説明

運搬補助具

【課題】製造コストを抑制しつつ、設置の向きを確実かつ比較的迅速に把握可能な運搬補助具を提供する。
【解決手段】箱型容器1は、略矩形板状の底壁部2と、底壁部2の外周縁から上方に延出する四角筒状の周壁部3とを備えるとともに、積み重ねる向きを変えることでスタッキング及びネスティングの両方が可能に構成されている。また、箱型容器1には、周壁部3の外周面おいて露出し、箱型容器1の型成形に際してインサート成形されたラベル17が設けられている。ラベル17は、周壁部3を構成する一対の長辺側側壁部8及び一対の短辺側側壁部9のうち、両方の長辺側側壁部8及び一方の短辺側側壁部9aの外面にそれぞれ設けられ、ラベル17を確認することで、箱型容器1の向きを認識可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の運搬等に使用される箱型容器やパレット等の運搬補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の物品をまとめて、或いは、姿勢の安定し難い物品や壊れ易い物品を安定状態で運搬等する場合に、箱型容器やパレット等の運搬補助具が使用される。また、従来、スタッキング及びネスティングの両方が可能なSNコンテナやSNパレット等が知られている。例えば、SNコンテナには、周壁部の外側面から外側に突出する支脚部が設けられるとともに、周壁部の内側面に支脚部が進入可能な脚部収容部が設けられている。そして、下側のSNコンテナの脚部収容部の上方に、上側のSNコンテナの支脚部が相対する向きでSNコンテナを積み重ねた場合には、下側のSNコンテナの内側に上側のSNコンテナが進入してネスティングされ、下側のSNコンテナの脚部収容部の上方に上側のSNコンテナの支脚部が相対しない向きでSNコンテナを積み重ねた場合には、下側のSNコンテナの周壁部上面に、上側のSNコンテナの支脚部下面が当接してスタッキングされる(例えば、特許文献1、2等参照。)。
【0003】
また、前記SNコンテナ等のように、積み重ねる向きを変更することで、ネスティング及びスタッキングの両方を可能とする運搬補助具に関しては、運搬補助具を積み重ねる際に設置の向きを把握し易くするために、左右の色を異ならせたり、左右の一方側において他方側にはない識別部材を取付けたりする等の工夫が施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−71694号公報
【特許文献2】特開平8−48334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のように、コンテナの右半分と左半分との色を異ならせるためには、特殊な金型装置及び射出装置を用意する必要があり、製造コストの増加等を招くおそれがある。また、特許文献2のように、識別部材を別途取付ける場合には、手間や部品コストがかかる上、識別部材が不用意に外れてしまう、或いは、悪戯に取り外されてしまうことが懸念される。
【0006】
本発明は上記例示した問題点等を解決するためになされたものであって、その目的は、製造コストを抑制しつつ、設置の向きを確実かつ比較的迅速に把握可能な運搬補助具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0008】
手段1.物品を載置可能な略矩形状をなす載置部を備え、積み重ねる向きを変えることでスタッキング及びネスティングの両方が可能に構成された運搬補助具において、
運搬補助具の型成形に際してラベルがインサート成形され、
前記ラベルは、運搬補助具の外周面を構成する側面のうち少なくとも2面に設けられ、
前記ラベルを確認することで運搬補助具の向きを認識可能に構成されていることを特徴とする運搬補助具。
【0009】
手段1によれば、運搬補助具を段積み(ネスティングやスタッキング)する場合に、運搬補助具の外周面を確認(視認)することによって、ラベルを手掛かりとして、運搬補助具の向きを把握することができる。このため、運搬補助具の向きを運搬補助具の形状から判断するような場合に比べ、より直感的に素早く判断することができ、結果として、段積みに際しての作業性の向上を図ることができる。
【0010】
さらに、ラベルは、運搬補助具の外周面を構成する側面のうち少なくとも2面に設けられていることから、運搬補助具の外周面を構成する側面のうち最大でも2つの側面を視認するだけで、運搬補助具の向きを確実に把握することができる。従って、段積みに際しての作業性の向上をより一層図ることができる。
【0011】
