説明

運転支援装置

【課題】自車両位置に応じた運転者への注意喚起の頻度を適切なものとした運転支援装置を提供すること。
【解決手段】車両において、自車両位置に応じて運転者に注意喚起する運転支援装置が、自車両の位置を検出する検出手段と、自車両位置から第一の所定範囲内に要注意地物が存在するか否かを判定する第一の判定手段と、自車両位置から第一の所定範囲よりも広い第二の所定範囲内に別の要注意地物が存在するか否かを判定する第二の判定手段と、第一の判定手段により第一の所定範囲内に要注意地物が存在すると判定されたときに、自車両運転者に注意喚起する注意喚起手段とを備え、この注意喚起手段は、自車両運転者に注意喚起する際、第二の判定手段により第二の所定範囲内に別の要注意地物が存在すると判定されたときには、自車両周辺に複数の要注意地物が存在することを自車両運転者に注意喚起する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、車両において、自車両位置に応じて運転者に注意喚起する運転支援装置に係り、特に、注意喚起の頻度を適切なものとした運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両において、自車両の位置に応じて運転者に注意喚起する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、学校の位置情報に基づいて学校を中心とした所定半径円内をスクールゾーンとみなし、このスクールゾーンに自車両が接近又は進入したときに運転者に音声メッセージで注意喚起する装置が開示されている。
【特許文献1】特開2002−250632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された従来装置は、各学校を中心にスクールゾーンの範囲を設定すると共に、自車両において注意喚起を実施するか否かを自車両から最寄りの学校についてそれぞれ判定しているため、自車両が複数の学校が密集した地域を走行中には各学校についてそれぞれ注意喚起が実施され、運転者に過度に頻繁で煩わしいとの印象を与えるおそれがある。運転者がこのような印象を一旦抱いてしまうと注意喚起の効果も低減しかねない。
【0005】
上記特許文献1には、登校日情報や通学時間帯情報に基づいて注意喚起の実施を一時停止することも開示されているが、登校日や通学時間帯はいずれの学校についても略同じである可能性が高く、上記問題の解決とはならない。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、注意喚起の頻度を適切なものとした運転支援装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、車両において、自車両位置に応じて運転者に注意喚起する運転支援装置であって、自車両の位置を検出する検出手段と、この検出手段により検出された自車両位置から第一の所定範囲内に要注意地物が存在するか否かを判定する第一の判定手段と、上記検出手段により検出された自車両位置から上記第一の所定範囲よりも広い第二の所定範囲内に(別の)要注意地物が存在するか否かを判定する第二の判定手段と、上記第一の判定手段により上記第一の所定範囲内に要注意地物が存在すると判定されたときに、自車両運転者に注意喚起する注意喚起手段とを有し、この注意喚起手段は、自車両運転者に注意喚起するとき、上記第二の判定手段による判定結果に応じて注意喚起の内容を変える、運転支援装置である。
【0008】
上記一態様において、地物とは、樹木、河川、家屋、道路、鉄道などの地上に存在する天然又は人工のすべての物体のことであり(岩波書店「広辞苑」より)、要注意地物とは、その周囲においては運転者が特に注意して運転することが好ましいと考えられるあらゆる地物(典型的には建物)を全般的に指す意図で用いられており、要注意地物の典型例は、小学校や中学校などの教育関連施設である。なぜなら、その周囲では、歩道から車道への子供の飛び出しが発生する潜在的確率が他の地域と比べて一般的に高いと考えられるため、特に運転に注意を払うべきであると言い得るからである。
【0009】
また、上記一態様において、上記第一の所定範囲は、例えば、上記検出手段により検出された自車両位置を中心とした第一の所定長半径を持つ円形領域であり、上記第二の所定範囲は、例えば、上記検出手段により検出された自車両位置を中心とした上記第一の所定長半径よりも長い第二の所定長半径を持つ円形領域である。
【0010】
上記一態様によれば、自車両周辺に要注意地物が複数存在する場合に状況に適した注意喚起を実施することができる。
【0011】
