説明

過冷却促進剤

【課題】優れた過冷却活性を有し且つ天然物等からの抽出によらず、量産が容易な新たな過冷却促進剤を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物、N−長鎖アシル酸性アミノ酸もしくはその塩より選ばれる一種以上を含むことを特徴とする、過冷却促進剤。
【化1】


(上記一般式(1)において、Rは炭素数1〜23の炭化水素基を示し、Rは水素又は炭素数1〜3の炭化水素基を示し、Yはカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基又はそれらの塩を示し、Zは−NR’−(R’は水素又は炭素数1〜10の炭化水素基)、−O−、又は−S−を示し、j、kは0、1、2のいずれかであり、かつj、kは同時に0ではなく、nは2〜20の整数を示す。Xは分子量100万以下の炭化水素鎖を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は過冷却促進剤に関する。さらに詳しくは、極めて低濃度で氷核の形成を阻害して水を過冷却させる活性を有する物質からなる過冷却促進剤、前記物質を含有する不凍性液体、及びガラス化液に関する。
【背景技術】
【0002】
水を氷点下で長期間に渡り安定的に凍らせない物質(過冷却促進剤)があれば様々な産業分野への応用が期待される。特許文献1には、タンニンからなる過冷却促進剤が、優れた過冷却活性を有することが示されている。しかしながら、タンニンは、木部組織等の天然物から抽出するのが一般的であり、量産が困難であるという問題があった。過冷却活性を様々な用途に応用するために、量産可能な過冷却促進剤の創出が強く望まれていた。
【0003】
一方、特許文献2には、洗浄剤や化粧品等の分野に利用でき、且つ生分解性に優れる界面活性剤として、アシルアミノ酸系の組成物が開示されている。しかしながら、当該文献は、界面活性能の他、刺激緩和、保湿性、使用感といった化粧品用途等における機能向上を目的としたものであり、過冷却活性に関する記述はもちろん、当該効果を示唆する記述も認められない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2011/108635号公報
【特許文献2】特許第4070768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、極めて低濃度で優れた過冷却活性を発現することに加え、天然物等からの抽出によらず量産が容易であり、且つ生分解性にも優れる過冷却促進剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の構造を有する界面活性剤に過冷却活性があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕
下記一般式(1)で表される化合物、N−長鎖アシル酸性アミノ酸もしくはその塩より選ばれる一種以上を含む、過冷却促進剤。
【化1】

(上記一般式(1)において、Rは炭素数1〜23の炭化水素基を示し、Rは水素又は炭素数1〜3の炭化水素基を示し、Yはカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基又はそれらの塩を示し、Zは−NR’−(R’は水素又は炭素数1〜10の炭化水素基)、−O−、又は−S−を示し、j、kは0、1、2のいずれかであり、かつj、kは同時に0ではなく、nは2〜20の整数を示す。Xは分子量100万以下の炭化水素鎖を示す。)
〔2〕
前記一般式(1)で表される化合物を含む、前項〔1〕に記載の過冷却促進剤。
〔3〕
前記一般式(1)が下記一般式(2)で示される化合物である、前項〔2〕に記載の過冷却促進剤。
【化2】

(上記一般式(2)において、Rは炭素数1〜23の炭化水素基を示し、Rは水素又は炭素数1〜3の炭化水素基を示し、Yはカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基又はそれらの塩を示し、Zは−NR’−(R’は水素または炭素数1〜10の炭化水素基)、−O−、又は−S−を示し、X’は、カルボキシル基又はその塩、−NHR’基(R’は、水素、または炭素数1〜10の炭化水素基)、−OH基、−SH基のうち少なくともいずれか一つを有する炭素数が1〜20の炭化水素鎖を示し、j、kは0、1、2のいずれかであり、かつj、kは同時に0ではない。)
【発明の効果】
【0008】
本発明により、優れた過冷却促進効果を有し且つ天然物等からの抽出によらず、量産が容易な新たな過冷却促進剤を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0010】
〔一般式(1)で示される化合物〕
本発明の過冷却促進剤は、下記一般式(1)で示される化合物、N−長鎖アシル酸性アミノ酸又はその塩より選ばれる一種以上を含むことを特徴とする。
【化3】

【0011】
一般式(1)において、Rは炭素数1〜23の炭化水素基である。好ましくは、炭素数が7から17の炭化水素基である。直鎖、分岐鎖、環状鎖、芳香族炭化水素鎖のいずれでもよく、置換基を有していてもよい。
【0012】
一般式(1)において、Rは水素、または炭素数1〜3の炭化水素基である。カルボキシル基かスルホン酸基を有してもよい。炭素数1〜3の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシ(イソ)プロピル基、ジヒドロキシ(イソ)プロピル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基及びスルホエチル基等を挙げることができる。好ましくは、水素である。一般式(1)において、Yはカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基またはそれらの塩である。好ましくは、カルボキシル基又はその塩である。
【0013】
Yは、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基又はそれらの塩である。Yは、種々の塩基性物質との間に塩を形成し得る。塩を形成しうる金属の具体例を以下で挙げる。
【0014】
アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム及びリチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、カルシウム及びマグネシウム等が挙げられる。上記した以外の金属としては、アルミニウム、亜鉛、鉄、コバルト、チタン及びジルコニウム、銀等の塩が挙げられる。また、上記した金属を含む塩基性物質としては、特に限定されないが、以下のものが挙げられる。有機アミン塩としては、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びトリイソプロパノールアミン等の塩が挙げられる。塩基性アミノ酸塩としては、アルギニン及びリジンの塩が挙げられる。その他にも、アンモニウム塩や多価金属塩等が挙げられる。また、一般式(1)において、Yは上記した塩から任意に選ばれる1種又は2種以上の塩を含んでいてもよい。
【0015】
一般式(1)において、Zは、−NR’−(R’は水素または炭素数1〜10の炭化水素基)、−O−、又は−S−である。
【0016】
一般式(1)において、Xは、分子量100万以下の炭化水素鎖である。Xは、直鎖でも分枝鎖でも環状鎖でも芳香族炭化水素鎖でもよい。また、Xは、置換基を有していてもよく、特にカルボキシル基を有していることが好ましい。Xの炭素数は、好ましくは1〜40であり、分子量は28〜2000が好ましい。
