説明

運転支援装置

【課題】ドライバを煩わせることや、同乗者に不快感を与えることなく、ドライバに対しエコ運転が行われている度合いを通知することができるエコ運転支援ECUを提供する。
【解決手段】エコ運転支援ECUは、エコ運転度として瞬間燃費を計測すると共に、瞬間燃費と10・15モード燃費とを比較する。そして、瞬間燃費が10・15モード燃費よりも悪い場合には、コンプレッサーを作動してステアリングに形成された孔部から空気を排出し(S150)、ステアリングを握るドライバの手に圧力を与えることで、エコ運転度の悪化をドライバに通知する。また、瞬間燃費が10・15モード燃費よりも良い場合には、真空ポンプを作動して孔部から空気を吸入する(S135)と共に、瞬間燃費が10・15モード燃費に等しい場合には、コンプレッサーと真空ポンプの作動を停止する(S155)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の運転についての評価を行い、評価結果をドライバに通知する運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排気ガスの排出や、エネルギーの消費を抑えた状態での運転であるエコ運転がどの程度行われているかを計測し、計測結果に応じてエコ運転に関する情報をドライバに通知する車載装置が知られている。
【0003】
このような車載装置の一例として、特許文献1には、ドライバの運転操作毎に自車両の燃費状態を算出し、算出した燃費状態に応じたアドバイスメッセージを表示する装置について記載されている。また、特許文献2には、エンジン回転数,アクセル開度,車速等に基づき、アクセルペダルの踏みすぎについての警告表示や警告音声の出力を行う省燃費運転評価システムについて記載されている。
【0004】
このような発明によれば、エコ運転を実践するための運転操作や、エコ運転がどの程度実践されているかをドライバに把握させることが可能となり、ドライバに対し、エコ運転のスキルを向上させることや、エコ運転を促すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−83276号公報
【特許文献2】特開2006−76415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2に記載の発明のように、視覚を介してエコ運転に関する情報を提供する場合には、ドライバは、運転中に該情報が表示される表示装置に視線を向ける必要があり、ドライバを煩わせるおそれがある。一方、特許文献2に記載の発明のように、音声によりエコ運転に関する情報を提供する場合には、ドライバは視線を変えることなく該情報を把握することができるが、同乗者が該音声を耳障りに感じる場合もあり、同乗者に対して不快感を与えてしまうおそれがある。
【0007】
本願発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、ドライバを煩わせることや、同乗者に不快感を与えることなく、ドライバに対しエコ運転が行われている度合い(エコ運転度)を通知することができる運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑みてなされた請求項1に記載の運転支援装置は、自車両の部品におけるドライバの体の一部に接触可能な部分に形成された孔部からの空気の排出或いは吸入を行う空気制御手段と、排気ガスの排出、或いは、エネルギーの消費を抑えた状態での運転であるエコ運転が、自車両においてどの程度行われているかの度合いであるエコ運転度を計測する計測手段と、を備える。また、計測手段により計測されたエコ運転度に応じて、空気制御手段を介して孔部における空気の流れの調整を行うことで、該エコ運転度をドライバに通知する通知手段と、を備える。
【0009】
なお、孔部は、運転席、或いは、運転席周辺に配置される部品における、標準的なドライビングポジションを取ったドライバが、容易に体の一部を近づけたり、遠ざけたりすることができる部分に形成されていても良い。
【0010】
このような構成によれば、孔部から空気が排出される状態と、孔部から空気が吸入される状態と、排出及び吸入が行われない状態の三つ状態を、エコ運転度に応じて切り替えることができる。すなわち、エコ運転度に応じて、孔部付近に位置するドライバの体の一部を空気圧により押すことや引っ張ることができ、圧覚(皮膚が圧迫される或いは引っ張られる感覚)や力覚(外部の力に従う或いは逆らう感覚)を利用したドライバへのエコ運転度の通知が可能となる。
