説明

運転支援装置、運転支援方法及びコンピュータプログラム

【課題】車線毎の規制の内容が不規則或いは頻繁に変動する道路区間においても、車両が現在走行する車線から他の車線へと進入する場合に、車線毎の規制の内容に応じて警告することが可能な運転支援装置、運転支援方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】車両の周囲の道路上に設置された車線区分構造物を検出し(S3)、検出された車線区分構造物が車両の進入可能な間隔を隔てて連続して設置されている場合に、該間隔を形成する各車線区分構造物の座標に基づいて、各車線区分構造物の間を結ぶ仮想線を設定するとともに(S7)、設定された仮想線を自車両が越えると判定された場合に警告を行う(S11)ように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の安全走行の為に警告を行う運転支援装置、運転支援方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に道路が複数の車線から構成されている場合においては、車線毎に車両の進行方向や走行可能な車両が予め決められている場合が多い。そして、そのような車線毎に決められた規制の内容は、通常、道路標識や路面上に描かれた路面標示で示されている。また、近年では、ナビゲーション装置において車線毎に決められた規制の内容を運転者に案内することも行われている(特開2009−59209号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−59209号公報(第10頁、図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一部の道路区間においては、車線毎に決められた規制の内容が道路標識や路面上に描かれた路面標示で明確に示されていない場合がある。同じく、一部の道路区間においては、ナビゲーション装置に車線毎に決められた規制の内容が記憶されておらず運転者に案内できない場合がある。そのような道路区間としては、例えば、高速道路の料金所付近、サービスエリアやパーキングエリア付近等のような、仮設防護柵等の車両の進入を禁止する立体構造物(以下、車線区分構造物という)によって車線が区分されている道路区間がある。このような道路区間では、曜日や時間帯によって車線区分構造物の設置位置が変化することにより、車線の境界の位置が変化する。その結果、車線の境界の位置が不規則且つ頻繁に変動するので、ナビゲーション装置に予め車線の境界の位置を記憶させることができない。
【0005】
また、上記道路区間において車線を区分する車線区分構造物は、車線の境界上に一定間隔で連続して設置され、車両が進入できないように構成されているが、間隔が広く設置されている場所も存在する。そのような場所では車両が車線区分構造物の間に進入して他の車線へと移動することができる。その場合において、車両が進入した車線が対向車線であったり、走行することが禁止されている車線の場合もあるので、安全走行を行わせるために車線を越える場合に適切な警告を行う必要がある。しかしながら、前記特許文献1に記載のナビゲーション装置では、予め車線の境界の位置をナビゲーション装置に記憶させることができないので、車線の境界の位置を特定することができない。従って、そのような状況において運転者に適切な警告を行うことができない問題があった。
【0006】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、車線の境界の位置が不規則或いは頻繁に変動する道路区間においても、車両が現在走行する車線から他の車線へと進入する場合に警告することが可能な運転支援装置、運転支援方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る運転支援装置(1)は、道路上に設置されるとともに車両の進入を禁止する立体構造物(54、55)を検出する構造物検出手段(13)と、前記構造物検出手段により検出された前記立体構造物が間隔を隔てて連続して設置されている場合であって、且つ前記間隔が前記車両の進入が可能な間隔である場合に、前記間隔を形成する各立体構造物の間を結ぶ仮想線(66、76)を設定する仮想線設定手段(13)と、前記仮想線を前記車両が越えるか否かを判定する仮想線判定手段(13)と、前記仮想線判定手段によって前記車両が越えると判定された場合に警告を行う警告手段(13)と、を有することを特徴とする。
