説明

運転支援装置

【課題】より適切に減速操作の案内を行うようにする。
【解決手段】搭載車両の走行先に存在する信号機より手前に設置された光ビーコン51から送信される情報を受信して搭載車両が走行先に存在する信号機の手前で停車する際の搭載車両の停車位置を推定し(S116)、予め定められた基準値以下の減速度で、推定した停車位置に搭載車両を停止させるための減速操作を開始すべき減速操作開始位置を特定し(S120、S122)、搭載車両が減速操作開始位置に到達する前に、運転者に減速操作の開始を促す案内を行う(S132)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搭載車両の運転者に運転操作についての案内を行う運転支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、路側に配置された運転支援装置が、信号機手前の所定地点を通過した通過車両の車両状態量を取得し、この車両状態量と通行車両が向かう信号機の信号情報とに基づいて、通過車両の後続車両の停止位置を決定するとともに、決定した後続車両の停止位置を送信するようになっており、後続車両に搭載された車載運転支援装置は、この後続車両の停止位置を受信すると、後続車両の停止位置に応じて運転支援のタイミングを変更するようにした運転支援システムがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−25902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された運転支援システムでは、車載運転支援装置により、信号待ちの先行車両を考慮して運転支援情報の提供タイミングが決定され、適切な位置で停止できるように運転支援情報が提供されるようになっているが、この運転支援情報に従って減速操作を行ったとしても、必ずしも緩やかな減速度で車両を停車位置に停止させることができるとは限らないといった問題がある。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みたもので、より適切に減速操作の案内を行うようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、搭載車両の運転者に運転操作についての案内を行う運転支援装置であって、路側に設置された無線送信機と通信する通信手段と、通信手段を介して無線送信機から搭載車両が走行先に存在する信号機の手前で停車する際の停車位置を推定するための情報を取得する情報取得手段と、情報取得手段により取得された情報を用いて搭載車両が走行先に存在する信号機の手前で停車する際の搭載車両の停車位置を推定する停車位置推定手段と、予め定められた基準値以下の減速度で、停車位置推定手段により推定された停車位置に搭載車両を停止させるための減速操作を開始すべき減速操作開始位置を特定する減速操作開始位置特定手段と、搭載車両が減速操作開始位置に到達する前に、運転者に減速操作の開始を促す案内を行う案内手段と、を備えたことを特徴としている。
【0007】
このような構成によれば、搭載車両が走行先に存在する信号機の手前で停車する際の搭載車両の停車位置を推定し、予め定められた基準値以下の減速度で、推定した停車位置に搭載車両を停止させるための減速操作を開始すべき減速操作開始位置を特定し、搭載車両が減速操作開始位置に到達する前に、運転者に減速操作の開始を促す案内が行われるので、より適切に減速操作の案内を行うことができる。
【0008】
なお、請求項2に記載の発明のように、減速操作開始位置特定手段は、予め定められた基準値以下の減速度で、停車位置推定手段により推定された停車位置に搭載車両を停止させるために必要な減速距離を算出する減速距離算出手段を備え、停車位置推定手段により推定された停車位置より減速距離分手前の位置を減速操作開始位置として特定することができる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、搭載車両が走行先に存在する信号機の手前で停車する際の停車位置を推定するための情報には、信号機の切替タイミング、無線送信機から信号機の停止位置を示す停止線までの距離、通行車両の平均速度および無線送信機の設置位置を通過した先行車両の通過時刻が含まれており、停車位置推定手段は、搭載車両が走行先に存在する信号機の手前で停車する際の停車位置を推定するための情報を用いて搭載車両が走行先に存在する信号機の手前で停車する際に搭載車両の前に停車する先行車両の台数を推定し、搭載車両の前に停車する先行車両の台数に応じて搭載車両の停止位置を手前に移動させるように搭載車両の停止位置を推定することを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、搭載車両が走行先に存在する信号機の手前で停車する際に搭載車両の前に停車する先行車両の台数を推定し、搭載車両の前に停車する先行車両の台数に応じて搭載車両の停止位置を手前に移動させるように搭載車両の停止位置が推定されるので、搭載車両の前に停車する先行車両があっても、緩やかな減速操作で搭載車両を停止位置に停車させることが可能である。