また、運搬補助具を2色成形するような場合に比べて、成形に関する構成(射出装置や制御システム等)の簡素化や製造コストの抑制等を図ることができる。さらに、ラベルは、運搬補助具に対して一体的に設けられるため、ラベルが運搬補助具から脱落する等の不具合を回避することができ、耐久性の向上を図ることができる。
【0012】
尚、ラベルの意匠や設置位置は適宜設定することができ、自由度も高い。例えば、ラベルの表面に所定の情報(会社名や商品名等)を印刷する等することも可能である。従って、情報を表示するためにラベルという手段を採用することで、運搬補助具の向きを知らせるだけでなく、その他の情報も合わせて表現することができ、構成の複雑化を抑制しつつ、所定量の情報を表示するために要するスペース効率や製造効率の向上等を図ることができる。さらに、ラベルを変更するだけで、金型装置の変更を伴うことなく、表示内容を変更することができる。尚、「運搬補助具の外周面を構成する側面」とは、底壁部の各側辺部にそれぞれ対応して運搬補助具を4つの方向からそれぞれ視認した場合に見える部位を意図している。
【0013】
手段2.前記ラベルは、運搬補助具の外周面を構成する側面のうち少なくとも3面に設けられていることを特徴とする手段1に記載の運搬補助具。
【0014】
手段2によれば、運搬補助具の外周面を構成する側面のうち1つの側面を視認するだけで、運搬補助具の向きを確実に把握することができる。従って、段積みに際しての作業性の向上をより一層図ることができる。
【0015】
手段3.前記ラベルは、色、模様、及び外形状の少なくとも1つに関して左右非対称になっていることを特徴とする手段1又は2に記載の運搬補助具。
【0016】
手段4.前記ラベルは、当該ラベルが配置される側面視領域の左右幅方向において偏心して配置されていることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の運搬補助具。
【0017】
手段3、4によれば、ラベルを確認することで運搬補助具の向きを確実に認識することができる。
【0018】
手段5.前記ラベルは、少なくとも一部が運搬補助具同士をネスティングした状態でも視認可能に設けられていることを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載の運搬補助具。
【0019】
手段5によれば、運搬補助具をネスティングした状態でもラベルが視認可能に構成されおり、運搬補助具を段積みする際に、直下の運搬補助具の向きを当該直下の運搬補助具のラベルから確認することができる。このため、例えば、直下の運搬補助具のラベルが隠れて見えなくなることに起因して、直下の運搬補助具の向きをその他の情報(直下の運搬補助具の形状や、最下段の運搬補助具)から判断する必要が生じてしまうといった事態を回避することができる。従って、上下に積み重ねられる運搬補助具の相対的な向きを比較的迅速に把握することができ、段積みに際しての作業性の向上を図ることができる。さらに、段積み状態にある運搬補助具が同じ向きで段積みされているのか、それとも異なる向きで段積みされているのかを瞬時に確認することができる。特に、運搬補助具を作業者の目線と同程度、或いは、それよりも高くまで積み上げる(積み上げられている)場合に、これらの作用効果がより顕著なものとなる。
【0020】
尚、「前記周壁部の上部には、外面から突出する挿入量制限リブが設けられ、運搬補助具同士をネスティングした場合に、上側の運搬補助具の挿入量制限リブの下縁部と、下側の運搬補助具の上縁部とが当接可能に構成され、前記ラベルは、少なくとも一部が前記挿入量制限リブの下縁部よりも上方に配置されていること」としてもよい。この場合、ネスティング状態においてラベル全体が隠れて見えなくなってしまうといった事態をより確実に防止することができ、ラベルを確認することで運搬補助具の向きを認識することができるといった作用効果が一層確実に奏される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】SNコンテナの斜視図である。
【図2】SNコンテナを成形する金型装置を示す断面図である。
【図3】ネスティングされたSNコンテナの斜視図である。
【図4】スタッキングされたSNコンテナの斜視図である。
【図5】別の実施形態におけるSNコンテナの斜視図である。
【図6】別の実施形態におけるSNコンテナの斜視図である。
【図7】別の実施形態におけるSNコンテナの斜視図である。