尚、「車両の進入を禁止する立体構造物」とは、例えば車線の境界上に設置されたポストコーンや仮設防護柵等がある。
【0008】
また、請求項2に係る運転支援装置(1)は、請求項1に記載の運転支援装置において、前記車両が前記仮想線(66、76)を越えると判定された場合に、前記仮想線を越えた後の前記車両の進行方向を取得する進行方向取得手段(13)を有し、前記警告手段(13)は、前記進行方向取得手段で取得した前記車両の進行方向に応じて警告が必要か否か判定し、必要であると判定された場合に警告を行うことを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る運転支援装置(1)は、請求項1又は請求項2に記載の運転支援装置において、前記立体構造物(54、55)が設置されている道路の道路形状を取得する道路形状取得手段(13)を有し、前記仮想線設定手段(13)は、前記道路形状取得手段によって取得された道路形状に基づいて前記仮想線を設定することを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る運転支援方法は、道路上に設置されるとともに車両の進入を禁止する立体構造物(54、55)を検出する構造物検出ステップと、前記構造物検出ステップにより検出された前記立体構造物が間隔を隔てて連続して設置されている場合であって、且つ前記間隔が前記車両の進入が可能な間隔である場合に、前記間隔を形成する各立体構造物の間を結ぶ仮想線(66、76)を設定する仮想線設定ステップと、前記仮想線を前記車両が越えるか否かを判定する仮想線判定ステップと、前記仮想線判定ステップによって前記車両が越えると判定された場合に警告を行う警告ステップと、を有することを特徴とする。
【0011】
更に、請求項5に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに搭載され、道路上に設置されるとともに車両の進入を禁止する立体構造物(54、55)を検出する構造物検出機能と、前記構造物検出機能により検出された前記立体構造物が間隔を隔てて連続して設置されている場合であって、且つ前記間隔が前記車両の進入が可能な間隔である場合に、前記間隔を形成する各立体構造物の間を結ぶ仮想線(66、76)を設定する仮想線設定機能と、前記仮想線を前記車両が越えるか否かを判定する仮想線判定機能と、前記仮想線判定機能によって前記車両が越えると判定された場合に警告を行う警告機能と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
前記構成を有する請求項1に記載の運転支援装置によれば、車線の境界の位置が不規則或いは頻繁に変動する道路区間においても、車両が現在走行する車線から他の車線へと進入する場合に警告することが可能となる。
【0013】
また、請求項2に記載の運転支援装置によれば、車両が現在走行する車線から他の車線へと進入する場合に、進入後の車両の進行方向に応じて警告が必要な場合に警告を行うことができる。その結果、より適切な警告を行うことが可能となる。
【0014】
また、請求項3に記載の運転支援装置によれば、直線形状以外の特殊な形状の道路において車両の進入を禁止する立体構造物が設置されている場合であっても、道路形状に対応させた適切な形状の仮想線を設定することが可能となる。その結果、車両が立体構造物の間を通過して現在走行する車線から他の車線へと進入するか否かを正確に判定することができる。
【0015】
また、請求項4に記載の運転支援方法によれば、車線の境界の位置が不規則或いは頻繁に変動する道路区間においても、車両が現在走行する車線から他の車線へと進入する場合に警告することが可能となる。
【0016】
更に、請求項5に記載のコンピュータプログラムによれば、車線の境界の位置が不規則或いは頻繁に変動する道路区間においても、車両が現在走行する車線から他の車線へと進入する場合に警告を実行させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係るナビゲーション装置を示したブロック図である。
【図2】車線を区画する車線区分構造物の例を示した図である。
【図3】本実施形態に係る仮想線警告処理プログラムのフローチャートである。
