説明

運転者注意力回復装置

【課題】 運転者の車両走行への注意力を効果的に回復できる運転者注意力回復装置を提供する。
【解決手段】 車両1の運転者4の車両走行への注意力が低下した注意力低下状態が注意力低下状態検出手段103において検出されている状態で、走行情報検出部102により検出された走行情報に基づいて、車両1の予め定められた走行変化が特定された場合に、運転者4の車両走行への注意力を回復すべく、特定された車両1の走行変化が実際よりも大きく又は小さく生じたかのような錯覚を運転者4が覚えるよう運転席シート2を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両運転者の注意力回復を促すための運転者注意力回復装置に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開平09−108355号公報
【0003】
近年の車両は、運転者の車両走行への注意力の低下(眠気や体調不良等)を検出して、運転者に音声警告を与える車両システムが搭載されたものがある。さらには、警告だけでなく、バイブレーションや、運転者に冷風を吹き付けるように車載空調装置を制御する方法などもなる。また、眠気を防止する装置として特許文献1等を例示することもできる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来のやり方では、運転者に対し車両走行への注意力回復を促すのに不十分である場合がある。また、上記以外のより効果的な注意力回復方法も求められている。
【0005】
本発明の課題は、運転者の車両走行への注意力を効果的に回復できる運転者注意力回復装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の運転者注意力回復装置は、
車両に搭乗した運転者の車両走行への注意力が低下した注意力低下状態を検出する注意力低下状態検出手段と、
車両の予め定められた走行変化を特定可能な走行情報を検出する走行情報検出手段と、
検出された走行情報に基づいて走行変化を特定する走行変化特定手段と、
運転者の車両走行への注意力を回復させるために、特定された車両の走行変化が実際よりも大きく又は小さく運転者が体感するよう、少なくとも運転者の頭部が動かされる形での注意力回復駆動を実行可能とする注意力回復用駆動手段と、
注意力低下状態が検出された状態で走行変化が特定された場合に、当該走行変化に基づいて、当該走行変化に対応する注意力回復駆動を注意力回復用駆動手段に実行させる注意力回復用制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
上記本発明の構成によれば、運転者の三半規管等に対し、車両の走行変化が意図とは異なる形で生じたという体感を与えることができるから、その錯覚により運転者は、血圧上昇やホルモン分泌等が生じ、さらには、心理的にも恐怖感を感じることで、車両走行への注意力を取り戻すことができる。
【0008】
走行情報検出手段は、運転者の予め定められた運転操作情報を検出するものであり、走行変化特定手段は、検出された運転操作情報に基づいて、走行変化を特定するものでとできる。運転者の操作に基づいて走行変化が検出される構成、即ち、運転者の操作に基づいて上記のような錯覚を運転者に与える方が、運転者への心理的な影響が大きく、運転者の注意力を回復させるより高い効果が期待できる。なお、走行情報検出手段は、車両の走行変化を直接検出するものとし、走行変化特定手段は、その検出結果に基づいて上記走行変化を特定するものとすることも可能である。この場合、ユーザーの運転操作を待たずとも注意力回復を促すことができる利点がある。
【0009】
また、走行変化特定手段は、車両の旋回による進行方向変化を特定するものとできる。この場合、例えば、この場合の走行情報検出手段は、車両の旋回による進行方向変化を検出するセンサとすることができる。この構成によると、ジャイロセンサ、ヨーレートセンサ等のような周知のセンサを利用して容易に実現できる。また、この場合の走行情報検出手段は、運転操作情報としてステアリングホイールの操舵角を検出するものとすることがき、走行変化特定手段は、検出された操舵角に基づいて、車両の進行方向変化を推定するものとすることができる。この場合、ステアリングの操舵角を検出する周知の操舵角センサ等により容易に実現できる。
【0010】
本発明において、注意力回復用駆動手段は、特定された車両の旋回による進行方向変化が実際よりも大きく生じたという体感を運転者が覚えるよう、少なくとも運転者の頭部が動かされる形での注意力回復駆動を実行可能とするものとできる。この場合の注意力回復用制御手段は、注意力低下状態が検出された状態で車両の旋回による進行方向変化が特定された場合に、当該進行方向変化に基づいて、当該進行方向変化に対応する注意力回復駆動を注意力回復用駆動手段に実行させるとできる。この構成によると、車両の左右前方への旋回進行に対し、その旋回が予想よりも大きく体感することになり、これに起因して、車両走行への注意力が回復する。
【0011】
なお、注意力回復用駆動手段は、車室内において運転席を車両左右方向に移動するものとできる。この場合の注意力回復用制御手段は、注意力低下状態が検出された状態において、車両が右前方へ旋回する進行方向変化が特定された場合は運転席を左に、車両が左前方へ旋回する進行方向変化が特定された場合は運転席を右に移動する注意力回復駆動を、注意力回復用駆動手段に実行させるものとできる。この構成によると、車両の左右前方への旋回進行に対し車両左右方向における逆向き(右前への旋回であれば左、左前への旋回であれば右)に運転席が動くことで、運転者は予想を上回る急旋回を体感することになり、これに起因して、車両走行への注意力が回復する。また、この場合、運転席移動後であっても運転者の視線が車両前方に残した状態を保つことができる。
【0012】
また、注意力回復用駆動手段は、車室内において運転席を左右双方向に所定角度だけ回転可能とするものとできる。この場合の注意力回復用制御手段は、注意力低下状態が検出された状態において、車両が右前方へ旋回する進行方向変化が特定された場合は運転席を所定角度だけ左回転し、車両が左前方へ旋回する進行方向変化が特定された場合は運転席を所定角度だけ右回転する注意力回復駆動を、注意力回復用駆動手段に実行させるものとできる。この構成によると、車両の左右前方への旋回進行に対し逆回転(右前への旋回であれば左回転、左前への旋回であれば右回転)に運転席が動くことで、運転者は予想を上回る急旋回を体感することになり、これに起因して、車両走行への注意力が回復する。また、この場合、運転席の回転角度を、運転席回転後であっても運転者の視線が車両前方に残るような微小角度とすることが望ましい。大きな角度変化でなくとも、急な角度変化が生ずれば、これに起因して、運転者の車両走行への注意力は回復する。
【0013】
また、注意力回復用駆動手段は、車室内において運転者の頭部に装着され、当該頭部を左右双方向に所定角度だけ回転可能とするものとできる。この場合の注意力回復用制御手段は、注意力低下状態が検出された状態において、車両が右前方へ旋回する進行方向変化が特定された場合は運転者の頭部を所定角度だけ左に回転させ、車両が左前方へ旋回する進行方向変化が特定された場合は運転者の頭部を所定角度だけ右に回転させる注意力回復駆動を、注意力回復用駆動手段に実行させるものとできる。この構成によると、車両の左右前方への旋回進行に対し逆回転(右前への旋回であれば左回転、左前への旋回であれば右回転)に運転者の頭が動くことで、運転者は予想を上回る急旋回を体感することになり、これに起因して、車両走行への注意力が回復する。また、この場合、運転者の頭の回転角度を、回転後であっても運転者の視線が車両前方に残るような微小角度とすることが望ましい。大きな角度変化でなくとも、急な角度変化が生ずれば、これに起因して、運転者の車両走行への注意力は回復する。
【0014】
