運転整理案作成装置及びダイヤ評価装置
【課題】 列車ダイヤが乱れたときに、各時間帯ならびに走行区間毎に適正な輸送需要を算出するとともに、その輸送需要に基づいた適切な運転整理案を導出する。
【解決手段】 時間帯と走行区間(発駅、着駅)で規定されたエリア単位に、運転再開までに駅に溜まった旅客や列車に乗り切れなくて積み残しとなった旅客を含めた旅客需要を算出する。次に、予測ダイヤ上で各エリアにおける列車の発本数を求め、輸送力不足が予想されるエリアを判定し、このエリアの輸送力を増加させる運転整理案を作成する。また、旅客需要を算出することで、運転再開までに駅に溜まった旅客や積み残し乗客などの輸送を完了する列車を特定し、その列車以降の列車を間引くことで、輸送力を確保した上で、遅延の回復が可能な運転整理を実現する運転整理案作成装置を提供する。
【解決手段】 時間帯と走行区間(発駅、着駅)で規定されたエリア単位に、運転再開までに駅に溜まった旅客や列車に乗り切れなくて積み残しとなった旅客を含めた旅客需要を算出する。次に、予測ダイヤ上で各エリアにおける列車の発本数を求め、輸送力不足が予想されるエリアを判定し、このエリアの輸送力を増加させる運転整理案を作成する。また、旅客需要を算出することで、運転再開までに駅に溜まった旅客や積み残し乗客などの輸送を完了する列車を特定し、その列車以降の列車を間引くことで、輸送力を確保した上で、遅延の回復が可能な運転整理を実現する運転整理案作成装置を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送障害などの列車乱れ発生時に、旅客需要に応じた適切な輸送量を確保できる運転整理を実施するための支援するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
運転整理を実施するシステムの従来例として、特許文献1がある。そこでは、予想ダイヤを作成する列車運行シミュレーション部と、予め記録された通常時の各駅及び各時間帯の列車の到着本数並びに現在の列車位置に基づき、各駅への列車の予想到着間隔を通常の時間間隔に近づくように運行列車の整理案を決定している。これに基づき、列車運行シミュレーション部に対し予想ダイヤの変更を行わせる列車運行管理システムを提供するものである。このシステムにより、列車の運行が乱れた際に、その列車の各駅への到着間隔を通常時の時間間隔へ近づけるよう、運転順序の変更や運転区間の変更を含む運転整理が実現される。
【0003】
【特許文献1】特開2001−1904号公報(全体)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、輸送障害等の発生時には、ある一定時間列車が止まることもあり、これにより平常時に比べ、多くの乗客が駅にあふれる場合がある。このため、運転再開後は計画されたダイヤ以上に輸送力を確保し、列車が止まった間に駅に溜まった乗客を運べることも必要とされる。しかしながら、従来の発明では、このような観点からの運転整理は実現できない。従来例では、運転整理の目標は列車間隔を通常時の間隔に近づけることであり、特に、大規模な輸送障害では、そのようにして運行される列車だけでは、旅客を輸送するのに十分ではない。
【0005】
本発明の目的は、適正な旅客需要を算出すると共に、それに応じた運転整理を実施可能な運転整理装置を提供することである。
【0006】
また、輸送障害等が発生したときには、上記のような輸送力の低下(列車本数の減少)に加え、列車が大幅に遅延する。このような場合には、遅延している列車を間引いて、遅延の回復を図ることが必要となる。しかしながら、列車を間引くことは、輸送力の低下を招くという問題がある。
【0007】
本発明の他の目的は、適正な旅客需要を算出することで、運転再開までに駅に溜まった旅客や積み残し乗客などの輸送を完了し、輸送力を確保しつつ、遅延の回復が可能な運転整理を実現する運転整理装置を提供することである。
【0008】
さらに、本発明の他の目的は、運転整理の結果を、ユーザがより適正に評価できるように、ユーザに分かりやすく提示可能なダイヤ評価装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の特徴とするところは、列車運行の乱れが生じた場合に、実施ダイヤと実績ダイヤに基づき予想ダイヤを作成する予想ダイヤ作成手段を備えたことである。また、時間帯・区間(区間の開始駅、区間の終了駅)で規定されるエリア単位に、想定される旅客の輸送需要を算出し、この旅客需要に基づき、当該エリアにて必要とされる列車本数を算出する必要列車本数算出手段を備える。
【0010】
また、前記エリアにおいて運行が予想される列車の本数を、予想ダイヤでの列車の発車時刻に基づき算出し、この列車本数と当該エリアで必要となる列車本数の比較結果に基づき、当該エリアの改善目標を設定し、この改善目標を達成するような運転整理案を作成し、その運転整理案を実施ダイヤに適用して予想ダイヤを更新する運転整理実施手段を備える。
【0011】
本発明の第2の特徴とするところは、列車当りの最大乗車人数を用いて、想定される旅客を輸送可能な列車本数を算出し、これをもって必要列車本数とするような必要列車本数算出手段を備える。
【0012】
本発明の第3の特徴とするところは、予めエリア単位に規定された計画時輸送需要をもとに、第1のエリアの輸送需要と当該エリアにて予想される本数の列車により輸送可能な旅客数との差分を算出し、この差分を積み残し乗客数として、第1のエリアと同一走行区間でかつ次の時間帯で規定される第2のエリアの計画時輸送需要に加えることで、第2のエリアにて想定される輸送需要を算出するような必要列車本数算出手段を備える。
【0013】
本発明の第4の特徴とするところは、予想される列車本数が必要とされる列車本数より少ないエリアが存在する場合、当該エリアを走行する列車の本数を増加させるような運転整理案を作成し、その運転整理案を実施ダイヤに適用して予想ダイヤを更新するような運転整理実施手段を備える。
【0014】
本発明の第5の特徴とするところは、予想ダイヤ上で遅延が予想される第1の列車について、前記列車の走行区間と同区間でその直前を走行する第2の列車までで、この第2の列車が走行する各エリアの予想列車本数が必要列車本数と同数以上かどうかを判定し、この条件を満足する場合、前記第2の列車の直後を走行する第1の列車を間引くことで列車ダイヤの遅延を回復するような運転整理案を作成し、その運転整理案を実施ダイヤに適用して更新して出力するような運転整理実施手段を備える。
【0015】
本発明の第6の特徴とするところは、運転整理案を作成し、その運転整理案を実施ダイヤに適用して予想ダイヤを更新すると共に、その運転整理を作成する元となったダイヤの改善目標と運転整理内容を対応付けて出力するような運転整理実施手段を備える。
【0016】
本発明の第7の特徴とするところは、時間帯・区間(区間の開始駅、区間の終了駅)で規定されるエリアにおいて、運行される列車の本数に基づいて輸送可能な旅客数を算出する輸送旅客数算出手段と、エリア毎に想定される旅客の輸送需要を算出する輸送需要算出手段と、算出された輸送需要を当該エリアにおける輸送可能な旅客数に基づいて評価し、評価結果を表示する手段を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の第8の特徴とするところは、各エリアの評価結果を、ダイヤ図上の当該エリアの場所に重ねて表示する表示手段を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の第9の特徴とするところは、時間帯・区間(区間の開始駅、区間の終了駅)で規定されるエリア毎に列車本数、列車間隔、駅停車時間、駅間走行時間などの評価項目の評価を行うものであって、エリアを走行する列車を選出し、予め評価項目毎に規定された評価に必要な値を、前記選出された列車の運行情報を用いて算出する手段と、前記エリアをダイヤ図上で明示すると共に、このエリアに対して算出した各評価項目の評価値をレーダーチャートの形式で表示する表示手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の望ましい実施態様によれば、時間帯と区間で規定した各エリアに対して適切な旅客需要を算出できる。また、その旅客需要に対し、必要となる列車本数が確保されていない場合には、そのエリアを走行する列車を増やすための運転整理を実行できる。
【0020】
本発明の他の実施態様によれば、必要な列車本数が確保されているが、走行が予想される列車に遅延が発生する場合には、それらの列車を運休させることで、列車遅延を回復することができる。これらにより、必要な輸送力を確保した上で、列車ダイヤの遅延を回復させるような運転整理を実施できるようになる。
【0021】
本発明のさらに他の実施態様によれば、予想ダイヤ上の列車に基づき、エリア単位に輸送力などを評価し、輸送力が不足している箇所などを、ダイヤ図と対応付けて分かり易く提示できるようになる。これらにより、運転整理の必要な箇所やその効果を多面的かつ分かりやすくユーザに提供できるようになる。
【0022】
本発明のその他の目的と特徴は、以下に述べる実施形態の中で明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、図面を参照して本発明の実施態様を詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の第1の実施形態である運転整理案作成装置のシステム構成図である。
【0025】
運転整理案作成装置1は、処理実行部101、データ記憶部102、通信処理部103、入力処理部104、表示処理部105及びこれらを接続するバス106からなる。処理実行部101は、CPU及びROMで構成される。データ記憶部102は、RAMで構成される。通信処理部103は、運行管理システムとネットワーク13を介しての通信を行う。入力処理部104は、キーボード141やマウス142などによるユーザ入力を受け付ける。表示処理部105は、列車ダイヤや運転整理結果をCRT151などに表示する。
【0026】
本実施形態では、こうした構成において、運転整理作成処理部110による運転整理案を処理実行部101に読み込み、これを実行させる。この運転整理作成処理部110は、予想ダイヤ作成処理部111、ダイヤ解析処理部112、改善目標設定処理部113を経て、運転整理作成処理部114に至る機能部構成である。
【0027】
また、データ記憶部102では、運転整理作成処理部110が利用するデータを管理しており、次のような管理部を備えている。すなわち、実施ダイヤ管理部120、実績情報管理部121、支障条件管理部122、予想ダイヤ管理部123、ダイヤ解析情報管理部124、並びに改善目標情報管理部125である。
【0028】
予想ダイヤ作成処理部111は、実施ダイヤ管理部120、実績情報管理部121、支障条件管理部122が管理する情報に基づき、予想ダイヤを作成し、それを予想ダイヤ管理部123に格納する。
【0029】
実施ダイヤ管理部120には、実施される計画の列車ダイヤが格納されている。実施ダイヤは、列車毎に、列車番号、列車種別、行き先、前運用の列車番号、後運用の列車番号と、当該列車の各駅毎の駅到着時間、駅出発時間、使用する番線などの情報からなる。
【0030】
図2は、図1の実施形態の運転整理案作成装置が管理する実施ダイヤの例を示す。例えば、図2の実施ダイヤ200において、列車番号10レで示される列車は、列車種別は普通、行き先はA駅、G駅発車時刻は10:21、A駅到着時刻は10:50、前運用が3レで示される列車であり、後運用は15レで示される列車である。
【0031】
実績情報管理部121では、各列車の最新在線位置の管理を行う。運行管理システムから上がってくる運行実績情報、すなわち各列車の駅出発実績時刻、駅到着実績時刻、利用実績番線を、通信処理部103を介して受信し、列車毎に管理する。
【0032】
支障条件管理部122は、入力処理部104により入力された輸送障害の内容を管理する。これは、輸送障害の発生時刻、発生場所(駅中間、駅及び番線、など)及び輸送再開の予定時刻とからなる。
【0033】
予想ダイヤ作成処理部111では、これらの情報を活用して、今後の運行予測を行い、予想ダイヤを作成して、予想ダイヤ管理部123に格納する。
【0034】
図3は、第1の実施形態における乱れ発生時の予想ダイヤの作成例を示す。図3の予想ダイヤ1000では、時刻10:00に、上り方面(A駅行き方面)E駅とD駅の駅間にて輸送障害が発生し、その輸送障害の復旧(運転再開予定)が10:30である場合に、予想されるダイヤを示すものである。
【0035】
本実施形態では、こうしたダイヤを、走行区間(区間開始駅、区間終了駅で規定)、時間帯で規定される評価エリアに区切り、その評価エリア毎に、ダイヤの解析と評価を行う。
【0036】
図4は、区間と時間帯で規定されたエリアとダイヤの関係図である。図4(1)に示したように、ダイヤはあらかじめ規定された走行区間、時間帯で区切られる。例えば、A駅からC駅までの走行区間及び10:00〜10:30の時間帯は、No.1で示されている。このNo.1で区切られたところには、A駅からC駅(すなわち下り方面)の列車だけでなく、C駅からA駅(すなわち上り方面)の列車が走行する。それぞれ列車を分けて評価できるよう、実際には、図4(2)に示すように、10:00〜10:30の時間帯でA駅からC駅までの区間で規定されるエリアを「下り−1」、10:00〜10:30の時間帯でC駅からA駅までの区間で規定されるエリアを「上り−1」と呼ぶ。
【0037】
これをより具体的に記載したのが図4(2)である。ちょうど、G駅を軸に、図4(1)の上り方面の列車だけ下側に倒したようなものと考えればよい。こうすると矢印911〜913は、方面にかかわらず列車の進行方向を示すことになる。ダイヤの評価や対処は、時刻の早いところから、列車の始発の方から評価するのが都合良いので、各エリアの評価やその評価に基づく対処は、矢印911〜913の順序で行う。
【0038】
図5は、エリアを示す区切りを遅延発生後のダイヤに重畳したイメージを示す。
【0039】
次にエリア毎のダイヤ解析と評価について説明する。
【0040】
ダイヤ解析情報管理部124では、図6に示すテーブル600を管理する。このテーブルの情報を活用して、各エリアを解析し、解析結果を、またこのテーブルに格納する。