【0017】
また、Xがカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基及びリン酸エステル基等を含む場合は、種々の塩基性物質との間に塩を形成してもよい。塩を形成しうる金属及びその金属を含む塩基性物質としては、上記の塩が挙げられる。
【0018】
一般式(1)中の括弧内の部分はn個あり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。nは2〜20の整数である。好ましくは、nは2である。また、j、kは0、1、2のいずれかであり、かつj、kは同時に0ではない。
【0019】
下記一般式(2)で示される化合物は、一般式(1)で示される化合物における、n=2の場合の一例である。当該化合物はより更に優れた過冷却活性が得られる。
【化4】

【0020】
上記一般式(2)において、X’は、カルボキシル基またはその塩、−NHR’基(R’は、水素、または炭素数1〜10の炭化水素基)、−OH基、−SH基のうち少なくともいずれか一つを有する炭素数が1〜20の炭化水素鎖を示す。R、R、Y、Z、j、kは一般式(1)と同様である。
【0021】
一般式(2)において、X’は、カルボキシル基またはその塩を有することが好ましく、Rは水素であることが好ましく、Yは、カルボキシル基であることが好ましく、Zは、−NH−であることが好ましい。
【0022】
一般式(1)で示される化合物の製造方法としては、下記一般式(3)で示されるN−アシル酸性アミノ酸無水物と、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基から選ばれる官能基をm個(mはn以上)有する分子量100万以下の化合物(以下、m価の化合物とする)とを、反応させることにより得ることができる。
【化5】

【0023】
一般式(3)で示されるN−アシル酸性アミノ酸無水物とは、酸性アミノ酸がN−アシル化された無水物である。N−アシル酸性アミノ酸無水物は、光学異性体であるD−体、L−体、ラセミ体のいずれであってもよい。特に、L−体であるL−酸性アミノ酸が、生分解性に優れることから好ましい。
【0024】
酸性アミノ酸は、分子中に存在するカルボキシル基の数がアミノ基より多いものである。例えば、カルボキシル基とアミノ基の数がそれぞれ2個と1個であるモノアミノジカルボン酸などが挙げられる。アミノ基の水素は、炭素数1〜3の炭化水素基で置換されていてもよい。酸性アミノ酸の具体例としては、グルタミン酸、アスパラギン酸が挙げられる。
【0025】
m価の化合物は、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基から選ばれる官能基をm個(m≧n、かつ、2〜20の整数)有する分子量100万以下の化合物である。ここで、m価の化合物は、m個の官能基に由来する結合を作り得る。つまり、ヒドロキシル基は、エステル結合を作り、アミノ基は酸アミド結合を作り、チオール基はチオエステル結合を作ることができる。また、この化合物は上記した官能基以外の置換基を有していてもよい。
【0026】
このようなm価の化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。分子内にヒドロキシル基を2個以上有する化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0027】
2価のヒドロキシル化合物としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ジメチロールシクロヘキサン、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、イソプレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ソルバイト、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ダイマージオール、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、酒石酸、ジヒドロキシ酒石酸、メバロン酸、3,4−ジヒドロキシケイ皮酸、3,4−ジヒドロキシヒドロケイ皮酸、ジヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシステアリン酸、ジヒドロキシフェニルアラニン、ジエタノールアミン等が挙げられる。
【0028】
3価のヒドロキシル化合物としては、グリセリン、トリオキシイソブタン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、2−メチル−2,3,4−ブタントリオール、2−エチル−1,2,3−ブタントリオール、2,3,4−ペンタントリオール、2,3,4−ヘキサントリオール、4−プロピル−3,4,5−ヘプタントリオール、2,4−ジメチル−2,3,4−ペンタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン及びトリヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
【0029】
4価のヒドロキシル化合物としては、ペンタエリスリトール、エリスリトール、1,2,3,4−ペンタンテトロール、2,3,4,5−ヘキサンテトロール、1,2,4,5−ペンタンテトロール、1,3,4,5−ヘキサンテトロール、ジグリセリン及びソルビタン等が挙げられる。
【0030】
5価のヒドロキシル化合物としては、アドニトール、アラビトール、タロース、アロース、キシリトール及びトリグリセリン等が挙げられる。
【0031】
6価のヒドロキシル化合物としては、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、イノシトール及びダルシトール等が挙げられる。
【0032】
または、上記した2〜6価のヒドロキシル化合物の脱水縮合物やポリグリセリン等が挙げられる。
【0033】
また、m価のポリヒドロキシル化合物として、糖類も挙げられる。以下でその具体例を挙げる。
【0034】
テトロースとしては、エリスロース、スレオース及びエリスルロース等が挙げられる。ペントースとしては、リボース、アラビノース、キシロース、リクソース、キシルロース及びリブロース等が挙げられる。単糖類としては、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、ギューロース、イドース、ガラクトース、タロース、フラクトース、ソルボース、プシコース及びタガトース等のヘキソース等が挙げられる。
【0035】
オリゴ糖類としては、マルトース、イソマルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、メリビオース、ラクトース、ツラノース、トレハロース、サッカロース、マンニトリオース、セロトリオース、ゲンチアノース、ラフィノース、メレチトース、セロテトロース及びスタキオース等が挙げられる。
【0036】
その他の糖類としては、ヘプトース、デオキシ糖、アミノ糖、チオ糖、セレノ糖、アルドン糖、ウロン酸、糖酸、ケトアルドン酸、アンヒドロ糖、不飽和糖、糖エステル、糖エーテル及びグリコシド等の残基でもよく、デンプン、グリコーゲン、セルロース、キチン及びキトサン等の多糖類又は上記した糖類を加水分解したものでもよい。