【図8】パレットへの適用例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、運搬補助具としての箱型容器1は、相対する一対の長辺部と相対する一対の短辺部とを有する略矩形板状の底壁部2と、底壁部2の外周縁から上方に延出する略四角筒状の周壁部3と、周壁部3の上縁部から周壁部3の外周方向に突出する張出し部4とを備え、これらが型成形により一体的に形成されている。本実施形態の箱型容器1はポリプロピレンにより構成されている。また、詳しくは後述するが、箱型容器1は、積み重ねる向きを適宜変えることで、スタッキング及びネスティングの両方が可能なSNコンテナとして構成されている。尚、本実施形態では、底壁部2(底壁部2の上面)が載置部を構成する。
【0023】
周壁部3は、底壁部2の各長辺部からそれぞれ上方に延出する一対の長辺側側壁部8と、底壁部2の各短辺部からそれぞれ上方に延出し、一対の長辺側側壁部8の側縁部間を連結する一対の短辺側側壁部9とから構成されている。また、周壁部3は上方に向けて外周側に若干傾斜して延びている。さらに、箱型容器1は、いずれの部位においても肉厚がほぼ一定である。
【0024】
各短辺側側壁部9には、周壁部3の外周側に膨出し、張出し部4の下面から底壁部2近傍にかけて上下に延びる支脚部11と、箱型容器1を交互に180度回転させて上下に重ねた場合に支脚部11を所定の高さ位置(張出し部4よりも若干下方位置)で支持する脚受部12とが設けられている。本実施形態では、各短辺側側壁部9にそれぞれ支脚部11及び脚受部12が2つずつ設けられている。但し、本実施形態では、一対の短辺側側壁部9は対称形状をなしておらず、支脚部11及び脚受部12の形成位置等が異なっている。以下、図1では紙面左手前側に示される短辺側側壁部9を「第1短辺側側壁部9a」と称し、図1では紙面右奥側に示される短辺側側壁部9を「第2短辺側側壁部9b」と称して説明する。
【0025】
第1短辺側側壁部9aにおいては、支脚部11(以下、第1支脚部11aとも称する)が、各長辺側側壁部8との境界部近傍位置に設けられるとともに、脚受部12(以下、第1脚受部12aとも称する)が、各第1支脚部11aの第1短辺側側壁部9aの横幅方向中央部側に隣接して設けられている。
【0026】
一方、第2短辺側側壁部9bにおいては、脚受部12(以下、第2脚受部12bとも称する)が、各長辺側側壁部8との境界部近傍位置であって、第1支脚部11aの形成位置と対向する位置(点対称位置)に設けられるとともに、支脚部11(以下、第2支脚部11bとも称する)が、各第2脚受部12bの第2短辺側側壁部9bの横幅方向中央部側に隣接して、第1脚受部12aの形成位置と対向する位置(点対称位置)に設けられている。
【0027】
そして、図4に示すように、上側の箱型容器1を下側の箱型容器1に対して180度回転させた向きで積み重ねると、上側の箱型容器1の第1支脚部11aが下側の箱型容器1の第1脚受部12aに支持され、上側の箱型容器1の第2支脚部11bが下側の箱型容器1の第2脚受部12bに支持されることとなる。このように、箱型容器1を交互に180度回転させて上下に重ねることで、下側の箱型容器1に対する上側の箱型容器1の水平方向における位置ずれを防止しつつ、物品を収容した複数の箱型容器1を段積みする(スタッキングする)ことができるようになっている。
【0028】
また、短辺側側壁部9には、各支脚部11を中空状に形成するとともに、支脚部11の内側空間を周壁部3の内周側かつ上方に開口させることで形成された脚部収容部13が設けられている。そして、図3に示すように、箱型容器1を同じ向きで積み重ねることで、上側の箱型容器1の各支脚部11が下側の箱型容器1の各脚部収容部13に収容される。これにより、スタッキングした場合よりもコンパクトに段積みする(ネスティングする)ことができるようになっている。
【0029】
尚、本実施形態の長辺側側壁部8には、支脚部11や脚受部12が形成されていない上、相対する一対の長辺側側壁部8は互いに対称形状をなしている。また、各長辺側側壁部8の上部には、外面から突出して上下に延びる挿入量制限リブ15が設けられている。図3に示すように、箱型容器1同士をネスティングした状態からさらに上側の箱型容器1を下側の箱型容器1の内側に挿入させた場合には、上側の箱型容器1の挿入量制限リブ15の下辺部が、下側の箱型容器1の張出し部4の上面と当接することとなり、それ以上の挿入が規制されることとなる。但し、本実施形態では、箱型容器1を普通にネスティングした場合には、基本的に、上側の箱型容器1の挿入量制限リブ15と、下側の箱型容器1の張出し部4の上面とが当接することなく、上下に離間した状態となる。
【0030】
