説明

運転支援装置

【課題】運転支援装置において他車両が走行する走行レーンの識別精度を高め、運転操作を支援する制御の信頼性を向上させる。
【解決手段】自車両が走行する道路の車線幅を取得する車線幅取得手段1と、自車両の周囲を走行する他車両の位置を取得する他車両位置取得手段3とを設ける。また、車線幅取得手段1で取得された車線幅と他車両位置取得手段3で取得された位置に基づき、他車両の走行レーンを識別する識別手段5を設ける。さらに、他車両の走行レーンが自車両の走行レーンに隣接するときに、自車両と他車両との接触を回避するための支援制御を実施する制御手段6を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転操作を支援する運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮影装置やレーダー装置を用いて車両の走行環境を検知し、周囲に存在する他車両や障害物,道路形状等に応じて車両の運転支援を実施する運転支援装置が開発されている。運転支援の内容はさまざまな安全性レベルで検討されており、例えば車両の乗員に対して走行環境の情報を報知するものや、必要に応じて警報音を発するもの,運転者の操舵操作にアシスト力を付加するもの,車両に自動的に駆動力や制動力を付与するもの等が存在する。また、検知対象となる走行環境も多種多様であり、例えば交差点を通過する際の対向車,歩行者の挙動を検知するものや、前後車両の追突の可能性を検知するもの等が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、自車両側方の障害物を検知し、障害物への接近を防止するように運転者の運転を支援する運転支援装置が記載されている。この技術では、レーダー装置を用いて隣接レーンの後方に位置する他車両を検出するとともに自車両の将来の走行位置を予測し、他車両への接近を防止する方向のヨーモーメントを自車両に付与している。このような制御により、自車両が車線変更をしようとしている場合であっても、他車両との車間距離を確保することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような車線変更時の制御では、自車両と他車両との相対位置に基づいて他車両の走行レーンを判別している。例えば、特許文献1の技術では、ミリ波レーダーで検出された検出対象までの距離及び相対速度と、カメラで撮像された画像から検出された走行車線の白線(車線区分線)とを用いて他車両が隣接レーンに存在することを把握している。
【0006】
しかしながら、道路の種類や走行区間によっては、走行車線の幅員が標準的な道路の幅員と相違する場合がある。例えば日本国内では、地方部に建設される高速道路のうち計画交通量が比較的大きい道路では、一つの車線で最大3.75[m]の幅員とすることが認められている。一方、都市部の小型道路には、幅員が2.75[m]程度の車線が存在する。さらに、交差点に設けられる屈折車線(車両を右左折させることを目的として設けられる車線)に至っては、幅員が2.5[m]の車線もある。このような走行車線の幅員の相違により、他車両の走行車線の位置を正確に判断することができない場合があり、これが誤検出の原因となり得るという課題がある。
【0007】
本件の目的の一つは、運転支援装置において他車両が走行する走行レーンの識別精度を高め、運転操作を支援する制御の信頼性を向上させることである。
なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)ここで開示する運転支援装置は、自車両が走行する道路の車線幅を取得する車線幅取得手段と、前記自車両の周囲を走行する他車両の位置を取得する他車両位置取得手段とを備える。また、前記車線幅及び前記位置に基づき、前記他車両の走行レーンを識別する識別手段を備える。さらに、前記他車両の走行レーンが前記自車両の走行レーンに隣接するときに、前記自車両と前記他車両との接触を回避するための支援制御を実施する制御手段を備える。
【0009】
(2)前記自車両の現在位置を検出するとともに、予め設定された地図情報に基づいて目標位置までの走行案内を実施する走行案内手段を備えることが好ましい。この場合、前記車線幅取得手段が、前記走行案内手段で検出された前記現在位置及び前記地図情報から前記車線幅を取得する。
