能を向上させる医薬を製造するためのプロアントシアニジンの使用。
【請求項26】
疲労が防止・改善される医薬であることを特徴とする請求項25に記載の使用。
【請求項27】
筋肉疲労が防止・改善される医薬であることを特徴とする請求項25に記載の使用。
【請求項28】
疲労を防止・改善する健康食品を製造するためのプロアントシアニジンの使用。
【請求項29】
健康食品が固形食品、ゲル状食品又は飲料であることを特徴とする請求項28に記載の使用。
【請求項30】
飲料が清涼飲料又は茶飲料であることを特徴とする請求項29に記載の使用。
【請求項31】
医薬が錠剤、ピル、カプセル、顆粒、粉末、散剤、液剤の形態であることを特徴とする請求項25に記載の使用。
【請求項32】
健康食品が錠剤、ピル、カプセル、顆粒、粉末、散剤、液剤の形態であることを特徴とする請求項28に記載の使用。
【請求項33】
プロアントシアニジンが、松樹皮由来抽出物であることを特徴とする請求項25に記載の使用。
【請求項34】
プロアントシアニジンが、オリゴメリックプロアントシアニジンであることを特徴とする請求項25に記載の使用。
【請求項35】
プロアントシアニジンが、松樹皮由来抽出物であることを特徴とする請求項28に記載の使用。
【請求項36】
プロアントシアニジンが、オリゴメリックプロアントシアニジンであることを特徴とする請求項28に記載の使用。

【国際公開番号】WO2004/112510
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【発行日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507189(P2005−507189)
【国際出願番号】PCT/JP2004/006548
【国際出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】