説明

運搬船

【課題】安価な設備で浚渫土を分級可能な運搬船を提供する。
【解決手段】運搬船1は、浚渫土を貯留するための貯槽11を備えている。貯槽11には、浚渫土を貯留するための貯槽本体11aと、貯槽本体11aの内部に浚渫土を流動させるための流路13を形成する間仕切り12と、流路13を通過する間に分級後の浚渫土を排出するための排出口11bと、この排出口11bに設けられ、排出口11bから排出される分級後の浚渫土の流量を調整する流量調整バルブ14と、流路13を通過する浚渫土の流速を測定する流速計15とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水底から浚渫した浚渫土を積載して運搬する運搬船に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なダムでは、ダムの底に堆積した泥や土砂等を排出するための浚渫作業が適宜、実施されている。この浚渫作業で浚渫された浚渫土に含まれる砂材は、分級されて建設材料として再利用される。
【0003】
浚渫土から砂材を分級して採取する方法として、例えば、特許文献1には、陸地に分級設備を設けて、この分級設備で浚渫土を分級する方法が開示されている。この方法は、まず、ダムの底から浚渫した浚渫土を運搬船に積載して、陸地に設けられた沈砂池へ搬入し、次に、この沈砂池に隣接するように設けられた地上分級設備で浚渫土を脱水するとともに、分級して砂材を採取する。
【特許文献1】特開2002−143894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した砂材を採取する方法では、沈砂池及び分級設備を陸地に構築するので、莫大な設備投資費がかかるという問題点があった。
また、浚渫土を陸地へ運搬し、その後に分級を行うので、分級が終了するまでに時間がかかるという問題点があった。
そこで、本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、その目的は、安価な設備で浚渫土を運搬しながら分級可能な運搬船を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明の運搬船は、ダム貯水池の水底から浚渫した浚渫土を運搬する運搬船であって、前記浚渫土を流動させながら前記浚渫土に含まれる土砂を自然沈降方式にて分級するとともに、その分級された土砂を貯留するための貯槽を備えることを特徴とする(第1の発明)。
【0006】
本発明による運搬船によれば、浚渫土を分級可能な貯槽を備えているので、運搬船内で浚渫土を分級することができる。そして、運搬船内で分級を行うことができるので、陸地に沈砂池及び分級設備等の大掛かりな設備を構築する必要がない。
また、分級は、自然沈降方式を用いるので、安価に分級設備を構築することができる。
さらに、浚渫土を運搬しながら分級を行うので、分級が終了するまでの時間を短縮することができる。
【0007】
本発明においては、前記貯槽は、複数設けられ、運搬船に脱着可能であることとしても良い。
本発明による運搬船によれば、複数の貯槽を備えているので、一つの貯槽が浚渫土で満杯になったら他の貯槽を利用することができる。また、貯槽は運搬船に脱着可能なので、満杯になった貯槽を取り外し、空の貯槽を取り付けることができる。したがって、一つの貯槽が満杯になったら、他の貯槽を利用して分級を続け、その間に満杯の貯槽を取り外して新しい空の貯槽を取り付けることができる。そして、他の貯槽が満杯になったら直ぐにその空の貯槽を利用することにより、浚渫作業を中断することなく連続して行うことができる。
【0008】
一つの貯槽のみを備えた運搬船で運搬作業を行う従来の場合は、浚渫土を陸地へ運搬している間に浚渫土を積載するための運搬船が無いので、浚渫作業を中断しなければならないが、本発明による運搬船は、複数の貯槽を備えることにより、浚渫作業を中断することなく連続して行うことができるので、浚渫作業を効率良く実施することができる。
【0009】
