説明

運行管理システム、運行記録装置及び運行管理方法

【課題】乗務員が拘束時間を自己管理することができる運行管理システムを提供する。
【解決手段】タクシメータ10は、出庫時、メモリカード40が挿入されると、メモリカード40に記録された月の残り拘束時間を表示部12に表示する(S15)。一方、データ処理装置50は、カード読取器54aにメモリカード40が挿入されると、メモリカード40から労務時間データを読み込む(S3)。データ処理装置50は、読み込んだ労務時間データをもとに、ストレージメモリ56内の労務時間データを更新する(S4)。このとき、残り拘束時間も、拘束時間(出庫時間−入庫時間)から計算され、更新される。この更新された残り拘束時間はメモリカード40に書き込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に労務時間データを記録する運行管理システム、運行記録装置及び運行管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タクシ業界の労働条件が厳しくなっており、乗務員一人一人の労働管理が必要とされている。
【0003】
従来の運行管理システムでは、乗務員が営業データや時系列データを書き込むためのメモリカードをタクシメータに挿入すると、この挿入した時刻が出庫時間とされる。また、営業終了後、乗務員がタクシメータの書込みボタンを押下してデータをメモリカードに書き込むと、この書き込んだ時刻が入庫時間とされる。事務所側のデータ処理装置は、このメモリカードを読み込み、メモリカードに書き込まれているデータを取り込んだ後、カード内のデータをクリアする作業を行っていた。
【0004】
この種の従来技術として、特許文献1には、超過勤務と判定され、かつ現在のモードが空車モードのとき、タクシ表示灯の運行状況の表示を「回送」の状況に切り替えることが示されている。また、特許文献2には、タクシメータの表示部に、「賃走」、「空車」等の文字情報を表示することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−293175号公報
【特許文献2】特開2010−146354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の運行管理システムでは、つぎのような問題があり、その改善が要望されていた。すなわち、乗務員の労働管理として、拘束時間を自己管理するために、タクシメータの表示部に月の残り拘束時間を表示させることが望ましいが、タクシメータの表示部に月の残り拘束時間を表示させる機能が無かった。また、運行管理システムには、そもそも月の残り拘束時間を管理する機能が無かった。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、乗務員が拘束時間を自己管理することができる運行管理システム、運行記録装置及び運行管理方法を提供することにある。また、本発明は、運行記録装置と情報管理装置の双方で、拘束時間に関する情報を含む労務時間データを等しくすることができる運行管理システム、運行記録装置及び運行管理方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係る運行管理システムは、下記(1)〜(4)を特徴としている。
(1) 車両の運行状況を記録する運行記録装置と、乗務員の労務時間を管理する情報管理装置とを備え、前記運行記録装置および前記情報管理装置で利用される労務時間データを記録媒体に記録する運行管理システムであって、
前記運行記録装置は、
前記記録媒体に記録された労務時間データを読み取る読取手段と、
前記読み取った労務時間データに含まれる拘束時間に関する情報を表示する表示手段と、
前記車両の運行状況に応じて変更される、前記労務時間データを前記記録媒体に記録する第1の記録手段と
を備え、
前記情報管理装置は、
前記労務時間データが格納された格納手段と、
前記記録媒体に記録された労務時間データを読み込む読込手段と、
前記読み込んだ労務時間データをもとに、前記格納手段に格納された労務時間データを更新する更新手段と、
前記更新された労務時間データを前記記録媒体に記録する第2の記録手段と
を備えた
こと。
(2) 上記(1)の構成の運行管理システムであって、
前記表示手段は、前記車両の出庫時、前記拘束時間に関する情報として残り拘束時間を表示すること。