【図4】直線形状の道路区間において設定される仮想線の一例を示した図である。
【図5】カーブ形状の道路区間において設定される仮想線の一例を示した図である。
【図6】判定領域の一例を示した図である。
【図7】本願発明を一般道路に対して適用した場合の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る運転支援装置についてナビゲーション装置に具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係るナビゲーション装置1の概略構成について図1を用いて説明する。図1は本実施形態に係るナビゲーション装置1を示したブロック図である。
【0019】
図1に示すように本実施形態に係るナビゲーション装置1は、車両の現在位置を検出する現在位置検出部11と、各種のデータが記録されたデータ記録部12と、入力された情報に基づいて、各種の演算処理を行うナビゲーションECU13と、ユーザからの操作を受け付ける操作部14と、ユーザに対して地図や目的地までの案内経路を表示する液晶ディスプレイ15と、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ16と、プログラムを記憶した記憶媒体であるDVDを読み取るDVDドライブ17と、交通情報センタ等の情報センタとの間で通信を行う通信モジュール18と、から構成されている。また、ナビゲーション装置1には後述する車線区分構造物を検出する為の検出カメラ19が接続されている。
【0020】
以下に、ナビゲーション装置1を構成する各構成要素について順に説明する。
現在位置検出部11は、GPS21、車速センサ22、ステアリングセンサ23、ジャイロセンサ24、高度計(図示せず)等からなり、現在の車両の位置、方位、車両の走行速度等を検出することが可能となっている。ここで、特に車速センサ22は、車両の移動距離や車速を検出する為のセンサであり、車両の車輪の回転に応じてパルスを発生させ、パルス信号をナビゲーションECU13に出力する。そして、ナビゲーションECU13は発生するパルスを計数することにより車輪の回転速度や移動距離を算出する。尚、上記4種類のセンサをナビゲーション装置1が全て備える必要はなく、これらの内の1又は複数種類のセンサのみをナビゲーション装置1が備える構成としても良い。
【0021】
また、データ記録部12は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記録された地図情報DB31や所定のプログラム等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。
【0022】
ここで、地図情報DB31は、経路案内、交通情報案内及び地図表示に必要な各種地図データが記録されている。
また、地図データは、具体的には、道路(リンク)形状に関するリンクデータ、ノード点に関するノードデータ、施設等の地点に関する情報であるPOIデータ、各交差点に関する交差点データ、経路を探索するための探索データ、地点を検索するための検索データ、地図、道路、交通情報等の画像を液晶ディスプレイ15に描画するための画像描画データ等から構成されている。特にリンクデータとしては、リンクの道路種別(高速自動車道路、都市高速道路、自動車専用道路、一般有料道路、取付道路、一般道路)に関する情報が記憶される。
尚、地図情報DB31は、地図配信センタ等から配信される更新データや記憶媒体(例えば、DVDやメモリーカード)を介して提供される更新データに基づいて更新される。
【0023】
一方、ナビゲーションECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)13は、目的地が選択された場合に現在位置から目的地までの案内経路を設定する案内経路設定処理、検出カメラ19を用いて道路上に設置された車線区分構造物を検出する検出処理、検出した複数の車線区分構造物の間を結ぶ仮想線を設定する仮想線設定処理、設定された仮想線を車両が越えるか否かを判定する仮想線判定処理、車両が仮想線を越えると判定される場合に警告を行う警告処理等のナビゲーション装置1の全体の制御を行う電子制御ユニットである。そして、演算装置及び制御装置としてのCPU41、並びにCPU41が各種の演算処理を行うにあたってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM42、制御用のプログラムのほか、後述の仮想線警告処理プログラム(図3参照)等が記録されたROM43、ROM43から読み出したプログラムを記憶するフラッシュメモリ44等の内部記憶装置を備えている。
