説明

運転支援システム

【課題】運転者が注意散漫となる可能性がある場合にのみ運転者に対し警報を行うことで、運転者にとって有用な支援を行う。
【解決手段】ハンドルカメラ2で取得する車両前方画像に基づいて信号機を検出するとともに、その検出した信号機に関して必要時に運転者Mへの警報を発するようになっている運転支援システムにおいて、舵角0の状態におけるステアリングホイール7の頂点部位にハンドルカメラ2を装着することで、ステアリングホイール7の舵角が一定以下であることを条件に、警報を発する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号機などに関して必要時に運転者に警報を発することで車両の運転を支援する運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両については様々な運転支援システムが提案されており、その一つとして、従来、信号機や道路標識に関して必要時に運転者に警報を発するようにしたシステムがある。
【0003】
例えば、特許文献1記載の従来技術においては、車両の前方を撮像し画像データを取り込む車載カメラが設けられる。そして、撮像結果に基づき、前方の信号機が赤信号から青信号へ色が変化したときに当該色変化が自動的に判断され、車両の運転者に対して警告報知が行われる。
【0004】
また、特許文献2記載の従来技術においては、車両上にステレオカメラが設置される。このステレオカメラで撮像した車両前方の画像から、信号機の表示色、信号機と車両との距離が認識される。そして、信号機が赤色で、信号機と当該車両との距離が一定値以内で、かつ、一定速度以上の場合に、当該車両の運転者に対し音声や画像により警報が出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−188271号公報
【特許文献2】特開2004−199148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術には、以下の課題が存在する。すなわち、上記従来技術のように、信号機の表示に関連して運転者に対し警報を行う運転支援システムは、運転者が交通信号などを見落とすのを防ぐことで運転支援を行うのが本質である。したがって、運転者が交通信号などを見落としやすい場合にだけ警報を発すれば足りる。
【0007】
ところで、運転者が交通信号などを見落としやすくなるのは、運転者が注意散漫になりやすい状態にある場合である。運転者が注意散漫になりやすいのは、ほとんどの場合、車両の直進状態又はそれに準じた状態、つまり、大きなハンドル操作(ステアリングホイールの回転操作)を必要とせずに車両を走行させている場合が多い。なぜならば、一定以上に大きなハンドル操作を必要とする走行状態では、運転者の車両前方に対する注意力が十分に高まっており、交通信号などを見落とす可能性が実際は低いからである。こうした観点からすると、一定以上に大きなハンドル操作がなされている状態、つまりステアリングホイールの舵角が一定以上となっている状態での信号機などに関する警報は必ずしも必要ではない。このような無用な警報を避けることにより、信号機に関する警報を必要最小限に抑え、より効果的な運転支援が可能となる。
【0008】
上記従来技術では、上記の点について特に配慮されておらず、運転者が交通信号などを見落としやすい状態(注意散漫な状態)にあるか否かに関係なく、信号機などに関する警報を発する。この結果、運転者にとって煩わしさを覚えさせ、いたずらな負担をかけることになり、そのために運転支援の有用性を低下させることになりかねない。
【0009】
本発明の目的は、運転者が注意散漫となる可能性がある場合にのみ運転者に対し警報を行うことで、運転者にとって有用な支援を行える運転支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、第1の発明は、車両に搭載され前記車両の前方画像を取得する撮像手段と、前記撮像手段により取得された前記前方画像に基づき、信号機の発光色を検出する信号検出手段と、前記信号検出手段の検出結果に応じて、前記信号機に関して、運転者に対し所定の警報を発生可能な第1警報手段と、前記車両のステアリングホイールの舵角が一定値以下である場合に前記信号機に関する前記所定の警報を発生し、前記舵角が前記一定値を超える場合には前記信号機に関する前記所定の警報を発生しないように、前記第1警報手段を制御する制御手段とを有することを特徴とする。
【0011】
本願第1発明においては、所定の警報を運転者に発生可能な第1警報手段が設けられている。すなわち、撮像手段により取得された車両の前方画像に基づき、信号検出手段が信号機の発光色を検出する。第1警報手段は、信号検出手段の検出結果、すなわち信号機がどのような色を発光しているかに応じて所定の警報を発生可能である。