(3) 上記(1)または(2)の構成の運行管理システムであって、
前記表示手段は、前記運行状況に変化があった場合、前記労務時間データに含まれる、前記車両の運行時間、運行距離及び休憩時間を表示すること。
(4) 上記(1)〜(3)のいずれか一つの構成の運行管理システムであって、
前記情報管理装置は、前記更新手段によって更新された労務時間データに含まれる残り拘束時間が所定時間に満たない場合、前記車両の運行を許可しないこと。
【0009】
上記(1)の構成の運行管理システムによれば、運行記録装置に拘束時間に関する情報が表示されるので、乗務員が拘束時間を自己管理することができる。また、運行記録装置と情報管理装置の双方で、拘束時間に関する情報を含む労務時間データを等しくすることができる。
上記(2)の構成の運行管理システムによれば、乗務員は出庫時に残り拘束時間を確認することができ、残り拘束時間を考慮して1日の運行予定を変更することができる。
上記(3)の構成の運行管理システムによれば、乗務員に拘束時間の管理を促すことができる。
上記(4)の構成の運行管理システムによれば、車両の運行が禁止されるので、拘束時間の自己管理が重要であることが確認される。
【0010】
前述した目的を達成するために、本発明に係る運行記録装置は、下記(5)を特徴としている。
(5) 情報管理装置で利用される労務時間データが記録された記録媒体が接続可能であり、車両の運行状況を記録する運行記録装置であって、
前記記録媒体に記録された労務時間データを読み取る読取手段と、
前記読み取った労務時間データに含まれる拘束時間に関する情報を表示する表示手段と、
前記車両の運行状況に応じて変更される、前記労務時間データを前記記録媒体に記録する記録手段とを備えたこと。
【0011】
上記(5)の構成の運行記録装置によれば、乗務員が拘束時間を自己管理することができる。また、運行記録装置と情報管理装置の双方で、拘束時間に関する情報を含む労務時間データを等しくすることができる。
【0012】
前述した目的を達成するために、本発明に係る運行管理方法は、下記(6)を特徴としている。
(6) 車両の運行状況を記録する運行記録装置と、乗務員の労務時間を管理する情報管理装置とを備えた運行管理システムを用い、前記運行記録装置および前記情報管理装置で利用される労務時間データを記録媒体に記録する運行管理方法であって、
前記運行記録装置において、前記記録媒体に記録された労務時間データを読み取る読取ステップと、
前記読み取った労務時間データに含まれる拘束時間に関する情報を表示装置に表示する表示ステップと、
前記車両の運行状況に応じて変更される、前記労務時間データを前記記録媒体に記録する第1の記録ステップと
を有し、
前記情報管理装置において、前記労務時間データを記憶装置に格納する格納ステップと、
前記記憶装置に格納された前記労務時間データを読み込む読込ステップと、
前記読み込んだ労務時間データをもとに、前記記憶装置に格納された労務時間データを更新する更新ステップと、
前記更新された労務時間データを前記記録媒体に記録する第2の記録ステップと
を有する
こと。
【0013】
上記(6)の構成の運行管理方法によれば、乗務員が拘束時間を自己管理することができる。また、運行記録装置と情報管理装置の双方で、拘束時間に関する情報を含む労務時間データを等しくすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の運行管理システム、運行記録装置及び運行管理方法によれば、運行記録装置に拘束時間に関する情報が表示されるので、乗務員が拘束時間を自己管理することができる。また、運行記録装置と情報管理装置の双方で、拘束時間に関する情報を含む労務時間データを等しくすることができる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態における運行管理システムの構成を示す図である。
【図2】運行管理システムの外観を示す図である。
【図3】実施形態における運行管理システムに記憶されるデータ項目であって、図3(A)はタクシメータ10内のRAM14に記憶されるデータを、図3(B)はメモリカード40に記憶されるデータを、図3(C)はデータ処理装置50内のストレージメモリ56に記憶されるデータを、それぞれ示す図である。
【図4】データ処理装置50の動作手順を示すフローチャートである。