また、注意力回復用駆動手段は、車室内において運転席を左右双方向に所定角度だけ傾斜可能とするとできる。この場合の注意力回復用制御手段は、注意力低下状態が検出された状態において、車両が右前方へ旋回する進行方向変化が特定された場合は運転席を所定角度だけ左傾斜させ、車両が左前方へ旋回する進行方向変化が特定された場合は運転席を所定角度だけ右傾斜させる注意力回復駆動を、注意力回復用駆動手段に実行させるものとできる。この構成によると、車両の左右前方への旋回進行に対し逆傾斜(右前への旋回であれば座席左側を右側よりも上方とする右傾斜、左前への旋回であれば座席右側を左側よりも上方とする左傾斜)して運転者が傾くことで、運転者は予想を上回る急旋回を体感することになり、これに起因して、車両走行への注意力が回復する。また、この場合、運転席の傾斜後であっても運転者の視線が車両前方に残した状態を保つことができる。
【0015】
なお、本発明において、車両周辺の予め定められた範囲内において障害物の有無を検出する周辺監視手段を備えることができる。そして、この場合の注意力回復用駆動手段は、車両全体を、走行レーンから出ない程度に左又は右に寄せた後、元の走行位置に復帰させる蛇行を可能とするものとでき、他方、注意力回復用制御手段は、注意力低下状態が検出された状態で、なおかつ障害物が検出されていない状態において、車両が右前方へ旋回する進行方向変化が特定された場合は車両全体を現在よりもさらに左に寄せる左寄せ走行を実行し、車両が左前方へ旋回する進行方向変化が特定された場合は車両全体を現在よりもさらに右に寄せる右寄せ走行を実行させる注意力回復駆動を、注意力回復用駆動手段に実行させるものとできる。この構成によると、車両周辺に他車両等の障害物が存在していない状態を前提に、車両の左右前方への旋回進行に対し逆方向の旋回を実施することで、運転者は車両の急なふらつきを体感することになり、これに起因して、車両走行への注意力を回復することができる。
【0016】
ところで、走行変化特定手段は、車両の加速変化及び減速変化を特定するものとできる。この場合、例えば、車両に一般的に搭載される加速度センサ等により容易に実現できる。上記した車両の旋回による進行方向変化を特定するものと合わせて備えることも可能である。
【0017】
また、走行情報検出手段は、運転操作情報としてアクセルペダルの操作量を検出するものであり、走行変化特定手段は、検出されたアクセルペダルの操作量に基づいて、車両の加速変化を特定するものとできる。また、走行情報検出手段は、運転操作情報としてブレーキペダルの操作量を検出するものとし、走行変化特定手段は、検出されたブレーキペダルの操作量に基づいて、車両の減速変化を特定するものとできる。これらの場合、アクセル操作におけるアクセルペダルの踏下量やブレーキ操作におけるブレーキペダルの踏下量から、車両の可減速を容易に特定することができる。
【0018】
本発明において、注意力回復用駆動手段は、特定された車両の加速変化及び減速変化が実際よりも小さく生じたという体感を運転者が覚えるよう、少なくとも運転者の頭部が動かされる形での注意力回復駆動を実行可能とするものとできる。この場合の注意力回復用制御手段は、注意力低下状態が検出された状態で車両の加速変化及び減速変化のいずれか一方が特定された場合に、当該加減速変化に基づいて、当該加減速変化に対応する注意力回復駆動を注意力回復用駆動手段に実行させるものとできる。
【0019】
なお、注意力回復用駆動手段は、車室内において運転席を車両前後方向に移動するものとできる。この場合の注意力回復用制御手段は、注意力低下状態が検出された状態において、車両の加速変化が特定された場合は運転席を前方に移動し、車両の減速変化が特定された場合は運転席を後方に移動する注意力回復駆動を注意力回復用駆動手段に実行させるものとできる。この構成によると、車両に加減速が生じる際に運転者は、それよりも小さいレベルでの加減速しか体感できないため、これに起因して、車両走行への注意力が回復する。
【0020】
また、注意力回復用駆動手段は、車室内において運転席を車両前後方向に所定角度だけ傾斜可能とするものとできる。この場合の注意力回復用制御手段は、注意力低下状態が検出された状態において、車両の加速変化が特定された場合は運転席を所定角度だけ前傾傾斜させ、車両の減速変化が特定された場合は運転席を所定角度だけ後ろに傾斜させる注意力回復駆動を実行させるものとできる。この構成によると、車両に加減速が生じる際に運転者は、それよりも小さいレベルでの加減速しか体感できないため、これに起因して、車両走行への注意力が回復する。
【0021】
なお、本発明において、車両周辺の予め定められた範囲内において障害物の有無を検出する周辺監視手段を備えることができる。そして、この場合の注意力回復用駆動手段は、車両全体の加速ないし減速を可能とするものとでき、他方、注意力回復用制御手段は、注意力低下状態が検出された状態で、なおかつ障害物が検出されていない状態において、車両の加速変化が特定された場合は車両全体の加速レベルを実際よりも小さくし、車両の減速変化が特定された場合は車両全体の減速レベルを実際よりも小さく減速させる注意力回復駆動を、注意力回復用駆動手段に実行させるものとできる。
【0022】
ところで、注意力回復用制御手段は、注意力回復駆動を予め定められた駆動期間の間継続して実行し、当該駆動期間の終了に伴い、当該注意力回復駆動を実行する以前の状態に復帰させるものとできる。これにより、注意力回復駆動後は自動的に元の状態に復帰するので、復帰させるための操作といった煩わしい操作が必要ない。また、上記駆動期間は、例えば0.1秒以下の極短期間とすることができる。運転者の注意力の回復は、注意力回復駆動が生じた瞬間になされるものであるから、それ以降に継続的に行うことに意味は無く、むしろ早く元の状態に復帰させることの方が重要となる。駆動期間を極短期間とすることで、元の状態にすばやく復帰させることができる。
【0023】
また、注意力回復用制御手段は、注意力回復駆動を予め定められた駆動変位を駆動するまで継続して駆動し、当該駆動変位の駆動が完了するに伴い、当該注意力回復駆動を実行する以前の状態に復帰させるものとできる。これにより、注意力回復駆動後は自動的に元の状態に復帰するので、復帰させるための操作といった煩わしい操作が必要ない。また、駆動変位は、極微量とすることができる。運転者の注意力の回復は、注意力回復駆動が生じた瞬間になされるものであるから、それ以降に継続的に行うことに意味は無く、むしろ早く元の状態に復帰させることの方が重要となる。駆動変位を極微量とすることで、元の状態にすばやく復帰させることができる。
【0024】
ところで、注意力低下状態検出手段は、運転者の予め定められた生体情報を検出する生体情報検出手段と、検出された生体情報に基づいて運転者の予め定められた非覚醒状態(例えば眠気)を検出する非覚醒状態検出手段(眠気検出手段)と、を備えて構成することができる。運転者の生体情報を検出することで、運転者の注意力低下状態を確実に検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の運転者注意力回復装置の第一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0026】
図1は、本実施形態の運転者注意力回復装置の全体構成を示すブロック図である。図1に示す運転者注意力回復装置100は、当該装置1の主制御部をなすシート駆動ECU101に、車両1の予め定められた走行情報を検出する走行情報検出部102と、運転者4の予め定められた生体情報を検出する生体情報検出部103と、運転席シート2を駆動するための駆動アクチュエータ104とが接続する形で構成されている。
【0027】
走行情報検出部(走行情報検出手段)102は、図2に示す車両1の予め定められた走行パラメータ(走行情報)を検出するものである。本実施形態においては、車両1のステアリングホイール3の操舵角を検出する操舵角センサとされている。走行情報検出部102の検出結果はシート駆動ECU101に入力される。シート駆動ECU101は、その入力(検出結果)に基づいて、車両1の予め定められた走行変化を特定する走行変化特定手段として機能する。ここでは、検出されるステアリングホイール3の操舵角(操作量)に基づいて操舵角変化を検出し、検出された操舵角変化に基づいて、車両1の旋回による進行方向変化を特定する。
【0028】