(3)前記自車両の走行レーン内における前記自車両の車線幅方向の偏向位置を取得する自車両位置取得手段を備えることが好ましい。この場合、前記識別手段が、前記自車両の走行レーンの車線幅方向中央となる位置を前記偏向位置に基づいて補正するとともに、補正された前記位置を基準として前記他車両の走行レーンを識別する。
【0010】
(4)前記自車両が走行する道路のカーブ形状を取得するカーブ取得手段を備えることが好ましい。この場合、前記識別手段が、前記車線幅,前記位置及び前記カーブ形状に基づき、前記他車両の走行レーンを識別する。
(5)前記カーブ取得手段が、前記自車両よりも後方における前記自車両の走行レーンの形状を前記カーブ形状として取得することが好ましい。
【0011】
(6)前記自車両の走行レーン内における旋回方向の姿勢を取得する自車両姿勢取得手段を備えることが好ましい。この場合、前記識別手段が、前記旋回方向の姿勢に基づいて前記車線幅を補正するとともに、補正された前記車線幅を用いて前記他車両の走行レーンを識別する。
【発明の効果】
【0012】
開示の運転支援装置によれば、他車両の位置と車線幅とに基づいて他車両の走行レーンを識別することにより、車線幅の異なるあらゆる道路で正確に支援制御を実施することができる。これにより、他車両の誤検出や過剰に支援制御が実施されるような事態を防止することができ、支援制御の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態に係る運転支援装置が適用された車両の側面図である。
【図2】運転支援装置の全体構成を例示するブロック図である。
【図3】(a)〜(c)共に運転支援装置での制御内容を説明するための上面図である。
【図4】運転支援装置での制御手順を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して制御装置について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
【0015】
[1.装置構成]
本実施形態の運転支援装置は、図1に車室内を透視して示す車両10に搭載される。この車両10は、周囲に存在する他車両や障害物,道路形状等の走行環境に応じて運転操作を支援する支援制御を実施するものである。支援制御は、電子制御装置9によって制御される。ここでは、電子制御装置9の入力側及び出力側にそれぞれ接続される装置を順に説明する。
【0016】
まず、車両10の後端部には、ミリ波レーダー11及びカメラ12が設けられる。ミリ波レーダー11は、車両10の後側方の物体等を検出するレーダー装置であり、例えばアンテナ,送受信回路及び演算回路を備えて構成される。アンテナはミリ波帯の電波を送受信する部位であり、送受信回路はアンテナから送信する送信波を生成するとともに、アンテナで受信した受信波を信号に変換する部位である。また、演算回路は受信した信号を解析して、電波を反射した物体や車両,人物等(すなわち対象)までの距離,角度(すなわち相対位置)や速度(相対速度)等を検出するものである。
【0017】
ミリ波レーダー11による対象の検出範囲は、例えば図3(a)中に破線で示すように、上面視で車両10の後端部を中心とした扇形状とされる。なお、車両10の運転席からの死角となる後側方を広くカバーするようにミリ波レーダー11の検出範囲を設定することが好ましい。ここで検出された対象についての情報は、電子制御装置9に伝達される。
【0018】
カメラ12は、車両10の後方の画像を動画として撮影する単眼ビデオカメラである。ここで撮影される動画は連続した複数の画像(静止画像)からなり、それぞれの画像データが随時、電子制御装置9に伝達される。カメラ12で撮影された画像は、走行レーン内での車両10の車線幅方向の位置(偏向位置)を把握するために用いられる。
【0019】
車室内の任意の位置には、ナビゲーション装置13,ウィンカースイッチ14及びスピーカー15が設けられる。ナビゲーション装置13(走行案内手段)は、内蔵された地図データ上における車両10の現在位置をディスプレイに表示し、目的地までの走行経路を案内する機能を持つ。ナビゲーション装置13内には、図示しないGPS装置,地図データ記憶装置,TVチューナ装置,音響装置,DVD再生装置等が内蔵され、これらの各装置に係る機能は、タッチパネルディスプレイに表示されるメニュー画面から随時選択可能である。
【0020】
