説明

過分岐構造を有するポリウレタンを含む分散バインダー、及びその製造方法

【課題】着色料調製品及び記録流体に用いられる分散バインダーを提供する。
【解決手段】過分岐ポリウレタン、又は変性過分岐ポリウレタンを、メラミン誘導体と、混合することにより分散バインダーが得られた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過分岐構造を有するポリウレタンを混合することにより得られる分散バインダー、同分散バインダーの製造方法、分散バインダーを含む着色料調製品、同着色料調製品の製造方法、バインダーを含む記録流体の製造方法、記録流体を用いてインクジェット法により印刷する方法、及びこれにより得られた基板に関する。
【0002】
本発明は、特に、過分岐ポリウレタン、又は
1種類以上の過分岐ポリウレタンと、一般式I
【0003】
【化1】

で表され、式中
Uが水素、C1−C18アルキル、C7−C13アリールアルキル、C6−C14アリール及びラジカル開始剤分子の残基のいずれかを示し、
Mがそれぞれ同一又は異なるモノマー単位を示し、
yが10〜100000の整数を示し、
Tが、顔料に対して親和性を有する少なくとも1個の基を有する過分岐ポリウレタン、または変性過分岐ポリウレタンのNCO基又はOH基と反応する官能基を示す、ポリマーと、を反応させることにより得られる変性過分岐ポリウレタンを、式IV
【0004】
【化2】