【図5】タクシメータ10の動作手順を示すフローチャートである。
【図6】表示部12の表示内容を示す図であって、図6(A)及び図6(B)はそれぞれその一例を示す表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態における運行管理システム、運行記録装置及び運行管理方法について図面を参照しながら説明する。本実施形態の運行管理システムは、運行記録装置としてタクシに搭載されたタクシメータ、および情報管理装置として事務所に設置されたデータ処理装置から主に構成される。
【0018】
図1は実施形態における運行管理システムの構成を示す図である。図2は運行管理システムの外観を示す図である。運行管理システムは、タクシメータ10およびデータ処理装置50から主に構成される。また、メモリカード40には、タクシメータ10およびデータ処理装置50で利用される、後述する労務時間データが記録されている。
【0019】
タクシメータ10は、車両(タクシ)の運行状況を記録するものであり、演算部(CPU:Central Processing Unit)11、およびこれに接続されるROM(Read Only Memory)15、RAM(Random Access Memory)14、表示部12、操作部13、RTC(時計IC)16、センサI/F17、外部インタフェース(I/F)18、メモリカードI/O部19等を有する。センサI/F17には、GPS受信機32、各種センサ36等が接続される。外部I/F18には、領収書発行器21およびウインドサイン25が接続される。メモリカードI/O部19には、メモリカード40(記録媒体)が着脱自在に挿入され、接続可能である。
【0020】
CPU11は、タクシメータ全体を制御するものであり、ROM15に格納された動作プログラムを実行する。また、CPU11は、動作プログラムを実行し、後述する運行状況の表示制御を行う。ROM(設定データ格納部)15には、後述する動作プログラムの他、種々の設定データが格納されている。RAM14は、CPU11によるプログラムの実行に伴って一時的に使用される。また、RAM(営業データ格納部)14には、労務時間データ(営業データを含む)が格納される。RAM14に記載された労務時間データは、運行状況に応じて変更される。例えば、車両の運行中、RTC16で計時される運行時間および車速センサ36aによって計測される運行距離が増加し、RAM14に記憶された運行時間および運行距離は変更される。また、休憩中、RTC16で計時される休憩時間が増加し、RAM14に記憶された休憩時間は変更される。
【0021】
RTC16は、現在時刻を計時する時計ICからなる。表示部12は、タクシメータ10の前面に配置されたLCDからなり、走行距離、課金情報、タリフ状態、運行時間、運行距離、休憩時間、残り拘束時間、各種メッセージなど、運行状況を含む種々の情報を表示する。
【0022】
操作部13は、タクシメータ10の前面に配置された各種ボタンからなる。各種ボタンとして、空車ボタン13a、賃走ボタン13b、割増ボタン13c、迎車ボタン13d、休憩ボタン13e、営業終了ボタン13f、営業開始ボタン13g、書込みボタン13h、起動ボタン13iなどが用意されている。これらのボタンの押下により、CPU11に、タクシメータの起動信号、タリフ状態(空車、賃走、割増、迎車等)を表す信号、休憩の開始/終了を表す信号、営業の開始/終了を表す信号が入力され、また、労務時間データのメモリカード40への書き込みが行われる。
【0023】
領収書発行器21は領収書を発行する。ウインドサイン25は、車両の窓に設置され、種々の合図を行う。
【0024】
タクシメータ10の前面には、カード挿入口19aが形成されている。メモリカード40は、このカード挿入口19aに挿入され、メモリカードI/O部19に着脱自在に接続される。メモリカード40は、通常、乗務員それぞれに所持される。
【0025】
GPS受信機32は現在位置情報を受信する。各種センサ36として、車速センサ36aが設けられている。車速センサ36aは、ロータリーエンコーダからなり、走行距離演算用のパルス信号として、後輪(駆動輪)のトランスミッション回転数に応じた数のパルス信号を発生し、CPU11にスピード信号を出力する。
【0026】
一方、データ処理装置(情報管理装置)50は、装置本体50aに収納された制御部(CPU)51、およびこれに接続されるROM52、RAM53、表示装置55、ストレージメモリ56、操作部57、メモリカードI/O部54等を有する。
