説明

過剰ブレブ形成Shigella株

過剰ブレブ形成Shigella株を、Tol−Palシステムの1つまたはそれ以上の成分を破壊することによって産生する。これらの株由来のブレブは、ワクチン接種のための有用な免疫原である。これらのブレブ中で見出される個々のタンパク質も、免疫原として使用し得る。本発明は、TolA、TolB、TolQ、TolR、およびPalタンパク質のうちの4つ以下を発現する、Shigella細菌を提供する。従って、天然の5つのタンパク質のTol−Palシステムから、少なくとも1つのタンパク質が欠けており、これにより、培地中での増殖の間に、5つのTol−Palタンパク質を全て発現する同じ細菌より、より多くの量の外膜ブレブを培地に放出する細菌を生じる。TolRは発現されないが、他の4つのタンパク質は発現され得ることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、Shigella種に対する免疫の分野内にある。
【背景技術】
【0002】
背景技術
Shigellaは、グラム陰性非運動性通性嫌気性バチルスであり、4つの血清群:S.dysenteriae、S.flexneri、S.boydii、およびS.sonneiに分類される。それらは細菌性赤痢(shigellosis)(細菌性赤痢(bacillary dysentery))を引き起こす。
【0003】
臨床的細菌性赤痢の特徴は、発熱、吐き気、食欲不振、脱水症、粘液膿性および出血性下痢、ならびにテネスムスを伴う急性直腸結腸炎である。Shigellaによる赤痢は、風土性であり、そして発展途上国において数百万の病気エピソードを引き起こす。例えば、1年あたり1億6500万例のShigella下痢が存在すると推定され、そのうちの99%は発展途上国で起こり、そして69%は5歳未満の小児で起こる。細菌性赤痢の罹患率および死亡率は、発展途上国の小児において特に高い。
【0004】
Shigellaワクチンに対する既存のアプローチは、非特許文献1(参考文献1)において概説され、これは経口免疫化のための生の弱毒化株、注射のための結合型O糖、鼻腔内使用のためのプロテオソーム(Shigella LPSが結合した髄膜炎菌外膜小胞)、鼻腔内使用のためのinvaplex(IpaB、IpaCおよびLPSを含む、Shigellaの細胞内抽出物)、および無毒化LPSを含むmsbB−veから調製した核タンパク質−リボソーム複合体に基づく。これらのワクチンのうちのいくつかは実地試験において有効であったが、複数のShigella血清型に対して保護するものはなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kweon,Curr Opin Infect Dis.(2008)21(3):313−8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Shigellaワクチンの調製において、特に複数の血清型に対して保護し得るワクチンの調製において有用な、さらなる改善された成分を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の開示
Shigellaは、細胞エンベロープの膨圧(turgour pressure)のために、増殖の間、外膜ブレブを自然に放出する。参考文献2において開示されるように、ブレブの放出は、細菌のエンベロープ構造に高度に依存する。本発明者らは、エンベロープ構造を乱すために、Tol−Palシステムが破壊されたShigellaの変異株を用いた。正常な増殖の間に、これらの変異株は、大量のブレブ(これは、免疫原性の外膜タンパク質が豊富である)をその培地に放出する。従ってこれらのブレブを免疫原として使用し得る。
【0008】
従って、本発明は、TolA、TolB、TolQ、TolR、およびPalタンパク質のうちの4つ以下を発現する、Shigella細菌を提供する。従って、天然の5つのタンパク質のTol−Palシステムから、少なくとも1つのタンパク質が欠けており、これにより、培地中での増殖の間に、5つのTol−Palタンパク質を全て発現する同じ細菌より、より多くの量の外膜ブレブを培地に放出する細菌を生じる。TolRは発現されないが、他の4つのタンパク質は発現され得ることが好ましい。
【0009】
本発明はまた、TolRタンパク質を発現しないShigella細菌を提供する。本発明はまた、ΔtolRΔgalU株のような、ShigellaのΔtolR株を提供する。
【0010】
本発明はまた、TolA、TolB、TolQ、TolR、およびPalタンパク質を発現するShigella細菌を提供し、ここでそのTolA、TolQ、TolR、および/またはPalタンパク質は、(a)細菌の内膜または外膜に位置し、ならびに(b)1つまたはそれ以上のアミノ酸配列変異を含み、そのため、培地中で増殖する場合に、当該変異を含まない同じ細菌と比較して、その細菌はより多い量の外膜ブレブを放出する。
【0011】
本発明はまた、そのTol−Palシステムの1つまたはそれ以上の成分が修飾を有するShigella細菌であって、修飾のため、培地中での増殖の間、その修飾を欠いている同じ細菌よりも、培地中により多くの量の外膜ブレブを放出し、ならびに(i)天然のShigellaリポ多糖および/または(ii)Shigella腸毒素を発現しない、Shigella細菌を提供する。
【0012】
