説明

運転支援装置

【課題】運転支援装置において、他車両の運転者がウインカを出し忘れていても、他車両の経路誘導情報から衝突可能性を判定することにある。
【解決手段】制御装置(4)は、特定された他車両のウインカ情報と経路誘導情報とを取得し、特定された他車両のウインカ情報が指し示す進行方向と経路誘導情報が指し示す進行方向とを比較して、ウインカ情報は直進を指し示しているが、経路誘導情報は右折又は左折を指し示す場合に、特定された他車両と自車両とが特定された交差点において衝突する可能性があると判定する衝突可能性判定手段(15C)を備え、他車両と自車両とが衝突する可能性があると判定された時に自車両の運転者に警告するために警告手段(13、14)を作動制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、運転支援装置に係り、特に車車間通信や路車間通信等を利用する通信システムとしての運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、運転者に対する報知や車両操作への介入を行うために、車車間通信や路車間通信等を利用する通信システムとしての運転支援装置を搭載したものがある。
この運転支援装置には、自車両が交差点で左折する他車両に巻き込まれたり、周辺車両としての対向する他車両と衝突するおそれをなくするために、車車間通信を行う車車間通信装置を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−323185号公報
【0004】
特許文献1に係る車両用運転支援システムは、自車両と他車両との間で情報を送受信する車車間通信手段を設け、自車両が進入する交差点を特定する交差点特定手段と、この交差点特定手段により特定された交差点に接近する他車両を車車間通信手段により取得した他車両の情報から特定する他車両特定手段とを備えた制御手段を設け、他車両のウインカ情報やナビゲーションシステムの経路誘導情報を利用して車両の進路を予測するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来、上記の特許文献1においては、他車両が、ウインカを出し忘れたり、表示装置としてのナビゲーションシステムの経路誘導情報に従わずに進路変更してしまうことがあると、予想した進路とは異なるため、自車両に「接近車両に注意」と言った注意喚起の情報提供を表示することができず、自車両は、他車両の急な進路変更により、他車両と接触する場合が生ずる。
また、交差点にある車両の進路の予測に、ウインカ情報や経路誘導情報が利用されているが、それらの情報が不一致のときの注意喚起の方法については、考慮されていなく、改善が望まれていた。
【0006】
そこで、この発明の目的は、他車両の運転者がウインカを出し忘れていても、他車両の経路誘導情報から衝突可能性を判定できる運転支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、自車両と他車両との間で情報を送受信する車車間通信装置を設け、自車両が進入する交差点を特定する交差点特定手段と、この交差点特定手段により特定された交差点に接近する他車両を前記車車間通信装置により取得した他車両の情報から特定する他車両特定手段とを備えた制御装置を設けた運転支援装置において、前記制御装置は、前記他車両特定手段により特定された他車両のウインカ情報と経路誘導情報とを取得し、前記他車両特定手段により特定された他車両のウインカ情報が指し示す進行方向と経路誘導情報が指し示す進行方向とを比較して、ウインカ情報は直進を指し示しているが、経路誘導情報は右折又は左折を指し示す場合に、前記他車両特定手段により特定された他車両と自車両とが前記交差点特定手段により特定された交差点において衝突する可能性があると判定する衝突可能性判定手段を備え、この衝突可能性判定手段により他車両と自車両とが衝突する可能性があると判定された時に自車両の運転者に警告するために警告手段を作動制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の運転支援装置は、他車両の運転者がウインカを出し忘れていても、他車両の経路誘導情報から衝突可能性を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は運転支援制御のフローチャートである。(実施例1)
【図2】図2は運転支援状態を説明する図である。(実施例1)