本発明においては、前記貯槽は、前記浚渫土を貯留するための貯槽本体と、前記貯槽本体の内部に前記浚渫土を流動させるための流路を形成する間仕切りと、前記流路の下流側に、前記流路を通過する間に沈降しなかった土砂を含む前記浚渫土又は前記流路を通過する間に土砂が自然沈降した後の上澄み水を排出するための排出口とを備えることとしても良い。
【0010】
本発明による運搬船によれば、貯槽本体内に間仕切りを設けることにより、浚渫土の流路を形成することができるとともに、浚渫土を低速で流動させることができるので、浚渫土に含まれる土砂を自然沈降させることができる。
さらに、流路の下流側に排出口が設けられているので、流路を通過する間に沈降しなかった土砂、又は土砂が自然沈降した後の上澄み水を貯槽外に排出することができる。
【0011】
本発明においては、前記間仕切りは、前記貯槽本体に脱着可能であることとしても良い。
本発明による運搬船によれば、間仕切りは貯槽本体に脱着可能なので、時間当たり浚渫量、浚渫土の粒径分布等に応じて流路を通過する浚渫土の流速を予め設計等によって決定された所定の値となるように間仕切りの設置位置及び設置間隔を調整することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明による運搬船によれば、安価な設備で浚渫土を分級することができる。また、浚渫土を運搬しながら分級を行うので、分級が終了するまでの時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の第一実施形態に係る運搬船1を用いた浚渫システム2を示す全体概略図である。
図1に示すように、ダム3の底4に堆積した土砂等を浚渫するための浚渫システム2は、水上を移動可能で、作業用の足場となる台船5と、水底の土砂等を掘削する浚渫用掘削機6と、浚渫用掘削機6が所定の位置を掘削できるように、この浚渫用掘削機6を吊り下げて台船5上を移動する走行手段7と、浚渫用掘削機6により掘削された堆積物を地上に運搬するための運搬船1とから構成されている。
【0015】
浚渫用掘削機6は、走行手段7である揚重機のワイヤーロープ8に接続されており、このワイヤーロープ8の巻き取り、繰り出しによって鉛直方向に移動可能である。また、揚重機による移動や伸縮ブーム9の伸縮によって水平方向に移動可能である。
浚渫用掘削機6にて掘削され、台船5上に浚渫された浚渫土は、運搬船1に接続された送泥管10を通って運搬船1内の貯槽11内に送給される。
【0016】
図2は、本実施形態に係る運搬船1を示す平面図であり、図3は、図2のA−A断面図である。
図2及び図3に示すように、運搬船1は、浚渫土を貯留するための貯槽11を備えている。貯槽11には、貯槽本体11aと、貯槽本体11aの内部に浚渫土を流動させるための流路13を形成する間仕切り12と、流路13を通過する間に沈降しなかった土砂を含む浚渫土又は流路13を通過する間に土砂が自然沈降した後の上澄み水(以下、流路13を通過する間に沈降しなかった土砂を含む浚渫土又は流路13を通過する間に土砂が自然沈降した後の上澄み水のいずれか一方を含むものを分級後の浚渫土という。)を排出するための排出口11bと、この排出口11bに設けられ、排出口11bから排出される分級後の浚渫土の流量を調整する流量調整バルブ14と、流路13を通過する浚渫土の流速を測定する流速計15とが設けられている。
【0017】
送泥管10を通って運搬船1に送給された浚渫土は、貯槽11の船尾側端部16に投入され、その後、間仕切り12で形成された流路13に沿って船首側へ流れる。このとき、貯槽11内を流れる浚渫土の流速を予め設計等により決定された所定の値となるように流量調整バルブ14の開閉によって調整し、粒径の異なる土砂の沈降速度の違いを利用した自然沈降方式で、浚渫土内に含まれる土砂を分級する。貯槽11内を流れる浚渫土の流速は、流速計15で浚渫土の流速を測定しつつ、流量調整バルブ14の開閉によって調整する。
【0018】
具体的には、貯槽11内を流れる浚渫土の流速が速い場合には、流量調整バルブ14を絞って貯槽11外に排出される分級後の浚渫土の流量を減少させ、貯槽11内を流れる浚渫土の流速が所定の値になるように調整される。一方、貯槽11内を流れる浚渫土の流速が遅い場合には、流量調整バルブ14を開放して貯槽11外に排出される分級後の浚渫土の流量を増加させ、貯槽11内を流れる浚渫土の流速が所定の値になるように調整される。