【0011】
このため、視覚を介してドライバにエコ運転度を通知する場合のように、ドライバの視線を変えさせることが無く、また、音声によりエコ運転度を通知する場合のように、同乗者に不快感を与えることは無い。
【0012】
したがって、請求項1に記載の運転支援装置によれば、ドライバを煩わせることや、同乗者に不快感を与えることなく、ドライバに対しエコ運転度を通知することができる。
なお、運転支援装置は、次のようにしてエコ運転度を通知しても良い。
【0013】
すなわち、請求項2に記載されているように、エコ運転の良し悪しを判別するうえでの目安となるエコ運転度を示す数値を基準値とし、通知手段は、調整において、計測手段により計測されたエコ運転度が基準値である場合には、孔部における空気の流れを停止させても良い。また、該エコ運転度が基準値で無い場合には、孔部における空気の流れを生じさせ、その際には、該孔部において排出される方向に空気を流すか、吸入される方向に空気を流すかを、エコ運転度と基準値との大小関係に応じて定めても良い。
【0014】
なお、基準値とは、上記目安となるエコ運転度を示す特定の数値であっても良いし、該エコ運転度を示す所定範囲の数値であっても良い。
こうすることにより、エコ運転度が基準値であるかどうかや、エコ運転度と基準値との大小関係をドライバに対してわかり易く通知することができる。
【0015】
また、請求項3に記載されているように、エコ運転の良し悪しを判別するうえでの目安となるエコ運転度を示す数値を基準値とし、計測手段により計測されたエコ運転度と基準値とを比較することで、良好なエコ運転が行われているか否かを判定する判定手段をさらに備えても良い。そして、通知手段は、調整において、判定手段による判定で肯定判定が得られた場合には、孔部における空気の流れを停止させ、該判定で否定判定が得られた場合には、孔部における空気の流れを生じさせても良い。
【0016】
こうすることにより、良好なエコ運転が行われているかどうかをドライバに対してわかり易く通知することができる。
さらに、請求項4に記載されているように、空気制御手段は、設定された強さで、孔部からの空気の排出或いは吸入を行い、通知手段は、調整において、計測手段により計測されたエコ運転度と基準値との差分の絶対値に応じた強さの孔部における空気の流れを生じさせても良い。
【0017】
こうすることにより、エコ運転度がどの程度であるかをドライバに対しわかり易く通知することができる。
ところで、先を急いでいる場合や、交通の円滑性が要求される場合や、運転を楽しみたい場合等には、ドライバが意図的にエコ運転を行わないことが考えられ、このような場合にまでエコ運転度が通知されるとなると、ドライバが不快に感じてしまうおそれがある。このため、ドライバが標準的なドライビングポジションを取った状態で運転支援装置からのエコ運転度の通知を容易に絶つことが可能となるように、孔部の配置位置を考慮することが望ましい。
【0018】
そこで、請求項5に記載の運転支援装置では、部品は、自車両のステアリングとして構成されており、孔部は、ドライバが当該ステアリングを握っている手により接触可能な部分に形成されている。
【0019】
こうすることにより、ステアリングを握る手に生じる圧覚により、ドライバに対しエコ運転度を通知することが可能となる。
また、ドライバは、ステアリングを握る手や指の位置をずらすこと等により、孔部にて空気の排出,吸入が行われても圧覚が生じない状態にすることができる。このため、ドライバは、エコ運転度の通知が不要と感じた場合には、標準的なドライビングポジションを保ちつつ、容易に運転支援装置からのエコ運転度の通知を絶つことができ、快適な運転を行うことが可能となる。
【0020】
また、AT車の運転席の床部には、ブレーキペダルを挟んでアクセルペダルに向かい合う位置の周辺にフットレストが設けられている場合がある。このようなAT車のドライバは、アクセルペダル等の操作を行わない足をフットレストに乗せた状態で運転を行うことができると共に、フットレストに乗せた足を容易に別の場所に移すことができる。
【0021】