【0012】
そして、制御手段の制御により、舵角が一定値以下である場合には第1警報手段は上記警報を発生せず、舵角が一定値より大きくなった場合には第1警報手段が上記警報を発生する。この結果、運転者が注意散漫になりやすい、ステアリングホイールの大きな操作を行っていない車両の直進状態(あるいはそれに準じた状態)でのみ警報を発生し、それ以外では警報を発生しないようにすることができる。特に、例えば交差点での右折時左折時において、右折・左折直後の進行方向に位置する信号機は赤信号であるので、単に赤信号時に警報が発生する構成では交差点での右折・左折のたびに警報が発生することなる。これに対し、本願第1発明では、上記のようにステアリングホイールの回転操作時に警報非発生とすることができるので、非常に有用である。
【0013】
以上のようにして、本願第1発明によれば、運転者の車両前方に対する注意力が十分に高まっている、ステアリングホイールを大きく操作している状態での無用な警報の発生を回避することができる。すなわち、運転者が注意散漫となる可能性がある場合にのみ運転者に対し警報を行い、警報を必要最小限に抑えることができるので、より効果的な運転支援を行うことができる。
【0014】
第2発明は、上記第1発明において、前記撮像手段は、前記舵角が0の状態における前記ステアリングホイールの頂点部位に設けられていることを特徴とする。
【0015】
舵角0の状態におけるステアリングホイールの頂点部位に撮像手段を設けた場合、ステアリングホイールに一定以上の回転操作が加えられると、撮像手段は、ステアリングホイールの前方におけるインストルメントパネル(特にインストルメントパネル上の計器盤におけるメータバイザ等)により視野を遮られ、実効的な車両前方画像を取得できなくなる。その結果、車両前方画像に基づく信号機の検出が行われず、信号機に関する警報も発生されない。このように、舵角0の状態でのステアリングホイールの頂点部位に撮像手段を設けることで、舵角を数量的に検出する舵角検出手段を設けその検出結果に応じて警報の発生・非発生を切り替える、等の制御を敢えて行う必要がなくなる。また、自車位置の検出、地図データとの照合、進行方向の検知等の複雑な構成も必要がない。以上により、簡素なシステム構成を実現することができる。
【0016】
第3発明は、上記第2発明において、前記制御手段は、前記信号検出手段により検出された前記信号機の発光色が赤色である場合に前記警報を発生するように、前記第1警報手段を制御することを特徴とする。
【0017】
これにより、交通信号の見落とし防止の中で特に重要な、赤信号の見落とし防止を図ることができる。
【0018】
第4発明は、上記第3発明において、前記制御手段は、前記信号機を検出した時点での前記車両の走行速度が所定の基準速度以上であり、かつ、前記信号機と前記車両との距離が基準距離以下である場合に、前記警報を発生するように、前記第1警報手段を制御することを特徴とする。
【0019】
これにより、信号機の発光色が赤であっても車両の走行に直接影響することが少ない場合、つまり車両が比較的低速走行であるか若しくは信号機から車両が比較的遠距離にある場合等には、警報を行わない。この結果、無用な警報をさらに抑えることができる。
【0020】
第5発明は、上記第2乃至請求項4のいずれか1項発明において、前記撮像手段により取得された前記前方画像に基づき、道路標識を検出する標識検出手段をさらに有し、前記標識検出手段により検出された前記道路標識に関して、運転者に対し所定の警報を発生可能な第2警報手段と、前記制御手段は、前記舵角が一定値以下である場合に前記道路標識に関する前記所定の警報を発生し、前記舵角が前記一定値を超える場合には前記道路標識に関する前記所定の警報を発生しないように、前記第2警報手段を制御することを特徴とする。
【0021】
本願第5発明においては、信号機に関する警報の発生による運転支援に加え、一時停止標識等のような規制関係の道路標識に関する警報の発生により運転支援を行うことができる。この結果、さらに有効な運転支援を図ることができる。
【0022】
第6発明は、上記第2乃至第5発明のいずれかにおいて、前記撮像手段は、前記警報手とともに組み込まれた撮影・表示ユニットとして、前記頂点部位に設けられていることを特徴とする。
【0023】