【0037】
分子内にアミノ基を2個以上有する化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。
脂肪族ジアミン類としては、N,N’−ジメチルヒドラジン、エチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、ジアミノヘプタン、ジアミノオクタン、ジアミノノナン、ジアミノデカン、ジアミノドデカン、ジアミノアジピン酸、ジアミノプロパン酸、ジアミノブタン酸等が挙げられる。
【0038】
脂肪族トリアミン類としては、ジエチレントリアミン、トリアミノヘキサン、トリアミノドデカン、1,8−ジアミノ−4−アミノメチル−オクタン、2,6−ジアミノカプリン酸−2−アミノエチルエステル、1,3,6−トリアミノヘキサン、1,6,11−トリアミノウンデカン、ジ(アミノエチル)アミン等が挙げられる。
【0039】
脂環族ポリアミン類としては、ジアミノシクロブタン、ジアミノシクロヘキサン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン及びトリアミノシクロヘキサン等が挙げられる。
【0040】
芳香族ポリアミン類としては、ジアミノベンゼン、ジアミノトルエン、ジアミノ安息香酸、ジアミノアントラキノン、ジアミノベンゼンスルホン酸、ジアミノ安息香酸等が挙げられる。
【0041】
芳香脂肪族ポリアミン類としては、ジアミノキシレン、ジ(アミノメチル)ベンゼン、ジ(アミノメチル)ピリジン、ジ(アミノメチル)ナフタレン等が挙げられる。ジアミノヒドロキシプロパンのように、上記したアミン類誘導体にヒドロキシル基が置換したポリアミン類等が挙げられる。
【0042】
また、アミノ酸類としては、セリン、トレオニン、システイン、シスチン、シスチンジスルホキシド、シスタチオニン、メチオニン、アルギニン、リジン、チロシン、ヒスチジン、トリプトファン及びオキシプロリン等が挙げられる。これらのアミノ酸は、タンパク質やペプチド等、又はそれらを加水分解したもの等でもよい。
【0043】
分子内にチオール基を2個以上有する化合物の具体例としては、ジチオエチレングリコール、ジチオエリトリトール及びジチオトレイトール等のジチオール化合物類等を挙げることができる。ここで、m価の化合物は、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基から選ばれる官能基を2種以上有していてもよい。その例を以下で挙げる。
【0044】
分子内にアミノ基とヒドロキシル基を有する化合物としては、アミノエタノール、アミノプロパノール、アミノブタノール、アミノペンタノール、アミノヘキサノール、アミノプロパンジオール、アミノエチルエタノールアミン、アミノエチルアミノエタノール、アミノクレゾール、アミノナフトール、アミノナフトールスルホン酸、アミノヒドロキシ安息香酸、アミノヒドロキシブタン酸、アミノフェノール、アミノフェネチルアルコール及びグルコサミン等が挙げられる。分子内にチオール基とヒドロキシル基を有する化合物としては、メルカプトエタノール、メルカプトフェノール、メルカプトプロパンジオール及びグルコチオース等が挙げられる。分子内にチオール基とアミノ基を有する化合物としては、アミノチオフェノール及びアミノトリアゾールチオール等が挙げられる。
【0045】
m価の化合物は、光学異性体であるD−体、L−体、ラセミ体のいずれであってもよく、各異性体であってもよい。また、m価の化合物の中でも、炭素数1〜40のものが好ましく、さらに好ましくは炭素数1〜20のものである。また、天然に存在する化合物の方が、生分解性に優れているため、アミノ酸類、ペプチド類、糖類等が好ましい。N−アシル酸性アミノ酸無水物とm価の化合物とを反応させる際、溶媒を使用してもよい。反応の際に使用する溶媒としては、水、水と有機溶媒との混合溶媒、またはテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、四塩化炭素、クロロホルム及びアセトン等の不活性溶媒が挙げられる。反応温度としては、−5℃〜200℃、かつ上記化合物の融点以上の温度で混合し、反応させることが好ましい。
【0046】
一般式(1)で示される化合物の別の製造方法としては、N−アシル酸性アミノ酸無水物ではなくN−アシル酸性アミノ酸モノ低級エステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル)と、上記したm価の化合物とを反応させることによっても得られる。
【0047】
N−アシル酸性アミノ酸モノ低級エステルとm価の化合物とを、ジメチルホルムアミド等の適当な溶媒中に溶解し、炭酸カリウム等の触媒を加え、減圧下において−5℃〜250℃で加熱反応させた後、反応溶媒を除去することで得られる。または、溶媒を用いずに無溶媒で加熱溶融し、水酸化ナトリウム等の触媒を加えて室温〜250℃でエステル交換反応させることによっても得ることもできる。
【0048】
N−長鎖アシル酸性アミノ酸のアミノ酸残基としては、グルタミン酸、アスパラギン酸等が挙げられ、アシル基としては炭素数8〜22、好ましくは8〜18の直鎖または分岐鎖の飽和または不飽和のものが挙げられる。
【0049】
上記のアシル基は、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、椰子油脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸、ベヘン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ヒマシ油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、及びこれらを含む混合脂肪酸等の脂肪酸より導入することができる。N−長鎖アシル酸性アミノ酸の塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩、リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩等が挙げられる。N−長鎖アシル酸性アミノ酸またはその塩は一種または二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
〔N−長鎖アシル酸性アミノ酸又はその塩〕
N−長鎖アシル酸性アミノ酸としては、例えばN−ラウロイルグルタミン酸、N−ミリストイルグルタミン酸、N−パルミトイルグルタミン酸、N−ステアロイルグルタミン酸、N−オレオイルグルタミン酸、N−ココイルグルタミン酸、N−硬化牛脂油グルタミン酸、N−ラウロイルアスパラギン酸、N−ミリストイルアスパラギン酸、N−パルミトイルアスパラギン酸、N−ステアロイルアスパラギン酸、N−オレオイルアスパラギン酸、N−ココイルアスパラギン酸、N−硬化牛脂油アスパラギン酸およびこれらの塩を挙げることができる。これらのN−長鎖アシル酸性アミノ酸は光学活性体またはラセミ体のいずれも用いることができる。
【0051】
N−長鎖アシル酸性アミノ酸およびその塩は、アミノ酸と脂肪酸ハライドをアルカリ水溶液中で縮合させるショッテン・バウマン(Schotten Baumann)反応を用いる方法が一般的であり、例えば特公昭46−8685号公報、特公昭48−3058号公報および特公昭51−38681号公報に記載の方法に準じて製造することができる。アシル化すべきアミノ酸はL体、D体およびラセミ体のいずれでもよい。
【0052】