で表され、式中
2〜R7は同一であっても異なってもよく、それぞれ水素、CH2−OR8、CH(OR82、及びCH2−N(R82から選択され、
8は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ
水素、
分岐又は非分岐C1−C12アルキル、
(-CH2-CH2-O)m-H、(-CHCH3-CH2-O)m-H、(-CH2-CHCH3-O)m-H、(-CH2-CH2-CH2-CH2-O)m-Hから選択されたアルコキシアルキレンを示し、
mは1〜20の整数を示す、1種類以上のメラミン誘導体と、混合することにより得られる分散バインダーに関する。
【背景技術】
【0005】
分散添加剤は、顔料を表面に持続的に付着させる種々の適用において技術的及び経済的に重要である。このような顔料は、通常、厳格な技術的要求を満たさなければならず、更に安価に製造されなければならない。
【0006】
このような要求は、記録流体、特にインクジェット法のインクにおいて特に重要である。インクは、顔料が沈殿や凝集を生じてはならないといった安定な分散性について高い要求を満たす必要がある。しかしながら、印刷及びスクリプトは鮮明な色と、摩擦堅牢度及び湿潤摩擦堅牢度等の堅牢度を有する必要がある。
【0007】
一方、顔料については、もはや深く研究がなされておらず、公知有機又は無機顔料が用いられ、現在は分散添加剤が重視されている。
【0008】
米国特許第6096801号明細書では、0.1〜10質量%の顔料、樹脂、例えばロジン、及びアセトアセトメタキシリドを基礎とするデンドリマー、例えばBOLTORN(登録商標)シリーズ、又はβ−アミノプロピオンアミドを含む顔料組成物が開示されている。開示されたデンドリマーは、2個以上のヒドロキシル基を有してもよい分子とアームの端部で反応可能であり、この例には、ペンタエリスリトールがある。これらは分散添加剤として非常に有用であるが、合成が高価かつ不便である。従って、デンドリマーを用いた組成は、経済的視点から不都合である。
【0009】
米国特許第5561214号明細書には、ヒドロキシアスパラギン酸エステルの自己縮合により得られた過分岐ポリアスパラギン酸エステルが開示されている。過分岐のポリアスパラギン酸エステルはそのまま使用してもよいが、バインダーとしても好適であり、これらをポリイソシアナートと反応させて種々の塗料組成物用のバインダーとして適するポリ尿素を得てもよい。しかしながら、分散剤添加物を工業的に使用するには製造にコストがかかりすぎる。
【0010】
WO 00/37542号公報には、水性組成物中の疎水性粒子の分散剤としてデンドリマーを用いることが記載されている。WO 00/37542号公報に記載された目的に用いられるデンドリマーには、いわゆる規則的デンドロン及び過分岐ポリマー(7頁1行)も含まれる。過分岐ポリマーの例として、米国特許第5418301号公報には、2,2−ジメチロールプロピオン酸のエステル化等により製造可能なポリエステルが記載されている。
【0011】
【特許文献1】米国特許第6096801号明細書
【特許文献2】米国特許第5561214号明細書
【特許文献3】WO 00/37542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述の技術的利点を有し、かつ合成が容易な、分散添加剤を含有する新規記録流体を提供することをその目的とする。
【0013】
更に、本発明は新規記録流体の製造法、該記録流体の使用法を提供することを目的とする。更に、本発明は過分岐構造を有するポリウレタンを混合することにより得られる分散バインダー、同分散バインダーの製造方法、分散バインダーを含む着色料調製品、同着色料調製品の製造方法、バインダーを含む記録流体の製造方法、記録流体を用いてインクジェット法により印刷する方法、及びこれにより得られた基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、上記課題が冒頭に記載された、1個以上の顔料親和基を有する過分岐ポリウレタン、及び記録流体中の分散添加剤として非常に有用な変性過分岐ポリウレタンにより解決されることを見出した。顔料に対して親和性を有する少なくとも1個の基を含む過分岐ポリウレタン(以下、過分岐ポリウレタンともいう)、及びその変性体について以下に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明において、ポリウレタンとはウレタン基のみの連結によるポリマーだけではなく、更に一般的な意味の、ジイソシアナート又はポリイソシアナートと、活性水素原子を含む化合物とを反応させることにより得られるポリマーも含まれる。すなわち、本発明におけるポリウレタンとは、ウレタン基のみならず尿素基、アロファネート、ビウレット、カルボジイミド、アミド、エステル、エーテル、ウレトンイミン、ウレトジオン、イソシアヌラート、又はオキサゾリジン基を含んでもよい。概要の一例としては、Kunstostoffhandbuch [Plastics Handbook]/Saechtling, 26版、Carl-Hanser-Verlag, Munich 1995, 491頁以降を参照するとよい。特に、本発明におけるポリウレタンは尿素基を含む。
【0016】
本発明は、分子的及び構造的に不均一の過分岐ポリウレタンから出発する。本発明のポリウレタンは分子の不均一性においてデンドリマーとは異なり、製造費用及び不便さが軽減されている。
【0017】
本発明の実施に用いられる過分岐ポリウレタンの合成について、以下に例を示す。
【0018】
過分岐ポリウレタンの合成に関しては、イソシアナート基、及びイソシアナート基と反応可能な基の双方を含み、結合を形成するABxモノマーを用いることが好ましい。xは2〜8の自然数であると好ましく、xが2又は3であると更に好ましい。Aがイソシアナート、Bがこれに対して反応性の基を含んでもよいし、この逆であってもよい。
【0019】
イソシアナート基と反応性の基は、OH、NH2、NH、SH又はCOOH基を含むと好ましい。
【0020】
ABxモノマーは、従来より種々の技術により製造可能であった。
【0021】
ABxモノマーは、例えばWO 97/02304号公報に開示された方法により、保護基による技術を用いて合成することも可能である。一例として、この技術はトリレン2,4−ジイソシアナート(TDI)及びトリメチロールプロパンから得られるAB2モノマーの製造法として説明されている。まず、TDIのイソシアナート基の1個を、オキシムとの反応等の公知方法によりブロックする。残存するフリーNCO基がトリメチロールプロパンと反応し、3個のOH基のうち1個がイソシアナート基と反応する。保護基を除去した後、イソシアナート基と2個のOH基とを含む分子が得られる。
【0022】
ABx分子は、ドイツ特許出願公開第19904444号公報に開示された方法により特に有利に合成可能である。同方法によると、保護基が不要である。この方法では、ジイソシアナートとポリイソシアナートが用いられ、2個以上のイソシアナート反応性基を含む化合物との反応が行われる。反応体の少なくとも1個が、他の反応体とは反応性の異なる基を含む。好ましくは、双方の反応体が、他の反応体とは反応性の異なる基を含んでいると好ましい。反応条件は、特別の反応基のみが相互に反応するように設定される。
【0023】
反応性の異なるNCO基を含む、好ましいジイソシアナート及び/又はポリイソシアナートは、簡単かつ安価に得られるイソシアナート、例えば芳香族イソシアナート、例えばトリレン2,4−ジイソシアナート(2,4−TDI)、ジフェニルメタン2,4’−ジイソシアナート(2,4’−MDI)、トリイソシアナトトルエン、又は脂肪族イソシアナート、例えばイソホロンジイソシアナート(IPDI)、2−ブチル−2−エチルペンタメチレンジイソシアナート、2−イソシアナトプロピルシクロヘキシルイソシアナート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、メチレンビス(シクロヘキシル)2,4’−ジイソシアナート、及び4−メチルシクロヘキサン1,3−ジイソシアナート(H−TDI)である。
【0024】
反応性の異なる基を含むイソシアナートの他の例は、フェニレン1,3−ジイソシアナート、フェニレン1,4−ジイソシアナート、ナフチレン1,5−ジイソシアナート、ビフェニルジイソシアナート、トルイジンジイソシアナート、及びトリレン2,6−ジイソシアナートである。
【0025】
上記イソシアナートの混合物を使用可能であることは言うまでもない。
【0026】
2個以上のイソシアナート基を含み、その官能基のNCO基に対する反応性が異なる好ましい化合物は、2価、3価、4価の化合物である。好ましい化合物は1個以上の1級ヒドロキシル基と、1個以上の2級ヒドロキシル基と、1個以上のヒドロキシル基、及び1個以上のメルカプト基を含む化合物であり、特に好ましくは、分子中に1個以上のヒドロキシル基と1個以上のアミノ基を含む化合物、特にアミノアルコール、アミノジオール、及びアミノトリオールである。イソシアナートに対する反応でのアミノ基の反応性はヒドロキシル基の反応性よりも実質的に高いためである。
【0027】
相互に反応性の異なる、2個以上のイソシアナート基を含む化合物の例は、プロピレングリコール、グリセロール、メルカプトエタノール、エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、またはトリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタンである。更に、これらの化合物の混合物も使用可能である。
【0028】
AB2分子の製造を、ジイソシアナートとアミノジオールとの場合を例にして説明する。ここで、ジイソシアナートの初めの1モルを、2−アミノ−1,3−プロパンジオール等のアミノジオール1モルと、低温、好ましくは−10℃〜+30℃の範囲で反応させる。この温度範囲では、ウレタン形成反応の抑制が事実上完全に行われ、イソシアナートのNCOが、アミノジオールのアミノ基のみと反応する。得られたAB2分子は、1個のフリーNCOと2個のフリーOH基を含み、過分岐ポリウレタンを合成するために使用可能である。
【0029】
加熱、又は触媒の添加により、このAB2分子は分子内反応を生じて過分岐ポリウレタンを生成することがある。過分岐ポリウレタンの製造に使用される触媒の例は、オルガノ錫化合物、例えば二酢酸錫、ジオクタン酸錫、ジラウリル酸ジブチル錫、強塩基性アミン、例えばジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデカン、トリエチルアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルジアミノエチルエーテル、又は好ましくはトリエチレンジアミン、又はビス(N,N−ジメチルアミノエチル)エーテル、又は弱塩基性アミン、例えばイミダゾール等である。更に、1個以上のオルガノ錫化合物と1個以上の強塩基性アミンを含む混合触媒を使用することも可能である。触媒は、イソシアナートに対して0.01質量%〜10質量%、更に好ましくは0.05質量%〜5質量%の量で使用可能である。過分岐ポリウレタンの合成は、AB2分子をあらかじめ単離することなく、他の反応工程で、高温、好ましくは30〜80の範囲で好ましく行われる。2個のOHと1個のNCO基を含む上記AB2分子を用いる場合、分子あたり1個のフリーNCOと重合度に応じた数のOH基とを含む過分岐ポリマーが形成される。反応は高添加率にて行われ、この結果、非常に高分子量の構造が得られる。所望の分子量が得られた段階で、適当な単官能性化合物を添加するか、AB2を製造するための出発化合物のうちのいずれか1種類を添加することにより反応を終了させると好ましい。反応の終了に用いられる出発化合物に応じて、すべての末端がNCOである分子、又はすべての末端がOHである分子のいずれかが製造される。
【0030】
この他に、例えば、AB2分子は、1モルのグリセロールと、2モルの
TDIから製造可能である。低温では、第一級アルコール基と4位のイソシアナート基が優先的に反応し、1個のOH基と2個のイソシアナート基とを含む付加物が形成され、これが比較的高温、反応することにより過分岐ポリウレタンが生ずる。初めに得られる生成物は、1個のOH基と、分岐度に応じた数のNCO基を含む過分岐ポリウレタンである。
【0031】
1モルあたりのNCO基の数は2〜100、好ましくは3〜20、特に10以下である。
【0032】
本発明で用いられる過分岐ポリウレタンの分子量Mwは、500〜上限50000g/モル、好ましい上限は15000g/モル、特に好ましい上限は10000g/モル、極めて好ましい上限は5000g/モルである。
【0033】
過分岐ポリウレタンの製造は、原則的に、溶媒を用いなくても可能であるが、溶媒を用いた方が好ましい。原則的に好適な溶媒は、反応温度で液体状であり、モノマー及びポリマーに対して不活性な化合物である。
【0034】
他の生成物は、この他の合成法により製造可能である。例としては、AB3分子を挙げることができる。AB3分子は、ジイソシアナートを、4イソシアナート反応性基を含む化合物と反応させること等により製造可能である。一例として、トリレンジイソシアナートと、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとの反応が挙げられる。
【0035】
重合を終結させるために、各A基と反応可能な多官能性化合物を使用することも可能である。このように、複数の小さな過分岐分子を結合して、1個の大きな過分岐分子を得ることができる。
【0036】
連鎖延長分岐を有する過分岐ポリウレタンは、例えばABx分子のみならず、ジイソシアナートと、2個のイソシアナート反応性基を含む化合物とを1:1で用いる重合反応を行うことにより得られる。このような付加的なAA及びBB化合物は、更に他の官能基を有してもよいが、反応条件化でA又はB基に対して反応性を有してはならない。このように、過分岐ポリマーに対して更に官能性を導入することも可能である。
【0037】
過分岐ポリウレタンの他の合成法は、ドイツ特許出願公開第10013187号公報及びDE−A10030869号公報に記載されている。
【0038】
官能基が疎水化又は親水化されているか、転化(反応)している過分岐ポリウレタンを用いることが特に有利である。これにより、顔料親和性基(すなわち顔料に対して親和性を有する基)が導入された過分岐ポリウレタンの記録流体中における本発明の適用法に特に適合したポリウレタンを得ることが可能となる。官能基の転化に関して、イソシアナート基を含む過分岐ポリウレタンがその反応性により極めて適している。適する反応体を用いてOH−末端基又はNH2末端基を有するポリウレタンに転化することも可能である。
【0039】
適する反応体により導入可能な顔料親和性基の例は、−COOH、−COOR’、−CONHR’、−CONH2、−OH、−SH、−NH2、−NHR’、−NR’2、−CO3H、−SO3R’、−N(フタルイミド)、−NHCOOR’、−NHCONH2、−NHCONHR’又は−CNである。これらの基のラジカルR’は、直鎖状又は分岐状のアルキル基、アリールアルキル、又はアリール基(これらはC1−C40アルキル基又はC6−C14アリール基により置換されていてもよい)である。以下の基が特に好ましい。
【0040】
1−C40アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、イソヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ドデシル、n−ヘキサデシル、及びn−エイコシル。特に好ましくはメチル。
【0041】
6−C14アリール、例えばフェニル、α−ナフチル、β−ナフチル、1−アントラセニル、2−アントラセニル、及び9−アントラセニル、C7−C13アリールアルキル、好ましくはC7−C12フェニルアルキル、ベンジル、1−フェネチル、2−フェネチル、1−フェニルプロピル、2−フェニルプロピル、3−フェネチルプロピル、ネオフィル(1-メチル−1−フェニルエチル)、1−フェニルブチル、2−フェニルブチル、3-フェニルブチル、及び4−フェニルブチル、及び特にベンジル。
【0042】
十分に酸性な水素原始を有する基を塩基で処理することにより、対応の塩に変換してもよい。有用な塩基の例は、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物及び炭酸水素塩、又はアルカリ金属の炭酸塩である。適する塩基は、揮発性アミン、すなわち大気圧下の沸点が180℃までのアミン、例えばアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、又はメチルジエタノールアミンである。同様に、塩基性の基を、α−ヒドロキシカルボン酸、α−アミノ酸、又はα−ヒドロキシスルホン酸を用いて対応の塩に変換してもよい。これにより、水溶性の過分岐ポリウレタンを得ることができる。
【0043】
NCO末端を有する生成物と、脂肪族又は芳香族アルコール、チオール、第一級アミン又は第二級アミン、又はカルボン酸とを反応させることにより疎水性生成物を得ることができる。以下の基を有するアルコール及び、第一級及び第二級アミンが特に好ましい。
【0044】
4−C40アルキル、例えばn−ブチル、n−へキシル、好ましくはC8−C40アルキル基、好ましくはn−オクチル、n−デシル、C6−C14アリール基(上述の基)、又はヘテロ芳香族基、例えばα−ピリジル、β−ピリジル、γ−ピリジル、N−ピリル、α−ピリル、β−ピリル、プロピリニル、ポリフィリニル、2−フラニル、3−フラニル、2−チオフェニル、3−チオフェニル、N−ピラゾリニル、N−イミダゾリル、N−トリアゾリル、N−オキサゾリル、N−インドリル、N−カルバゾリル、2−ベンゾフラニル、2−ベンゾチオフェニル、N−インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、2−キノリニル、3−イソキノリニル又はα−フェナントロリニル等。
【0045】
特に好ましくは、芳香族アミン、例えばアニリン又はα−ナフチルアミン等、特に好ましいカルボン酸誘導体の例はカルボン酸、及び脂肪族C2−C16モノカルボン酸又はジカルボン酸、及び芳香族C6−C14モノカルボン酸又はジカルボン酸のカルボキシアミド、及び芳香族C6-C14モノカルボン酸又はジカルボン酸である。フタルイミドとの反応が極めて好ましい。
【0046】
酸基を、例えばヒドロキシカルボン酸、メルカプトカルボン酸、ヒドロキシスルホン酸、又はアミノ酸との反応により導入可能である。適する反応体の例は、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシピバリン酸、4−ヒドロキシ安息香酸、12−ヒドロキシドデカン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、メルカプト酢酸、ジメチロールプロピオン酸、グリシン、β−アラニン及びタウリンである。
【0047】
上記過分岐ポリウレタンは、−COOH、−CONHR’−CONH2、−OH、−SH、−NH2、−NHR’、−NR’2、−SO3H、−SO3R’、−NHCOOR’、−NHCONH2から選択された少なくとも1個の親水性基を含む場合に、本発明における記録流体に分散添加剤として使用することが可能である。
【0048】
変性、及び特に親水変性された過分岐ポリウレタンを含む記録流体が好ましく用いられる。
【0049】
1種以上の過分岐ポリウレタンと、下式Iの1種類以上のポリマーと、を反応させることにより得られる変性過分岐ポリウレタンを含む記録流体が好ましく使用される。
【0050】
【化3】