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、搭載車両は、走行用の動力源としてモータを使用する車両であって、減速操作開始位置特定手段は、モータの回生損失が発生しないように規定された減速度で、停車位置推定手段により推定された停車位置に搭載車両を停止させるための減速操作を開始すべき減速操作開始位置を特定することを特徴としている。
【0012】
このような構成によれば、モータの回生損失が発生しないように規定された減速度で、推定した停車位置に搭載車両を停止させるための減速操作を開始すべき減速操作開始位置が特定されるので、モータの回生損失が発生しないような減速操作で搭載車両を停車位置に停車させることが可能であり、走行用の動力源で消費されるエネルギーの低減を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る運転支援装置を搭載した車両の概略構成を示す図である。
【図2】ナビゲーションECUの構成を示す図である。
【図3】路側の機器構成を示す図である。
【図4】通行車両の平均車速の算出について説明するための図である。
【図5】ナビゲーションECUのフローチャートである。
【図6】先行車両の前方交差点停止線地点での信号機の状態の推定について説明するための図である。
【図7】搭載車両Cと同じ赤信号で先行車両A、Bが停車すると推定した場合の搭載車両Cの停止位置の特定について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係る運転支援装置を搭載した車両の概略構成を図1に概略的に示す。本実施形態における運転支援装置は、走行用の動力源としてエンジンおよびモータを用いるハイブリッド車両に搭載され、搭載車両の運転者に運転操作についての案内等を行う。ハイブリッド車両には、エンジン1、発電機2、モータ3、差動装置4、タイヤ5a、5b、インバータ6、DCリンク7、インバータ8、バッテリ9、HV制御部10、GPS受信機11、方位センサ12、車速センサ13、地図DB記憶部14、勾配センサ15、操作部16、光ビーコン送受信機17、表示部18、スピーカ19およびナビゲーションECU20が搭載されている。
【0015】
このハイブリッド車両は、エンジン1およびモータ3を走行用の動力源とし、アクセル操作に応じて複数の走行モードを切り替えて走行する。エンジン1を動力源とする場合は、エンジン1の回転力が、図示しないクラッチ機構および差動装置4を介してタイヤ5a、5bに伝わる。また、モータ3を動力源とする場合は、バッテリ9の直流電力がDCリンク7およびインバータ8を介して交流電力に変換され、その交流電力によってモータ3が作動し、このモータ3の回転力が、差動装置4を介してタイヤ5a、5bに伝わる。以下、エンジン1のみを動力源とする走行のモードをエンジン走行モード、モータ3のみを動力源とする走行のモードをモータ走行モード、エンジン1とモータ3を動力源とする走行のモードをハイブリッド走行モードという。ただし、以下、ハイブリッド走行モードとエンジン走行モードを含めてハイブリッド走行モードという。
【0016】
また、エンジン1の回転力は発電機2にも伝えられ、その回転力によって発電機2が交流電力を生成し、生成された交流電力はインバータ6、DCリンク7を介して直流電力に変換され、その直流電力がバッテリ9に蓄積される。このようなバッテリ9への充電は、燃料を使用したエンジン1の作動による充電である。以下、この種の充電を、内燃充電という。
【0017】
また、図示しない制動機構によりハイブリッド車両が減速すると、その減速時の抵抗力がモータ3に回転力として加わり、この回転力によってモータ3が交流電力を生成し、生成された交流電力がインバータ8、DCリンク7を介して直流電力に変換され、その直流電力がバッテリ9に蓄積される。以下、この種の充電を、回生充電という。
