説明

運転支援装置、運転支援方法及びコンピュータプログラム

【課題】車両が逆走状態にある場合であっても、誤った内容の運転支援が行われることを防止した運転支援装置、運転支援方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】センサ等により検出した車両の位置を道路上にマッチングさせるマッチング処理を所定間隔で繰り返し実行し、マッチングされた車両の位置に基づいて各種運転支援処理を実行する。一方で、車両が逆走状態にあるか否かを検出し(S1)、車両が逆走状態になったことが検出された場合に、マッチング処理の実行を停止する(S3)ように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転を支援する運転支援装置、運転支援方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路幅の狭い一般道に加えて、高速自動車道路、都市高速道路、自動車専用道路、一般有料道路、国道等の高速走行が可能な一部の道路では、走行方向毎に道路が区分され、予め決められた方向のみに車両が走行可能に構成されている区間がある。しかしながら、明確に走行方向が明示されていない場合には、車両が走行方向を間違えて走行区間に規定されている走行方向と逆方向に走行する所謂逆走状態となる場合がある。例えば、車両がそのような逆走状態となる原因として、複数の車線からなる一方通行区間の道路を車両が走行する場合に、運転者が右側の車線は対向車線であると誤認識し、Uターンを行うことが有る。また、車両が高速道路等のIC(インターチェンジ)で入口路と出口路を間違えて進入することによっても逆走状態となる。また、車両がサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)の駐車場から本線へと戻る際に、入口路と出口路を間違えて進入することによっても逆走状態となる。そして、従来においては、車両に搭載されたナビゲーション装置等において、車両が逆走状態にあることを検出する技術について提案されている(例えば、特開2009−168547号公報)。
【0003】
一方で、上記ナビゲーション装置等は、車両の現在位置を特定する為に、GPS等のセンサにより車両位置を検出している。しかし、検出精度がそれほど高くないので、GPS等のセンサにより検出した車両の位置(以下、検出位置という)を地図上の道路にマッチングさせるマッチング処理を別途行っている。このマッチング処理を行うことによって、実際の車両位置と検出位置との間に誤差が生じていた場合であっても、検出位置を補正し、車両の位置を道路上で特定することが可能となる。そして、マッチング処理によって補正された検出位置(以下、補正位置という)に基づいて、車両現在位置の案内、目的地までの案内経路の探索、案内経路に基づく走行案内、経路学習等の各種運転支援が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−168547号公報(第7−9頁、図2、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような逆走状態に車両がある場合において、マッチング処理を行うこととすると、実際に車両が走行する道路と異なる道路上に補正位置が特定される場合があった。例えば、図8に示すように車両101が走行方向毎に道路が区分された高速道路を走行する場合において、“上り車線102”を逆走している状態では、“上り車線102”のリンクに規定された走行方向(図8の左方向)と車両101の進行方向(図8の右方向)が異なる為に、車両101の進行方向(図8の右方向)と同じ方向の走行方向(図8の右方向)が規定された“下り車線103”に補正位置104が特定されることとなる。その結果、上記特許文献1のような従来のナビゲーション装置等においては、誤った内容の上記運転支援が行われる虞があった。
【0006】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、車両が逆走状態にある場合であっても、誤った内容の運転支援が行われることを防止した運転支援装置、運転支援方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る運転支援装置(1)は、車両の位置を検出する車両位置検出手段(13)と、道路網を含む地図情報を取得する地図情報取得手段(13)と、前記車両が道路を逆走する逆走状態にあることを検出する逆走検出手段(13)と、前記車両位置検出手段により検出された前記車両の位置である検出位置と前記地図情報取得手段により取得された前記地図情報とに基づいて、該検出位置を地図上の道路にマッチングさせるマッチング処理を所定間隔で繰り返し実行するマッチング手段(13)と、前記マッチング手段によってマッチングされた前記検出位置である補正位置に基づいて前記車両の運転支援を行う運転支援手段(13)と、前記逆走検出手段によって前記車両が逆走状態になったことが検出された