そこで、請求項6に記載の運転支援装置では、部品は、運転席の床部に配置され、ドライバの足裏が乗せられるフットレストとして構成されており、孔部は、当該フットレストに乗せられたドライバの足裏に接触する部分に形成されている。
【0022】
こうすることにより、アクセルペダル等の操作を行わない足の足裏に生じる力覚により、ドライバに対しエコ運転度を通知することが可能となる。
また、ドライバは、フットレストに乗せている足裏を孔部が配された位置からずらすか、或いは、フットレストに乗せている足を別の場所に移すだけで、孔部にて空気の排出,吸入が行われても力覚が生じない状態にすることができる。このため、ドライバは、エコ運転度の通知が不要と感じた場合には、標準的なドライビングポジションを保ちつつ、容易に運転支援装置からのエコ運転度の通知を絶つことができ、快適な運転を行うことが可能となる。
【0023】
また、エコ運転度とは、例えば、アクセルペダルの踏み量や自車両の加速度であっても良いし、請求項7に記載されているように、運転中の予め定められた瞬間における自車両の燃費(瞬間燃費)であっても良い。
【0024】
瞬間燃費等をドライバに通知することで、ドライバのエコ運転のスキルを向上させることや、ドライバに対してエコ運転を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第一実施形態のエコ運転支援システムを示すブロック図と、ステアリングに形成された孔部を流れる空気の制御量等を示すグラフである。
【図2】エコ運転度通知処理についてのフローチャートである。
【図3】アクセルペダルの操作等に応じて、瞬間燃費や、ステアリングに形成された孔部を流れる空気の制御量等が変化する様子を示すグラフである。
【図4】第二実施形態のエコ運転支援システムを示すブロック図と、フットレストに形成された孔部を流れる空気の制御量等を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0027】
[第一実施形態]
[構成の説明]
まず、第一実施形態のエコ運転支援システム1について、図1(a)に記載のブロック図を用いて説明する。このエコ運転支援システム1は、排気ガスの排出、或いは、エネルギーの消費を抑えた状態での運転であるエコ運転が自車両にてどの程度を行われているかをドライバに通知するよう構成されている。
【0028】
図1(a)に記載されているように、エコ運転支援システム1は、自車両の瞬間燃費を、エコ運転が行われている度合いであるエコ運転度として計測するエコ運転支援ECU10と、3ポートの方向制御弁として構成された電磁弁16と、空気の吸入を行う真空ポンプ14と、圧縮された空気の排出を行うコンプレッサー15を備える。
【0029】
また、エコ運転支援システム1は、自車両のステアリング18のスポークに形成された孔部18a(直径2cm)に連通する内部空間と電磁弁16とを繋ぐA管17aと、電磁弁16と真空ポンプ14とを繋ぐB管17bと、電磁弁16とコンプレッサー15とを繋ぐC管17cとを備える。
【0030】
また、エコ運転支援ECU10は、CPU、ROM、RAM等よりなる周知のマイクロコンピュータ等からなり、ROMに記憶された制御プログラムを実行することでエコ運転支援ECU10を統括制御する制御部11と、車内LAN20を介して自車両に搭載された他のECUと通信を行う通信部12と、不揮発性メモリ等から構成される記憶部13を備える。
【0031】
そして、この制御部11は、電磁弁16,真空ポンプ14,コンプレッサー15を制御し、エコ運転度に応じて、ステアリング18の孔部18aからの空気の吸入や排出を行う。
【0032】
すなわち、3ポートの方向制御弁として構成された電磁弁16は、A〜Cポートの三つを有しており、A管17a,B管17b,C管17cは、それぞれ、Aポート,Bポート,Cポートに繋がれている。Aポートに繋がるA管17aは、ステアリング18に形成された孔部18a,内部空間,Aポートに連通する空気の流通経路を形成している。また、電磁弁16では、制御部11からの制御信号に応じて、AポートとBポートとの間に空気の流通経路(吸入経路)が形成された状態と、AポートとCポートとの間に空気の流通経路(排出経路)が形成された状態の2種類の状態が切り替えられる。
【0033】