【0019】
浚渫土に含まれる土砂のうち、粒径の大きいものは船尾側付近17で沈降し、粒径の小さいものは船首側付近18で沈降する。そして、分級後の浚渫土が排出口11bからダム3に排出される。
排出口11bは、貯槽本体11aの上部に設けられているので、貯槽11内に沈降した土砂が流出することはない。
【0020】
図4は、図2のB−B断面図である。図4に示すように、間仕切り12は、板状の仕切板12aと、この仕切板12aの下面に取り付けられ、貯槽本体11aの底盤11cに設けられている孔19に挿脱可能な突起12bとから構成され、貯槽本体11aの底盤11cに脱着可能である。
【0021】
孔19は、貯槽本体11aの底盤11cに所定の間隔で規則的に複数設けられている。このため、間仕切り12の設置位置及び設置間隔を変更することにより、流路13を狭くしたり、広くしたりすることができる。間仕切り12の設置位置及び設置間隔は、時間当たりの浚渫量や浚渫土に含まれる土砂の粒径分布に応じて適宜調整する。
【0022】
例えば、時間当たりの浚渫量が多い場合には、大量の浚渫土を流動させるために、間仕切り12の設置間隔を広くする。一方、時間当たりの浚渫量が少ない場合には、間仕切り12の設置間隔を狭くする。
【0023】
また、浚渫土中に粒径の小さい土砂が多く含まれている場合には、浚渫土を低速で流動させるために、間仕切り12の設置間隔を広くする。一方、浚渫土中に粒径の大きい土砂が多く含まれている場合には、間仕切り12間隔を狭くする。
【0024】
なお、本実施形態においては、図2に示すように、運搬船1の長手方向に対して直行するように間仕切り12を設置したが、これに限定されるものではなく、図5に示すように、長手方向に平行となるように設置しても良い。
【0025】
以上説明した本実施形態における運搬船1によれば、浚渫土を分級可能な貯槽11を備えているので、運搬船1内で浚渫土を分級することができる。そして、運搬船1内で分級を行うことができるので、陸地に沈砂池及び分級設備等の大掛かりな設備を構築する必要がない。そして、分級は、自然沈降方式を用いるので、安価に分級設備を構築することができる。
【0026】
また、流路13の下流側に排出口11bが設けられているので、分級後の浚渫土を貯槽11外に排出することができる。
そして、貯槽11内に間仕切り12を設けることにより、浚渫土の流路13を形成することができるとともに、浚渫土を低速で流動させることができるので、浚渫土に含まれる土砂を自然沈降させることができる。
さらに、浚渫土を運搬しながら分級を行うので、分級が終了するまでの時間を短縮することができる。
【0027】
また、間仕切り12は脱着可能なので、時間当たり浚渫量、浚渫土の粒径分布等に応じて流路13を通過する浚渫土の流速を予め設計等によって決定された所定の値となるように間仕切り12の設置位置及び設置間隔を調整することができる。さらに、排出口11bに設けられた流量調整バルブ14を調整することにより、貯槽11内の浚渫土の流速を所定の値に保つことができる。
【0028】
次に、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態の運搬船20は、複数の貯槽21a、22aを備えたものである。以下の説明において、上記の実施形態に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
【0029】
図6は、本発明の第二実施形態に係る運搬船20を示す平面図である。
図6に示すように、運搬船20は、船尾側、船首側にそれぞれ第一の貯槽21a、第二の貯槽22aを備えている。
【0030】
第二の貯槽22aには、第一の貯槽21aの排出口11bから排出される分級後の浚渫土を流入させるための供給口22cが設けられており、第一の貯槽21aの排出口11bと第二の貯槽22aの供給口22cとはホース23で接続されている。また、このホース23の途中に流量調整バルブ14が設けられているので、第一実施形態と同様に、第一の貯槽21a内を流れる浚渫土の流速を調整することができる。さらに、第二の貯槽22aの排出口11bにも第一実施形態と同様に、流量調整バルブ14が設けられているので、第二の貯槽22a内を流れる浚渫土の流速も調整することができる。