本発明はまた、培地中で増殖した場合に、細菌が開始細菌より多くの量の外膜ブレブを培地中へ放出するように、開始細菌Tol−Palシステムの1つまたはそれ以上の成分をコードする遺伝子を修飾する工程を含む、過剰ブレブ形成(hyperblebbing)Shigella細菌を調製する方法を提供し、そしてここでその修飾は、開始細菌のtolA、tolB、tolQ、tolR、および/またはpal遺伝子の1つまたはそれ以上を変異させることを含む。その変異工程は、遺伝子を欠失させ得る。その方法はまた、細菌のリポ多糖または腸毒素の合成に必要なタンパク質をコードする遺伝子の修飾を含み得る。
【0013】
本発明はまた、本発明の細菌から単離されたか、またはそれから得ることができるブレブを提供する。これらのブレブは、Shigellaワクチンの成分として有用である。
【0014】
本発明はまた、細菌によるブレブの培地への放出を可能にする条件下で増殖させた、本発明の細菌を含む培地からブレブを分離する工程を含む、Shigellaブレブを調製するためのプロセスを提供する。このプロセスによって調製されたブレブを、Shigellaワクチンの成分として使用し得る。
【0015】
本発明はまた、細菌によるブレブの培地への放出を可能にする条件下で増殖させた、本発明の細菌を含む培地を提供する。ブレブを、この培地から精製し得る。
【0016】
本発明はまた、本発明の細菌の培養の間に、培地へ放出されるブレブを含む組成物を提供する。この組成物は、任意の生の細菌および/または細菌全体も含まない。この組成物および/またはその成分を、Shigellaワクチン調製のために使用し得る。
【0017】
本発明はまた、ブレブを含む組成物を提供し、ここでそのブレブは、本発明の細菌を増殖させた培地の、0.22μmのフィルターを通したろ過後に得ることができるろ液に存在する。この組成物および/またはその成分を、Shigellaワクチン調製のために使用し得る。
【0018】
本発明はまた、1つまたはそれ以上(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、または60)の、(a)配列番号8から67から選択されるアミノ酸配列からなるタンパク質;(b)配列番号8から67の1つと少なくともj%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ/または配列番号8から67のいずれか1つの少なくともn個の連続的なアミノ酸の断片を含むタンパク質、を含む、Shigellaブレブを提供し、ここでjは50またはそれ以上(例えば60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99)、nは7またはそれ以上(例えば8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれ以上)である。好ましい断片は、配列番号8から67の1つ由来のエピトープを含む。他の好ましい断片は、配列番号の少なくとも1つのエピトープを保持しながら、配列番号のC末端から1つまたはそれ以上(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、またはそれ以上)のアミノ酸、および/またはN末端から1つまたはそれ以上(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、またはそれ以上)のアミノ酸を欠く。他の断片は、1つまたはそれ以上のタンパク質ドメインを省略し、例えばシグナルペプチド等を欠く。
【0019】
60個のタンパク質が、本発明のブレブ内に存在すること、ならびにブレブに対して調製した血清と免疫反応性であることが確認された。従って個々のタンパク質を、ブレブと分離した、精製形態で免疫原性の成分として使用し得る。従って、本発明はまた、(a)1つまたはそれ以上(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、または60)のアミノ酸配列配列番号8から67を含むブレブタンパク質;(b)配列番号8から67の1つと少なくともj%の同一性を有し、かつ/または配列番号8から67のいずれか1つの少なくともn個の連続的なアミノ酸の断片を含むアミノ酸配列を含むブレブタンパク質、を含む、ブレブを含まない免疫原性組成物を提供し、ここでjは50またはそれ以上(例えば60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99)、nは7またはそれ以上(例えば8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれ以上)である。好ましい断片は、配列番号8から67の1つ由来のエピトープを含み、そしてより好ましい断片は、免疫原性の断片である。他の好ましい断片は、配列番号の少なくとも1つのエピトープを保持しながら、配列番号のC末端から1つまたはそれ以上のアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、またはそれ以上)、および/またはN末端から1つまたはそれ以上のアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、またはそれ以上)を欠く。他の断片は、1つまたはそれ以上のタンパク質ドメインを省略し、例えば膜貫通ドメイン、シグナルペプチド等を欠く。
【0020】