場合に、前記マッチング手段による前記マッチング処理の実行を停止するマッチング停止手段(13)と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る運転支援装置(1)は、請求項1に記載の運転支援装置において、前記マッチング停止手段(13)により前記マッチング処理の実行が停止されてから所定時間が経過又は前記車両が所定距離走行した場合に、前記マッチング手段(13)による前記マッチング処理の実行を再開するマッチング距離再開手段(13)を有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る運転支援装置(1)は、請求項1又は請求項2に記載の運転支援装置において、前記車両の周辺に位置する道路の種別を取得する道路種別取得手段(13)と、前記マッチング停止手段(13)により前記マッチング処理の実行が停止された状態で、前記車両の周辺に走行方向が制限された所定種別の道路が存在しない場合に、前記マッチング手段(13)による前記マッチング処理の実行を再開するマッチング種別再開手段(13)と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る運転支援装置(1)は、請求項3に記載の運転支援装置において、前記所定種別の道路は、有料道路及び自動車専用道路であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係る運転支援方法は、車両の位置を検出する車両位置検出ステップと、道路網を含む地図情報を取得する地図情報取得ステップと、前記車両が道路を逆走する逆走状態にあることを検出する逆走検出ステップと、前記車両位置検出ステップにより検出された前記車両の位置である検出位置と前記地図情報取得ステップにより取得された前記地図情報とに基づいて、該検出位置を地図上の道路にマッチングさせるマッチング処理を所定間隔で繰り返し実行するマッチングステップと、前記マッチングステップによってマッチングされた該検出位置である補正位置に基づいて前記車両の運転支援を行う運転支援ステップと、前記逆走検出ステップによって前記車両が逆走状態になったことが検出された場合に、前記マッチングステップによる前記マッチング処理の実行を停止するマッチング停止ステップと、を有することを特徴とする。
【0012】
更に、請求項6に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに搭載され、車両の位置を検出する車両位置検出機能と、道路網を含む地図情報を取得する地図情報取得機能と、前記車両が道路を逆走する逆走状態にあることを検出する逆走検出機能と、前記車両位置検出機能により検出された前記車両の位置である検出位置と前記地図情報取得機能により取得された前記地図情報とに基づいて、該検出位置を地図上の道路にマッチングさせるマッチング処理を所定間隔で繰り返し実行するマッチング機能と、前記マッチング機能によってマッチングされた該検出位置である補正位置に基づいて前記車両の運転支援を行う運転支援機能と、前記逆走検出機能によって前記車両が逆走状態になったことが検出された場合に、前記マッチング機能による前記マッチング処理の実行を停止するマッチング停止機能と、をプロセッサ(41)に実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
前記構成を有する請求項1に記載の運転支援装置によれば、車両が逆走状態になったことが検出された場合に、マッチング処理の実行を停止するので、車両が実際に走行する道路と異なる道路上に補正位置が特定されることを防止できる。その結果、誤った内容の運転支援が行われることを防止することが可能となる。
【0014】
また、請求項2に記載の運転支援装置によれば、マッチング処理の実行が停止されてから所定時間が経過又は車両が所定距離走行した場合に、マッチング処理の実行を再開する。従って、マッチング処理が停止された状況において、車両が元々逆走状態でなかった又は既に逆走状態から回復していると推定される場合、即ち、車両が実際に走行する道路と異なる道路上に補正位置が特定される虞が無い場合には、マッチング処理の実行を適切に再開することが可能となる。その結果、適切な車両の運転支援を行うことが可能となる。
【0015】
また、請求項3に記載の運転支援装置によれば、マッチング処理の実行が停止された状態で、車両の周辺に走行方向が制限された所定種別の道路が存在しない場合に、マッチング処理の実行を再開する。従って、マッチング処理が停止された状況において、車両が走行方向の制限されていない一般道路等に進入し、既に逆走状態から回復していると推定される場合、即ち、車両が実際に走行する道路と異なる道路上に補正位置が特定される虞が無い場合には、マッチング処理の実行を適切に再開することが可能となる。その結果、適切な車両の運転支援を行うことが可能となる。
【0016】