【0051】
上記式中
Uは水素、
分岐又は非分岐のC1−C18アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、イソヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ドデシル、及びn−オクタデシル、好ましくはC1−C6アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、特に好ましくはC1−C4アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、及びtert−ブチル、
6−C14アリール、例えばフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントリル、2−アントリル、9−アントリル、1−フェナントリル,2−フェナントリル、3−フェナントリル、4−フェナントリル、及び9−フェナントリル、好ましくはフェニル、1−ナフチル、1−ナフチル、及び2−ナフチル、特に好ましくはフェニル、
7−C13アリールアルキル、好ましくはC7−C12フェニルアルキル、例えばベンジル、1−フェネチル、2−フェネチル、1−フェニルプロピル、2−フェニルプロピル、3−フェニルプロピル、ネオフェニル(1−メチル−1−フェニルエチル)、1−フェニルブチル、2−フェニルブチル、3−フェニルブチル、3−フェニルブチル、及び4−フェニルブチル、特に好ましくはベンジル、又は
開始剤分子の残基、例えば2,2−ジメチル−2−シアノエチル、又は他の開始剤分子の残基、例えば通常の有機過酸化物、過酸化アゾ化合物、又はC−C解裂開始剤、例えばジアルキルパーオキシド、パーオキソカルボン酸、パーオキシジカルボン酸塩、過酸化物エステル、ヒドロパーオキシド、ケトンパーオキシド、アゾジニトリル、又はベンゾピナコールシリルエーテルを意味し、
Mは、1種類以上のモノマー単位、例えば(メタ)アクリレート単位、(メタ)アクリルアミド単位、ポリビニルアセテート単位、ポリビニルアルコール単位又はポリエチレンイミン単位、直鎖状ポリウレタン単位、ポリエステル単位、ポリスチレン単位、ポリエーテル単位、例えばポリエチレングリコール又はポリテトラヒドロフラン単位、又はポリエチレン又はポリアミド単位を意味し、
yは10〜100000、好ましくは100〜10000の整数、
TはNCO基、又は本発明の高分子分散添加剤のOH、NH又はSH基と反応可能な基、例えばOH基、NHR、SH、カルボキシル基又はカルボキシルアミド基を意味する。
【0052】
上記モノマー単位の例を以下に示す。
【0053】
【化4】

【0054】
R”は水素、又はR’であり、Qは水素、又はメチルである。
【0055】
上記分散添加剤が1種類以上のフリーNCO基を含む場合、TはOH、NHR及びSHから選択される。上記分散剤が1個以上のフリー、OH、NH又はSH基を含む場合、Tはカルボキシル基から選択されると好ましい。
【0056】
過分岐ポリウレタンと、式Iの1種類以上のポリマーとの反応は、通常−20〜120℃、好ましくは+60℃以下で行われる。触媒を添加すると反応が加速可能となる。変性ポリウレタンを製造するための有効な触媒は、ポリウレタン化学で慣用される触媒を含む。具体例は、有機錫化合物、例えば二酢酸錫、ジオクタン酸錫、ジラウリル酸ジブチル錫である。
【0057】
強塩基性アミン、例えばジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデカン、トリエチルアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルジアミノエチルエーテル、又は好ましくはトリエチレンジアミン又はビス(N,N−ジメチルアミノエチル)エーテル又は弱塩基性アミン、例えばイミダゾールである。
1種類以上の有機錫化合物と、1種類以上の強塩基性アミンとを含む混合触媒を用いることも可能である。触媒は、0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%の量で用いると有効である。反応は溶媒中で実施可能であり、この場合有用な溶媒の例は、原則的に、ポリウレタンともポリマーとも反応しないすべての溶媒が含まれる。
【0058】
変性過分岐ポリウレタンを含む記録流体を用いることが好ましい。変性過分岐ポリウレタンは、過分岐ポリウレタンのNCO基に対する不足量の式Iのポリマーと、1種類以上の過分岐ポリウレタンとの反応と、その後の残留NCO基の、顔料親和性基、特にカルボキシル基への転化によって得られる。
【0059】
特に好ましくは、上述の過分岐ポリウレタンと、ポリエーテル誘導体又は2種類以上のポリエーテル誘導体の混合物との反応により得られる、上述の変性過分岐ポリウレタンを含む記録流体が用いられる。
【0060】
本発明において、ポリエステル誘導体は、例えば一般式IIのポリアルキレングリコール誘導体
【0061】
【化5】

を含み、式中
1は、水素、又は好ましくは
1−C40アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、イソヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ドデシル、n−ヘキサデシル及びn−エイコシル、好ましくはメチルを意味し(C1−C40アルキルは1個以上のヒドロキシル基により置換されていてもよいが、ヒドロキシル基の数はこのC1−C40の炭素原子数を超過するものではない)、
6−C14アリール、例えばフェニル、α−ナフチル、β−ナフチル、1−アントラセニル、2−アントラセニル、及び9−アントラセニル、
7−C13アリールアルキル、好ましくはC7−C12フェニルアルキル、例えばベンジル、1−フェネチル、2−フェネチル、1−フェニルプロピル、2−フェニルプロピル、3−フェニルプロピル、ネオフェニル(1−メチル−1−フェニルエチル)、1−フェニルブチル、2−フェニルブチル、3−フェニルブチル、及び4−フェニルブチル、特に好ましくはベンジルを、
nは2〜500、好ましくは2〜200、特に好ましくは5〜100、非常に好ましくは50以下を意味する。
【0062】
本発明の方法において、ポリエステル誘導体は、更に一般式IIIのポリテトラヒドロフラン誘導体
【0063】
【化6】