【0027】
CPU51は、データ処理装置全体を制御するものであり、乗務員一人一人の労務管理を行う。ROM52には、CPU51によって実行される動作プログラムが格納されている。RAM53は、CPU51によるプログラムの実行に伴って一時的に使用される。
【0028】
表示装置55は、労務管理に関する種々の情報を表示する。ストレージメモリ56には、全乗務員の労務時間データ等が保持されている。操作部57はキーボード、マウスなどの入力デバイスからなる。
【0029】
メモリカードI/O部54はカード読取器54aを有する。メモリカード40は、このカード読取器54aに挿入され、メモリカードI/O部54に着脱自在に接続される。このメモリカード40を介して、車両に搭載されたタクシメータ10と事務所に設置されたデータ処理装置50との間で、労務時間データ等の情報がやり取りされる。これにより、タクシメータ10およびデータ処理装置50間で、労務時間データ等の情報が等しくなり、統一される。
【0030】
図3はタクシメータ10内のRAM14、メモリカード40およびデータ処理装置50内のストレージメモリ56にそれぞれ記憶されるデータを示す図である。ここで、拘束時間とは、入庫時間から出庫時間を差し引いた時間である。残り拘束時間とは、1月を単位として設定された規定時間から、積算された拘束時間を差し引いた時間である。営業時間とは、営業開始ボタン13gの押下から営業終了ボタン13fの押下までの時間から、休憩時間を差し引いた時間である。休憩時間とは、休憩ボタン13eの押下によって休憩が開始されてから終了するまでの時間である。運行時間とは、賃走ボタン13bが押下されてから空車ボタン13aが押下されるまでの時間を積算した時間である。運行距離とは、賃走ボタン13bが押下されてから空車ボタン13aが押下されるまでの距離を積算した距離である。
【0031】
タクシメータ10内のRAM14には、労務時間データ(営業データを含む)として、運行時間、運行距離、休憩時間、営業時間および残り拘束時間が記憶される(図3(A)参照)。メモリカード40には、労務時間データとして、出庫時間、入庫時間、運行時間、運行距離、休憩時間、営業時間、残り拘束時間および運行の許可/禁止が記憶される(図3(B)参照)。データ処理装置50内のストレージメモリ56には、乗務員ごと(乗務員a、b、c、…)に、労務時間データとして、設定された規定時間、積算した拘束時間、前回の出庫時間、前回の入庫時間、前回の運行時間、前回の運行距離、前回の休憩時間、前回の営業時間および残り拘束時間が記憶される(図3(C)参照)。
【0032】
なお、本実施形態では、残り拘束時間は、1か月を単位として設定された規定時間から積算した拘束時間を差し引いた時間であるが、1か月に限らず、2か月、3か月など任意の期間を単位として設定された規定時間から積算した拘束時間を差し引いた時間としてもよい。
【0033】
上記構成を有する運行管理システムの動作を示す。図4はデータ処理装置50の動作手順を示すフローチャートである。この動作プログラムは、前述したようにROM52に格納されており、CPU51によって実行される。
【0034】
CPU51は、乗務員によってメモリカード40がカード読取器54aに挿入されるまで待つ(ステップS1)。メモリカード40が挿入されると、CPU51は、メモリカード40を読み込み、労務時間データが書き込まれているか否かを判別する(ステップS2)。出庫時に一旦読み込まれて労務時間データがクリアされている場合、そのままステップS6の処理に進む。
【0035】
一方、入庫時のように、労務時間データが書き込まれている場合、CPU51は、メモリカード40から労務時間データを読み込む(ステップS3)。ステップS3の処理は読込手段に相当する。このとき読み込まれる労務時間データは、出庫時間、入庫時間、運行時間、運行距離、休憩時間および営業時間である。CPU51は、読み込んだ労務時間データをもとに、ストレージメモリ56内の労務時間データを更新する(ステップS4)。このとき、残り拘束時間も、拘束時間(出庫時間−入庫時間)から計算され、更新される。そして、CPU51は、メモリカード40内の労務時間データをクリアする(ステップS5)。
【0036】