車両10の現在位置は、GPS衛星20から送信される測位信号や速度センサで検出される車速信号,方位センサで検出される方位信号等に基づいてナビゲーション装置13で検出,測定される。また、ナビゲーション装置13に内蔵された地図データには、例えば道路の位置や種類,レーン数,車線幅の情報が含まれる。ナビゲーション装置13は、これらの車両10の現在位置の情報及び地図情報に基づいて経路案内を実施する。また、車両10の現在位置の情報は、電子制御装置9に伝達される。
【0021】
ウィンカースイッチ14は、車両10の左右側方に設けられた方向指示器16の作動状態を検出するセンサであり、例えば左右何れかの方向指示器16が動作(点滅動作)しているときに、それぞれの方向に対応するオン信号を出力し、方向指示器16が動作していないときにオフ信号を出力する(又はオン信号を出力しない)ものである。つまり、ウィンカースイッチ14は、左折方向,右折方向への各々の方向指示操作の有無を検出する。ウィンカースイッチ14で検出されるこれらの信号は電子制御装置9に伝達される。
【0022】
スピーカー15は、電子制御装置9の出力装置として機能する音響装置であり、電子制御装置9による支援制御の内容や情報を乗員に報知するものである。なお、スピーカー15の代わりにナビゲーション装置13に内蔵される音響装置を利用してもよい。
【0023】
電子制御装置9は、周知のマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイス又は組み込み電子デバイスであり、本車両10の支援制御を実施するものである。図2に示すように、電子制御装置9の入力側には、ミリ波レーダー11,カメラ12,ナビゲーション装置13及びウィンカースイッチ14が接続される。一方、電子制御装置9の出力側には、スピーカー15が接続される。電子制御装置9の配設位置は任意であり、例えば図1に示すようにインストルメントパネルの内部に設けてもよい。
【0024】
[2.制御構成]
[2−1.制御の概要]
ここでは、電子制御装置9で実施される支援制御の一つとして、運転席からの死角となる車両10の後側方の範囲内に他車両30が存在することを報知する制御について説明する。電子制御装置9は、車両10が車線変更しようとしたときにその変更先の隣接レーン側の後側方に他車両30が存在するか否かを判定するとともに、他車両30が存在する場合にスピーカー15からアラーム音を発音し、他車両30の存在を運転手に報知する。
【0025】
例えば、図3(a)に示すように、車両10が左車線へレーンチェンジしようとしたときに、車両10の左後方の隣接車線に他車両30が存在する場合には、アラーム音が発音される。一方、車両10に対する他車両30の相対位置が同一であったとしても、図3(b)に示すように、道路の車線幅が狭い場合には他車両30の走行レーンが車両10の走行レーンに隣接しないため、アラーム音を発音すると過剰な支援制御となってしまう。そこで、本実施形態の電子制御装置9は、車両10が走行する道路の車線幅を考慮して、適切にアラーム音を発音するための機能を備えている。
【0026】
[2−2.制御ブロック構成]
図2に示すように、電子制御装置9には、上記の制御を実現するソフトウェア又はハードウェアとして、車線幅取得部1,自車両位置取得部2,他車両位置取得部3,カーブ取得部4,識別部5及び制御部6が設けられる。
車線幅取得部1(車線幅取得手段)は、車両10が走行する道路の車線幅を取得するものである。この車線幅取得部1は、ナビゲーション装置13で検出された車両10の位置情報を用いてその位置情報に対応する地図データ上の道路の位置を特定し、その道路の車線幅をナビゲーション装置13の地図データ記憶装置から読み出す機能を持つ。
【0027】
ここで読み出される車線幅は、地図データ上の道路毎に与えられる値としてもよいし、あるいはより詳細に、道路のレーン毎に与えられる値としてもよい。後者の場合、例えば図3(a)に示すように、車両10の走行レーンの車線幅W1と隣接レーンの車線幅W2とを読み出せばよい。また、前者の場合は隣接レーンの車線幅W2が車両10の走行レーンの車線幅W1に等しい(すなわち、ともに車線幅W1である)ものとみなせばよい。ここで取得された車線幅W1,W2の情報は、識別部5に伝達される。
【0028】