【0041】
計画旅客需要605の列には、予め定義された各エリアにおける想定旅客需要が入っている。これは、通常、平日/土/休日毎に管理され過去の旅客輸送実績などに基づき決定されるもので、その時間帯およびその区間に平均的に乗車するであろう旅客数を登録したものである。
【0042】
旅客需要606は、輸送力の不足などで積み残しが発生したときにその積み残し人員を計画旅客需要に加えたものであり、ダイヤの乱れ等に応じて変化する値である。例えば、エリア上り−5(E〜C駅、10:30〜11:00)の計画旅客需要は4200人であるが、旅客需要は7000人となっている。これは、その直前の時間帯のエリア上り−2(E〜C駅、10:00〜10:30)の積み残し乗客2800人を加えた値となっている。
【0043】
必要本数607は、旅客需要606で示される旅客数を運ぶために最低必要な列車本数を示す。これは、列車の最大乗車人数で旅客需要を割り、その少数以下を切り上げた値である。例えば、最大乗車人数を2100人とすれば、上り−3のエリアの旅客需要2800人を輸送するのに必要な列車本数は2本となる。また、上り−5のエリアの旅客需要7000人を輸送するのに必要な列車本数は4本となる。
【0044】
予想列車本数608は、当該エリアで示される始発駅を、当該エリアで示される時間帯に発車する列車の本数である。これを図7で説明する。図7はエリア上りー1を切り出したものであり、このエリアには、2レ(701で示す)、4レ(702で示す)、6レ(703で示す)が走行している。しかし、2レはC駅の発車時刻が当該エリアの範囲外であり、当該エリアで発生する旅客に対しては、輸送サービスを行っていない。結果、当該エリアの旅客に対し輸送サービスを行う、4レ(702)、6レ(703)が当該エリアの予想列車となり、予想列車本数は2本ということになる。
【0045】
次に、再び図6を用いて積み残し乗客数の説明を行う。旅客需要606と予想本数608から、積み残し乗客数609を算出する。すなわち、旅客需要をn、予想本数をmとすれば、積み残し乗客数kは、k=n−(m*最大乗車人数)で算出できる。ただし、kが0以下の時は0とする。
【0046】
ここで、最大乗車人数を2100人とすれば、例えば、エリア上り−3の積み残し乗客数は、旅客需要が2800人、予想本数が1本だから、700人となり、エリア上り−6の積み残し乗客数は、旅客需要が3500人、予想本数が3本だから、0人となる。
【0047】
以上のようにして、上り/下りの全てのエリアに対して、旅客需要606、必要本数607、予想本数608、積み残し乗客数609を算出する。これにより、各エリアにおける輸送力の過不足を把握できる。
【0048】
次に、今算出した情報を使って、輸送力の足りないエリアに対して、輸送力を増やすための運転整理を行う。まず、輸送力の足りないエリアを選択し、次にそのエリアに対して、図8〜10に示すような運転整理を実施する。
【0049】
図8は、輸送力を確保する運転整理として、延発を適用した場合のダイヤ図である。エリア801(C〜A駅、11:30〜12:00)での輸送力確保のため、直前エリアを走行する列車810(14レ)のC駅発車時刻を延期させて、エリア801内になるようにしたものである(延発)。この運転整理により、エリア801は予想本数1本から2本に輸送力を増やすことができる。ただし、設備上こうした制御ができることと、エリア801の直前エリア(C〜A駅、11:00〜11:30)の輸送力が確保されていること(列車810を延発させても予想列車本数が必要本数以上であること)が、この運転整理を実施するための条件である。
【0050】
図9は、エリア901(C〜A駅、10:00〜10:30)での輸送力確保のため、列車を入出区可能なC駅から、臨時列車902(臨2002、及びその後運用として臨2003)を運行させたものである。この運転整理により、エリア901は予想本数1本から2本に輸送力を増やすことができる。ただし、C駅が出区可能な駅であること、出区のための時間や車両が確保されていること、などが、この運転整理を実施するための条件である。
【0051】
図10は、途中折り返しの例である。エリア1001(C〜A駅、10:30〜11:00)での輸送力確保のため、列車1002(5レ)をC駅で折り返し、列車1003(9000レ)として、エリア1001を走行させるようにした(なお、列車1002(5レ)のC駅より先は部分運休になる)。この途中折り返しにより、エリア1001は予想本数1本から2本に輸送力を増やすことができる。ただし、C駅が折り返し可能な番線を持つことや、列車1002(5レ)を部分運休しても下り方面の輸送力が確保されていることが、この運転整理を実施するための条件である。
【0052】
なお、列車1003(9000レ)は遅延列車(6レ)の後運用である(11レ)につなぎ、列車1002の後運用(12レ)を運休として、後運用未定となった6レから前運用が未定となった17レまで、順次折り返しを変更する。
【0053】
なお、輸送力を増やすための運転整理としては、上記に限定されるものではなく、番線支障などの運転阻害を回避するための番線変更や、待避関係を解除するための順序変更、延長運転等、様々な運転整理をエリアの輸送力を確保するために用いることができる。
【0054】
次に輸送障害等により発生した列車の遅延を回復させるための予想ダイヤの解析とそれに基づく運転整理について述べる。
【0055】
列車遅延の回復のため、遅延している列車を間引く(運休させる)ことが行われる。しかし、輸送力が確保されていない段階で列車を間引くと、さらに輸送力が低下する恐れがある。そこで、本発明では、輸送力が確保された後の列車で遅延している列車に対してのみ、その列車を運休させ、遅延を回復させる。これにより、必要な輸送力の確保を最優先にしながら、遅延の回復を行うことが可能である。
【0056】
以下、図11、図6を用いてこれを説明する。図11において、G駅を出発するそれぞれの列車に対して、その列車が走行する全てのエリアの予想本数が必要本数以上かを調査する。例えば、列車1101(14レ)は走行する全てのエリア(上−6、上−8、上−7)で予想本数が必要本数以上となっている。この列車に対して、さらに、各エリアにおけるその列車の走行順序を、エリア区間の開始駅の出発時刻に基づいて算出する。例えば、列車1101(14レ)は、上−6エリアでは3番目に走行し、上−8エリアでは2番目、上−7エリアでは3番目に走行する。最後に、当該列車の各エリアにおける走行順序がそのエリアの必要列車本数で示される数字以上か否かを判定する。もし、当該列車が、あるエリアにおいて、そのエリアの必要列車本数以上の順番で運行するならば、その列車は当該エリアでは積み残し無く乗客を運んでいることになる。列車1101(14レ)は、これらの条件を満たすため、この列車が輸送完了列車である。
【0057】
同様の方法で、下り方面を調査すると列車1103(11レ)が輸送完了列車として取得できる。
【0058】
これら2本の列車の次列車1102(16レ)、1104(13レ)が一定の遅延をしているならば、それらの列車を間引くことで、遅延を回復させることができる。なお、これらの列車の運休を実施したときには、それぞれの端末駅で、後運用未定列車から前運用未定列車まで順次折り返しを変更する。
【0059】
以上のように、本発明の第1の実施形態では、積み残し乗客を考慮したエリア単位での必要列車本数を算出し、予想される列車本数が足りない場合には、輸送力増加(当該エリアを運行する列車本数を増加)のための運転整理を実施することができる。また、適切な輸送力が確保された列車の次列車が遅延をしている場合には、その列車を間引くことで、輸送力を確保した上での遅延回復を実現できる。
【0060】
次に、これまで述べてきた第1の実施形態の機能を実現する処理をより詳細に説明する。
【0061】
図12に、運転整理導出アルゴリズムを示す。本アルゴリズムは、図1の運転整理作成処理部110によって実行される。
【0062】
運転整理導出アルゴリズムでは、次の処理1201〜1205を実行する。
【0063】
(処理1201)予想ダイヤ作成処理:
予想ダイヤ作成処理部111が、実施ダイヤ管理部120、実績情報管理部121、支障条件管理部122が管理する情報に基づき、予想ダイヤを作成し、それを予想ダイヤ管理部123に格納する。作成される予想ダイヤは、図3に示した通りである。
【0064】
(処理1202)ダイヤ解析処理:
ダイヤ解析処理部112により、作成された予想ダイヤの解析を行い、解析結果をダイヤ解析情報管理部124に格納する。詳細は後述する。
【0065】
(処理1203)改善目標設定:
改善目標設定処理部113で行われる処理で、ダイヤ解析情報管理部124が管理するダイヤ解析情報テーブル600に基づき、輸送力確保が必要なエリアや、遅延回復のために必要な運休列車を抽出し、それらの情報を改善目標情報管理部125に登録する。詳細は後述する。
【0066】
(処理1204)運転整理案作成:
運転整理作成処理部114で行われる処理で、改善目標情報管理部125に保有する改善目標データを取得し、その改善目標を達成するための運転整理案を導出する。詳細は後述する。
【0067】
(処理1205)反映、出力:
運転整理作成処理部110で行われる処理で、導出した運転整理案を実施ダイヤ管理部120に反映し、それに基づく予想ダイヤを作成する。また、この更新された予想ダイヤに対して、ダイヤ解析処理を実行し、運転整理案実施前の解析結果と比較する。予想ダイヤや運転整理の効果(運転整理前との解析結果の比較)は、表示処理部105を介してCRT151などに表示する。
【0068】
以上で運転整理導出アルゴリズムを終了する。
【0069】
次に、処理1202のダイヤ解析処理について述べる。ダイヤ解析処理1202では、ダイヤ解析情報テーブル600(図6)を更新する処理と、積み残し乗客を輸送完了する列車を抽出する処理を実施する。
【0070】
図13は、ダイヤ解析情報テーブル更新アルゴリズムの処理フロー図である。まず、ダイヤ解析情報テーブル600の更新は、図4(2)で示した順に、全てのエリアに対して、以下の更新処理を実行する。
【0071】
(処理1301)同一走行区間で直前の時間帯のエリアがあれば、処理1302へ、なければ処理1303へ進む。
【0072】
(処理1302)同一走行区間、直前の時間帯の積み残し乗客数を取得し、Tとする。
【0073】
(処理1303)T=0とする。
【0074】
(処理1304)当該エリアにおける旅客需要を次式にて算出。ダイヤ解析情報テーブルの旅客需要506へ格納する。旅客需要=T+当該エリアの計画旅客需要。
【0075】
(処理1305)当該エリアの必要列車本数Nを算出。ダイヤ解析情報テーブルの必要本数507へ格納する。P=旅客需要/(列車の許容乗車人数)としたとき、Pの値の小数部を繰り上げたものがNである。
【0076】
(処理1306)当該エリアの予想列車本数Mを算出する。その様子は、図7に示したとおりであり、結果を、ダイヤ解析情報テーブルの予想本数508へ格納する。
【0077】
(処理1307)必要列車本数Nが予想列車本数Mより大か?大なら処理1308へ、そうでなければ処理1309へ進む。
【0078】
(処理1308)当該エリアにおける積み残し乗客数を算出し、ダイヤ解析情報テーブルの積み残し乗客数509へ格納し、終了する。積み残し乗客数=旅客需要−(列車の許容乗車人数)*予想列車本数である。
【0079】
(処理1309)当該エリアにおける積み残し乗客数を0とし、ダイヤ解析情報テーブルの積み残し乗客数609へ格納する。
【0080】
以上で、ダイヤ解析情報テーブル更新アルゴリズムを終了する。
【0081】
次に、積み残し乗客無しとなる列車の導出アルゴリズムを説明する。
【0082】
図14は、区間別に輸送完了列車(積み残し乗客無しの列車)を管理するリストである。積み残し乗客無しとなる列車の導出アルゴリズムは、列車の走行区間別に積み残し乗客がなくなる列車を導出し、図14に示す区間別輸送完了列車リスト1400に登録する。登録されるデータ1410には、当該列車の方向(上り・下りの別など)1411、区間(始発〜終着駅)1411、列番1413の情報が含まれる。
【0083】
図15は、積み残し乗客無しの列車の導出アルゴリズムの処理フロー図である。
【0084】
(処理1501)走行する全ての列車に対し、以下の処理を行う。まず、チェック対象の列車を始発時刻の順序で取得する。
【0085】
(処理1502)当該列車と同一走行区間の輸送完了列車がリストに登録済かをチェックする。もし、すでに登録済であれば、処理1509へ進んで、当該列車のチェックを終了する。
【0086】
(処理1503)当該列車が走行する全てのエリアについて繰り返し1504〜1506を実施する。
【0087】
(処理1504)当該エリアの列車本数において予想本数が必要本数以上か?をチェックする。もし、予想本数が必要本数未満であれば、終了処理1509へ。
【0088】
(処理1505)当該エリアにおける当該列車の走行順番を取得する。
【0089】
(処理1506)走行順番の値は必要本数の値以上か?をチェックする。即ち、当該列車までで、当該区間の旅客は積み残しなく輸送できるかをチェックする。走行順番が必要本数未満であれば、終了処理1509へ。
【0090】
(処理1507)エリア分ループ終了。次のエリアに対して同様の処理を行うため、処理1503へ。全てのエリアの処理を行った場合は、処理1508へ。
【0091】
(処理1508)当該列車は走行する全てのエリアにおいて旅客を積み残すことなく輸送可能であり、この列車を輸送完了列車データとして、区間別輸送完了リストに登録する。
【0092】
(処理1509)列車分ループ終了。次の列車が存在すれば、処理1501に戻る。
【0093】
以上で、積み残し乗客無しの列車の導出アルゴリズムを終了する。
【0094】
次に、図12の運転整理導出アルゴリズムにおける改善目標設定のアルゴリズム処理1203を説明する。改善目標設定は、図4に示す順序に従い、各エリアを対象として、図16の処理を行うことで実施される。
【0095】
図16は、改善目標設定アルゴリズムの処理フロー図である。
【0096】