を含む。上記式中の符号は上述のとおりである。
【0064】
本発明のポリエステル誘導体の例には、更にエチレンオキシドとプロピレンオキシド又はブチレンオキシドとの共重合体、又はエチレンオキシドとプロピレンオキシドとブチレンオキシドとの三元共重合体が含まれる。各共重合体はブロック共重合体又はランダム共重合体及び/又は三元共重合体の形態で存在可能である。モノマーのモル割合は重要ではない。ブロック共重合体の例は、BASF社製のPluronics(登録商標)シリーズである。更に、本発明で用いるポリエステル誘導体の例には、BASF社製のTetronics(登録商標)シリーズが含まれる。同製品は、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの分岐状ブロック共重合体であり、分子ごとに1個のエチレンジアミンを導入することにより分岐を生じさせたものである。
【0065】
本発明の式IIのポリアルキレン誘導体は、式IIで表される複数種類のポリアルキレン誘導体の混合物を含む。
【0066】
本発明に用いられる好ましいポリアルキレングリコール誘導体は、一般式IIのメチルキャップされたポリエチレングリコール誘導体である。
【0067】
過分岐ポリウレタンと、式IIのポリアルキレングリコール誘導体又は式IIIのポリテトラヒドロフラン誘導体との反応は、一般に−20〜+60℃で行われる。この反応は、触媒の添加により行ってもよい。変性ポリウレタンを製造するために有効に用いられる触媒には、ポリウレタン化学による上述の単独又は混合触媒が挙げられる。
【0068】
触媒は、0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%の使用量で用いられると好ましい。反応は溶媒中で行うことが可能であり、原則として、ポリウレタンともポリエーテル誘導体とも反応しないすべての溶媒を用いることができる。
【0069】
反応体のモル割合は、過分岐ポリウレタンの分散性に影響を与える。モル割合は、ポリエーテル誘導体のOH基の当量あたり1個のNCO基が用いられるように設定される。しかしながら、OH基当量を不足量で用い、次いで変性過分岐ポリウレタンの未反応NCO基と、アルカノール、アリールアミン、又はアルキルアミン、特にC8−C40アルキル基を有するアルカノール及びアルキルアミン、又はC6−C14アリール基を有するアリールアミン、例えばアニリン又はα−ナフチルアミンとを反応させ、顔料に親和性を有する基を形成することも可能である。
【0070】
極めて好ましい実施の形態において、本発明の記録流体は、一般式IVで示される1種類以上のメラミン誘導体
【0071】
【化7】

を含む。
【0072】
上記式中、R2〜R7は、同一であっても異なってもよく、それぞれ以下の基から選択される。
【0073】
水素、
CH2−OR8、CH(OR8)及びCH2−N(R82
8は、それぞれ同一であっても異なってもよく、以下から選択される。
【0074】
分岐又は非分岐のC1−C12アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、イソヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、及びn−ドデシル、好ましくはC1−C6アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、特に好ましくはC1−C4アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、及びtert−ブチル、
アルコキシアルキレン、例えば(−CH2−CH2−O)m−H、 (-CHCH3-CH2-O)m-H、(-CH2-CHCH3-O)m-H、(-CH2-CH2-CH2-CH2-O)m-H(mは1〜20、好ましくは1〜10、更に好ましくは1〜5の整数)。
【0075】
2、R4及びR6は異なると好ましい。
【0076】
特に好ましくは、R2とR3の双方が水素であり、R4とR5の双方がCH2−OHとされる。
【0077】
一般式IVのメラミン誘導体は、公知物質であり、例えば、BASF社製Luwipal(登録商標)、及びCytec社製Cymel(登録商標)327として市販されている。本発明に用いられるメラミンは、通常、いずれかの一定の式による純粋なものではなく、通常はR2〜R7の分子内転移が見られる。例えばトランスアセチル化反応やトランスアミナール化反応、及びある程度の縮合反応及び脱離反応が観察される。上記式IVは置換基の化学量論量による割合で定義され、分子内転移生成物及び縮合生成物も含まれる。
【0078】
上記過分岐ポリウレタン及び一般式IVのメラミン誘導体は、0.01:1〜100:1、好ましくは0.1:1〜50:1、更に好ましくは1:1〜10:1の範囲の質量割合で用いられることが一般的である。
【0079】
本発明は、過分岐ポリウレタンまたhアヘン製過分岐ポリウレタンと、一般式IVで示される1種類以上のメラミン誘導体
【0080】
【化8】