さて、本実施形態では、各長辺側側壁部8及び第1短辺側側壁部9aの外面において、箱型容器1の型成形に際してインサート成形されるラベル17が露出状態で設けられている。本実施形態のラベル17はポリプロピレンによって構成されている。また、各長辺側側壁部8に設けられたラベル17は、左右に長い矩形状をなし、各長辺側側壁部8において横幅方向中央部よりも第1短辺側側壁部9a側の範囲に設けられている。一方、第1短辺側側壁部9aに設けられたラベル17は、一対の第1支脚部11aのうち一方の近傍部位から他方の近傍部位にかけての範囲に設けられている。尚、第2短辺側側壁部9bには、ラベル17が設けられていない。
【0031】
そして、箱型容器1同士をスタッキングした場合には、図4に示すように、上下に隣接する箱型容器1の長辺側側壁部8のラベル17の位置が左右に互い違いに配置されるとともに、ラベル17が設けられた第1短辺側側壁部9aと、ラベル17が設けられていない第2短辺側側壁部9bとが、上下方向において交互に現れるようになる。
【0032】
また、本実施形態では、図3に示すように、箱型容器1同士をネスティングした場合においても、各長辺側側壁部8及び第1短辺側側壁部9aに設けられたラベル17を側方から視認可能に構成されている。そして、箱型容器1同士をネスティングした場合には、上下に隣接する箱型容器1の長辺側側壁部8のラベル17の位置が左右方向において同じ位置に配置され、ラベル17が設けられた第1短辺側側壁部9aが上下に連続して現れるとともに、その反対面側には、ラベル17が設けられていない第2短辺側側壁部9bが上下に連続して現れるようになる。
【0033】
次に、箱型容器1を成形する金型装置21について、図2を参照して説明する。金型装置21は、底壁部2の下面等を成形する雌型22と、底壁部2の上面や周壁部3の内周面等を成形する雄型23とを備えている。これらの金型22、23には、箱型容器1の表面形状に対応した成形面がそれぞれ形成されており、これら成形面によって、箱型容器1を成形するキャビティ25が形成される。
【0034】
また、雌型22のうち長辺側側壁部8の外面等を成形する部位(以下、長側面成形部24と称する)には、キャビティ25を画定する成形面において左右に長い長方形状の凹部32が形成されるとともに、前記凹部32に対して入れ子41が嵌入されている。さらに、長側面成形部24には、凹部32の底面と、凹部32が形成された面とは反対側の面との間を連通させる連通孔33が形成されている。
【0035】
入れ子41は、基本的に、凹部32に丁度収まるような直方体形状をなしており、入れ子41のうち、キャビティ25を形成する成形面42は、ラベル17よりも一回り小さな略相似形状をなしている。また、入れ子41を凹部32の底面に当接するまで凹部32に収容した場合には、入れ子41の成形面42が長側面成形部24の成形面とほぼ面一とされる。但し、本実施形態では、入れ子41の成形面42と、凹部32の開口周縁部との間において、0.02mm〜0.05mm程度の隙間が形成されている。すなわち、長側面成形部24の成形面には、連通孔33に連通するスリット26が、略ロ字状に延在するようにして形成されることとなる。尚、入れ子41は、図示しない取付手段によって雌型22に着脱自在に取付固定されている。
【0036】
また、連通孔33には、図示しない真空ポンプ等の吸引装置が接続(連通)されている。そして、吸引装置が駆動することによって、連通孔33及びスリット26を介してキャビティ25内の空気が吸引されることとなる。尚、スリット26の幅は0.02mm〜0.05mm程度であるため、空気は当該スリット26を通過可能であるが、溶融状態の熱可塑性樹脂(本例では、ポリプロピレン)はスリット26を通過不可能となっている。加えて、雌型22のうち底壁部2等を成形する部位には、キャビティ25に連通するゲート27と、前記ゲート27に連通するとともに、図示しない射出装置のノズル先端が係合されるスプルー28とが形成されている。
【0037】
次に、箱型容器1の製造方法について説明する。まず、金型装置21を型開きした状態で、吸引装置を駆動させるとともに、長側面成形部24の成形面に対して、入れ子41の成形面42の全体を覆うようにしてラベル17を設置する。これにより、ラベル17がスリット26及び連通孔33等を介して吸引装置に吸引され、ラベル17が成形面に密着した状態で保持されることとなる。特に、本実施形態では、ラベル17の形状と、入れ子41の成形面42の形状とが略相似形状をなしており、ラベル17がその全周域にわたってスリット26から外周側に2.0mm〜5.0mm程度はみ出すようにして設置されるようになっている。
