説明

過充電防止回路及び半導体装置

【課題】過充電状態における発電手段の電圧値を一定にクランプする過充電防止回路において、素子数の少なく、かつ余分に電力を消費することの無い過充電防止回路を提供する。
【解決手段】逆流防止ダイオードのカソードにゲートを接続され、アノードにソースを接続され、過充電防止スイッチにドレインを接続されたクランプトランジスタを設け、過充電検出時にクランプトランジスタと過充電防止スイッチを介して電流を放電させることにより、発電手段の電位を略蓄電手段の電圧にクランプする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電手段の発電電力を蓄電手段へ充電し、また発電電力ないし蓄電電力で駆動回路を駆動する半導体装置に関し、より詳しくは、蓄電手段への過充電を防止する過充電防止回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来の過充電防止回路を備えた半導体装置を示した回路図である。発電手段として太陽電池31と、蓄電手段として二次電池32と、逆流防止回路としてダイオード33と、過充電検出回路34と、過充電防止スイッチとしてNMOSトランジスタ35を備えている。
【0003】
太陽電池31の負極端子は低電位側電源VSS、太陽電池31の正極端子は発電電源VSOLに接続される。二次電池32の負極端子は低電位側電源VSS、二次電池32の正極端子は蓄電電源VBATに接続される。ダイオード33のアノード端子は発電電源VSOL、カソード端子は蓄電電源VBATに接続される。過充電検出回路34は蓄電電源VBATと低電位側電源VSSの間で駆動され、出力ノードVDETはVBATが所定電圧VLIM以上であればHigh(VBAT)、所定電圧VLIM未満であればLow(VSS)レベルを出力する。NMOSトランジスタ35のドレイン端子は発電電源VSOL、ソース端子及びバックゲート端子は低電位側電源VSS、ゲート端子は過充電検出回路34の出力端子に接続される。
【0004】
次に、従来の過充電防止回路を備えた半導体装置の動作を説明する。図4は、従来の過充電防止回路を備えた半導体装置の動作説明図である。ダイオード33の順方向電圧をVFとする。
【0005】
t0〜t1の期間は、太陽電池31の発電が無い、或いは太陽電池31の発電量が少ない時を示し、VSOL<VBAT+VFの関係が成り立つ。このとき、ダイオード33が逆方向にバイアスされ、VBATからVSOLへの逆流電流は流れない(非充電状態)。
【0006】
t1〜t2の期間は、太陽電池31の発電量が多く、VSOL電位が十分に上昇する時を示し、VSOL>VBAT+VFの関係が成り立つ。このとき、ダイオード33が順方向にバイアスされ、VSOLからVBATへの充電が行なわれる(充電状態)。
【0007】
t2以降の期間は、VBATが所定電圧VLIMを超えた時を示し、過充電検出回路34の出力VDETがHighレベル(VBAT)となり、NMOSトランジスタ35がオンする(過充電状態)。このとき、太陽電池31の発電電流はNMOSトランジスタ35を介してVSSへ放電され、VBAT電位はほぼVSSに等しくなる。
【0008】
この状態では、太陽電池31が発電の有無に関わらず、VBAT≒VSSのため、太陽電池の発電を検出することができず、明暗判定を行なうことができないという問題があった。
この問題点に鑑みてなされた発明として特開2002−10518が知られており、図5に概略図を示す。
【0009】
図5に示す従来の過充電防止回路を備えた半導体装置は、発電手段として太陽電池51と、蓄電手段として二次電池52と、逆流防止回路としてダイオード53と、過充電検出回路54と、過充電防止スイッチとしてNMOSトランジスタ55と、基準電圧発生回路56と、コンパレータ回路57を備えている。太陽電池51の負極端子は低電位側電源VSS、太陽電池51の正極端子は発電電源VSOLに接続される。二次電池52の負極端子は低電位側電源VSS、二次電池52の正極端子は蓄電電源VBATに接続される。
【0010】
ダイオード53のアノード端子は発電電源VSOL、カソード端子は蓄電電源VBATに接続される。過充電検出回路54は蓄電電源VBATと低電位側電源VSSの間で駆動され、出力ノードVDETはVBATが所定電圧VLIM以上であればHigh(VBAT)、所定電圧VLIM未満であればLow(VSS)レベルを出力する。NMOSトランジスタ55のドレイン端子は発電電源VSOL、ソース端子及びバックゲート端子は低電位側電源VSS、ゲート端子はコンパレータ回路の出力ノードVGNに接続される。基準電圧発生回路56は蓄電電源VBATと低電位側電源VSSの間で駆動され、一定電圧VREFを出力する。コンパレータ回路57は蓄電電源VBATと低電位側電源VSSの間で駆動される。コンパレータ回路57のプラス側入力端子には発電電源VSOL、マイナス側入力端子には基準電圧発生回路56の出力ノードVREFが接続され、コンパレータ回路57の出力ノードVGNは、VSOL>VREFの時、High(VBAT)、VSOL<VREFの時、Low(VSS)レベルを出力する。コンパレータ回路57のイネーブル端子には過充電検出回路54の出力VDETが接続され、コンパレータ回路57はVDETがHighの時、動作状態にあり、VDETがLowの時、非動作状態にある。