(処理1601)チェック対象のエリアの予想列車本数608、必要列車本数607をダイヤ解析情報テーブル600(図6)から取得し、予想列車本数が必要列車本数未満か否かを判断する。予想列車本数が必要本数未満でないなら処理1604へ進む。
【0097】
(処理1602)予想列車本数が必要列車本数未満のため、当該エリアは、輸送力が不足している。このため、輸送力確保を改善目標とする改善目標データを作成する。
【0098】
図17は、改善目標リスト図であり、上記改善目標データの具体例の構造を、図17の1710に示す。改善目標データには、当該エリアを識別する情報、すなわち、方面601、区間602、時間帯603、エリアNo.604、と共に、改善種別1711、改善目標値1712を登録する。当該エリアは、輸送力が不足しているため、改善種別1711を「輸送力確保」に、改善目標値1712に不足している列車本数Uが入る。すなわち、U=必要列車本数−予想列車本数である。
【0099】
(処理1603)このようにして作成した改善目標データ1710を、改善目標リスト1700に登録する。改善目標リスト1700は、登録された順番で取り出すことができるFIFO(First in First Out)の構造になっている。
【0100】
(処理1604)次に、当該エリアを始発とする列車について遅延があるかどうかを調べる。もし、当該エリアを始発とする列車があり、その列車が図14に示した区間別輸送完了列車リスト内の列車より後の順番の列車であり、かつその列車の発時刻に遅延が予想されれば、処理1605へ進み、それ以外は終了する。
【0101】
(処理1605)区間別輸送完了列車の後の順番で遅延が発生している列車があるため、遅延回復のための運転整理が必要となる。このため、遅延回復を改善目標とする改善目標データ1710を作成する。改善目標データには、当該エリアを識別する情報、すなわち、方面601、区間602、時間帯603、エリアNo.604、と共に、改善種別1711、改善目標値1712を登録する。当該エリアは、遅延回復を狙いとし、改善種別1711を「遅延回復」に、改善目標値1712に、当該列車の列車番号を入れる。
【0102】
(処理1606)このようにして作成した改善目標データ1710を、改善目標リスト1700に登録する。改善目標リストは、登録された順番で取り出すことができる、FIFO構造になっている。
【0103】
以上で、改善目標設定アルゴリズムを終了する。
【0104】
改善目標設定アルゴリズムを各エリアに対して実施することで、輸送力が足りないエリアや、輸送完了列車の後で遅延が発生している列車を、洗い出し、それらを改善目標リストに登録することができる。
【0105】
このようにして改善目標データ1710が登録された改善目標リスト1700から、以下のように、改善目標データ1710を一つずつ取り出し、その改善目標に対して適用可能な運転整理案を導出するのが処理1204である。
【0106】
図18は、運転整理案作成アルゴリズム1204の処理フロー図である。
【0107】
(処理1801)まず、図17の改善目標リスト1700から改善目標データ1710を一つ取り出す。改善目標データが改善目標リスト1700の中にない場合には、この処理は終了する。
【0108】
(処理1802)取り出した改善目標データ1710の改善種別1711に応じて分岐する。改善種別1711が「輸送力確保」であれば処理1803へ。改善種別1711が「遅延回復」であれば処理1804へ進む。
【0109】
(処理1803)改善目標データ1710の情報に基づき輸送力確保のための運転整理案を導出する。これには、図19の運転整理条件テーブル1900を用いて行う。
【0110】
図19は、輸送力確保のために実施する運転整理の条件判定及び処理を登録したテーブルを示す。運転整理条件テーブル1900には、絶対条件1901、適用時条件1902、及び処理内容1903が運転整理の種類毎に登録されている。まず、改善目標データ1710の示す方面601、区間602、時間帯603、エリアNo.604などの情報を使って、絶対条件1901をチェックする。例えば、「延発」の運転整理が適用可能かどうかを調査するため、エリアNo.604で規定されるエリアの開始駅が予め規定された専用設備(出発時機表示機)を有する駅であるかどうかをチェックする。こうした設備がないと列車に延発の指示は出せない。こうした設備が整っている駅であれば、次に適用時条件1902をチェックする。例えば、「延発」が適用可能かどうかは、当該駅の直前時間帯のエリアで輸送力が足りていること、すなわち、そのエリアの予想本数が必要本数より多いこと、及び当該列車が当該駅に停車することによる。これらの条件を満足している場合、最後に処理内容1903で定義された処理を、当該列車に対して実施する運転整理案を導出して、処理1805へ進む。
【0111】
「延発」の絶対条件1901、適用時条件1902が成立しない場合には、次に「出区+臨時列車」の条件1901、1902をチェックする。これが満足されれば、処理内容1903で示すような運転整理案を導出し、処理1805へ進む。一方、これが満足されなければ、「途中折り返し」の条件1901、1902をチェックし、満足されればその運転整理案1903を導出し、処理1805へ進む。登録されている全ての運転整理種別を使っても適切な運転整理案が導出できない場合、処理1803を終了して、処理1805へ進む。
【0112】
(処理1804)遅延回復のための運転整理案の導出を行う。まず、取得した改善目標データ1710内の改善目標値1712で示される列車番号(例えば16レ)、及び方面601(例えば上り)を取得する。これは、図11に示した例における列車1102(16レ)を示す。次に、改善目標リスト1700内の改善目標データ1710から、改善種別1711が「遅延回復」であり、方面601が今取得した方面と逆方面(下り)であり、さらに、改善目標値1712で示される列車の開始駅、終着駅の組が前述の列車1102と同じものを取得する。例えば、これによって、図11の列車1104(13レ)が取得できる。これら2つの改善目標データを改善目標リストから取得できた場合、それら2本の列車の運休を行う。さらに、端末駅(A駅及びG駅)で後運用未定となった列車から前運用未定となる列車まで、順次折り返しを変更する。こうした運転整理案を導出し、処理1805へ進む。
【0113】
このように、2つの改善目標データを取得できなかった場合には、遅延回復のための条件が不成立として、運転整理案の作成を行わず、処理1805へ進む。
【0114】
(処理1805)運転整理案が導出されていれば、処理を終了する。条件に合わず運転整理案が導出されていない場合には、次の改善目標に対する運転整理案を導出すべく、処理1801へ戻る。
【0115】
以上で、運転整理案作成アルゴリズムを終了する。
【0116】
以上により、図12で示した運転整理導出アルゴリズムの全体を説明した。
【0117】
これまで示した構成、処理によって、旅客需要に基づいて予想ダイヤの評価を行い、輸送力が不足している箇所の手当てを行う運転整理案の導出や、輸送力を確保した上での遅延の回復を行う運転整理案の導出を自動的に行う運転整理案作成装置が実現できる。
【0118】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0119】
図20は、本発明の第2の実施形態によるダイヤ評価装置の構成図を示す。
【0120】
ダイヤ評価装置2001は、処理実行部101、データ記憶部102、通信処理部103、入力処理部104、表示処理部105及びこれらを接続するバス106からなる。処理実行部101は、CPU及びROMで構成される。データ記憶部102は、RAMで構成される。通信処理部103は、運行管理システムとネットワーク13を介しての通信を行う。入力処理部104は、キーボード141やマウス142などによるユーザ入力を受け付ける。表示処理部105は、列車ダイヤとその評価結果をCRTなどに表示する。
【0121】
本実施形態では、こうした構成において、ダイヤ評価処理部2002の評価結果を処理実行部101に読み込み、実行させる。このダイヤ評価処理部2002は、ダイヤ解析処理部112、解析結果表示処理部2003からなる。
【0122】
また、データ記憶部102では、ダイヤ評価処理部2002が利用するデータを管理しており、ダイヤ管理部2004、ダイヤ解析情報管理部124を備えている。
【0123】
ダイヤ管理部2004では、評価の対象となる評価ダイヤと、評価の基準となる基準ダイヤを保有する。基準ダイヤとは、例えば計画時に作成されたダイヤであり、それをダイヤ図の形態で表現すると、前に述べた図2のようになる。評価ダイヤとは、評価の対象となるダイヤであり、運転整理後の実施ダイヤ、実際の運行結果を表す実績ダイヤ、実施ダイヤと走行実績から導かれる予想ダイヤ、もしくは、前述の第1の実施形態で出力される運転整理案を反映した予想ダイヤなどである。これをダイヤ図の形式で示すと、例えば、前述した図3のようになる。
【0124】
本実施形態では、評価の対象となるダイヤの評価を行い、表示処理部105によって、CRT151上にその評価結果を出力する。CRT151に出力されるダイヤの評価結果を、図21及び図22に示す。
【0125】
図21では、システムがエリア単位に輸送力の観点からダイヤを評価し、その評価結果をダイヤ図1000上に重ねて表示しているところを示す。メニュー2110で「上り方面」が選択されると、上り方面の各エリアの評価結果を、時間帯、走行区間で規定されるダイヤ上の領域に表示する。例えば、領域2101には、「上り−1」、即ち、C駅からA駅までの区間で、10:00〜10:30の間の列車で積み残す、積み残し乗客数(待ち乗客数)を評価し、その評価結果を、領域の背景色で表現している。同様に、領域2102には、「上り−2」の評価結果が示される。同様に、上り方面全てのエリアの積み残し乗客数に基づいて表示色を決定し、ダイヤ上の各領域にその色を表示する。ここで、領域2102は、列車本数が2本以上足りないため、赤で表示され、領域2101は、列車本数が1本足りないため、黄色で表示される。このように、積み残し乗客数などのダイヤの評価結果を、ダイヤスジとともにダイヤ図上に表現することで、どこのエリアで何本列車本数が不足しているかを直感的に把握することができるようになる。
【0126】
本実施形態では、時間幅を30分とした例を示したが、時間幅を短く取れば、より細かく旅客需要を見ることが可能である。即ち、時間幅を最小列車時隔(たとえば3分)にとれば、時間的に連続するエリアでは、時間的に後のエリアの待ち乗客数が増えていく様子を表示することができる。また、列車が走行するエリア、すなわち、ちょうど列車が発車した時刻を含むエリアで、待ち乗客数が減る(乗車した)様子を表示することも可能である。
【0127】
図22では、システムが、エリア「上り−1」に関するより詳細な評価結果を、レーダーチャート2201により表示しているものである。カーソル2210で、領域2101が指示されると、システムはその領域が選択されたことを示す枠2202を領域2101上に表示する。さらに、その領域に対応するエリア「上り−1」の評価結果を、レーダーチャート2201により表示する。システムは、レーダーチャート2201により、当該エリアの運転本数、運転間隔、駅停車時間、駅間走行時間の評価結果を表示する。
【0128】
このようなシステムにより、どのエリアで列車が不足するかを直感的に把握できるだけでなく、適切なエリアを指示することで、そのエリアのダイヤ評価をより詳細に参照することが可能となる。
【0129】
このような評価と表示を行う処理について、以下に説明する。
【0130】
図23は、ダイヤの評価結果を格納するダイヤ評価テーブル2300を示している。ダイヤ評価テーブル2300には、方面601、区間602、時間帯603、エリアNo.604で規定されるエリア毎に、待ち乗客数評価2301、運転本数評価2302、運転間隔評価2303、駅停車時間評価2304、走行時間評価2305が格納される。例えば、「上り−1」で示されるエリアの評価結果として、待ち乗客数評価2301には1、運転本数評価2302には50、運転間隔評価2303には30、駅停車時間評価2304には30、走行時間評価2305には50が格納される。
【0131】
図24は、ダイヤ解析処理部112で行うダイヤ評価処理のアルゴリズムの処理フロー図であり、以下にこの処理を説明する。
【0132】
(ダイヤ評価アルゴリズム開始)
(処理2401)ダイヤ解析処理を行う。これは、図13で説明した先の実施形態と同様の処理である。ダイヤ解析処理部112は、評価対象のダイヤについて、図6のダイヤ解析情報テーブル600の旅客需要606、必要本数606、予想本数608、積み残し乗客数608を算出する。なお、ここで、予想本数とは、評価対象のダイヤ上で当該エリアに発時刻を持つ列車の本数である。
【0133】
(処理2402)積み残し乗客数608の値を使って、各エリアの待ち乗客数の評価を行う。待ち乗客数の評価は、待ち乗客数評価レベルテーブル2500に基づいて行う。
【0134】
図25は、待ち乗客数の評価を実施するための評価テーブルを示す。この評価テーブル2500を使って、積み残し乗客数609の値が含まれる範囲2502を判定し、それに対応する評価レベル2501が、待ち乗客数の評価になる。評価結果は、図23のダイヤ評価テーブル2300の待ち乗客数評価2301に格納する。例えば、上り−1のエリアの積み残し乗客数609は、2100人であり、テーブル2500を使うとその評価結果は、レベル3となる。この結果、上り−1の待ち乗客数評価2301に評価レベル「3」を格納する。
【0135】
なお、待ち乗客数の評価は、図25に示す評価テーブル2500により下記となる。
(1)積み残し乗客数が0の場合、評価レベルは「0」。
(2)積み残し乗客数が列車乗車定員(1400人)未満の場合、評価レベルは「1」。
(3)積み残し乗客数が、列車の乗車定員以上、最大乗車定員(2100人)未満の場合、評価レベルは「2」。
(4)それ以上は、乗車定員の半分毎に、評価レベルを上げるものとする。例えば、積み残し乗客数が2800人以上3500人未満ならレベル「4」。
【0136】
即ち、評価レベルが「2」以下の場合、積み残し乗客は全て次列車で輸送可能であることを意味する。評価レベルが「3」以上になると、積み残し乗客が次列車でも輸送しきれないことを意味する。
【0137】