【0018】
なお、回生充電により時間当たりに回収できるエネルギー量には限界があるため、減速度が大きいと回生充電によるエネルギー回収が十分に行われず、エネルギーの損失が発生する。したがって、回生充電によるエネルギー回収を有効に行うためには、ある程度緩やかな減速操作が必要とされる。
【0019】
HV制御部10は、ナビゲーションECU20からの指令等に応じて、発電機2、モータ3、インバータ6、インバータ8、バッテリ9の上述のような作動の実行・非実行等を制御する。HV制御部10は、例えばマイクロコンピュータを用いて実現してもよいし、下記のような機能を実現するための専用の回路構成を有するハードウェアであってもよい。
【0020】
より具体的には、HV制御部10は、アクセル開度、バッテリ9のバッテリ充電量、バッテリ9の温度等に基づいて、動力源の異なる複数の走行モード(モータ走行モード、ハイブリッド走行モード)の切り替えを繰り返し行う。
【0021】
GPS受信機11、方位センサ12および車速センサ13は、それぞれハイブリッド車両の位置、進行方向、走行速度を特定する周知のセンサである。
【0022】
地図DB記憶部14は、地図データを記憶する記憶媒体である。地図データは、複数の交差点のそれぞれに対応するノードデータ、および、交差点と交差点を結ぶ道路区間すなわちリンクのそれぞれに対応するリンクデータを有している。1つのノードデータは、当該ノードの識別番号、所在位置情報、種別情報を含む。また、1つのリンクデータは、当該リンクの識別番号(以下、リンクIDという)、位置情報、種別情報等を含んでいる。
【0023】
ここで、リンクの位置情報には、当該リンクが含む形状補完点の所在位置データ、および、当該リンクの両端のノードおよび形状補完点のうち隣り合う2つを繋ぐセグメントのデータを含んでいる。各セグメントのデータは、当該セグメントのセグメントID、当該セグメントの勾配、向き、長さ等の情報を有している。
【0024】
勾配センサ15は、車両のピッチ方向、ヨー方向、ロール方向の方位変化量を検出するジャイロセンサによって構成されている。このジャイロセンサによって検出されるピッチ方向の方位変化量から道路の勾配を算出することが可能となっている。
【0025】
操作部16は、表示部18に設けられたディスプレイの周囲に配置されたメカニカルスイッチ、表示部18に設けられたディスプレイの前面に設けられたタッチスイッチ等を有し、乗員のスイッチ操作に応じた信号をナビゲーションECU20へ出力する。
【0026】
光ビーコン送受信機17は、VICS情報等を送信する光ビーコンとの間で無線通信を行うためのものである。
【0027】
表示部18は、液晶等のディスプレイを有し、このディスプレイにナビゲーションECU20より入力される映像信号に応じた映像を表示させる。
【0028】
スピーカ19は、ナビゲーションECU20より入力される音声信号に応じた音声を出力するためのものである。
【0029】
図2に示す様に、ナビゲーションECU20は、RAM21、ROM22、データ書き込み可能な耐久記憶媒体23、および制御部24を有している。耐久記憶媒体とは、ナビゲーションECU20の主電源の供給が停止してもデータを保持し続けることができる記憶媒体をいう。耐久記憶媒体23としては、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリ、EEPROM等の不揮発性記憶媒体、および、バックアップRAMがある。
【0030】
制御部24は、ROM22または耐久記憶媒体23から読み出したプログラムを実行し、その実行の際にはRAM21、ROM22、および耐久記憶媒体23から情報を読み出し、RAM21および耐久記憶媒体23に対して情報の書き込みを行い、HV制御部10、GPS受信機11、方位センサ12、車速センサ13、地図DB記憶部14、勾配センサ15等と信号の授受を行う。なお、制御部24は、GPS受信機11、方位センサ12および車速センサ13から取得した現在位置を特定するための情報に基づいて、現在位置を特定する現在位置特定処理等を実施する。
【0031】
また、図2に示すように、制御部24は、マップマッチング処理25、経路算出処理26、ナビゲーション処理27等の処理を、所定のプログラムを実行することで実現する。
【0032】
本ハイブリッド車両に搭載されているナビゲーションECU20には、光ビーコン送受信機17が接続されており、光ビーコン送受信機17を介して路上に設置された光ビーコンよりVICS情報等を受信することが可能となっている。