本発明においては、用途に応じ界面活性剤等その他の成分を更に含有してもよい。界面活性剤としては、特に限定されるものでないが、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0053】
ノニオン系界面活性剤の具体例としては、以下のものが挙げられる。レシチン、高分子乳化剤、グリセリン脂肪酸エステル、親油型モノステアリン酸グリセリン等のグリセリン脂肪酸エステル類;モノオレイン酸ポリグリセリル、ペンタオレイン酸ポリグリセリル、デカオレイン酸ポリグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル類;モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類;モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類;モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類;モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビット、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ等のポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体類;ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油類;ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル等のポリオキシエチレンステロール・水素添加ステロール類;モノステアリン酸エチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ポリオキシエチレンステアリン酸アミド等のポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド類;ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等を挙げることができる。
【0054】
この中でも特に好ましいノニオン系界面活性剤としては、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、親油型モノステアリン酸グリセリン等のグリセリン脂肪酸エステル類;モノオレイン酸ポリグリセリル、ペンタオレイン酸ポリグリセリル、デカオレイン酸ポリグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル類;モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類;ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が、挙げられる。
【0055】
両性界面活性剤の具体例としては、以下のものが挙げられる。ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、塩化アルキルジアミノエチルグリシン、ヤシ油脂肪酸アシル−N−カルボキシエトキシエチル−N−カルボキシエチルエチレンジアミン2ナトリウム等のグリシン型両性界面活性剤;ヤシ油脂肪酸アシル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のラウリルアミノプロピオン酸塩等のアミノプロピオン酸型両性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルベタインナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインラウリン酸アミドプロピル酢酸ベタイン等のアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤;ラウリルヒドロキシスルホベタイン等のスルホベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0056】
この中でも特に好ましい両性界面活性剤としては、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、塩化アルキルジアミノエチルグリシン、ヤシ油脂肪酸アシル−N−カルボキシエトキシエチル−N−カルボキシエチルエチレンジアミン2ナトリウム等のグリシン型両性界面活性剤;ヤシ油脂肪酸アシル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のラウリルアミノプロピオン酸塩等のアミノプロピオン酸型両性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルベタインナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインラウリン酸アミドプロピル酢酸ベタイン等のアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤等を挙げることができる。
【0057】
カチオン系界面活性剤の具体例としては、以下のものが挙げられる。ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド等の脂肪族アミン塩;塩化アルキルトリメチルアンモニウム、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化ジポリオキシエチレンアルキルメチルアンモニウム等のアルキル4級アンモニウム;塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ラウリルピジニウム、塩化アルキルジメチル(エチルベンジル)アンモニウム等の環式4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0058】
この中でも特に好ましいカチオン系界面活性剤としては、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化ジポリオキシエチレンアルキルメチルアンモニウム等のアルキル4級アンモニウム;塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ラウリルピジニウム、塩化アルキルジメチル(エチルベンジル)アンモニウム等の環式4級アンモニウム塩等を挙げることができる。
【0059】
アニオン系界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸及びその塩等のアルキルエーテルカルボン酸型アニオン系界面活性剤;N−アシルサルコシン塩、N−アシルグルタミン酸塩、N−アシルアルキルタウリン塩等のN−アシル有機酸塩型アニオン系界面活性剤;α―オレフィンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のスルホン酸塩型アニオン系界面活性剤;アルキル硫酸エステル塩等の硫酸塩型アニオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等のリン酸塩型アニオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類等が挙げられる。
【0060】
