説明

運動装置及び運動構造体

【課題】部品点数が少なく、追加工程を必要とせず、作業性及び生産性が飛躍的に向上され、組立後も簡便かつ短時間で分解可能な運動装置及び運動構造体を提供することにある。
【解決手段】第1延在部材1及び第2延在部材11が長手方向に相対移動可能な運動装置10であって、前記相対移動可能とされている移動範囲を規制するための規制部8が設けられ、前記規制部8は、前記第1延在部材1に一体に形成される突起部2と、前記第2延在部材11に一体に形成される係合部12と、を備えており、前記突起部2は、支持部4と、前記支持部4の先端側に設けられるとともに前記第2延在部材11に向け突出される突出部5と、を有し、前記係合部12は、前記突起部2の前記突出部5を案内する案内部13と、該突出部5に当接する当接部14と、を有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1延在部材と、この第1延在部材と同一方向に延在するとともに該第1延在部材に係合する第2延在部材と、を有し、これら第1延在部材及び第2延在部材が前記延在する長手方向に相対移動可能とされている運動装置及び運動構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、収納家具やコピー機などに用いられる引き出しには、そのスライド移動をスムースに行うために、該引き出しの両側面にスライドレール等の運動装置が配設されたものが知られている。このような運動装置は、少なくとも2つの相対移動可能なレール部材が対面するようにして係合されており、これらレール部材同士がその延在する長手方向に相対移動する。このような運動装置としては、例えば特許文献1に開示されるものが知られている。
【0003】
特許文献1のスライドレールは、延在する2つのアウターメンバーと、これらアウターメンバーの間に挟まれるようにして配置されるとともに、これらアウターメンバーの長手方向の長さとほぼ同長とされる1つのインナーメンバーと、を備えている。2つのアウターメンバーは、夫々の取り付けられる場所によって、さらに固定側アウターメンバーと移動側アウターメンバーとされ、また、これら2つのアウターメンバーとインナーメンバーとの間には、ボールからなる転動体を保持するリテーナが夫々設けられている。
【0004】
そして、これらの部材が前記延在する方向に相対移動可能なように組み合わされ係合されている。すなわち、2つのアウターメンバーとインナーメンバーとの夫々の間には、これらを互いに長手方向に相対移動させるためのリテーナが設けられており、固定側アウターメンバー及びインナーメンバー、インナーメンバー及び移動側アウターメンバーが、夫々互いに滑らかに相対移動されるようになっている。
【0005】
この相対移動に際して、固定側アウターメンバー及びインナーメンバー、或いはインナーメンバー及び移動側アウターメンバーが夫々互いの長手方向の相対位置を最大に伸長せしめられた状態を超えてしまうと、互いの前記係合が外れてしまうため、この最大に伸長せしめられた状態を超えないようにその移動範囲を制限する必要がある。
【0006】
また、固定側アウターメンバー及びインナーメンバー、インナーメンバー及び移動側アウターメンバーが夫々互いの長手方向の相対位置を最小に収縮せしめられた状態においても、これら部材がその収縮の状態を超えて相対移動し、逆に伸長した状態とならないように相対移動を制限することが行われている。
【0007】
これら相対移動の範囲を制限するために、例えば、次のような手段が用いられている。すなわち、まずアウターメンバーの長手方向の一端部に、インナーメンバーに向け突出させるようにしてストッパー部を設けておき、また、該インナーメンバーの長手方向の他端部にも、前記アウターメンバーに向け突出させるようにしてストッパー部を設けておき、これらアウターメンバーとインナーメンバーとを組み上げ係合した後、さらに該アウターメンバーの長手方向の他端部からこのインナーメンバーに向け、該インナーメンバーの前記ストッパー部よりも長手方向の外方側に配置させるようにして、もう1つのストッパー部を突出させる。
【0008】
すなわち、これによりインナーメンバーの1つのストッパー部は、アウターメンバーの両端部に設けられる2つのストッパー部にその長手方向を挟まれるようにして配置されるとともに、アウターメンバー及びインナーメンバーの相対移動の範囲が、該インナーメンバーのストッパー部とアウターメンバーのいずれか一方のストッパー部とが当接することによって長手方向の両方向ともに制限されるようになっている。
【0009】
また、特許文献2には、インナレールをアウタレールに収納する際に、大きな押圧力を与えることなく、該インナレールをアウタレールに自動的に引き込ませるとともに、引き込んだ状態を保持することができる保持機能付きの運動装置に係る技術が開示されている。これによれば、引き出しの半開き状態が解消され、安全性、利便性が向上するとともに、揺れや振動を与えられても使用者の意に反して引き出しが勝手に開いてしまうようなことがない。
【0010】
また、特許文献3には、前述のような運動装置を構成しているレール部材の一方が、移動体である引き出しに一体に成形されており、他方が基体である筐体に配設されて、これら移動体と基体とが相対移動可能に形成される運動構造体に係る技術が開示されている。これによれば、部品点数をより削減することができ、組立の作業性が向上する。
【特許文献1】特許第3291272号公報
【特許文献2】特許第3933684号公報
【特許文献3】特開2002−17486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に示されるような運動装置においては、アウターメンバーとインナーメンバーとからなる一対のレール部材を一旦係合した状態で、さらに新たなストッパー部を形成させる必要があるため、製造時の作業が煩雑となりがちであった。すなわち、この新たなストッパー部を形成させるために、例えば、別部品のストッパー部材や該ストッパー部材を固定するためのネジ等を用いて部品点数を増大させたり、或いはこのストッパー部をレール部材と一体に突出させるためにプレス工程やベンダー(曲げ)工程が追加されたりして、製造の作業性が妨げられていた。
【0012】
また、一対のレール部材には、夫々の部材に向け突出するようにして予め設けられるストッパー部が存在しているので、これらレール部材同士の組み立ては、その互いに係合させる長手方向の向きが一定方向のみに定められており、製造の際、これらレール部材同士の互いの係合する向きを確認するための確認工程が必要であり、組立の作業性が妨げられていた。
【0013】
また、このような運動装置を組み立てるにあたり、前述したような追加工程や技術知識を必要とするために、例えば、この運動装置をレール部材毎に単品で納品し客先サイドで組み立てたいというような要望に柔軟に応えることができず、種々様々な要望・用途に対応することはできなかった。
【0014】
また、一度組み上げられた運動装置を再び分解するには、新たに追加されたストッパー部を取り外したり曲げ倒したりする必要があり、メンテナンス等の際に不便であるばかりでなく、この分解作業によって該ストッパー部が紛失したり破損したりして、組み立ての再現性が十分であるとは言えなかった。