本発明はまた、1つまたはそれ以上(すなわち1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、または129)の、(a)配列番号8から136から選択されるアミノ酸配列からなるタンパク質;(b)配列番号8から136の1つと少なくともj%の同一性を有し、かつ/または配列番号8から136のいずれか1つの少なくともn個の連続的なアミノ酸の断片を含むアミノ酸配列を含むタンパク質、を含む、Shigellaブレブを提供し、ここでjは50またはそれ以上(例えば60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99)、nは7またはそれ以上(例えば8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれ以上)である。好ましい断片は、配列番号8から136の1つ由来のエピトープを含む。他の好ましい断片は、配列番号の少なくとも1つのエピトープを保持しながら、配列番号のC末端から1つまたはそれ以上のアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、またはそれ以上)、および/またはN末端から1つまたはそれ以上のアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、またはそれ以上)を欠く。他の断片は、1つまたはそれ以上のタンパク質ドメインを省略し、例えばシグナルペプチド等を欠く。
【0021】
129個のタンパク質が、本発明のブレブ内に存在すること、ならびにブレブに対して調製した血清と免疫反応性であることが確認された。従って個々のタンパク質を、ブレブと分離した、精製形態で免疫原性の成分として使用し得る。従って、本発明はまた、(a)1つまたはそれ以上(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、または129)のアミノ酸配列配列番号8から136を含むブレブタンパク質;(b)配列番号8から136の1つと少なくともj%の同一性を有し、かつ/または配列番号8から136のいずれか1つの少なくともn個の連続的なアミノ酸の断片を含むアミノ酸配列を含むブレブタンパク質、を含む、ブレブを含まない免疫原性組成物を提供し、ここでjは50またはそれ以上(例えば60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99)、nは7またはそれ以上(例えば8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれ以上)である。好ましい断片は、配列番号8から136の1つ由来のエピトープを含み、そしてより好ましい断片は、免疫原性の断片である。他の好ましい断片は、配列番号の少なくとも1つのエピトープを保持しながら、配列番号のC末端から1つまたはそれ以上のアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、またはそれ以上)、および/またはN末端から1つまたはそれ以上のアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、またはそれ以上)を欠く。他の断片は、1つまたはそれ以上のタンパク質ドメインを省略し、例えば膜貫通ドメイン、シグナルペプチド等を欠く。
【0022】
配列番号8から136のうちの、S.flexneriに関して好ましいサブセットは、表1の下の「サブセット1」に列挙される配列番号である。配列番号8から136のうちの、S.sonneiに関して好ましいサブセットは、表1の下の「サブセット2」に列挙される配列番号である。
【0023】
Tol−Palシステム
多くのグラム陰性細菌と同様、Shigellaは、天然でTol−Palシステムを有し、それはTolA、TolB、TolQ、TolR、およびPalタンパク質からなる。本発明によって、天然のTol−Palシステムを破壊し、それによって細菌の複製の間に、細菌がより多量の外膜ブレブを培地へ放出することを引き起こす。様々な破壊を行い得る。
【0024】
いくつかの実施態様において、5つのTol−Palタンパク質のうちの少なくとも1つを、例えばそのタンパク質をコードする遺伝子の欠失または不活性化によって除去する。従って、その細菌はTolA、TolB、TolQ、TolR、およびPalタンパク質の0、1、2、3、または4個を発現し得る。5つのタンパク質のうちの1つの除去で十分であり得、その場合その細菌はこれらのタンパク質の4個のみを発現する。好ましくは、TolRタンパク質を、例えば開始株のtolR遺伝子を不活性化することによって除去する。従って、その細菌はtolAtolBtolQtolRPalであり得る。
【0025】
いくつかの実施態様において、その細菌は、5個のTol−Palタンパク質を全て発現するが、少なくとも1つが、過剰ブレブ形成を引き起こすように変異している。例えば、TolA、TolQ、TolR、および/またはPalタンパク質を、そのタンパク質のその膜局在を保持しながら、Tol−Palシステムの他のメンバーとの相互作用が破壊されるように変異させ得る。従ってその細菌は、TolA、TolQ、およびTolRを内膜の膜貫通タンパク質として、およびPalタンパク質を外膜のペリプラズムに面するリポタンパク質として保持するが、TolA、TolQ、TolR、および/またはPalタンパク質の少なくとも1つが変異している。
【0026】
TolA、TolB、TolQ、TolR、およびPalタンパク質の野生型Shigellaアミノ酸配列の例を、配列番号1から5として配列表において提供する。
【0027】
Shigella細菌
本発明を、血清群S.dysenteriae、S.flexneri、S.boydiiおよびS.sonneiのいずれかと使用し得る。
【0028】
破壊されたTol−Palシステムを有する(このことは、細菌が、細菌複製の間により多量の外膜ブレブをその培地に放出することを引き起こす)ことに加えて、本発明のShigellaは、野生型株と比較して、1つまたはそれ以上のさらなる変化を有利に含み得る。これらの変化を、特にヒトワクチンにおいて毒性または望ましくない成分を細菌から除去するために使用し得る。
【0029】