この後、CPU51は、ストレージメモリ56に登録されている乗務員ごとの労務時間データを参照し、残り拘束時間が所定時間以上であって出庫可能な時間があるか否かを判別する(ステップS6)。なお、このとき、残り拘束時間の他、営業時間、運行時間および運行距離、あるいは休憩時間をもとに、出庫可能な時間があるか否かを判別するようにしてもよい。
【0037】
出庫可能な時間がある場合、CPU51は、運行カードの作成として、メモリカード40に対し、運行の許可を設定するとともに、計算した残り拘束時間を記録する(ステップS7)。ステップS7の処理は第2の記録手段に相当する。この後、CPU51は本処理を終了する。
【0038】
一方、ステップS6で残り拘束時間が所定時間未満であって、出庫可能な時間が無い場合、CPU51は、運行カードの発行禁止として、メモリカード40に対し、運行の禁止を設定するとともに、値0である残り拘束時間を記録する(ステップS8)。この後、CPU51は本処理を終了する。なお、ステップS7、S8の処理では、CPU51は表示装置55に残り拘束時間を表示させるようにしてもよい。
【0039】
このように、出庫時には、乗務員がメモリカード40をデータ処理装置50のカード読取器54aに挿入することで、運行の許可/禁止および残り拘束時間がメモリカード40に書き込まれることになる。また、入庫時には、メモリカード40に記録された労務時間データがデータ処理装置50に読み込まれ、ストレージメモリ56に登録されている労務時間データが更新されることになる。
【0040】
図5はタクシメータ10の動作手順を示すフローチャートである。この動作プログラムは、前述したようにROM15に格納されており、CPU11によって実行される。
【0041】
CPU11は、起動ボタン13iが押下されるまで待つ(ステップS11)。起動ボタン13iが押下されると、CPU11は、メモリカード40が挿入され、挿入されたメモリカード40に労務時間データがあるか否かを判別する(ステップS12)。
【0042】
メモリカード40が挿入され、労務時間データがあった場合、CPU11は、メモリカード40内の現在時間を出庫時間として採用する(ステップS13)。一方、メモリカード40が挿入され、残り拘束時間を除く労務時間データがクリアされている場合、CPU11は、タクシメータ10内のRTC16で計時された現在時間を出庫時間として採用する(ステップS14)。これにより、メモリカード40がデータ処理装置50に読み込まれていない場合、出庫時間はそのまま維持される。一方、既にデータ処理装置50に読み込まれてメモリカード40内の出庫時間がクリアされている場合、メモリカード40が挿入された時点の現在時間が出庫時間に設定される。
【0043】
ステップS13、S14の処理後、CPU11は、メモリカード40に記録された月の残り拘束時間を表示部12に表示する(ステップS15)。図2には、残り拘束時間として、26時間(h)30分(min)が表示されている。さらに、CPU11は、出庫可能な状態であるか否かを判別する(ステップS16)。ここで、出庫可能な状態とは、残り拘束時間が所定時間以上ある場合である。なお、残り拘束時間の他、例えば運行時間、運行距離、休憩時間などをもとに、出庫可能な状態であるか否かを判別してもよいことは、前述したとおりである。
【0044】
出庫可能な状態にない場合、CPU11は、表示部12に、出庫不可能であることの警告を表示し(ステップS17)、本処理を終了する。一方、出庫可能な状態にある場合、CPU11は、タクシメータ10の状態に変化があったか否かを判別する(ステップS16)。
【0045】
タクシメータ10の状態に変化がなかった場合、CPU11は、実車(賃走)ボタン13bボタンが押下されて営業を開始したか否かを判別する(ステップS19)。なお、1日の営業の開始は、営業開始ボタン13gの押下によって判断してもよいし、最初の賃走ボタン13bの押下によって判断してもどちらでもよい。同様に、1日の営業の終了は、営業終了ボタン13fの押下によって判断してもよいし、最後の空車ボタン13aの押下によって判断してもどちらでもよい。
【0046】
ステップS19で賃走ボタン13bが押下されない場合、CPU11はステップS18の処理に戻る。一方、賃走ボタン13bが押下された場合、CPU11は営業の開始を判断し、タクシの運行が行われる。そして、CPU11は、空車ボタン13aが押下され、営業を終了したか否かを判別する(ステップS20)。
【0047】