【0024】
操作部14は、走行開始地点としての出発地及び走行終了地点としての目的地を入力する際等に操作され、各種のキー、ボタン等の複数の操作スイッチ(図示せず)から構成される。そして、ナビゲーションECU13は、各スイッチの押下等により出力されるスイッチ信号に基づき、対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。尚、液晶ディスプレイ15の前面に設けたタッチパネルによって構成することもできる。
【0025】
また、液晶ディスプレイ15には、道路を含む地図画像、交通情報、操作案内、操作メニュー、キーの案内、出発地から目的地までの案内経路、案内経路に沿った案内情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組等が表示される。また、車両が仮想線を越えると判定される場合には警告を表示する。
【0026】
また、スピーカ16は、ナビゲーションECU13からの指示に基づいて案内経路に沿った走行を案内する音声ガイダンスや、交通情報の案内を出力する。また、車両が仮想線を越えると判定される場合には警告音声を出力する。
【0027】
また、DVDドライブ17は、DVDやCD等の記録媒体に記録されたデータを読み取り可能なドライブである。そして、読み取ったデータに基づいて地図情報DB31の更新等が行われる。
【0028】
また、通信モジュール18は、交通情報センタ、例えば、VICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)センタやプローブセンタ等から送信された渋滞情報、規制情報、交通事故情報等の各情報から成る交通情報を受信する為の通信装置であり、例えば携帯電話機やDCMが該当する。
【0029】
また、検出カメラ19は、例えばCCD等の固体撮像素子を用いたものであり、車両の前後左右のそれぞれの外壁に対して、視線方向を水平より所定角度下方に向けて設置される。そして、検出カメラ19は走行時に車両の進行方向、車両側方及び車両後方を撮像し、ナビゲーションECU13は撮像した画像に基づいて後述のように車両の周囲の道路上に設置された車線を区画する車線区分構造物を検出する。そして、ナビゲーションECU13は、検出された車線区分構造物に基づいて後述の仮想線を設定する。ここで、車線区分構造物は、複数の車線から構成される道路区間において車線の境界上に一定間隔で連続して設置され、車線を区分するとともに車両の進入を禁止する立体構造物である。具体的には図2に示すような車線51〜53の境界上に設置されたポストコーン54や仮設防護柵55等が該当する。これらの車線区分構造物は、例えば高速道路の料金所付近、サービスエリアやパーキングエリア付近において多く設置されているが、一部の一般道においても設置されている場所がある。
尚、本実施形態では車両周辺に設置された車線区分構造物を検出する手段として検出カメラ19を用いているが、検出カメラ19の代わりにレーダーセンサや赤外線センサ等を用いてもよい。
【0030】
続いて、前記構成を有するナビゲーション装置1において実行する仮想線警告処理プログラムについて図3に基づき説明する。図3は本実施形態に係る仮想線警告処理プログラムのフローチャートである。ここで、仮想線警告処理プログラムは車両のACCがONされた後に実行され、複数の車線区分構造物の間に設定された仮想線を車両が越えると判定された場合に警告を行うプログラムである。尚、以下の図3にフローチャートで示されるプログラムは、ナビゲーションECU13が備えているRAM42、ROM43等に記憶されており、CPU41により実行される。
【0031】
仮想線警告処理プログラムでは、先ずステップ(以下、Sと略記する)1において、CPU41は、自車両の走行する道路の道路種別を取得する。具体的には、先ずGPS21やジャイロセンサ24の検出結果に基づいて、自車両の現在位置や方位等に関する情報を取得する。そして、地図情報DB31に記憶された地図情報に基づいて、自車両の現在位置を地図上で特定するマップマッチング処理を行い、自車両の現在位置を含むリンクの道路種別についてリンクデータから特定する。尚、リンクの道路種別としては、高速自動車道路、都市高速道路、自動車専用道路、一般有料道路、取付道路、一般道路等がある。