【0033】
図3に、路側の機器構成を示す。この図には、ハイブリッド車両30と、交差点Jに設置された信号機40と、この信号機40を制御する信号制御装置41と、この信号制御装置41に接続された光ビーコン制御装置50と、この光ビーコン制御装置50に接続された光ビーコン51が示されている。なお、光ビーコン51は、交差点Jより1つ手前の交差点から交差点Jへと向かう道路上に設置されている。また、図3には、光ビーコン制御装置50に1台の光ビーコン51が接続された構成が示されているが、実際には、各交差点に設置された多数の光ビーコン51が接続されている。
【0034】
本実施形態における光ビーコン制御装置50は、VICS情報とともに、以下に示す(1)〜(4)の情報を、光ビーコン51を介して通行車両に送信する。なお、(1)〜(4)の情報は、搭載車両が走行先に存在する信号機の手前で停車する際の停車位置を推定するための情報である。
(1)信号機の切替タイミング、(2)光ビーコン51から前方交差点の停止線までの距離、(3)通行車両の平均車速、(4)光ビーコン51の設置位置を通過した先行車両の通過時刻。
(1)信号機の切替タイミングについて
信号制御装置41は、予め設定された切替タイミングで信号機40を制御する。信号機40は、信号制御装置41の制御により青信号、黄信号、赤信号、矢印信号等の各ランプを点灯させるようになっている。なお、本実施形態では、説明を簡略化するため、矢印信号を備えていない信号機を例に説明する。
【0035】
本実施形態における光ビーコン制御装置50は、信号制御装置41より切替タイミングを特定するための切替タイミング情報を取得可能となっている。切替タイミング情報には、信号の切り替わり時刻を特定するための切替時刻特定情報(例えば、次回、赤信号から青信号に切り替わる時刻を示す情報)と、信号機の切替周期を示す切替周期情報が含まれる。なお、切替周期は、例えば、赤信号から青信号に変化したときから、黄信号、赤信号となった後、再度、青信号に変化するまでの期間のことをいう。
(2)光ビーコン51から前方交差点の信号機の停止位置を示す停止線までの距離について
本実施形態における光ビーコン制御装置50は、光ビーコン51から前方交差点の信号機の停止位置を示す停止線までの距離を記憶媒体に記憶している。
(3)平均車速について
本実施形態における光ビーコン制御装置50は、図4に示すように、2つの光ビーコン51間の距離と、同一車両が2つの光ビーコン51間を通過するのに要した旅行時間に基づいて、その区間の平均車速を算出するようになっている。なお、光ビーコン制御装置50は、2つの光ビーコン51間の距離を記憶媒体に記憶している。ここで、平均車速は、2つの光ビーコン51間の距離を、同一車両が2つの光ビーコン51間を通過するのに要した時間で除算して求めた車速を平均化することにより算出することができる。なお、車両が途中で赤信号により停車すると、2つの光ビーコン51間を通過するのに要した旅行時間が長くなってしまうため、切替タイミング情報に基づいて車両が赤信号で停車したと推定される車両を除外して車速を収集し、平均車速を算出するようにしている。
(4)光ビーコン51の設置位置を通過した先行車両の通過時刻
本実施形態における光ビーコン制御装置50は、光ビーコン51の下方のレーンを通過する車両の有無を検出する検出センサ(図示せず)を備え、この検出センサを用いて一定期間内に光ビーコン51の下方のレーンを通過した先行車両の通過時刻を収集する処理を行う。具体的には、信号機の切替周期(例えば、3分)内に光ビーコン51の下方のレーンを通過した車両の通過時刻を収集し、収集した各車両の通過時刻を光ビーコン51を介して送信する。なお、複数のレーンが設けられている場合には、レーン毎に光ビーコン51の設置位置を通過した先行車両の通過時刻を収集する。
【0036】
ナビゲーションECU20は、(1)〜(4)の情報に基づいて搭載車両とともに信号機の手前で停車する先行車両の台数を特定し、先行車両による影響を考慮した搭載車両の停車位置を推定するとともに、この搭載車両の停車位置に、モータ3による回生充電の回収損失が発生しないように停車するための減速操作開始地点を推定し、この減速操作開始地点の手前で減速操作が行われるように、乗員に報知する処理を実施する。
【0037】
図5に、この処理のフローチャートを示す。車両のイグニッションスイッチがオン状態になると、本運転支援装置は動作状態となり、ナビゲーションECU20は、図5に示す処理を開始する。
【0038】