例えば、上記一態様において、上記注意喚起手段が、自車両周辺に要注意地物が存在することを自車両運転者に伝達するための音声メッセージを自車両車室内に出力することによって運転者に注意喚起すると共に、上記第二の判定手段による判定結果に応じて上記音声メッセージの内容を変えるように構成されるものとすると、例えば、上記注意喚起手段が、自車両運転者に注意喚起する際、A)上記第二の判定手段により上記第二の所定範囲内に(別の)要注意地物が存在すると判定されたときには、自車両周辺に複数の要注意地物が存在することを自車両運転者に伝達するための音声メッセージを出力し、B)上記第二の判定手段により上記第二の所定範囲内に(別の)要注意地物が存在しないと判定されたときには、自車両周辺に要注意地物が1つ存在することを自車両運転者に伝達するための音声メッセージを出力するように構成することによって、自車両周辺に複数の要注意地物が存在する場合に実施される注意喚起を一度だけに抑えることができる。
【0012】
なお、上記一態様において、上記注意喚起手段は、上記第二の判定手段によって上記第二の所定範囲内に存在すると判定された(別の)要注意地物が、その後、上記第一の判定手段によって上記第一の所定範囲内に存在すると判定されたときには、重複した注意喚起が実施されるのを回避するために、自車両運転者に対する注意喚起を実施しないように構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、注意喚起の頻度を適切なものとした運転支援装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。なお、以下に説明する一実施例では、上記要注意地物として小中学校を例に挙げる。
【実施例】
【0015】
以下、図1〜4を用いて、本発明の一実施例に係る運転支援装置について説明する。
【0016】
図1は、本実施例に係る運転支援装置100の概略構成図である。運転支援装置100は、図示しない車両に搭載され、自車両運転者に対して自車両位置に応じて注意喚起を行うことを主たる機能の1つとする装置である。
【0017】
運転支援装置100は、例えばGPS(Global Positioning System;全地球測位システム)を利用して自車両の位置を検出する自車両位置検出部101を有する。自車両位置検出部101の検出精度(分解能)は高い(細かい)ほど好ましく、例えばRTK(Real Time Kinematic)−GPSなどの高精度GPSが利用されることが好ましい。
【0018】
運転支援装置100は、更に、小中学校の所在地データ(例えば緯度・経度データ)を記憶保持する記憶部102を有する。本実施例において、記憶部102は任意の記憶媒体でよい。また、記憶部102に記憶保持された小中学校所在地データは、例えば通信を利用して、適宜最新のデータに更新されることが好ましい。なぜなら、新設・廃校・合併などにより小中学校所在地は変化し得るからである。
【0019】
運転支援装置100は、更に、自車両周辺に要注意地物が存在することを自車両運転者に注意喚起するための所定の音声メッセージを自車両車室内に出力する音声出力部103を有する。音声出力部103は、運転者が聞き取りやすいように車室内に配置された専用のスピーカーを備えていることが好ましいが、他の車載システムのスピーカーと兼用であってもよい。
【0020】
運転支援装置100は、更に、運転支援装置100の各構成要素を統括的に制御する主制御部104を有する。主制御部104は、例えば、ECU(Electronic Control Unit;電子制御装置)である。
【0021】
本実施例において、主制御部104は、自車両位置検出部101によって検出された自車両位置と記憶部102に記憶保持された小中学校の所在地データとを利用して、自車両位置を中心とする所定の範囲内に小中学校が存在する場合に音声出力部103に注意喚起のための所定の音声メッセージを出力させる、ように構成される。
【0022】
以下、運転支援装置100による注意喚起処理の流れについて、図2のフローチャートを用いて詳述する。
【0023】
まず、主制御部104は、自車両位置検出部101によって検出された自車両位置と記憶部102に記憶保持された小中学校の所在地データとを照らし合わせて、自車両位置を中心とした所定の半径R1の円内に小中学校が存在するか否かを判定する(S201)。
【0024】
自車両位置を中心とした半径R1の円内に小中学校が存在しなければ(S201の「NO」)、注意喚起は不要と判断し、何らの音声メッセージも出力せずに本フローの1ルーチンを終了する。
【0025】