生体情報検出部(生体情報検出手段)103は、運転者4の予め定められた生体情報を検出するものである。本実施形態においては、車両1の運転者4の、脳波、脈波、心拍、呼吸数、眼球運動等を検出するセンサである。これらの検出結果は、シート駆動ECU101に入力され、シート駆動ECU101は、その入力(検出結果)に基づいて、運転者4の車両1走行への注意力が低下した注意力低下状態を検出する。本実施形態におけるシート駆動ECU101は、検出される脳波、脈波、心拍、呼吸数、眼球運動等のうちいずれか又は複数に基づいて、上記注意力低下状態である入眠予兆状態(非覚醒状態)を特定する非覚醒状態検出手段として機能する。なお、注意力低下状態は、運転者の体調不良状態等を含むようにしてもよい。例えば体調不良も、上記の検出信号が通常範囲から外れることで特定可能である。
【0029】
具体的にいえば、図2に示すように、本実施形態の生体情報検出部103は、運転席シート2に座した運転者4の頭部が接触ないし近接した状態において脳波信号を検出する脳波センサ103aと、ステアリングホイール3のリング部32に複数設けられた電極からなり、運転者4が2つの異なる電極を把持することによって心電位信号を検出する心電センサ103bと、ステアリングホイール3の一部(ここではリング部32)に設けられた、発光素子及び受光素子を有して構成される周知の光学式反射型センサであって、人体(ステアリング3を把持する手)の小・細動脈で反射して受光素子で検出される受光量変化を脈波信号(例えば電圧信号)として出力する脈波センサ103cと、運転席シート2のリクライニング部(背もたれ部)2aに設けられた圧電型フィルムセンサであって、人体背部の生体信号を出力する背部生体信号検出部103dと、運転席シート2に座した運転者4の目を撮影するカメラ(目画像撮影手段)103eと、を有している。シート駆動ECU101は、これらからの出力結果に基づいて、後述する方法により入眠予兆状態(非覚醒状態)を特定する。なお、図2(b)の符号31と符号33は、ステアリングホイール3のホーン部とスポーク部である。
【0030】
駆動アクチュエータ(注意力回復用駆動手段)104は、運転者4の車両1走行への注意力を回復させるために、シート駆動ECU101において特定された車両1の走行変化が実際よりも大きく又は小さく生じたという体感を運転者4が覚えるよう、少なくとも運転者4の頭部が動かされる形で駆動可能とされている。以下、このような駆動を注意力回復駆動と称する。
【0031】
本実施形態における駆動アクチュエータ104は、駆動ドライバー回路104aを介してシート駆動ECU101に接続されている。当該駆動アクチュエータ104によって実行される注意力回復駆動は、シート駆動ECU101において特定される車両1の旋回による進行方向変化が、実際よりも当該それよりも大きく生じたかのような錯覚を運転者4が覚えるよう、少なくとも運転者4の頭部が動かされる形でなされる駆動である。
【0032】
具体的にいえば、本実施形態の駆動アクチュエータ104は、車両1上下方向に延出する所定軸線Z周りにおいて、車室内において車体に対し運転席シート4を左右双方向に所定角度だけ相対的に回転するための駆動モータである。運転席シート4は、座席下の回転軸部21に一体化される形で車体側(車両床部)10Fに固定される一方、当該回転軸部21は、ギア機構22を介して駆動モータ104の出力軸(図示なし)に組み付けられており、駆動モータ104の回転駆動により、回転軸部21及び運転席シート4が、所定のガイドレール(図示なし)に案内される形で、所定角度だけ左右双方向に回転可能に構成されている。なお、駆動アクチュエータ104により運転席シート4を回転駆動する構成は上記記載に限られるものではなく、他の方法を用いることもできる。
【0033】
シート駆動ECU101は、CPU、ROM、RAM、外部インターフェース、入出力部等が、バス24により接続される形で構成されている。外部の記憶装置と接続する構成であってもよい。シート駆動ECU101は、生体情報検出部103の検出結果に基づいて注意力低下状態が検出された状態で、なおかつ走行情報検出部102の取得した走行情報に基づいて予め定められた走行変化が特定された場合に、当該走行変化に対応する注意力回復駆動を、駆動アクチュエータ104に実行させる注意力回復制御を実行する注意力回復用制御手段として機能する。具体的にいえば、注意力回復用制御は、シート駆動ECU101におけるROMや外部記憶装置の所定領域に記憶された所定のプログラムをCPUが実行する形でなされる。
【0034】
以下、注意力回復制御について、図4のフローチャートを用いて説明する。
【0035】
S1では、シート駆動ECU101が、生体情報検出部103から検出結果を取得し、取得した検出結果に基づいて、運転者4が注意力低下状態であるか否かを判定する。注意力低下状態であると判定された場合にはS2に進み、注意力低下状態でないと判定された場合には本処理を終了する。
【0036】
S2では、シート駆動ECU101が、走行情報検出部102から走行情報を取得して、取得した走行情報に基づいて、車両1において予め定められた走行変化が生じているか否かを判定する。本実施形態においては、走行情報検出部102から取得した走行情報に基づいて特定される走行変化が、予め定められた閾レベルを越えるものである場合に、注意力回復駆動を実行すべき予め定められた走行変化が生じたと判定する。
【0037】
ここでは、走行情報検出部102をなす操舵角センサにより検出されるステアリングホイール3の操舵角(操作量)に基づいて操舵角変化量を検出し、検出された操舵角変化量が予め定められた閾レベルを越えた場合を、注意力回復駆動を実行すべき予め定められた走行変化が生じたと判定する。予め定められた走行変化が生じていると判定された場合はS3に進み、予め定められた走行変化が生じていないと判定された場合には本処理を終了する。
【0038】
S3では、走行情報検出部102が、駆動アクチュエータ104に対し、当該走行変化に対応する注意力回復駆動を実行させる制御信号を出力し、駆動アクチュエータ104を駆動させる。この注意力回復駆動については、図5に示すような処理の流れで実行される。
【0039】
まず、S11において、車両1に生じた今回の走行変化を特定する。本実施形態においては、車両1の旋回による進行方向変化を特定する。具体的にいえば、操舵角センサ102aにより検出されるステアリングホイール3の操舵角(操作量)に基づいて操舵方向を特定し、特定される操舵方向から車両1の旋回による進行方向が車両1の左右どちらであるかを特定する。ここでは、右(右前方:図3の符号1A)が特定されたとする。
【0040】
続くS12においては、注意力回復駆動の駆動内容を決定する。本実施形態においては、通常位置にある運転席シート2を、所定角度だけ左に回転させる左回転駆動と、所定角度だけ右に回転させ右回転駆動との2種類が存在しており、S11において、車両1の進行方向変化が右(右前方)への旋回と特定されている場合には左回転駆動に決定され、車両1の進行方向変化が左(左前方)への旋回と特定されている場合には右回転駆動に決定される。ここでは、図3に示すように、運転席シート2の背もたれ部2a及び座部2bを含む全体が軸Z周りにおいて車両1の旋回方向(1A)とは逆の左方向(2P)に回転(左回転)し、これにより、当該シート2に座する運転者4も同様にして、頭部を含む体全体が左回転することになる。車両1が左前方に旋回する場合には、図3とは逆で右回転する。
【0041】
S13では、S12で決定した駆動内容の注意力回復駆動を、駆動アクチュエータ104に実行させる。これにより、少なくとも運転者4の頭部が車両1の先回方向とは逆方向に回転するので、運転者4はステアリング操作から推定される以上の、予想を上回る急旋回を体感することになり、これに起因して、車両1走行への注意力が回復する。
【0042】
図4に戻る。S3が実行されるとS4に進み、S3で実行された注意力回復駆動が完了したか否かを判定し、完了するまでS3が継続的に実行される。本実施形態においては、S3で実行される注意力回復駆動は、予め定められた駆動期間の間だけ継続して実行されるものであるから、当該駆動期間が終了したか否かを判定する。なお、この駆動期間は極短期間の瞬間的なものとされており、長くても0.5sec以下とされているから、それほど大きな駆動変化を生じるものではなく、むしろわずかな駆動変位であってもそれが瞬間的な加速変化として生じることで、運転者4は予想を上回る急旋回を体感することができる。また、駆動変位を小さく設定することで、運転者4の前方視認への影響も小さく止まるし、無駄な電力消費を抑制できる。なお、注意力回復駆動は、予め定められた駆動変位を駆動するまで継続して実行されるものとし、当該駆動変位の駆動が終了したか否かで判定してもよい。例えば、運転席シート2の駆動機構20(符号21,22等)として駆動変位の最大位置にストッパーを設けて、それ以上の駆動を規制するように構成してもよい。こうした場合も同様で、駆動変位としては角度として5°以下のわずかな量を設定し、これを瞬間的な加速変化として生じさせることで、運転者4は予想を上回る急旋回を体感する。本実施形態においては、所定の駆動期間により注意力回復駆動を判定するとともに、駆動変位の最大位置にストッパーも設けてあり、それ以上の駆動が規制される構成を有するものとする。