例えば、細菌は天然のShigellaリポ多糖(LPS)を発現せず、これにより、内毒素の活性が低減し得る。天然のLPSの合成を妨げるために様々な修飾を行うことができ、そしてこれらは天然のリピドA構造、オリゴ糖コア、または外側O抗原を破壊し得る。例えば、参考文献3は、rfeおよびgalU遺伝子の不活性化によって引き起こされるLPS変異体を報告し、そして参考文献4は、yihE、galE、galK、galM、およびgalTの不活性化によって引き起こされるLPS変異体を報告する。同様に、参考文献5は、rfc、rfaL、またはgalUの変異による欠損LPSを報告する。参考文献6は、リピドAのアシル化を低減する、msbB1およびmsbB2の不活性化によって引き起こされるLPS変異体を報告する。本明細書中で示されるように、リピドAのアシル化が低減した別のLPS変異体を、htrBの不活性化によって産生し得る[7、8]。
【0030】
LPSにおけるO抗原の欠如が好ましく、それによって血清型特異的反応を回避する。S.sonneiにおいて、有毒性プラスミドが除去される場合にO抗原が欠如する(下記を参照のこと)。galU遺伝子はウリジンジホスホグルコース(UDP−グルコース)ピロホスホリラーゼをコードし、そしてその不活性化は、O抗原が結合していないLPSの合成を引き起こす。galUの不活性化は、ウリジンジホスホグルコースピロホスホリラーゼ活性を有さないShigellaを提供するために有用である。rfbFおよび/またはrfbG遺伝子の不活性化を、ラムノシルトランスフェラーゼ活性を有さないShigellaを提供するために使用し得る。rfcの不活性化を、O抗原ポリメラーゼ活性を有さないShigellaを提供するために使用し得る。rfbF、rfbGおよびrfcの3つ全ての不活性化は、有用な株を提供し得る。
【0031】
LPSにおけるヘキサアシル化リピドAの欠如が好ましい。有毒性プラスミドの喪失(下記を参照のこと)は、自動的にmsbB2遺伝子の喪失を引き起こし、そして染色体msbB1遺伝子を不活性化し得、それによってミリストイルトランスフェラーゼ活性を除去し、そしてLPSにおけるペンタアシル化リピドAを提供する。HtrBラウロイルトランスフェラーゼの不活性化は、主にテトラアシル化リピドAを有するShigellaを提供し得る。好ましい株は、ペンタまたはテトラアシル化LPSを有する。
【0032】
好ましい株は、galUおよびmsbB1がどちらも不活性化され、そしてまた有毒性プラスミドを欠き、それによってそのLPSがペンタアシル化され、結合したO抗原を欠く株を提供する。
【0033】
いくつかの有用な株は、結合したO抗原を含む、ペンタまたはテトラアシル化LPSを有する。しかし、より一般的には、好ましい株は、結合したO抗原を欠くペンタまたはテトラアシル化LPSを有する。tolR、rfbGおよびhtrBノックアウト(および、任意でrfbFおよび/またはrfc不活性化)を有するS.flexneri株が有用である。有用なS.sonnei株は、tolR変異を有し、そして有毒性プラスミドを欠く。
【0034】
細菌は、腸毒素を発現しない場合がある。例えば、S.flexneri株(特に2a株)は、Shigellaエンテロトキシン1(ShET−1)のサブユニットの全てを発現しない場合があり、例えばset1Aおよび/またはset1B遺伝子が不活性化され得る。S.dysenteriae株は、Shiga毒素の両方のサブユニットを発現しない場合があり、例えばstxAおよび/またはstxB遺伝子の1つまたは両方が不活性化され得る。Shigella、特にS.sonneiまたはS.flexneriは、エンテロトキシン2(ShET−2)を発現しない場合があり、例えばospD3遺伝子が不活性化され得、または有毒性プラスミドが欠如し得る。好ましい株は、ShET−1、ShET−2、およびShiga毒素をどれもコードしない。
【0035】
本発明のShigella細菌を、従来の変異生成技術を用いて、野生型または他の開始株から簡便に調製し得る(例えば参考文献9から11を参照のこと)。ラムダレッド組換えシステムが、Shigellaで特に有用である。遺伝子の不活性化を、様々な方法で、例えばそのプロモーターの欠失または変異、その開始コドンの欠失または変異、時期尚早でのストップコドンの導入、完全なコード領域の欠失、ノックアウト等によって、達成し得る。同系ノックアウト変異体が好ましい。結果としてできたShigella細菌において、所望の遺伝子をコードするmRNAが欠如しており、および/またはその翻訳が阻害されている(例えば野生型レベルの1%未満まで)。
【0036】
本発明のShigella細菌は、不活性化された遺伝子の代わりに、マーカー遺伝子、例えば抗生物質耐性マーカーを含み得る。相同的組換えを用いてこれを達成し得る。しかし好ましくは、マーカー無しでの(unmarked)欠失(すなわち、マーカー遺伝子の導入無しの欠失)を使用する。
【0037】
有毒性Shigella株は、有毒性性質を媒介する、220kbのプラスミドを有する。この「有毒性プラスミド」は、標的上皮細胞のためのアドヘシン、侵入プラスミド抗原、virF、virG等を含む、Shigella有毒性のいくつかの局面に関する遺伝子をコードすることが示された。本発明のShigellaは、有毒性プラスミドを有し得るが、有毒性プラスミドを有さないことが好ましい。そのプラスミドの欠如は、工業的な培養の間、その株を安定化し得、有毒性因子を除去することによってその株を弱毒化し得(それによって製造の安全性が増す)、リポ多糖を破壊し得(S.sonneiにおいてO抗原の生合成遺伝子は、プラスミド上にある)、ShET−2エンテロトキシンの存在を回避し得(プラスミドのospD3またはsen遺伝子によってコードされる)、およびmsbB2(リピドAのアシル化に関与するmsbB遺伝子の2番目のコピーである)の存在を回避し得る。