そして、電磁弁16に吸入経路が形成された際には、A,B管17a,17bと電磁弁16により、ステアリング18の孔部18aと真空ポンプ14とを繋ぐ空気の流通経路が形成された状態となり、このときに真空ポンプ14が作動されると、孔部18aからの空気の吸入が行われる。
【0034】
また、電磁弁16に排出経路が形成された際には、A,C管17a,17cと、電磁弁16により、ステアリング18の孔部18aとコンプレッサー15とを繋ぐ空気の流通経路が形成された状態となり、このときにコンプレッサー15が作動されると、孔部18aからの圧縮された空気の排出が行われる。
【0035】
なお、ステアリング18のスポークではなく、ステアリング18のホイールリングや、ステアリングボスを覆うカバーに、孔部が形成されていても良い。
[動作の説明]
次に、第一実施形態のエコ運転支援システム1の動作について説明する。
【0036】
第一実施形態のエコ運転支援システム1では、エコ運転度として自車両の瞬間燃費が計測されると共に、10・15モード燃費(一例として18[km/l])が、エコ運転の良し悪しを判別するための基準値として設定される。そして、瞬間燃費から該基準値を減算して得られた差分(燃費差分とも記載)に応じて、ステアリング18の孔部18aにおける空気の流れが調整される。このため、ステアリング18を握った状態で孔部18aの付近に配されたドライバの手には、瞬間燃費に応じた強さで、孔部18aから押される、或いは、孔部18aに引っ張られる等の圧覚を生じさせることができ、これにより、自車両のエコ運転度がどの程度かがドライバに通知される。
【0037】
具体的に説明すると、エコ運転支援ECU10の記憶部13には、燃費差分と孔部18aを流れる空気の制御量との対応関係を示す制御量設定用データが記憶されている。そして、制御量設定用データに基づき、0.1[km/l]刻みで燃費差分に応じた空気の制御量が特定され、特定された制御量に応じて電磁弁16,真空ポンプ14,コンプレッサー15を制御することで、孔部18aにおける空気の流れが調整される。
【0038】
図1(b)に記載のグラフは、制御量設定用データが示す燃費差分と孔部18aを流れる空気の制御量との対応関係を示しており、該グラフでは、横軸が燃費差分に、縦軸が空気の制御量に対応している。
【0039】
該グラフにおける縦軸の正の値に対応する領域は、コンプレッサー15により孔部18aから空気が排出される場合に対応しており、該領域の縦軸が示す空気の制御量は、コンプレッサー15から排出される空気の空気圧[kPa](排出空気圧とも記載)となっている。なお、該グラフでは、排出空気圧が、大気圧(101,325[Pa])に比べどれだけ高いかが示されている。
【0040】
一方、該グラフにおける縦軸の負の値に対応する領域は、真空ポンプ14により孔部18aから空気が吸入される場合に対応しており、該領域の縦軸が示す空気の制御量は、単位時間当りに真空ポンプ14により吸入される空気の量(排出速度[m3/min])となっている。
【0041】
そして、該グラフが示すように、燃費差分が負である場合には、コンプレッサー15により孔部18aから空気が排出され、燃費差分が低下するほど、コンプレッサー15から排出される空気の圧力が高くなる(ただし、燃費差分が−13.0[km/l]以下の場合は、排出空気圧は常に大気圧+68[kPa]となる)。このため、瞬間燃費が悪化するにつれ、孔部18aからはより強い勢いで空気が排出される。
【0042】
また、燃費差分が正である場合には、真空ポンプ14により孔部18aから空気が吸入され、燃費差分が1.9[km/l]未満の所定値に達するまでは、燃費差分が増加するほど、吸入される空気の排出速度が高くなり、燃費差分が該所定値に達した後は、該排出速度が0.1[m3/min]で維持される。このため、瞬間燃費が向上するにつれ、孔部18aからより強い勢いで空気が吸入される(燃費差分が上記所定値に達した後の排出速度は、0.1[m3/min]に限らず、例えば、0.2[m3/min],0.05[m3/min]等の特定値であっても良い)。
【0043】
なお、該グラフは、縦軸の値が0となる場合(燃料差分が0である場合)は、孔部18aからの空気の排出や吸入が行われないことを示している。
また、瞬間燃費に限らず、アクセルペダル踏み量,加速度等をエコ運転度として用いても良いし、例えば、瞬間燃費,アクセルペダル踏み量,加速度等に基づき得られた総合的なエコ運転の評価結果を示す数値を、エコ運転度として用いても良い。