本願第6発明においては、表示装置がステアリングホイールの舵角0状態における頂点部位に設けられることにより、前方注意状態にある運転者にとって最も視認しやすい状態で警報表示を行うことができる。この結果、運転支援をより一層効果的に行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のような本発明によれば、信号機等に関した運転支援システムについて、信号機などに関する警報を必要最小限に抑えることができるようになり、より効果的な運転支援が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態による運転支援システムの概要を表す機能ブロック図である。
【図2】図1の運転支援システムを適用した車両の要部を模式化して示す図である。
【図3】撮影・表示ユニットの内部構造を拡大して示す図である。
【図4】撮影・表示ユニットが装着されたステアリングホイールとメータバイザの関係を示す図である。
【図5】ハンドルカメラで取得される画像の一例を示す図である。
【図6】ハンドルカメラで取得される画像の他の例を示す図である。
【図7】車両と信号機の距離の算出原理を示す図である。
【図8】ハンドルカメラで取得される画像のさらに他の例を示す図である。
【図9】信号機についての警報と情報表示に関する処理の流れを示す図である。
【図10】一時停止標識についての警報と情報表示に関する処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図10により説明する。
【0027】
図1は本実施形態による運転支援システム1の概要を表す機能ブロック図である。図1において、運転支援システム1は、ハンドルカメラ2(撮像手段に相当)と、運転支援制御ユニット3と、警報装置4と、表示装置5とを備えている。運転支援システム1では、ハンドルカメラ2が車両前方画像を取得し、その車両前方画像に基づいて運転支援制御ユニット3が警報の発動や情報の表示のための処理を行う。そして、ステアリングホイールの舵角が一定以下であることを警報発動条件として、必要時に信号機や道路標識に関して警報装置4が運転者M(図2参照)に警報を発したり、表示装置5が信号機や道路標識に関する情報を表示したりすることで運転支援システム1による運転支援が行われる。
【0028】
図2は、図1の運転支援システムを適用した車両の要部を模式化して示す図である。図2に示すように、ハンドルカメラ2は、車両6のステアリングホイール7、この例ではステアリングホイール7のホイール部7hに埋め込むようにして設けられ、車両6の前方を撮影して車両前方画像を取得する。ステアリングホイール7へのハンドルカメラ2の装着位置は、ステアリングホイール7の舵角(車両6の直進状態を基準にしたステアリングホイール7の回転角)が0の状態における、ステアリングホイール7の頂点部位(ホイール部7hの頂点部位)である。
【0029】
図3は撮影・表示ユニット8の模式化した内部構造を拡大して示す模式図であり、図4は、撮影・表示ユニットが装着されたステアリングホイールとメータバイザの関係を示す図である。ハンドルカメラ2は、これら図3、図4及び上記図2に示すように、撮影・表示ユニット8の形態でステアリングホイール7に装着されている。具体的には、ハンドルカメラ2を液晶式の表示装置5とともに組み込んで撮影・表示ユニット8が形成され、この撮影・表示ユニット8がステアリングホイール7の頂点部位でホイール部7hに装着されている。
【0030】
撮影・表示ユニット8は、円筒枠体9の内部にハンドルカメラ2と表示装置5を組み付けて形成されている。円筒枠体9は、ホイール部7hに装着した際にホイール部7hに対して滑らかな外周面となるように、ホイール部7hと同じ曲率の円弧形の形状を有し、かつホイール部7hの断面形状と同じ断面形状を有するようにされている。また円筒枠体9は、ハンドルカメラ2の視野に対応する部分と表示装置5の画面に対応する部分に透明部9cと透明部9dとが設けられている。
【0031】
次に、上記構造のハンドルカメラ2による撮像例を説明する。上記図2や図4に示したように、車両6の内部において、ステアリングホイール7の前方にはインストルメントパネル11がある。特に、インストルメントパネル11に設けられている計器盤におけるメータバイザ12は、ステアリングホイール7に近接した前方にある。上記図4(a)に示すようなステアリングホイール7の舵角が0の状態(あるいは舵角が0に比較的近い一定以下の状態)では、メータバイザ12越しに、信号機Sや所定の道路標識(図示省略)等を含む車両前方の景色をカメラ視野Fの全体でとらえることができ、実効的な車両前方画像を取得することができる。この車両前方画像の一例を図5に示す。
【0032】