【0038】
本発明のShigellaは、1つまたはそれ以上の異種タンパク質、例えば天然にはShigellaにおいて見出されないタンパク質を発現し得る。その異種タンパク質が外膜タンパク質ならば、上記株からのブレブを、非Shigella抗原を免疫系に提示するための送達システムとして使用し得る。
【0039】
Shigellaを増殖させるための培養条件は、当該分野で周知であり、例えば参考文献12から14を参照のこと。例えば、それらを、有機窒素源(例えばAla、Arg、Asn、Aspを含むアミノ酸混合物など;カザミノ酸を使用し得る)、炭素源としてグリセロールを使用する等して、増殖させ得る。培地中にL−アスパラギン酸を含むことが特に有用であり、これは、窒素源および炭素源の両方として機能し得る。
【0040】
本発明のShigellaを鉄制限条件下で有利に増殖させ得る。これは、鉄制限条件が、Shigella spp.において免疫原性であり、そして高度に保存されている鉄調節タンパク質をアップレギュレートすることが示されたためである。例えば、その細菌を、デスフェラールまたは2,2’−ジピリジルまたは8−ヒドロキシキノリンのような化合物の存在下で増殖させ得る。これらの条件下で、その細菌は、FepA外膜受容体、コリシンI受容体(CirA)、および/または鉄シデロホア受容体(FhuA)のようなタンパク質の発現を増加させ得る。
【0041】
ブレブおよび過剰ブレブ形成
本発明のShigella細菌は、その対応する野生型株と比較して、過剰にブレブを形成する。すなわち、それらは野生型株より多量のブレブを培地へ放出する。これらのブレブは、Shigellaワクチンの成分として有用である。
【0042】
そのブレブは、典型的には電子顕微鏡によって35−120nmの直径、例えば50nmの直径を有する。
【0043】
そのブレブは、細菌増殖の間に自然に放出され、そして培地から精製され得る。その精製は、理想的にはブレブを、生のおよび/またはインタクトなShigella細菌から、例えば、ブレブは通過させるがインタクトな細菌は通過させない、0.22μmのフィルターのようなフィルターを用いたサイズに基づくろ過によって、またはブレブを懸濁物中に残しながら細胞をペレットにする低速遠心分離を用いることによって、分離することを含む。
【0044】
従って、培地と異なり、本発明のブレブを含む組成物は一般的に、生きているか死んでいるにかかわらず、実質的に細菌全体を含まない。ブレブのサイズは、例えば典型的にろ過滅菌に使用されるようなろ過によって、それらを容易に細菌全体から分離し得ることを意味する。ブレブは標準的な0.22μmのフィルターを通過するが、これらは他の物質によって迅速に詰まることがあり、0.22μmのフィルターを使用する前に、一連の漸減孔径のフィルターを通した連続的なろ過滅菌の工程を行うことが有用であり得る。先行するフィルターの例は、0.8μm、0.45μm等の孔径を有するものである。
【0045】
自然に放出されたブレブの培地からの分離は、外膜小胞を形成させるための外膜の故意の破壊(例えば界面活性剤処理または超音波処理による)を含む方法よりも簡便である。さらに、それらは内膜および細胞質の混入を実質的に含まない。
【0046】
本発明のブレブは、脂質およびタンパク質を含む。ブレブのタンパク質の内容物は分析されている。そのブレブは、表1に列挙し、そして下記で議論するタンパク質を含む。
【0047】
Shigella外膜タンパク質
表1は、本発明のShigellaブレブにおいて検出された129個のタンパク質のGenBank名およびGI番号を列挙する。これらの127個のタンパク質を、ブレブから分離した精製形態で、免疫原性の成分として使用し得る。129個のうちの好ましいサブセットは、リストの最初の60個である(「サブセット3」)。
【0048】
ポリペプチドを、様々な手段で、例えば化学的合成(少なくとも部分的に)、プロテアーゼを用いて長いポリペプチドを消化すること、RNAからの翻訳、細胞培養物からの精製(例えば、組換え発現から、またはShigella培養物から)等によって調製し得る。E.coli宿主における異種性の発現が、好ましい発現経路である。
【0049】
本発明のポリペプチドを、固体支持体に結合または固定化し得る。本発明のポリペプチドは、検出可能な標識、例えば放射性標識、蛍光標識、またはビオチン標識を含み得る。これはイムノアッセイ技術において特に有用である。
【0050】
ポリペプチドは、様々な形態(例えば天然、融合、グリコシル化、非グリコシル化、脂質付加、ジスルフィド架橋等)をとり得る。ポリペプチドは、好ましくはShigellaポリペプチドである。
【0051】
ポリペプチドを、好ましくは実質的に純粋な、または実質的に単離された(すなわち、実質的に他のShigellaまたは宿主細胞ポリペプチドを含まない)形態で調製する。一般的に、そのポリペプチドは、天然に存在する環境ではない環境で提供され、例えばそれらは天然に存在する環境から分離される。ある実施態様において、対象ポリペプチドは、コントロールと比較して、そのポリペプチドが濃縮された組成物において存在する。そのように、精製されたポリペプチドが提供され、ここで「精製された」によって、そのポリペプチドが実質的に他の発現されたポリぺプチドを含まない組成物に存在することを意味し、ここで「実質的に含まない」によって、組成物の50%未満、通常30%未満、およびより通常には10%未満が、他の発現したポリペプチドからなることを意味する。
【0052】