この中でも特に好ましいアニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸及びその塩等のアルキルエーテルカルボン酸型アニオン系界面活性剤;N−アシルグルタミン酸塩、N−アシルアルキルタウリン塩等のN−アシル有機酸塩型アニオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類等を挙げることができる。
【0061】
本発明においては、用途に応じヒドロキシ化合物を更に含有してもよい。ヒドロキシ化合物としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の1価のヒドロキシル化合物;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ジメチロールシクロヘキサン、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、イソプレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ソルバイト、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ダイマージオール、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、酒石酸、ジヒドロキシ酒石酸、メバロン酸、3,4−ジヒドロキシケイ皮酸、3,4−ジヒドロキシヒドロケイ皮酸、ジヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシステアリン酸、ジヒドロキシフェニルアラニン、ジエタノールアミン等の2価のヒドロキシル化合物;グリセリン、トリオキシイソブタン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、2−メチル−2,3,4−ブタントリオール、2−エチル−1,2,3−ブタントリオール、2,3,4−ペンタントリオール、2,3,4−ヘキサントリオール、4−プロピル−3,4,5−ヘプタントリオール、2,4−ジメチル−2,3,4−ペンタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン及びトリヒドロキシステアリン酸等の3価のヒドロキシル化合物;ペンタエリスリトール、エリスリトール、1,2,3,4−ペンタンテトロール、2,3,4,5−ヘキサンテトロール、1,2,4,5−ペンタンテトロール、1,3,4,5−ヘキサンテトロール、ジグリセリン及びソルビタン等の4価のヒドロキシル化合物;アドニトール、アラビトール、タロース、アロース、キシリトール及びトリグリセリン等の5価のヒドロキシル化合物;ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、イノシトール及びダルシトール等の6価のヒドロキシル化合物。又は上記した2〜6価のヒドロキシル化合物の脱水縮合物やポリグリセリン等が挙げられる。
【0062】
また、m価のポリヒドロキシル化合物として、糖類も挙げられる。以下でその具体例を挙げる。
【0063】
テトロースとしては、エリスロース、スレオース及びエリスルロース等が挙げられる。ペントースとしては、リボース、アラビノース、キシロース、リクソース、キシルロース及びリブロース等が挙げられる。単糖類としては、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、ギューロース、イドース、ガラクトース、タロース、フラクトース、ソルボース、プシコース及びタガトース等のヘキソース等が挙げられる。
【0064】
オリゴ糖類としては、マルトース、イソマルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、メリビオース、ラクトース、ツラノース、トレハロース、サッカロース、マンニトリオース、セロトリオース、ゲンチアノース、ラフィノース、メレチトース、セロテトロース及びスタキオース等が挙げられる。
【0065】
その他の糖類としては、ヘプトース、デオキシ糖、アミノ糖、チオ糖、セレノ糖、アルドン糖、ウロン酸、糖酸、ケトアルドン酸、アンヒドロ糖、不飽和糖、糖エステル、糖エーテル及びグリコシド等の残基でもよく、デンプン、グリコーゲン、セルロース、キチン及びキトサン等の多糖類又は上記した糖類を加水分解したものでもよい。
【0066】
また、本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、pH調整剤、キレート剤、増粘剤等の添加剤を含んでもよい。以下でそれらの具体例を挙げる。
【0067】
pH調整剤としては、特に限定させるものでないが、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、グルタミン酸、アルギニン、アスパラギン酸、クエン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、塩酸、硫酸及びチオ硫酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0068】
キレート剤としては、金属捕獲作用があれば特に限定されないが、コンプレキサン、アラニン、エチレンジアミンヒドロキシエチル3酢酸3ナトリウム、エデト酸、エデト酸2ナトリウム、エデト酸2ナトリウムカルシウム、エデト酸3ナトリウム、エデト酸4ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、フィチン酸、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0069】
この中でも特に好ましいキレート剤としては、アラニン、エデト酸2ナトリウム、エデト酸2ナトリウムカルシウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0070】
増粘剤としては、増粘を示す成分であれば特に限定されないが、キサンタンガム、カルボキシルビニルポリマー及びアクリル酸系ポリマーを挙げることができる。
【0071】
その他添加剤としては、以下のものが挙げられる。
ノニオン性高分子としては、アラビアゴム及びトラガントゴム等の天然ゴム類、サポニン等のグルコシド類、メチルセルロース、カルボキシセルロース及びヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、リグニンスルホン酸塩、セラック等の天然高分子、ポリアクリル酸塩、スチレン−アクリル酸共重合物の塩、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合物の塩、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩及びリン酸塩などの陰イオン性高分子やポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルメチルグリコシド等を挙げることができる。
【0072】