一方、上記図4(b)に示すようなステアリングホイール7が一定以上の舵角αを超えるまで回転操作された状態では、図6に示すように、カメラ視野F全体がステアリングホイール7とともに回転する。この結果、ハンドルカメラ2により取得された画像は、メータバイザ12やインストルメントパネル11によって視野を大きく遮られて上記信号機Sや道路標識等も含まれない状態となり、上記車両前方画像としての実効性を欠いた視野遮蔽画像となる。
【0033】
本実施形態では、ステアリングホイール7とともに回転するハンドルカメラ2における上記のような視野Fの変化を利用して、運転者が注意散漫となる可能性が高い直進走行時(あるいはそれに準じる場合)にのみ、所定の警報を行うように制御を行うものである。以下、その詳細を順を追って説明する。
【0034】
図1に戻り、運転支援制御ユニット3は、ハンドルカメラ2で取得する上記車両前方画像に基づき、信号機Sや道路標識(この例では一時停止標識)に関して必要時に運転者に警報を発するための処理を行う。そのために運転支援制御ユニット3は、画像解析部13と、警報制御部14(制御手段に相当)とを備えている。
【0035】
画像解析部13は、ハンドルカメラ2で取得する上記車両前方画像を取り込んで解析し、その結果を警報制御部14に提供する。画像解析部13における解析では、車両前方画像から信号機Sや道路標識を検出し、信号機Sを検出した場合にはさらにその信号機Sの信号色(発光色)を検出し、道路標識を検出した場合にはさらにその標識の内容を(一時停止標識であるかどうか)確認する。本実施形態では、信号機S及び一時停止標識を警報発生のための検出対象としている。このため画像解析部13は、信号機用の第1解析部13a、一時停止標識(図示せず)などの各種標識用の第2解析部13b、及び速度解析用の第3解析部13cを備えている。第1解析部13aが信号検出手段に相当し、第2解析部13bが標識検出手段に相当する。ここで、ハンドルカメラ2で得られる画像から特定の像を認識して検出する処理としては、周知の各種処理法を適宜に選択して用いることができる。
【0036】
警報制御部14は、画像解析部13からの解析結果の提供を受けて、警報装置4による警報の発動に関する制御を行う。警報の発動は、信号機に関しては信号色が赤色である場合に行う。また警報の発動は、その時点での車両6の走行速度や車両6と警報対象の信号機あるいは道路標識との距離を条件としてなされる。具体的には、信号機Sや一時停止標識の場合に、車両の走行速度が基準速度(例えば時速30キロメートル等)以上であり、かつ車両と警報対象の信号機あるいは一時停止標識との距離が基準距離(例えば30メートル等)以下であることを条件に警報を発するように、警報装置4を制御する。
【0037】
警報条件における距離については、図7に示す原理を用いて、画像解析部13の第1解析部13aが判定する。具体的には、標準化されている信号機Sの信号灯器Sfの路面からの高さとハンドルカメラ2の路面からの高さの差分高さhは既知であり、またハンドルカメラ2と信号灯器Sfを結ぶ線分Loがハンドルカメラ2から水平に引かれる線分Lhとなす角度θは、車両前方画像を解析して求めることができる。これにより、第1解析部13aは、ハンドルカメラ2と信号機Sの現在距離DをD=h/tanθとして算出し、この現在距離Dを車両6と信号機Sとの現在距離とし、現在距離Dが予め設定の基準距離以下であるかを判定し、その判定結果を解析結果出力として警報制御部14に出力する。
【0038】
なお、以上は、第1解析部13aによる車両6から信号機Sまでの現在距離Dの算出原理を例にとって説明したが、警報発生のためのもう一つの検出対象である、一時停止標識についても、第2解析部13bによって同様の手法で算出される(説明を省略する)
【0039】
警報条件における走行速度については、上記のようにして第1解析部13aにより求められる信号機Sまでの距離Dの推移に基づき、上記第3解析部13cが算出する。すなわち、上記図5に示した状態(信号機Sまで比較的遠い状態)において上記第1解析部13が算出した上記現在距離Dと、当該状態よりやや後の図8に示した状態(信号機Sまで比較的近い状態)において上記第1解析部13が算出した上記現在距離Dとを、それら2つの状態の推移の間に要した時間で除することにより、平均の走行速度を求めることができる。
【0040】
また、上記画像解析による速度検出以外の手法でもよい。すなわち、図1中に想像線で示すように、例えばシステム外の車両情報供給源16(これには車両6に設けられている車両情報に関するネットワークなどが該当する)から車両6の現在走行速度が取得され、その現在走行速度が予め設定の基準速度以上であるかを速度判定部15が判定し、その判定結果を警報制御部14に出力するようにしてもよい。
【0041】