自車両位置取得部2(自車両位置取得手段)は、車両10の走行レーン内でのレーン幅方向の位置(偏向位置)を取得するものである。ここでは、カメラ12で撮影された画像データに対して画像処理演算が施され、画像内に存在する白線の位置に基づいて、車両10が走行レーンの中央からどの程度ずれているかが演算される。例えば、図3(a)に示すように、自車両中央線C0と車線中央線C1との車線幅方向のずれ量Zが画像データから演算される。ここで演算されたずれ量Zの情報は、識別部5に伝達される。なお、図3(a)の例では、車線中央線C1から右方向へのずれ量Zの符号を正とする。
【0029】
他車両位置取得部3(他車両位置取得手段)は、車両10の周囲を走行する他車両30の位置を取得するものである。ここでは、ミリ波レーダー11で検出された対象の情報に基づいて他車両30の相対位置が演算され、車両10の進行方向についての距離Yと、車両10の進行方向を基準とした車幅方向の距離X(車両10の進行方向に垂直な方向についての車両10と他車両30との走行位置のずれ量)とが演算される。ここで演算された距離X,距離Yの情報は、カーブ取得部4及び識別部5に伝達される。なお、図3(a)の例では、車線中央線C1から左方向への距離Xの符号が正であり、車両10よりも後方への距離Yの符号が正である。
【0030】
カーブ取得部4(カーブ取得手段)は、車両10が走行した道路のカーブ形状を取得するものである。ここでは、車線幅取得部1と同様に、ナビゲーション装置13で検出された車両10の位置に対応する地図データ上の道路の位置が特定され、車両10から見てその位置よりも後方側での道路のカーブ形状(例えば、曲率や曲率半径等)がナビゲーション装置13の地図データ記憶装置から読み出される。
【0031】
さらに、他車両位置取得部3から伝達される距離Yに基づき、他車両30が走行している位置での車線幅のカーブずれ量V(カーブ形状に由来する白線位置のずれ量)が演算される。ここで演算されたカーブずれ量Vの情報は、識別部5に伝達される。例えば、図3(c)に示すように、車両10の後方で距離Yの位置と距離が0の位置とのそれぞれから車幅方向に仮想線を描き、それぞれの仮想線上での白線の位置について車幅方向のずれ量をカーブずれ量Vとして演算することが考えられる。なお、図3(c)の例では、車両10よりも後方の道路のカーブ形状が左カーブであるときのカーブずれ量Vの符号が正である。
【0032】
識別部5(識別手段)は、上記の車線幅W1,W2,ずれ量Z,距離X,Y,カーブずれ量Vの各情報に基づき、他車両30が隣接レーンを走行しているか否かを識別するものである。ここでの判断の結果は、制御部6に伝達される。なお、具体的な識別,判定の手法は種々考えられる。
【0033】
例えば、他車両30が車両10よりも左後方に位置するとき(X>0のとき)、距離Xが以下の式1を満たす場合に、他車両30が隣接レーンを走行しているものと判断することができる。また、他車両30が車両10よりも右後方に位置するとき(X<0のとき)には、距離Xが以下の式2を満たす場合に、他車両30が隣接レーンを走行しているものと判断してもよい。これらの場合、式1,式2が成立しないときに、他車両30が隣接レーンを走行していないと判断される。
【0034】
【数1】

【0035】
制御部6(制御手段)は、車両10と他車両30との接触を回避するための支援制御を実施するものである。制御部6は、他車両30が隣接レーンを走行しているものと識別部5で判断され、かつ、他車両30が走行している側のウィンカースイッチ14がオン信号を出力している場合に、スピーカー15に制御信号を出力し、アラーム音を発音させるように機能する。一方、他車両30が隣接レーンを走行していないと識別部5で判断された場合、あるいは、他車両30が存在する側のウィンカースイッチ14がオフ信号を出力している(又はオン信号を出力していない)場合には、アラーム音を発音させない。これにより、スピーカー15から過剰にアラーム音が発音されることがないようにしている。
【0036】
[3.フローチャート]
図4は、電子制御装置9で実行される支援制御の手順を例示するフローチャートである。このフローチャートに示される制御は、電子制御装置9の内部で所定の周期(例えば数[ms]周期)で繰り返し実施される。