【0031】
第一及び第二の貯槽21a、22aは、運搬船20の船体に脱着可能であり、揚重機等で吊り上げて搬出することができる。第一及び第二の貯槽21a、22a内に所定量の土砂が堆積したときは、揚重機等でその貯槽21a、22aを吊り上げて搬出し、新たな貯槽21a、22aを運搬船20に設置する。
【0032】
送泥管10を通って運搬船20に送給された浚渫土は、第一の貯槽21aの船尾側端部16に投入され、間仕切り12で形成された流路13に沿って船首側へ流れる。このとき、粒径の大きい土砂が第一の貯槽21a内に沈降する。一方、粒径の小さい土砂は、第一の貯槽21a内で沈降することなく、第一の貯槽21aの排出口11bから排出されて第二の貯槽22aの供給口22cを通過して第二の貯槽22aの船尾側端部16に供給される。第一の貯槽21aの排出口11bは、貯槽21a本体の上部に設けられているので、粒径の大きな土砂が第一の貯槽21aの排出口11bを通過することはない。
【0033】
第二の貯槽22aに供給された粒径の小さい土砂を多く含む浚渫土は、間仕切り12で形成された流路13に沿って船首側へ流れる。このとき、粒径の小さい土砂が第二の貯槽22a内に沈降する。そして、分級後の浚渫土は、第二の貯槽22aの排出口11bからダム3に排出される。
【0034】
第一及び第二の貯槽21a、22aを直列状に連結することによって、土砂を低速で時間をかけて沈降させることができるので、精度良く分級できる。
分級作業において、例えば、ダム3の底4から浚渫した浚渫土が粒径の大きい土砂を多く含む場合は、第二の貯槽22aよりも早く第一の貯槽21aに所定量の土砂が堆積するので、新たな第一の貯槽21aを積載した他の船を運搬船20の横に停泊させておいて、第一の貯槽21aに所定量の土砂が堆積したら、その第一の貯槽21aを揚重機等で吊り上げて他の船に積載し、新たな第一の貯槽21aを運搬船20に積載し、再び、分級を再開する。
【0035】
また、粒径の小さい土砂を多く含む浚渫土を分級する場合には、第一の貯槽21aよりも早く第二の貯槽22aに所定量の土砂が堆積するので、新たな第二の貯槽22aを積載した他の船を運搬船20の横に停泊させておいて、上記と同様に、第二の貯槽22aに所定量の土砂が堆積したら、その第二の貯槽22aを揚重機等で吊り上げて他の船に積載し、新たな第二の貯槽22aを運搬船20に積載し、再び、分級を再開する。
【0036】
なお、貯槽を3台以上設けて連続的に分級しても良い。
【0037】
上述したように、複数の貯槽21a、22aを用いて浚渫土を連続的に分級する場合の処理方法を以下の説明では、直列処理という。
【0038】
次に、本実施形態に係る複数の貯槽21a、21bを用いて浚渫土を分級する場合の他の実施例について説明する。本実施例の運搬船30は、第一の貯槽21a及び第三の貯槽21bを備え、浚渫土をそれぞれで分級するものである。
【0039】
図7は、本発明の第二実施形態に係る運搬船30の他の実施例を示す図である。
図7に示すように、運搬船30は、船尾側、船首側にそれぞれ第一の貯槽21a、第三の貯槽21bを備えている。
【0040】
第一の貯槽21a及び第三の貯槽21bに浚渫土を送給する送泥管10は2本に分岐されており、分岐されたそれぞれの送泥管10a、10bは、第一の貯槽21a及び第三の貯槽21bの船尾側端部16上に延設されている。また、送泥管10a、10bには、それぞれ開閉バルブ25a、25bが設けられている。
【0041】
分級作業は、まず、一方の開閉バルブ25aを開放し、他方の開閉バルブ25bを閉止した状態で、第一の貯槽21aにのみ浚渫土を供給する。そして、第一の貯槽21aに所定の量の土砂が堆積したら、他方の開閉バルブ25bを開放して第三の貯槽21bに浚渫土を供給するとともに、一方の開閉バルブ25aを閉止して第一の貯槽21aへの供給を停止する。
【0042】
第三の貯槽21bで分級を行う間に、上述した実施例と同様に、新たな第一の貯槽21aを積載した他の船を運搬船30の横に停泊させて、所定量の土砂が堆積した第一の貯槽21aを揚重機等で吊り上げて他の船に積載し、新たな第一の貯槽21aを運搬船30に積載する。そして、他の船に積載した第一の貯槽21aは、地上等に運搬される。