また、請求項4に記載の運転支援装置によれば、マッチング処理の実行が停止された状態で、車両の周辺に走行方向が制限された有料道路や自動車専用道路が存在しない場合に、マッチング処理の実行を再開する。従って、マッチング処理が停止された状況において、車両が既に逆走状態から回復していると推定される場合には、マッチング処理の実行を適切に再開することが可能となる。その結果、適切な車両の運転支援を行うことが可能となる。
【0017】
また、請求項5に記載の運転支援方法によれば、車両が逆走状態になったことが検出された場合に、マッチング処理の実行を停止するので、車両が実際に走行する道路と異なる道路上に補正位置が特定されることを防止できる。その結果、誤った内容の運転支援が行われることを防止することが可能となる。
【0018】
更に、請求項6に記載のコンピュータプログラムによれば、車両が逆走状態になったことが検出された場合に、マッチング処理の実行を停止させるので、車両が実際に走行する道路と異なる道路上に補正位置が特定されることを防止できる。その結果、誤った内容の運転支援が行われることを防止させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係るナビゲーション装置を示したブロック図である。
【図2】本実施形態に係るマッチング停止処理プログラムのフローチャートである。
【図3】逆走検出処理の一例について説明した図である。
【図4】ステップ5の判定処理について説明した図である。
【図5】本実施形態に係るマッチング処理プログラムのフローチャートである。
【図6】ステップ13で実行されるマッチング処理について説明する。
【図7】液晶ディスプレイに表示される走行案内画面について説明した図である。
【図8】従来技術の課題について説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る運転支援装置についてナビゲーション装置に具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係るナビゲーション装置1の概略構成について図1を用いて説明する。図1は本実施形態に係るナビゲーション装置1を示したブロック図である。
【0021】
図1に示すように本実施形態に係るナビゲーション装置1は、車両の現在位置を検出する現在位置検出部11と、各種のデータが記録されたデータ記録部12と、入力された情報に基づいて、各種の演算処理を行うナビゲーションECU13と、ユーザからの操作を受け付ける操作部14と、ユーザに対して地図や目的地までの案内経路を表示する液晶ディスプレイ15と、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ16と、記憶媒体であるDVDを読み取るDVDドライブ17と、プローブセンタやVICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)センタ等の情報センタとの間で通信を行う通信モジュール18と、から構成されている。
【0022】
以下に、ナビゲーション装置1を構成する各構成要素について順に説明する。
現在位置検出部11は、GPS21、車速センサ22、ステアリングセンサ23、ジャイロセンサ24等からなり、現在の車両の位置、方位、車両の走行速度、現在時刻等を検出することが可能となっている。ここで、特に車速センサ22は、車両の移動距離や車速を検出する為のセンサであり、車両の駆動輪の回転に応じてパルスを発生させ、パルス信号をナビゲーションECU13に出力する。そして、ナビゲーションECU13は発生するパルスを計数することにより駆動輪の回転速度や移動距離を算出する。尚、上記4種類のセンサをナビゲーション装置1が全て備える必要はなく、これらの内の1又は複数種類のセンサのみをナビゲーション装置1が備える構成としても良い。
【0023】
また、データ記録部12は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記録された地図情報DB31や所定のプログラム等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。尚、データ記録部12をハードディスクの代わりにメモリーカードやCDやDVD等の光ディスクにより構成しても良い。
【0024】
ここで、地図情報DB31は、経路案内、交通情報案内及び地図表示に用いられる道路網を含む地図データが記録されている。
また、地図データは、具体的には、道路(リンク)形状に関するリンクデータ32、ノード点に関するノードデータ33、施設等の地点に関する情報であるPOIデータ34、各交差点に関する交差点データ、経路を探索するための探索データ、地点を検索するための検索データ、地図、道路、交通情報等の画像を液晶ディスプレイ15に描画するための画像描画データ等から構成されている。特にリンクデータ32としては、リンクの道路種別(自動車専用道路、有料道路、一般道路、細街路)に関する情報や、一方通行区間等の走行方向の制限に関する情報等についても記憶される。