【0011】
次に、図5に示す従来の過充電防止回路を備えた半導体装置の動作について説明する。 図6は、従来の過充電防止回路を備えた半導体装置の動作説明図である。ダイオード53の順方向電圧をVFとする。
t0〜t1の期間である非充電状態と、t1〜t2の期間である充電状態における動作は図4と同じである。
【0012】
t2以降の期間は、VBATが所定電圧VLIMを超えた時を示し、過充電検出回路54の出力VDETがHighレベル(VBAT)となり、コンパレータ回路57が動作状態になる(過充電状態)。コンパレータ回路57とNMOSトランジスタ55の負帰還動作により、VSOLはVREF電位と等しくなる。
このとき、太陽電池51は発電量に応じて、VSS電位からVREF電位までを出力することができ、明暗判定も容易に行なうことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−10518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、図5に示す過充電防止回路を備えた半導体装置では、図3に示す過充電防止回路を備えた半導体装置に対して、クランプ機能を追加するために基準電圧回路56と、コンパレータ回路57が別途必要となるため、回路を構成する素子数が多くなり、チップ面積が大きくなるという問題がある。
【0015】
さらに、基準電圧回路56と、コンパレータ回路57は蓄電電源VBATと低電位側電源VSSの間で駆動されており、せっかく充電した蓄電電源VBATの電力を、基準電圧回路56と、コンパレータ回路57で消費してしまうという問題がある。
【0016】
本発明は、これらの問題点に鑑みてなされたものであり、過充電状態における発電手段の電圧値を一定にクランプする過充電防止回路において素子数の少ない、かつ余分に電力を消費することの無い過充電防止回路を備えた半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
従来の課題を解決するために、本発明の過充電防止回路を備えた半導体装置は以下のような構成とした。
【0018】
蓄電手段の正極端子と負極端子に接続され、蓄電手段の電圧を検出する過充電検出回路と、ゲート端子が過充電検出回路の出力端子に接続され、ソース端子とバックゲート端子が接地端子に接続された過充電防止トランジスタと、ゲート端子が蓄電手段の正極端子に接続され、ドレイン端子が過充電防止トランジスタのドレイン端子に接続され、ソース端子とバックゲート端子が発電手段の正極端子が接続されたクランプトランジスタと、を備えたことを特徴とする過充電防止回路、及び該過充電防止回路を備えた半導体装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明の過充電防止回路によれば、少ない素子数で、余分な電力を消費することの無いクランプ機能を有する過充電防止回路、及びそれを備えた半導体装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態の過充電防止回路を備えた半導体装置を示す図である。
【図2】本実施形態の過充電防止回路を備えた半導体装置の動作を示す図である。
【図3】従来の過充電防止回路を備えた半導体装置を示す図である。
【図4】従来の過充電防止回路を備えた半導体装置の動作を示す図である。
【図5】従来の過充電防止回路を備えた半導体装置の他の例を示す図である。
【図6】従来の他の例の過充電防止回路を備えた半導体装置の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本実施形態の過充電防止回路を備えた半導体装置を示した回路図である。
本実施形態の過充電防止回路を備えた半導体装置は、発電手段として太陽電池11と、蓄電手段として二次電池12と、逆流防止回路としてダイオード13と、過充電検出回路14と、過充電防止スイッチとしてNMOSトランジスタ15と、クランプトランジスタとしてPMOSトランジスタ16を備えている。
【0022】
太陽電池11の負極端子は低電位側電源VSSに接続され、正極端子は発電電源VSOLに接続される。二次電池12の負極端子は低電位側電源VSSに接続され、正極端子は蓄電電源VBATに接続される。ダイオード13のアノード端子は発電電源VSOLに接続され、カソード端子は蓄電電源VBATに接続される。過充電検出回路14の入力端子は蓄電電源VBATと低電位側電源VSSに接続され、出力端子はNMOSトランジスタ15のゲート端子に接続される。NMOSトランジスタ15のソース端子及びバックゲート端子は低電位側電源VSSに接続され、ゲート端子は過充電検出回路14の出力端子に接続される。PMOSトランジスタ16のゲート端子は蓄電電源VBATとダイオード13のカソード端子に接続され、ソース端子及びバックゲート端子は発電電源VSOLとダイオード13のアノード端子に接続され、ドレイン端子はNMOSトランジスタ15のドレイン端子に接続される。