「ポリペプチド」という用語は、あらゆる長さのアミノ酸ポリマーを指す。そのポリマーは直鎖状、または分岐であり得、それは修飾アミノ酸を含み得、そしてそれは非アミノ酸によって中断され得る。その用語はまた、天然に、または介入によって、例えばジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質付加、アセチル化、リン酸化、または標識成分との結合体化のような任意の他の操作もしくは修飾によって、修飾されたアミノ酸ポリマーを含む。例えば、1つまたはそれ以上のアミノ酸のアナログ(例えば非天然アミノ酸等を含む)、および当該分野で公知の他の修飾を含むポリペプチドも、その定義に含まれる。ポリペプチドは、1本鎖または結合した鎖として存在し得る。
【0053】
薬学的組成物
本発明は、(a)本発明のブレブ、および(b)薬学的に許容可能なキャリアを含む薬学的組成物を提供する。本発明はまた、本発明のブレブを薬学的に許容可能なキャリアと混合する工程を含む、そのような組成物を調製するためのプロセスを提供する。
【0054】
本発明はまた、(a)上記で定義したブレブを含まない免疫原性組成物、および(b)薬学的に許容可能なキャリアを含む薬学的組成物を提供する。
【0055】
その免疫原性組成物は、薬学的に許容可能なキャリアを含み得、薬学的に許容可能なキャリアはそれ自体では、その組成物を投与される患者にとって有害な抗体の産生を誘発しないあらゆる物質であり得、そしてそれは過度な毒性無しに投与され得る。薬学的に許容可能なキャリアは、水、生理食塩水、グリセロールおよびエタノールのような液体を含み得る。湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化物質等のような補助的な物質も、そのようなビヒクル中に存在し得る。適当なキャリアの十分な議論は、参考文献15において得られる。
【0056】
Shigella感染は、体の様々な領域に影響を与え得、従って本発明の組成物を、様々な形態で調製し得る。例えば、その組成物を、液体溶液または懸濁物のいずれかとして、注射剤として調製し得る。注射の前の、液体ビヒクルにおける溶液または懸濁物のために適当な固体形態も調製し得る。その組成物を、局所投与のために、例えば軟膏、クリーム、または粉末として調製し得る。その組成物を、経口投与のために、例えば錠剤またはカプセル、またはシロップ(任意で矯味矯臭された)として調製する。その組成物を、肺投与のために、例えば細かい粉末またはスプレーを用いた吸入剤として調製し得る。その組成物を、坐剤または膣坐剤として調製し得る。その組成物を、鼻腔内、耳内、または眼内投与のために、例えば滴剤として調製し得る。
【0057】
その組成物は、好ましくは無菌である。それは好ましくは発熱物質を含まない。それは好ましくは、例えばpH6からpH8で、一般的にはpH7の周辺で緩衝化される。本発明の組成物は、ヒトに関して等張であり得る。
【0058】
免疫原性組成物は、免疫学的に有効な量の免疫原、および必要に応じてあらゆる他の指定された成分を含む。「免疫学的に有効な量」によって、単回投与または一連の投与の一部としての、その量の個体に対する投与が、処置または防止のために有効であることを意味する。この量は、処置する個体の健康および身体的状態、年齢、処置する個体の分類学的群(例えば非ヒト霊長類、霊長類等)、その個体の免疫系の抗体を合成する能力、望ましい保護の程度、ワクチンの処方、治療する医師の医学的状況の評価、および他の関連する因子に依存して変化する。その量は、日常的な試験によって決定し得る比較的広い範囲に入ることが予測される。
【0059】
小胞ワクチン(例えば髄膜炎菌に対する)を用いた以前の研究は、ブレブを投与するための薬学的、薬量学的、および処方の指針を提供する。本発明の組成物中のブレブの濃度は、一般的に10〜500μg/ml、好ましくは25〜200μg/ml、そしてより好ましくは約50μg/mlまたは約100μg/ml(ブレブ中の全タンパク質に関して表す)である。0.5mlの投与容積が注射のために典型的である。
【0060】
その組成物を、他の免疫調節性薬剤と組み合わせて投与し得る。
【0061】
本発明の組成物中で(特にブレブを含まない組成物中で)使用し得るアジュバントは、以下のものを含むがこれに限らない。
【0062】
A.ミネラルを含む組成物
本発明においてアジュバントとして使用するために適当な、ミネラルを含む組成物は、アルミニウム塩およびカルシウム塩のようなミネラル塩を含む。本発明は、水酸化物(例えばオキシ水酸化物)、リン酸塩(例えばヒドロキシリン酸塩、オルトリン酸塩)、硫酸塩等のようなミネラル塩[例えば参考文献19の第8および9章を参照のこと]、または異なるミネラル化合物の混合物を含み、その化合物はあらゆる適当な形態(例えばゲル、結晶性、非晶質等)を取り、および吸着が好ましい。そのミネラルを含む組成物はまた、ミネラル塩の粒子として処方され得る。
【0063】
「水酸化アルミニウム」として公知のアジュバントは、典型的にはオキシ水酸化アルミニウム塩であり、それは通常少なくとも部分的に結晶性である。式AlO(OH)によって表し得るオキシ水酸化アルミニウムは、赤外(IR)分光法によって、特に1070cm−1における吸収(adsorption)バンド、および3090−3100cm−1における強い肩部の存在によって、水酸化アルミニウムAl(OH)のような他のアルミニウム化合物から区別し得る[参考文献19の第9章]。水酸化アルミニウムアジュバントの結晶化の程度は、半値における回折バンドの幅(width of the diffraction band at half height(WHH))によって反映され、結晶性の低い粒子は、小さい結晶子サイズのために、大きな線の広がりを示す。表面積は、WHHが増加するにつれて増加し、そしてより高いWHH値を有するアジュバントが、抗原吸着のより高い能力を有することが示された。線維状の形態(例えば透過型電子顕微鏡写真において見られるような)は、水酸化アルミニウムアジュバントに典型的である。水酸化アルミニウムアジュバントのpIは、典型的には約11であり、すなわちアジュバント自体が、生理学的pHにおいて正の表面電荷を有する。水酸化アルミニウムアジュバントに関して、pH7.4におけるAl+++1mgあたり1.8−2.6mgのタンパク質の吸着能力が報告された。