【0038】
そして、ラベル17が吸引装置によって吸引された状態のまま型締めするとともに、射出装置によって溶融状態にあるポリプロピレンを、雌型22に形成されたスプルー28及びゲート27を介してキャビティ25に充填し、固化させる。固化完了後、型開きして成形された箱型容器1を金型装置21から取外す。以上のようにして、上記した底壁部2、周壁部3、及び張出し部4等を具備するとともに、各長辺側側壁部8及び第1短辺側側壁部9aの外面に露出状態で設けられたラベル17を備える箱型容器1が得られることとなる。
【0039】
以上詳述したように、本実施形態によれば、各長辺側側壁部8の外面においてそれぞれ第1短辺側側壁部9a側の部位にラベル17が露出状態で設けられている。このため、一方の長辺側側壁部8の外面を視認するだけで、箱型容器1の向きを把握することができる。また、一対の短辺側側壁部9のうち第1短辺側側壁部9aにのみ外面においてラベル17が露出状態で設けられている。このため、第1短辺側側壁部9aと第2短辺側側壁部9bとの形状の違いを認識しなくても(把握していなくても)、第1短辺側側壁部9a及び第2短辺側側壁部9bの一方の外面を視認するだけで(ラベル17の有無で)、箱型容器1の向きを把握することができる。従って、箱型容器1の向きを形状から判断するような場合に比べ、より直感的に素早く判断することができるとともに、箱型容器1の外周面を構成する側壁部8、9のいずれか1面を視認するだけで、箱型容器1の向きを確実に把握することができる。結果として、段積み(ネスティングやスタッキング)に際しての作業性の向上を図ることができる。
【0040】
さらに、本実施形態では、箱型容器1をネスティングした状態でもラベル17が視認可能に構成されおり、箱型容器1を段積みする場合において、直下の箱型容器1の向きを当該直下の箱型容器1のラベル17から確認することができる。このため、例えば、直下の箱型容器1のラベル17が隠れて見えなくなることに起因して、直下の箱型容器1の向きをその他の情報(直下の箱型容器1の形状や、最下段の箱型容器1)から判断する必要が生じてしまうといった事態を回避することができる。従って、上下に積み重ねられる箱型容器1の相対的な向きを比較的迅速に把握することができ、段積みに際しての作業性の向上を図ることができる。さらに、段積み状態にある箱型容器1が同じ向きで段積みされているのか、それとも異なる向きで段積みされているのかを瞬時に確認することができる。特に、箱型容器1を作業者の目線と同程度、或いは、それよりも高くまで積み上げる(積み上げられている)場合に、これらの作用効果がより顕著なものとなる。
【0041】
また、箱型容器1を2色成形するような場合に比べて、成形に関する構成(射出装置や制御システム等)の簡素化や製造コストの抑制等を図ることができる。さらに、ラベル17は、箱型容器1に対して一体的に設けられるため、ラベル17が箱型容器1から脱落する等の不具合を回避することができ、耐久性の向上を図ることができる。
【0042】
尚、箱型容器1の成形において、ラベル17を金型装置21の長側面成形部24の成形面に設置する際に、ラベル17をスリット26から外周側へ5.0mmを超えてはみ出させて設置する場合には、ラベル17のはみ出した外周縁に対して吸引装置の吸引による保持力が及び難くなってしまい、溶融樹脂が該外周縁に勢いよくぶつかると、ラベル17の外周縁が浮き上がって、ラベル17と長側面成形部24の成形面との間に溶融樹脂が入り込んでしまう等の不具合を招くおそれがある。その一方で、ラベル17のスリット26からのはみ出し長さが1.0mm未満の場合には、ラベル17のうちスリット26に吸引された部位がスリット26側に若干引き込まれること等に起因して、スリット26とラベル17とが好適に吸着せずに(スリット26の周縁部とラベル17との間に隙間ができて、そこからスリット26に空気が流入するようになってしまい)保持が不十分になる可能性があり、これによって、ラベル17の位置ずれ等が生じることが懸念される。
【0043】
この点、本実施形態では、ラベル17は、その外周縁全域にわたって、スリット26を跨いで外周側に2.0mm〜5.0mm程度はみ出すようにして設置される。これにより、ラベル17とスリット26の周縁部との間からスリット26に隙間風が入ることもなく、ラベル17を吸引装置の吸引力で確実に保持することができるとともに、ラベル17の外周縁にも十分に保持力を及ばせることができる。従って、ゲート27からキャビティ25に流入した溶融樹脂(本例ではポリプロピレン)がラベル17の外周縁にぶつかったとしても、ラベル17が長側面成形部24の成形面に密着した状態を維持することができ、ラベル17の浮き上がり、位置ずれ、皺の発生等を防止することができる。