ステップA10では、カメラ12で撮影された画像データが電子制御装置9の車線幅取得部1に入力され、車両10が走行する道路の車線幅W1,W2が取得される。また、続くステップA20では、その画像データが自車両位置取得部2に入力され、画像データ中から車両10の走行レーンの左右両側の白線位置が認識されるとともに、車両10の車線中央線C1からのずれ量Zが演算される。
【0037】
ステップA30では、例えば他車両位置取得部3において、ミリ波レーダー11の検出範囲内に他車両30が検出されたか否かが判定される。ここで他車両30が検出された場合にはステップA40へ進む。一方、他車両30が検出されない場合にはそのままこのフローを終了する。
ステップA40では、ミリ波レーダー11で検出された対象の情報が他車両位置取得部3に入力され、他車両30の位置が取得される。また、車両10の進行方向及びこれに垂直な方向を基準とした座標系での他車両30までの距離X,Yが演算される。
【0038】
続くステップA50では、カメラ12で撮影された画像データが電子制御装置9のカーブ取得部4に入力され、車両10が走行する道路のカーブ形状が取得されるとともに、他車両30が走行している位置でのカーブずれ量Vが演算される。
ステップA60では、識別部5において、他車両30が隣接レーンを走行しているか否かが識別される。例えば、他車両30の距離Xが上記の式1又は式2を満たす場合には、他車両30の走行レーンが車両10の走行レーンに隣接しているものと判定され、ステップA70へ進む。一方、距離Xが上記の式1及び式2を満たさない場合には、そのままこのフローを終了する。
【0039】
このステップA60では、他車両30がミリ波レーダー11の検出範囲内に存在することだけでなく、他車両30の走行レーンが車両10の走行レーンに隣接しているか否かが判定される。つまり、図3(b)に示すように、車線幅の狭い道路を走行している際に、他車両30が二つ隣のレーンを走行している場合には、ステップA70には進まない。また、図3(c)に示すように、カーブしている道路の走行時に、車両10と同一レーンを走行する他車両30が検出されたような場合であっても、ステップA70には進まない。このように、車線幅W1,W2を用いることより、他車両30が隣接レーンに存在するか否かの判定精度が向上し、誤検出が防止される。
【0040】
ステップA70では、制御部6において、他車両30が存在する側のウィンカースイッチ14がオン信号を出力しているか否かが判定される。この条件が成立した場合にはステップA80へ進み、制御部6からスピーカー15へとアラーム音の制御信号が出力される。これにより、車両10がレーンチェンジしようとしている車線の後方に他車両30が存在することが運転手に報知される。一方、ステップA70の条件が成立しない場合にはそのままこのフローを終了するため、アラーム音が発音されることはない。
【0041】
[4.効果]
このように、上記の運転支援装置は、車両10に対する他車両30の相対位置だけでなく、車線幅W1,W2を加味して他車両30が隣接レーンを走行しているか否かを判定する。すなわち、他車両30の位置を取得するとともに車両30が走行する道路の車線幅W1,W2を取得し、これらに基づいて隣接レーンが存在する範囲を演算し、他車両30が隣接レーン内に位置しているか否かを判定している。このような演算により、車線幅の異なるあらゆる道路で判定精度を向上させることができ、正確に支援制御を実施することができる。したがって、他車両30の誤検出や過剰に支援制御が実施されるような事態を防止することができる。
【0042】
また、上記の運転支援装置では、ナビゲーション装置13の地図データ記憶装置に予め設定された地図データを利用して車線幅W1,W2を取得している。これにより、容易かつ迅速に車線幅W1,W2を取得することができ、他車両30の走行レーンの識別精度を向上させることができる。また、車線幅W1,W2を取得するためのカメラやセンサが不要となり、走行レーンの識別精度を高めつつ製造にかかるコストを削減することができる。
【0043】
これに加えて、上記の運転支援装置では、単に車線幅W1,W2を取得するだけでなく、自車両中央線C0と車線中央線C1とのずれ量Zを用いて隣接レーンが存在する範囲を演算(すなわち、他車両30が隣接レーンを走行しているか否かを判定)している。これにより、隣接レーンの左端辺及び右端辺の位置を正確に把握することが可能となり、他車両30の走行レーンの識別精度をより向上させることができる。
【0044】