とを混合することにより得られる。
【0081】
上記式中、R2〜R7は同一でも異なっていてもよく、以下の基を意味する。
【0082】
水素、
CH2−OR8、CH(OR82及びCH2−N(R82
8は、それぞれ同一であっても異なってもよく、以下から選択される。
【0083】
水素、
分岐又は非分岐のC1−C12アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、イソヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、及びn−ドデシル、好ましくはC1−C6アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、特に好ましくはC1−C4アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、及びtert−ブチル、
アルコキシアルキレン、例えば(−CH2−CH2−O)m−H、 (-CHCH3-CH2-O)m-H、(-CH2-CHCH3-O)m-H、(-CH2-CH2-CH2-CH2-O)m-H(mは1〜20、好ましくは1〜10、更に好ましくは1〜5の整数)。質量割合は、0.01:1〜100:1、好ましくは0.1:1〜50:1、更に好ましくは1:1〜10:1とされる。
【0084】
2、R4及びR6は異なると好ましい。
【0085】
特に好ましくは、R2とR3の双方が水素であり、R4とR5の双方がCH2−OHとされる。特に好ましくは、R2とR3の双方が水素であり、R4がCH2−OHとされる。
【0086】
本発明では、更に本発明の分散バインダーを製造するための方法が提供される。本発明の方法では、1種類以上の上記過分岐ポリウレタン又は1種類以上の上記変性過分岐ポリウレタンと、1種類以上の式IVのメラミン誘導体とが、例えばボールミル、撹拌媒体ミル、ディスペンサー、回転円板式撹拌機、バスケットミル中で混合される。このような装置としては、Getzmann社製又はSkendex社製のもの等が使用可能である。
【0087】
更に本発明では、上記過分岐ポリウレタン又は変性過分岐ポリウレタンを用いた記録流体の製造方法が提供される。本発明の方法は、1種類以上の過分岐ポリウレタン又は1種類以上の変性過分岐ポリウレタンと、水と、1種類以上の微分散状の無機又は有機着色料と、必要に応じて、一般式IVの1種類以上のメラミン誘導体と、必要に応じて助剤とを混合する工程を含む。
【0088】
更に、本発明は、本発明の分散バインダーを用いる着色料調製品の製造方法、及び本発明の分散バインダー及び/又は着色料調製品を用いた記録流体の製造方法を提供する。
【0089】
本発明の着色料調製品は、本発明の分散バインダーと、1種類以上の微分散状の無機又は有機着色料とを、ボールミル等において混合する。本発明の着色料調製品は、本発明の分散バインダーを単離せずに、上記過分岐ポリウレタン又は上記変性過分岐ポリウレタンと、一般式IVの1種類以上のメラミン誘導体、水、及び1種類以上の水溶性の乏しい着色料をボールミル等で混合することにより製造することが好ましい。本発明の分散バインダーは、本発明の着色料調製品の製造中に、現場で生成する。ボールミル処理された本発明の着色料調製品は、グラインドとしても公知である。
【0090】
本発明の着色料調製品、及び分散バインダーは、水と、微分散状の有機又は無機着色料、例えば、好ましくは水及び/又は水−溶媒混合物に実質的に不溶であり、ドイツ標準規格DIN55944に定義された顔料を含む。顔料の代わりにバット染料及び分散染料を用いてもよい。本発明の着色料混合物は、着色料混合物を含んでもよいが、1種類の着色料を含むことが好ましい。増白剤として、顔料調製品は、顔料と似通った色合いを有する染料、特に直接染料、酸性染料又は反応染料を含んでもよい。
【0091】
以下に、本発明に用いられる着色料の好ましい例を示す。
【0092】
有機顔料:
モノアゾ顔料: C.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントオレンジ5、13、36及び67、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、8、9、12、17、22、23、31、48:1、48:2、48:3、48:4、49,49:1、52:1、52:2、53、53:1、53:3、57:1、63、112、146、170、184、210、245及び251、C.I.ピグメントイエロー1、3、73、74、65、97、151及び183、
ジアゾ顔料: C.I.ピグメントオレンジ16、34及び44、C.I.ピグメントレッド144、166、214及び242、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、16、17、81、83、106、113、126、127、155、174、176及び188、
アンタンスロン顔料: C.I.ピグメントレッド168(C.I.バットオレンジ3)
アントラキノン顔料: C.I.ピグメントイエロー147及び177、C.I.ピグメントバイオレット31、
アントラピリミジン顔料: C.I.ピグメントイエロー108(C.I.バットイエロー20)、
キナクリドン顔料: C.I.ピグメントレッド122、202及び206、C.I.ピグメントバイオレット119,
キノフタロン顔料: C.I.ピグメントイエロー138、
ジオキサジン顔料: C.I.ピグメントバイオレット23及び37、
フラバントロン顔料: C.I.ピグメントイエロー24(C.I.バットイエロー1)、
インダントロン顔料: C.I.ピグメントブルー60(C.I.バットブルー4)及び64(C.I.バットブルー6)、
イソインドリン顔料: C.I.ピグメントオレンジ69、C.I.ピグメントレッド260、C.I.ピグメントイエロー139及び185、
イソインドリン顔料: C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントレッド257及び260、C.I.ピグメントイエロー109、110、173及び185、
イソビオラントロン顔料: C.I.ピグメントバイオレット31(C.I.バットバイオレット1)、
金属錯体顔料: C.I.ピグメントイエロー117、150及び153、C.I.ピグメントグリーン8、
ペリノン顔料: C.I.ピグメントオレンジ43(C.I.バットバイオレット7)、C.I.ピグメントレッド194(C.I.バットレッド15)、
ぺリレン顔料: C.I.ピグメントブラック31及び32、C.I.ピグメントレッド123、149、178、179(C.I.バットレッド23)、190(C.I.バットレッド29)及び224、C.I.ピグメントバイオレット29、
フタロシアニン顔料: C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6及び16、C.I.ピグメントグリーン7及び36、
ピラントロン顔料: C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントレッド216(C.I.バットオレンジ4)、
チオインジゴ顔料: C.I.ピグメントレッド88及び181(C.I.バットレッド1)、C.I.ピグメントバイオレット38(C.I.バットバイオレット3)、
トリアリールカルボニウム顔料: C.I.ピグメントブルー1、61及び62、C.I.ピグメントグリーン1、C.I.ピグメントレッド81、81:1及び169、C.I.ピグメントバイオレット1、2、3及び27、C.I.ピグメントブラック1(アニリンブラック)、
C.I.ピグメントイエロー101(アルダジンイエロー)、
C.I.ピグメントブラウン22、
バット染料(上記の他に)
C.I.バットイエロー2、3、4、5、9、10、12、22、26、33、37、46、48、49及び50、
C.I.バットオレンジ1、2、5、9、11、13、15、19、26、29、30及び31、
C.I.バットレッド2、10、12、13、14、16、19,21、31、32、37、41、51、52及び61、
C.I.バットバイオレット2、9、13、14、15、17及び21、
C.I.バットブルー1(C.I.ピグメントブルー66)、3、5、10、12、13、14、16、17、18、19、20、22、25、26、29、31、35、41、43、64、65、66、72及び74、
C.I.バットグリーン1、2、3、5、7、8、9、13、14、17、26、29、30、31、32、33、40、42、43、44及び49、
C.I.バットブラウン1、3、4、5、6、9、11、17、25、32、33、35、38、39、41、42、44、45、49、50、55、68、72、73、80、81、82、83及び84、
C.I.バットブラック1、2、7、8、9、13、14、16、19、20、22、25、27、28、29、30、31、32、34、36、56、57、58、63、64及び65、
【0093】
無機顔料:
白色顔料: 二酸化チタン(C.I.ピグメントホワイト6)、亜鉛華、ピグメントグレード酸化亜鉛、硫化亜鉛、リトポン、リードホワイト、
黒色顔料: 酸化鉄黒(C.I.ピグメントブラック11)、鉄マンガニーズブラック、スピネルブラック(C.I.ピグメントブラック27)、カーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)、
有色顔料: 酸化クロム、酸化クロム水和物グリーン、クロムグリーン(C.I.ピグメントグリーン48)、コバルトグリーン(C.I.ピグメントグリーン50)、ウルトラマリングリーン、コバルトブルー(C.I.ピグメントブルー28及び36)、ウルトラマリンブルー、アイロンブルー(C.I.ピグメントブルー27)、マンガニーズブルー、ウルトラマリンバイオレット、コバルトバイオレット及びマンガニーズバイオレット、酸化鉄赤(C.I.ピグメントレッド101)、スルホセレン化カドミウム(C.I.ピグメントレッド108)、モリブデンレッド(C.I.ピグメントレッド104)、ウルトラマリーンレッド、
酸化鉄ブラウン、ミックスブラウン、スピネル及びコランダム相(C.I.ピグメントブラウン24、29及び31)、クロムオレンジ、
酸化鉄黄(C.I.ピグメントイエロー42)、ニッケルチタニウムイエロー(C.I.ピグメントイエロー53、C.I.ピグメントイエロー157及び164)、クロムチタンイエロー、硫化カドミウム及び硫化カドミウム亜鉛(C.I.ピグメントイエロー37及び35)、クロムイエロー(C.I.ピグメントイエロー34)、亜鉛黄、クロム酸アルカリ土類金属塩、ネープルイエロー、バナジン酸ビスマス(C.I.ピグメントイエロー184)、
干渉顔料: 被覆金属小板を基礎とする金属効果を有する顔料、酸化金属で被覆された雲母小板パールを基礎とする光沢顔料、液晶顔料。
【0094】
本発明における好ましい顔料は、モノアゾ顔料(特にレーキBONS顔料、ナフトールASピグメント)、ジスアゾ顔料(特にジアリール黄色顔料、ビスアセトアセトアニリド顔料、ジアゾピラゾロン顔料)、キナクリドン顔料、キノフタロン顔料、ペリノン顔料、フタロシアニン顔料、トリアリールカルボニウム顔料(アルカリブルー顔料、レーキローダミン、錯体アニオンとの染料塩)、イソインドリン顔料及びカーボンブラック。
【0095】
特に好ましい顔料の例は、特にC.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントブルー15:3及び15:4、C.I.ピグメントブラック7、C.I.ピグメントオレンジ5、38及び43、及びC.I.ピグメントグリーン7。
【0096】
以下の顔料の組み合わせが特に推奨される。
C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントブルー15:3、及びピグメントブラック7、
C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントバイオレット122、C.I.ピグメントブルー15:3、15:4及びピグメントブラック7、
C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントブルー15:3、及びピグメントブラック7、C.I.ピグメントオレンジ43及びC.I.ピグメントグリーン7、
C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントブルー15:3又は15:4、C.I.ピグメントブラック7、ピグメントオレンジ5、及びピグメントグリーン7、
C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントブルー15:3又は15:4、C.I.ピグメントブラック7、ピグメントオレンジ38、及びピグメントグリーン7、
C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントブルー15:3又は15:4、C.I.ピグメントブラック、C.I.ピグメントオレンジ43、及びC.I.ピグメントグリーン7。
【0097】
実質的に不溶性の有用な染料及び上述のバット染料の例として、特に、酸性基又はイオン性基を含まないアゾ、アントラキノン、キノフタロン、ベンゾジフラン、メチン及びアザメチン染料が挙げられる。
【0098】





【0099】
また、基本構造が下式Aで示される公知の置換ベンゾジフラノン染料も適している。
【0100】
【化9】

【0101】
この染料は、いずれか又は双方のフェニル環に置換基を有しても良い。適する置換基X1及びX2の例は、ハロゲン、非隣接酸素原子による中断を有するか、又は有さないアルキル、酸素原子による中断と、アルキル部分の置換とを有するか又は有さないアルコキシ、ヒドロキシ、置換又は非置換アミノ、シアノ、ニトロ及びアルキルカルボニルである。
【0102】
有用な染料としては、更に以下の式B〜Eで示される染料が含まれる。
【0103】
【化10】