空車ボタン13aが押下されない場合、CPU11はステップS18の処理に戻る。一方、空車ボタン13aが押下された場合、CPU11は、営業の終了を判断し、さらに、労務時間の規定値を確認し、労務時間、例えば、運行時間や休憩時間が規定値を越えているか否かを判別する(ステップS21)。なお、RAM14に記憶された運行時間、運行距離、休憩時間などは、運行中あるいは休憩中、CPU11による別の処理で変更される。
【0048】
規定値を越えている場合、CPU11は、表示部12にオーバー時の表示を行う(ステップS22)。図6は表示部12の表示内容を示す図である。図6(A)では、オーバー時の表示として、例えば「規定時間をオーバーしました。運行を終了して下さい。」のメッセージが表示される。この後、CPU11はステップS18の処理に戻る。一方、ステップS21で労務時間が規定値の範囲内である場合、CPU11はそのままステップS18の処理に戻る。
【0049】
また、ステップS18でタクシメータ10の状態に変化があり、その変化が特定の変化、すなわち休憩ボタン13e、賃走ボタン13b、空車ボタン13aなどの各種ボタンの押下や、労務時間の規定値オーバー等である場合、CPU11はトリガを発生させる(ステップS23)。なお、特定の変化でない場合、トリガは発生しない。CPU11は、このトリガの発生により、運行時間、運行距離および休憩時間を表示部12に表示する(ステップS24)。図6(B)に示すように、表示部12の画面には、運行時間、運行距離および休憩時間が表示される。
【0050】
CPU11は、書込みボタン13hが押下され、入庫作業が行われたか否かを判別する(ステップS25)。書込みボタン13hが押下されない場合、CPU11はステップS18の処理に戻る。一方、書込みボタン13hが押下された場合、CPU11は、入庫作業の終了として、メモリカード40に、RAM14に記憶された労務時間データを書き込む(ステップS26)。ステップS26の処理は第1の記録手段に相当する。この後、CPU11は本処理を終了する。
【0051】
このように、本実施形態の運行管理システムによれば、タクシメータの表示部に残り拘束時間が表示されるので、乗務員は拘束時間を自己管理することができる。また、タクシの出庫時、残り拘束時間が表示されるので、乗務員は出庫時に残り拘束時間を確認することができ、残り拘束時間を考慮して1日の運行予定を変更することができる。また、運行状況に変化があった場合、労務時間データに含まれる、運行時間、運行距離および休憩時間が表示されるので、乗務員に拘束時間の管理を促すことができる。また、データ処理装置によって更新された労務時間データに含まれる残り拘束時間が所定時間に満たない場合、タクシの運行が許可されないので、拘束時間の自己管理が重要であることが確認される。
【0052】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られるものではなく、特許請求の範囲で示した機能、または本実施形態の構成が持つ機能が達成できる構成であればどのようなものであっても適用可能である。
【0053】
例えば、上記実施形態では、出庫時に月の残り拘束時間が表示されたが、さらに、乗務員が特定のボタンを押下した時に月の残り拘束時間が表示されるようにしてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、拘束時間に関する情報として残り拘束時間が表示されたが、残り拘束時間の代わりにもしくは残り拘束時間とともに、積算した拘束時間を表示してもよい。この場合、乗務員は、拘束時間の合計を知ることができる他、規定時間から積算した拘束時間を差し引くことで、残り拘束時間を把握することもできる。
【0055】
また、上記実施形態では、メモリカードをカード挿入口あるいはカード読取器に挿入してメモリカード内のデータを読み取らせていたが、赤外線あるいはBluetooth(登録商標)等の無線を用いることにより、非接触でデータを読み取らせるようにしてもよい。また、メモリカードは、単なるメモリカードでなく、セキュリティ機能や演算機能等を有するICカードであってもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、液晶表示器(LCD)からなる表示装置の画面上に表示を行ったが、運行記録装置にプリンタが設けられている場合、このプリンタから出力される用紙に文字、記号などを印字することによって、表示を行うようにしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、タクシに搭載されたタクシメータに適用される場合を示したが、本発明の運行記録装置は、運送トラックや各種の作業車などに搭載することも可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 タクシメータ