【0043】
なお、第一の貯槽21a及び第三の貯槽21bの両方で並行して分級を行っても良く、この場合には、大量の浚渫土を短時間で分級することができる。
【0044】
上述したように、複数の貯槽21a、21bを用いて浚渫土をそれぞれ別々に分級する場合の処理方法を以下の説明では、並列処理という。
【0045】
次に、本実施形態に係る複数の貯槽21a、21b、22a、22bを用いて浚渫土を分級する場合の他の実施例について説明する。本実施例の運搬船40は、第一〜第四の貯槽21a、21b、22a、22bを備え、直列処理及び並列処理を併用して行うものである。
【0046】
図8は、本発明の第二実施形態に係る運搬船40の他の実施例を示す図である。
図8に示すように、運搬船40は、船尾側に第一の貯槽21a及び第三の貯槽21bを、船首側に第二の貯槽22a及び第四の貯槽22bを備えている。
【0047】
第一の貯槽21a又は第三の貯槽21bを通過した分級後の浚渫土を第二の貯槽22a又は第四の貯槽22bのいずれにも送給できるように、第一の貯槽21a及び第三の貯槽21bの排出口11bは、第二の貯槽22a及び第四の貯槽22bの両方の供給口22cにホース23で接続されている。
【0048】
これらのホース23の途中には、第一の貯槽21aから排出されて第二の貯槽22aに流入する分級後の浚渫土の流量を調整するための流量調整バルブ24a、第三の貯槽21bから排出されて第四の貯槽22bに流入する分級後の浚渫土の流量を調整するための流量調整バルブ24b、第一の貯槽21aから排出されて第四の貯槽22bに流入する分級後の浚渫土の流量を調整するための流量調整バルブ24c、第二の貯槽21bから排出されて第二の貯槽22aに流入する分級後の浚渫土の流量を調整するための流量調整バルブ24dが設けられている。
【0049】
分級作業は、まず、両開閉バルブ25a、25b、流量調整バルブ24a、24bを開放し、流量調整バルブ24c、24dを閉止して、第一の貯槽21a及び第三の貯槽21bにそれぞれ浚渫土を供給する。
【0050】
第一の貯槽21a及び第三の貯槽21bをそれぞれ通過した分級後の浚渫土は、第一の貯槽21a及び第三の貯槽21bにそれぞれ直列状に配置されている第二の貯槽22a及び第四の貯槽22bに流入する。
【0051】
そして、第二の貯槽22a及び第四の貯槽22bを通過した分級後の浚渫土は、第二の貯槽22a及び第四の貯槽22bの排出口11bからダム3に排出される。
【0052】
この分級作業により、例えば、第三の貯槽21bよりも早く第一の貯槽21aに所定量の土砂が堆積した場合には、開閉バルブ25a及び流量調整バルブ24aを閉止して、第三の貯槽21bにのみ浚渫土を供給する。
【0053】
そして、第三の貯槽21bで分級を行う間に、上述した実施例と同様に、第一の貯槽21aを新たな第一の貯槽21aと入れ替える。この新たな第一の貯槽21aを運搬船40に設置したら、一方の開閉バルブ25a及び流量調整バルブ24aを開放して、第一の貯槽21a及び第三の貯槽21bで分級を行う。
【0054】
また、例えば、第四の貯槽22bよりも早く第二の貯槽22aに所定量の土砂が堆積した場合には、流量調整バルブ24aを閉止し、流量調整バルブ24cを開放して、第一の貯槽21a及び第三の貯槽21bを通過した分級後の浚渫土をすべて第四の貯槽22bに供給する。
【0055】
そして、第四の貯槽22bで分級を行う間に、上述した実施例と同様に、第二の貯槽22aを新たな第二の貯槽22aと入れ替える。この新たな第二の貯槽22aを運搬船40に設置したら、再び、流量調整バルブ24aを開放し、流量調整バルブ24cを閉止して、第一の貯槽21aを通過した分級後の浚渫土を第二の貯槽22aに供給し、第二の貯槽22a及び第四の貯槽22bで分級を行う。
【0056】
以上説明した本実施形態における運搬船20、30、40によれば、浚渫土を分級可能な第一〜第四の貯槽21a、21b、22a、22bを備えているので、運搬船20、30、40内で浚渫土を分級することができる。
【0057】