まず、光ビーコン51より送信される情報を受信したか否かを判定する(S100)。なお、光ビーコン51より送信される情報には、VICS情報と、上記した(1)〜(4)の情報がある。
【0039】
ここで、光ビーコン送受信機17を介して光ビーコン51より送信される情報が受信されない場合、S100の判定を繰り返し実施する。
【0040】
そして、搭載車両が光ビーコン51の下のレーンを通過し、光ビーコン51より送信された情報を受信すると、S100の判定はYESとなり、光ビーコン51より送信された情報をRAM21に記憶させる(S102)。
【0041】
次に、光ビーコン51より送信された情報に、(1)〜(4)の情報が含まれているか否かを判定する(S104)。
【0042】
ここで、光ビーコン51より送信された情報に、(1)〜(4)の情報が含まれていない場合、S104の判定はNOとなり、S100へ戻る。また、光ビーコン51より送信された情報に、(1)〜(4)の情報が含まれている場合には、S104の判定はYESとなり、次に、(1)〜(3)の情報を用いて搭載車両が前方交差点の停止線地点での信号機の状態を推定する(S106)。
【0043】
ここで、図6を参照して、先行車両の前方交差点停止線地点での信号機の状態の推定について説明する。図6において、横軸は時刻、縦軸は光ビーコン51から交差点停止線位置までの距離を表している。矢印Cは、搭載車両の位置と時刻の関係を示している。また、図6には、信号機の切替タイミングも示されている。なお、図6において、黄信号は省略してある。
【0044】
まず、光ビーコン51から前方交差点の停止線までの距離を平均車速で除算することにより搭載車両が前方交差点の停止線に到達するまでの時間を算出する。次に、この搭載車両が前方交差点の停止線に到達するまでの時間に現在時刻を加算して搭載車両が前方交差点の停止線に到達する時刻を算出する。次に、切替タイミング情報に含まれる切替時刻特定情報と切替周期情報から、搭載車両が前方交差点の停止線までの時刻における信号機の状態を推定する。
【0045】
なお、搭載車両の車速が平均車速よりも大きく異なる場合には、交通流に大きな影響を与える要因が発生したと考えられるため、平均車速を搭載車両の車速に置き換えて搭載車両が前方交差点の停止線までの時刻における信号機の状態を推定する。
【0046】
次に、推定した信号機の状態が赤信号か否かを判定する(S108)。ここで、推定した信号機の状態が黄信号または青信号の場合、S108の判定はNOとなり、S100へ戻る。また、推定した信号機の状態が赤信号の場合には、S108の判定はYESとなり、次に、地図DB記憶部14より地図データを取得して搭載車両の位置から停止線までの走行路番号を求める(S110)。具体的には、搭載車両の現在位置から停止線までの道路に付与されたリンクIDを特定する。
【0047】
次に、(1)〜(4)の情報を用いて先行車両の前方交差点停止線地点での信号機の状態を推定する(S112)。
【0048】
図6において、矢印X、A、Bは、先行車両の位置と時刻の関係を示している。矢印Cで示されている搭載車両の直前の先行車両は矢印B、この矢印Bで示されている先行車両の直前の先行車両は矢印A、この矢印Aで示されている先行車両の直前の先行車両は矢印Xとして示されている。
【0049】
ここでは、信号機の切替周期内にレーンを通過した各車両の通過時刻を表す情報を用いて矢印X、A、Bにより示される各先行車両が前方交差点の停止線に到達する際の信号機の状態を推定する。
【0050】
具体的には、光ビーコン51から前方交差点の停止線までの距離を平均車速で除算することにより各先行車両が前方交差点の停止線に到達するまでの時間を算出する。次に、この各先行車両が前方交差点の停止線に到達するまでの時間に、信号機の切替周期内にレーンを通過した各車両の通過時刻を加算して各先行車両が前方交差点の停止線に到達する時刻を算出する。次に、切替タイミング情報に含まれる切替時刻特定情報と切替周期情報から、各先行車両が前方交差点の停止線に到達する時刻における信号機の状態を推定する。
【0051】
次に、自車両と同じ赤信号で停止すると推測される先行車両の台数を特定する(S114)。具体的には、各先行車両と搭載車両が前方交差点の停止線に到達する時刻における信号機の状態に基づいて自車両と同じ赤信号で停止すると推測される先行車両の台数を特定する。図6では、矢印Xで示される先行車両は、前方交差点の停止線に到達する時刻における信号機の状態は青信号となるため、搭載車両と同じ赤信号で停車することにはならないが、矢印A、Bで示される先行車両は、矢印Cで示される搭載車両とともに、前方交差点の停止線に到達する時刻における信号機の状態は赤信号となるため、搭載車両と同じ赤信号で停車することになる。