【0015】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、部品点数が少なく、追加工程を必要とせず、作業性及び生産性が飛躍的に向上されるとともに、組立後も簡便かつ短時間で分解可能な運動装置及び運動構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。すなわち本発明は、第1延在部材と、前記第1延在部材と同一方向に延在するとともにこの第1延在部材に係合する第2延在部材と、を有し、これら第1延在部材及び第2延在部材が前記延在する長手方向に相対移動可能な運動装置であって、前記相対移動可能とされている移動範囲を規制するための規制部が設けられ、前記規制部は、前記第1延在部材に一体に形成される突起部と、前記第2延在部材に一体に形成される係合部と、を備えており、前記突起部は、支持部と、前記支持部の先端側に設けられるとともに前記第2延在部材に向け突出される突出部と、を有し、前記係合部は、前記突起部の前記突出部を案内する案内部と、該突出部に当接する当接部と、を有していることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る運動装置によれば、第1延在部材及び第2延在部材は長手方向に相対移動可能とされているとともに、その移動範囲を規制するための規制部が設けられている。この規制部は、夫々の延在部材に互いに対面するようにして設けられる突起部と係合部とを備えており、これらが第1延在部材と第2延在部材とに夫々一体とされている。そして、この突起部の突出部が、係合部の当接部に当接することによって、これら第1延在部材と第2延在部材との長手方向の移動範囲が規制されるようになっている。
【0018】
すなわち、第1延在部材と第2延在部材との相対的な移動範囲を規制するための規制部が、これら第1延在部材と第2延在部材とに一体に形成されているので、従来のように、これら延在部材同士を組み上げ係合させた状態とした後に、新たに別部品のストッパー部材等を取り付ける必要がなく、部品点数が低減され、作業性が向上する。
【0019】
また本発明の運動装置において、前記規制部が、少なくとも2つ設けられ、前記第1延在部材と前記第2延在部材との前記移動範囲が、互いに離反させる伸長方向及び互いに近接させる収縮方向において夫々規制されることとしてもよい。
【0020】
本発明によれば、第1延在部材と第2延在部材との相対移動範囲を規制する規制部が少なくとも2つ設けられており、互いの伸長方向と収縮方向との相対移動が、2つの規制部により夫々規制されるようになっている。従って、これら第1延在部材と第2延在部材とは、その長手方向の伸長方向及び収縮方向の両方向ともに移動範囲を規制されることによって互いの係合が外れないようにされているので、例えば、この運動装置を用いて引き出し等を形成した際に、使用者が運動装置の移動範囲を気にすることなく使用でき、利便性、安全性に優れている。
【0021】
また本発明の運動装置において、前記第1延在部材が、前記突起部を2つ備えているとともに、これら2つの突起部が、該第1延在部材の長手方向の中心線と該長手方向に直交する幅方向の中心線とが交差する中心点を中心として、点対称に配設されていることとしてもよい。
【0022】
本発明によれば、第1延在部材と第2延在部材との長手方向の相対移動範囲を規制するための規制部の突起部が、この第1延在部材に2つ備えられているとともに、これら2つの突起部の該第1延在部材上に配設される位置関係が、前記中心点を中心として点対称とされているので、これら2つの突起部を備える第1延在部材は、その組み立ての係合の際、相手方となる第2延在部材に対しその長手方向の係合の向きを制限されない。
【0023】
すなわち、これら第1延在部材と第2延在部材とは、係合前に配置される長手方向の相対位置関係が、一方側と他方側とであっても、逆に他方側と一方側とであっても、どちらの状態から係合されても一定のストローク長を有する正規の係合状態に組み立てられるようになっている。また、これら第1延在部材と第2延在部材との相対位置関係が前記幅方向の向きに上下反転した状態であっても、同様に正規の係合状態に組み立てられるようになっている。
【0024】
従って、組立の際、第1延在部材及び第2延在部材の、互いの係合する向きを確認するための確認工程が一切不要であり、作業性が飛躍的に向上する。また、係合する向きの間違いによる運動不具合や故障等が一切発生しないため、例えば、この運動装置を延在部材毎に単品で納品し客先サイドで組み立てて使用したり、メンテナンスしたりする等、さらに多種多様な要望・用途に対応することが可能である。
【0025】
また本発明の運動装置において、前記第1延在部材の前記支持部が、弾性変形可能に形成されており、前記第1延在部材と前記第2延在部材とを係合させる際に弾性変形され、該支持部の支持する前記突出部が、前記第2延在部材の前記案内部に嵌まり込むように構成されていることとしてもよい。
【0026】
本発明によれば、第1延在部材の突起部の突出部を支持する支持部は、弾性変形可能に形成されている。そして、第1延在部材と第2延在部材とを長手方向に近接させるようにして相対移動させ係合する際に、第1延在部材の突出部が第2延在部材に当接されるとともに、さらにこの相対移動を進めていくと、この支持部が弾性変形して該突出部を第2延在部材の係合部の案内部に案内し、自動的に嵌め込ませるようになっている。
【0027】
すなわち、運動装置の組み立てに際し、延在部材同士の係合は、ただ単に長手方向にこれら延在部材同士を近接させて相対移動させることのみによって行われる。従って、係合のために工具や部品を使用したり、また従来のように、第1延在部材と第2延在部材とを係合した後に新たにストッパー部を形成させるためのプレス工程や曲げ工程等の追加工程を行ったりする必要は一切なく、作業工程が大幅に低減され、生産性が向上する。
【0028】
また、この運動装置は、その係合される延在部材同士の分解に際し、突起部の突出部を第2延在部材に対面する側と反対側に離反させるようにして引き起こせば、突出部を支持する支持部が弾性変形され、該突出部と係合部との嵌め合いが解除されるようになっている。従って、前記解除が簡便かつ短時間に行え、かつ、破損や部品紛失の虞もなく再現性に優れている。また、例えばこの突起部に支持部を弾性変形させるための取手部を設けることとすれば、該解除をさらに簡便に行うことができる。
【0029】
また本発明の運動装置において、前記第1延在部材又は前記第2延在部材のうちいずれか一方の部材が2つ設けられており、他方の部材に夫々係合されていることとしてもよい。
本発明によれば、前記一方の部材が夫々他方の部材に係合されているので、この運動装置の長手方向の伸縮の移動範囲をさらに充分に確保することができ、多種多様な要望・用途に対応することが可能である。
【0030】
また本発明の運動装置において、前記一方の部材が、互いに前記他方の部材を挟んで対向するようにして配設されていることとしてもよい。
本発明によれば、この運動装置の収縮方向の移動範囲をより充分に確保することができる。さらに、例えば前記一方の部材を、互いに逆方向に移動可能とすれば、この運動装置の伸長方向の移動範囲もより充分に確保することができる。
【0031】
また本発明の運動装置において、前記長手方向に伸長された状態で一端と他端とに配置される第1、第2延在部材を互いに近接させる方向の移動範囲の終端に向け付勢するための終端付勢手段が備えられており、前記終端付勢手段は、保持ピンと、前記保持ピンを係止可能なカム部材と、を有していることとしてもよい。
【0032】