他方、自車両位置を中心とした半径R1の円内に存在する小中学校が検出された場合(S201の「YES」)、次いで、主制御部104は、その検出された小中学校について既に注意喚起を実施済みであるか否かを判定する(S202)。
【0026】
自車両位置から半径R1以内に検出された学校が以前に注意喚起の対象となった小中学校であった場合(S202の「YES」)、重複する注意喚起の実施を回避するために、注意喚起は不要と判断し、何らの音声メッセージも出力せずに本フローの1ルーチンを終了する。
【0027】
他方、自車両位置から半径R1以内に検出された学校が(例えば、過去の所定時間(例えば1日)内に、或いは、ワントリップ(イグニッションスイッチオンからオフまで)内に)いまだ注意喚起の対象となったことのない小中学校であった場合(S202の「YES」)、主制御部104は、検出された小中学校について注意喚起が必要と判断し、次いで、併せて注意喚起の対象とすべき別の小中学校が存在するか否かを判定する。
【0028】
具体的には、主制御部104は、同じく自車両位置検出部101によって検出された自車両位置と記憶部102に記憶保持された小中学校の所在地データとを照らし合わせて、自車両位置を中心とした所定の半径R2(>R1)の円内に1校以上の別の小中学校が存在するか否かを判定する(S203)。
【0029】
自車両位置から半径R2以内に存在する1校以上の別の小中学校が検出された場合(S203の「YES」)、主制御部104はこの検出された別の小中学校も併せて注意喚起すべきと判断し、自車両周辺に複数の小中学校が存在し、これら複数の小中学校の存在について一度にまとめて注意喚起する場合用の音声メッセージ(例えば、「近くに複数の学校があります。」「しばらくは注意して走行してください。」など)を音声出力部103に出力させる(S204)。
【0030】
他方、自車両位置から半径R2以内に別の小中学校が1校も検出されなかった場合(S203の「NO」)、主制御部104は半径R1以内において検出された小中学校についてのみ通常通り注意喚起すべきと判断し、1校の小中学校の存在について注意喚起する場合用の従来通りの音声メッセージ(例えば、「近くに学校があります。」「注意して走行してください。」など)を音声出力部103に出力させる(S205)。
【0031】
ここで、S204及びS205のいずれの場合においても、主制御部104は、本フローの次のルーチンにおいてS202の判断が的確に行われ、重複した注意喚起が実施されないように、実際に注意喚起の対象となった小中学校について例えば記憶部102に記憶されたデータにフラグを立てるなどして区別可能な状態としておく。
【0032】
自車両と注意喚起の対象となる小中学校の位置関係の例を図3に示す。
【0033】
図3(a)は、図2のS201で「NO」となる場合の自車両Vと小中学校「文」との位置関係の一例を示している。図示するように、注意喚起を実施すべきか否かの判定基準となる自車両Vを中心とした半径R1の円C1内に小中学校が存在しない場合、たとえ注意喚起の対象とすべき小中学校が複数校存在するか否かの判定基準となる自車両Vを中心とした半径R2の円C2内に小中学校が存在したとしても、注意喚起は実施されない。
【0034】
図3(b)は、図2のS203で「YES」となる場合の自車両Vと小中学校「文」との位置関係の一例を示している。図示するように、円C1内に小中学校が1校存在し、且つ、円C2内にも小中学校が1校存在する場合、これら自車両周辺の2つの小中学校の存在について一度にまとめて注意喚起するための特別な音声メッセージが出力される(図2のS204)。
【0035】
図3(c)は、図2のS203で「NO」となる場合の自車両Vと小中学校「文」との位置関係の一例を示している。図示するように、円C1内に小中学校が1校存在するが、円C2内には小中学校が存在しない場合、従来通りの音声メッセージが出力される(図2のS205)。
【0036】
なお、本実施例において、上記の半径R1及びR2の長さは注意喚起の頻度が適切となるように任意に設定可能である。
【0037】
このように、本実施例によれば、運転者に注意喚起すべき小中学校の存在が検出されたときに、併せて注意喚起した方が好ましいと考えられる別の小中学校が近傍に存在するか否かを判断し、そのような別の小中学校が存在した場合にはこれら複数の小中学校についてまとめて一度に注意喚起を実施すると共に、一度注意喚起の対象となった小中学校については再度注意喚起しないため、注意喚起の対象とすべき小中学校が1校検知されるたびに逐一注意喚起が実施されないようにし、たとえ小中学校が密集する地域を走行した場合であっても運転者に注意喚起が過度に頻繁で煩わしいという印象を与える可能性が大幅に低減される。