【0052】
次に、同じ赤信号で停車する先行車両の台数を考慮した搭載車両の停止位置を推定する(S116)。ここで、同じ赤信号で停車する先行車両の台数をN、予め定められた車両長をL1、停止間隔をL2とすると、同じ赤信号で停車する先行車両の台数Nを考慮した搭載車両の停止位置は、前方交差点の停止線の位置よりN×(L1+L2)分だけ手前の位置として推定することができる。図7に示すように、搭載車両Cと同じ赤信号で先行車両A、Bが停車すると推定した場合、搭載車両Cの停止位置は図中に示す位置となる。
【0053】
次に、緩やかな減速操作をした場合の減速距離を特定する(S120)。具体的には、モータ3の回生損失が発生しないように規定された減速度で搭載車両が停車するために必要とされる減速距離を特定する。ここで、車両重量をm、搭載車両の車速をv、モータ3の回生損失が発生しないように規定された減速度をa、減速距離をxとすると、m×a×x=(1/2)×m×vの関係が成立する。従って、減速距離x=v/(2×a)として算出することができる。なお、本実施形態においては、運転者によるブレーキ操作がモータ3の回生損失が発生しなくなる減速度の限界値よりも多少緩くても搭載車両を停車位置に停止させることが可能となるように、減速度aを、モータ3の回生損失が発生しなくなる減速度の限界値よりも一定量小さな値として規定している。
【0054】
次に、同じ赤信号で停車する先行車両の台数を考慮した搭載車両の停止位置と、上記減速距離に基づいて減速操作開始位置を特定する(S122)。具体的には、同じ赤信号で停車する先行車両の台数を考慮した搭載車両の停止位置より、上記減速距離分手前の位置を減速操作開始位置として特定する。この減速操作開始位置で緩やかな減速操作を開始することで、モータ3による回生充電の回収損失が発生しないように停車することが可能となる。
【0055】
次に、減速アドバイス提供位置を特定する(S124)。運転者が減速操作開始位置で減速操作を開始するためには、減速操作開始位置より手前で減速アドバイスの提供を行う必要がある。本実施形態では、運転者がある程度余裕を持って減速操作を行うことができるよう、減速操作開始位置より一定距離(例えば、20メートル)手前の位置を減速アドバイス提供位置として特定する。
【0056】
次に、地図DB記憶部14より地図データを取得して現在の走行路番号の検出を行う(S126)。具体的には、搭載車両が位置する道路に付与されたリンクIDを特定する。
【0057】
次に、搭載車両が走行路を逸脱したか否かを判定する(S128)。具体的には、搭載車両が位置する走行路番号が、S110にて求めた走行路番号と一致するか否かに基づいて搭載車両が走行路を逸脱したか否かを判定する。
【0058】
ここで、搭載車両が走行路を逸脱していない場合、S128の判定はNOとなり、次に、搭載車両の位置が減速アドバイス提供位置へ到達したか否かに基づいて減速アドバイス提供位置を通過したか否かを判定する(S130)。
【0059】
ここで、搭載車両の位置が減速アドバイス提供位置へ到達していない場合、S130の判定はNOとなり、S126へ戻る。そして、搭載車両の位置が減速アドバイス提供位置へ到達すると、S130の判定はYESとなり、減速操作アドバイスを提示する(S132)。具体的には、緩やかなブレーキ操作の開始を促すメッセージを表示部18に表示させるとともに、緩やかなブレーキ操作の開始を促すメッセージをスピーカ19より音声出力させる。なお、このときに、同じ赤信号で停車すると推定される先行車両の数を案内するようにしてもよい。
【0060】
なお、搭載車両が減速アドバイス提供位置へ到達する前に走行路を逸脱した場合、S128の判定はNOとなり、減速操作アドバイスを提示することなく、S100へ戻る。したがって、減速操作アドバイスの提示は行われない。
【0061】
上記した構成によれば、搭載車両が走行先に存在する信号機の手前で停車する際の搭載車両の停車位置を推定し、予め定められた基準値以下の減速度で、推定した停車位置に搭載車両を停止させるための減速操作を開始すべき減速操作開始位置を特定し、搭載車両が減速操作開始位置に到達する前に、運転者に減速操作の開始を促す案内が行われるので、より適切に減速操作の案内を行うことができる。
【0062】
具体的には、予め定められた基準値以下の減速度で、推定した停車位置に搭載車両を停止させるために必要な減速距離を算出し、推定された停車位置より減速距離分手前の位置を減速操作開始位置として特定することができる。