一つの貯槽のみを備えた運搬船で運搬作業を行う従来の場合は、浚渫土を陸地へ運搬している間に浚渫土を積載するための運搬船が無いので、浚渫作業を中断しなければならないが、本発明による運搬船20,30、40は、複数の貯槽21a、21b、22a、22bを備えているので、満杯になった貯槽を新しい貯槽に交換する間は他の貯槽を利用することによって、浚渫作業を中断することなく連続して行うことができる。したがって、浚渫作業を効率良く実施することができる。
【0058】
また、第一及び第二の貯槽21a、22aや第三及び第四の貯槽21b、22bのように、複数の貯槽を直列状に連結して浚渫土を直列処理することによって、土砂を低速で時間をかけて沈降させることができるので、精度良く分級できる。
【0059】
さらに、第一及び第三の貯槽21a、21bや第二及び第四の貯槽22a、22bのように、複数の貯槽を並列状に配置して浚渫土を並列処理することによって、大量の浚渫土を短時間で分級することができる。
【0060】
なお、本実施形態においては、1台の運搬船20、30、40に複数の貯槽21a、21b、22a、22bを設置して分級を行う場合について説明したが、この方法に限定されるものではなく、1つの貯槽11を備えた運搬船1を複数台設けて、これらの運搬船1を直列状に配置して浚渫土を直列処理したり、並列状に配置して並列処理したり、直列状及び並列状に配置して直列処理及び並列処理を併用して行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】は、本発明の第一実施形態に係る運搬船を用いた浚渫システムを示す全体概略図である。
【図2】本実施形態に係る運搬船を示す平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図2のB−B断面図である。
【図5】間仕切りの他の実施例を示す図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係る運搬船を示す平面図である。
【図7】本発明の第二実施形態に係る運搬船の他の実施例を示す図である。
【図8】本発明の第二実施形態に係る運搬船の他の実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1、20、30、40 運搬船
2 浚渫システム
3 ダム
4 ダムの底
5 台船
6 浚渫用掘削機
7 走行手段
8 ワイヤーロープ
9 伸縮ブーム
10 送泥管
11 貯槽
11a 貯槽本体
11b 排出口
11c 底盤
12 間仕切り
12a 仕切板
12b 突起
13 流路
14 流量調整バルブ
15 流速計
16 船尾側端部
17 船尾側付近
18 船首側付近
19 孔
21a 第一の貯槽
21b 第三の貯槽
22a 第二の貯槽
22b 第四の貯槽
22c 供給口
23 ホース
24a、24b、24c、24d 流量調整バルブ
25a 開閉バルブ
25b 開閉バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダム貯水池の水底から浚渫した浚渫土を運搬する運搬船であって、
前記浚渫土を流動させながら前記浚渫土に含まれる土砂を自然沈降方式にて分級するとともに、その分級された土砂を貯留するための貯槽を備えることを特徴とする運搬船。
【請求項2】
前記貯槽は、複数設けられ、運搬船に脱着可能であることを特徴とする請求項1に記載の運搬船。
【請求項3】
前記貯槽は、
前記浚渫土を貯留するための貯槽本体と、
前記貯槽本体の内部に前記浚渫土を流動させるための流路を形成する間仕切りと、
前記流路の下流側に、前記流路を通過する間に沈降しなかった土砂を含む前記浚渫土又は前記流路を通過する間に土砂が自然沈降した後の上澄み水を排出するための排出口とを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の運搬船。
【請求項4】
前記間仕切りは、前記貯槽本体に脱着可能であることを特徴とする請求項3に記載の運搬船。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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