尚、地図情報DB31は、地図配信センタ等から配信される更新データや記憶媒体(例えば、DVDやメモリーカード)を介して提供される更新データに基づいて更新される。
【0025】
一方、ナビゲーションECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)13は、ナビゲーション装置1の全体の制御を行う電子制御ユニットであり、演算装置及び制御装置としてのCPU41、並びにCPU41が各種の演算処理を行うにあたってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM42、制御用のプログラムのほか、後述のマッチング停止処理プログラム(図2参照)やマッチング処理プログラム(図5参照)等が記録されたROM43、ROM43から読み出したプログラムを記憶するフラッシュメモリ44等の内部記憶装置を備えている。尚、ナビゲーションECU13は、処理アルゴリズムとしての各種手段を構成する。例えば、経路探索手段は、出発地(例えば自車の現在位置)から目的地へと至る案内経路を探索する。車両位置検出手段は、車両の位置をGPS21等の各種センサを用いて検出し、地図情報取得手段は、道路網を含む地図情報を地図情報DB31から取得する。逆走検出手段は、車両が道路を逆走する逆走状態にあることを検出する。マッチング手段は、車両位置検出手段により検出された車両の位置(検出位置)と地図情報とに基づいて、該検出位置を地図上の道路にマッチングさせるマッチング処理を所定間隔で繰り返し実行する。運転支援手段は、マッチング手段によってマッチングされた検出位置である補正位置に基づいて車両の運転支援を行う。マッチング停止手段は、逆走検出手段によって車両が逆走状態になったことが検出された場合に、マッチング手段によるマッチング処理の実行を停止する。マッチング距離再開手段は、マッチング停止手段によりマッチング処理の実行が停止されてから所定時間が経過又は車両が所定距離走行した場合に、マッチング手段によるマッチング処理の実行を再開する。道路種別取得手段は、車両の周辺に位置する道路の種別を取得する。マッチング種別再開手段は、マッチング停止手段によりマッチング処理の実行が停止された状態で、車両の周辺に走行方向が制限された所定種別の道路が存在しない場合に、マッチング手段によるマッチング処理の実行を再開する。
【0026】
操作部14は、走行開始地点としての出発地及び走行終了地点としての目的地を入力する際等に操作され、各種のキー、ボタン等の複数の操作スイッチ(図示せず)から構成される。そして、ナビゲーションECU13は、各スイッチの押下等により出力されるスイッチ信号に基づき、対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。尚、操作部14は液晶ディスプレイ15の前面に設けたタッチパネルによって構成することもできる。また、マイクと音声認識装置によって構成することもできる。
【0027】
また、液晶ディスプレイ15には、道路を含む地図画像、地図画像上における車両の現在位置を示す自車位置マーク、交通情報、操作案内、操作メニュー、キーの案内、出発地から目的地までの案内経路、案内経路に沿った案内情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組等が表示される。また、車両が道路を逆走する逆走状態にあることが検出された場合には、車両が逆走状態にあることを警告する文章等を表示する。
【0028】
また、スピーカ16は、ナビゲーションECU13からの指示に基づいて案内経路に沿った走行を案内する音声ガイダンスや、交通情報の案内を出力する。また、車両が逆走状態にあることが検出された場合には、車両が逆走状態にあることを警告する音声等を出力する。
【0029】
また、DVDドライブ17は、DVDやCD等の記録媒体に記録されたデータを読み取り可能なドライブである。そして、読み取ったデータに基づいて音楽や映像の再生、地図情報DB31の更新等が行われる。
【0030】
また、通信モジュール18は、交通情報センタ、例えば、VICSセンタやプローブセンタ等から送信された渋滞情報、規制情報、交通事故情報等の各情報から成る交通情報を受信する為の通信装置であり、例えば携帯電話機やDCMが該当する。
【0031】
続いて、前記構成を有するナビゲーション装置1において実行するマッチング停止処理プログラムについて図2に基づき説明する。図2は本実施形態に係るマッチング停止処理プログラムのフローチャートである。ここで、マッチング停止処理プログラムは車両のACCがONされた後に実行され、車両が逆走状態にあることを検出した場合に、ナビゲーション装置1のマッチング処理の実行を停止するように設定するプログラムである。尚、以下の図2及び図5にフローチャートで示されるプログラムは、ナビゲーションECU13が備えているRAM42、ROM43等に記憶されており、CPU41により実行される。
【0032】
