説明

運転支援装置および運転支援システム

【課題】最適な道路や車線の選択を支援すること。
【解決手段】運転支援装置1内部の走行情報取得部31は自車両が走行した経路などを走行情報として取得し、センタ通信部14によって車外のセンタに送信する。センタでは、車両から収集した走行情報を蓄積して、土地勘のある人間が高頻度で使用する経路を高頻度ルート情報として抽出する。運転支援装置1は、この高頻度ルート情報を用いて目的地までの経路設定、渋滞の迂回路の検索などを行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の走行を支援する運転支援装置および運転支援システムに関し、特に最適な道路や車線の選択を支援する運転支援装置および運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の走行に関する情報を収集し、運転者に対する情報提供によって車両の運転を支援する技術が考案されてきた。例えば、特許文献1は、道路状況をモニタして渋滞発生以前に、各車両別に予定ルートを考慮した渋滞への対応策を個別に指示し、渋滞の発生を未然に回避する技術を開示している。
【0003】
また、特許文献2は、各道路の一定区間毎に渋滞情報をリアルタイムに作成して更新し、運転者に通知する技術を開示している。さらに、特許文献3は、道路の所定箇所と道路を通過する各車両の双方に送受信装置を設置して交信を行い、渋滞状況を検出して報知する技術を開示している。また、特許文献4は、他車線の走行中において車線変更のタイミングを提示する技術を開示している。
【0004】
【特許文献1】特開平9−22497号公報
【特許文献2】特開平11−86184号公報
【特許文献3】特開2002−183879号公報
【特許文献4】特開2004−171391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば自宅近傍のように頻繁に走行する道路については、各車線がどのように変化しているか、また、どこで渋滞が発生しやすいか、などを経験的に把握しているので、最適な道路を選択し、適切なタイミングで車線変更を行なって効率的に走行することができる。
【0006】
しかし、旅先など所謂土地勘のない場所では、かかる経験を持たないために、効率の悪い経路選択や車線変更が発生する場合がある。例えば、左車線で渋滞がある場合、その左車線を走行しなければならない(並ばなければならない)のか、右車線に出るべきなのか分からない場合がある。このような非効率な運転は、自車両にとって問題となるのみならず、円滑な交通を阻害する要因となり、また事故防止の観点からも望ましくない。
【0007】
しかしながら、最適な道路や適切な車線変更のタイミングは、道路の形状のみならず周辺の施設や店舗、また、時間帯や曜日、日付によっても変化するので、車両に予め搭載した地図情報のみでは判断が困難である。
【0008】
さらに、土地勘のある場所を走行している場所であっても、工事や事故、渋滞の発生状況、またその時の目的地などによって最適な道路や適切な車線変更のタイミングは動的に変化するので、必ずしも常に効率的な走行ができるとはかぎらない。
【0009】
そこで、動的に変化し、従来経験的に把握されてきた各種情報を用いて、最適な道路や適切な車線変更のタイミングを提案する運転支援装置および運転支援システムの実現が重要な課題となっていた。
【0010】
本発明は、上述した従来技術における問題点を解消し、課題を解決するためになされたものであり、複数車線の道路を走行時に、ある車線が渋滞や工事等で走行の阻害がある場合に最適な道路や車線の選択を支援する運転支援装置および運転支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明に係る運転支援装置は、車両に搭載され、自車両の運転を支援する運転支援装置であって、道路の所定車線の走行阻害に関する情報と、該走行阻害を回避するために使用される頻度の高い道路上の経路および/または車線上の経路を高頻度経路情報として取得する高頻度経路情報取得手段と、前記高頻度経路情報に基づき、走行阻害のある所定車線を走行している自車両に対して運転支援情報を出力する支援出力手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
この請求項1の発明によれば運転支援装置は、車線の走行阻害を回避するために使用される頻度の高い道路上の経路および/または車線上の経路を高頻度経路情報として取得し、高頻度経路情報に基づき、走行阻害のある所定車線を走行している自車両に対して運転支援情報を出力する。