【0104】
上述の着色料及び他の着色料の例は、W.Herbst、K. Hunger, Industrial Organic Pigments, VCH Weinheim, 1993に記載されている。
【0105】
本発明の着色料調製品は、通常0.01質量%〜20質量%、好ましくは0.2質量%〜10質量%、更に好ましくは1質量%〜6質量%の着色料を含み、1質量%〜6質量%の範囲の使用量が特に好ましい。
【0106】
分散着色料は非常に微細に分散させる必要がある。着色料粒子は、好ましくは95%、更に好ましくは99%が平均粒径1μmであり、好ましくは0.5μmであり、更に好ましくは0.2μm以下とされる。平均粒径は0.05μm以上であると好ましい。
【0107】
水は本発明の着色料調製品における主要成分であり、イオン交換体の使用等により得られる脱ミネラル化された水が好ましく使用される。含水率は、通常の場合には30〜95質量%とされている。本発明の着色料調製品における含水率は40〜60質量%であることが好ましい。
【0108】
本発明の着色料調製品は、通常1〜40質量%、好ましくは5〜30質量%の分散バインダーを含む。
【0109】
本発明の着色料調製品は、他の助剤を含んでもよい。
【0110】
本発明の着色料調製品は、1種類以上の有機溶媒を含んでいても良い。低分子量のポリテトラヒドロフランは好ましい助剤であり、単独でも使用可能であるが、1種類以上の高沸点水溶性又は水混和性有機溶媒との混合物として使用することが好ましい。
【0111】
好ましいテトラヒドロフランは、一般に平均分子量Mwが150〜500g/モル、好ましくは200〜300g/モル、更に好ましくは約250g/モルである。
【0112】
ポリテトラヒドロフランは、テトラヒドロフランの陽イオン重合により公知方法で製造可能である。この場合の生成物は直鎖状ポリテトラメチレングリコールとなる。
【0113】
他の有機溶媒とともにポリテトラヒドロフランが混合物中に存在する場合には、本発明で用いられる溶媒は高沸点溶媒とされ、このため水に溶解するか、又は水と混和性の水保持性有機溶媒が用いられる。高沸点溶媒とは通常100℃を超過する沸点を有する。
【0114】
適する溶媒は、多価アルコール、好ましくは、炭素原子数2〜8、特に3〜6の分岐状又は非分岐状多価アルコール、好ましくはエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、グリセロールである。
【0115】
有用な溶媒の例には、更にポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール(これは低分子量ポリマーとも解される(二量体、三量体、四量体))、及びこれらのモノアルキル(特にC1−C6アルキル、特にC1−C4アルキル)エーテルである。平均分子量100〜1500g/モル、特に200〜800g/モル、主に300〜500g/モルのポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールであると好ましい。具体例は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジ−、トリ−,及びテトラ−1,2−及び−1,3−プロピレングリコール、及びジ−、トリ−、及びテトラ−1,2−及び−1,3−プロピレングリコールモノメチル、モノエチル、モノプロピル及びモノブチルエーテルである。
【0116】
この他の使用可能な溶媒の例は、ピロリドン及びアルキル鎖が1〜4、好ましくは1又は2個の炭素原子を含むN−アルキルピロリドンである。適するアルキルピロリドンの例は、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン及びN−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドンである。
【0117】
特に好ましい溶媒の例は、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(Mwは300から500g/モル)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ピロリドン、N−メチルピロリドン及びN−(2−ヒドロキシエチル)−ピロリドンである。
【0118】
ポリテトラヒドロフランは、1種類以上(例えば2、3又は4)の上記溶媒と混合してもよい。
【0119】
本発明の着色料調製品は、通常0.1〜40質量%、好ましくは2.5〜30質量%、更に好ましくは5〜25質量%、最も好ましくは10〜20質量%の溶媒成分を含む。
【0120】
上記の特に好ましい溶媒の組合わせを含む溶媒成分に尿素を(通常は着色料調製品の質量に対して0.5〜3質量%の量で)添加すると好ましく、これにより溶媒の上記の水保持効果を向上させることができる。
【0121】
本発明の着色料調製品は特に水性インクジェットインクに用いられているタイプ、印刷産業及び塗料産業で用いられるタイプの他の助剤を含んでも良い。この様な助剤の例には、保存料、例えば1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(Avecia Lim.社製のProxelシリーズとして販売)、及びそのアルカリ金属塩、グルタルジアルデヒド及び/又はテトラメチロールアセチレンジウレア、Protectols(登録商標)、酸化防止剤、脱ガス剤/脱泡剤(例えばアセチレンジオール及びエトキシル化アセチレンジオール(アセチレンジオール1モルあたり、通常20〜40モルのエチレンオキシドを含み、分散効果を生ずる))、粘度調整剤、流動化剤、湿潤剤(例えばエトキシル化又はプロポキシル化された脂肪又はオキソアルコール、プロピレンオキシド/エチレンオキシドブロック共重合体、オレイン酸又はアルキルフェノールのエトキシラート、アルキルフェノールエーテルスルファート、アルキルポリグルコシド、アルキルホスホナート、アルキルフェニルホスホナート、アルキルホスファート、アルキルフェニルホスファート又は好ましくはポリエーテルシロキサン共重合体、特にアルコキシル化2−(3−ヒドロキシプロピル)へプタメチルトリシロキサン(通常7〜20、好ましくは7〜12のエチレンオキシド単位からなるブロックと、2〜20、好ましくは2〜10のプロピレンオキシド単位からなるブロックとを有し、着色料調製品中に0.05〜1質量%の量で添加可能である)に基づく湿潤海面活性剤)、沈降防止剤、光沢改良剤、滑剤、粘着性改良剤、抗剥離剤(anti-skinning agent)、つや消し剤、乳化剤、安定剤、撥水剤、光制御剤、風合い改良剤、帯電防止剤、塩基、例えばトリエタノールアミン、又は酸、例えばカルボン酸(乳酸又はクエン酸等)(pHの調節用)がある。この様な助剤が本発明の着色料調製品の一部として用いられる場合には、着色料調製品の質量に対し、助剤の総量を通常2質量%、特に1質量%とする。
【0122】
本発明の記録流体は、Haake社製回転式粘度計を用い、ドイツ標準規格DIN53019-1に準じて測定した動的粘度が通常は1〜20mPa.s、好ましくは2〜15mPa.sとされる。
【0123】
本発明の着色料調製品の表面張力は、Kruess社製、K10デジタル張力計を用いて室温にて測定した場合、通常24〜70mN/mの範囲、特に30〜60mN/mの範囲にある。本発明の着色料調製品のpHは、Knick社製の736pHメータを用いて使用した場合、通常5〜10、好ましくは7〜9の範囲にある。
【0124】
本発明の記録流体は、特に、慣用の高分子バインダーを含む記録流体と比較した場合に、低い動的粘度を有することが好ましい。
【0125】
本発明の記録流体は、1種類以上の過分岐ポリウレタンと、水と、1種類以上の無機又は有機着色料と、式IVで表される1種類以上のメラミン誘導体と、場合により添加剤とを混合することにより調製され、これにより上記グラインドが得られる。しかしながら、1種類以上のメラミン誘導体を、水による希釈を行うまで、すなわちインクの最終調製品に添加しないことも可能である。
【0126】
本発明では、更に、本発明の着色料調製品を、記録流体の製造、特にインクジェット印刷のインクを製造するために使用する方法、及び本発明の着色料調製品から記録流体を製造する方法が提供される。更に、本発明では、本発明の着色料調製品を用いて、記録流体を製造する方法、及びこれにより製造された記録流体を提供する。
【0127】
本発明の記録流体は、本発明の着色料調製品から、これを水で希釈することにより製造される。水の他に、上述した溶媒及び助剤を添加してもよい。
【0128】
本発明の着色料調製品と、同調製品から得られた本発明の記録流体は、インクジェットインクセットを製造するために特に好ましく用いられる。各記録流体における特定の着色料のレベルは、所定要件(例えばトリクロミズム)に適合しなければならず、2〜3の印刷跡、及び単純な最適化により測定される。
【0129】
更に、本発明では、本発明による印刷媒体を使用したインクジェット法によりシート状または三次元形状の基体の印刷を行う方法が提供される。これにより本発明の1種類以上の記録流体、特にインクが基体上に印刷される。
【0130】
インクジェット法では、通常、水性インクを小滴状として基体に直接噴霧する。インクジェット法の一種にコンティニュアス法があり、同方法ではインクを一定割合で加圧してノズルを通過させ、印刷パターンに応じた電場により、ジェットを基体に向ける。更に、インタラプテッド又はドロップ・オン・デマンド法があり、この方法ではカラードットを得るべき場所にのみインクが噴出される。ドロップ・オン・デマンド法ではピエゾ電気結晶又は加熱中空ニードル(バブルジェット(登録商標)法)のいずれかを用いてインク組成物に圧力付与し、これによりインク液滴を噴出する。これらの技術は、Text. Chem. Color 19 (1987), No. 8, 23-29及び21(1989)、No.6、27-32に記載されている。
【0131】
本発明のインクは、コンティニュアスインクジェット法又はピエゾ電気結晶を用いる方法におけるインクとして好ましく使用される。
【0132】
インクジェット法により印刷された部分を、プリントを定着させ、かつ分散バインダー組成物を架橋させるために熱処理する。スチーム又は熱空気等による加熱が可能である。通常の温度範囲は、150℃〜180℃であり、5〜8分間施される。熱空気を用いる場合、プリントされた繊維を180℃〜200℃で約1分間処理するとよい。
【0133】
本発明の他の実施の形態には、熱により開始する加熱処理、又は好ましくは紫外線領域の化学線による架橋が含まれる。
【0134】
有用な基体材料の例を以下に示す。
【0135】
被覆(塗幕)を有する又は有さないセルロース、例えば紙、ボール紙、厚紙、木材及び木製基材、
被覆を有する又は有さない金属材料、例えばアルミニウム、鉄、銅、銀、金、亜鉛もしくはこれらの合金から成るフォイル、シート、又は半加工品、
被覆を有する又は有さないシリカ系材料、例えばガラス、磁器、又はセラミック、
あらゆる種類の高分子材料、例えばポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、メラミン樹脂、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリカルボナート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン及び対応の共重合体及びブロック共重合体、生分解可能ポリマー及び天然ポリマー、例えばゼラチン、
繊維材料、例えば繊維、ヤーン、糸、ニット、織布、不織布、及びポリエステル、変性ポリエステル、ポリエステルブレンド繊維、セルロース誘導体(綿、綿混合繊維、ジュート、フラックス、麻及びラミー、ビスコース、ウール、シルク、ポリアミド、ポリアミド混合繊維、ポリアクリロニトリル、トリアセタート、アセタート、ポリカルボナート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステルマイクロファイバー及びガラスファイバー繊維からなる衣類、
皮革(天然及び人工の双方)、平坦皮革、ナパ皮革、またはスエード皮革、
食料品及び化粧品。
【0136】
本発明のインクは、有利な施与特性、特に良好な印刷開始性能、及び良好な持続的使用挙動(kogation)、及び特に好ましいとされる溶媒の組合わせを用いる場合には特に、良好な乾燥特性に関して優れている。本発明のインクによると、高品質、すなわち高光沢及び色合い(明暗の程度)、及び高い摩耗堅牢性、光堅牢度、水堅牢度及び湿潤摩耗堅牢度を有する印刷イメージが得られる。本発明のインクは被覆を有する又は有さない紙及び繊維の印刷に特に有効である。繊維を印刷するための当該印刷方法は、非常に迅速に、単位時間当たり高処理量で行われるため、特に有効である。数回の洗浄後もプリントの定着が良好であることがわかっている。同様に、一度又は繰り返し曲げ、たたみ、または折り目(しわ)をつけられた基体でも、定着は良好である。
【0137】
本発明によると、本発明の上述のいずれかの方法により印刷された基体、特に繊維基体が提供され、鮮やかな(crisply)プリント画像又は図形が優れた定着性を有して得られるという顕著な特徴がある。
【0138】
以下の実施例により本発明を説明する。特に言及しないかぎり、使用した溶媒は標準的方法により行われる。これについては、例えばAutorenkollektive Organikum、第15版、第3増刷、VEB Verlag der Wissenschaften、ライプツィッヒ、1984、第F章:Reagents Appendix (782-809ページ)を参照されたい。窒素は、CaCl2を装填した乾燥塔とブルーゲルを装填した乾燥塔とを通過させることにより乾燥させた。
【0139】
1.合成実施例
1.1 平均NCO官能価7の過分岐ポリイソシアナートの製造
撹拌子、滴下漏斗、内部温度計及びガス導入管を具備する反応容器に、乾燥窒素ガスを通過させながら、1000gのイソホロンジイソシアナートを装填し、次いで撹拌下、1分間で、300gのトリメチロールプロパン(1300gの乾燥した酢酸ブチルに溶解)を添加した。0.2gのジラウリル酸ジブチル錫を計量給送した後、反応混合物を50℃に加熱し、DIN53185による滴定によりNCO含有率の低下が観察される間、同温度で撹拌した。NCO含有率が7.3質量%になった段階で、反応生成物の平均NCO官能価は2であり、平均OH官能価は1であった。添加生成物に対し、650gのBASONAT(登録商標)HI 100 (650gの乾燥した酢酸ブチルに溶解)を添加し、混合物を70℃で加熱し、同温度で3時間撹拌した。最終生成物のNCO含有率は5.9質量%であり、25℃の粘度は920mPa.sであった。ポリイソシアナートの平均分子量は2609g/モル、平均NCO官能価は約7であった。
【0140】
1.2 上記1.1で得られた過分岐ポリイソシアナートと、Pluriol(登録商標)A2000E及びその他の成分との反応
撹拌子、温度計、及び還流冷却器を具備する500mlの四頸フラスコに、100mlのテトラヒドロフラン、上記1.1で得られた57.1g(10.6mmol)の高分岐ポリイソシアナート、及び99.5g(53.3mmol)のPluriol(登録商標)A 2000 Eを装填した。この混合物のイソシアナート含有率は1.20%であった。次いでフィード1(下記)を撹拌下に添加した。2滴のジラウリル酸ジブチル錫を2滴(=50mg)添加した後、バッチを80℃に加熱し、イソシアナート基がすべて反応するまでこの温度を保持した。次いで200mlの蒸留水を添加し、テトラヒドロフラン(THF)を減圧下(150ミリバール)に留去した。
【0141】
フィード1は、
131.76g(22.4mmol)のポリビニルピロリドン、
BASF社製製品Luviskol(登録商標)K17を50mlのTHFに溶解した溶液を用いた。
【0142】
1.3 実施例1.2を繰り返した。フィード1として、
6.04g(22.4mmol)のステアリルアミンを50mlのTHFに溶解した溶液を用いた。
【0143】
1.4 過分岐ポリウレタン1.4の合成
撹拌子、内部温度計、滴下漏斗、ガス導入管を具備する反応容器に、1000gのイソホロンジイソシアナート(IPDI)を、窒素ブランケット下に23℃で装填し、次いで300gのトリメチロールプロパン(TMP)(1300gの無水2−ブタノンに溶解したもの)を1分間添加した。0.2gのジラウリル酸ジブチル錫を添加した後、反応混合物を50℃に加熱し、DIN53185による滴定でNCO含有率の低下が観察される間、同温度で撹拌した。NCO含有率が5.4質量%になった時点で、147gの2,4−トリレンジイソシアナート(TDI)を添加し、混合物を60℃に加熱し、同温度で一時間撹拌した。反応終了後、溶液のNCO含有率は5.7質量%であった。計算によるポリイソシアナートの平均分子量は2420g/モルであり、平均官能価は、1モルあたり5.9NCOであった。次いで、50ミリバール、50〜70℃で2−ブタノンを留去した。
【0144】
1.5 過分岐ポリウレタンアンモニウム塩1.5の合成
撹拌子と滴下漏斗を具備する反応容器に、実施例1.4で得られた150gのポリイソシアナートを混合した。次いで、18.8gのβ−アラニン、100gの蒸留水、8.4gの固体水酸化ナトリウム及び50gのアセトンからなる溶液を、激しく撹拌しながら30秒にわたり添加し、室温にて30分間撹拌した。次いで、回転蒸発機中、減圧下に生成物からアセトンと2−ブタノンを除去し、1500mlの水に溶解し、過剰量の0.1N塩酸水溶液を添加して沈殿させた。吸引濾過と、200mlの水による一回の洗浄の後、生成物を減圧下に50℃で乾燥させた。酸基とアクリル酸性二重結合を有する乾燥したポリウレタンを18gの25%アンモニア水溶液と混合し、水で希釈し、50質量%のポリウレタンアンモニウム塩1.5の水溶液を得た。
【0145】
1.6 過分岐ポリウレタンアンモニウム塩1.6の合成
撹拌子、滴下漏斗、内部温度計及びガス導入管を具備する反応容器に、実施例1.4で得られた150gのポリイソシアナートを、23℃で、8gのアクリル酸ヒドロキシエチル及び0.05gのジラウリル酸ジブチル錫と混合し、60℃に加熱し、この温度で3時間撹拌した(これらの処理はすべて窒素ブランケット下で行った)。次いで23℃に冷却して、150mlの無水アセトンと混合した。更に、12.3gのβ−アニリン、100gの蒸留水、5.5gの固体水酸化ナトリウム、及び50gのアセトンから成る溶液を激しく撹拌しながら30秒にわたり添加し、反応混合物を室温にて30分撹拌した。次いで、減圧下の回転式蒸留器中、生成物からアセトンと2−ブタノンを除去し、1500mlの水に溶解し、過剰量の0.1N塩酸水溶液を添加して沈殿させた。吸引濾過と、200mlの水による一回の洗浄の後、生成物を減圧下に50℃で乾燥させた。酸基とアクリル性二重結合を有する乾燥したポリウレタンを18gの25%アンモニア水溶液と混合し、水で希釈し、20質量%のポリウレタンアンモニウム塩1.6の水溶液を得た。
【0146】
1.7 過分岐ポリウレタンアンモニウム塩1.7の合成
撹拌子、滴下漏斗、内部温度計及びガス導入管を具備する反応容器に、実施例1.4で得られた150gのポリイソシアナートを、窒素ブランケット下、23℃で導入し、150mlの無水アセトンと混合した。次いで、室温下に8.9gのブチルアミンと10gのアセトンの溶液を30℃を超過しないようにゆっくりと添加した。この後、12.3gのβ−アラニン、100gの蒸留水、5.5gの固体の水酸化ナトリウム、及び50gのアセトンからなる溶液を、激しく撹拌しながら、30秒にて添加し、反応混合物を室温にて30分間撹拌した。次いで、減圧下の回転式蒸留器中、生成物からアセトンと2−ブタノンを除去し、1500mlの水に溶解し、過剰量の0.1N塩酸水溶液を添加して沈殿させた。吸引濾過と、200mlの水による一回の洗浄の後、生成物を減圧下に50℃で乾燥させた。酸基を有する乾燥したポリウレタンを19gの25%アンモニア水溶液と混合し、水で希釈し、20質量%のポリウレタンアンモニウム塩1.7の水溶液を得た。
【0147】
1.8 過分岐ポリウレタンアンモニウム塩1.8の合成
撹拌子、滴下漏斗、内部温度計及びガス導入管を具備する反応容器に、672gのヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)と672gの無水ジメチルアセトアミド(DMAc)とを、窒素ブランケット下、23℃で撹拌した。次いで、268gのトリメチロールプロパン、268gのジメチロールプロパン酸、及び1072gの無水DMAcの溶液を、十分な撹拌下に10分にわたり添加した。反応混合物を70℃に加熱し、DIN53185による滴定でNCO含有率の低下が観察される間、同温度で撹拌した。混合物のNCO含有率が2.0質量%になった時点で、400gのPluriol(登録商標)E400(二官能性ポリエチレングリコール、平均分子質量400g/モル、BASF社製)を添加した後、混合物を60℃で3時間撹拌した。この間、混合物のNCO含有率は0質量%に低下した。次いで、ジャケット温度140℃、圧力1.4ミリバールの薄膜蒸発器で、生成物から溶媒を除去した。
【0148】
25質量%のアンモニア水溶液を用いて無色の粘稠な生成物のpHを8に調整し、次いで水で希釈して50質量%の溶液を得た。
【0149】
2.過分岐ポリウレタンの分散性テスト
一般的操作
以下の成分を、50mlのガラスボトルに添加した。
【0150】
2.25gの過分岐ポリウレタン、
1.13gの1,2−プロピレングリコール、
0.11gのProxel(登録商標)XL2(殺菌剤)、
0.02gのEtingal(登録商標)A(消泡剤)、
15.83gの水。
【0151】
ボトルを密閉し、全成分が均一に分散又は溶解されるまで、手作業により振とうした。22.5gの直径250〜420μmガラス球体と、次いで2.25gの有色顔料(Hostaperm(登録商標)E-WD)とを添加した。再びボトルをしっかりと密閉し、混合物をモデルBAS 20 Skandex ミキサー中、2時間分散させた。この後、DTS 5100 Malvern Zetasizer中、光分散により分散液の粒径を測定した。
【0152】
【表1】