図1に戻り、警報制御部14は、警報を発するとした場合、警報装置4や表示装置5に警報指令を出力する。警報装置4は、例えばランプの点灯や点滅で警報する形態、音声で警報する形態、警報音で警報する形態、ステアリングホイール7に振動を与えて警報する形態、運転者Mを拘束しているシートベルト17の引き込みで警報する形態等、のいずれかの形態で警報を発生させる。警報制御部14からの警報指令を受けて、前記各形態のいずれかで警報を行う。一方、表示装置5による警報は、例えば信号機の信号色を表示する形態や道路標識の画像を表示する形態などで行われればよい。これら警報装置4及び表示装置5が、第1警報手段及び第2警報手段として機能する。
【0042】
なお、警報制御部14は、以上のような警報とは別に、画像解析部13による車両前方画像の解析で得られる運転支援に有用な情報の表示に関する処理も行うようにしてもよい(警報・表示制御部としての機能)。この場合、警報制御部14の制御に基づき、信号機の信号色、一時停止標識、及び速度制限標識から得られる制限速度情報、等を、表示装置5(又は車両6が標準装備品として備えている表示装置)において運転支援に有用な情報として表示すればよい。
【0043】
図9は、上記運転支援制御ユニット3において、画像解析部13の第1解析部13a、第3解析部13c、及び警報制御部4の協働で実行される、信号機Sに係わる警報発生を実行するための制御内容を表すフローチャートである。なお、この図9のフローは、例えば一定の時間間隔で繰り返される。
【0044】
まず、ステップS1で、ハンドルカメラ2で得られる車両前方画像が、画像解析部13によって取り込まれる(画像取込み処理)。その後、ステップS2で、画像解析部13により、ステップS1で取り込んだ車両前方画像に対する、解析処理が行われる。この解析処理では、第1解析部13aが車両前方画像から信号機を検出するとともに、検出した信号機について信号色(発光色)を検出する。
【0045】
ステップS3では、ステップS2での画像解析結果に基づき、警報制御部14により、信号機Sが検出されたか否かが判定される(信号機検出判定)。ステップS2で信号機Sが検出されていない場合にはステップS3の判定が満たされず、このフローを終了する。一方、ステップS2で信号機Sが検出された場合はステップS3の判定が満たされ、ステップS4に移る。
【0046】
ステップS4では、警報制御部14が表示装置5等に制御信号を出力し、ステップS2で検出された信号色を表示装置5等に表示させる(信号色表示処理)。その後、ステップS5に移る。
【0047】
ステップS5では、警報制御部14により、ステップS2で検出された信号色が赤色であるかが判定される(赤色判定処理)。ステップS2で検出された信号色が赤色でなかった(青色又は黄色であった)場合にはステップS5の判定が満たされず、このフローを終了する。一方、ステップS2で検出された信号色が赤色であった場合にはステップS5の判定が満たされ、ステップS6に移る。
【0048】
ステップS6では、第3解析部15cによる上述の車両速度判定が実行され、現在の車両6の走行速度が予め定めた所定の上記基準速度以上であるか否かが判定される。走行速度が基準速度未満であった場合にはステップS6の判定が満たされず、このフローを終了する。一方、走行速度が基準速度以上であった場合にはステップS6の判定が満たされ、ステップS7に移る。
【0049】
ステップS7では、第2解析部13aによる上述の距離判定処理が実行され、車両6と信号機Sとの現在距離Dが予め定めた上記基準距離以下であるか否かが判定される。現在距離Dが基準距離より大きかった場合にはステップS7の判定が満たされず、このフローを終了する。一方、現在距離Dが基準距離以下であった場合にはステップS7の判定が満たされ、ステップS8に進む。
【0050】
ステップS8では、ステップS2で検出された信号機Sに関する警報発動処理が警報制御部14により実行され、前述したように運転者Mに対し警報装置4や表示装置5を通じて警報が発せられる。その後、このフローを終了する。
【0051】
図10は、上記運転支援制御ユニット3において、画像解析部13の第2解析部13b、第3解析部13c、及び警報制御部4の協働で実行される、道路標識に係わる警報発生を実行するための制御内容を表すフローチャートである。なお、この図10のフローは、例えば一定の時間間隔で繰り返される。
【0052】
まず、ステップS11で、ハンドルカメラ2で得られる車両前方画像が、画像解析部13によって取り込まれる(画像取込み処理)。その後、ステップS12で、画像解析部13により、ステップS11で取り込んだ車両前方画像に対する、解析処理が行われる。この解析処理では、第2解析部13bが車両前方画像から所定の道路標識を検出するとともに、検出した道路標識についてその表示内容を検出する。