マッチング停止処理プログラムでは、先ずステップ(以下、Sと略記する)1において、CPU41は、車両が道路を逆走する逆走状態にあることを検出する逆走検出処理を行う。尚、前記S1の逆走検出処理では、車両の走行する道路に設定された走行方向や各種センサ21〜24の検出結果等に基づいて車両が逆走状態にあることを検出する。以下に、前記S1の逆走検出処理の一例について図3を用いてより詳細に説明する。
【0033】
先ず、CPU41は車両が現在走行する道路に設定された走行方向を取得する。尚、車両が現在走行する道路は、直前に実行された後述のマッチング処理(図5)において補正された車両の検出位置(補正位置)が含まれるリンクとなる。従って、CPU41は、図3に示すようにマッチング処理により特定された補正位置51が含まれるリンク52のリンクデータ32を地図情報DB31より取得し、取得したリンク52のリンクデータに基づいて、車両が現在走行する道路(即ち、リンク52)に設定された走行方向を取得する。一方、ステアリングセンサ23やジャイロセンサ24の検出結果に基づいて車両の方位を取得する。次に、CPU41は、車両が現在走行する道路に設定された走行方向(図3の矢印51方向)に対して、検出された車両の方位(図3の矢印52方向)が所定角度(例えば135度)以上異なる状態で、車両が所定距離(例えば50m)以上走行したか否か判定する。そして、車両が現在走行する道路に設定された走行方向に対して車両の方位が所定角度以上異なる状態で、所定距離以上走行したと判定された場合に、CPU41は車両が逆走状態にあると検出する。
尚、前記S1の逆走検出処理の処理内容については、上記例に限られることはない。例えば、一方通行区間の走行中に車両がUターンした場合に、車両が逆走状態にあると検出する構成としても良い。
【0034】
次に、S2においてCPU41は、前記S1の逆走検出処理において車両が逆走状態にあることが検出されたか否か判定する。そして、車両が逆走状態にあることが検出された場合(S2:YES)には、S3へと移行する。それに対して、車両が逆走状態にあることが検出されなかった場合(S2:NO)には、当該マッチング停止処理プログラムを終了する。
【0035】
S3においてCPU41は、RAM42に記憶されたマッチング停止フラグを読み出し、ONに設定する。それによって、以降、ナビゲーション装置1においてマッチング処理の実行が停止される。ここで、マッチング停止フラグは、ナビゲーション装置1においてマッチング処理を所定間隔で行う状態にあるか否かを設定する為のフラグであり、初期状態ではOFF(マッチング処理を実行する)に設定される。そして、マッチング停止フラグは、基本的に車両が逆走状態にある場合にONされ、マッチング停止フラグがONされてから所定時間以上(例えば10分以上)経過又は車両が所定距離以上(例えば1km以上)走行した場合等にOFFされる。
【0036】
続いて、S4においてCPU41は、車両の周辺に位置する道路の道路種別情報を取得する。具体的には、先ずCPU41は、GPS21等により検出された車両の現在位置から所定距離以内(例えば1km以内)に含まれるリンクを特定する。その後、特定されたリンクのリンクデータ32を地図情報DB31から取得することにより、車両の周辺に位置する道路の道路種別情報を取得する。尚、道路の道路種別としては、自動車専用道路、有料道路、一般道路、細街路等がある。
【0037】
次に、S5においてCPU41は、前記S4で取得された道路種別情報に基づいて、車両の周辺(例えば車両の周囲1km以内)に走行方向が制限された所定種別の道路があるか否か判定する。ここで、本実施形態において走行方向が制限された道路とは、予め決められた方向のみに車両が走行可能に構成されている区間を有する道路であり、例えば自動車専用道路、有料道路がある。
【0038】
そして、車両の周辺に走行方向が制限された所定種別の道路があると判定された場合(S5:YES)には、車両が継続して逆走状態の可能性が有ると推定される。従って、後述のマッチング処理(図5)において実際に車両が走行する道路と異なる道路上に検出位置がマッチングされる虞があると推定され、S7へと移行する。それに対して、車両の周辺に走行方向が制限された所定種別の道路が無いと判定された場合(S5:NO)には、車両が走行方向の制限されていない一般道路等へと進入し、既に逆走状態から回復していると推定される。従って、後述のマッチング処理(図5)において実際に車両が走行する道路と異なる道路上に検出位置がマッチングされる虞がないと推定され、S6へと移行する。
【0039】
ここで、図4は前記S5の判定処理について説明した図である。
図4では、高速道路等の有料道路61を逆走状態にあった車両62が、その後に取付道路63へと進入し、インターチェンジ64を通過して走行方向の制限の無い一般道路65へと進入した例について示す。図4に示すように、車両が有料道路61や取付道路63を走行する状態、即ち、車両の周辺に走行方向が制限された所定種別の道路(例えば自動車専用道路、有料道路)がある状態では、車両が継続して逆走状態の可能性が有ると推定できる。一方、車両が一般道路65を走行する状態、即ち、車両の周辺に走行方向が制限された所定種別の道路(例えば自動車専用道路、有料道路)が無い状態では、車両が逆走状態から回復していると推定できる。