また、評価レベルが「1」以下であれば、積み残し乗客数は、次列車の乗車定員以下であり、これらの乗客を運んでも、次列車内は、比較的余裕があるということを意味する。
【0138】
(処理2403)運転本数の評価を行い、評価結果は、図23のダイヤ評価テーブル2300の運転本数評価2302に格納する。
【0139】
運転本数の評価は、ダイヤ情報解析テーブル600の必要本数607と予想本数608を使って、必要本数より予想本数が少ない場合、評価値=100×(予想本数/必要本数)、予想本数が必要本数以上の場合、評価値=100×(必要本数/予想本数)とする。
【0140】
(処理2404)運転間隔の評価を行う。
【0141】
この運転間隔の評価の詳細は、図26にその処理フローを示しており、ここで、図26を説明し、その後に、再び、図24の処理2405以下を説明することにする。
【0142】
図26は、運転間隔の評価アルゴリズムの処理フロー図である。
【0143】
(運転間隔評価アルゴリズム開始)
(処理2601)運転間隔の評価は、ダイヤ管理部204で管理する、基準ダイヤと評価ダイヤの対比により実施する。まず、基準ダイヤ上で、エリアの開始駅をエリア開始時刻直前に発車する列車を取得し、これを基準第0列車とする。
【0144】
(処理2602)基準ダイヤ上で、エリアの開始駅をエリアの開始時刻から終了時刻までの間に発車する列車を取得し、これを基準第1列車〜基準最終列車とする。
【0145】
(処理2603)基準第0列車〜基準最終列車の運転間隔を算出し、その平均値を算出、母集団平均値とする。
【0146】
(処理2604)評価ダイヤ上で、エリアの開始駅をエリア開始時刻直前に発車する列車を取得し、これを評価第0列車とする。
【0147】
(処理2605)評価ダイヤ上で、エリアの開始駅をエリアの開始時刻から終了時刻までの間に発車する列車を取得し、これを評価第1列車〜評価最終列車とする。
【0148】
(処理2606)評価第0列車〜評価最終列車の運転間隔を算出する。
【0149】
(処理2607)母集団平均値を用いて算出した評価列車の運転間隔の標準偏差を算出する。
【0150】
(処理2608)標準偏差から評価値を決定する。これは運転間隔評価テーブルを使う。
【0151】
図27は、運転間隔の評価に用いる評価テーブル2700を示す。この評価テーブル2700に示す算出した標準偏差の値が含まれる標準偏差範囲2701に対応する評価値2702を、運転間隔の評価値とする。
【0152】
以上で、図26の運転間隔評価アルゴリズムを終了する。
【0153】
このようにして求めた評価結果を、図23のダイヤ評価テーブル2300の運転間隔評価2303に格納する。
【0154】
ここで、図24に戻って、処理2405以降につき説明を進める。
【0155】
(処理2405)駅停車時間の評価を行う。運転間隔の評価と同様に、基準ダイヤ上でエリア内列車の駅停車時間の平均値を求め、それを母集団の平均値とする。次に、評価ダイヤ上で、エリア内列車の駅停車時間を求め、母集団の平均値を使って、その標準偏差を求める。最後に、標準偏差に対応する評価値を、評価テーブルにより求める。評価結果は、図23のダイヤ評価テーブル2300の駅停車時間評価2304に格納する。
【0156】
(処理2406)走行時間の評価を行う。運転間隔の評価と同様に、基準ダイヤ上でエリア内列車の走行時間の平均値を求め、それを母集団の平均値とする。次に、評価ダイヤ上で、エリア内列車の走行時間を求め、母集団の平均値を使って、その標準偏差を求める。最後に、標準偏差に対応する評価値を、評価テーブルにより求める。評価結果は、図23のダイヤ評価テーブル2300の走行時間評価2305に格納する。
【0157】
以上で、図24のダイヤ評価アルゴリズムを終了する。
【0158】
以上に示した処理により、ダイヤ解析処理部112は、評価ダイヤの各エリアに対して、待ち乗客数評価、運転本数評価、運転間隔評価、駅停車時間評価、走行時間評価を行う。
【0159】
次に、解析結果表示部115が行う表示処理について説明する。
【0160】
図28は、評価結果(待ち乗客数評価の結果)をダイヤ図に重畳するアルゴリズムの処理フロー図である。待ち乗客数(旅客需要)の評価結果を、エリア単位に図21や図22のダイヤ図1000上に表示する処理である。
【0161】
(待ち乗客評価重畳アルゴリズム開始)
(処理2801)図21のメニュー2110で指示される方面を取得する。
【0162】
(処理2802)当該方面の全てのエリア分、処理2803〜2805を実施する。
【0163】
(処理2803)ダイヤ評価テーブル2300から、待ち乗客数評価2301を取得する。
【0164】
(処理2804)取得した待ち乗客数評価の値に基づき、表示色を決定する。これは、図29に示した表示色テーブル2900を用いる。例えば、待ち乗客数評価がレベル「3」の場合、そのエリアはRGB(255,153、255)で指定される色を表示色とする。
【0165】
(処理2805)処理2804で決定した表示色にて、当該エリアを表示する。
【0166】
(処理2806)ループ終了。
【0167】
以上で、待ち乗客評価重畳アルゴリズムを終了する。
【0168】
次に、レーダーチャートを表示する処理を説明する。
【0169】
図30は、レーダーチャートの表示アルゴリズムの処理フロー図である。
【0170】
(レーダーチャート表示アルゴリズム開始)
(処理3001)メニュー2110で指示される方面を取得する。
【0171】
(処理3002)図22のカーソル2210で指示された領域を取得する。方面と領域で規定されるエリアを取得する。
【0172】
(処理3003)ダイヤ評価テーブル2300から、当該エリアの運転本数評価2302、運転間隔評価2303、駅停車時間評価2304、走行時間評価2305を取得する。
【0173】
(処理3004)当該領域の枠2202を表示する。
【0174】
(処理3005)取得した情報を使ってレーダーチャートを表示する。
【0175】
(レーダーチャート表示アルゴリズム終了)
以上の評価処理、表示処理により、図21,22に示したようなダイヤ評価及び評価結果の表示が実現される。これにより、実施ダイヤ、実績ダイヤ、予想ダイヤ、運転整理案等を反映した予想ダイヤなどの評価と、その分かり易い表示が可能になる。
【0176】
なお、本実施形態では、運転整理案作成装置とダイヤ評価装置というように、2つの装置を分けて説明したが、例えば、第1の実施形態と第2の実施形態を組み合わせたシステムも容易に実現可能である。そのシステムでは、例えば、予想ダイヤを評価して、適切な運転整理案を提示するとともに、待ち乗客数を評価し、それをダイヤ図上の各エリアに表示したり、列車本数等のレーダーチャート表示を行うことが、自動的に可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】本発明の第1の実施形態である運転整理案作成装置のシステム構成図。
【図2】運転整理案作成装置が管理する実施ダイヤの例。
【図3】乱れ発生時の予想ダイヤの例。
【図4】区間と時間帯で規定したエリアとダイヤの関係図。
【図5】区間と時間帯で規定されたエリアと対応付けた予想ダイヤの例。
【図6】ダイヤ解析情報管理部が所有するダイヤ解析情報テーブル。
【図7】エリアにおける列車本数の算出例。
【図8】輸送力を確保する運転整理として、延発を適用した場合のダイヤ図。
【図9】輸送力を確保する運転整理として、出区+臨時列車を適用したダイヤ図。
【図10】輸送力確保の運転整理として、途中折り返しを適用した場合のダイヤ図。
【図11】遅延回復の運転整理として、間引き列車の選定を説明するダイヤ図。
【図12】図1の実施形態の運転整理作成処理部で実施される全体アルゴリズム。
【図13】ダイヤ解析処理部が実施するダイヤ解析情報テーブル更新アルゴリズム。
【図14】区間別に輸送完了列車(積み残し乗客無しの列車)を管理するリスト。
【図15】積み残し乗客無しの列車を導出するアルゴリズム。
【図16】改善目標の設定アルゴリズム。
【図17】改善目標リスト。
【図18】運転整理案作成処理のアルゴリズム。
【図19】輸送力確保のために実施する運転整理の条件判定及び処理を登録したテーブル。
【図20】本発明の第2の実施形態によるダイヤ評価装置のシステム構成図。
【図21】積み残しを含む旅客需要の評価結果出力例。
【図22】列車本数等の評価結果をエリアと対応付けレーダーチャート表示例。
【図23】ダイヤの評価結果を格納するダイヤ評価テーブル。
【図24】ダイヤ評価アルゴリズム。
【図25】待ち乗客数の評価を実施するための評価テーブル。
【図26】運転間隔の評価アルゴリズム。
【図27】運転間隔の評価に用いる評価テーブル。
【図28】評価結果(待ち乗客数評価の結果)をダイヤ図に重畳するアルゴリズム。
【図29】待ち乗客数評価に基づき表示色を決定するための表示色テーブル。
【図30】レーダーチャートの表示アルゴリズム。
【符号の説明】
【0178】
1…運転整理案作成装置、101…処理実行部、102…データ記憶部、103…通信処理部、104…入力処理部、105…表示処理部、110…運転整理案作成処理部、111…予想ダイヤ作成処理部、112…ダイヤ解析処理部、113…改善目標設定処理部、114…運転整理作成処理部、115…解析結果表示処理部、120…実施ダイヤ管理部、121…実績情報管理部、122…支障条件管理部、123…予想ダイヤ管理部、124…ダイヤ解析情報管理部、125…改善目標情報管理部、151…CRT、1000…ダイヤ図、2001…ダイヤ評価装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送障害などの列車乱れ発生時に、旅客需要に応じた適切な輸送量を確保できる運転整理を実施するための支援するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
運転整理を実施するシステムの従来例として、特許文献1がある。そこでは、予想ダイヤを作成する列車運行シミュレーション部と、予め記録された通常時の各駅及び各時間帯の列車の到着本数並びに現在の列車位置に基づき、各駅への列車の予想到着間隔を通常の時間間隔に近づくように運行列車の整理案を決定している。これに基づき、列車運行シミュレーション部に対し予想ダイヤの変更を行わせる列車運行管理システムを提供するものである。このシステムにより、列車の運行が乱れた際に、その列車の各駅への到着間隔を通常時の時間間隔へ近づけるよう、運転順序の変更や運転区間の変更を含む運転整理が実現される。
【0003】
【特許文献1】特開2001−1904号公報(全体)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、輸送障害等の発生時には、ある一定時間列車が止まることもあり、これにより平常時に比べ、多くの乗客が駅にあふれる場合がある。このため、運転再開後は計画されたダイヤ以上に輸送力を確保し、列車が止まった間に駅に溜まった乗客を運べることも必要とされる。しかしながら、従来の発明では、このような観点からの運転整理は実現できない。従来例では、運転整理の目標は列車間隔を通常時の間隔に近づけることであり、特に、大規模な輸送障害では、そのようにして運行される列車だけでは、旅客を輸送するのに十分ではない。
【0005】
本発明の目的は、適正な旅客需要を算出すると共に、それに応じた運転整理を実施可能な運転整理装置を提供することである。
【0006】
また、輸送障害等が発生したときには、上記のような輸送力の低下(列車本数の減少)に加え、列車が大幅に遅延する。このような場合には、遅延している列車を間引いて、遅延の回復を図ることが必要となる。しかしながら、列車を間引くことは、輸送力の低下を招くという問題がある。
【0007】
本発明の他の目的は、適正な旅客需要を算出することで、運転再開までに駅に溜まった旅客や積み残し乗客などの輸送を完了し、輸送力を確保しつつ、遅延の回復が可能な運転整理を実現する運転整理装置を提供することである。
【0008】
さらに、本発明の他の目的は、運転整理の結果を、ユーザがより適正に評価できるように、ユーザに分かりやすく提示可能なダイヤ評価装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の特徴とするところは、列車運行の乱れが生じた場合に、実施ダイヤと実績ダイヤに基づき予想ダイヤを作成する予想ダイヤ作成手段を備えたことである。また、時間帯・区間(区間の開始駅、区間の終了駅)で規定されるエリア単位に、想定される旅客の輸送需要を算出し、この旅客需要に基づき、当該エリアにて必要とされる列車本数を算出する必要列車本数算出手段を備える。
【0010】
また、前記エリアにおいて運行が予想される列車の本数を、予想ダイヤでの列車の発車時刻に基づき算出し、この列車本数と当該エリアで必要となる列車本数の比較結果に基づき、当該エリアの改善目標を設定し、この改善目標を達成するような運転整理案を作成し、その運転整理案を実施ダイヤに適用して予想ダイヤを更新する運転整理実施手段を備える。
【0011】
本発明の第2の特徴とするところは、列車当りの最大乗車人数を用いて、想定される旅客を輸送可能な列車本数を算出し、これをもって必要列車本数とするような必要列車本数算出手段を備える。
【0012】
本発明の第3の特徴とするところは、予めエリア単位に規定された計画時輸送需要をもとに、第1のエリアの輸送需要と当該エリアにて予想される本数の列車により輸送可能な旅客数との差分を算出し、この差分を積み残し乗客数として、第1のエリアと同一走行区間でかつ次の時間帯で規定される第2のエリアの計画時輸送需要に加えることで、第2のエリアにて想定される輸送需要を算出するような必要列車本数算出手段を備える。
【0013】
本発明の第4の特徴とするところは、予想される列車本数が必要とされる列車本数より少ないエリアが存在する場合、当該エリアを走行する列車の本数を増加させるような運転整理案を作成し、その運転整理案を実施ダイヤに適用して予想ダイヤを更新するような運転整理実施手段を備える。
【0014】
本発明の第5の特徴とするところは、予想ダイヤ上で遅延が予想される第1の列車について、前記列車の走行区間と同区間でその直前を走行する第2の列車までで、この第2の列車が走行する各エリアの予想列車本数が必要列車本数と同数以上かどうかを判定し、この条件を満足する場合、前記第2の列車の直後を走行する第1の列車を間引くことで列車ダイヤの遅延を回復するような運転整理案を作成し、その運転整理案を実施ダイヤに適用して更新して出力するような運転整理実施手段を備える。