【0013】
また、請求項2の発明に係る運転支援装置は、請求項1の発明において、目的地および現在位置を取得する位置情報取得手段をさらに備え、前記支援出力手段は、前記高頻度経路情報に示された経路を優先して前記現在位置から前記目的地までの経路を設定することを特徴とする。
【0014】
この請求項2の発明によれば運転支援装置は、使用される頻度の高い道路上の経路および/または車線上の経路を高頻度経路情報として取得し、高頻度経路情報に示された経路を優先して現在地から目的地までの経路を設定する。
【0015】
また、請求項3の発明に係る運転支援装置は、請求項1または2の発明において、交通情報を取得する交通情報取得手段をさらに備え、前記支援出力手段は、前記交通情報と前記高頻度経路情報とを用いて迂回路を検索することを特徴とする。
【0016】
この請求項3の発明によれば運転支援装置は、使用される頻度の高い道路上の経路および/または車線上の経路を高頻度経路情報として取得し、高頻度経路情報と交通情報とを用いて迂回路を設定する。
【0017】
また、請求項4の発明に係る運転支援装置は、請求項1,2または3の発明において、運転履歴を管理する運転履歴管理手段をさらに備え、前記支援出力手段は、前記運転履歴から現在地点近傍の走行経験を判定し、走行経験が少ない場合に前記高頻度経路情報を出力することを特徴とする。
【0018】
この請求項4の発明によれば運転支援装置は、使用される頻度の高い道路上の経路および/または車線上の経路を高頻度経路情報として取得するとともに運転履歴を管理して現在地点近傍の走行経験を判定し、走行経験が少ない場合に高頻度経路情報を出力する。
【0019】
また、請求項5の発明に係る運転支援システムは、車両走行を支援する運転支援システムであって、車両の走行情報を収集する走行情報収集手段と、前記走行情報収集手段によって収集された走行情報に基づいて、道路の所定車線の走行阻害に関する情報と、該走行阻害を回避するために使用される頻度の高い道路上の経路および/または車線上の経路を高頻度経路情報として抽出する高頻度経路情報抽出手段と、前記高頻度経路情報を提供する高頻度経路情報提供手段と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
この請求項5の発明によれば運転支援システムは、車両の走行情報を収集し、走行情報から道路の所定車線の走行阻害に関する情報と、該走行阻害を回避するために使用される頻度の高い道路上の経路および/または車線上の経路を高頻度経路情報として抽出する。
【0021】
また、請求項6の発明に係る運転支援システムは、請求項5の発明において、前記高頻度経路抽出手段は、高頻度経路に時間、日付、曜日、交通状況、目的地、走行履歴、周辺施設を関連付けることを特徴とする。
【0022】
この請求項6の発明によれば運転支援システムは、車両の走行情報を収集し、走行情報から使用される頻度の高い道路上の経路および/または車線上の経路を高頻度経路として抽出するとともに、時間、日付、曜日、交通状況、目的地、走行履歴、周辺施設を関連付ける。
【0023】
また、請求項7の発明に係る運転支援システムは、請求項5または6の発明において、前記走行情報収集手段は、複数の車両から前記走行情報を取得することを特徴とする。
【0024】
この請求項7の発明によれば運転支援システムは、複数の車両から走行情報を収集し、使用される頻度の高い道路上の経路および/または車線上の経路を高頻度経路情報として抽出する。
【0025】
また、請求項8の発明に係る運転支援システムは、請求項7の発明において、前記走行情報収集手段は、車両の走行履歴に基づいて当該車両から前記走行情報を取得するか否かを判定することを特徴とする。
【0026】
この請求項8の発明によれば運転支援システムは、走行履歴に基づいて特定の車両から走行情報を収集し、使用される頻度の高い道路上の経路および/または車線上の経路を高頻度経路情報として抽出する。
【0027】
また、請求項9の発明に係る運転支援システムは、請求項5〜8のいずれか一つの発明において、前記高頻度経路情報提供手段は、通信によって車両に前記高頻度経路情報を提供することを特徴とする。
【0028】
この請求項9の発明によれば運転支援システムは、車両の走行情報を収集し、走行情報から使用される頻度の高い道路上の経路および/または車線上の経路を高頻度経路情報として抽出し、高頻度経路情報を通信によって車両に提供する。
【0029】
また、請求項10の発明に係る運転支援システムは、請求項5〜9のいずれか一つの発明において、前記高頻度経路情報を目的地までの経路設定に利用することを特徴とする。