【0023】
過充電検出回路14は、蓄電電源VBATと低電位側電源VSSの間で駆動され、出力ノードVDETはVBATが所定電圧VLIM以上であればHigh(VBAT)、所定電圧VLIM未満であればLow(VSS)レベルを出力する。
【0024】
次に、本実施形態の過充電防止回路を備えた半導体装置の動作について説明する。図2は、本実施形態の過充電防止回路を備えた半導体装置の動作説明図である。ダイオード13の順方向電圧をVFとする。
【0025】
t0〜t1の期間は、太陽電池11の発電が無い、或いは太陽電池11の発電量が少ない時を示し、VSOL<VBAT+VFの関係が成り立つ。このとき、ダイオード13が逆方向にバイアスされ、VBATからVSOLへの逆流電流は流れない(非充電状態)。
【0026】
t1〜t2の期間は、太陽電池11の発電量が多く、VSOL電位が十分に上昇する時を示し、VSOL>VBAT+VFの関係が成り立つ。このとき、ダイオード13が順方向にバイアスされ、VSOLからVBATへの充電が行なわれる(充電状態)。
【0027】
t2以降の期間は、VBATが所定電圧VLIMを超えた時を示し、過充電検出回路14の出力VDETがHighレベル(VBAT)となり、NMOSトランジスタ15がオンする(過充電状態)。このとき、太陽電池11の発電電流はPMOSトランジスタ16とNMOSトランジスタ15を介してVSSへ放電される。
【0028】
しかし、PMOSトランジスタ16のゲート端子はVBATが印加されているため、PMOSトランジスタ16のソース端子であるVSOLの電位は、PMOSトランジスタ16のゲートとソース間の電位差をVGSPとすると、VCLA=VBAT+VGSPで表される電圧にクランプされる。
【0029】
このとき、太陽電池11は発電量に応じて、VSS電位からVCLA電位までを出力することができ、明暗判定も容易に行なうことができる。ここで、VGSPはVGSP<VFの関係を満たすように設定する必要がある。
【0030】
以上のように、本実施形態の過充電防止回路によれば、クランプトランジスタを1つ追加するのみであるため、チップ面積の増大も最小限に抑えることができ、さらに余分な消費電流が増えることのない、過充電状態における発電電圧のクランプを実現することができる。
【0031】
なお、本実施形態の過充電防止回路において、クランプトランジスタであるPMOSトランジスタ16の閾値電圧を通常のトランジスタより低くすることにより、過充電状態にてVGSP<VFの関係をより確実に満たすことができる。従って、より安全な過充電防止回路を備えた半導体装置を提供することができる。
【0032】
また、本実施形態の過充電防止回路を備えた半導体装置では、発電手段として太陽電池を、蓄電手段として二次電池を、逆流防止回路としてダイオードを、用いて説明を行なったが、それに限定されるものではない。
【0033】
また、接地電圧を最も低い電圧VSSとして説明を行なったが、接地電圧を最も高い電圧(例えばVDDとする)とし、発電電圧VSOLと蓄電電圧VBATが負電圧を出力する場合も、本発明の範囲である。
【符号の説明】
【0034】
11、31、51 太陽電池
12、32、52 二次電池
13、33、53 ダイオード
14、34、54 過充電検出回路
15、35、55 NMOSトランジスタ
16 PMOSトランジスタ
56 基準電圧発生回路
57 コンパレータ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電手段により充電される蓄電手段を電源とする半導体装置の、前記蓄電手段の過充電を防止する過充電防止回路であって、
前記蓄電手段の正極端子と負極端子に接続され、前記蓄電手段の電圧を検出する過充電検出回路と、
ゲート端子が前記過充電検出回路の出力端子に接続され、ソース端子とバックゲート端子が接地端子に接続された過充電防止トランジスタと、
ゲート端子が前記蓄電手段の正極端子に接続され、ドレイン端子が前記過充電防止トランジスタのドレイン端子に接続され、ソース端子とバックゲート端子が前記発電手段の正極端子が接続されたクランプトランジスタと、
を備えたことを特徴とする過充電防止回路。
【請求項2】
発電手段と、
蓄電手段と、
前記蓄電手段から前記発電手段への逆流を防止する逆流防止回路と、
請求項1記載の過充電防止回路と、
を備えた半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−74749(P2013−74749A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213020(P2011−213020)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】