【0044】
次に、瞬間燃費に応じてステアリング18の孔部18aにおける空気の流れを調整するエコ運転度通知処理について、図2に記載のフローチャートを用いて説明する。なお、本処理は、エコ運転支援ECU10の制御部11にて100ms周期で実行される。
【0045】
S105では、制御部11は、車内LAN20を介して、他のECUから、自車両の車速,燃料噴射量等を取得し、S110に処理を移行する。
S110では、制御部11は、自車両の車速,燃料噴射量等に基づき瞬間燃費を算出し、S115に処理を移行する。
【0046】
S115では、制御部11は、瞬間燃費から10・15モード燃費を減算して燃費差分を算出し、S120に処理を移行する。
S120では、制御部11は、燃費差分が正の値であるか、負の値であるか、ゼロであるかを判定する。そして、燃費差分が正の値である場合(瞬間燃費が10・15モード燃費よりも良い場合)には、S125に処理を移行し、燃費差分が負の値である場合(瞬間燃費が10・15モード燃費よりも悪い場合)には、S140に処理を移行する。また、燃費差分が0である場合(瞬間燃費が10・15モード燃費に等しい場合)には、S155に処理を移行する。
【0047】
S125では、制御部11は、上述した制御量設定データに基づき、燃費差分に応じて真空ポンプ14における排出速度を設定し、S130に処理を移行する。
S130では、制御部11は、電磁弁16に対して制御信号を出力してAポートとBポートとの間に吸入経路が形成された状態に設定し、S135に処理を移行する。
【0048】
S135では、制御部11は、設定した排出速度で空気の吸入を行うよう真空ポンプ14を作動させ、本処理を終了する。
また、燃費差分が負の値である場合に移行するS140では、制御部11は、上述した制御量設定データに基づき、燃費差分に応じてコンプレッサー15における排出空気圧を設定し、S145に処理を移行する。
【0049】
S145では、制御部11は、電磁弁16に対して制御信号を出力してAポートとCポートとの間に排出経路が形成された状態に設定し、S150に処理を移行する。
S150では、制御部11は、設定した排出空気圧にてコンプレッサー15を作動させ、本処理を終了する。
【0050】
また、燃費差分がゼロである場合に移行するS155では、制御部11は、真空ポンプ14とコンプレッサー15を停止させ、孔部18aにて空気が流れていない状態とし、本処理を終了する。
【0051】
次に、自車両のアクセルペダルの操作等に応じて瞬間燃費が変化し、これに応じて、ステアリング18における孔部18aにて空気が流れる方向や強さが変化する様子の一例について、図3に記載のグラフを用いて説明する。
【0052】
図3における上段側のグラフは、自車両におけるアクセルペダルの踏み量、及び、車速の変動を示している。また、下段側のグラフは、アクセルペダルの踏み量や車速等により定められる自車両の瞬間燃費の変動と、ステアリング18の孔部18aを流れる空気の制御量(コンプレッサー15における排出空気圧、或いは、真空ポンプ14における排出速度)の変動を示している。
【0053】
下段側のグラフが示すように、瞬間燃費が10・15モード燃費(18[km/l])を下回る場合には、ステアリング18の孔部18aから空気が排出され、瞬間燃費が悪い場合ほどコンプレッサー15における排出空気圧が高くなり、孔部18aから勢い良く空気が排出される。
【0054】
一方、アクセルペダル踏み量が0[%]となり、瞬間燃費が10・15モード燃費を超えた場合には、孔部18aから空気が吸入される。
[第二実施形態]
次に、第二実施形態のエコ運転支援システム1について説明する。第二実施形態のエコ運転支援システム1は、第一実施形態と同様のエコ運転支援ECU10,真空ポンプ14,コンプレッサー15,電磁弁16,A〜C管17a〜17cを備える。しかしながら、第一実施形態では、ステアリング18に形成された孔部18aにおける空気の流れがエコ運転度(瞬間燃費)に応じて調整されたのに対し、第二実施形態では、フットレスト19に形成された孔部19aにおける空気の流れがエコ運転度に応じて調整され、この点において相違している(図4(a)参照)。
【0055】