【0030】
この請求項10の発明によれば運転支援システムは、車両の走行情報を収集し、走行情報から使用される頻度の高い道路上の経路および/または車線上の経路を高頻度経路情報として抽出して、車両の目的地までの経路設定に利用する。
【0031】
また、請求項11の発明に係る運転支援システムは、請求項5〜10のいずれか一つの発明において、前記高頻度経路情報を迂回路の検索に利用することを特徴とする。
【0032】
この請求項11の発明によれば運転支援システムは、車両の走行情報を収集し、走行情報から使用される頻度の高い道路上の経路および/または車線上の経路を高頻度経路情報として抽出し、車両の迂回路の検索に利用する。
【0033】
また、請求項12の発明に係る運転支援システムは、請求項1〜11のいずれか一つの発明において、走行経験の少ない場所を走行中である場合に前記高頻度経路情報を運転者に対して出力することを特徴とする。
【0034】
この請求項12の発明によれば運転支援システムは、車両の走行情報を収集し、走行情報から使用される頻度の高い道路上の経路および/または車線上の経路を高頻度経路情報として抽出し、走行経験の少ない場所を走行中の運転者に提供する。
【発明の効果】
【0035】
請求項1の発明によれば運転支援装置は、車線の走行阻害を回避するために使用される頻度の高い道路上の経路および/または車線上の経路を高頻度経路情報として取得し、高頻度経路情報に基づき、走行阻害のある所定車線を走行している自車両に対して運転支援情報を出力するので、最適な道路や車線の選択を支援する運転支援装置を得ることができるという効果を奏する。
【0036】
また、請求項2の発明によれば運転支援装置は、使用される頻度の高い道路上の経路および/または車線上の経路を高頻度経路情報として取得し、高頻度経路情報に示された経路を優先して現在地から目的地までの経路を設定するので、最適な道路や車線を採用した経路を自動設定する運転支援装置を得ることができるという効果を奏する。
【0037】
また、請求項3の発明によれば運転支援装置は、使用される頻度の高い道路上の経路および/または車線上の経路を高頻度経路情報として取得し、高頻度経路情報と交通情報とを用いて迂回路を設定するので、迂回路を的確に検索する運転支援装置を得ることができるという効果を奏する。
【0038】
また、請求項4の発明によれば運転支援装置は、使用される頻度の高い道路上の経路および/または車線上の経路を高頻度経路情報として取得するとともに運転履歴を管理して現在地点近傍の走行経験を判定し、走行経験が少ない場合に高頻度経路情報を出力するので、土地勘の無い運転者による道路や車線の選択を支援する運転支援装置を得ることができるという効果を奏する。
【0039】
また、請求項5の発明によれば運転支援システムは、車両の走行情報を収集し、走行情報から道路の所定車線の走行阻害に関する情報と、該走行阻害を回避するために使用される頻度の高い道路上の経路および/または車線上の経路を高頻度経路情報として抽出するので、最適な道路や車線の選択を支援する運転支援システムを得ることができるという効果を奏する。
【0040】
また、請求項6の発明によれば運転支援システムは、車両の走行情報を収集し、走行情報から使用される頻度の高い道路上の経路および/または車線上の経路を高頻度経路として抽出するとともに、時間、日付、曜日、交通状況、目的地、走行履歴、周辺施設を関連付けるので、動的に変化する最適な道路や車線の選択を支援する運転支援システムを得ることができるという効果を奏する。
【0041】
また、請求項7の発明によれば運転支援システムは、複数の車両から走行情報を収集し、使用される頻度の高い道路上の経路および/または車線上の経路を高頻度経路情報として抽出するので、複数の車両の走行情報に基づいて最適な道路や車線の選択を支援する運転支援システムを得ることができるという効果を奏する。
【0042】
また、請求項8の発明によれば運転支援システムは、走行履歴に基づいて特定の車両から走行情報を収集し、使用される頻度の高い道路上の経路および/または車線上の経路を高頻度経路情報として抽出するので、土地勘のある車両の走行情報に基づいて最適な道路や車線の選択を支援する運転支援システムを得ることができるという効果を奏する。
【0043】
また、請求項9の発明によれば運転支援システムは、車両の走行情報を収集し、走行情報から使用される頻度の高い道路上の経路および/または車線上の経路を高頻度経路情報として抽出し、高頻度経路情報を通信によって車両に提供するので、状況に応じて最適な道路や車線の選択を支援する運転支援システムを得ることができるという効果を奏する。