【0040】
次に、S6においてCPU41は、RAM42に記憶されたマッチング停止フラグを読み出し、OFFに設定する。それによって、ナビゲーション装置1において停止されていたマッチング処理の実行が再開される。その後、当該マッチング停止処理プログラムを終了する。
【0041】
一方、S7においてCPU41は、前記S3でマッチング停止フラグがONされてからの経過時間、即ち、ナビゲーション装置1においてマッチング処理の実行が停止されてからの経過時間を取得する。
【0042】
次に、S8においてCPU41は、前記S7で取得された経過時間に基づいて、ナビゲーション装置1においてマッチング処理の実行が停止されてから所定時間(例えば10分)以上経過したか否か判定する。
【0043】
そして、ナビゲーション装置1においてマッチング処理の実行が停止されてから所定時間以上経過したと判定された場合(S8:YES)には、車両が元々逆走状態でなかった又は既に逆走状態から回復していると推定される。従って、後述のマッチング処理(図5)において実際に車両が走行する道路と異なる道路上に検出位置がマッチングされる虞がないと推定され、S6へと移行し、マッチング停止フラグをOFFに設定する。それによって、ナビゲーション装置1において停止されていたマッチング処理の実行が再開される。
【0044】
一方、ナビゲーション装置1においてマッチング処理の実行が停止されてから所定時間以上経過していないと判定された場合(S8:NO)には、マッチング停止フラグをONに設定した状態でS4へと戻る。
【0045】
尚、上記S8では、ナビゲーション装置1においてマッチング処理の実行が停止されてから所定時間(例えば10分)以上経過したか否か判定しているが、ナビゲーション装置1においてマッチング処理の実行が停止されてから車両が所定距離(例えば1km)以上走行したか否か判定しても良い。その場合には、マッチング処理の実行が停止されてから車両が所定距離以上走行したと判定された場合に、車両が元々逆走状態でなかった又は既に逆走状態から回復していると推定されるので、マッチング停止フラグをOFFに設定する(S6)ように構成する。
【0046】
次に、ナビゲーション装置1において実行するマッチング処理プログラムについて図5に基づき説明する。図5は本実施形態に係るマッチング処理プログラムのフローチャートである。ここで、マッチング処理プログラムは車両のACCがONされた後に所定間隔で繰り返し実行され、車両の現在位置を地図上の道路にマッチングが逆走状態にあることを検出した場合に、ナビゲーション装置1のマッチング処理の実行を停止するように設定するプログラムである。
【0047】
マッチング処理プログラムでは、S11において、CPU41は、GPS21等の車両に搭載された各種センサを用いて車両の現在位置を検出する。尚、前記S11の検出は、GPS21を用いた検出以外にも、車速センサ22、ステアリングセンサ23及びジャイロセンサ24を用いた推測航法による検出も含まれる。また、前記S11で検出された車両の現在位置は、検出位置と呼称する。
【0048】
次に、S12においてCPU41は、RAM42に記憶されたマッチング停止フラグを読み出し、ONに設定されているか否か判定する。ここで、マッチング停止フラグは、前記したようにナビゲーション装置1においてマッチング処理を所定間隔で行う状態にあるか否かを設定する為のフラグであり、基本的に車両が逆走状態にある場合にONされ(S3)、マッチング停止フラグがONされてから所定時間以上(例えば10分以上)経過又は車両が所定距離以上(例えば1km以上)走行した場合にOFFされる(S6)。
【0049】
そして、マッチング停止フラグがONに設定されていると判定された場合(S12:YES)には、S15へと移行する。それに対して、マッチング停止フラグがOFFに設定されていると判定された場合(S12:NO)には、S13へと移行する。
【0050】
S13においてCPU41は、前記S11で特定された検出位置と地図情報DB31より取得された地図情報とに基づいて、該検出位置を地図上の道路にマッチングさせるマッチング処理を実行する。その結果、検出位置が補正され、道路上に位置する車両の現在位置が新たに検出される。また、前記S13で検出位置が補正されることにより検出された車両の現在位置は、補正位置と呼称する。
【0051】
ここで、図6を用いて前記S13で実行されるマッチング処理について説明する。
図6に示すように、道路71の周辺に検出位置72が特定された場合には、前記S13のマッチング処理において道路71上に検出位置72が補正され、補正位置73が特定される。尚、補正位置73の特定には、道路に規定された走行方向と車両の進行方向についても考慮される。即ち、図6に示すように走行方向毎に道路が区分された道路71、74の周辺で検出位置72が特定された場合には、車両の進行方向(図6に示す例では右方向)と同じ方向の走行方向が規定された道路(図6に示す例では道路71)に補正位置73が特定されることとなる。従って、例えば車両が道路74を逆走状態にある場合には、マッチング処理を実行すると、車両が実際に走行する道路と異なる道路に補正位置が特定される虞がある。