すなわち、第二実施形態では、エコ運転支援システム1が搭載された自車両は、AT車として構成されており、運転席の床部におけるブレーキペダルを挟んでアクセルペダルに向かい合う位置の周辺には、アクセルペダル等の操作を行わないドライバの足が乗せられるフットレスト19が設けられている。そして、このフットレスト19におけるドライバの足裏に接触する領域には、直径2cmの円形の孔部19aが形成されていると共に、フットレスト19の内部には、孔部19aに連通する内部空間が形成されている。
【0056】
そして、図4(a)に記載されているように、第二実施形態のエコ運転支援システム1では、A管17aは、自車両のフットレスト19の孔部19aに連通する内部空間と電磁弁16とを繋ぐよう構成されている。また、エコ運転支援ECU10では、第一実施形態と同様のエコ運転度通知処理が行われ、制御量設定用データと、瞬間燃費から10・15モード燃費を減算して得られた燃費差分とに基づき、フットレスト19の孔部19aにおける空気の流れが調整される。
【0057】
このため、フットレスト19に乗せられたドライバの足裏に対し、瞬間燃費に応じた強さで、孔部19aから押される、或いは、孔部19aに引っ張られる力覚を生じさせることができ、これにより、自車両のエコ運転度がどの程度かがドライバに通知される。
【0058】
また、第一実施形態ではドライバの手に対し直接的に圧覚等を生じさせるが、第二実施形態では、ドライバの足裏に対し靴底越しに力覚を生じさせる必要があるため、第一実施形態よりも空気の勢いを強めた状態で、孔部19aからの空気の排出或いは吸入が行われる。
【0059】
すなわち、図4(b)には、第二実施形態における制御量設定用データが示す燃費差分と孔部19aを流れる空気の制御量との対応関係を示すグラフが記載されている。該グラフでは、横軸が燃費差分に、縦軸が空気の制御量に対応している。
【0060】
該グラフにおいても同様に、縦軸の正の値に対応する領域は空気が排出される場合に対応しており、該領域の縦軸が示す空気の制御量は、コンプレッサー15における排出空気圧となっている(該グラフでも、排出空気圧は、大気圧(101,325[Pa])に比べどれだけ高いかが示されている)。
【0061】
また、該グラフにおける縦軸の負の値に対応する領域は空気が吸入される場合に対応しており、該領域の縦軸が示す空気の制御量は、真空ポンプ14における排出速度となっている。
【0062】
該グラフは、第一実施形態と同様に、燃費差分が負である場合には、コンプレッサー15により孔部18aから空気が排出され、燃費差分が低下するほど、コンプレッサー15における排出空気圧が高くなることを示している。また、燃費差分が−13.0[km/l]以下の場合は、排出空気圧は常に大気圧+211[kPa]となり、全体として、第一実施形態よりも高い排出空気圧での空気の排出が行われることを示している。
【0063】
また、該グラフは、第一実施形態と同様に、燃費差分が正である場合には、真空ポンプ14により孔部18aから空気が吸入され、燃費差分が増加するほど排出速度が高くなることを示している。そして、燃費差分が1.9[km/l]に達すると、該排出速度が0.2[m3/min]で維持され、第一実施形態よりも高い排出速度での空気の吸入が行われることを示している(燃費差分が上記所定値に達した後の排出速度は、0.2[m3/min]に限らず、例えば、0.3[m3/min],0.1[m3/min]等の特定値であっても良い)。
【0064】
なお、瞬間燃費に限らず、アクセルペダル踏み量,加速度等をエコ運転度として用いても良いし、例えば、瞬間燃費,アクセルペダル踏み量,加速度等に基づき得られた総合的なエコ運転の評価結果を示す数値を、エコ運転度として用いても良い。
【0065】
[効果]
第一,第二実施形態のエコ運転支援システム1によれば、ステアリング18やフットレスト19に形成された孔部から空気が排出される状態と、該孔部から空気が吸入される状態と、排出及び吸入が行われない状態の三つ状態を、瞬間燃費等のエコ運転度に応じて切り替えることができる。すなわち、エコ運転度に応じて、ドライバの手や足裏を空気圧により押すことや引っ張ることができ、圧覚や力覚を利用したドライバへのエコ運転度の通知が可能となる。
【0066】
このため、視覚を介してドライバにエコ運転度を通知する場合のように、ドライバの視線を変えさせることが無く、また、音声によりエコ運転度を通知する場合のように、同乗者に不快感を与えることは無い。
【0067】