【0044】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0045】
(a)上記実施形態おいて、ラベル17の形状、大きさ、設置の向き等は特に限定されるものではなく、適宜変更可能である。例えば、図5に示すように、ラベル17自体を、方向を指し示すような形状に構成してもよい。この場合、例えば、工場等の製造ラインで箱型容器1が使用される場合であって、かつ、箱型容器1の向きと、製造ラインの移送方向とを合致させる必要がある場合等において、ラベル17を視認して箱型容器1の設置の向きを認識することができるため、作業性の向上を図ることができる。
【0046】
(b)上記実施形態では、長辺側側壁部8の第1短辺側側壁部9a側の部位にラベル17を配置することで、箱型容器1の向きを側方から認識可能に構成されているが、例えば、図6に示すように、長辺側側壁部8の外面において左右に偏りなくラベル17を設置する場合でも、第1短辺側側壁部9a側の部位と、第2短辺側側壁部9b側の部位とで着色、或いは、模様を異ならせれば、当該ラベル17を視認して、箱型容器1の向きを把握することができる。さらに、図7に示すように、長辺側側壁部8の外面において左右に偏りなくラベル17を設置する場合でも、第1短辺側側壁部9a側の部位と、第2短辺側側壁部9b側の部位とで形状を異ならせれば(この場合、着色を異ならせなくてもよい)、当該ラベル17を視認して、箱型容器1の向きを把握することができる。
【0047】
(c)上記実施形態では、各長辺側側壁部8の外面及び第1短辺側側壁部9aの外面にラベル17が設けられているが、周壁部3の外周面を構成する側壁部8、9の外面のうち少なくとも2面にラベル17が設けられていればよく、ラベル17の配置や、箱型容器1に設けられるラベル17の枚数や、ラベル17が露出状態で設けられる壁部の数については特に限定されるものではない。例えば、第2短辺側側壁部9bの外面を含む周壁部3の外周面を構成する4面全てにラベル17を設けたり、周壁部3の内周面、底壁部2の上面・下面、張出し部4等にラベル17を設けたりすることも可能である。
【0048】
また、例えば、平面視した場合に視認可能な位置、例えば、張出し部4の上面や底壁部2の上面にもラベル17を設置して、箱型容器1の向きを把握できるように構成してもよい。この場合、箱型容器1を段積みする際に、箱型容器1の側面を確認したり、箱型容器1の形状(周壁部3の内周面の凸凹具合等)を確認したりしなくても、箱型容器1を所望の向きで積み重ねることができ、作業性の向上をより一層図ることができる。
【0049】
尚、箱型容器1を段積みした場合において、ラベル17が隠れてしまうような位置に設けることも可能であるが、ネスティングした状態でも箱型容器1の向きを側方から認識できるように、或いは、認識し易いように、ラベル17が設けられていることが好ましい。
【0050】
(d)上記実施形態では特に言及していないが、ラベル17は、挿入量制限リブ15の下辺部よりも上方にまで延在していることとしてもよい。この場合、箱型容器1のネスティング状態において、ラベル17全体が隠れて見えなくなってしまうといった事態をより確実に回避することができ、ラベル17を確認することで箱型容器1の向きを認識することができるといった作用効果が一層確実に奏される。
【0051】
(e)また、ラベル17の表面において、会社名や運搬する物品の商品名等の所定の情報を印刷することとしてもよい。この場合、ラベル17だけで、箱型容器1の向きと、所定の情報とを認識させることができ、これらの情報を別々の表示手段を用いて認識させる(例えば、2色成形されたSNコンテナに対して会社名等を印刷したラベルシールを貼着する)ような場合に比べて、所定量の情報を表示するために要するスペース効率や製造効率の向上等を図ることができる。さらに、ラベル17を変更するだけで、金型装置21の変更を伴うことなく、表示内容を変更することができる。
【0052】
また、ラベル17の表面において、方向を指し示すような形状を印刷してもよい。加えて、ラベル17の表面に意匠性を向上させるようなイラストレーションを印刷してもよい。
【0053】