本発明によれば、長手方向に伸長された状態で一端と他端とに配置される第1、第2延在部材を互いに近接させる方向の移動範囲の終端に向け付勢するための終端付勢手段が備えられており、この終端付勢手段の保持ピンは、例えば引っ張りコイルばねからなる弾性部材に係合され、該弾性部材の付勢力に抗うようにしてこの運動装置の長手方向に常時引っ張られた状態とされているとともに、カム部材に係止可能とされている。このカム部材は、前記長手方向に移動可能とされており、すなわち、この保持ピンは、前記カム部材とともに長手方向に移動可能とされている。
【0033】
カム部材は、例えばその係止する保持ピンに係合する弾性部材の付勢力によって、一端と他端とに配置される第1、第2延在部材を互いに近接する方向の移動範囲の終端に向け引っ張るようになっている。
このように構成される終端付勢手段は、前記移動範囲の終端近傍において、これら延在部材同士を該終端に向け付勢し、互いの引き込みを介助するとともに、該終端まで引き込んだ状態とされた後は、この状態を維持する保持力を有する。
【0034】
このように構成される終端付勢手段においては、カム部材を前記移動範囲の終端に向け軽く移動させるだけで、前記引き込みを行うことができる。すなわち、移動の目的の方向に通常の動作を行うのみで、前記終端近傍での引き込みが自動的に行われるので、使用者の特別な操作を必要としない。
また、カム部材としては、保持ピンに対し作用する例えば溝状からなる案内部分を該保持ピンを備える延在部材とは別の延在部材に形成しさえすれば足りるので、少ない部品点数で簡便かつ低コストでこの運動装置を製造することができる。
【0035】
そして、例えば、この運動装置を用いて支持した家具の引き出し等においては、該引き出しが、閉じられた際の反動により半開き状態となってしまったり、揺れや振動を与えられ意図せずして勝手に開いてしまったりするようなことがなく、安全性、利便性が向上される。
【0036】
また本発明は、前述の運動装置を用いてなる、基体と移動体とを相対移動させるための運動構造体であって、前記基体又は前記移動体の一方に、前記第1延在部材又は第2延在部材の一方の部材が一体に形成され、若しくは、前記基体及び前記移動体の両方に、前記第1延在部材又は第2延在部材が夫々又は別々に一体に形成されていることとしてもよい。
【0037】
本発明によれば、第1、第2延在部材を、例えば、樹脂成形によって引き出し等の移動体と一体に成形したり、筐体等の基体と一体に成形したりして用いることにより、運動構造体の部品点数が低減され、組立の作業性が向上する。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係る運動装置及び運動構造体によれば、部品点数が少なく、追加工程を必要とせず、作業性及び生産性が飛躍的に向上されるとともに、組立後も簡便かつ短時間で分解可能な運動装置及び運動構造体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の第1の実施形態の運動装置としてのスライドレールの第1レールを示す正面図、図2は本発明の第1の実施形態の運動装置としてのスライドレールの第2レールを示す正面図、図3は本発明の第1の実施形態の運動装置としてのスライドレールの伸長状態を示す斜視図、図4は図3のスライドレールを示す正面図、図5は図4のA−A断面を示す平断面図、図6は図4のB−B断面を示す平断面図、図7は本発明の第1の実施形態の運動装置としてのスライドレールを示す側面図、図8は本発明の第1の実施形態の運動装置としてのスライドレールの収縮状態を示す正面図、図9は本発明の第1の実施形態の運動装置としてのスライドレールの変形例を示す平断面図である。
【0040】
本発明の運動装置としてのスライドレール10は、例えば樹脂等からなる、2つの第1レール(第1延在部材)1と、1つの第2レール(第2延在部材)11とから構成されている。
2つの第1レール1は同一形状に形成されており、図1に示すように、正面視略矩形状に形成され、その正面の長手方向に延びる平面部分に2つの突起部2を備えている。これら突起部2は、略矩形孔状に切り欠かれる2つの突起形成溝3内に夫々配置されるようにして、該突起形成溝3の一辺からその切り欠き内に長手方向に延びる支持部4と、該支持部4の先端に設けられる突出部5と、を備えている。
【0041】
突起部2の支持部4は、幅狭の薄板状若しくは角棒状に形成されており、弾性変形可能となっている。また、突起部2の突出部5は、図3に示すように、その先端部分が平面視楔状若しくは矢印状に形成されている。そして、その支持部4と接続する部分である基端から先端へと向け、漸次その平面視の幅を狭めるようにして傾斜する傾斜面を有している。
【0042】
また、突起部2の突出部5の前記基端の部分には、第1レール1の長手方向に直交する平面の係止面5aが設けられている。
また、図7に示すように、この第1レール1は、側面視略C字状に形成されており、その突起部2の配置される平面部分の両端には、該両端から延びるとともに該平面部分を挟むようにして対向配置される2つの凹部7を備えている。図3に示すように、これらの凹部7は、複数の爪部7aと複数の壁部7bとが、第1レール1の長手方向に交互に配置されるようにして形成されており、該第1レール1の長手方向の全長に亘り形成されている。
【0043】
また、図1に示すように、2つの突起部2は、この第1レール1の長手方向の中心線と、該長手方向に直交する幅方向(図1における上下方向)の中心線と、が交差する中心点を中心として、点対称となるように配設されている。そして、第1レール1を移動させる目的物となる別体に取り付け、固定するためのネジ止め用の3つの取り付け孔6も、前記中心点を中心として点対称に配置されている。そして、第1レール1全体が、前記中心点を中心とした点対称形に形成されている。
【0044】
また、図2に示すように、第2レール11は、正面視略矩形状に形成されており、その正面の長手方向に延びる平面部分には、クランク溝状の係合部12が形成されている。この第2レール11の長手方向の外形寸法は、第1レール1とほぼ同長とされており、またその長手方向に直交する幅方向(図2における上下方向)の外形寸法は、第1レール1よりも若干短く形成されている。
【0045】
係合部12は、2つの直線溝状の案内部13を有しており、これら案内部13は、夫々長手方向に延在して形成されるとともに、幅方向に互いにずらされるようにして設けられている。また、これら案内部13同士は、該長手方向の中心位置よりも一端側に偏倚した位置において、該長手方向に直交する幅方向に設けられる溝部によって互いに連通されている。また、これら案内部13の長手方向の外方側の夫々の端部は、該第2レール11の側面部分を切り欠くようにして延びており、また、これら案内部13の長手方向の内方側の夫々の端部は、幅方向に形成されるとともに前記溝部を形成する壁面の当接部14とされている。
【0046】
また、第2レール11の平面部分には、2つの貫通孔15と2つの切り欠き部16とが、夫々該平面に直交するように貫通して設けられている。これら貫通孔15及び切り欠き部16は、該第2レール11を第1レール1に係合した状態のまま、該第1レール1を前記別体にネジ止めして取り付け固定できるように、ネジ及び工具先端を遊嵌可能な孔径とされており、また、第1レール1の取り付け孔6の孔間ピッチに対応するようにして設定されている。
【0047】
また、図7に示すように、この第2レール11は側面視略H字状に形成されており、その前記幅方向の両端部分には、外方に向け突出するようにして図7における上下2つずつ計4つの凸部17が設けられている。これら凸部17は、第2レール11の長手方向全長に亘って形成されており、図2に示すように、その両端部分は、長手方向の外方に向かうにつれ漸次幅方向の内方に向かって傾斜するようにして形成されている。