【0044】
また、請求項10の発明によれば運転支援システムは、車両の走行情報を収集し、走行情報から使用される頻度の高い道路上の経路および/または車線上の経路を高頻度経路情報として抽出して、車両の目的地までの経路設定に利用するので、最適な道路や車線を採用した経路を自動設定する運転支援システムを得ることができるという効果を奏する。
【0045】
また、請求項11の発明によれば運転支援システムは、車両の走行情報を収集し、走行情報から使用される頻度の高い道路上の経路および/または車線上の経路を高頻度経路情報として抽出し、車両の迂回路の検索に利用するので、迂回路を的確に検出する運転支援システムを得ることができるという効果を奏する。
【0046】
また、請求項12の発明によれば運転支援システムは、車両の走行情報を収集し、走行情報から使用される頻度の高い道路上の経路および/または車線上の経路を高頻度経路情報として抽出し、走行経験の少ない場所を走行中の運転者に提供するので、土地勘の無い運転者による道路や車線の選択を支援する運転支援システムを得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る運転支援装置および運転支援システムの好適な実施例について詳細に説明する。
【実施例】
【0048】
図1は、本発明の実施の形態である運転支援装置1の概要構成を示す概要構成図である。同図に示すように、運転支援装置1は、その内部にGPS11、VICS通信部12、カメラ13、センタ通信部14、ナビゲーションユニット20、走行情報取得部31、運転履歴管理部32、高頻度ルート取得部33、案内処理部40、ディスプレイ51およびスピーカ52を有する。
【0049】
GPS11は、GPS(Global Positioning System)人工衛星と通信して自車両の位置の特定と、時刻情報の取得を行う。また、VICS通信部12は、VICS(Vehicle Information and Communication System)による道路交通情報の受信を行なう。
【0050】
カメラ13は、自車両の周辺を撮影する撮影手段であり、撮影結果をナビゲーションユニット20および車線判定部31に出力する。また、センタ通信部14は、車両外部のセンタと通信する通信手段である。
【0051】
ナビゲーションユニット20は、GPS11が特定した自車両の位置と時刻、VICS通信部12が取得した交通情報、車線判定部31が判定した自車両の走行車線を利用して走行経路の設定および誘導を行なうユニットであり、その内部に地図データ21、走行位置特定部22、経路設定部23、経路案内部24、渋滞判定部25および車線判定部26を有する。
【0052】
地図データ21は、道路形状、車線の状態、周辺施設などの情報を含む。走行位置特定部22は、この地図データ21と、GPS11が特定した自車両の位置、車線判定部26が判定した車線を用いて位置情報を作成する。
【0053】
さらに、乗員から目的地を指定された場合、経路設定部23が地図データ21、位置情報、および目的地情報を用いて、目的地に到達するために走行すべき道路の経路(推奨道路経路)と、各道路上で走行すべき車線の経路(推奨車線経路)を作成する。そして、経路案内部24は、位置情報と推奨道路経路、推奨車線経路に基づいて運転者への経路案内を行なう。
【0054】
また、渋滞判定部25は、VICS通信部12が受信した交通情報や、カメラ13の撮影結果に対する画像処理によって、渋滞が発生しているか否かを判定する。また、工事や事故など渋滞の発生要因の有無についても判定を行なう。
【0055】
そして渋滞判定部25による判定結果は、経路設定部23による推奨道路経路や推奨車線経路の設定に反映され、渋滞する道路を避けた推奨道路経路の設定、また同一の道路上においても渋滞する車線を避けた推奨車線経路の設定、さらに渋滞した道路や車線を迂回する迂回路の検索に使用される。
【0056】
車線判定部26は、自車両の走行車線を判定する判定手段であり、具体的には、カメラ13が撮影した画像に対する画像処理によって、自車両の走行車線を判定する。
【0057】
走行情報取得部32は、ナビゲーションユニット20から取得した位置情報や時刻情報、目的地、推奨道路経路、推奨車線経路、さらに実際に走行した走行道路経路や推奨車線経路、運転履歴管理部32が管理する運転履歴などを、センタ通信部14を介して図2に示すセンタ60に送信する。
【0058】
運転履歴管理部32は、過去に走行した道路などを蓄積した運転履歴を管理している。この運転履歴により、その車両の運転者がどの道路を頻繁に走行しているか、すなわちどの場所について土地勘があるかを判定することができる。また、運転者を識別し、運転者ごとに運転履歴を管理するように構成しても良い。