【0153】
非常に低い多分散度と、非常に小さい粒径の双方を有することが望ましい。
【0154】
[比較例]
比較例1 WO 91/14515、35ページ、実施例Cにより得られたポリウレタン.....ランダム、非過分岐構造
比較例2 米国特許第5,368,944号明細書、実施例1.1により製造されたポリウレタン
比較例3 米国特許5,368,944号明細書、実施例2により製造されたポリウレタン
【0155】
3.過分岐ポリウレタンとメラミン樹脂とから得られる現場で生成した分散バインダーの調製及び試験
以下の成分を、50mlのガラスボトル中、添加した。
【0156】
2.25gの過分岐ポリウレタン(100%)、
1.13gの1,2−プロピレングリコール、
0.11gのProxel(登録商標)XL2 (殺菌剤)、
0.02gのEtingal(登録商標)A、
15.75gの水、
0.99gのCymel(登録商標)327(メラミン誘導体)。
【0157】
ボトルを密閉し、全成分が均一に分散又は溶解されるまで、手作業により振とうした。次いで、22.5gの直径250〜420μmガラス球体と、2.25gの有色顔料(P.R. 122)とを添加した。再びボトルをしっかりと密閉し、混合物をモデルBAS 20 Skandex ミキサー中、2時間分散させた。この後、DTS 5100 Malvern Zetasizer中、光分散により分散液の粒径を測定した。
【0158】
【表2】