【0048】
また、第2レール11の係合部12は、正面から見た前記平面部分の反対側の、裏面の平面部分にも形成されており、これら2つの係合部12同士は、互いに長手方向の中心線を中心として回転対称形に形成されている。
【0049】
次に、これら2つの第1レール1及び1つの第2レール11の組み立て手順について説明する。
まず、一の第1レール1及び第2レール11を、互いに長手方向に離間した状態から、長手方向に近接させるようにして相対移動させるとともに、第1レール1の凹部7に、第2レール11の凸部17を嵌め合わせる。これら凹部7と凸部17とが嵌め合わされると、その嵌合部分が互いに摺動可能となっており、第1レール1と第2レール11とは互いのレール部材に案内されるようにして、その長手方向の位置を重ねるように近接しながらスライドして嵌め合わされていく。
【0050】
ここで、図7に示すように、第1レール1の前記平面部分には、対面する第2レール11に向けて突出する突起部2の突出部5が設けられており、レール部材同士の嵌め合わせを進めていくにつれ、該第1レール1の2つの突起部2のうち一方の突起部2の突出部5が、第2レール11の平面部分に当接するようになる。
【0051】
突起部2の突出部5が第2レール11の平面部分に当接した状態で、第1レール1と第2レール11とをさらに近接させるようにして相対移動させていくと、図5に2点鎖線で示すように、この突出部5を支持する支持部4は、該突出部5の前記傾斜面に案内されるようにして次第に第2レール11から離反するように弾性変形するとともに、該突出部5の前記傾斜面が、第2レール11の前記平面部分に乗り上げる。
【0052】
そして、この状態のままさらに第1レール1と第2レール11とを近接させていくと、この一方の突起部2の突出部5は、第2レール11の係合部12の2つの案内部13のうち一方の案内部13と長手方向に重なり合う位置まで移動されるとともに、支持部4の弾性変形の弾性力によって該案内部13に落とし込まれる。
【0053】
このようにして、一方の突起部2の突出部5が係合部12の一方の案内部13に落とし込まれると、図5に示すように、突出部5の係止面5aと、係合部12の当接部14とが対向配置された状態となる。そして、この状態から、第1レール1と第2レール11とを長手方向に離反させる向きに相対移動させると、これら係止面5aと一方の当接部14とが当接され、それ以上前記相対移動を行うことができない。
【0054】
すなわち、これら一方の突起部2の係止面5aと一方の当接部14との当接により、第1レール1及び第2レール11は、互いに長手方向に離反する向きの相対移動を規制されるようになっているとともに、その規制する相対移動の限度位置が、このスライドレール10の長手方向の外形寸法を最大とする伸長状態の位置とされている。
そして、このようにして互いに係合される突起部2と係合部12とによって、規制部8が形成されている。
【0055】
次いで、これら第1レール1と第2レール11とを長手方向にさらに近接させるようにして相対移動させていくと、第1レール1に備えられるとともに、一方の突起部2の前記相対移動の後方側に配置される他方の突起部2が、第2レール11に備えられる他方の案内部13へと案内されつつ挿入されていく。
【0056】
さらに、第1レール1と第2レール11とを近接させるようにして相対移動させていくと、図8に示すように、これら第1レール1と第2レール11とが長手方向に丁度重なり合った状態において、他方の突起部2の突出部5の係止面5aと、係合部12の他方の当接部14とが当接されて、それ以上に前記相対移動を行うことができないようになっている。
【0057】
すなわち、これら他方の突起部2の係止面5aと他方の当接部14との当接により、第1レール1及び第2レール11は、互いに長手方向に近接する向きの相対移動を規制されるようになっているとともに、その規制する相対移動の限度位置が、このスライドレール10の長手方向の外形寸法を最小とする収縮状態の位置とされている。
そして、このようにして互いに係合される突起部2と係合部12とによって、もう1つの規制部8が形成されている。
【0058】
すなわち、一の第1レール1と第2レール11とを係合させた状態で、このスライドレール10は2つの規制部8を有している。そして、この規制部8を形成するにあたり、別部材を接着剤等で取り付ける必要はなく、すなわち、この規制部8は所謂スナップフィット方式で形成されている。
【0059】
また、これら第1レール1と第2レール11とを係合させる長手方向の位置関係は、互いの凹部7と凸部17とが嵌め合わされさえすればいずれでもよく、また、これらレール部材がどのような向きであっても互いに正規の状態に係合させることができる。
【0060】
一方、これら第1レール1と第2レール11との係合を外したい場合には、第1レール1の突起部2の突出部5を第2レール11側から離間させるようにして反対側に引き起こし、該突出部5を支持する支持部4を弾性変形させた状態で、かつ、突出部5の係止面5aと係合部12の当接部14とが当接しないようにして、これら第1レール1と第2レール11とを長手方向に離反させる向きに相対移動させればよい。
【0061】
また、本実施形態では、一の第1レール1と係合された第2レール11の、該第1レールと対面する側と反対側の面に、他の第1レール1を係合させている。これら第1レール1は夫々同一部材で形成されており、また他の第1レール1と第2レール11とを係合する組み立て手順については、前述の一の第1レール1と第2レール11との組み立て手順と同様の方法で行うことができるので、その説明を省略する。
一方、他の第1レール1と第2レール11との係合を外したい場合の手順も、前述の一の第1レール1と第2レール11との取り外し手順と同様である。
【0062】
また、このようにして第2レール11を挟んで対向配置される2つの第1レール1同士は、図8に示す収縮状態においては、互いに長手方向の位置を重ね合うようにして配置され、図3乃至図6に示す伸長状態においては、互いに長手方向の位置を重ね合わさせないようにして配置されている。また、これら2つの第1レール1同士は、収縮状態から伸長状態へ移行する際、又は伸長状態から収縮状態へ移行する際に、互いに長手方向の逆向きに移動可能とされており、これにより、スライドレール10の移動範囲が充分に確保されるようになっている。
【0063】
以上説明したように、本実施形態のスライドレール10によれば、第1レール1及び第2レール11は長手方向に相対移動可能とされているとともに、その移動範囲を規制するための規制部8を設けている。この規制部8は、対面して配置される突起部2と係合部12とからなり、これら突起部2及び係合部12は、第1レール1及び第2レール11に夫々一体とされて形成されている。
【0064】
すなわち、従来のように、これら第1レール1及び第2レール11を組み上げ係合した状態とした後に、新たに別部品のストッパー部材等を取り付ける必要はなく、部品点数が低減されるとともに、生産の作業性が向上する。
【0065】
また、この突起部2の突出部5を支持する支持部4は、弾性変形可能に形成されているとともに、この弾性変形によって、該突出部5を係合部12の案内部13に挿入・離脱可能としているので、これら第1レール1と第2レール11との係合及び取り外しは、該支持部4の弾性変形のみによって非常に簡便に行うことができる。
【0066】