【0052】
次に、S14においてCPU41は、前記S13で特定された補正位置に基づいて各種運転支援処理を実行する。ここで、前記S14において実行される運転支援処理としては、(A)車両の現在位置の案内処理、(B)目的地までの案内経路の探索処理、(C)案内経路に基づく走行案内処理、(D)経路学習処理等がある。
【0053】
例えば、“(A)車両の現在位置の案内処理”では、液晶ディスプレイ15に表示された地図画像上に重畳して自車の現在位置と方位を示す自車位置マークを、前記S13で特定された補正位置に表示する。それによって、ユーザは自車の現在位置と方位を把握することが可能となる。
また、“(B)目的地までの案内経路の探索処理”では、ナビゲーション装置1において目的地の設定操作が行われた場合に、前記S13で特定された補正位置から目的地までの案内経路の探索を行う。それによって、ユーザは自車の現在位置から目的地までの推奨経路を把握することが可能となる。
また、“(C)案内経路に基づく走行案内処理”では、ナビゲーション装置1において案内経路が設定されている場合に、前記S13で特定された補正位置に基づいて案内交差点までの距離や右左折方向等の案内を行う。それによって、ユーザは案内経路に沿った走行が可能となる。
また、“(D)経路学習処理”では、前記S13で特定された補正位置に基づいて車両が走行した道路の履歴を記憶する。それによって、ユーザが過去に走行した道路を正確に特定することが可能であり、適切な案内経路の探索が可能となる。
【0054】
一方、マッチング停止フラグがONに設定されていると判定された場合に実行されるS15においてCPU41は、マッチング処理を実行せず、前記S11で特定された検出位置に基づいて“(A)車両の現在位置の案内処理”の運転支援処理のみを実行する。それによって、誤った内容の運転支援が行われることを防止できる。
【0055】
また、液晶ディスプレイ15には、図7に示すように前記S11で特定された検出位置に自車位置マーク81が表示される。図7に示す例では、マッチング処理が行われないことにより、自車位置マーク81は周辺の道路82、83上には表示されないこととなる。しかし、ユーザは液晶ディスプレイ15を参照することにより自車の大体の現在位置と方位については把握することが可能となる。
【0056】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るナビゲーション装置1、ナビゲーション装置1を用いた運転支援方法及びナビゲーション装置1で実行されるコンピュータプログラムによれば、センサ等により検出した車両の位置を道路上にマッチングさせるマッチング処理(S11、S13)を所定間隔で繰り返し実行し、マッチングされた車両の位置に基づいて各種運転支援処理(S14)を実行する。一方で、車両が逆走状態にあるか否かを検出し(S1)、車両が逆走状態になったことが検出された場合に、マッチング処理の実行を停止する(S3)ので、車両が実際に走行する道路と異なる道路上に補正位置が特定されることを防止できる。その結果、誤った内容の運転支援が行われることを防止することが可能となる。
また、マッチング処理の実行が停止されてから所定時間が経過又は車両が所定距離走行した場合に、マッチング処理の実行を再開する(S6)。従って、マッチング処理が停止された状況において、車両が元々逆走状態でなかった又は既に逆走状態から回復していると推定される場合、即ち、車両が実際に走行する道路と異なる道路上に補正位置が特定される虞が無い場合には、マッチング処理の実行を適切に再開することが可能となる。その結果、適切な車両の運転支援を行うことが可能となる。
また、マッチング処理の実行が停止された状態で、車両の周辺に走行方向が制限された所定種別の道路(例えば有料道路や自動車専用道路)が存在しない場合に、マッチング処理の実行を再開する(S6)。従って、マッチング処理が停止された状況において、車両が走行方向の制限されていない一般道路等に進入し、既に逆走状態から回復していると推定される場合、即ち、車両が実際に走行する道路と異なる道路上に補正位置が特定される虞が無い場合には、マッチング処理の実行を適切に再開することが可能となる。その結果、適切な車両の運転支援を行うことが可能となる。
【0057】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態ではマッチング処理の実行が停止されてから所定時間が経過又は車両が所定距離走行した場合、或いは車両の周辺に走行方向が制限された所定種別の道路が存在しない場合に、マッチング処理の実行を再開する(S6)構成としているが、車両が逆走状態から回復したか否かを検出する処理を所定間隔で実行し、車両が逆走状態から回復したことが検出された場合にマッチング処理の実行を再開する構成としても良い。