【0159】
比較例2.2、2.4、及び2.6は、本発明において意味する分散バインダーではなく、過分岐ポリウレタンである。
【0160】
第二コラムは、当該過分岐ポリウレタンを示しており、これを分散剤として使用しても(比較例2.2、比較例2.4、及び比較例2.6)、本発明の分散バインダーの製造において現場で生成するものであってもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過分岐ポリウレタン、又は
1種類以上の過分岐ポリウレタンと、一般式I
【化1】

で表され、式中
Uが水素、C1−C18アルキル、C7−C13アリールアルキル、C6−C14アリール及びラジカル開始剤分子の残基のいずれかを示し、
Mがそれぞれ同一又は異なるモノマー単位を示し、
yが10〜100000の整数を示し、
Tが、顔料に対して親和性を有する少なくとも1個の基を有する過分岐ポリウレタン、または変性過分岐ポリウレタンのNCO基又はOH基と反応する官能基を示す、ポリマーと、を反応させることにより得られる変性過分岐ポリウレタンを、式IV
【化2】

で表され、式中
2〜R7は同一であっても異なってもよく、それぞれ水素、CH2−OR8、CH(OR82、及びCH2−N(R82から選択され、
8は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ
水素、
分岐又は非分岐C1−C12アルキル、
(-CH2-CH2-O)m-H、(-CHCH3-CH2-O)m-H、(-CH2-CHCH3-O)m-H、(-CH2-CH2-CH2-CH2-O)m-Hから選択されたアルコキシアルキレンを示し、
mは1〜20の整数を示す、1種類以上のメラミン誘導体と、混合することにより得られる分散バインダー。
【請求項2】
過分岐ポリウレタン又は変性過分岐ポリウレタンを、式IVの1種類以上のメラミン誘導体と混合することを特徴とする、請求項1に記載の分散バインダーの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の分散バインダー、水、及び微分散状の無機又は有機着色料を含む着色料調製品。
【請求項4】
請求項1に記載の分散バインダー、水、及び微分散状の無機又は有機着色料を混合する工程を含むことを特徴とする請求項3に記載の着色料調製品の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の分散バインダーを、水、及び1種類以上の微分散状の無機又は有機着色料、及び場合により助剤と共に密に混合する工程を含むか、又は請求項3に記載の着色料調製品を水で希釈する工程を含むこと特徴とする記録流体の製造方法。
【請求項6】
シート状又は三次元形状の基板を、請求項5に記載の記録流体を用いて、インクジェット法により印刷する方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法により得られるシート状及び三次元形状の基板。

【公開番号】特開2007−277562(P2007−277562A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−112525(P2007−112525)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【分割の表示】特願2003−587889(P2003−587889)の分割
【原出願日】平成15年4月15日(2003.4.15)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】