すなわち、従来のように、第1レール1と第2レール11との相対移動範囲を規制するために、新たにストッパー部等を形成させるプレス工程や曲げ工程等の追加工程は必要なく、作業工程が低減され、生産性が向上するとともに、これら第1レール1と第2レール11との着脱が自在であり、かつ、再現性を備えているので、メンテナンス時や組立時の種々様々な要望・用途への対応が可能となる。
【0067】
また、一の第1レール1と第2レール11との間、及び他の第1レール1と第2レール11との間には、夫々2つずつ計4つの規制部8が設けられており、これら規制部8により、2つの第1レール1及び第2レール11の互いの長手方向の伸長・収縮の移動範囲が規制されるようになっている。
【0068】
すなわち、これら第1レール1と第2レール11とは、その長手方向のいずれの方向に相対移動しても互いの係合が外れることがないように構成されているので、例えば、このスライドレール10を用いて引き出し等を形成する際に、使用者がその移動範囲を気にすることなく使用でき、従って利便性、安全性がより向上する。
【0069】
また、規制部8の突起部2が夫々の第1レール1に2つずつ備えられており、これら2つの突起部2同士の配設される位置関係が、第1レール1の長手方向の中心線と幅方向の中心線とが交差する中心点を中心に点対称とされているので、この第1レール1は、その係合の際、相手方となる第2レール11に対しその長手方向の係合の向きを制限されないようになっている。
【0070】
すなわち、これら第1レール1と第2レール11とは、係合前における長手方向の相対位置関係が、一方側と他方側とであっても、或いは他方側と一方側とであっても、その夫々の状態から互いに近接する向きに係合されるだけで、一定のストローク長を有する正規の係合状態へと組み立てられるようになっている。また、これら第1レール1と第2レール11との相対位置関係が幅方向の向きに上下反転した状態であっても、同様に正規の係合状態へ組み立てられるようになっている。
【0071】
従って、組立の際、一対の第1レール1と第2レール11とからなるレール部材同士の互いの係合する向きを確認するための確認工程が一切不要であり、作業性が飛躍的に向上する。また、組立の係合する向きの間違いによる運動不良や故障等が一切発生しないため、例えば、このスライドレール10をレール部材毎に単品で納品し客先サイドで組み立てて使用したり、メンテナンスしたりする等、さらに多種多様な要望・用途に対応することが可能である。
【0072】
また、図9に示すスライドレール20のように、第1レール1の突起部2の突出部5から、第2レール11に対面する側と反対側に向け突出させるようにして取手部9を設けることとすれば、この取手部9を操作して、突出部5を支持する支持部4を容易に弾性変形させることができるので、より簡便にこれら第1レール1と第2レール11との係合を着脱させることが可能である。
【0073】
尚、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、本実施形態では、第1レール1に規制部8の突起部2を設け、第2レール11に規制部8の係合部12を設けることとして説明したが、これに限らず、逆に第2レール11に突起部2を設け、第1レール1に係合部12を設けることとしても構わない。
【0074】
また、本実施形態では第1レール1を2つ設けるとともに、第2レール11を挟んで第1レール1同士を対向配置させることとして説明したが、これに限らず、逆に第2レール11を2つ設けるとともに、第1レール1を挟んで第2レール11同士を対向配置させることとしても構わない。
また、第1レール1と第2レール11とを夫々1つずつ用いて構成したスライドレールであっても構わない。
【0075】
また、第1レール1と第2レール11との相対移動を、第1レール1の凹部7と第2レール11の凸部17との摺動により行うものとして説明したが、これに限らずに、例えばこれら第1レール1と第2レール11との間に複数のボール等からなる転動体を介在させて転動させたり、さらにこれら転動体を保持するリテーナを介在させたりしても構わない。
【0076】
また、本実施形態のスライドレールは、例えば樹脂等からなるものとして説明したが、これに限らず、金属やその他の材料からなるものであっても構わない。
【0077】
また、第1レール1を、長手方向の中心線と幅方向の中心線とが交差する中心点を中心とした点対称形に形成されるものとして説明したが、これに限定されるものではない。
【0078】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図10は本発明の第2の実施形態の運動装置としてのスライドレールの伸長状態を示す正面図、図11は本発明の第2の実施形態のスライドレールが伸長状態から収縮状態へ移行する際の保持ピンの移動を示す説明図、図12は本発明の第2の実施形態のスライドレールの保持ピンが意図せずして待機位置から離脱した際の復帰手順を示す説明図、図13は本発明の第2の実施形態の運動装置としてのスライドレールの変形例を示す正面図である。
尚、前述の第1の実施形態のスライドレール10,20と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0079】
図10に示すように、本実施形態のスライドレール30は、2つの第1レール1(1a,1b)と、これら第1レール1a,1bの間に挟まれるようにして配置される1つの第2レール11とから形成されている。そして、これら2つの第1レール1a,1b及び第2レール11を互いに長手方向に近接させるようにして相対移動させ、スライドレール30の長手方向の外形寸法が最小になるように収縮させた収縮状態のストローク終端位置の僅かに手前側で作用し前記相対移動を付勢するための終端付勢手段31を備えている。
【0080】
スライドレール30の2つの第1レール1a,1bのうち、第1レール1aは、その幅方向の下端部分(図10における下方)に、カム部材32を備えている。また、第1レール1bは、その幅方向の下端部分に、ピン誘導部材33、保持ピン34及び弾性部材35を備えている。そして、終端付勢手段31は、これらカム部材32、ピン誘導部材33、保持ピン34及び弾性部材35を備えて形成されている。
【0081】
第1レール1aのカム部材32は、この第1レール1aと一体に形成されており、第1レール1bの保持ピン34を受け入れ可能な案内溝36を有している。案内溝36は、保持ピン34の側を向くとともに該保持ピン34を受け入れ可能な導入部36aと、該導入部36aに受け入れた保持ピン34を案内するようにして第1レール1aの幅方向の上方(図10における上方)に移動させる作用部36bと、この作用部36bに繋がるとともに保持ピン34を係止しておくためのピン留置部36cと、を備えており、これら導入部36a、作用部36b及びピン留置部36cが円弧を描くようにして滑らかに繋がって形成されている。
【0082】
また、案内溝36の保持ピン34側には、該案内溝36に離間して設けられるピン回復部37が配置されている。ピン回復部37は、第1レール1aの下方に突出する略三角形状に形成されており、長手方向の保持ピン34の側から反対側へ向かうにつれ第1レール1aの幅方向の下方に向かうように傾斜して形成される掬い部37aと、この掬い部37aに滑らかに繋がるようにして形成されるとともに幅方向に延びる壁面を有し凹状とされる仮止め凹部37bと、を有している。
【0083】