【0059】
高頻度ルート取得部33は、センタ通信部14を介して、使用される頻度の高い道路上の経路や車線上の経路を高頻度ルート情報として取得し、ナビゲーションユニット20や案内処理部40に出力する。
【0060】
ナビゲーションユニット20は、この高頻度ルート情報を道路経路や車線経路の設定、渋滞の迂回経路の設定に使用する。例えば、目的地が設定されているならば、目的地に到達可能な複数の道路経路のうち、高頻度ルート情報に示された経路を優先して使用して、推奨道路経路を設定する。同様に車線経路についても、高頻度ルート情報に示された車線経路をトレースする形で推奨車線経路を設定する。
【0061】
さらに、渋滞判定部25が渋滞を判定した場合には、渋滞箇所を避ける複数の道路経路(もしくは車線経路)のうち、高頻度ルート情報に示された経路を優先して使用して迂回路を検索する。
【0062】
案内処理部40は、ディスプレイ51による表示出力およびスピーカ52による音声出力を使用し、経路案内部24による運転者への経路案内や、渋滞判定部25の判定結果に示された渋滞やその要因の運転者への通知を行なう。
【0063】
さらに案内処理部40は、ナビゲーションユニット20から取得した位置情報と運転履歴管理部32が管理する運転履歴から現在地点近傍の走行経験を判定し、走行経験が少ない場合、すなわち運転者に土地勘が無い場合に、高頻度ルート情報を運転者に通知する。
【0064】
つぎに、センタの構成について図2を参照して説明する。同図に示すように、センタ60は、その内部に走行情報収集部61、走行情報蓄積部62、高頻度ルート抽出部63および高頻度ルート送信部64を有する。
【0065】
走行情報収集部61は、複数の車両(同図では車両C1〜C3)から通信によって走行情報を収集し、走行情報蓄積部62に蓄積する。通信可能な全ての車両C1〜C4から走行情報を取得する構成としても良いが、土地勘のある場所を走行中の車両から選択的に走行情報を取得することで通信量を削減することができる。
【0066】
そして、高頻度ルート抽出部63は、走行情報蓄積部62が蓄積した走行情報から、使用される頻度の高い道路上の経路や車線上の経路を高頻度ルート情報として抽出する。この時、高頻度ルートには、時間、日付、曜日、交通状況(左車線、○○店前△△m渋滞など)、目的地、走行履歴、周辺施設等の周辺環境を関連付け、前記ルートと上記周辺環境を合わせて高頻度ルート情報とする。上記の交通状況は、所定車線についての走行阻害に関する情報となる。尚、渋滞以外にも道路工事などであっても良い。
【0067】
そして、高頻度ルート送信部64は、高頻度ルート抽出部63が抽出した高頻度ルート情報を車両(同図では車両C3およびC4)に送信する処理を行なう。送信先の車両は、センタ60が通信可能な全ての車両であっても良いが、土地勘の無い場所を走行している車両や渋滞に巻き込まれた車両など、高頻度ルート情報を必要としている車両に選択的に高頻度ルート情報を提供することが望ましい。
【0068】
つづいて、高頻度ルート情報抽出の具体例について図3〜図5を参照して説明する。図3に示した状況では、車両C10は、道路W1の左側車線L11を走行中であり、交差点I1で左折して道路W2に進入予定である。
【0069】
左側車線L11の前方には複数の車両C11〜C15が走行しており、右側車線L12は空いている。ここで、前方の車両が交差点I1を左折予定であるならば、車両C10は車線L11の走行を継続することが適切である。しかし、例えば車両C11〜C14の目的地が大型店舗T1であるならば、一旦車線L12に車線変更し、車両C14の前方で再び車線L11に戻ることが適切となる。
【0070】
ここで、運転者に土地勘が無ければ、前方の車両が交差点I1で左折する
のか大型店舗T1に入るのかの判断ができないが、運転者に土地勘があれば前方の車両群は大型店舗T1に入る可能性が高いと判断することができ、車線変更を試みることとなる。
【0071】
従って、交差点I1に道路W1から進入し、左折して道路W2に抜けた車両の走行情報をセンタ60が蓄積すると、図4に示すように一旦車線L12に車線変更をする車線経路R11の使用頻度は、車線L11を直進する車線経路R11に比して大きくなる。そこで、高頻度ルート抽出部63は、車線経路R12を高頻度ルートとして抽出する。
【0072】
同様に、土地勘のある運転者は、図3の状態になることを避け、予め別の道路を経路として使用することも考えられる。この場合、センタ60が走行情報を蓄積すると、図5に示すように、道路W1から道路W3を介して道路W2に進入する道路経路R21の使用頻度が、交差点I1で左折する道路経路22に比して大きくなる。そこで、高頻度ルート抽出部63は、道路経路R21を高頻度ルートとして抽出する。