【図3】図3は車両に搭載された運転支援装置のシステム構成図である。(実施例1)
【図4】図4は車両に搭載された運転支援装置のシステム構成図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明は、他車両の運転者がウインカを出し忘れていても、他車両の経路誘導情報から衝突可能性を判定する目的を、ウインカ情報は直進を指し示しているが、経路誘導情報は右折又は左折を指し示す場合に、特定された他車両と自車両とが特定された交差点において衝突する可能性があると判定して実現するものである。
【実施例1】
【0011】
図1〜図3は、この発明の実施例1を示すものである。
図3において、1は車両である。この車両1は、この実施例1では、二輪車としているが、四輪車でも適用可能である。
この車両1には、運転支援装置2が搭載される。
この運転支援装置2は、車車間通信若しくは路車間通信等の通信が可能な通信システムであり、車車間通信装置3と制御装置4と車両信号入力装置5と情報提供装置6とGPS受信装置7とを備える。
車車間通信装置3は、自車両と他車両との間で情報を送受信、つまり、周囲車両である他車両の情報を受信して制御装置4に出力し、且つ自車両の情報を周囲車両の他車両に送信するものである。
制御装置4は、車車間通信装置3と車両信号入力装置5と情報提供装置6とGPS受信装置(ナビゲーションシステムを搭載した車両の場合は、そのナビゲーションシステムの受信部とする)7とに連絡し、情報の送受信をさせるために車車間通信装置3を作動制御したり、運転者への表示や警告をするために情報提供装置6を作動制御する。
車両信号入力装置5は、車両状態を検知するように、車速を検知する車速センサ8と、ブレーキ状態を検知するブレーキセンサ9と、スロットル開度を検知するスロットルセンサ10と、ウインカスイッチとしての左ウインカスイッチ11及び右ウインカスイッチ12とに連絡し、これらセンサ類からの各種車両操作信号を入力し、これら各種車両操作信号を制御装置4に出力する。これにより、対象となる他車両のウインカ情報を車車間通信により入手して、対象となる他車両の運転者が意図している他車両の進路変更も確認させることができる。
情報提供装置6は、表示装置(ナビゲーションシステムを搭載した車両の場合は、そのナビゲーションシステムのディスプレイとする)13と、運転者への警報手段としてのスピーカ14とを備え、制御装置4に他車両の経路誘導情報を出力する一方、制御装置4からの指示信号に従って、運転者に対して、表示装置13で他車両の情報を提供したり、スピーカ14を作動制御して音声によって情報提供、つまり、衝突可能性の判定の結果に基づいて情報提供することにより、運転者に適切な注意を促すことができるものである。表示装置13は、周囲車両である他車両の車車間通信装置3から得た経路誘導情報を制御装置4に出力して、制御装置4で対象となる他車両の進路予測を可能とさせるものである。
GPS受信装置7は、衛星装置からのGPS信号を受信して制御装置4に出力するものである。
【0012】
制御装置4は、各種情報を処理する情報処理部15を備えている。この情報処理部15は、受信した情報から対象となる他車両を抽出し、衝突可能性の判定を行うものであり、ウインカ情報と経路誘導情報を比較判定し、対象となる他車両の進路を予測することで、より信頼性の高い衝突可能性の判定をするものである。
このため、情報処理部15には、自車両が進入する交差点を特定する交差点特定手段15Aと、この交差点特定手段15Aにより特定された交差点に接近する他車両を車車間通信装置3により取得した他車両の情報から特定する他車両特定手段15Bとを備えている。
また、制御装置4は、他車両特定手段15Bにより特定された他車両のウインカ情報と経路誘導情報とを取得し、他車両特定手段15Bにより特定された他車両のウインカ情報が指し示す進行方向と経路誘導情報が指し示す進行方向とを比較して、ウインカ情報は直進を指し示しているが、経路誘導情報は右折又は左折を指し示す場合に、他車両特定手段15Bにより特定された他車両と自車両とが交差点特定手段15Aにより特定された交差点において衝突する可能性があると判定する衝突可能性判定手段15Cを備え、この衝突可能性判定手段15Cにより他車両と自車両とが衝突する可能性があると判定された時に自車両の運転者に警告するために警告手段であるスピーカ14や表示装置13を作動制御したり、表示装置13にその旨を表示させる。