【0015】
本発明の第6の特徴とするところは、運転整理案を作成し、その運転整理案を実施ダイヤに適用して予想ダイヤを更新すると共に、その運転整理を作成する元となったダイヤの改善目標と運転整理内容を対応付けて出力するような運転整理実施手段を備える。
【0016】
本発明の第7の特徴とするところは、時間帯・区間(区間の開始駅、区間の終了駅)で規定されるエリアにおいて、運行される列車の本数に基づいて輸送可能な旅客数を算出する輸送旅客数算出手段と、エリア毎に想定される旅客の輸送需要を算出する輸送需要算出手段と、算出された輸送需要を当該エリアにおける輸送可能な旅客数に基づいて評価し、評価結果を表示する手段を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の第8の特徴とするところは、各エリアの評価結果を、ダイヤ図上の当該エリアの場所に重ねて表示する表示手段を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の第9の特徴とするところは、時間帯・区間(区間の開始駅、区間の終了駅)で規定されるエリア毎に列車本数、列車間隔、駅停車時間、駅間走行時間などの評価項目の評価を行うものであって、エリアを走行する列車を選出し、予め評価項目毎に規定された評価に必要な値を、前記選出された列車の運行情報を用いて算出する手段と、前記エリアをダイヤ図上で明示すると共に、このエリアに対して算出した各評価項目の評価値をレーダーチャートの形式で表示する表示手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の望ましい実施態様によれば、時間帯と区間で規定した各エリアに対して適切な旅客需要を算出できる。また、その旅客需要に対し、必要となる列車本数が確保されていない場合には、そのエリアを走行する列車を増やすための運転整理を実行できる。
【0020】
本発明の他の実施態様によれば、必要な列車本数が確保されているが、走行が予想される列車に遅延が発生する場合には、それらの列車を運休させることで、列車遅延を回復することができる。これらにより、必要な輸送力を確保した上で、列車ダイヤの遅延を回復させるような運転整理を実施できるようになる。
【0021】
本発明のさらに他の実施態様によれば、予想ダイヤ上の列車に基づき、エリア単位に輸送力などを評価し、輸送力が不足している箇所などを、ダイヤ図と対応付けて分かり易く提示できるようになる。これらにより、運転整理の必要な箇所やその効果を多面的かつ分かりやすくユーザに提供できるようになる。
【0022】
本発明のその他の目的と特徴は、以下に述べる実施形態の中で明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、図面を参照して本発明の実施態様を詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の第1の実施形態である運転整理案作成装置のシステム構成図である。
【0025】
運転整理案作成装置1は、処理実行部101、データ記憶部102、通信処理部103、入力処理部104、表示処理部105及びこれらを接続するバス106からなる。処理実行部101は、CPU及びROMで構成される。データ記憶部102は、RAMで構成される。通信処理部103は、運行管理システムとネットワーク13を介しての通信を行う。入力処理部104は、キーボード141やマウス142などによるユーザ入力を受け付ける。表示処理部105は、列車ダイヤや運転整理結果をCRT151などに表示する。
【0026】
本実施形態では、こうした構成において、運転整理作成処理部110による運転整理案を処理実行部101に読み込み、これを実行させる。この運転整理作成処理部110は、予想ダイヤ作成処理部111、ダイヤ解析処理部112、改善目標設定処理部113を経て、運転整理作成処理部114に至る機能部構成である。
【0027】
また、データ記憶部102では、運転整理作成処理部110が利用するデータを管理しており、次のような管理部を備えている。すなわち、実施ダイヤ管理部120、実績情報管理部121、支障条件管理部122、予想ダイヤ管理部123、ダイヤ解析情報管理部124、並びに改善目標情報管理部125である。
【0028】
予想ダイヤ作成処理部111は、実施ダイヤ管理部120、実績情報管理部121、支障条件管理部122が管理する情報に基づき、予想ダイヤを作成し、それを予想ダイヤ管理部123に格納する。
【0029】
実施ダイヤ管理部120には、実施される計画の列車ダイヤが格納されている。実施ダイヤは、列車毎に、列車番号、列車種別、行き先、前運用の列車番号、後運用の列車番号と、当該列車の各駅毎の駅到着時間、駅出発時間、使用する番線などの情報からなる。
【0030】
図2は、図1の実施形態の運転整理案作成装置が管理する実施ダイヤの例を示す。例えば、図2の実施ダイヤ200において、列車番号10レで示される列車は、列車種別は普通、行き先はA駅、G駅発車時刻は10:21、A駅到着時刻は10:50、前運用が3レで示される列車であり、後運用は15レで示される列車である。
【0031】
実績情報管理部121では、各列車の最新在線位置の管理を行う。運行管理システムから上がってくる運行実績情報、すなわち各列車の駅出発実績時刻、駅到着実績時刻、利用実績番線を、通信処理部103を介して受信し、列車毎に管理する。
【0032】
支障条件管理部122は、入力処理部104により入力された輸送障害の内容を管理する。これは、輸送障害の発生時刻、発生場所(駅中間、駅及び番線、など)及び輸送再開の予定時刻とからなる。
【0033】
予想ダイヤ作成処理部111では、これらの情報を活用して、今後の運行予測を行い、予想ダイヤを作成して、予想ダイヤ管理部123に格納する。
【0034】
図3は、第1の実施形態における乱れ発生時の予想ダイヤの作成例を示す。図3の予想ダイヤ1000では、時刻10:00に、上り方面(A駅行き方面)E駅とD駅の駅間にて輸送障害が発生し、その輸送障害の復旧(運転再開予定)が10:30である場合に、予想されるダイヤを示すものである。
【0035】
本実施形態では、こうしたダイヤを、走行区間(区間開始駅、区間終了駅で規定)、時間帯で規定される評価エリアに区切り、その評価エリア毎に、ダイヤの解析と評価を行う。
【0036】
図4は、区間と時間帯で規定されたエリアとダイヤの関係図である。図4(1)に示したように、ダイヤはあらかじめ規定された走行区間、時間帯で区切られる。例えば、A駅からC駅までの走行区間及び10:00〜10:30の時間帯は、No.1で示されている。このNo.1で区切られたところには、A駅からC駅(すなわち下り方面)の列車だけでなく、C駅からA駅(すなわち上り方面)の列車が走行する。それぞれ列車を分けて評価できるよう、実際には、図4(2)に示すように、10:00〜10:30の時間帯でA駅からC駅までの区間で規定されるエリアを「下り−1」、10:00〜10:30の時間帯でC駅からA駅までの区間で規定されるエリアを「上り−1」と呼ぶ。
【0037】
これをより具体的に記載したのが図4(2)である。ちょうど、G駅を軸に、図4(1)の上り方面の列車だけ下側に倒したようなものと考えればよい。こうすると矢印911〜913は、方面にかかわらず列車の進行方向を示すことになる。ダイヤの評価や対処は、時刻の早いところから、列車の始発の方から評価するのが都合良いので、各エリアの評価やその評価に基づく対処は、矢印911〜913の順序で行う。
【0038】
図5は、エリアを示す区切りを遅延発生後のダイヤに重畳したイメージを示す。
【0039】
次にエリア毎のダイヤ解析と評価について説明する。
【0040】
ダイヤ解析情報管理部124では、図6に示すテーブル600を管理する。このテーブルの情報を活用して、各エリアを解析し、解析結果を、またこのテーブルに格納する。
【0041】
計画旅客需要605の列には、予め定義された各エリアにおける想定旅客需要が入っている。これは、通常、平日/土/休日毎に管理され過去の旅客輸送実績などに基づき決定されるもので、その時間帯およびその区間に平均的に乗車するであろう旅客数を登録したものである。
【0042】
旅客需要606は、輸送力の不足などで積み残しが発生したときにその積み残し人員を計画旅客需要に加えたものであり、ダイヤの乱れ等に応じて変化する値である。例えば、エリア上り−5(E〜C駅、10:30〜11:00)の計画旅客需要は4200人であるが、旅客需要は7000人となっている。これは、その直前の時間帯のエリア上り−2(E〜C駅、10:00〜10:30)の積み残し乗客2800人を加えた値となっている。
【0043】
必要本数607は、旅客需要606で示される旅客数を運ぶために最低必要な列車本数を示す。これは、列車の最大乗車人数で旅客需要を割り、その少数以下を切り上げた値である。例えば、最大乗車人数を2100人とすれば、上り−3のエリアの旅客需要2800人を輸送するのに必要な列車本数は2本となる。また、上り−5のエリアの旅客需要7000人を輸送するのに必要な列車本数は4本となる。
【0044】
予想列車本数608は、当該エリアで示される始発駅を、当該エリアで示される時間帯に発車する列車の本数である。これを図7で説明する。図7はエリア上りー1を切り出したものであり、このエリアには、2レ(701で示す)、4レ(702で示す)、6レ(703で示す)が走行している。しかし、2レはC駅の発車時刻が当該エリアの範囲外であり、当該エリアで発生する旅客に対しては、輸送サービスを行っていない。結果、当該エリアの旅客に対し輸送サービスを行う、4レ(702)、6レ(703)が当該エリアの予想列車となり、予想列車本数は2本ということになる。
【0045】
次に、再び図6を用いて積み残し乗客数の説明を行う。旅客需要606と予想本数608から、積み残し乗客数609を算出する。すなわち、旅客需要をn、予想本数をmとすれば、積み残し乗客数kは、k=n−(m*最大乗車人数)で算出できる。ただし、kが0以下の時は0とする。
【0046】
ここで、最大乗車人数を2100人とすれば、例えば、エリア上り−3の積み残し乗客数は、旅客需要が2800人、予想本数が1本だから、700人となり、エリア上り−6の積み残し乗客数は、旅客需要が3500人、予想本数が3本だから、0人となる。
【0047】
以上のようにして、上り/下りの全てのエリアに対して、旅客需要606、必要本数607、予想本数608、積み残し乗客数609を算出する。これにより、各エリアにおける輸送力の過不足を把握できる。
【0048】
次に、今算出した情報を使って、輸送力の足りないエリアに対して、輸送力を増やすための運転整理を行う。まず、輸送力の足りないエリアを選択し、次にそのエリアに対して、図8〜10に示すような運転整理を実施する。
【0049】
図8は、輸送力を確保する運転整理として、延発を適用した場合のダイヤ図である。エリア801(C〜A駅、11:30〜12:00)での輸送力確保のため、直前エリアを走行する列車810(14レ)のC駅発車時刻を延期させて、エリア801内になるようにしたものである(延発)。この運転整理により、エリア801は予想本数1本から2本に輸送力を増やすことができる。ただし、設備上こうした制御ができることと、エリア801の直前エリア(C〜A駅、11:00〜11:30)の輸送力が確保されていること(列車810を延発させても予想列車本数が必要本数以上であること)が、この運転整理を実施するための条件である。
【0050】
図9は、エリア901(C〜A駅、10:00〜10:30)での輸送力確保のため、列車を入出区可能なC駅から、臨時列車902(臨2002、及びその後運用として臨2003)を運行させたものである。この運転整理により、エリア901は予想本数1本から2本に輸送力を増やすことができる。ただし、C駅が出区可能な駅であること、出区のための時間や車両が確保されていること、などが、この運転整理を実施するための条件である。
【0051】
図10は、途中折り返しの例である。エリア1001(C〜A駅、10:30〜11:00)での輸送力確保のため、列車1002(5レ)をC駅で折り返し、列車1003(9000レ)として、エリア1001を走行させるようにした(なお、列車1002(5レ)のC駅より先は部分運休になる)。この途中折り返しにより、エリア1001は予想本数1本から2本に輸送力を増やすことができる。ただし、C駅が折り返し可能な番線を持つことや、列車1002(5レ)を部分運休しても下り方面の輸送力が確保されていることが、この運転整理を実施するための条件である。
【0052】
なお、列車1003(9000レ)は遅延列車(6レ)の後運用である(11レ)につなぎ、列車1002の後運用(12レ)を運休として、後運用未定となった6レから前運用が未定となった17レまで、順次折り返しを変更する。
【0053】
なお、輸送力を増やすための運転整理としては、上記に限定されるものではなく、番線支障などの運転阻害を回避するための番線変更や、待避関係を解除するための順序変更、延長運転等、様々な運転整理をエリアの輸送力を確保するために用いることができる。
【0054】
次に輸送障害等により発生した列車の遅延を回復させるための予想ダイヤの解析とそれに基づく運転整理について述べる。
【0055】
列車遅延の回復のため、遅延している列車を間引く(運休させる)ことが行われる。しかし、輸送力が確保されていない段階で列車を間引くと、さらに輸送力が低下する恐れがある。そこで、本発明では、輸送力が確保された後の列車で遅延している列車に対してのみ、その列車を運休させ、遅延を回復させる。これにより、必要な輸送力の確保を最優先にしながら、遅延の回復を行うことが可能である。
【0056】