カチオン化高分子としては、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(ライオン社製、商品名、レオガードLP、ユニオン・カーバイド社製、商品名、ポリマーJR−400、東邦化学社製、商品名、カチナールLC−100、LC−200、HC−100、HC−200他)、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(ラウリルジメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(ユニオン・カーバイド社製、商品名、ポリマーLM−200他)、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド等のようなカチオン化セルロース、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]グアガム(日光ケミカルズ社製、商品名、ジャガーC−13S、ヘンケルジャパン社製、商品名、コスメディアグアーC261他)等のようなカチオン化グアガム、デキストラン塩化ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムエーテル等のようなカチオン化デキストランのように、セルロース誘導体、天然ガム、澱粉、デキストラン等の多糖類をカチオン化して得られるカチオン化多糖;塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]加水分解カゼイン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]加水分解コラーゲン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]加水分解シルク、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]加水分解ケラチン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]加水分解コムギたん白、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]加水分解コンキオリン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ステアリルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解ケラチン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ステアリルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解コラーゲン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ステアリルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解シルク、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ステアリルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解カゼイン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ステアリルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解コムギたん白、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ステアリルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解コンキオリン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ラウリルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解ケラチン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ラウリルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解コラーゲン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ラウリルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解シルク、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ラウリルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解カゼイン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ラウリルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解コムギたん白、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ラウリルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解コンキオリン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(やし油アルキルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解大豆たん白、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(やし油アルキルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解カゼイン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(やし油アルキルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解コラーゲン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(やし油アルキルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解シルク、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(やし油アルキルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解ケラチン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(やし油アルキルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解コンキオリン、などのように加水分解たん白質をカチオン化して得られるカチオン化加水分解たん白;塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体(ナルコジャパン製、商品名、マーコート550、ライオン社製、商品名、リポフローMN他)、β−メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウム・アクリルアミド共重合物(例えばハーキュレス社製レチン220)、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸・アクリルアミド共重合体、ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合物ジエチル硫酸塩、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム(ナルコジャパン製、商品名、マーコート100、ライオン社製、商品名、リポフローKY他)等のカチオン化ビニル系またはカチオン化アクリル系ポリマー;その他、アジピオン酸とジメチルアミノヒドロキシプロピルジエチレントリアミンとの共重合物(例えばSANDOZ社製、商品名、カルテレチンF4)、ポリエチレンイミン(日本触媒工業社製、商品名、エポミリP−100)、ポリアミンとポリグリコールとの縮合物、アジピオン酸ジメチル−アミノヒドロキシプロピルジエチルトリアミン共重合体、アミノエチルアミノプロピル・メチルポリシロキサン共重合体、およびこれらの混合物が挙げられる。