【0043】
S4にて、注意力回復駆動が完了したと判定された場合には、S5に進み、S3で注意力回復駆動が実行される前の通常状態に復帰するよう、駆動アクチュエータ104を駆動させる。この通常状態復帰駆動も、S3の注意力回復駆動と同様に瞬間的に生じるようにしてもよいが、それよりも長い駆動期間をかけて生じるものとしてもよい。注意力回復駆動による駆動変位がわずかなものであれば、運転者4の前方視認への影響も小さいので急いで元の通常状態に復帰させる必要は無いし、過剰の急旋回を体感させた後に更なる加速変化を体感させる必要も無い。
【0044】
S5が終了すると本処理は終了する。ただし、本処理は所定周期で繰り返し実施されるから、再び、注意力低下状態が検出された状態で上記の走行変化が特定された場合には、当該走行変化に対応する注意力回復駆動が実行される。
【0045】
なお、以下では、注意力低下状態である入眠予兆状態(非覚醒状態)の検出方法について詳説する。
【0046】
主制御部101は、各種生体センサ103a〜103dから生体信号(脳波信号、心電位信号、脈波信号、背部生体信号等)の入力を受けると、当該信号に対し周知の信号処理・波形処理を行った上で同じく周知の波形分析を行った上で、その信号と基準信号とを比較することにより、運転席シート2の運転者4の非覚醒状態判定を行う。
【0047】
例えば、脳波信号の場合は、脳波信号に含まれるα波やθ波を抽出・増幅する処理を行って、これらを反映した信号と、それらに対応する基準信号とを比較する形で非覚醒状態か否かの判定がなされる。そして、本実施形態においては、α波が消失し(α波の振幅が所定期間継続して基準レベルを下回る場合)、かつ、θ波が出現した場合(θ波の振幅が所定期間継続して基準レベルを上回る場合)を非覚醒状態として判定する。
【0048】
心電位信号の場合は、心電位信号に含まれる心拍を反映した心拍信号を抽出・増幅する処理を行って、その心拍信号に基づいて心拍数をカウントし、カウントされた心拍数(所定の基準時間(例えば1分)内でカウントされた心拍数)を基準心拍数と比較するとともに、基準心拍数を所定期間連続して下回り続けた場合を、非覚醒状態として検出する。
【0049】
脈波信号の場合は、脈波信号から脈拍をカウント可能な脈拍信号を抽出・増幅する処理を行って、その脈拍信号に基づいて脈拍数をカウントし、カウントされた脈拍数(所定の基準時間(例えば1分)内でカウントされた心拍数)を基準脈拍数と比較するとともに、基準脈拍数を所定期間連続して下回り続けた場合を、非覚醒状態として検出する。
【0050】
背部生体信号の場合は、背部生体信号から呼吸数をカウント可能な呼吸信号を抽出・増幅する処理を行って、その呼吸信号に基づいて呼吸数をカウントし、カウントされた呼吸数(所定の基準時間(例えば1分)内でカウントされた心拍数)を基準呼吸数と比較するとともに、基準呼吸数を所定期間連続して下回り続けた場合を、非覚醒状態として検出する。
【0051】
なお、本実施形態においては、非覚醒状態として、レム睡眠及びノンレム睡眠を定めるだけでなく、覚醒からノンレム睡眠に至る途中に定められる入眠予兆状態(眠気が予測される状態)も非覚醒状態として定めるものとする。このため、入眠予兆状態が非覚醒状態に含まれるよう、非覚醒状態判定に使用される各基準信号(上記基準レベル)が設定されている。
【0052】
また、圧電型フィルムセンサ103cにより検出される背部生体信号から、心拍信号や脈拍信号を抽出することもできるので、これを用いることによりセンサ数を減じてもよい。
【0053】
また、主制御部101は、上記カメラ103eの撮影画像の入力を受けると、その撮影画像に基づいて、入眠予兆状態に検出される予め定められた眼球運動の有無を判定し、当該眼球運動が検出した場合を、非覚醒状態として検出する。本実施形態においては、下記の2処理を実施する。第一は、カメラ103eにより撮影された目画像に基づいて、対応する座席に座する車両1乗員の瞳孔寸法の時間的変化を検出する処理であり、第二は、撮影された目画像に基づいて瞬きを検出する処理である。
【0054】
具体的にいえば、まずは、カメラ103eの撮像画像から眼球部の瞳孔領域を抽出する。その上で、第一の処理では、検出された瞳孔寸法が所定レベルを下回っている状態(縮瞳状態)が、所定時間以上継続した場合を、非覚醒状態として検出する。他方、第二の処理では、瞳孔が検出されない状態、即ち目を閉じた状態をカウントすることで瞬きの回数をカウントし、予め定められた所定時間内における瞬きの回数が所定回数範囲から外れた場合、あるいは目を閉じた状態が所定時間以上継続した場合を、非覚醒状態として判定する。
【0055】
なお、目画像を用いたこれら以外の方法により、非覚醒状態を検出してもよい。例えば、入眠予兆状態に検出される所定の眼球運動を検出した場合を、非覚醒状態として検出することができる。
【0056】
また、上記全ての生体情報検出部(センサ103a〜103e)を設ける必要はなく、少なくとも1以上のものがあればよい。ただし、精度よくかつ確実に非検出状態を検出するという意味では、これらセンサは複数種備えられていたほうが望ましく、複数の検出結果において、複数の非覚醒状態との判定が得られた場合を、運転者4の非覚醒状態として特定するようにするとことで、誤った非覚醒状態の判定がなされることを防ぐことができる。
【0057】
以上、本発明の第一実施形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。以下、上記実施形態とは異なる実施形態について説明する。なお、共通の構成部分いついては上記実施形態と同様の符号を付することで説明を省略する。
【0058】
図6は、本発明の第二実施形態における注意力回復駆動について説明する図である。上記第一実施形態とは異なり、図5のS12で決定される注意力回復用駆動の駆動内容が、S11にて車両1が右前方へ旋回する進行方向変化が特定されている場合に運転席シート2を左(ここでは車両左右方向における左方向)に移動する左移動と、車両1が左前方へ旋回する進行方向変化が特定されている場合には運転席シート2を右(ここでは車両左右方向における右方向)に移動する右移動とのうちのいずれかとされている。当然、運転席シート2の駆動機構20も第一実施形態とは異なっており、例えば車両1は、運転席シート2を車両左右方向にスライド移動させるために延設されたガイドレール(図示なし)を有し、駆動アクチュエータ104をなすモータの出力軸に組み付けられたギア機構(図示なし)により、所定量(ここでは左右にそれぞれ最大3.0cm:駆動時間は0.5sec)だけ運転席シート2を車両左右方向にスライド移動可能に構成することができる。この場合、車両1が右前方(1A)に旋回する場合には、図6のように運転席シート2が車両1における左方向(2Q)にスライド移動する。車両1が左前方に旋回する場合には、図6とは逆に移動する。
【0059】
図7は、本発明の第三実施形態における注意力回復駆動について説明する図である。上記第一及び第二実施形態とは異なり、図5のS12で決定される注意力回復用駆動の駆動内容が、S11にて車両1が右前方へ旋回する進行方向変化が特定されている場合に運転席シート2を所定角度だけ左傾斜(座部2bの車両右側を車両左側よりも上方とする傾斜)させる左傾斜駆動と、車両1が左前方へ旋回する進行方向変化が特定されている場合に運転席シート2を所定角度だけ右傾斜(座部2bの車両左側を車両右側よりも上方とする傾斜)させる右傾斜駆動とのうちのいずれかとされている。当然、運転席シート2の駆動機構20も第一実施形態とは異なっており、例えば車両1は、運転席シート2のうち少なくとも座部2bを車両左右のいずれかに傾斜させるために、座部2bの下面の左右に連結する形で車両床部に取り付けられる左右支持体を、駆動アクチュエータ104によりそれぞれ所定量(例えば左右傾斜角度がそれぞれ最大5cm:駆動時間は0.5sec)の高さ調整可能に構成する。なお、双方の高さ調整機構には、圧縮空気や油圧、モータ等を用いた周知の高さ調整機構を採用することができる。この場合、車両1が右前方(1A)に旋回する場合には、図7のように運転席シート2が左傾斜回転方向(2R)に傾斜駆動する。車両1が左前方に旋回する場合には、図7とは逆方向に傾斜駆動する。