【0073】
なお、道路や車線の使用頻度は、時間や日付、曜日などによって変わる。例えば、昼夜や通勤時間帯、近隣の店舗の営業時間によって、どの道路や車線を選択することが効率的であるかは異なる。
【0074】
さらに、事故などの突発的な交通状況の下において選択された経路は、事故の処理が終了した後には有効ではない。また、工事など比較的長期に渡る交通状況の下で選択された経路は、工事終了まで有効となる。
【0075】
そこで、高頻度ルート抽出部63は、これらの情報を高頻度ルート情報に関連付けることで、各状況下において最も適切な経路を抽出する。また、運転者の運転履歴(走行履歴)によって、取得した走行情報に重み付けを行ってもよい。
【0076】
つぎに、高頻度ルート情報の利用について説明する。図6は、運転支援装置1が高頻度ルート情報を利用する場合の処理動作について説明するフローチャートであり、この処理フローは、運転支援装置1によって繰り返し実行される。
【0077】
まず、運転支援装置1は、乗員によって目的地が設定されているか否かを判定する(ステップS101)。その結果、目的地が設定されているならば(ステップS101,Yes)、経路設定部23は高頻度ルート情報を用いて目的地までの経路を設定し、経路案内部24が案内処理を実行する(ステップS102)。
【0078】
経路の設定・案内(ステップS102)の後、もしくは目的地が設定されていない場合(ステップS101,No)、渋滞判定部25は、渋滞が発生しているか否かを判定する(ステップS103)。
【0079】
その結果、走行している車線上の先に渋滞が発生しているならば(ステップS103,Yes)、高頻度ルート情報にある周辺環境を用いて渋滞の理由(○○店前△△渋滞です)を通知すると共に、経路設定部23は高頻度ルート情報を用いて渋滞を回避する迂回路を検索し、経路案内部24が案内処理を実行する(ステップS104)。このようにその地域にかかる高頻度ルート情報は、自車両の現在位置に基づいて抽出される。
【0080】
迂回路の検索・案内(ステップS104)の後、もしくは渋滞が発生していない場合(ステップS104,No)、案内処理部40は、運転履歴に基づいて運転者に土地勘があるか否かを判定する(ステップS105)。
【0081】
その結果、運転者に土地勘が無ければ(ステップS105,No)、案内処理部40は運転者に高頻度ルートを通知(ステップS106)して処理を終了し、運転者に土地勘があるならば(ステップS105,Yes)、そのまま処理を終了する。
【0082】
上述してきたように、本実施例にかかる運転支援装置1および運転支援装置1を含む運転支援システムでは、車両が走行した経路などを走行情報として収集して蓄積し、蓄積した走行情報から土地勘のある人間が高頻度で使用する経路を高頻度ルート情報として抽出する。そして、車両側では高頻度ルート情報を用いて目的地までの経路設定、渋滞の迂回路の検索などを行なうことで、最適な道路や適切な車線変更のタイミングを提案することができる。
【0083】
さらに、土地勘のない運転者に対しては、高頻度ルート情報を直接提示することで、土地勘のある運転者と同様の経路選択が可能となる。
【0084】
なお、本実施例では、車載装置である運転支援装置から通信によって走行情報を収集する構成を例に説明を行ったが、本発明の利用はこれに限定されるものではなく、適宜変更して実施することが可能である。
【0085】
例えば、走行情報を一旦車載装置側で蓄積しておき、ディーラーがメンテナンス時などに収集する構成としても良い。また、車両内で走行情報を蓄積するとともに運転者ごとに運転履歴を管理すれば、運転頻度の高い運転者による経路選択を運転頻度の低い運転者に提供するなど、同一車両内であっても高頻度ルート情報の抽出と利用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上のように、本発明にかかる運転支援装置および運転支援システムは、車両の運転の支援に有用であり、特に最適な道路や車線の選択の支援に適している。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の実施例にかかる運転支援装置の概要構成を示す概要構成図である。
【図2】本発明の実施例にかかる運転支援システムについて説明する説明図である。
【図3】高頻度ルート情報抽出の具体例について説明する説明図である。