【0063】
また、搭載車両が走行先に存在する信号機の手前で停車する際に搭載車両の前に停車する先行車両の台数を推定し、搭載車両の前に停車する先行車両の台数に応じて搭載車両の停止位置を手前に移動させるように搭載車両の停止位置が推定されるので、搭載車両の前に停車する先行車両があっても、緩やかな減速操作で搭載車両を停止位置に停車させることが可能である。
【0064】
また、モータ3の回生損失が発生しないように規定された減速度で、推定した停車位置に搭載車両を停止させるための減速操作を開始すべき減速操作開始位置が特定されるので、モータ3の回生損失が発生しないような減速操作で搭載車両を停車位置に停車させることが可能であり、走行用の動力源で消費されるエネルギーの低減を図ることが可能である。
【0065】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々なる形態で実施することができる。
【0066】
例えば、上記実施形態では、搭載車両をハイブリッド車両とし、S120にて、モータ3の回生損失が発生しないように定められた減速度をaとして減速距離xを算出し、S122にて、この減速距離xと同じ赤信号で停車する先行車両の台数を考慮した搭載車両の停止位置とに基づいて減速操作開始位置を特定したが、例えば、搭載車両を電気自動車としてもよい。また、搭載車両をガソリン車両として、搭載車両が予め定められた基準値以下の減速度、すなわち緩やかな減速度で、予め推定した停車位置に停止するための減速操作を開始すべき減速操作開始位置を特定するようにしてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、S116にて、先行車両の車種と関係なく、同じ赤信号で停止する先行車両の台数を考慮した搭載車両の停止位置を推定したが、例えば、光ビーコン51を介して先行車両の車種を特定するための情報を取得するように構成し、先行車両の車種と先行車両の台数に応じて同じ赤信号で停止する際の搭載車両の停止位置を移動させるようにしてもよい。この場合、軽自動車、小型車、中型車、大型車、トラック、バス等の車種に応じて車両長L1を異ならせるようにすればよい。
【0068】
また、上記実施形態では、搭載車両が走行先に存在する信号機の手前で停車する際の停車位置を推定するための情報として、信号機の切替タイミング、光ビーコン51から信号機の停止位置を示す停止線までの距離、通行車両の平均速度および光ビーコン51の設置位置を通過した先行車両の通過時刻を取得し、取得した情報に基づいて搭載車両が走行先に存在する信号機の手前で停車する際の停車位置を推定したが、上記した各情報以外の情報を取得して搭載車両が走行先に存在する信号機の手前で停車する際の停車位置を推定するようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、搭載車両が減速操作開始位置に到達する前に減速操作の開始を促す案内を行う構成を示したが、例えば、推定した停止位置に緩やかな減速度で停車できるように、モータ3の出力を低減するようにインバータ8に指示したり、エンジンECUに対して燃料噴射量を抑制する信号を送出したり、ブレーキECUに対して緩やかなブレーキ制御を行うように指示する信号を送出したりすることもできる。
【0070】
また、上記実施形態では、搭載車両の走行先に存在する信号機より手前に設置された光ビーコンから、搭載車両が走行先に存在する信号機の手前で停車する際の停車位置を推定するための情報を取得し、取得した情報を用いて搭載車両が走行先に存在する信号機の手前で停車する際の搭載車両の停車位置を推定したが、信号機に限定されるものではなく、例えば、搭載車両の走行先に存在する一時停止線より手前に設置された光ビーコンから、搭載車両が走行先に存在する一時停止線の手前で停車する際の停車位置を推定するための情報を取得し、この取得した情報を用いて搭載車両が走行先に存在する一時停止線の手前で停車する際の搭載車両の停車位置を推定するようにしてもよい。この場合、搭載車両が走行先に存在する一時停止線の手前で停車する際の停車位置を推定するための情報に、光ビーコンから一時停止線までの距離、通行車両の平均速度および光ビーコンの設置位置を通過した先行車両の通過時刻を含むようにして、搭載車両が走行先に存在する一時停止線で停車する際に搭載車両の前に停車する先行車両を推定し、搭載車両の前に停車する先行車両を考慮した搭載車両の停止位置を推定することもできる。