【0060】
ところで、上記第一〜第三実施形態においては、図1に示すように、シート駆動ECU101に、所定の走行変化を検出するための走行情報検出部102、運転者の車両走行への注意力低下を検出するための生体情報検出部103等が直接接続されており、図4の注意力回復制御に必要な情報は、これらの検出部102,103から直接取得することが可能とされていた。本発明は、このような形に限られず、他の制御部からこれらの情報を通信取得するようにしても良い。例えば、図16に示すように構成することができる。
【0061】
図16は、本発明の第四実施形態をなす運転者注意力回復装置100’の全体構成の一例を示すブロック図である。図16の運転者注意力回復装置100’では、シート駆動ECU101に対し、ナビゲーション制御部201、操舵ECU301、エンジンECU401、ブレーキECU501、車両周辺監視ECU601、注意力低下判定ECU701、レーンキープサポートECU801が、車載LAN110を介して通信可能に接続されている。
【0062】
ナビゲーション装置200は、その制御部201と、自車両の現在位置を検出する位置検出器(車両位置検出手段)とが接続する周知の構成を有するものである。この位置検出器は、周知の地磁気センサ(図示なし),車両10の走行距離を検出する距離センサ(図示なし),および衛星からの電波に基づいて車両10の位置を検出するGPS受信機(図示なし)の他に、車両10の回転角速度を検出するジャイロスコープ202を有しており、これらにより車両10の現在位置を検出するものである。このジャイロスコープ202を、図1における走行情報検出部102として利用することができる。
【0063】
操舵ECU301は、操舵角センサ302(符号102aと同様のもの)を接続する形で構成され、CPU、ROM、RAM等を備えた周知のマイコン構成を有する。例えば、操舵角センサ302を有して構成される電動パワーステアリング装置やステアバイワイヤシステム等のステアリング装置300の制御主体である。この操舵角センサ302を、図1における走行情報検出部102として利用することができる。
【0064】
エンジンECU401は、アクセルペダル402Aになされた操作量(踏下量)を検出するアクセルペダル操作量検出部402が接続される形で構成され、CPU、ROM、RAM等を備えた周知のマイコン構成を有する。エンジンユニット400の制御主体であり、例えば、アクセルペダル操作量検出部402を有して構成されるアクセルバイワイヤシステム等において、検出されるアクセルペダル操作量に基づくスロットル開閉制御等を実行する。このアクセルペダル操作量検出部402を、図1における走行情報検出部102として利用することができる。
【0065】
ブレーキECU501は、ブレーキペダル502Aになされた操作量(踏下量)を検出するブレーキペダル操作量検出部502が接続される形で構成され、CPU、ROM、RAM等を備えた周知のマイコン構成を有する。例えば、ブレーキペダル操作量検出部502を有して構成されるブレーキバイワイヤシステム等のようなブレーキ装置500の制御主体であって、検出されるブレーキペダル操作量に基づくブレーキ制御等を実行する。このブレーキペダル操作量検出部502を、図1における走行情報検出部102として利用することができる。
【0066】
車両周辺監視ECU601は、車両1周辺の予め定められた範囲内において障害物の有無を検出する周辺障害物検出部(周辺監視手段)602が接続される形で構成され、CPU、ROM、RAM等を備えた周知のマイコン構成を有する。周辺障害物検出部602としては、レーダーやソナー、車外を撮影する監視カメラ等であり、車両周辺監視ECU601は、車両周辺を監視するそれら検出部602の検出結果に基づいて、車両1周辺を走行する車両等の障害物を特定する制御を実施するとともに、特定された障害物が車両1に対し所定以上近接する場合には、これを運転者に警告報知出力する制御を実施する。この周辺障害物検出部602を、図1における走行情報検出部102として利用することができる。
【0067】
注意力低下判定ECU701は、図1に示す第一実施形態の運転者注意力回復装置100から、生体情報検出部103と、その検出結果に基づいて運転者の非覚醒状態を判定する制御機能とを切り離し、独立させたものである。他のECUと同様、この注意力低下判定ECU701は、生体情報検出部702(符号103と同様のもの)が接続される形で構成され、CPU、ROM、RAM等を備えた周知のマイコン構成を有する。この生体情報検出部102を、図1における生体情報検出部103として利用することができる。
【0068】
シート駆動ECU101は、これらECU201〜701から、これらに接続する検出部202,702の検出結果や、その検出結果に基づく各種判定処理(運転者の注意力低下状態の判定や車両の走行変化の判定等)の結果を、車載LAN110を介して通信取得することができる。
【0069】
また、シート駆動ECU101自体も、ユーザー操作に基づいて各席シートを電動駆動可能とするパワーシートシステムの制御主体とすることができる。そのうち、運転席においてのみ、上記のような注意力回復駆動を実施するようにできる。ただし、従来のパワーシートの構成においては、シートの前後位置調整、リクライニング、ランバーサポートやヘッドレストの調整などが電動可能とされるが、上記した第一〜第四実施形態の注意力回復駆動を実施可能とするためには、これら以外に、シートの左右回転や左右傾斜、左右移動等を可能とする機構を設ける必要がある。
【0070】
ところで、上記第一〜第四実施形態のように、車両1の運転席シート2のみを駆動する注意力回復駆動により運転者4の注意力を回復させているが、本発明においては、少なくとも運転者の頭部が動かされる形での注意力回復駆動がなされればよい。従って、例えば、運転者4の頭部4aだけを所定角度だけ左右回転可能なヘッドギア5を運転席シート2等の車体側に取り付けておく。そして、このヘッドギア5を運転者4の頭部4aに装着させ、車両1が右前方(1A)に旋回する場合には、図8のようにヘッドギア5が車両1に対する左方向(5A)に回転して、運転者4の頭部4aをする。車両1が左前方に旋回する場合には、図8とは逆に移動する。なお、図8は、本実施形態(第五実施形態)における注意力回復駆動について説明する図であり、運転者4の頭部4aに、所定角度だけ回転可能なヘッドギア5が運転席シート2に取り付けられている。
【0071】
一方、本発明においては、上記第一〜第四実施形態のように、車両1の運転席シート2のみを駆動して運転者4の注意力を回復させるだけでなく、車両1全体を駆動して、運転者4の注意力を回復させることも可能である。
【0072】
ただし、車両1全体を駆動して注意力回復駆動を実施する場合には、安全上の観点から、車両1の周辺の予め定められた範囲内において他車両等の障害物が存在していない状況が前提とされている必要がある。従って、例えば、図16に示す運転者注意力回復装置100’には、車両周辺監視センサ(周辺障害物検出部)602と、その検出結果に基づいて車両周辺の予め定められた範囲内において障害物の有無を検出する車両周辺監視ECU601と、を有して構成される車両周辺監視装置(周辺監視手段)を備えているから、この運転者注意力回復装置100’の構成を利用して実現することができる。図9は、そうした注意力回復駆動の一例である。
【0073】