以下、図11、図6を用いてこれを説明する。図11において、G駅を出発するそれぞれの列車に対して、その列車が走行する全てのエリアの予想本数が必要本数以上かを調査する。例えば、列車1101(14レ)は走行する全てのエリア(上−6、上−8、上−7)で予想本数が必要本数以上となっている。この列車に対して、さらに、各エリアにおけるその列車の走行順序を、エリア区間の開始駅の出発時刻に基づいて算出する。例えば、列車1101(14レ)は、上−6エリアでは3番目に走行し、上−8エリアでは2番目、上−7エリアでは3番目に走行する。最後に、当該列車の各エリアにおける走行順序がそのエリアの必要列車本数で示される数字以上か否かを判定する。もし、当該列車が、あるエリアにおいて、そのエリアの必要列車本数以上の順番で運行するならば、その列車は当該エリアでは積み残し無く乗客を運んでいることになる。列車1101(14レ)は、これらの条件を満たすため、この列車が輸送完了列車である。
【0057】
同様の方法で、下り方面を調査すると列車1103(11レ)が輸送完了列車として取得できる。
【0058】
これら2本の列車の次列車1102(16レ)、1104(13レ)が一定の遅延をしているならば、それらの列車を間引くことで、遅延を回復させることができる。なお、これらの列車の運休を実施したときには、それぞれの端末駅で、後運用未定列車から前運用未定列車まで順次折り返しを変更する。
【0059】
以上のように、本発明の第1の実施形態では、積み残し乗客を考慮したエリア単位での必要列車本数を算出し、予想される列車本数が足りない場合には、輸送力増加(当該エリアを運行する列車本数を増加)のための運転整理を実施することができる。また、適切な輸送力が確保された列車の次列車が遅延をしている場合には、その列車を間引くことで、輸送力を確保した上での遅延回復を実現できる。
【0060】
次に、これまで述べてきた第1の実施形態の機能を実現する処理をより詳細に説明する。
【0061】
図12に、運転整理導出アルゴリズムを示す。本アルゴリズムは、図1の運転整理作成処理部110によって実行される。
【0062】
運転整理導出アルゴリズムでは、次の処理1201〜1205を実行する。
【0063】
(処理1201)予想ダイヤ作成処理:
予想ダイヤ作成処理部111が、実施ダイヤ管理部120、実績情報管理部121、支障条件管理部122が管理する情報に基づき、予想ダイヤを作成し、それを予想ダイヤ管理部123に格納する。作成される予想ダイヤは、図3に示した通りである。
【0064】
(処理1202)ダイヤ解析処理:
ダイヤ解析処理部112により、作成された予想ダイヤの解析を行い、解析結果をダイヤ解析情報管理部124に格納する。詳細は後述する。
【0065】
(処理1203)改善目標設定:
改善目標設定処理部113で行われる処理で、ダイヤ解析情報管理部124が管理するダイヤ解析情報テーブル600に基づき、輸送力確保が必要なエリアや、遅延回復のために必要な運休列車を抽出し、それらの情報を改善目標情報管理部125に登録する。詳細は後述する。
【0066】
(処理1204)運転整理案作成:
運転整理作成処理部114で行われる処理で、改善目標情報管理部125に保有する改善目標データを取得し、その改善目標を達成するための運転整理案を導出する。詳細は後述する。
【0067】
(処理1205)反映、出力:
運転整理作成処理部110で行われる処理で、導出した運転整理案を実施ダイヤ管理部120に反映し、それに基づく予想ダイヤを作成する。また、この更新された予想ダイヤに対して、ダイヤ解析処理を実行し、運転整理案実施前の解析結果と比較する。予想ダイヤや運転整理の効果(運転整理前との解析結果の比較)は、表示処理部105を介してCRT151などに表示する。
【0068】
以上で運転整理導出アルゴリズムを終了する。
【0069】
次に、処理1202のダイヤ解析処理について述べる。ダイヤ解析処理1202では、ダイヤ解析情報テーブル600(図6)を更新する処理と、積み残し乗客を輸送完了する列車を抽出する処理を実施する。
【0070】
図13は、ダイヤ解析情報テーブル更新アルゴリズムの処理フロー図である。まず、ダイヤ解析情報テーブル600の更新は、図4(2)で示した順に、全てのエリアに対して、以下の更新処理を実行する。
【0071】
(処理1301)同一走行区間で直前の時間帯のエリアがあれば、処理1302へ、なければ処理1303へ進む。
【0072】
(処理1302)同一走行区間、直前の時間帯の積み残し乗客数を取得し、Tとする。
【0073】
(処理1303)T=0とする。
【0074】
(処理1304)当該エリアにおける旅客需要を次式にて算出。ダイヤ解析情報テーブルの旅客需要506へ格納する。旅客需要=T+当該エリアの計画旅客需要。
【0075】
(処理1305)当該エリアの必要列車本数Nを算出。ダイヤ解析情報テーブルの必要本数507へ格納する。P=旅客需要/(列車の許容乗車人数)としたとき、Pの値の小数部を繰り上げたものがNである。
【0076】
(処理1306)当該エリアの予想列車本数Mを算出する。その様子は、図7に示したとおりであり、結果を、ダイヤ解析情報テーブルの予想本数508へ格納する。
【0077】
(処理1307)必要列車本数Nが予想列車本数Mより大か?大なら処理1308へ、そうでなければ処理1309へ進む。
【0078】
(処理1308)当該エリアにおける積み残し乗客数を算出し、ダイヤ解析情報テーブルの積み残し乗客数509へ格納し、終了する。積み残し乗客数=旅客需要−(列車の許容乗車人数)*予想列車本数である。
【0079】
(処理1309)当該エリアにおける積み残し乗客数を0とし、ダイヤ解析情報テーブルの積み残し乗客数609へ格納する。
【0080】
以上で、ダイヤ解析情報テーブル更新アルゴリズムを終了する。
【0081】
次に、積み残し乗客無しとなる列車の導出アルゴリズムを説明する。
【0082】
図14は、区間別に輸送完了列車(積み残し乗客無しの列車)を管理するリストである。積み残し乗客無しとなる列車の導出アルゴリズムは、列車の走行区間別に積み残し乗客がなくなる列車を導出し、図14に示す区間別輸送完了列車リスト1400に登録する。登録されるデータ1410には、当該列車の方向(上り・下りの別など)1411、区間(始発〜終着駅)1411、列番1413の情報が含まれる。
【0083】
図15は、積み残し乗客無しの列車の導出アルゴリズムの処理フロー図である。
【0084】
(処理1501)走行する全ての列車に対し、以下の処理を行う。まず、チェック対象の列車を始発時刻の順序で取得する。
【0085】
(処理1502)当該列車と同一走行区間の輸送完了列車がリストに登録済かをチェックする。もし、すでに登録済であれば、処理1509へ進んで、当該列車のチェックを終了する。
【0086】
(処理1503)当該列車が走行する全てのエリアについて繰り返し1504〜1506を実施する。
【0087】
(処理1504)当該エリアの列車本数において予想本数が必要本数以上か?をチェックする。もし、予想本数が必要本数未満であれば、終了処理1509へ。
【0088】
(処理1505)当該エリアにおける当該列車の走行順番を取得する。
【0089】
(処理1506)走行順番の値は必要本数の値以上か?をチェックする。即ち、当該列車までで、当該区間の旅客は積み残しなく輸送できるかをチェックする。走行順番が必要本数未満であれば、終了処理1509へ。
【0090】
(処理1507)エリア分ループ終了。次のエリアに対して同様の処理を行うため、処理1503へ。全てのエリアの処理を行った場合は、処理1508へ。
【0091】
(処理1508)当該列車は走行する全てのエリアにおいて旅客を積み残すことなく輸送可能であり、この列車を輸送完了列車データとして、区間別輸送完了リストに登録する。
【0092】
(処理1509)列車分ループ終了。次の列車が存在すれば、処理1501に戻る。
【0093】
以上で、積み残し乗客無しの列車の導出アルゴリズムを終了する。
【0094】
次に、図12の運転整理導出アルゴリズムにおける改善目標設定のアルゴリズム処理1203を説明する。改善目標設定は、図4に示す順序に従い、各エリアを対象として、図16の処理を行うことで実施される。
【0095】
図16は、改善目標設定アルゴリズムの処理フロー図である。
【0096】
(処理1601)チェック対象のエリアの予想列車本数608、必要列車本数607をダイヤ解析情報テーブル600(図6)から取得し、予想列車本数が必要列車本数未満か否かを判断する。予想列車本数が必要本数未満でないなら処理1604へ進む。
【0097】
(処理1602)予想列車本数が必要列車本数未満のため、当該エリアは、輸送力が不足している。このため、輸送力確保を改善目標とする改善目標データを作成する。
【0098】
図17は、改善目標リスト図であり、上記改善目標データの具体例の構造を、図17の1710に示す。改善目標データには、当該エリアを識別する情報、すなわち、方面601、区間602、時間帯603、エリアNo.604、と共に、改善種別1711、改善目標値1712を登録する。当該エリアは、輸送力が不足しているため、改善種別1711を「輸送力確保」に、改善目標値1712に不足している列車本数Uが入る。すなわち、U=必要列車本数−予想列車本数である。
【0099】
(処理1603)このようにして作成した改善目標データ1710を、改善目標リスト1700に登録する。改善目標リスト1700は、登録された順番で取り出すことができるFIFO(First in First Out)の構造になっている。
【0100】
(処理1604)次に、当該エリアを始発とする列車について遅延があるかどうかを調べる。もし、当該エリアを始発とする列車があり、その列車が図14に示した区間別輸送完了列車リスト内の列車より後の順番の列車であり、かつその列車の発時刻に遅延が予想されれば、処理1605へ進み、それ以外は終了する。
【0101】
(処理1605)区間別輸送完了列車の後の順番で遅延が発生している列車があるため、遅延回復のための運転整理が必要となる。このため、遅延回復を改善目標とする改善目標データ1710を作成する。改善目標データには、当該エリアを識別する情報、すなわち、方面601、区間602、時間帯603、エリアNo.604、と共に、改善種別1711、改善目標値1712を登録する。当該エリアは、遅延回復を狙いとし、改善種別1711を「遅延回復」に、改善目標値1712に、当該列車の列車番号を入れる。
【0102】
(処理1606)このようにして作成した改善目標データ1710を、改善目標リスト1700に登録する。改善目標リストは、登録された順番で取り出すことができる、FIFO構造になっている。
【0103】
以上で、改善目標設定アルゴリズムを終了する。
【0104】
改善目標設定アルゴリズムを各エリアに対して実施することで、輸送力が足りないエリアや、輸送完了列車の後で遅延が発生している列車を、洗い出し、それらを改善目標リストに登録することができる。
【0105】
このようにして改善目標データ1710が登録された改善目標リスト1700から、以下のように、改善目標データ1710を一つずつ取り出し、その改善目標に対して適用可能な運転整理案を導出するのが処理1204である。
【0106】
図18は、運転整理案作成アルゴリズム1204の処理フロー図である。
【0107】
(処理1801)まず、図17の改善目標リスト1700から改善目標データ1710を一つ取り出す。改善目標データが改善目標リスト1700の中にない場合には、この処理は終了する。
【0108】
(処理1802)取り出した改善目標データ1710の改善種別1711に応じて分岐する。改善種別1711が「輸送力確保」であれば処理1803へ。改善種別1711が「遅延回復」であれば処理1804へ進む。
【0109】
(処理1803)改善目標データ1710の情報に基づき輸送力確保のための運転整理案を導出する。これには、図19の運転整理条件テーブル1900を用いて行う。
【0110】
図19は、輸送力確保のために実施する運転整理の条件判定及び処理を登録したテーブルを示す。運転整理条件テーブル1900には、絶対条件1901、適用時条件1902、及び処理内容1903が運転整理の種類毎に登録されている。まず、改善目標データ1710の示す方面601、区間602、時間帯603、エリアNo.604などの情報を使って、絶対条件1901をチェックする。例えば、「延発」の運転整理が適用可能かどうかを調査するため、エリアNo.604で規定されるエリアの開始駅が予め規定された専用設備(出発時機表示機)を有する駅であるかどうかをチェックする。こうした設備がないと列車に延発の指示は出せない。こうした設備が整っている駅であれば、次に適用時条件1902をチェックする。例えば、「延発」が適用可能かどうかは、当該駅の直前時間帯のエリアで輸送力が足りていること、すなわち、そのエリアの予想本数が必要本数より多いこと、及び当該列車が当該駅に停車することによる。これらの条件を満足している場合、最後に処理内容1903で定義された処理を、当該列車に対して実施する運転整理案を導出して、処理1805へ進む。
【0111】
「延発」の絶対条件1901、適用時条件1902が成立しない場合には、次に「出区+臨時列車」の条件1901、1902をチェックする。これが満足されれば、処理内容1903で示すような運転整理案を導出し、処理1805へ進む。一方、これが満足されなければ、「途中折り返し」の条件1901、1902をチェックし、満足されればその運転整理案1903を導出し、処理1805へ進む。登録されている全ての運転整理種別を使っても適切な運転整理案が導出できない場合、処理1803を終了して、処理1805へ進む。
【0112】
(処理1804)遅延回復のための運転整理案の導出を行う。まず、取得した改善目標データ1710内の改善目標値1712で示される列車番号(例えば16レ)、及び方面601(例えば上り)を取得する。これは、図11に示した例における列車1102(16レ)を示す。次に、改善目標リスト1700内の改善目標データ1710から、改善種別1711が「遅延回復」であり、方面601が今取得した方面と逆方面(下り)であり、さらに、改善目標値1712で示される列車の開始駅、終着駅の組が前述の列車1102と同じものを取得する。例えば、これによって、図11の列車1104(13レ)が取得できる。これら2つの改善目標データを改善目標リストから取得できた場合、それら2本の列車の運休を行う。さらに、端末駅(A駅及びG駅)で後運用未定となった列車から前運用未定となる列車まで、順次折り返しを変更する。こうした運転整理案を導出し、処理1805へ進む。
【0113】