(f)上記実施形態では、ラベル17の外周縁全周域がスリット26の外周側に位置するようにラベル17が長辺側スライド型24の成形面に設置されているが、特にこのような構成に限定されるものではない。但し、ラベル11のうち少なくともゲート27側の部位(上記実施形態では下辺部側の部位に相当)がスリット26を跨ぐ(上記実施形態では、スリット26を跨いで下方にはみ出す)とともに、ラベル11のうちスリット26をはみ出した長さが1.0mm〜5.0mmの範囲内となっていることが望ましい。すなわち、ゲート27を介してキャビティ25に注入された溶融樹脂は、ラベル17の下縁部に対しては、キャビティ25に注入された勢いをそのままに衝突する可能性があるが、その他の部位に対しては、ラベル17の側方に回り込んだり表面を乗り越えたりして到達するため、それ程の勢いはない。従って、ラベル17のうちゲート27側の部位のみを保持し、その他の部位を保持しない場合であっても、ラベル17の浮き上がり等を十分に抑制することができる。
【0054】
(g)上記実施形態では、箱型容器1に具体化されているが、物品の運搬・保管に際して使用される運搬補助具に適用されていればよく、例えば、ネスティング及びスタッキングの両方が底の浅いトレーや、図8に示すような、ネスティング及びスタッキングの両方が可能なパレット51等にも適用することができる。
【0055】
また、上記実施形態では、相対する一対の短辺側側壁部9において支脚部11、脚受部12、及び脚部収容部13が設けられているが、相対する一対の短辺側側壁部9、及び、相対する一対の長辺側側壁部8のうち少なくとも1組において支脚部11、脚受部12、及び脚部収容部13が設けられていればよい。さらに、これらのネスティング及びスタッキングに関する構成については特に限定されるものではなく、例えば、脚受部12を省略して、スタッキング時において上側の箱型容器1の支脚部11が、下側の箱型容器1の張出し部4に支持されるように構成されてもよい。
【0056】
(h)上記実施形態では、箱型容器1はポリプロピレンによって構成されているが、ポリエチレン、PET、ポリアミド等その他の樹脂材料(熱可塑性樹脂)によって構成されることとしてもよい。また、ラベル17はポリプロピレンフィルムによって構成されているが、ポリエチレンフィルム、ナイロンフィルム等のその他の樹脂材料によって構成されることとしてもよい。尚、上記実施形態では、箱型容器1本体とラベル17との構成材料が同じであることから、リサイクル性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0057】
1…箱型容器、2…底壁部、8…長辺側側壁部、9a…第1短辺側側壁部、9b…第2短辺側側壁部、11…支脚部、12…脚受部、13…脚部収容部、15…挿入量制限リブ、17…ラベル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を載置可能な略矩形状をなす載置部を備え、積み重ねる向きを変えることでスタッキング及びネスティングの両方が可能に構成された運搬補助具において、
運搬補助具の型成形に際してラベルがインサート成形され、
前記ラベルは、運搬補助具の外周面を構成する側面のうち少なくとも2面に設けられ、
前記ラベルを確認することで運搬補助具の向きを認識可能に構成されていることを特徴とする運搬補助具。
【請求項2】
前記ラベルは、運搬補助具の外周面を構成する側面のうち少なくとも3面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の運搬補助具。
【請求項3】
前記ラベルは、色、模様、及び外形状の少なくとも1つに関して左右非対称になっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の運搬補助具。
【請求項4】
前記ラベルは、当該ラベルが配置される側面視領域の左右幅方向において偏心して配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の運搬補助具。
【請求項5】
前記ラベルは、少なくとも一部が運搬補助具同士をネスティングした状態でも視認可能に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の運搬補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−67405(P2013−67405A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207183(P2011−207183)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(591006944)三甲株式会社 (380)
【Fターム(参考)】