【0032】
次に、S2においてCPU41は、自車両の走行する道路が仮想線に基づく警告を行う対象の道路であるか否か判定する。尚、本実施形態では高速自動車道路、都市高速道路、自動車専用道路、一般有料道路、取付道路のいずれかの道路種別に該当する道路を仮想線に基づく警告を行う対象の道路とする。
【0033】
そして、自車両の走行する道路が仮想線に基づく警告を行う対象の道路であると判定された場合(S2:YES)には、S3へと移行する。それに対して、自車両の走行する道路が仮想線に基づく警告を行う対象の道路でないと判定された場合(S2:NO)には、当該仮想線警告処理プログラムを終了する。
【0034】
続いて、S3においてCPU41は、検出カメラ19により撮像した撮像画像に対して画像認識処理を行い、自車両の周囲に設置された車線区分構造物を検出する。
ここで、以下に前記S3における車線区分構造物の検出方法について簡単に説明する。先ず、CPU41は、検出カメラ19で撮像した撮像画像から車線区分構造物を検出する為に、路面と構造物を輝度差に基づいて輝度補正を行う。その後、構造物を画像から分離する2値化処理、歪みを補正する幾何学処理、画像の雑音を除去する平滑化処理等を行い、路面と構造物との境界線を検出する。
その後、CPU41は、撮像画像とROM43に記憶された各テンプレート画像とのパターンマッチングを施すことにより、撮像画像中に検出された構造物が車線区分構造物(ポストコーン54、仮設防護柵55等(図2参照))に該当するか否かを判定する。その結果、車両の周囲に設置された車線区分構造物を検出することが可能となる。
【0035】
その後、S4においてCPU41は、自車両の周囲に少なくとも一以上の車線区分構造物が検出されたか否かを判定する。そして、自車両の周囲に車線区分構造物が検出されたと判定された場合(S4:YES)には、S5へと移行する。一方、自車両の周囲に車線区分構造物が検出されなかったと判定された場合(S4:NO)には、当該仮想線警告処理プログラムを終了する。
【0036】
次に、S5においてCPU41は、前記S3で検出された車線区分構造物が間隔を隔てて連続して設置され、且つ該間隔が車両の進入が可能な間隔であるか否かを判定する。ここで、車両の進入が可能な間隔とは、自車両の車幅より広い間隔とする。即ち、車線区分構造物が間隔を隔てて連続して設置されているとは、少なくとも2以上の車線区分構造物が車線の境界として並んで配置されるとともに、各車線区分構造物によって形成される間隔の内、少なくとも一以上の間隔が車両の進入が可能な間隔である場合をいう。
尚、車線区分構造物の設置間隔は、例えばそれぞれの車線区分構造物の位置座標を撮像画像から特定することにより算出する。
【0037】
そして、車線区分構造物が間隔を隔てて連続して設置され、且つ該間隔が車両の進入が可能な間隔であると判定された場合(S5:YES)には、S6へと移行する。それに対して、前記S3で検出された車線区分構造物が1個のみ設置されている場合、或いは検出された複数の車線区分構造物が全て車両の進入が不可能な間隔で連続して設置されていると判定された場合(S5:NO)には、仮想線を設定することなく当該仮想線警告処理プログラムを終了する。
【0038】
S6においてCPU41は、車両の進入可能な間隔を形成する各車線区分構造物、即ち、該間隔の両端に位置する各車線区分構造物の座標が取得できたか否かを判定する。その結果、該間隔の両端に位置する各車線区分構造物の座標が取得できたと判定された場合(S6:YES)には、S7へと移行する。それに対して、該間隔の両端に位置する各車線区分構造物の座標が取得できなかったと判定された場合(S6:NO)には、当該仮想線警告処理プログラムを終了する。尚、車線区分構造物の座標は自車両に対する相対的な位置座標で特定される。
【0039】
S7においてCPU41は、車両の進入可能な間隔を形成する各車線区分構造物の座標に基づいて、該間隔を形成する車線区分構造物の間を結ぶ仮想線を設定する。ここで、仮想線は該仮想線を設定する道路の道路形状に基づいて設定される。具体的には、直線形状の道路上に仮想線を設定する場合には直線形状の仮想線が設定される。また、直線形状以外の形状(カーブ形状やL字形状等)の道路上に仮想線を設定する場合には、その形状(カーブ形状やL字形状等)に沿った仮想線が設定される。具体的には、カーブ形状の道路上に仮想線を設定する場合には、該カーブと同じ旋回半径(R)でカーブを描く仮想線が設定される。また、L字形状の道路上に仮想線を設定する場合には、L字を描く仮想線が設定される。