図9は、本発明の第六実施形態における注意力回復駆動について説明する図である。上記第一〜第三実施形態とは異なり、図5のS12で決定される注意力回復用駆動の駆動内容が、S11にて車両1が右前方へ旋回する進行方向変化が特定されている場合に車両1全体を走行レーンを規定する白線9から外にはみ出ない程度で現在よりもさらに左に寄せる左寄せ走行と、車両1が左前方へ旋回する進行方向変化が特定されている場合に車両1全体を走行レーンを規定する白線9からはみ出ない程度で現在よりもさらに右に寄せる右寄せ走行とのうちのいずれかとされている。ただし、その左右への車両1全体の移動はわずかなものであり、車体を大きく旋回させるようなものではない。車体を当然、注意力回復駆動を実行する駆動機構20も第一〜第三実施形態とは異なっており、例えば、ステアリング操作の操作量(操舵角)に基づいて操舵アシスト力を発生させるステアリングアクチュエータ(操舵駆動部)303によって、予め定められたレベルで車両1を走行レーンの左右に寄せる(走行レーンを規定する白線9に近づける)力を生じさせる形で実現できる。この場合、車両1が右前方(1B)に旋回する場合には、図9のように車両1全体が一度レーン左側に寄る。そして、図5のS5の処理により再び元のレーン内位置に戻る。図9の符号1B’は、車両1の通常の旋回軌跡であり、図9の符号1Bは、運転者の注意力低下状態が検出された時の車両1の旋回軌跡である。車両1が左前方に旋回する場合には、図9とは逆側のレーンに寄り、再び元に戻る。この構成によると、車両1の左右前方への旋回進行に対し逆方向の旋回が実施されるので、運転者2は車両1の、わずかではあるが急なふらつきを体感することになり、これに起因して、車両走行への注意力を回復できる。
【0074】
なお、上記のように車両1を走行レーンの左右(左右の白線)に寄せるような駆動を実施する本構成においては、ステアリングアクチュエータ(操舵駆動部)303が駆動減となることから、図4及び図5の処理を実行する制御主体は、シート駆動ECU101ではなく、操舵ECU301とする。操舵ECU301内の所定記憶部に記憶された注意力回復処理、注意力回復駆動処理の各プログラムを、そのCPUが実行する形で実施される。
【0075】
また、レーンキープシステム800を備える場合、レーン内走行監視部(例えば車両前方(進行方向)を撮影するカメラ:周辺障害物検出部602に車両前方を撮影するカメラがあれば、その検出結果(撮影結果)に兼用させてもよい)802による監視結果(検出結果:撮影画像)から、レーンを規定する左右位置(例えば白線9等)に対し一定以上近接したと判定された場合には、そうした駆動を制限するようにしてもよい。例えば、レーン内に収まるレベルに制限したり、実施しないようにしてもよい。
【0076】
ところで、上記上記第一〜第五実施形態においては、車両1における所定の走行変化として、所定レベルを上回る旋回による進行方向変化が検出された場合に、対応する注意力回復駆動が実施されるよう構成されているが、注意力回復駆動を実施するきっかけとなる走行変化は、上記とは異なるものを設定する、あるいは上記走行変化に加え、他の走行変化を設定することもできる。
【0077】
例えば、車両の所定レベルを上回る加速変化及び減速変化(加減速変化)を特定し、これらに基づいて、車両1の加速変化及び減速変化が実際よりも小さく生じたという体感を運転者4が覚えるよう、少なくとも当該運転者4の頭部が動かされる形で注意力回復駆動が実施されるよう構成することができる。つまり、特定された加速(減速)をキャンセルする方向に、少なくとも運転者4の頭部が移動するように構成する。
【0078】
なお、この場合の加減速変化を検出するための走行情報の検出は、アクセルペダル402Aやブレーキペダル502Bの操作量を検出するアクセルペダル操作量検出部402やブレーキペダル操作量検出部502により加減速変化を間接的に検出するようにしてもよい(図16参照)。操作量検出部402,502を利用する場合には、これらと接続するECU401,501において、操作量検出部402,502からの検出結果に基づいて、車両1の所定レベルを上回る加速変化及び減速変化(加減速変化)を特定するように構成することができる。そして、その特定結果は、注意力回復駆動を実行する駆動部の制御主体(シート駆動ECU101等)に送信されて、該駆動部にて実行されるよう該制御主体がその駆動制御を実施する。以下、そうした構成を有した実施形態について説明する。
【0079】
図10,11は、本発明の第七実施形態における注意力回復駆動について説明する図である。上記第一〜第六実施形態とは異なり、図5のS12で決定される注意力回復用駆動の駆動内容が、S11にて車両1の予め定められた正の加速度(車両前方への加速変化を正、その逆を負とする)を上回る加速変化がECU401において特定されている場合に、運転席シート2全体を前方(車両前方)に移動する前進移動と、S11にて車両1の予め定められた負の加速度を下回る減速変化がECU501において特定されている場合に、運転席シート2を後方(車両後方)に移動する後進移動とのいずれかとされている。当然、運転席シート2の駆動機構20も第一実施形態とは異なっており、例えば車両1は、運転席シート2を車両前後方向にスライド移動させるために延設されたガイドレール(図示なし)を有し、駆動アクチュエータ104をなすモータの出力軸に組み付けられたギア機構(図示なし)により、所定量だけ運転席シート2を車両前後方向に所定量(例えば前後にそれぞれ最大3.0cm:駆動時間は0.5sec)のスライド移動可能に構成することができる。この場合、車両1が所定の正の加速度を上回る加速変化(1C)を生じた場合には、図10のように運転席シート2が車両前方(2S)に向けてスライド移動する。車両1が所定の負の加速度を下回る減速変化(1D)を生じた場合には、図10とは逆で図11のように車両後方(2T)に向けて移動する。
【0080】
図12,13は、本発明の第八実施形態における注意力回復駆動について説明する図である。上記第七実施形態とは異なり、図5のS12で決定される注意力回復用駆動の駆動内容が、S11にて車両1の予め定められた正の加速度を上回る加速変化がECU401において特定されている場合に、運転席シート2を所定角度だけ前傾(座部2bの車両後ろ側を車両前側よりも上方とする傾斜)させる前傾斜駆動と、車両1の予め定められた負の加速度を下回る減速変化がECU501において特定されている場合に、運転席シート2を所定角度だけ後ろ傾斜(座部2bの車両前側を車両後ろ側よりも上方とする傾斜)させる後ろ傾斜駆動とのうちのいずれかとされている。当然、運転席シート2の駆動機構20も第一実施形態とは異なっており、例えば車両1は、運転席シート2のうち少なくとも座部2bを車両前後のいずれかに傾斜させるために、座部2bの下面の前後に連結する形で車両床部に取り付けられる前後支持体を、駆動アクチュエータ104により所定量(例えば前後傾斜角度をそれぞれ最大5°:駆動時間は0.5sec)の高さ調整可能に構成する。なお、双方の高さ調整機構には、圧縮空気や油圧、モータ等を用いた周知の高さ調整機構を採用することができる。この場合、車両1に所定レベルを越える正の加速(1C)が特定される場合には、図12のように運転席シート2を前傾斜回転方向(2U)に傾斜駆動する。他方、車両1に所定レベルを越える負の加速度(1D)が特定される場合には、図13に示すように図12とは逆方向(2V)に傾斜駆動する。
【0081】
また、本発明においては、第八及び第九実施形態のように、車両1の運転席シート2のみを駆動して運転者4の注意力を回復させるだけでなく、第六実施形態と同様、車両1全体を駆動して、運転者4の注意力を回復させることも可能である。
【0082】
ただし、車両1全体を駆動して注意力回復駆動を実施する場合には、上記した第六実施形態と同様、安全上の観点から、車両1の周辺の予め定められた範囲内において他車両等の障害物が存在していない状況が前提とされている必要がある。従って、例えば、図16に示す運転者注意力回復装置100’の構成を利用して実現する。図14,15は、そうした注意力回復駆動の一例である。
【0083】