また、制御装置4は、ウインカ情報は直進を指し示しているが、経路誘導情報は右折又は左折を指し示す場合と、ウインカ情報は右折又は左折を指し示しているが、経路誘導情報は直進を指し示す場合とで、警告の内容を変更するように、警告手段であるスピーカ14や表示装置13を作動制御する。
【0013】
次に、この実施例1に係る運転支援制御について、図1のフローチャートに基づいて説明する。
図1に示すように、制御装置4のプログラムがスタートすると(ステップA01)、車車間通信装置3により周囲車両である他車両の情報を取得し(ステップA02)、自車両が進入する交差点を対象となる交差点とし、この対象となる交差点に接近する他車両があるか否かを判断する(ステップA03)。
この場合、自車両が進入する交差点は、自車両の進行方向に交差点が存在するか否かで特定することができる。また、交差点の有無は、表示装置13の地図情報により得られる。更に、他車両が対象となる交差点に接近するかどうかは、車車間通信装置3により取得した他車両の位置と進行方向、表示装置13の地図情報により得られる交差点の位置により判断される。
このステップA03がYESの場合には、対象となる他車両のウインカ情報(右折、左折、前進)を取得し(ステップA04)、さらに、対象となる他車両の経路誘導情報(右折、左折、前進)を取得し(ステップA05)、ウインカ情報と経路誘導情報とが一致するか否かを判断する(ステップA06)。
このステップA06がYESの場合には、ウインカ情報の通りで、このウインカ情報に基づいて走行し、衝突の可能性があるか否かを判断し(衝突可能性の判定処理)(ステップA07)、このステップA07がYESの場合には、情報提供装置6により「接近車両に注意する」旨の注意喚起の情報提供を行う(ステップA08)。
一方、前記ステップA06がNOの場合には、ウインカの出し忘れかどうかを判定するために、ウインカ情報は前進(ウインカの出し忘れ)か否かを判断し(ステップA09)、このステップA09がNOの場合には、前記ステップA07に移行する。
このステップA09がYESの場合には、ウインカが出ていなく直進なので、経路誘導情報の通りで、この経路誘導情報に基づいての走行であり、そして、衝突の可能性があるか否かを判断し(衝突可能性の判定処理)(ステップA10)、このステップA10がYESの場合には、ウインカを出さずに進路変更しようとしており、情報提供装置6により「他車両が接近してくる可能性がある」旨の注意喚起の情報提供を行う(ステップA11)。
このステップA11における注意喚起の情報提供においては、前記ステップA08における注意喚起の情報提供とは異なる表示装置13への表示やスピーカ14での音声を情報提供装置6で変更し、運転者、特に、二輪車の運転者にウインカを出さずに進路変更してくる他車両があることを伝えることができる。
前記ステップA08の処理後、又は、前記ステップA11の処理後は、プログラムをリターンする(ステップA12)。
また、前記ステップA03がNOの場合、前記ステップA07がNOの場合、そして、前記ステップA10がNOの場合にも、プログラムをリターンする(ステップA12)。
【0014】
この結果、この実施例1においては、図2に示すように、表示装置13の経路誘導情報に従わず、うっかり忘れたり、見知らぬ道路であわてたりして、ウインカを出さずに左折又は右折してしまう他車両A・Bがある場合に、この他車両A・Bの車車間通信装置が、他車両A・Bのウインカ情報と表示装置13の経路誘導情報とを周囲の車両に送信していることで、この車車間通信装置からの情報を受け取った自車両Cでは、ウインカを出していない他車両A・Bが左折又は右折すると判断して、「左折車/対向右折車に注意」又は「他車両の接近の可能性がある」旨の情報提供を運転者に行うものである。
従って、車車間通信により得られる他車両のウインカ情報と経路誘導情報とを比較して、他車両の進行方向を予測することにより、他車両の運転者がウインカを出し忘れていても経路誘導情報から衝突可能性を判定することができる。
また、制御装置4は、ウインカ情報は直進を指し示しているが、経路誘導情報は右折又は左折を指し示す場合と、ウインカ情報は右折又は左折を指し示しているが、経路誘導情報は直進を指し示す場合とで、警告の内容を変更するように警告手段であるスピーカ14や表示装置13を作動制御することから、他車両の運転者が誘導経路どおりに走行しないことも十分ありえるので、警告の内容を変えることにより、自車両の運転者に適切に情報を提供することができる。
【実施例2】
【0015】
図4は、この発明の実施例2を示すものである。
この実施例2においては、上述した実施例1と同一機能を果たす箇所には、同一符号を付して説明する。