また、第1レール1bのピン誘導部材33は、該第1レール1bの下方に突出するようにして矩形平板状に形成されており、その矩形平板状の平面部分を貫通する溝状の誘導溝38を備えている。この誘導溝38は、長手方向に延在する直線溝状の引っ張りガイド部38aと、この引っ張りガイド部38aのカム部材32側の端部に繋がり第1レール1bの幅方向の下方に延びる略円弧溝状の係止凹部38bと、引っ張りガイド部38aのカム部材32側と反対側の端部に繋がり前記下方に延びる直線溝状の退避凹部38cと、を備えており、これら係止凹部38b、引っ張りガイド部38a及び退避凹部38cが滑らかに接続されて形成されている。
【0084】
また、第1レール1bの保持ピン34は、例えば、略二段円柱状に形成されており、その本体部分は第1レール1bの長手方向及び幅方向に移動自在とされ、小径の先端部分は、ピン誘導部材33の誘導溝38に挿入されている。そして、この先端部分が該誘導溝38内を滑らかに移動可能なようになっている。
【0085】
また、例えば引っ張りコイルばねからなる弾性部材35が、この保持ピン34を長手方向のカム部材32の側と反対側へ向け引っ張るようにして、その端部を該保持ピン34に係合させている。また、弾性部材35の保持ピン34の側と反対側の端部は、ピン誘導部材33に立設される係止ピン33aに係止されているとともに、保持ピン34を長手方向のカム部材32の側と反対側へ向け付勢している。
【0086】
また、この保持ピン34が誘導溝38内を移動し係止ピン33aに最も近接される、引っ張りガイド部38aと退避凹部38cとの交差部分に配置された状態においても、該保持ピン34には弾性部材35による付勢力が働くようになっている。
【0087】
次に、このように構成される終端付勢手段31を有するスライドレール30の作用について説明する。
まず、図11(a)に示すように、スライドレール30がその外形寸法を最大に伸長するようにして2つの第1レール1a,1bを長手方向に相対移動した伸長状態において、第1レール1aのカム部材32と第1レール1bのピン誘導部材33とは離間された状態となっている。そして、保持ピン34は、ピン誘導部材33の誘導溝38の係止凹部38bに係止されており、この係止凹部38bが待機位置とされている。また、保持ピン34には、そのカム部材32の側と反対側、すなわちこのスライドレール30の外方に向け常時付勢力が付与されている。
【0088】
次に、図11(b)のようにして、これら2つの第1レール1a,1bを長手方向に近接させるようにして相対移動させていく。この際、待機位置の係止凹部38bに係止される保持ピン34は、カム部材32のピン回復部37に接触することなく、このピン回復部37をその上方側に通過させる。
【0089】
さらに、図11(c)の位置までこれら第1レール1a,1bを相対移動させていくと、第1レール1bの保持ピン34は、第1レール1aのカム部材32の案内溝36の導入部36aへと導入されていく。
【0090】
さらに前記相対移動を進めていくと、図11(d)に示すように、保持ピン34は、案内溝36の作用部36bの円弧状の壁面に沿うようにして案内されていき、その配置される係止凹部38bの溝内を幅方向の上方に向け移動していくとともに、この係止凹部38bの係止状態から離脱される。
【0091】
次いで、保持ピン34は、誘導溝38の係止凹部38bと引っ張りガイド部38aとの交差部分まで移動されるとともに、カム部材32の案内溝36のピン留置部36cに係止された状態となる。すると、図11(e)に示すように、保持ピン34はピン留置部36cに係止されたまま、前記付勢力によって誘導溝38の引っ張りガイド部38aの溝内をスライドレール30の長手方向の外方に向け引っ張られていく。
【0092】
すなわち、保持ピン34の移動によって、保持ピン34に係止するカム部材32及び該カム部材32を備える第1レール1a全体が前記長手方向の外方へ向け引っ張られていくようになっており、2つの第1レール1a,1bの前記相対移動が付勢されるようになっている。
【0093】
そして、図11(f)に示すようにして、2つの第1レール1a,1bが長手方向に丁度重なり合うように相対移動した位置の状態で、規制部8によりそれ以上の相対移動が規制されるとともに、この状態が、スライドレール30の長手方向の外形寸法を最小に収縮した収縮状態とされている。尚、この収縮状態において、保持ピン34は誘導溝38の引っ張りガイド部38aの長手方向の中間近傍に配置されているとともに、前記長手方向の外方に向け付勢力が付与された状態とされている。
【0094】
一方、図11(f)のようにして前記収縮状態にあるスライドレール30を、逆に前記伸長状態に戻すには、前述の手順を逆に進めていけばよい。すなわち、2つの第1レール1a,1bを長手方向に離反させるようにして相対移動させていくと、保持ピン34はカム部材32の案内溝36のピン留置部36cに係止されたままの状態で、前記付勢力に抗うようにして誘導溝38の引っ張りガイド部38aの溝内を係止凹部38bに向け移動していく。
【0095】
そして、保持ピン34が誘導溝38の引っ張りガイド部38aと係止凹部38bとの交差部分まで移動され、さらに前記相対移動が進んでいくと、図11(d)に示すように、該保持ピン34は係止凹部38bの円弧状の壁面に案内されるようにして該係止凹部38bの溝内を幅方向の下方に向け進んでいくとともに、カム部材32の案内溝36のピン留置部36cから離脱される。
【0096】
そして、図11(c)に示すように、保持ピン34は誘導溝38の係止凹部38bに係止されるとともに、カム部材32の案内溝36の導入部36aを通り、該案内溝36から離脱される。この状態において、すでに第1レール1aには前記付勢力は付与されていない。
【0097】
次いで、図11(b)及び図11(a)に示すようにして、スライドレール30が前記伸長状態へと復帰される。
このように、スライドレール30の2つの第1レール1a,1b及びこれら第1レール1a,1bの間に挟まれるようにして配設される第2レール11の長手方向の相対移動は、該相対移動が近接、離反どちらの向きであっても、その前記収縮状態のストローク終端近傍において、終端付勢手段31により互いに近接する向きに付勢力が付与されることとなる。
【0098】
次に、通常、図11(a)に示されるスライドレール30の伸長状態において、誘導溝38の待機位置の係止凹部38bに係止される保持ピン34が、意図せずして該係止凹部38bから離脱してしまった際の前記待機位置への復帰の手順について説明する。
【0099】
図12(a)に示すように、スライドレール30が伸長状態にあって、保持ピン34が誘導溝38の係止凹部38bから離脱し、弾性部材35の付勢力によって誘導溝38の引っ張りガイド部38aの溝内を移動し、該誘導溝38の引っ張りガイド部38aと退避凹部38cとの交差部分に配置されている状態において、まず、第1レール1aを第1レール1bに近接させるようにして長手方向に相対移動させていく。
【0100】
すると、図12(b)に示すように、保持ピン34はカム部材32のピン回復部37に近接されていき、該ピン回復部37の掬い部37aに当接される。さらに相対移動を進めていくと、図12(c)に示すように、保持ピン34はピン回復部37の掬い部37aの傾斜に案内されるようにして、誘導溝38の退避凹部38cの溝内を幅方向の下方に向け移動していく。
【0101】
次いで、図12(d)に示すように、保持ピン34は、ピン回復部37の下方端の掬い部37aから仮止め凹部37bへと滑らかに繋がる形状に沿うようにして、かつ、弾性部材35の付勢力により退避凹部38cの溝内を上方に向け移動していき、誘導溝38の引っ張りガイド部38aと退避凹部38cとの交差部分に再び配置される。