【0071】
上記実施形態では、通信エリアが限られた光ビーコンにより無線送信機を構成したが、光ビーコンに限定されるものではなく、例えば、通信エリアが限られた狭域通信(DSRC)を行うことが可能な無線機により無線送信機を構成してもよい。この場合、運転支援装置側の構成としては、光ビーコン送受信機17に代えて狭域通信(DSRC)を行うことが可能な無線機を備えた構成とすればよい。
【0072】
なお、上記実施形態における構成と特許請求の範囲の構成との対応関係について説明すると、光ビーコン送受信機17が通信手段に相当し、S100、S102が情報取得手段に相当し、S112、S114、S116が停車位置推定手段に相当し、S120、S122が減速操作開始位置特定手段に相当し、S120が減速距離算出手段に相当し、S132が案内手段に相当する。
【符号の説明】
【0073】
1 エンジン
2 発電機
3 モータ
11 GPS受信機
12 方位センサ
13 車速センサ
14 地図DB記憶部
15 勾配センサ
16 操作部
17 光ビーコン送受信機
18 表示部
19 スピーカ
20 ナビゲーションECU
30 搭載車両
40 信号機
41 信号制御装置
50 光ビーコン制御装置
51 光ビーコン51

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭載車両の運転者に運転操作についての案内を行う運転支援装置であって、
路側に設置された無線送信機と通信する通信手段と、
前記通信手段を介して前記無線送信機から前記搭載車両が前記走行先に存在する信号機の手前で停車する際の停車位置を推定するための情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段により取得された前記情報を用いて前記搭載車両が前記走行先に存在する信号機の手前で停車する際の前記搭載車両の停車位置を推定する停車位置推定手段と、
予め定められた基準値以下の減速度で、前記停車位置推定手段により推定された前記停車位置に前記搭載車両を停止させるための減速操作を開始すべき減速操作開始位置を特定する減速操作開始位置特定手段と、
前記搭載車両が前記減速操作開始位置に到達する前に、運転者に減速操作の開始を促す案内を行う案内手段と、を備えたことを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記減速操作開始位置特定手段は、予め定められた基準値以下の減速度で、前記停車位置推定手段により推定された前記停車位置に前記搭載車両を停止させるために必要な減速距離を算出する減速距離算出手段を備え、
前記停車位置推定手段により推定された前記停車位置より前記減速距離分手前の位置を前記減速操作開始位置として特定することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記搭載車両が前記走行先に存在する信号機の手前で停車する際の停車位置を推定するための情報には、前記信号機の切替タイミング、前記無線送信機から前記信号機の停止位置を示す停止線までの距離、通行車両の平均速度および前記無線送信機の設置位置を通過した先行車両の通過時刻が含まれており、
前記停車位置推定手段は、前記搭載車両が前記走行先に存在する信号機の手前で停車する際の停車位置を推定するための情報を用いて前記搭載車両が前記走行先に存在する信号機の手前で停車する際に前記搭載車両の前に停車する先行車両の台数を推定し、前記搭載車両の前に停車する先行車両の台数に応じて前記搭載車両の停止位置を手前に移動させるように前記搭載車両の停止位置を推定することを特徴とする請求項1または2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記搭載車両は、走行用の動力源としてモータを使用する車両であって、
前記減速操作開始位置特定手段は、前記モータの回生損失が発生しないように規定された減速度で、前記停車位置推定手段により推定された前記停車位置に前記搭載車両を停止させるための減速操作を開始すべき減速操作開始位置を特定する特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−146252(P2012−146252A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5971(P2011−5971)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】