【0064】
「リン酸アルミニウム」として公知のアジュバントは、典型的にはヒドロキシリン酸アルミニウムであり、多くの場合少量の硫酸塩も含む(すなわち、ヒドロキシリン酸アルミニウム硫酸塩)。それらを沈殿によって得ることができ、そしてその反応条件および沈殿の間の濃度は、塩におけるリン酸のヒドロキシルによる置換の程度に影響を与える。ヒドロキシリン酸塩は、一般的に0.3〜1.2のPO/Alモル比を有する。ヒドロキシリン酸塩を、ヒドロキシル基の存在によって、厳密なAlPOから区別し得る。例えば、3164cm−1におけるIRスペクトルのバンド(例えば200℃における)が、構造的ヒドロキシルの存在を示す[参考文献19の第9章]。
【0065】
リン酸アルミニウムアジュバントのPO/Al3+モル比は、一般的に0.3〜1.2、好ましくは0.8〜1.2、そしてより好ましくは0.95±0.1である。リン酸アルミニウムは、特にヒドロキシリン酸塩に関して、一般的に非晶質である。典型的なアジュバントは、0.84〜0.92のPO/Alモル比を有する非晶質のヒドロキシリン酸アルミニウムであり、0.6mgのAl3+/mlで含まれる。リン酸アルミニウムは、一般的に粒子性である(例えば、透過型電子顕微鏡写真において見られるような、プレート様の形態)。その粒子の典型的な直径は、任意の抗原の吸着後、0.5−20μmの範囲(例えば約5−10μm)である。リン酸アルミニウムアジュバントに関して、pH7.4においてAl+++1mgあたり0.7から1.5mgのタンパク質の吸着能力が報告された。
【0066】
リン酸アルミニウムのゼロ電荷点(PZC)は、リン酸のヒドロキシルによる置換の程度と反比例し、そしてこの置換の程度は、反応条件および沈殿による塩の調製のために使用された反応物の濃度に依存して変化し得る。PZCはまた、溶液中の遊離リン酸イオンの濃度を変化させることによって(より多くのリン酸=より酸性のPZC)、またはヒスチジン緩衝液のような緩衝液を加えることによって(PZCをより塩基性にする)、変化する。本発明によって使用されるリン酸アルミニウムは、一般的に4.0〜7.0、より好ましくは5.0〜6.5、例えば約5.7のPZCを有する。
【0067】
本発明の組成物を調製するために使用されたアルミニウム塩の懸濁物は、緩衝液(例えばリン酸またはヒスチジンまたはTris緩衝液)を含み得るが、これは常に必要というわけではない。その懸濁物は、好ましくは無菌であり、そして発熱物質を含まない。懸濁物は、例えば1.0〜20mM、好ましくは5〜15mM、そしてより好ましくは約10mMの濃度で存在する、遊離水性リン酸イオンを含み得る。その懸濁物はまた、塩化ナトリウムを含み得る。
【0068】
1つの実施態様において、アジュバント成分は、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムの両方の混合物を含む。この場合、例えば少なくとも2:1、例えば≧5:1、≧6:1、≧7:1、≧8:1、≧9:1等の重量比で、水酸化アルミニウムより多くのリン酸アルミニウムが存在し得る。
【0069】
患者に投与するための組成物中のAl+++の濃度は、好ましくは10mg/ml未満、例えば≦5mg/ml、≦4mg/ml、≦3mg/ml、≦2mg/ml、≦1mg/ml等である。好ましい範囲は、0.3〜1mg/mlである。最高で<0.85mg/用量が好ましい。
【0070】
B.油エマルジョン
本発明においてアジュバントとして使用するために適当な油エマルジョン組成物は、MF59のようなスクアレン−水エマルジョンを含む[参考文献19の第10章;参考文献16も参照のこと](5%のスクアレン、0.5%のTween80、および0.5%のSpan85、マイクロフルイダイザーを用いてサブミクロンの粒子に処方する)。完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA)も使用し得る。
【0071】
様々な適当な水中油型エマルジョンが公知であり、そしてそれらは典型的には少なくとも1つの油および少なくとも1つのサーファクタントを含み、その油およびサーファクタントは生物分解性(代謝性)および生体適合性である。エマルジョン中の油滴は、一般的に直径5μm未満であり、そして有利にそのエマルジョンはサブミクロンの直径を有する油滴を含み、これらの小さいサイズは、マイクロフルイダイザーによって達成され、安定なエマルジョンが提供される。ろ過滅菌に供することができるので、220nm未満のサイズを有する液滴が好ましい。
【0072】