このように、2つの改善目標データを取得できなかった場合には、遅延回復のための条件が不成立として、運転整理案の作成を行わず、処理1805へ進む。
【0114】
(処理1805)運転整理案が導出されていれば、処理を終了する。条件に合わず運転整理案が導出されていない場合には、次の改善目標に対する運転整理案を導出すべく、処理1801へ戻る。
【0115】
以上で、運転整理案作成アルゴリズムを終了する。
【0116】
以上により、図12で示した運転整理導出アルゴリズムの全体を説明した。
【0117】
これまで示した構成、処理によって、旅客需要に基づいて予想ダイヤの評価を行い、輸送力が不足している箇所の手当てを行う運転整理案の導出や、輸送力を確保した上での遅延の回復を行う運転整理案の導出を自動的に行う運転整理案作成装置が実現できる。
【0118】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0119】
図20は、本発明の第2の実施形態によるダイヤ評価装置の構成図を示す。
【0120】
ダイヤ評価装置2001は、処理実行部101、データ記憶部102、通信処理部103、入力処理部104、表示処理部105及びこれらを接続するバス106からなる。処理実行部101は、CPU及びROMで構成される。データ記憶部102は、RAMで構成される。通信処理部103は、運行管理システムとネットワーク13を介しての通信を行う。入力処理部104は、キーボード141やマウス142などによるユーザ入力を受け付ける。表示処理部105は、列車ダイヤとその評価結果をCRTなどに表示する。
【0121】
本実施形態では、こうした構成において、ダイヤ評価処理部2002の評価結果を処理実行部101に読み込み、実行させる。このダイヤ評価処理部2002は、ダイヤ解析処理部112、解析結果表示処理部2003からなる。
【0122】
また、データ記憶部102では、ダイヤ評価処理部2002が利用するデータを管理しており、ダイヤ管理部2004、ダイヤ解析情報管理部124を備えている。
【0123】
ダイヤ管理部2004では、評価の対象となる評価ダイヤと、評価の基準となる基準ダイヤを保有する。基準ダイヤとは、例えば計画時に作成されたダイヤであり、それをダイヤ図の形態で表現すると、前に述べた図2のようになる。評価ダイヤとは、評価の対象となるダイヤであり、運転整理後の実施ダイヤ、実際の運行結果を表す実績ダイヤ、実施ダイヤと走行実績から導かれる予想ダイヤ、もしくは、前述の第1の実施形態で出力される運転整理案を反映した予想ダイヤなどである。これをダイヤ図の形式で示すと、例えば、前述した図3のようになる。
【0124】
本実施形態では、評価の対象となるダイヤの評価を行い、表示処理部105によって、CRT151上にその評価結果を出力する。CRT151に出力されるダイヤの評価結果を、図21及び図22に示す。
【0125】
図21では、システムがエリア単位に輸送力の観点からダイヤを評価し、その評価結果をダイヤ図1000上に重ねて表示しているところを示す。メニュー2110で「上り方面」が選択されると、上り方面の各エリアの評価結果を、時間帯、走行区間で規定されるダイヤ上の領域に表示する。例えば、領域2101には、「上り−1」、即ち、C駅からA駅までの区間で、10:00〜10:30の間の列車で積み残す、積み残し乗客数(待ち乗客数)を評価し、その評価結果を、領域の背景色で表現している。同様に、領域2102には、「上り−2」の評価結果が示される。同様に、上り方面全てのエリアの積み残し乗客数に基づいて表示色を決定し、ダイヤ上の各領域にその色を表示する。ここで、領域2102は、列車本数が2本以上足りないため、赤で表示され、領域2101は、列車本数が1本足りないため、黄色で表示される。このように、積み残し乗客数などのダイヤの評価結果を、ダイヤスジとともにダイヤ図上に表現することで、どこのエリアで何本列車本数が不足しているかを直感的に把握することができるようになる。
【0126】
本実施形態では、時間幅を30分とした例を示したが、時間幅を短く取れば、より細かく旅客需要を見ることが可能である。即ち、時間幅を最小列車時隔(たとえば3分)にとれば、時間的に連続するエリアでは、時間的に後のエリアの待ち乗客数が増えていく様子を表示することができる。また、列車が走行するエリア、すなわち、ちょうど列車が発車した時刻を含むエリアで、待ち乗客数が減る(乗車した)様子を表示することも可能である。
【0127】
図22では、システムが、エリア「上り−1」に関するより詳細な評価結果を、レーダーチャート2201により表示しているものである。カーソル2210で、領域2101が指示されると、システムはその領域が選択されたことを示す枠2202を領域2101上に表示する。さらに、その領域に対応するエリア「上り−1」の評価結果を、レーダーチャート2201により表示する。システムは、レーダーチャート2201により、当該エリアの運転本数、運転間隔、駅停車時間、駅間走行時間の評価結果を表示する。
【0128】
このようなシステムにより、どのエリアで列車が不足するかを直感的に把握できるだけでなく、適切なエリアを指示することで、そのエリアのダイヤ評価をより詳細に参照することが可能となる。
【0129】
このような評価と表示を行う処理について、以下に説明する。
【0130】
図23は、ダイヤの評価結果を格納するダイヤ評価テーブル2300を示している。ダイヤ評価テーブル2300には、方面601、区間602、時間帯603、エリアNo.604で規定されるエリア毎に、待ち乗客数評価2301、運転本数評価2302、運転間隔評価2303、駅停車時間評価2304、走行時間評価2305が格納される。例えば、「上り−1」で示されるエリアの評価結果として、待ち乗客数評価2301には1、運転本数評価2302には50、運転間隔評価2303には30、駅停車時間評価2304には30、走行時間評価2305には50が格納される。
【0131】
図24は、ダイヤ解析処理部112で行うダイヤ評価処理のアルゴリズムの処理フロー図であり、以下にこの処理を説明する。
【0132】
(ダイヤ評価アルゴリズム開始)
(処理2401)ダイヤ解析処理を行う。これは、図13で説明した先の実施形態と同様の処理である。ダイヤ解析処理部112は、評価対象のダイヤについて、図6のダイヤ解析情報テーブル600の旅客需要606、必要本数606、予想本数608、積み残し乗客数608を算出する。なお、ここで、予想本数とは、評価対象のダイヤ上で当該エリアに発時刻を持つ列車の本数である。
【0133】
(処理2402)積み残し乗客数608の値を使って、各エリアの待ち乗客数の評価を行う。待ち乗客数の評価は、待ち乗客数評価レベルテーブル2500に基づいて行う。
【0134】
図25は、待ち乗客数の評価を実施するための評価テーブルを示す。この評価テーブル2500を使って、積み残し乗客数609の値が含まれる範囲2502を判定し、それに対応する評価レベル2501が、待ち乗客数の評価になる。評価結果は、図23のダイヤ評価テーブル2300の待ち乗客数評価2301に格納する。例えば、上り−1のエリアの積み残し乗客数609は、2100人であり、テーブル2500を使うとその評価結果は、レベル3となる。この結果、上り−1の待ち乗客数評価2301に評価レベル「3」を格納する。
【0135】
なお、待ち乗客数の評価は、図25に示す評価テーブル2500により下記となる。
(1)積み残し乗客数が0の場合、評価レベルは「0」。
(2)積み残し乗客数が列車乗車定員(1400人)未満の場合、評価レベルは「1」。
(3)積み残し乗客数が、列車の乗車定員以上、最大乗車定員(2100人)未満の場合、評価レベルは「2」。
(4)それ以上は、乗車定員の半分毎に、評価レベルを上げるものとする。例えば、積み残し乗客数が2800人以上3500人未満ならレベル「4」。
【0136】
即ち、評価レベルが「2」以下の場合、積み残し乗客は全て次列車で輸送可能であることを意味する。評価レベルが「3」以上になると、積み残し乗客が次列車でも輸送しきれないことを意味する。
【0137】
また、評価レベルが「1」以下であれば、積み残し乗客数は、次列車の乗車定員以下であり、これらの乗客を運んでも、次列車内は、比較的余裕があるということを意味する。
【0138】
(処理2403)運転本数の評価を行い、評価結果は、図23のダイヤ評価テーブル2300の運転本数評価2302に格納する。
【0139】
運転本数の評価は、ダイヤ情報解析テーブル600の必要本数607と予想本数608を使って、必要本数より予想本数が少ない場合、評価値=100×(予想本数/必要本数)、予想本数が必要本数以上の場合、評価値=100×(必要本数/予想本数)とする。
【0140】
(処理2404)運転間隔の評価を行う。
【0141】
この運転間隔の評価の詳細は、図26にその処理フローを示しており、ここで、図26を説明し、その後に、再び、図24の処理2405以下を説明することにする。
【0142】
図26は、運転間隔の評価アルゴリズムの処理フロー図である。
【0143】
(運転間隔評価アルゴリズム開始)
(処理2601)運転間隔の評価は、ダイヤ管理部204で管理する、基準ダイヤと評価ダイヤの対比により実施する。まず、基準ダイヤ上で、エリアの開始駅をエリア開始時刻直前に発車する列車を取得し、これを基準第0列車とする。
【0144】
(処理2602)基準ダイヤ上で、エリアの開始駅をエリアの開始時刻から終了時刻までの間に発車する列車を取得し、これを基準第1列車〜基準最終列車とする。
【0145】
(処理2603)基準第0列車〜基準最終列車の運転間隔を算出し、その平均値を算出、母集団平均値とする。
【0146】
(処理2604)評価ダイヤ上で、エリアの開始駅をエリア開始時刻直前に発車する列車を取得し、これを評価第0列車とする。
【0147】
(処理2605)評価ダイヤ上で、エリアの開始駅をエリアの開始時刻から終了時刻までの間に発車する列車を取得し、これを評価第1列車〜評価最終列車とする。
【0148】
(処理2606)評価第0列車〜評価最終列車の運転間隔を算出する。
【0149】
(処理2607)母集団平均値を用いて算出した評価列車の運転間隔の標準偏差を算出する。
【0150】
(処理2608)標準偏差から評価値を決定する。これは運転間隔評価テーブルを使う。
【0151】
図27は、運転間隔の評価に用いる評価テーブル2700を示す。この評価テーブル2700に示す算出した標準偏差の値が含まれる標準偏差範囲2701に対応する評価値2702を、運転間隔の評価値とする。
【0152】
以上で、図26の運転間隔評価アルゴリズムを終了する。
【0153】
このようにして求めた評価結果を、図23のダイヤ評価テーブル2300の運転間隔評価2303に格納する。
【0154】
ここで、図24に戻って、処理2405以降につき説明を進める。
【0155】
(処理2405)駅停車時間の評価を行う。運転間隔の評価と同様に、基準ダイヤ上でエリア内列車の駅停車時間の平均値を求め、それを母集団の平均値とする。次に、評価ダイヤ上で、エリア内列車の駅停車時間を求め、母集団の平均値を使って、その標準偏差を求める。最後に、標準偏差に対応する評価値を、評価テーブルにより求める。評価結果は、図23のダイヤ評価テーブル2300の駅停車時間評価2304に格納する。
【0156】
(処理2406)走行時間の評価を行う。運転間隔の評価と同様に、基準ダイヤ上でエリア内列車の走行時間の平均値を求め、それを母集団の平均値とする。次に、評価ダイヤ上で、エリア内列車の走行時間を求め、母集団の平均値を使って、その標準偏差を求める。最後に、標準偏差に対応する評価値を、評価テーブルにより求める。評価結果は、図23のダイヤ評価テーブル2300の走行時間評価2305に格納する。
【0157】
以上で、図24のダイヤ評価アルゴリズムを終了する。
【0158】
以上に示した処理により、ダイヤ解析処理部112は、評価ダイヤの各エリアに対して、待ち乗客数評価、運転本数評価、運転間隔評価、駅停車時間評価、走行時間評価を行う。
【0159】
次に、解析結果表示部115が行う表示処理について説明する。
【0160】
図28は、評価結果(待ち乗客数評価の結果)をダイヤ図に重畳するアルゴリズムの処理フロー図である。待ち乗客数(旅客需要)の評価結果を、エリア単位に図21や図22のダイヤ図1000上に表示する処理である。
【0161】
(待ち乗客評価重畳アルゴリズム開始)
(処理2801)図21のメニュー2110で指示される方面を取得する。
【0162】
(処理2802)当該方面の全てのエリア分、処理2803〜2805を実施する。
【0163】
(処理2803)ダイヤ評価テーブル2300から、待ち乗客数評価2301を取得する。
【0164】
(処理2804)取得した待ち乗客数評価の値に基づき、表示色を決定する。これは、図29に示した表示色テーブル2900を用いる。例えば、待ち乗客数評価がレベル「3」の場合、そのエリアはRGB(255,153、255)で指定される色を表示色とする。
【0165】
(処理2805)処理2804で決定した表示色にて、当該エリアを表示する。
【0166】
(処理2806)ループ終了。
【0167】
以上で、待ち乗客評価重畳アルゴリズムを終了する。
【0168】
次に、レーダーチャートを表示する処理を説明する。
【0169】
図30は、レーダーチャートの表示アルゴリズムの処理フロー図である。
【0170】
(レーダーチャート表示アルゴリズム開始)
(処理3001)メニュー2110で指示される方面を取得する。
【0171】
(処理3002)図22のカーソル2210で指示された領域を取得する。方面と領域で規定されるエリアを取得する。
【0172】
(処理3003)ダイヤ評価テーブル2300から、当該エリアの運転本数評価2302、運転間隔評価2303、駅停車時間評価2304、走行時間評価2305を取得する。
【0173】
(処理3004)当該領域の枠2202を表示する。
【0174】
(処理3005)取得した情報を使ってレーダーチャートを表示する。
【0175】
(レーダーチャート表示アルゴリズム終了)
以上の評価処理、表示処理により、図21,22に示したようなダイヤ評価及び評価結果の表示が実現される。これにより、実施ダイヤ、実績ダイヤ、予想ダイヤ、運転整理案等を反映した予想ダイヤなどの評価と、その分かり易い表示が可能になる。
【0176】