【0038】
なお、上記一実施例においては、一例として小中学校の存在を運転者に注意喚起する場合について説明したが、小中学校は運転者に注意喚起することが好ましいと考えられる地物の一例として取り上げられたに過ぎず、本発明に係る注意喚起の手法はあらゆる要注意地物について適用可能である。
【0039】
また、上記一実施例に係る運転支援装置は、単独の装置として実現されるだけでなく、ナビゲーションシステムに内蔵された一機能として実現されることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、自車両位置に応じて運転者に注意喚起する運転支援装置に利用できる。搭載される車両の外観、重量、サイズ、走行性能等は問わない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施例に係る運転支援装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施例に係る運転支援装置による注意喚起処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施例に係る運転支援装置により出力される音声メッセージの内容が異なる2つの自車両と小中学校との位置関係例を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
100 運転支援装置
101 自車両位置検出部
102 記憶部
103 音声出力部
104 主制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両において、自車両位置に応じて運転者に注意喚起する運転支援装置であって、
自車両の位置を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された自車両位置から第一の所定範囲内に要注意地物が存在するか否かを判定する第一の判定手段と、
前記検出手段により検出された自車両位置から前記第一の所定範囲よりも広い第二の所定範囲内に要注意地物が存在するか否かを判定する第二の判定手段と、
前記第一の判定手段により前記第一の所定範囲内に要注意地物が存在すると判定されたときに、自車両運転者に注意喚起する注意喚起手段と、を有し、
前記注意喚起手段は、自車両運転者に注意喚起するとき、前記第二の判定手段による判定結果に応じて注意喚起の内容を変える、ことを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
請求項1記載の運転支援装置であって、
前記注意喚起手段は、自車両周辺に要注意地物が存在することを自車両運転者に伝達するための音声メッセージを自車両車室内に出力することによって運転者に注意喚起すると共に、前記第二の判定手段による判定結果に応じて前記音声メッセージの内容を変える、ことを特徴とする運転支援装置。
【請求項3】
請求項2記載の運転支援装置であって、
前記注意喚起手段は、自車両運転者に注意喚起する際、前記第二の判定手段により前記第二の所定範囲内に要注意地物が存在すると判定されたときには、自車両周辺に複数の要注意地物が存在することを自車両運転者に伝達するための音声メッセージを出力する、ことを特徴とする運転支援装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項記載の運転支援装置であって、
前記注意喚起手段は、前記第二の判定手段によって前記第二の所定範囲内に存在すると判定された要注意地物が、その後、前記第一の判定手段によって前記第一の所定範囲内に存在すると判定されたとき、自車両運転者に対する注意喚起を実施しない、ことを特徴とする運転支援装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項記載の運転支援装置であって、
前記第一の所定範囲は、前記検出手段により検出された自車両位置を中心とした第一の所定長半径を持つ円形領域であり、
前記第二の所定範囲は、前記検出手段により検出された自車両位置を中心とした前記第一の所定長半径よりも長い第二の所定長半径を持つ円形領域である、ことを特徴とする運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−192728(P2007−192728A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−12456(P2006−12456)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】