したがって、第一,第二実施形態のエコ運転支援システム1によれば、ドライバを煩わせることや、同乗者に不快感を与えることなく、ドライバに対しエコ運転度を通知することができる。
【0068】
[他の実施形態]
(1)第一,第二実施形態のエコ運転支援システム1では、エコ運転度と基準値との差分の絶対値に応じて、コンプレッサー15における排出空気圧や真空ポンプ14における排出速度が設定されている。しかしながら、該絶対値に応じた排出空気量等の設定を行わず、単に、エコ運転度と基準値との大小関係に応じて、コンプレッサー15を作動させて空気を排出させるか、或いは、真空ポンプ14を作動させて空気を吸入させるかを切り替えても良い。
【0069】
また、エコ運転度と基準値とを比較することで、エコ運転度が基準値を超えて悪化したか否かを判定する判定処理(例えば、瞬間燃費が10・15モード燃費よりも悪化したか否かを判定する処理)を行っても良い。そして、エコ運転度が基準値を超えて悪化した場合には、コンプレッサー15或いは真空ポンプ14を作動させ、孔部からの空気の排出或いは吸入を行っても良い(このとき、エコ運転度と基準値との差分の絶対値に応じた強さで、空気の排出等を行っても良い)。また、エコ運転度が基準値以上であり、良好なエコ運転が行われている場合には、コンプレッサー15及び真空ポンプ14を停止させ、孔部における空気の流れを停止させても良い。なお、上記判定処理が、特許請求の範囲における判定手段に相当する。
【0070】
また、エコ運転度についての基準値を設けることなく、エコ運転度に応じて定められた排出空気量或いは排出速度により、コンプレッサー15或いは真空ポンプ14を作動させ、基準値に関係なく、孔部においてエコ運転度に応じた強さの空気の流れを生成しても良い。
【0071】
このような場合であっても、同様の効果を得ることができる。
(2)また、第一,第二実施形態のエコ運転支援システム1では、10・15モード燃費が基準値として設定され、エコ運転度として計測された瞬間燃費から基準値を減算して得られる燃費差分に応じて、孔部における空気の流れが調整される。
【0072】
しかしながら、これに限定されることは無く、例えば、エコ運転支援ECU10の制御部11は、計測した瞬間燃費を記憶部13に記憶しておき、記憶部13に記憶されている瞬間燃費の平均値を基準値として設定し、同様の処理を行っても良い。
【0073】
また、例えば、10・15モード燃費(18[km/l])を含む一定の範囲の燃費(例えば15〜18[km/l])といった具合に、所定範囲のエコ運転度を基準値としても良い。そして、エコ運転支援ECU10の制御部11は、計測されたエコ運転度が基準値に含まれる場合には、孔部における空気の流れを停止させても良い。また、該エコ運転度が基準値の上限を超える場合には、孔部において排出される方向(或いは吸入される方向)の空気の流れを生じさせ、基準値の下限を下回る場合には、孔部において吸入される方向(或いは排出される方向)の空気の流れを生じさせても良い。
【0074】
このような場合であっても、同様の効果を得ることができる。
(3)また、第一,第二実施形態のエコ運転支援システムでは、空気の流れの調整が行われる孔部は、ステアリング18やフットレスト19に形成されている。
【0075】
しかしながら、これに限定されることはなく、孔部は、例えば、運転席の床の表面におけるブレーキペダルを挟んでアクセルペダルに向かい合う位置の周辺等のように、運転席、或いは、運転席周辺に配置された部品における、標準的なドライビングポジションを取ったドライバが、容易に体の一部を近づけたり、遠ざけたりすることができる部分に形成されていても良い。
【0076】
また、第一,第二実施形態のエコ運転支援システム1では、真空ポンプ14とコンプレッサー15とにより孔部における空気の流れが生成されるが、これに限らず、例えば、ファンにより孔部における空気の流れを生成しても良い。
【0077】
このような場合であっても、同様の効果を得ることができる。
[特許請求の範囲との対応]
上記実施形態の説明で用いた用語と、特許請求の範囲の記載に用いた用語との対応を示す。
【0078】
エコ運転支援ECU10,真空ポンプ14,コンプレッサー15,電磁弁16,A〜C管17a〜17cが、運転支援装置に相当する。
また、真空ポンプ14,コンプレッサー15が、空気制御手段に相当する。