【0053】
ステップS13では、ステップS12での画像解析結果に基づき、警報制御部14により、一時停止標識が検出されたか否かが判定される(一時停止標識検出判定)。ステップS12で一時停止標識が検出されていない場合にはステップS13の判定が満たされず、このフローを終了する。一方、ステップS12で一時停止標識が検出された場合はステップS13の判定が満たされ、ステップS14に移る。
【0054】
ステップS14では、警報制御部14が表示装置5等に制御信号を出力し、ステップS12で検出された一時停止標識の外観(あるいは対応するマーク、シンボル、テキスト等でもよい)を表示装置5等に表示させる(標識内容表示処理)。その後、ステップS15に移る。
【0055】
ステップS15では、第3解析部15cによる上述の車両速度判定が実行され、現在の車両6の走行速度が予め定めた所定の上記基準速度以上であるか否かが判定される。走行速度が基準速度未満であった場合にはステップS15の判定が満たされず、このフローを終了する。一方、走行速度が基準速度以上であった場合にはステップS15の判定が満たされ、ステップS16に移る。
【0056】
ステップS16では、第2解析部13bによる上述の距離判定処理(但し一時停止標識までの現在距離Dの算出と判定)が実行され、車両6と一時停止標識との現在距離Dが予め定めた上記基準距離以下であるか否かが判定される。現在距離Dが基準距離より大きかった場合にはステップS16の判定が満たされず、このフローを終了する。一方、現在距離Dが基準距離以下であった場合にはステップS16の判定が満たされ、ステップS17に進む。
【0057】
ステップS17では、ステップS12で検出された一時停止標識に関する警報発動処理が警報制御部14により実行され、前述したように運転者Mに対し警報装置4や表示装置5を通じて警報が発せられる。その後、このフローを終了する。
【0058】
以上説明したように、上記実施形態においては、警報装置14や表示装置5より、所定の警報を運転者に発生可能である。すなわち、ハンドルカメラ2により取得された車両6からの前方画像に基づき、信号機の発光色や道路標識の内容が検出される。そして、警報制御部14の制御により、ステアリングホイール7の舵角αが一定値以下である場合(図4(a)参照)には上記警報は発生せず、舵角αが一定値より大きくなった場合(図4(b)参照)には上記警報を発生させることができる。この結果、運転者が注意散漫になりやすい車両の直進状態(あるいはそれに準じた状態)でのみ警報を発生し、それ以外では警報を発生しないようにすることができる。このとき特に、例えば交差点での右折時左折時において、右折・左折直後の進行方向に位置する信号機は赤信号であるので、単に赤信号時に警報が発生する構成では交差点での右折・左折のたびに警報が発生することなる。これに対し、本実施形態では、上記のようにステアリングホイール7の回転操作時には警報非発生とすることができるので、非常に有用である。
【0059】
以上のようにして、実施形態によれば、運転者の車両前方に対する注意力が十分に高まっている、ステアリングホイール7を大きく操作している状態での無用な警報の発生を回避することができる。すなわち、運転者が注意散漫となる可能性がある場合にのみ運転者に対し警報を行い、警報を必要最小限に抑えることができるので、より効果的な運転支援を行うことができる。また、信号機Sに関する警報の発生による運転支援に加え、一時停止標識(その他の規制関係の道路標識を含めてもよい)に関する警報の発生により運転支援を行うこともできる。この結果、さらに有効な運転支援を図ることができる。
【0060】
また、本実施形態では特に、ハンドルカメラ2は、舵角αが0の状態におけるステアリングホイール7の頂点部位に設けられている。この構造により、前述したように、ステアリングホイール7に一定以上の回転操作が加えられた場合に、ハンドルカメラ2は視野Fを遮られ(図6参照)、実効的な車両前方画像を取得できなくなる。その結果、車両前方画像に基づく信号機Sや一時停止標識の検出が行われず、警報も発生されない。このように、ステアリングホイール7の頂点部位にハンドルカメラ2を設けることで、舵角αを数量的に検出する舵角検出手段を設けその検出結果に応じて警報の発生・非発生を切り替える、等の制御を敢えて行う必要がなくなる。また、自車位置の検出、地図データとの照合、進行方向の検知等の複雑な構成も必要がない。以上により、簡素なシステム構成を実現することができる。
【0061】