図14,15は、本発明の第九実施形態における注意力回復駆動について説明する図である。上記第七及び第八実施形態とは異なり、図5のS12で決定される注意力回復用駆動の駆動内容が、S11にて車両1の予め定められた正の加速度を上回る加速変化(1E’)がECU401において特定されている場合に、現在の加速変化(1E’)が小さくなるよう、車両1全体の加速レベルを下げる加速レベル低下制御(1E’→1E)と、車両1の予め定められた負の加速度を下回る減速変化(1F’)がECU501において特定されている場合に、現在の減速変化(1F’)が小さくなるように、車両1全体の負の加速度を正の方向に上げる減速レベル低下制御(1F’→1F)とのうちのいずれかとされている。つまり、加速が特定された時にはその加速をキャンセルする方向に、減速が特定された時にはその減速をキャンセルする方向に、加減速レベルを変更する制御を実施する。当然、注意力回復駆動を実行する駆動機構20も第七〜第八実施形態とは異なっている。本実施形態においては、車両1の予め定められた正の加速度を上回る加速変化がエンジンECU401において特定されている場合には、当該ECU401が、アクセルペダル402Aの操作量(踏下量)に基づいて設定されるスロットルバルブの開度を、当該操作量において設定されるべき開度よりも減じて設定するように、スロットル開度駆動部403の駆動制御を実施する。他方、車両1の予め定められた負の加速度を下回る減速変化がブレーキECU501において特定されている場合には、当該ECU501が、ブレーキペダル502Bの操作量(踏下量)に基づいて設定されるブレーキレベルを、当該操作量において設定されるべきレベルよりも増じて設定するように、ブレーキ駆動部(ブレーキ圧力発生装置)503を駆動制御する。この構成によると、この構成によると、車両1の加速操作に対し運転者2は加速不十分な感じを得るし、減速操作に対しては減速不十分な感じを得ることになり、これに起因して、車両走行への注意力を回復できる。
【0084】
なお、上記構成においては、図4及び図5の処理を実行する制御主体は、シート駆動ECU101ではなく、ECU401,501であり、それぞれの所定記憶部に記憶された注意力回復処理、注意力回復駆動処理の各プログラムを、各CPUが実行する形で実施される。
【0085】
また、上記構成のように、所定の加減速変化をきっかけに注意力回復を図る構成の場合は、加即時又は減速時のいずれか一方が特定された場合にのみ、注意力回復駆動を実施するようにしてもよい。
【0086】
また、上記第一〜第九実施形態の全ての注意力回復駆動を、車両周辺に他車両等の障害物が存在していない状態を前提に実施するようにしてもよい。また、上記第一〜第九実施形態の全ての注意力回復駆動を組み合わせた実施形態としてもよい。例えば運転席シート2を回転・スライド・傾斜する注意力回復駆動を組み合わせて行う実施形態にして、注意力回復をより促すことができるようにしてもよいし、車両1の旋回による左右への進行方向変化に起因して当該進行方向変化を寄り大きく体感させる注意力回復駆動と、車両1の加減速変化に起因して当該加減速変化をキャンセルする方向に実施される注意力回復駆動とを沿うほう実施する実施形態にして、注意力回復をより促すことができるようにしてもよい。また、運転席シート2だけでなく他のシートにおいても実施されるようにしてもよい。
【0087】
また、上記第一〜第九実施形態においては、運転者2の運転操作を反映した運転操作情報(例えばステアリング操作量や、アクセルペダル・ブレーキペダルの操作量)に基づいて車両1の予め定められた走行変化を特定し、その結果に基づいて注意力回復駆動を実施しているが、車両1の走行変化を直接検出する検出部を設けて、その結果に基づいて注意力回復駆動を実施してもよい。車両1の旋回による進行方向変化を直接的に検出するセンサとしては、ジャイロセンサ・ヨーレートセンサ等のような周知のセンサがあるし、車両1の加速・減速を直接検出するセンサとしては、加速センサ等のような周知のセンサがあるから、これらが車両に搭載されていれば、これらを利用して容易に実現できる。また、これらは各種車載機器の構成に含まれていることが多いので、これらを兼用して利用するようにしてもよい。
【0088】
また、上記実施形態のうち、車両1において所定の走行変化が生じた場合に、運転者がその走行変化よりも大きな走行変化を体感するように、運転席シート2全体を駆動する注意力回復駆動を実行する構成おいては、上記のようにアクチュエータ等の駆動部により当該注意力回復駆動を実行してもよいが、車両の走行変化により生じる慣性力により駆動するようにしてもよい。例えば、運転席シート2が予め決められた駆動方向にスライドするようにガイドレール上に配置し、所定レベルを越える走行変化が特定された場合には、ストッパーで位置固定されている運転シート2の位置固定を解除して、当該走行変化に伴い生じる慣性力に従い運転席シート2をスライド移動させ、そのスライド移動を別のストッパーで所定位置までに規制するように構成することができる。特に、上記実施形態のうち、車両の旋回による進行方向変化を特定して運転席シート2全体を駆動する構成に対し適用できる。この構成によると、運転者はよりリアルな錯覚を覚えることができる。
【0089】
また、上記実施形態のうち、運転者操作をきっかけに注意回復駆動が実施される構成においては、図4の制御においてS3の注意力回復駆動が実施されるに伴い、それ以後になされる予め定められた操作量を上回った運転操作を、予め定められた期間の間だけ無効化されるように構成し、注意力回復直後の過度の運転操作を予防するようにしてもよい。
【0090】
なお、注意力回復駆動を説明する各図面はいずれも、当該駆動を過剰に表現おり、実際にはこれよりも小さな変位で駆動する。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の運転者注意力回復装置のブロック図の第一例。
【図2】生体情報検出部の配置を説明する図。
【図3】本発明の第一実施形態における注意力回復駆動を説明する図。
【図4】注意力回復制御の処理内容を示すフローチャート。
【図5】注意力回復駆動の処理内容を示すフローチャート。
【図6】本発明の第二実施形態における注意力回復駆動を説明する図。
【図7】本発明の第三実施形態における注意力回復駆動を説明する図。
【図8】本発明の第四実施形態における注意力回復駆動を説明する図。
【図9】本発明の第五実施形態における注意力回復駆動を説明する図。
【図10】本発明の第六実施形態における注意力回復駆動を説明する第一図。
【図11】本発明の第六実施形態における注意力回復駆動を説明する第二図。
【図12】本発明の第七実施形態における注意力回復駆動を説明する第一図。
【図13】本発明の第七実施形態における注意力回復駆動を説明する第二図。
【図14】本発明の第八実施形態における注意力回復駆動を説明する第一図。
【図15】本発明の第八実施形態における注意力回復駆動を説明する第二図。
【図16】本発明の運転者注意力回復装置のブロック図の第二例。
【符号の説明】
【0092】
100 運転者注意力回復装置
101 シート駆動ECU(走行変化特定手段、注意力回復用制御手段)
102 走行情報検出部(走行情報検出手段)
103 生体情報検出部(生体情報検出手段、注意力低下状態検出手段)
104 駆動アクチュエータ(注意力回復用駆動手段)
1 車両
2 運転席シート
3 ステアリングホイール
4 運転者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭乗した運転者の車両走行への注意力が低下した注意力低下状態を検出する注意力低下状態検出手段と、
前記車両の予め定められた走行変化を特定可能な走行情報を検出する走行情報検出手段と、
検出された前記走行情報に基づいて前記走行変化を特定する走行変化特定手段と、
前記運転者の車両走行への注意力を回復させるために、特定された前記車両の前記走行変化が実際よりも大きく又は小さく前記運転者が体感するよう、少なくとも前記運転者の頭部が動かされる形での注意力回復駆動を実行可能とする注意力回復用駆動手段と、
前記注意力低下状態が検出された状態で前記走行変化が特定された場合に、当該走行変化に基づいて、当該走行変化に対応する前記注意力回復駆動を前記注意力回復用駆動手段に実行させる注意力回復用制御手段と、
を備えることを特徴とする運転者注意力回復装置。
【請求項2】
前記走行情報検出手段は、運転操作に関する予め定められた運転操作情報を検出するものであり、前記走行変化特定手段は、検出された前記運転操作情報に基づいて、前記走行変化を特定するものである請求項1記載の運転者注意力回復装置。
【請求項3】
前記走行変化特定手段は、前記車両の旋回による進行方向変化を特定するものである請求項1又は請求項2記載の運転者注意力回復装置。
【請求項4】
請求項2記載の要件を備え、