【0079】
また、エコ運転度通知処理におけるS110が計測手段に、S125〜S155が通知手段に相当する。
【符号の説明】
【0080】
1…エコ運転支援システム、10…エコ運転支援ECU、11…制御部、12…通信部、13…記憶部、14…真空ポンプ、15…コンプレッサー、16…電磁弁、17a…A管、17b…B管、17c…C管、18…ステアリング、18a…孔部、19…フットレスト、19a…孔部、20…車内LAN。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の部品におけるドライバの体の一部に接触可能な部分に形成された孔部からの空気の排出或いは吸入を行う空気制御手段と、
排気ガスの排出、或いは、エネルギーの消費を抑えた状態での運転であるエコ運転が、自車両においてどの程度行われているかの度合いであるエコ運転度を計測する計測手段と、
前記計測手段により計測された前記エコ運転度に応じて、前記空気制御手段を介して前記孔部における空気の流れの調整を行うことで、該エコ運転度をドライバに通知する通知手段と、
を備えることを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援装置において、
前記エコ運転の良し悪しを判別するうえでの目安となる前記エコ運転度を示す数値を基準値とし、
前記通知手段は、前記調整において、前記計測手段により計測された前記エコ運転度が前記基準値である場合には、前記孔部における空気の流れを停止させると共に、該エコ運転度が前記基準値で無い場合には、前記孔部における空気の流れを生じさせ、その際には、該孔部において排出される方向に空気を流すか、吸入される方向に空気を流すかを、前記エコ運転度と前記基準値との大小関係に応じて定めること、
を特徴とする運転支援装置。
【請求項3】
請求項1に記載の運転支援装置において、
前記エコ運転の良し悪しを判別するうえでの目安となる前記エコ運転度を示す数値を基準値とし、
前記計測手段により計測された前記エコ運転度と前記基準値とを比較することで、良好な前記エコ運転が行われているか否かを判定する判定手段をさらに備え、
前記通知手段は、前記調整において、前記判定手段による判定で肯定判定が得られた場合には、前記孔部における空気の流れを停止させ、該判定で否定判定が得られた場合には、前記孔部における空気の流れを生じさせること、
を特徴とする運転支援装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の運転支援装置において、
前記空気制御手段は、設定された強さで、前記孔部からの空気の排出或いは吸入を行い、
前記通知手段は、前記調整において、前記計測手段により計測された前記エコ運転度と前記基準値との差分の絶対値に応じた強さの前記孔部における空気の流れを生じさせること、
を特徴とする運転支援装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の運転支援装置において、
前記部品は、自車両のステアリングとして構成されており、前記孔部は、ドライバが当該ステアリングを握っている手により接触可能な部分に形成されていること、
を特徴とする運転支援装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の運転支援装置において、
前記部品は、運転席の床部に配置され、ドライバの足裏が乗せられるフットレストとして構成されており、前記孔部は、当該フットレストに乗せられたドライバの足裏に接触する部分に形成されていること、
を特徴とする運転支援装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のうちのいずれか1項に記載の運転支援装置において、
前記エコ運転度とは、運転中の予め定められた瞬間における自車両の燃費であること、
を特徴とする運転支援装置。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−2325(P2013−2325A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132467(P2011−132467)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】