さらに、上記の運転支援装置では、車両10が走行する道路のカーブ形状を取得するとともに他車両30が走行している位置での車線幅のカーブずれ量Vを演算している。これにより、隣接レーンの左端辺及び右端辺の位置をさらに正確に把握することが可能となり、他車両30の走行レーンの識別精度を格段に向上させることができる。
【0045】
このように、開示の運転支援装置によれば、車線幅やカーブ形状の異なるあらゆる道路において、他車両30が走行する走行レーンの識別精度を高めることができ、延いては正確に支援制御を実施することができ、これを以て運転操作を支援する制御の信頼性を向上させることができる。
【0046】
[5.変形例]
上述した実施形態に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
【0047】
上述の実施形態では、ナビゲーション装置13に予め設定された地図データを利用して車線幅W1,W2の情報を取得するものを例示したが、車線幅W1,W2の情報の取得手段はこれに限定されない。例えば、カメラ12で撮影された画像データから車線幅W1,W2を演算する構成としてもよい。車線幅W1を演算するためには、少なくとも車両10の走行レーンの形状(走行レーンの左端辺及び右端辺)を規定する道路白線をカメラ12で撮影すればよい。
【0048】
したがって、隣接レーンの車線幅W2が車両10の走行レーンの車線幅W1に等しい(すなわち、ともに車線幅Wである)ものとみなせば、上述の実施形態のカメラ12で撮影された画像データをそのまま車線幅取得部1に入力し、車線幅W1を演算させることが可能である。なお、カメラ12の撮影範囲をより広角とすれば、隣接レーンの車線幅W2を併せて取得することも容易である。
【0049】
車両10が走行した道路のカーブ形状に関しても同様であり、ナビゲーション装置13に予め設定された地図データの代わりに、カメラ12で撮影された画像データを利用することが可能である。このように、ナビゲーション装置13の代わりにカメラ12を用いれば、ナビゲーション装置13を省略することができる。
【0050】
なお、車線幅W1,W2の情報やカーブ形状をカメラ12の画像データから取得する場合、カメラ12の撮影方向を車両10の前方に設定することも可能である。一方、上述の実施形態のように、カメラ12の撮影方向を車両10よりも後方に設定すれば、実際に車両10が走行した道路の正確な車線幅W1,W2やカーブ形状を求めることができ、他車両30の走行レーンの識別精度をより向上させることができる。
【0051】
逆に、上述の実施形態からカメラ12を省略し、その機能をナビゲーション装置13に負担させることも考えられる。すなわち、自車両位置取得部2において、ナビゲーション装置13で検出された車両10の位置情報と地図データ上の道路の位置とを比較することにより、車両10が走行レーンの中央からどの程度ずれているかを演算してもよい。ずれ量Zの演算精度はナビゲーション装置13による位置検出精度に依存するため、十分に高性能なGPS機能を搭載したナビゲーション装置13があれば、カメラ12を省略して構成の簡素化が可能となり、運転支援装置の汎用性を高めることができるほか、コストをさらに削減することができる。
【0052】
また、上述の実施形態では、ミリ波レーダー11で他車両30を検出するものを例示したが、少なくとも車両10の周囲の空間的な状況を把握するセンサを備えていればよく、具体的なセンシング手法はこれに限定されない。例えば、ミリ波レーダー11の代わりに、ステレオカメラ(同一の被写体を二つの視点から撮影する撮影装置)を用いてもよい。
【0053】
あるいは、ミリ波レーダー11だけでなく、カメラ12を併用して他車両30を検出する構成としてもよい。すなわち、カメラ12で検出された画像データに対して画像処理演算を施し、画像内に存在する他車両30を分析,検出する構成とする。このように、ミリ波レーダー11とカメラ12とを併用することで、他車両30の検出精度を向上させることができる。
【0054】
なお、上述の実施形態では、図3(a)〜(c)に示すように、上面視における車両10の姿勢が走行レーンに沿った状態であることを前提とした演算がなされている。一方、実際の車両10の姿勢は走行レーンと平行であるとは限らない。そこで、車両10の走行レーンに対する旋回方向の姿勢を考慮した演算を実施する構成とすることも考えられる。
【0055】