また、本実施形態では特に、検出された信号機Sの発光色が赤色である場合に警報を発生するように、警報制御部14が制御を行う(図9のステップS5等を参照)。これにより、交通信号の見落とし防止の中で特に重要な、赤信号の見落とし防止を図ることができる。さらにこのとき、信号機S(又は一時停止標識)を検出した時点での車両6の走行速度が所定の基準速度以上であり、かつ、信号機S(又は一時停止標識)と車両Sとの距離Dが基準距離以下である場合に、警報を発生するように、警報制御部14が制御を行う(図9のステップS6及びステップS7、図10のステップS15及びステップS16参照)。これにより、信号機Sの発光色が赤であったり道路標識が一時停止標識であっても車両6の走行に直接影響することが少ない場合、つまり車両6が比較的低速走行であるか若しくは信号機S(又は一時停止標識)から車両6が比較的遠距離にある場合等には、警報を行わない。この結果、無用な警報をさらに抑えることができる。
【0062】
また、本実施形態では特に、表示装置5がステアリングホイール7の舵角0状態における頂点部位に設けられている。これにより、前方注意状態にある運転者にとって最も視認しやすい状態で警報表示を行うことができる。この結果、運転支援をより一層効果的に行うことができる。
【0063】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0064】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0065】
1 運転支援システム
2 ハンドルカメラ(カメラ)
3 運転支援制御ユニット
6 車両
7 ステアリングホイール
8 撮影・表示ユニット
13 画像解析部
14 警報制御部
M 運転者
S 信号機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され前記車両の前方画像を取得する撮像手段と、
前記撮像手段により取得された前記前方画像に基づき、信号機の発光色を検出する信号検出手段と、
前記信号検出手段の検出結果に応じて、前記信号機に関して、運転者に対し所定の警報を発生可能な第1警報手段と、
前記車両のステアリングホイールの舵角が一定値以下である場合に前記信号機に関する前記所定の警報を発生し、前記舵角が前記一定値を超える場合には前記信号機に関する前記所定の警報を発生しないように、前記第1警報手段を制御する制御手段と
を有することを特徴とする運転支援システム。
【請求項2】
請求項1記載の運転支援システムにおいて、
前記撮像手段は、
前記舵角が0の状態における前記ステアリングホイールの頂点部位に設けられている
ことを特徴とする運転支援システム。
【請求項3】
請求項2記載の運転支援システムにおいて、
前記制御手段は、
前記信号検出手段により検出された前記信号機の発光色が赤色である場合に前記警報を発生するように、前記第1警報手段を制御する
ことを特徴とする運転支援システム。
【請求項4】
請求項3記載の運転支援システムにおいて、
前記制御手段は、
前記信号機を検出した時点での前記車両の走行速度が所定の基準速度以上であり、かつ、前記信号機と前記車両との距離が基準距離以下である場合に、前記警報を発生するように、前記第1警報手段を制御する
ことを特徴とする運転支援システム。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれか1項記載の運転支援システムにおいて、
前記撮像手段により取得された前記前方画像に基づき、道路標識を検出する標識検出手段をさらに有し、
前記標識検出手段により検出された前記道路標識に関して、運転者に対し所定の警報を発生可能な第2警報手段と、
前記制御手段は、
前記舵角が一定値以下である場合に前記道路標識に関する前記所定の警報を発生し、前記舵角が前記一定値を超える場合には前記道路標識に関する前記所定の警報を発生しないように、前記第2警報手段を制御する
ことを特徴とする運転支援システム。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5のいずれか1項記載の運転支援システムにおいて、
前記撮像手段は、前記警報手段とともに組み込まれた撮影・表示ユニットとして、前記頂点部位に設けられている
ことを特徴とする運転支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−53749(P2012−53749A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196760(P2010−196760)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(306009581)タカタ株式会社 (812)
【Fターム(参考)】