また、日本化粧品原料集2007(日本化粧品工業連合会編集、2007年6月28日)に記載の以下のような化合物があげられる。ポリクオタニウム−4、ポリクオタニウム−5、ポリクオタニウム−6、ポリクオタニウム−7、ポリクオタニウム−10、ポリクオタニウム−11、ポリクオタニウム−16、ポリクオタニウム−22、ポリクオタニウム−28、ポリクオタニウム−32、ポリクオタニウム−33、ポリクオタニウム−37、ポリクオタニウム−39、ポリクオタニウム−43、ポリクオタニウム−44、ポリクオタニウム−46、ポリクオタニウム−47、ポリクオタニウム−49、ポリクオタニウム−51、ポリクオタニウム−52、ポリクオタニウム−53、ポリクオタニウム−55、ポリクオタニウム−57、ポリクオタニウム−61、ポリクオタニウム−64、ポリクオタニウム−65、ポリクオタニウム−68、コロハヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、塩化ヒドロキシプロピルトリモニウムデンプン、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド。
【0073】
上記の中でも、カチオン化高分子としては、カチオン化ビニル系またはカチオン化アクリル系ポリマー、カチオン化多糖、カチオン化グアガムが好ましく、より好ましくは、カチオン化ビニル系またはアクリル系ポリマーである。
【0074】
高分子系界面活性剤としては、アルギン酸ナトリウム、デンプン誘導体及びトラガントゴム等が挙げられる。
【0075】
金属イオン封鎖剤としては、エチレンジアミン四酢酸及びその塩類、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸及びその塩類、リン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルコン酸、ポリリン酸塩類、メタリン酸塩並びにヒノキチール類が挙げられる。
【0076】
酸化防止剤としては、トコフェロール類、BHA、BHT、没食子酸及びNDGA等が挙げられる。
【0077】
本発明に係る物質からなる過冷却促進物質は、従来用いられているエチレングリコールなどの不凍液が濃度依存のモル凝固点降下によるのに対し、凝固点降下によらず低濃度で氷核形成を阻害する。すなわち、本発明に係る過冷却促進剤は、一般に1容積%以下または1質量%以下の低濃度で水に添加することにより、添加濃度に依存した凝固点降下を遥かに越える過冷却活性を示す。塩、糖、糖アルコールなどの一般的な物質では、凝固点降下温度の2倍程度の過冷却活性の増進を示すが、本発明に係る過冷却促進物質は10倍以上、時には100倍以上の過冷却活性を示す。また、従来の不凍蛋白質などは氷核が形成されて作られた氷晶の成長を阻害するものであり、氷核形成そのものを阻害するものではない。これに対し本発明に係る過冷却促進物質は氷核形成そのものを阻害する。
【0078】
本発明の物質からなる過冷却促進剤は、通常、水に0.01g/L以上、好ましくは0.01〜30g/L、より好ましくは0.01〜10g/L、さらに好ましくは0.1〜1.0g/L溶解させて不凍性液体として用いることができる。この不凍性液体は、通常は本発明に係る物質を水に溶解させて得られるが、水の代わりに、用途に応じた添加物を含む水溶液を用いてもよい。このような添加物として、例えば、動植物細胞の培養培地の成分、生物材料の保存液の成分などが挙げられる。水溶液中の添加物の濃度は用途に応じて適宜定めればよい。
【0079】
また、この不凍性液体は、この他の過冷却促進剤や凍害防止剤を含んでもよい。凍害防止剤を含む場合、凍害防止剤を単独または組み合わせて1〜40容積%、好ましくは1〜20容積%含有してもよい。凍害防止剤とは、生物材料やこれらを浸漬させた水溶液に添加することにより、凍結による傷害を軽減する物質をいう。凍害防止剤といわれる物質はいずれも、濃度依存の凝固点降下をもたらす、氷晶の形成量を軽減する、凍結材料の塩濃度の上昇を軽減する、ガラス化を容易にする、などのうち、一つあるいは複合的な効果を有する。このような凍害防止剤としては、例えば、メタノール、エタノール、アセトアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ホルムアルデヒド、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、プロリン、グルコース、ソルビトール、シュークロース、トレハロース、ポリエチレングリコール、デキストラン10−150、ポリビニルピロリドン(PVP)、アルブミン、フイコール、ヒドロキシエチルスターチ(HES)などが挙げられる。
【0080】
このような不凍性液体は、凍害防止剤を全く加えない場合、あるいは凝固点降下には殆ど影響を与えない濃度(1質量%程度以下)で凍害防止剤などの添加物を加えた場合には、長期間(1〜2週間)−15℃付近まで液体状態を保たせることができる。この不凍性液体中に生物材料(植物や動物の細胞や組織、食用や観賞用等の魚介類、野菜などの植物そのものなど、またはその一部をいう。)を入れて冷却することにより、通常約5℃以下の低温で用いられるが、0℃以下、特に約0〜−15℃の温度範囲で凍結を起こさずに、長期低温保存が可能になる。この不凍性液体は、過冷却により凍結開始温度が下がることにより氷晶の大きさを小さくすることができ、また単独または凍害防止剤などとの併用により、凍結乾燥により調製をする医薬品や食品などの凍結制御剤として使用できる。上記物質を含む樹木などの生物材料からの抽出物(粗抽出液等)においても同様の応用が可能である。
【0081】
一方、上記の凍害防止剤を高濃度で含む水溶液は「ガラス化液」と呼ばれ、超低温(例えば、液体窒素温度)においても水は結晶を形成せず、ガラス体(非晶質の氷)になる(新野孝男ら編「植物超低温保存マニュアル」農業生物資源研究所発行2006年)。ガラス化液とは上記凍害防止剤を単独または幾つか組み合わせて20〜90容積%、好ましくは40〜90容積%含有し、残余が水である溶液をいう。この水として動植物培養液などの溶媒を用いてもよい。動植物の培養や保存に用いる場合には、水や動植物培養液を30容積%以上、特に40容積%以上混合することが好ましい。現在、最も多く用いられているガラス化液PVS2は、30容積%グリセリン、15容積%エチレングリコール、15容積%DMSO、0.4Mシュークロースを、培地溶液に加えたものである。培地溶液の種類や濃度は培養や保存する材料によって適宜変更する。本発明においては、このガラス化液に本発明の過冷却促進剤を通常0.01g/L以上、好ましくは0.01〜30g/L、より好ましくは0.01〜10g/L、さらに好ましくは0.1〜1.0g/L添加する。このようなガラス体は、ガラス化液の凍結温度以下、例えば−15℃以下、特に−60〜−273℃の温度範囲、例えば液体窒素温度(77K)で非晶質状態を保たせることができる。
【0082】