【0058】
また、本実施形態では、走行方向が制限された所定種別の道路として、有料道路や自動車専用道路を挙げたが、他の道路を対象に含めても良い。例えば、一般道路であっても一方通行区間を有する道路については、走行方向が制限された所定種別の道路に含めても良い。
【0059】
また、本発明はナビゲーション装置以外に、車両等の移動体の現在位置を地図上で特定する機能を備えた装置に対して適用することが可能である。例えば、携帯電話機、PDA等の携帯端末、パーソナルコンピュータ等に適用することも可能である。また、現在位置を表示する対象とする移動体は、車両以外にユーザ(歩行者)や2輪車としても良い。
【符号の説明】
【0060】
1 ナビゲーション装置
13 ナビゲーションECU
41 CPU
42 ROM
43 RAM



【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の位置を検出する車両位置検出手段と、
道路網を含む地図情報を取得する地図情報取得手段と、
前記車両が道路を逆走する逆走状態にあることを検出する逆走検出手段と、
前記車両位置検出手段により検出された前記車両の位置である検出位置と前記地図情報取得手段により取得された前記地図情報とに基づいて、該検出位置を地図上の道路にマッチングさせるマッチング処理を所定間隔で繰り返し実行するマッチング手段と、
前記マッチング手段によってマッチングされた前記検出位置である補正位置に基づいて前記車両の運転支援を行う運転支援手段と、
前記逆走検出手段によって前記車両が逆走状態になったことが検出された場合に、前記マッチング手段による前記マッチング処理の実行を停止するマッチング停止手段と、を有することを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記マッチング停止手段により前記マッチング処理の実行が停止されてから所定時間が経過又は前記車両が所定距離走行した場合に、前記マッチング手段による前記マッチング処理の実行を再開するマッチング距離再開手段を有することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記車両の周辺に位置する道路の種別を取得する道路種別取得手段と、
前記マッチング停止手段により前記マッチング処理の実行が停止された状態で、前記車両の周辺に走行方向が制限された所定種別の道路が存在しない場合に、前記マッチング手段による前記マッチング処理の実行を再開するマッチング種別再開手段と、を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記所定種別の道路は、有料道路及び自動車専用道路であることを特徴とする請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
車両の位置を検出する車両位置検出ステップと、
道路網を含む地図情報を取得する地図情報取得ステップと、
前記車両が道路を逆走する逆走状態にあることを検出する逆走検出ステップと、
前記車両位置検出ステップにより検出された前記車両の位置である検出位置と前記地図情報取得ステップにより取得された前記地図情報とに基づいて、該検出位置を地図上の道路にマッチングさせるマッチング処理を所定間隔で繰り返し実行するマッチングステップと、
前記マッチングステップによってマッチングされた該検出位置である補正位置に基づいて前記車両の運転支援を行う運転支援ステップと、
前記逆走検出ステップによって前記車両が逆走状態になったことが検出された場合に、前記マッチングステップによる前記マッチング処理の実行を停止するマッチング停止ステップと、を有することを特徴とする運転支援方法。
【請求項6】
コンピュータに搭載され、
車両の位置を検出する車両位置検出機能と、
道路網を含む地図情報を取得する地図情報取得機能と、
前記車両が道路を逆走する逆走状態にあることを検出する逆走検出機能と、
前記車両位置検出機能により検出された前記車両の位置である検出位置と前記地図情報取得機能により取得された前記地図情報とに基づいて、該検出位置を地図上の道路にマッチングさせるマッチング処理を所定間隔で繰り返し実行するマッチング機能と、
前記マッチング機能によってマッチングされた該検出位置である補正位置に基づいて前記車両の運転支援を行う運転支援機能と、
前記逆走検出機能によって前記車両が逆走状態になったことが検出された場合に、前記マッチング機能による前記マッチング処理の実行を停止するマッチング停止機能と、
をプロセッサに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−189343(P2012−189343A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50898(P2011−50898)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】