【0102】
この状態で、保持ピン34は、ピン回復部37の仮止め凹部37bに当接可能とされており、次に、図12(e)に示すようにして、第1レール1aと第2レール1bとを長手方向に離反させる向きに相対移動させる。すると、保持ピン34は、ピン回復部37の仮止め凹部37bに係止されるとともに、弾性部材35の付勢力に抗うようにして、誘導溝38の引っ張りガイド部38aの溝内を該誘導溝38の係止凹部38bに向け移動されていく。
【0103】
そして、さらに前記相対移動を進めていくと、保持ピン34は誘導溝38の引っ張りガイド部38aから係止凹部38bへと案内されていき、該係止凹部38bの円弧状の壁面に沿うようにしてこの係止凹部38bの溝内を幅方向の下方に向け移動していく。そして、図12(f)に示すように、係止凹部38bに係止された状態となるとともに、ピン回復部37の仮止め凹部37bからは離脱するようになっている。
【0104】
さらに前記相対移動を進めていくと、前述の図11(a)の状態となり、すなわちこのスライドレール30は、通常の伸長状態へと戻されたこととなる。
【0105】
以上説明したように、本実施形態のスライドレール30によれば、2つの第1レール1a,1bと第2レール11とが長手方向に近接される移動範囲の終端に向け付勢するための終端付勢手段31が備えられており、この終端付勢手段31は、レール部材同士の互いの引き込みを介助するとともに、このスライドレール30が長手方向の外形寸法を最小とする収縮状態においては、レール同士の互いの引き込み状態を維持する保持力を有している。
【0106】
この終端付勢手段31の保持ピン34は、ピン誘導部材33の待機位置の係止凹部38bに係止されている状態から、カム部材32に係止される状態へと、その係止される位置が変更されるが、保持ピン34を係止凹部38bから離脱させるにあたっては、弾性部材35の付勢力に抗う向きの応力等をこの保持ピン34に付与する必要は一切なく、すなわちカム部材32をピン誘導部材33と近接させる方向に軽く移動させるだけで、前記引き込みを行うことができる。
【0107】
また逆に、収縮状態から伸長状態へと向かうときにも、ただ単にレール部材同士を互いに長手方向の離反する向きに相対移動させるだけで、前記引き込みを解除することができる。従って、使用者が引き込みのために余計な操作を行う必要は一切なく、このスライドレール30は、操作が簡便であるとともに利便性に優れている。
【0108】
また、本実施形態のカム部材32及びピン誘導部材33は、夫々第1レール1a,1bに一体に形成されているので、少ない部品点数で、かつ、作業性よく低コストでこのスライドレール30を製造することができる。
【0109】
また、例えば、このスライドレール30を用いて支持した家具の引き出し等において、該引き出しが、閉じられた際の反動により半開き状態となってしまったり、揺れや振動を与えられ意図せずして勝手に開いてしまったりするようなことがなく、安全性、利便性に優れている。
【0110】
また、ピン誘導部材33の誘導溝38は、保持ピン34を係止する待機位置の係止凹部38bと、この係止凹部38bから繋がるようにして長手方向へ延びる引っ張りガイド部38aとを有しているので、保持ピン34がより確実に係止凹部38bに係止されるとともに、通常動作によって待機位置から離脱した際には、この引っ張りガイド部38aに案内されるようにしてスムースに引っ張られて移動するようになっている。従って、この終端付勢手段31の動作をより確実に行わせることができる。
【0111】
さらに、この誘導溝38には、その前記待機位置の係止凹部38bと長手方向の反対側に退避凹部38cが設けられており、また、カム部材32には、保持ピン34を係止凹部38bに復帰させるためのピン回復部37が形成されている。そして、通常の伸長状態において、係止凹部38bに係止される保持ピン34が、意図せずして係止凹部38bから離脱してしまった際には、これらピン誘導部材33の退避凹部38cとカム部材32のピン回復部37とが協働するようにして保持ピン34を再び係止凹部38bに復帰させるようになっている。
【0112】
しかも、この復帰作業にあたっては、従来のように面倒なメンテナンス等を行う必要は一切なく、単に、スライドレール30を伸長状態から収縮状態へ向け途中まで軽く摺動させた後、再び伸長させるだけでよく、従って、非常に利便性に優れている。
【0113】
また、図13に示すスライドレール40のように、終端付勢手段31のカム部材32を第1レール1c(1)の長手方向の一端部から外方へ向け突出させるようにして形成し、ピン誘導部材33、保持ピン34及び弾性部材35を第1レール1d(1)の長手方向の一端部から外方へ向け突出させるようにして形成してもよい。
【0114】
このスライドレール40によれば、前述の第2の実施形態のスライドレール30同様の効果を奏功するとともに、装置全体の幅方向のスペースをより小さくすることができる。すなわち、使用の用途に合わせて、これらスライドレール30又は40を適宜選択して用いることによって、さらに多種多様な要望に対応することが可能となる。
【0115】
尚、本実施形態では、第1レール1a,1bに終端付勢手段31が備えられるものとして説明したが、これに限らず、例えば、このスライドレールを第1レール1aと第2レール11とを1つずつ用いて構成し、これら第1レール1a及び第2レール11に終端付勢手段31を備えることとしても構わない。
【0116】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図14は本発明の第3の実施形態の運動構造体を備える引き出し体を示す概略斜視図である。尚、前述の第1、第2の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0117】
図14に示すように、この引き出し体60は、例えば樹脂等からなり、その本体部分である箱状の筐体61(基体)と、この筐体61に対し相対移動するとともに収納・引き出し可能な引き出し62(移動体)とを有している。また、この引き出し62の両側面部分には、該引き出し62が筐体61に対し往復移動する方向に延在するようにして、2つの第2レール11a(11)がこの引き出し62と一体に成形されて設けられている。
【0118】
また、この引き出し62の第2レール11aに対向配置されるようにして、筐体61の内側の両側面部分には、2つの第1レール1が固定されている。そして、これら筐体61の第1レール1及び引き出し62の第2レール11aによって、運動構造体50が形成されている。
【0119】
この運動構造体50は、前述の実施形態における運動装置としてのスライドレールと同様の規制部8を有しており、前記スライドレールと同様の作用、効果を有している。
【0120】
本実施形態の運動構造体50によれば、その第2レール11aが引き出し62に一体とされて成形されているので、装置の部品点数をより削減することができ、組立の作業性が向上する。
【0121】
尚、本実施形態では移動体としての引き出し62に第2レール11aを一体成形することとして説明したが、これに限らず、基体としての筐体61に第1レール1を一体成形することとしても構わず、またこれら両方を一体成形することとしても構わない。
また逆に、引き出し62に第1レール1を一体成形したり、筐体61に第2レール11aを一体成形したりしてもよい。
【0122】