ガラス化による凍結保存では、通常予め保存したい材料を室温あるいは0℃以上の温度で、短時間浸潰処理する。この凍結前処理により、材料中の水は高濃度のガラス化液で脱水されると共に、ガラス化液が材料内水分と置換される。このため、これら材料を液体窒素に投入すると材料内外の水は氷晶を形成せずにガラス化する。植物などの生物材料をガラス化液に入れて液体窒素に投入すると、生物材料内外の水はガラス体(非晶質の氷)になり、ガラス状態では凍結による傷害が起こらないため、生物材料を超低温のガラス化液中で凍結保存することができる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの例は本発明を限定することを意図するものではない。
【0084】
一般式(1)で示される化合物を以下に記載の方法により製造した。
[N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リシンとの縮合物のナトリウム塩の製造例1]
L−リシン塩酸塩9.1g(0.05mol)を水57gと混合した。この液を25%水酸化ナトリウム水溶液でpH範囲を10〜11に調整し、反応温度を5℃に維持しながら、攪拌した。攪拌下において、N−ラウロイル−L−グルタミン酸無水物を31.1g(0.1mol)2時間かけて添加し、反応を実施した。その後、さらに30分攪拌を続け、ターシャリーブタノールを液中濃度20質量%となるように添加した後、75%硫酸を滴下して液のpH値を2に調整し、また液の温度を65℃に調整した。硫酸滴下終了後、攪拌を停止し、20分間65℃で静置して有機層と水層とに分層し、そこから有機層を分離した。分離した有機層にターシャリーブタノール及び水を添加して、温度を65℃にして20分攪拌した。攪拌停止後、静置して有機層と水層とに分層した。得られた有機層に対して、前記の水洗操作をくり返した後、得られた有機層から溶媒を除去し、水酸化ナトリウムで固形分30質量%、pH6.5(25℃)の水溶液に中和調製した後、これを乾燥して下記式(4)に示す化合物を得た。
【0085】
N−ラウロイル−L−グルタミン酸無水物とL−リシン塩酸塩との反応において、結合の仕方によって、下記式(4)で示すとおり4種類の化合物が製造されることになる。
【化6】

(式4において、Rは炭素数11の炭化水素基、Mは、各々独立にH、Naのいずれかである)
【0086】
[N−ミリストイル−L−グルタミン酸とL−リシンとの縮合物のナトリウム塩の製造例2]
製造例1において、N−ラウロイル−L−グルタミン酸無水物0.1molをN−ミリストイル−L−グルタミン酸無水物0.1molとした以外は、製造例1の方法と同じ条件で反応を実施し、N−ミリストイル−L−グルタミン酸とL−リシンとの縮合物のナトリウム塩を得た。
【0087】
実施例3で用いたN−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウムは、旭化成ケミカルズ株式会社製、製品名AMMS−P1を用いた。
【0088】
本発明において、過冷却活性(氷核形成阻害活性ともいう。)は、以下の方法で測定した。すなわち、氷核物質として0.5mMのヨウ化銀(AgI)を含む緩衝液に被測定物を表1の濃度で混合した溶液を用意し、温度コントロールができる銅板上に、この溶液の2μLの液滴を多数載せ、銅板を0.2℃/minで冷却して、凍結する液滴数を肉眼的に観察し、50%の液滴が凍結した温度を凍結温度とし、被測定物と氷核物質を含む溶液の凍結温度と、氷核物質と緩衝液のみからなる溶液(Control)の凍結温度の差を過冷却活性とした。緩衝液は、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を用いた。
【0089】
[実施例1〜5、比較例1〜2]
種々の物質につき過冷却活性を測定した結果を表1に示す。実施例1〜5は、本発明の化合物を含有しているので、それらを含まない比較例1〜2に比べ優れた過冷却活性が認められる。特に、実施例4〜5においては、0.01から0.005%という極めて低濃度において高い過冷却活性が発現しており、本発明の過冷却促進剤の有用性の高さが認められる。また、実施例1〜5の化合物は、前述の方法により量産可能であり、カテキン等の天然物に比べ入手容易性の点においても優れている。
【0090】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の過冷却促進剤は、溶液に添加し、不凍性液体やガラス化液として使用することが可能である。この不凍性液体中に、植物や動物の細胞や組織、食用の魚介類や野菜等の生物材料を入れて冷却することにより、0℃以下の温度範囲内で凍結を起こさずに、長期低温保存ができる可能性がある。また、過冷却飲料としての応用も考えられる。例えば、魚や肉などの生鮮食品の保存、ジュースなどの食品原料の輸入(凍結しないと80cal/gのエネルギー削減となる。)などを凍結保存から過冷却保存へと転換することが考えられる。また、臓器移植時の臓器保存液としての利用等、臓器保存への適用も可能である。大型コンピューター、車のエンジン冷却剤など、石油系に代わる冷却剤としての応用も可能である。冷凍庫着霜防止、車窓ガラス曇り防止、トンネル結露防止などの目的で材料表面を塗装して結氷を防止することもできる。植物への低温耐性の付与により氷点下温度で凍結しないで生長する植物の作出を可能とする。雲への散布により氷晶化を抑制することで降雪量を調節することもできる。そのほか、凍結制御剤として凍結保存への応用が可能である。氷蓄熱・輸送システムによる電力利用の平準化もできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物、N−長鎖アシル酸性アミノ酸もしくはその塩より選ばれる一種以上を含む、過冷却促進剤。
【化1】

(上記一般式(1)において、Rは炭素数1〜23の炭化水素基を示し、Rは水素又は炭素数1〜3の炭化水素基を示し、Yはカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基又はそれらの塩を示し、Zは−NR’−(R’は水素又は炭素数1〜10の炭化水素基)、−O−、又は−S−を示し、j、kは0、1、2のいずれかであり、かつj、kは同時に0ではなく、nは2〜20の整数を示す。Xは分子量100万以下の炭化水素鎖を示す。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物を含む、請求項1に記載の過冷却促進剤。
【請求項3】
前記一般式(1)が下記一般式(2)で示される化合物である、請求項2に記載の過冷却促進剤。
【化2】

(上記一般式(2)において、Rは炭素数1〜23の炭化水素基を示し、Rは水素又は炭素数1〜3の炭化水素基を示し、Yはカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基又はそれらの塩を示し、Zは−NR’−(R’は水素または炭素数1〜10の炭化水素基)、−O−、又は−S−を示し、X’は、カルボキシル基又はその塩、−NHR’基(R’は、水素、または炭素数1〜10の炭化水素基)、−OH基、−SH基のうち少なくともいずれか一つを有する炭素数が1〜20の炭化水素鎖を示し、j、kは0、1、2のいずれかであり、かつj、kは同時に0ではない。)

【公開番号】特開2012−211334(P2012−211334A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2012−151775(P2012−151775)
【出願日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)