【図4】図3に示した状況における車線の使用頻度について説明する説明図である。
【図5】図3に示した状況における道路の使用頻度について説明する説明図である。
【図6】高頻度ルート情報を利用する場合の処理動作について説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0088】
1 運転支援装置
11 GPS
12 VICS通信部
13 カメラ
14 センタ通信部
20 ナビゲーションユニット
21 地図データ
22 走行位置特定部
23 経路設定部
24 経路案内部
25 渋滞判定部
26 車線判定部
31 走行情報取得部
32 運転履歴管理部
33 高頻度ルート取得部
40 案内処理部
51 ディスプレイ
52 スピーカ
60 センタ
61 走行情報取得部
62 走行情報蓄積部
63 高頻度ルート抽出部
64 高頻度ルート送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、自車両の運転を支援する運転支援装置であって、
道路の所定車線の走行阻害に関する情報と、該走行阻害を回避するために使用される頻度の高い道路上の経路および/または車線上の経路を高頻度経路情報として取得する高頻度経路情報取得手段と、
前記高頻度経路情報に基づき、走行阻害のある所定車線を走行している自車両に対して運転支援情報を出力する支援出力手段と、
を備えたことを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
目的地および現在位置を取得する位置情報取得手段をさらに備え、前記支援出力手段は、前記高頻度経路情報に示された経路を優先して前記現在位置から前記目的地までの経路を設定することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
交通情報を取得する交通情報取得手段をさらに備え、前記支援出力手段は、前記交通情報と前記高頻度経路情報とを用いて迂回路を検索することを特徴とする請求項1または2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
運転履歴を管理する運転履歴管理手段をさらに備え、前記支援出力手段は、前記運転履歴から現在地点近傍の走行経験を判定し、走行経験が少ない場合に前記高頻度経路情報を出力することを特徴とする請求項1,2または3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
車両走行を支援する運転支援システムであって、
車両の走行情報を収集する走行情報収集手段と、
前記走行情報収集手段によって収集された走行情報に基づいて、道路の所定車線の走行阻害に関する情報と、該走行阻害を回避するために使用される頻度の高い道路上の経路および/または車線上の経路を高頻度経路情報として抽出する高頻度経路情報抽出手段と、
前記高頻度経路情報を提供する高頻度経路情報提供手段と、
を備えたことを特徴とする運転支援システム。
【請求項6】
前記高頻度経路抽出手段は、高頻度経路に時間、日付、曜日、交通状況、目的地、走行履歴、周辺施設を関連付けることを特徴とする請求項5に記載の運転支援システム。
【請求項7】
前記走行情報収集手段は、複数の車両から前記走行情報を取得することを特徴とする請求項5または6に記載の運転支援システム。
【請求項8】
前記走行情報収集手段は、車両の走行履歴に基づいて当該車両から前記走行情報を取得するか否かを判定することを特徴とする請求項7に記載の運転支援システム。
【請求項9】
前記高頻度経路情報提供手段は、通信によって車両に前記高頻度経路情報を提供することを特徴とする請求項5〜8のいずれか一つに記載の運転支援システム。
【請求項10】
前記高頻度経路情報を目的地までの経路設定に利用することを特徴とする請求項5〜9のいずれか一つに記載の運転支援システム。
【請求項11】
前記高頻度経路情報を迂回路の検索に利用することを特徴とする請求項5〜10のいずれか一つに記載の運転支援システム。
【請求項12】
走行経験の少ない場所を走行中である場合に前記高頻度経路情報を運転者に対して出力することを特徴とする請求項5〜11のいずれか一つに記載の運転支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−300903(P2006−300903A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−127151(P2005−127151)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】