前記走行情報検出手段は、前記運転操作情報としてステアリングホイールの操舵角を検出するものであり、前記走行変化特定手段は、検出された操舵角に基づいて、前記車両の前記進行方向変化を推定するものである請求項3記載の運転者注意力回復装置。
【請求項5】
前記注意力回復用駆動手段は、特定された前記車両の旋回による進行方向変化が実際よりも大きく生じたという体感を前記運転者が覚えるよう、少なくとも前記運転者の頭部が動かされる形での注意力回復駆動を実行可能とするものであり、
前記注意力回復用制御手段は、前記注意力低下状態が検出された状態で前記車両の旋回による進行方向変化が特定された場合に、当該進行方向変化に基づいて、当該進行方向変化に対応する前記注意力回復駆動を前記注意力回復用駆動手段に実行させるものである請求項3又は請求項4に記載の運転者注意力回復装置。
【請求項6】
前記注意力回復用駆動手段は、車室内において前記運転席を車両左右方向に移動するものであり、
前記注意力回復用制御手段は、前記注意力低下状態が検出された状態において、前記車両が右前方へ旋回する進行方向変化が特定された場合は前記運転席を左に、前記車両が左前方へ旋回する進行方向変化が特定された場合は前記運転席を右に移動する前記注意力回復駆動を、前記注意力回復用駆動手段に実行させるものである請求項5記載の運転者注意力回復装置。
【請求項7】
前記注意力回復用駆動手段は、車室内において前記運転席を左右双方向に所定角度だけ回転可能とするものであり、
前記注意力回復用制御手段は、前記注意力低下状態が検出された状態において、前記車両が右前方へ旋回する進行方向変化が特定された場合は、前記運転席を所定角度だけ左回転し、前記車両が左前方へ旋回する進行方向変化が特定された場合は前記運転席を所定角度だけ右回転する前記注意力回復駆動を、前記注意力回復用駆動手段に実行させるものである請求項5記載の運転者注意力回復装置。
【請求項8】
前記注意力回復用駆動手段は、車室内において前記運転者の頭部に装着され、当該頭部を左右双方向に所定角度だけ回転可能とするものであり、
前記注意力回復用制御手段は、前記注意力低下状態が検出された状態において、前記車両が右前方へ旋回する進行方向変化が特定された場合は前記運転者の頭部を所定角度だけ左に回転させ、前記車両が左前方へ旋回する進行方向変化が特定された場合は前記運転者の頭部を所定角度だけ右に回転させる前記注意力回復駆動を、前記注意力回復用駆動手段に実行させるものである請求項5記載の運転者注意力回復装置。
【請求項9】
前記注意力回復用駆動手段は、車室内において前記運転席を左右双方向に所定角度だけ傾斜可能とするものであり、
前記注意力回復用制御手段は、前記注意力低下状態が検出された状態において、前記車両が右前方へ旋回する進行方向変化が特定された場合は前記運転席を前記所定角度だけ左傾斜させ、前記車両が左前方へ旋回する進行方向変化が特定された場合は前記運転席を前記所定角度だけ右傾斜させる前記注意力回復駆動を、前記注意力回復用駆動手段に実行させるものである請求項5記載の運転者注意力回復装置。
【請求項10】
前記車両周辺の予め定められた範囲内において障害物の有無を検出する周辺監視手段を備え、
前記注意力回復用駆動手段は、前記車両全体を、走行レーンから出ない程度に左又は右に寄せた後、元の走行位置に復帰させる蛇行を可能とするものであり、
前記注意力回復用制御手段は、前記注意力低下状態が検出された状態で、なおかつ前記障害物が検出されていない状態において、前記車両が右前方へ旋回する進行方向変化が特定された場合は前記車両全体を現在よりもさらに左に寄せる左寄せ走行を実行し、前記車両が左前方へ旋回する進行方向変化が特定された場合は前記車両全体を現在よりもさらに右に寄せる右寄せ走行を実行させる前記注意力回復駆動を、前記注意力回復用駆動手段に実行させるものである請求項5記載の運転者注意力回復装置。
【請求項11】
前記走行変化特定手段は、前記車両の加速変化及び減速変化を特定するものである請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の運転者注意力回復装置。
【請求項12】
請求項2記載の要件を備え、
前記走行情報検出手段は、前記運転操作情報として前記アクセルペダルの操作量を検出するものを含み、前記走行変化特定手段は、検出されたアクセルペダルの操作量に基づいて、前記車両の加速変化を特定するものである請求項11記載の運転者注意力回復装置。
【請求項13】
前記走行情報検出手段は、前記運転操作情報として前記ブレーキペダルの操作量を検出するものを含み、前記走行変化特定手段は、検出されたブレーキペダルの操作量に基づいて、前記車両の減速変化を特定するものである請求項11又は請求項12に記載の運転者注意力回復装置。
【請求項14】
前記注意力回復用駆動手段は、特定された前記車両の加速変化及び減速変化が実際よりも小さく生じたという体感を前記運転者が覚えるよう、少なくとも前記運転者の頭部が動かされる形での注意力回復駆動を実行可能とするものであり、
前記注意力回復用制御手段は、前記注意力低下状態が検出された状態で前記車両の前記加速変化及び減速変化のいずれか一方が特定された場合に、当該加減速変化に基づいて、当該加減速変化に対応する前記注意力回復駆動を前記注意力回復用駆動手段に実行させるものである請求項11ないし請求項13のいずれか1項に記載の運転者注意力回復装置。
【請求項15】
前記注意力回復用駆動手段は、車室内において前記運転席を車両前後方向に移動するものであり、
前記注意力回復用制御手段は、前記注意力低下状態が検出された状態において、前記車両の加速変化が特定された場合は前記運転席を前方に移動し、前記車両の減速変化が特定された場合は前記運転席を後方に移動する前記注意力回復駆動を前記注意力回復用駆動手段に実行させるものである請求項14記載の運転者注意力回復装置。
【請求項16】
前記注意力回復用駆動手段は、車室内において前記運転席を車両前後方向に所定角度だけ傾斜可能とするものであり、
前記注意力回復用制御手段は、前記注意力低下状態が検出された状態において、前記車両の加速変化が特定された場合は前記運転席を前記所定角度だけ前傾傾斜させ、前記車両の減速変化が特定された場合は前記運転席を前記所定角度だけ後ろに傾斜させる前記注意力回復駆動を実行させるものである請求項14記載の運転者注意力回復装置。
【請求項17】
前記車両周辺の予め定められた範囲内において障害物の有無を検出する周辺監視手段を備え、
前記注意力回復用駆動手段は、前記車両全体の加速ないし減速を可能とするものであり、
前記注意力回復用制御手段は、前記注意力低下状態が検出された状態で、なおかつ前記障害物が検出されていない状態において、前記車両の加速変化が特定された場合は前記車両全体の加速レベルを実際よりも小さくし、前記車両の減速変化が特定された場合は前記車両全体の減速レベルを実際よりも小さく減速させる前記注意力回復駆動を、前記注意力回復用駆動手段に実行させるものである請求項14記載の運転者注意力回復装置。
【請求項18】
前記注意力回復用制御手段は、前記注意力回復駆動を予め定められた駆動期間の間継続して実行し、当該駆動期間の終了に伴い、当該注意力回復駆動を実行する以前の状態に復帰させるものである請求項1ないし請求項17のいずれか1項に記載の運転者注意力回復装置。
【請求項19】
前記注意力回復用制御手段は、前記注意力回復駆動を予め定められた駆動変位を駆動するまで継続して駆動し、当該駆動変位の駆動が完了するに伴い、当該注意力回復駆動を実行する以前の状態に復帰させるものである請求項1ないし請求項18のいずれか1項に記載の運転者注意力回復装置。
【請求項20】
前記注意力低下状態検出手段は、前記運転者の予め定められた生体情報を検出する生体情報検出手段と、検出された生体情報に基づいて前記運転者の予め定められた非覚醒状態を検出する非覚醒状態検出手段と、を備えて構成されている請求項1ないし請求項19のいずれか1項に記載の運転者注意力回復装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−29459(P2010−29459A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195037(P2008−195037)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】