【0040】
従って、S7においてCPU41は、先ず、自車両の現在走行する道路、即ち、前記S3で検出した車線区分構造物が設置された道路の道路形状(カーブ形状である場合には旋回半径など)を取得する。次に、前記S6で取得した間隔の両端に位置する各車線区分構造物の座標と、道路形状に基づいて仮想線を設定する。尚、仮想線は自車両に対する相対的な位置座標で特定される。また、特定された仮想線の位置座標はRAM42等に記憶される。
【0041】
ここで、図4及び図5を用いて前記S7の仮想線設定処理について具体例をあげて説明する。図4は直線形状の道路区間において設定される仮想線の一例を示した図である。図5はカーブ形状の道路区間において設定される仮想線の一例を示した図である。
図4に示すように、自車両61が車線62及び車線63との境界にポストコーン54が連続して設置された直線形状の道路を走行する場合であって、ポストコーン64とポストコーン65との間に自車両61の進入できる間隔がある場合には、前記S7の処理においてCPU41はポストコーン64とポストコーン65の間を結ぶ仮想線66を設定する。仮想線66は、ポストコーン64の位置座標A(x1,y1)とポストコーン65の位置座標B(x2,y2)との間を結ぶ直線となる。
一方、図5に示すように、自車両61が車線72及び車線73との境界にポストコーン54が連続して設置されたカーブ形状の道路を走行する場合であって、ポストコーン74とポストコーン75との間に自車両61の進入できる間隔がある場合には、前記S7の処理においてCPU41はポストコーン74とポストコーン75の間を結ぶ仮想線76を設定する。仮想線66は、ポストコーン74の位置座標C(x3,y3)とポストコーン75の位置座標D(x4,y4)との間を結ぶとともに、道路と同じ旋回半径でカーブする曲線となる。
【0042】
仮想線を設定した後、S8においてCPU41は、自車両の現在位置を取得する。ここで、前記S8で取得される自車両の現在位置は、前記S7で仮想線を設定した時点の自車両の位置からの相対的な位置座標で特定される。尚、仮想線を設定した時点の自車両の位置からの相対的な位置座標は、車速センサ22及びジャイロセンサ24によって仮想線を設定した時点からの自車両の走行距離及び進行方向を検出することにより特定される。
【0043】
続いて、S9においてCPU41は、前記S7で設定した仮想線を自車両が越えるか否かを判定する。具体的には、前記S8で取得した自車両の現在位置に基づいて自車両の四隅の座標をそれぞれ算出し、前記S7で特定された仮想線を四隅のいずれかの座標が仮想線を通過したと判定された場合に、仮想線を自車両が越えると判定する。尚、四隅の内、2以上の隅の座標が仮想線上を通過したと判定された場合に仮想線を自車両が越えると判定しても良い。或いは、四隅のすべての座標が仮想線上を通過したと判定された場合に仮想線を自車両が越えると判定しても良い。
【0044】
そして、前記S9において仮想線を自車両が越えると判定された場合(S9:YES)には、S10へと移行する。S10においてCPU41は、仮想線を越えることに対する警告を液晶ディスプレイ15やスピーカ16を用いて出力する。警告の内容としては、車両の進行方向に対する警告として、例えば「対向車線に進入するので注意して下さい。」や「進行方向に注意して下さい。」等の音声案内がある。その後、当該仮想線警告処理プログラムを終了する。
【0045】
一方、前記S9において仮想線を自車両が越えないと判定された場合(S9:NO)には、S11へと移行する。そして、S11においてCPU41は、自車両が判定領域を越えたか否か判定する。ここで、判定領域は、前記S9で仮想線を自車両が越えるか否かを判定する対象となる領域である。図6は判定領域の一例を示した図である。
【0046】