また、本実施形態では引き出し62に第2レール11aが一体成形され、筐体61に第1レール1が固定されており、すなわちこれら第1レール1と第2レール11aとが、夫々1つずつ用いられる構成として説明したが、これに限らず、例えばこれら引き出し62と筐体61とに、夫々第1レール1が一体成形されており、これら第1レール1同士の間に第2レール11が係合されるように構成されていても構わない。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であればよく、それ以外の構成であっても構わない。
【0123】
また、本実施形態では、運動構造体50を備える引き出し体60として説明したが、運動構造体50を用いて相対移動可能な移動体及び基体であればよく、これに限らずに、例えばこの運動構造体50を、収納家具、冷蔵庫等の家電製品、事務用机、コピー機等のOA機器、メンテナンスの面倒な小型精密機器等のスライド機構部分、操作部を有する装置の該操作部の収納部分等に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の第1の実施形態の運動装置としてのスライドレールの第1レールを示す正面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の運動装置としてのスライドレールの第2レールを示す正面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の運動装置としてのスライドレールの伸長状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の運動装置としてのスライドレールの伸長状態を示す正面図である。
【図5】図4のA−A断面を示す平断面図である。
【図6】図4のB−B断面を示す平断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の運動装置としてのスライドレールを示す側面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態の運動装置としてのスライドレールの収縮状態を示す正面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態の運動装置としてのスライドレールの変形例を示す平断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態の運動装置としてのスライドレールの伸長状態を示す正面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態のスライドレールが伸長状態から収縮状態へ移行する際の保持ピンの移動を示す説明図である。
【図12】本発明の第2の実施形態のスライドレールの保持ピンが意図せずして待機状態から離脱した際の復帰手順を示す説明図である。
【図13】本発明の第2の実施形態の運動装置としてのスライドレールの変形例を示す正面図である。
【図14】本発明の第3の実施形態の運動構造体を備える引き出し体を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0125】
1,1a,1b,1c,1d 第1レール(第1延在部材)
2 突起部
4 支持部
5 突出部
8 規制部
10 スライドレール(運動装置)
11,11a 第2レール(第2延在部材)
12 係合部
13 案内部
14 当接部
20 スライドレール(運動装置)
30 スライドレール(運動装置)
31 終端付勢手段
32 カム部材
34 保持ピン
40 スライドレール(運動装置)
50 運動構造体
61 筐体(基体)
62 引き出し(移動体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1延在部材と、前記第1延在部材と同一方向に延在するとともにこの第1延在部材に係合する第2延在部材と、を有し、これら第1延在部材及び第2延在部材が前記延在する長手方向に相対移動可能な運動装置であって、
前記相対移動可能とされている移動範囲を規制するための規制部が設けられ、
前記規制部は、前記第1延在部材に一体に形成される突起部と、前記第2延在部材に一体に形成される係合部と、を備えており、
前記突起部は、支持部と、前記支持部の先端側に設けられるとともに前記第2延在部材に向け突出される突出部と、を有し、
前記係合部は、前記突起部の前記突出部を案内する案内部と、該突出部に当接する当接部と、を有していることを特徴とする運動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運動装置であって、
前記規制部が、少なくとも2つ設けられ、
前記第1延在部材と前記第2延在部材との前記移動範囲が、互いに離反させる伸長方向及び互いに近接させる収縮方向において夫々規制されることを特徴とする運動装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の運動装置であって、
前記第1延在部材が、前記突起部を2つ備えているとともに、これら2つの突起部が、該第1延在部材の長手方向の中心線と該長手方向に直交する幅方向の中心線とが交差する中心点を中心として、点対称に配設されていることを特徴とする運動装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の運動装置であって、
前記第1延在部材の前記支持部が、弾性変形可能に形成されており、前記第1延在部材と前記第2延在部材とを係合させる際に弾性変形され、
該支持部の支持する前記突出部が、前記第2延在部材の前記案内部に嵌まり込むように構成されていることを特徴とする運動装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の運動装置であって、
前記第1延在部材又は前記第2延在部材のうちいずれか一方の部材が2つ設けられており、他方の部材に夫々係合されていることを特徴とする運動装置。
【請求項6】
請求項5に記載の運動装置であって、
前記一方の部材が、互いに前記他方の部材を挟んで対向するようにして配設されていることを特徴とする運動装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の運動装置であって、
前記長手方向に伸長された状態で一端と他端とに配置される第1、第2延在部材を互いに近接させる方向の移動範囲の終端に向け付勢するための終端付勢手段が備えられており、
前記終端付勢手段は、保持ピンと、前記保持ピンを係止可能なカム部材と、を有していることを特徴とする運動装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の運動装置を用いてなる、基体と移動体とを相対移動させるための運動構造体であって、
前記基体又は前記移動体の一方に、前記第1延在部材又は第2延在部材の一方の部材が一体に形成され、若しくは、前記基体及び前記移動体の両方に、前記第1延在部材又は第2延在部材が夫々又は別々に一体に形成されていることを特徴とする運動構造体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2009−106657(P2009−106657A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284062(P2007−284062)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】