11 CPU
12 表示部
13 操作部
13a 空車ボタン
13b 賃走ボタン
13c 割増ボタン
13d 迎車ボタン
13e 休憩ボタン
13f 営業終了ボタン
13g 営業開始ボタン
13h 書込みボタン
13i 起動ボタン
14 RAM
15 ROM
16 RTC
17 センサI/F
18 外部I/F
19 メモリカードI/O部
19a カード挿入口
21 領収書発行器
25 ウインドサイン
32 GPS受信機
36 各種センサ
36a 車速センサ
40 メモリカード
50 データ処理装置
51 CPU
52 ROM
53 RAM
54 メモリカードI/O部
54a カード読取器
55 表示装置
56 ストレージメモリ
57 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運行状況を記録する運行記録装置と、乗務員の労務時間を管理する情報管理装置とを備え、前記運行記録装置および前記情報管理装置で利用される労務時間データを記録媒体に記録する運行管理システムであって、
前記運行記録装置は、
前記記録媒体に記録された労務時間データを読み取る読取手段と、
前記読み取った労務時間データに含まれる拘束時間に関する情報を表示する表示手段と、
前記車両の運行状況に応じて変更される、前記労務時間データを前記記録媒体に記録する第1の記録手段と
を備え、
前記情報管理装置は、
前記労務時間データが格納された格納手段と、
前記記録媒体に記録された労務時間データを読み込む読込手段と、
前記読み込んだ労務時間データをもとに、前記格納手段に格納された労務時間データを更新する更新手段と、
前記更新された労務時間データを前記記録媒体に記録する第2の記録手段と
を備えた
ことを特徴とする運行管理システム。
【請求項2】
請求項1記載の運行管理システムであって、
前記情報管理装置は、前記更新手段によって更新された労務時間データに含まれる残り拘束時間が所定時間に満たない場合、前記車両の運行を許可しないことを特徴とする運行管理システム。
【請求項3】
情報管理装置で利用される労務時間データが記録された記録媒体が接続可能であり、車両の運行状況を記録する運行記録装置であって、
前記記録媒体に記録された労務時間データを読み取る読取手段と、
前記読み取った労務時間データに含まれる拘束時間に関する情報を表示する表示手段と、
前記車両の運行状況に応じて変更される、前記労務時間データを前記記録媒体に記録する記録手段とを備えたことを特徴とする運行記録装置。
【請求項4】
車両の運行状況を記録する運行記録装置と、乗務員の労務時間を管理する情報管理装置とを備えた運行管理システムを用い、前記運行記録装置および前記情報管理装置で利用される労務時間データを記録媒体に記録する運行管理方法であって、
前記運行記録装置において、前記記録媒体に記録された労務時間データを読み取る読取ステップと、
前記読み取った労務時間データに含まれる拘束時間に関する情報を表示装置に表示する表示ステップと、
前記車両の運行状況に応じて変更される、前記労務時間データを前記記録媒体に記録する第1の記録ステップと
を有し、
前記情報管理装置において、前記労務時間データを記憶装置に格納する格納ステップと、
前記記憶装置に格納された前記労務時間データを読み込む読込ステップと、
前記読み込んだ労務時間データをもとに、前記記憶装置に格納された労務時間データを更新する更新ステップと、
前記更新された労務時間データを前記記録媒体に記録する第2の記録ステップと
を有する
ことを特徴とする運行管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−133589(P2012−133589A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285088(P2010−285088)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】