図6に示すように、判定領域81は仮想線82の一方の端点E(車線区分構造物83の座標)と、仮想線82の他方の端点F(車線区分構造物84の座標)と、端点Eを通過して自車両61の走行する車線85と交差する方向に定義された直線と車線85の縁部との交点Gと、端点Fを通過して自車両61の走行する車線85と交差する方向に定義された直線と車線85の縁部との交点Hとを結んだ線によって囲まれる領域である。尚、道路形状がカーブ形状やL字形状である場合には、その道路形状に従ってカーブ形状或いはL字形状に判定領域は設定される。
【0047】
そして、前記S11では、前記S8で取得した自車両の現在位置の座標が判定領域を超えた場合、即ち、図6に示すF−H間を座標Xが通過したと判定された場合に、CPU41は自車両が判定領域を越えたと判定する。自車両が判定領域を越えたかと判定された場合(S11:YES)には、当該仮想線警告処理プログラムを終了する。
【0048】
それに対して、前記S8で取得した自車両の現在位置の座標が判定領域を超えていない場合、即ち、図6に示すF−H間を座標Xが通過していないと判定された場合に、CPU41は自車両が判定領域を越えていないと判定する。自車両が判定領域を越えていないと判定された場合(S11:NO)には、S8へと戻る。
【0049】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るナビゲーション装置1では、車両の周囲の道路上に設置された車線区分構造物を検出し(S3)、検出された車線区分構造物が車両の進入可能な間隔を隔てて連続して設置されている場合に、該間隔を形成する各車線区分構造物の座標に基づいて、各車線区分構造物の間を結ぶ仮想線を設定するとともに(S7)、設定された仮想線を自車両が越えると判定された場合に警告を行う(S11)ので、車線の境界の位置が不規則或いは頻繁に変動する道路区間においても、車両が現在走行する車線から他の車線へと進入する場合に警告することが可能となる。
また、車線区分構造物が設置されている道路の道路形状に基づいて仮想線を設定するので、直線形状以外の特殊な形状の道路において車両の進入を禁止する立体構造物が設置されている場合であっても、道路形状に対応させた適切な形状の仮想線を設定することが可能となる。その結果、車両が立体構造物の間を通過して現在走行する車線から他の車線へと進入するか否かを正確に判定することができる。
【0050】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態では前記S2において自車両の走行する道路が高速自動車道路、都市高速道路、自動車専用道路、一般有料道路、取付道路のいずれかの道路種別に該当する場合に仮想線に基づく警告を行うこととしているが、自車両が一般道路を走行している場合であっても仮想線に基づく警告を行う構成としても良い。その際には、自車両が仮想線を越えた後の自車両の進行方向を取得し、自車両の進行方向に応じて警告が必要か否か判定し、必要であると判定された場合に警告を行うことが好ましい。
【0051】
例えば、図7に示すように自車両101が車線102及び対向車線103との境界にポストコーンが連続して設置された一般道路を走行する場合であって、ポストコーン104とポストコーン105との間に自車両101の進入できる間隔がある場合について説明する。その場合において、CPU41は前記S7の処理でポストコーン104とポストコーン105の間を結ぶ仮想線106を設定する。そして、CPU41は、前記S10の処理で仮想線106を自車両101が越えると判定された場合に、仮想線106に対する自車両101の進入角度をステアリングセンサ23やジャイロセンサ24により取得する。
その結果、仮想線106に対する自車両101の進入角度が所定角度(例えば45度)未満であると判定された場合には、自車両101は矢印Aのように対向車線103を逆走する進行方向へと進むと判定する。そして、矢印Aのように進むと判定された場合には、「進行方向に注意して下さい。」や「逆走の可能性があります。」との警告を行う。
一方、仮想線106に対する自車両101の進入角度が所定角度(例えば45度)以上であると判定された場合には、自車両101は矢印Bのように対向車線103を横切って他の道路や施設内に進入する進行方向、或いは矢印Cのように対向車線103にUターンする進行方向へと進むと判定する。そして、矢印Bや矢印Cのように進むと判定された場合には、自車両101の周辺状況を取得する。その結果、仮想線106の右側方に右折して進入できる道路や施設があるかを確認し、右折して進入できる道路や施設がなければ「右折ができません。」との警告を行う。また、Uターンが禁止されている道路であれば「Uターン禁止です。」との警告を行う。一方、右折して進入できる道路や施設があり、Uターンが禁止されている道路でもなければ特に警告を行わない。