例えば、走行レーン内における車両10の旋回方向の姿勢を取得する自車両姿勢取得部を電子制御装置9内に設けることが考えられる。この場合、自車両姿勢取得部は、カメラ12で撮影された画像データに基づいて、あるいは、ナビゲーション装置13で検出された車両10の位置情報及び方位等に基づいて、走行レーンの車線中央線C1に対する車両10のヨー方向の旋回角θを取得すればよい。旋回角θを用いた座標変換により、車線中央線C1を基準とした座標系で他車両30の位置,車両10のずれ量Z及びカーブずれ量Vを演算することが可能となり、他車両30が隣接レーンを走行しているか否かをさらに正確に識別することができる。
【0056】
また、上述の実施形態では、運転席からの死角となる車両10の後側方の範囲内に他車両30が存在することを報知する制御について説明したが、支援制御の具体的な内容はこれに限定されない。例えば、車両10の前側方に他車両30が存在する場合の支援制御に対して適用してもよいし、スピーカー15からアラーム音を発音するだけでなく、車両10の操舵や駆動,制動介入により運転支援を実施するものとしてもよい。このような制御により、さらに支援制御の信頼性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 車線幅取得部(車線幅取得手段)
2 自車両位置取得部(自車両位置取得手段)
3 他車両位置取得部(他車両位置取得手段)
4 カーブ取得部(カーブ取得手段)
5 識別部(識別手段)
6 制御部(制御手段)
9 電子制御装置
10 車両
11 ミリ波レーダー
12 カメラ
13 ナビゲーション装置(走行案内手段)
14 ウィンカースイッチ
15 スピーカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が走行する道路の車線幅を取得する車線幅取得手段と、
前記自車両の周囲を走行する他車両の位置を取得する他車両位置取得手段と、
前記車線幅及び前記位置に基づき、前記他車両の走行レーンを識別する識別手段と、
前記他車両の走行レーンが前記自車両の走行レーンに隣接するときに、前記自車両と前記他車両との接触を回避するための支援制御を実施する制御手段と
を備えたことを特徴とする、運転支援装置。
【請求項2】
前記自車両の現在位置を検出するとともに、予め設定された地図情報に基づいて目標位置までの走行案内を実施する走行案内手段を備え、
前記車線幅取得手段が、前記走行案内手段で検出された前記現在位置及び前記地図情報から前記車線幅を取得する
ことを特徴とする、請求項1記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記自車両の走行レーン内における前記自車両の車線幅方向の偏向位置を取得する自車両位置取得手段を備え、
前記識別手段が、前記自車両の走行レーンの車線幅方向中央となる位置を前記偏向位置に基づいて補正するとともに、補正された前記位置を基準として前記他車両の走行レーンを識別する
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記自車両が走行する道路のカーブ形状を取得するカーブ取得手段を備え、
前記識別手段が、前記車線幅,前記位置及び前記カーブ形状に基づき、前記他車両の走行レーンを識別する
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記カーブ取得手段が、前記自車両よりも後方における前記自車両の走行レーンの形状を前記カーブ形状として取得する
ことを特徴とする、請求項4記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記自車両の走行レーン内における旋回方向の姿勢を取得する自車両姿勢取得手段を備え、
前記識別手段が、前記旋回方向の姿勢に基づいて前記車線幅を補正するとともに、補正された前記車線幅を用いて前記他車両の走行レーンを識別する
ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−234373(P2012−234373A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102643(P2011−102643)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】