なお、本実施形態では、運転整理案作成装置とダイヤ評価装置というように、2つの装置を分けて説明したが、例えば、第1の実施形態と第2の実施形態を組み合わせたシステムも容易に実現可能である。そのシステムでは、例えば、予想ダイヤを評価して、適切な運転整理案を提示するとともに、待ち乗客数を評価し、それをダイヤ図上の各エリアに表示したり、列車本数等のレーダーチャート表示を行うことが、自動的に可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】本発明の第1の実施形態である運転整理案作成装置のシステム構成図。
【図2】運転整理案作成装置が管理する実施ダイヤの例。
【図3】乱れ発生時の予想ダイヤの例。
【図4】区間と時間帯で規定したエリアとダイヤの関係図。
【図5】区間と時間帯で規定されたエリアと対応付けた予想ダイヤの例。
【図6】ダイヤ解析情報管理部が所有するダイヤ解析情報テーブル。
【図7】エリアにおける列車本数の算出例。
【図8】輸送力を確保する運転整理として、延発を適用した場合のダイヤ図。
【図9】輸送力を確保する運転整理として、出区+臨時列車を適用したダイヤ図。
【図10】輸送力確保の運転整理として、途中折り返しを適用した場合のダイヤ図。
【図11】遅延回復の運転整理として、間引き列車の選定を説明するダイヤ図。
【図12】図1の実施形態の運転整理作成処理部で実施される全体アルゴリズム。
【図13】ダイヤ解析処理部が実施するダイヤ解析情報テーブル更新アルゴリズム。
【図14】区間別に輸送完了列車(積み残し乗客無しの列車)を管理するリスト。
【図15】積み残し乗客無しの列車を導出するアルゴリズム。
【図16】改善目標の設定アルゴリズム。
【図17】改善目標リスト。
【図18】運転整理案作成処理のアルゴリズム。
【図19】輸送力確保のために実施する運転整理の条件判定及び処理を登録したテーブル。
【図20】本発明の第2の実施形態によるダイヤ評価装置のシステム構成図。
【図21】積み残しを含む旅客需要の評価結果出力例。
【図22】列車本数等の評価結果をエリアと対応付けレーダーチャート表示例。
【図23】ダイヤの評価結果を格納するダイヤ評価テーブル。
【図24】ダイヤ評価アルゴリズム。
【図25】待ち乗客数の評価を実施するための評価テーブル。
【図26】運転間隔の評価アルゴリズム。
【図27】運転間隔の評価に用いる評価テーブル。
【図28】評価結果(待ち乗客数評価の結果)をダイヤ図に重畳するアルゴリズム。
【図29】待ち乗客数評価に基づき表示色を決定するための表示色テーブル。
【図30】レーダーチャートの表示アルゴリズム。
【符号の説明】
【0178】
1…運転整理案作成装置、101…処理実行部、102…データ記憶部、103…通信処理部、104…入力処理部、105…表示処理部、110…運転整理案作成処理部、111…予想ダイヤ作成処理部、112…ダイヤ解析処理部、113…改善目標設定処理部、114…運転整理作成処理部、115…解析結果表示処理部、120…実施ダイヤ管理部、121…実績情報管理部、122…支障条件管理部、123…予想ダイヤ管理部、124…ダイヤ解析情報管理部、125…改善目標情報管理部、151…CRT、1000…ダイヤ図、2001…ダイヤ評価装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実施ダイヤと実績ダイヤに基づき予想ダイヤを作成する予想ダイヤ作成手段と、時間帯と区間で規定されるエリア単位に、想定される輸送需要を算出し、この輸送需要に基づいて、当該エリアにて必要とされる列車の本数を算出する必要列車本数算出手段と、前記エリアに含まれる駅における列車の発車時刻を予想ダイヤ上で求め、この発車時刻に基づき前記エリアを走行すると予想される列車の本数を算出し、算出した予想列車本数と必要列車本数とに基づいて、当該エリアにおけるダイヤの改善目標を設定し、この改善目標を達成するための運転整理案を作成する運転整理案作成手段とを備えたことを特徴とする運転整理案作成装置。
【請求項2】
前記運転整理案を実施ダイヤに適用し、予想ダイヤを更新して出力する運転整理作成手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の運転整理案作成装置。
【請求項3】
前記必要列車本数算出手段は、予め規定された列車の許容乗車人数に基づいて、エリアで想定される需要を輸送するために必要な列車本数を算出し、この列車本数を当該エリアで必要とされる列車本数とすることを特徴とする請求項1記載の運転整理案作成装置。
【請求項4】
前記必要列車本数算出手段は、予めエリア単位に規定された計画時輸送需要を基に、第1のエリアの輸送需要と予想ダイヤ上で当該エリアを走行する列車で輸送可能な旅客数との差分を算出し、この差分を積み残し乗客数として、第1のエリアと同一走行区間でかつ次の時間帯で規定される第2のエリアの計画時輸送需要に加えることで、第2のエリアにて想定される輸送需要を算出することを特徴とする請求項1記載の運転整理案作成装置。
【請求項5】
前記運転整理案作成手段は、予想列車本数が必要列車本数より少ないエリアに対して、当該エリアを走行する列車の本数を増加するための運転整理案を作成し、その運転整理案を実施ダイヤに適用して予想ダイヤを更新して出力することを特徴とする請求項1記載の運転整理案作成装置。
【請求項6】
前記運転整理案作成手段は、予想ダイヤ上で遅延が予想される第1の列車について、走行区間が第1の列車と同一でかつ第1の列車の直前を走行する第2の列車がある場合、第2の列車が走行する各エリアにおいて、当該エリアを走行すると予想される列車のうち、第2の列車以前の列車を選出してそれらの本数を算出し、算出された列車本数が当該エリアで必要とされる列車本数以上かどうかを判定する手段を備え、この判定条件が第2の列車が走行する全てのエリアで成立する場合、前記第2の列車の直後を走行する第1の列車を間引くことで列車ダイヤの遅延を回復する運転整理案を作成することを特徴とする請求項1記載の運転整理案作成装置。
【請求項7】
前記運転整理案を実施ダイヤに適用して更新して出力することを特徴とする請求項6記載の運転整理案作成装置。
【請求項8】
前記運転整理案作成手段は、運転整理案を作成し、その運転整理案を実施ダイヤに適用して予想ダイヤを更新して出力すると共に、その運転整理を作成する基となったダイヤの改善目標と運転整理内容を対応付けて出力することを特徴とする請求項1記載の運転整理案作成装置。
【請求項9】
時間帯と区間で規定されるエリアに対し、運行される列車の本数を前記エリアに所属する駅における列車の発車時刻に基づき算出し、この列車本数に基づいて、前記エリアにおける輸送可能な旅客数を算出する輸送旅客数算出手段と、予めエリア毎に規定された計画時輸送需要をもとに、第1のエリアの輸送需要と第1のエリアにおいて運行される列車で輸送可能な旅客数とに基づいて、第1のエリアの積み残し乗客数を算出し、この積み残し乗客数を第1のエリアと同一走行区間でかつ次の時間帯で規定される第2のエリアの計画時輸送需要に加え、第2のエリアにて想定される輸送需要を算出する輸送需要算出手段と、エリアの輸送需要を、当該エリアにおける輸送可能な旅客数に基づいて評価して出力するダイヤ評価出力手段とを備えたことを特徴とするダイヤ評価装置。
【請求項10】
前記ダイヤの評価出力手段は、ダイヤ図上の時間帯及び区間で規定された場所に、前記時間帯及び区間で規定されるエリアの評価結果を重ねて表示する表示手段であることを特徴とする請求項9記載のダイヤ評価装置。
【請求項11】
時間帯と区間で規定されるエリアに対し、そのエリアにおける列車本数、列車間隔、駅停車時間、駅間走行時間の少なくとも一つの評価項目を評価し出力するダイヤ評価装置において、前記エリアを走行する列車をそのエリアに所属する駅における列車の発車時刻に基づき選出し、予め評価項目毎に規定された評価に必要な値を、前記選出された列車の運行情報を用いて算出する手段と、前記エリアをダイヤ図上で明示すると共に、このエリアに対して算出した各評価項目の評価値をレーダーチャートの形式で表示する表示手段を備えたことを特徴とするダイヤ評価装置。
【請求項1】
実施ダイヤと実績ダイヤに基づき予想ダイヤを作成する予想ダイヤ作成手段と、時間帯と区間で規定されるエリア単位に、想定される輸送需要を算出し、この輸送需要に基づいて、当該エリアにて必要とされる列車の本数を算出する必要列車本数算出手段と、前記エリアに含まれる駅における列車の発車時刻を予想ダイヤ上で求め、この発車時刻に基づき前記エリアを走行すると予想される列車の本数を算出し、算出した予想列車本数と必要列車本数とに基づいて、当該エリアにおけるダイヤの改善目標を設定し、この改善目標を達成するための運転整理案を作成する運転整理案作成手段とを備えたことを特徴とする運転整理案作成装置。
【請求項2】
前記運転整理案を実施ダイヤに適用し、予想ダイヤを更新して出力する運転整理作成手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の運転整理案作成装置。
【請求項3】
前記必要列車本数算出手段は、予め規定された列車の許容乗車人数に基づいて、エリアで想定される需要を輸送するために必要な列車本数を算出し、この列車本数を当該エリアで必要とされる列車本数とすることを特徴とする請求項1記載の運転整理案作成装置。
【請求項4】
前記必要列車本数算出手段は、予めエリア単位に規定された計画時輸送需要を基に、第1のエリアの輸送需要と予想ダイヤ上で当該エリアを走行する列車で輸送可能な旅客数との差分を算出し、この差分を積み残し乗客数として、第1のエリアと同一走行区間でかつ次の時間帯で規定される第2のエリアの計画時輸送需要に加えることで、第2のエリアにて想定される輸送需要を算出することを特徴とする請求項1記載の運転整理案作成装置。
【請求項5】
前記運転整理案作成手段は、予想列車本数が必要列車本数より少ないエリアに対して、当該エリアを走行する列車の本数を増加するための運転整理案を作成し、その運転整理案を実施ダイヤに適用して予想ダイヤを更新して出力することを特徴とする請求項1記載の運転整理案作成装置。
【請求項6】
前記運転整理案作成手段は、予想ダイヤ上で遅延が予想される第1の列車について、走行区間が第1の列車と同一でかつ第1の列車の直前を走行する第2の列車がある場合、第2の列車が走行する各エリアにおいて、当該エリアを走行すると予想される列車のうち、第2の列車以前の列車を選出してそれらの本数を算出し、算出された列車本数が当該エリアで必要とされる列車本数以上かどうかを判定する手段を備え、この判定条件が第2の列車が走行する全てのエリアで成立する場合、前記第2の列車の直後を走行する第1の列車を間引くことで列車ダイヤの遅延を回復する運転整理案を作成することを特徴とする請求項1記載の運転整理案作成装置。
【請求項7】
前記運転整理案を実施ダイヤに適用して更新して出力することを特徴とする請求項6記載の運転整理案作成装置。
【請求項8】
前記運転整理案作成手段は、運転整理案を作成し、その運転整理案を実施ダイヤに適用して予想ダイヤを更新して出力すると共に、その運転整理を作成する基となったダイヤの改善目標と運転整理内容を対応付けて出力することを特徴とする請求項1記載の運転整理案作成装置。
【請求項9】
時間帯と区間で規定されるエリアに対し、運行される列車の本数を前記エリアに所属する駅における列車の発車時刻に基づき算出し、この列車本数に基づいて、前記エリアにおける輸送可能な旅客数を算出する輸送旅客数算出手段と、予めエリア毎に規定された計画時輸送需要をもとに、第1のエリアの輸送需要と第1のエリアにおいて運行される列車で輸送可能な旅客数とに基づいて、第1のエリアの積み残し乗客数を算出し、この積み残し乗客数を第1のエリアと同一走行区間でかつ次の時間帯で規定される第2のエリアの計画時輸送需要に加え、第2のエリアにて想定される輸送需要を算出する輸送需要算出手段と、エリアの輸送需要を、当該エリアにおける輸送可能な旅客数に基づいて評価して出力するダイヤ評価出力手段とを備えたことを特徴とするダイヤ評価装置。
【請求項10】
前記ダイヤの評価出力手段は、ダイヤ図上の時間帯及び区間で規定された場所に、前記時間帯及び区間で規定されるエリアの評価結果を重ねて表示する表示手段であることを特徴とする請求項9記載のダイヤ評価装置。
【請求項11】
時間帯と区間で規定されるエリアに対し、そのエリアにおける列車本数、列車間隔、駅停車時間、駅間走行時間の少なくとも一つの評価項目を評価し出力するダイヤ評価装置において、前記エリアを走行する列車をそのエリアに所属する駅における列車の発車時刻に基づき選出し、予め評価項目毎に規定された評価に必要な値を、前記選出された列車の運行情報を用いて算出する手段と、前記エリアをダイヤ図上で明示すると共に、このエリアに対して算出した各評価項目の評価値をレーダーチャートの形式で表示する表示手段を備えたことを特徴とするダイヤ評価装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
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【図21】
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【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2007−15424(P2007−15424A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195837(P2005−195837)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(390023928)日立エンジニアリング株式会社 (134)
【出願人】(000233550)株式会社日立ハイテクサイエンスシステムズ (112)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(390023928)日立エンジニアリング株式会社 (134)
【出願人】(000233550)株式会社日立ハイテクサイエンスシステムズ (112)
【Fターム(参考)】
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