上記のように、仮想線を越えた後の自車両の進行方向に応じて警告が必要か否か判定し、必要であると判定された場合に警告を行うことにより、より適切な警告を行うことが可能となる。
【0052】
また、本実施形態では自車両が仮想線を越えると判定された場合に警告を行う構成としているが、自車両が仮想線を超えることが予測される場合に警告を行う構成としても良い。具体的には、ジャイロセンサ24やステアリングセンサ23に基づいて、所定時間後(1sec)の自車位置を予測して、予測された自車位置が仮想線と交わる場合に、自車両が仮想線を超えると予測し、警告を行う。
【0053】
また、本実施形態では仮想線を設定する対象となる車線区分構造物として、車線の境界上に設置されたポストコーンや仮設防護柵を挙げているが、車両の進入を禁止する為の立体構造物であれば他の立体構造物であっても良い。
【符号の説明】
【0054】
1 ナビゲーション装置
13 ナビゲーションECU
41 CPU
42 ROM
43 RAM
54 ポストコーン
55 仮設防護柵
66、76 仮想線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路上に設置されるとともに車両の進入を禁止する立体構造物を検出する構造物検出手段と、
前記構造物検出手段により検出された前記立体構造物が間隔を隔てて連続して設置されている場合であって、且つ前記間隔が前記車両の進入が可能な間隔である場合に、前記間隔を形成する各立体構造物の間を結ぶ仮想線を設定する仮想線設定手段と、
前記仮想線を前記車両が越えるか否かを判定する仮想線判定手段と、
前記仮想線判定手段によって前記車両が越えると判定された場合に警告を行う警告手段と、を有することを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記車両が前記仮想線を越えると判定された場合に、前記仮想線を越えた後の前記車両の進行方向を取得する進行方向取得手段を有し、
前記警告手段は、前記進行方向取得手段で取得した前記車両の進行方向に応じて警告が必要か否か判定し、必要であると判定された場合に警告を行うことを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記立体構造物が設置されている道路の道路形状を取得する道路形状取得手段を有し、
前記仮想線設定手段は、前記道路形状取得手段によって取得された道路形状に基づいて前記仮想線を設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
道路上に設置されるとともに車両の進入を禁止する立体構造物を検出する構造物検出ステップと、
前記構造物検出ステップにより検出された前記立体構造物が間隔を隔てて連続して設置されている場合であって、且つ前記間隔が前記車両の進入が可能な間隔である場合に、前記間隔を形成する各立体構造物の間を結ぶ仮想線を設定する仮想線設定ステップと、
前記仮想線を前記車両が越えるか否かを判定する仮想線判定ステップと、
前記仮想線判定ステップによって前記車両が越えると判定された場合に警告を行う警告ステップと、を有することを特徴とする運転支援方法。
【請求項5】
コンピュータに搭載され、
道路上に設置されるとともに車両の進入を禁止する立体構造物を検出する構造物検出機能と、
前記構造物検出機能により検出された前記立体構造物が間隔を隔てて連続して設置されている場合であって、且つ前記間隔が前記車両の進入が可能な間隔である場合に、前記間隔を形成する各立体構造物の間を結ぶ仮想線を設定する仮想線設定機能と、
前記仮想線を前記車両が越えるか否かを判定する仮想線判定機能と、
前記仮想線判定機能によって前記車両が越えると判定された場合に警告を行う警告機能と、
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−123541(P2011−123541A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278460(P2009−278460)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】