この実施例2の特徴とするところは、以下の点にある。即ち、図4に示すように、車両1に搭載された運転支援装置2において、車車間通信装置3の他に、路車間通信装置16を追加して設けた。
この路車間通信装置16は、自車両と路上機17との間で情報を送受信し、その情報を制御装置4に出力するものである。また、制御装置4は、路車間通信装置16により他車両の情報を取得する。つまり、通信手段は車車間通信に限定することなく、路車間通信を利用した「車両→路側インフラ→車両」という通信手段を利用する。
この場合、自車両が進入する交差点は、自車両の進行方向に交差点が存在するか否かで特定することができる。また、交差点の有無は、表示装置13の地図情報、あるいは路車間通信装置16により得られる。更に、他車両が対象となる交差点に接近するかどうかは、車車間通信装置3により取得した他車両の位置と進行方向、表示装置13の地図情報、あるいは路車間通信装置16により得られる交差点の位置により判断される。
これにより、電波遮蔽物等のために車車間通信できない場合でも、路車間通信により他車両の情報を取得することができる。また、路車間通信によって得られる情報と車車間通信によって得られる情報とを併用することにより、信頼性を向上することができる。つまり、路側インフラが設置されている場所に限定されるが、電波遮蔽物等により車車間通信の送受信が不良な場合の補助手段としたり、車車間通信の情報と併用することで信頼性を向上させたりすることができる。また、路車間通信により道路形状、車線の区別といった情報が利用可能になれば、右折専用レーン/左折専用レーンも識別できるので、経路誘導情報がなくても対象車両の進路予測が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
この発明に係る運転支援装置を、各種車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0017】
1 車両
2 運転支援装置
3 車車間通信装置
4 制御装置
5 車両信号入力装置
6 情報提供装置
7 GPS受信装置
13 表示装置
14 スピーカ
15 情報処理部
15A 交差点特定手段
15B 他車両特定手段
15C 衝突可能性判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両と他車両との間で情報を送受信する車車間通信装置を設け、自車両が進入する交差点を特定する交差点特定手段と、この交差点特定手段により特定された交差点に接近する他車両を前記車車間通信装置により取得した他車両の情報から特定する他車両特定手段とを備えた制御装置を設けた運転支援装置において、前記制御装置は、前記他車両特定手段により特定された他車両のウインカ情報と経路誘導情報とを取得し、前記他車両特定手段により特定された他車両のウインカ情報が指し示す進行方向と経路誘導情報が指し示す進行方向とを比較して、ウインカ情報は直進を指し示しているが、経路誘導情報は右折又は左折を指し示す場合に、前記他車両特定手段により特定された他車両と自車両とが前記交差点特定手段により特定された交差点において衝突する可能性があると判定する衝突可能性判定手段を備え、この衝突可能性判定手段により他車両と自車両とが衝突する可能性があると判定された時に自車両の運転者に警告するために警告手段を作動制御することを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記制御装置は、ウインカ情報は直進を指し示しているが、経路誘導情報は右折又は左折を指し示す場合と、ウインカ情報は右折又は左折を指し示しているが、経路誘導情報は直進を指し示す場合とで、運転者への警告の内容を変更するように前記警告手段を作動制御することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
自車両と路上機との間で情報を送受信する路車間通信装置を設け、前記制御装置は、前記路車間通信装置により他車両の情報を取得することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−180689(P2011−180689A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42366(P2010−42366)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】