本発明を、動物(魚のような)または植物供給源由来のもののような油と共に使用し得る。植物油の供給源は、ナッツ、種子、および穀物を含む。ピーナッツ油、ダイズ油、ココナッツ油、およびオリーブ油は最も通常に入手可能であり、ナッツ油の例示となる。例えばホホバ豆から得られる、ホホバ油も使用し得る。種子油は、ベニバナ油、綿実油、ヒマワリ種子油、ゴマ種子油等を含む。穀物群の中で、コーン油が最も容易に入手可能であるが、コムギ、カラスムギ、ライムギ、コメ、テフ、ライコムギ等のような他の穀物の油も使用し得る。種子油には天然に存在しないが、グリセロールおよび1,2−プロパンジオールの6−10炭素脂肪酸エステルを、ナッツおよび種子油から開始して、適当な材料の加水分解、分離、およびエステル化によって調製し得る。哺乳動物乳由来の脂肪および油は、代謝可能であり、従って本発明の実施において使用し得る。動物供給源から純粋な油を得るために必要な、分離、精製、けん化および他の手段の手順が、当該分野で周知である。ほとんどの魚は、容易に収集し得る代謝可能な油を含む。例えば、タラ肝油、サメ肝油、および鯨蝋のような鯨油は、本明細書中で使用し得る魚油のいくつかの例示である。多くの分岐鎖油は、5炭素イソプレン単位で生化学的に合成され、そして一般的にテルペノイドと呼ばれる。サメ肝油は、スクアレン、2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサエンとして公知である、分岐、不飽和テルペノイドを含む。他の好ましい油は、トコフェロールである(下記を参照のこと)。スクアレン(sqlauene)を含む水中油型エマルジョンが特に好ましい。油の混合物を使用し得る。
【0073】
サーファクタントを、その「HLB」(親水性/親油性バランス)によって分類し得る。本発明の好ましいサーファクタントは、少なくとも10、好ましくは少なくとも15、そしてより好ましくは少なくとも16のHLBを有する。本発明を、ポリオキシエチレンソルビタンエステルサーファクタント(通常Tweenと呼ばれる)、特にポリソルベート20およびポリソルベート80;直鎖状EO/POブロックコポリマーなど、DOWFAXTMの商品名で販売されている、エチレンオキシド(EO)、酸化プロピレン(PO)、および/または酸化ブチレン(BO)のコポリマー;エトキシ(オキシ−1,2−エタンジイル)基の反復数が変動し得るオクトキシノール、オクトキシノール−9(TritonX−100、またはt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)が特に興味深い;(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA−630/NP−40);ホスファチジルコリン(レシチン)のようなリン脂質;トリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij30)のような、ラウリル、セチル、ステアリル、およびオレイルアルコール由来のポリオキシエチレン脂肪エーテル(Brijサーファクタントとして公知である);およびソルビタントリオレアート(Span85)およびソルビタンモノラウラートのような、ソルビタンエステル(通常SPANとして公知である)を含むがこれに限らないサーファクタントと使用し得る。エマルジョンに含めるために好ましいサーファクタントは、Tween80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)、Span85(ソルビタントリオレアート)、レシチンおよびTriton X−100である。上記で述べたように、Tween80のような界面活性剤は、下記の実施例で見られる熱安定性に寄与し得る。
【0074】
サーファクタントの混合物、例えばTween80/Span85混合物を使用し得る。ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(Tween80)のようなポリオキシエチレンソルビタンエステルおよびt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Triton X−100)のようなオクトキシノールの組み合わせも適当である。別の有用な組み合わせは、ラウレス9とポリオキシエチレンソルビタンエステルおよび/またはオクトキシノールを含む。
【0075】
サーファクタントの好ましい量(重量%)は、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(Tween80のような)0.01−1%、特に約0.1%;オクチルまたはノニルフェノキシポリオキシエタノール(Triton X−100、またはTritonシリーズの他の界面活性剤のような)0.001から0.1%、特に0.005から0.02%;ポリオキシエチレンエーテル(ラウレス9のような)0.1から20%、好ましくは0.1から10%、および特に0.1から1%または約0.5%である。
【0076】
本発明で有用な、特定の水中油型エマルジョンアジュバントは、以下のものを含むがこれに限らない。
【0077】
・スクアレン、Tween80、およびSpan85のサブミクロンのエマルジョン。容積によるそのエマルジョンの組成は、約5%のスクアレン、約0.5%のポリソルベート80、および約0.5%のSpan85であり得る。重量に関して、これらの比は、4.3%のスクアレン、0.5%のポリソルベート80、および0.48%のSpan85になる。このアジュバントは、参考文献19の第10章および参考文献20の第12章においてより詳細に記載されるように、「MF59」[16−18]として公知である。MF59エマルジョンは、クエン酸イオン、例えば10mMのクエン酸ナトリウム緩衝液を有利に含む。
【0078】
・スクアレン、α−トコフェロール、およびポリソルベート80を含むエマルジョン。これらのエマルジョンは、2から10%のスクアレン、2から10%のトコフェロール、および0.3から3%のTween80を有し得、そしてスクアレン:トコフェロールの重量比は、より安定なエマルジョンを提供するので、好ましくは≦1(例えば0.90)である。スクアレンおよびTween80は、約5:2の容積比で、または約11:5の重量比で存在し得る。Tween80をPBSに2%溶液を生じるように溶解させ、次いで90mlのこの溶液を、(5gのDL−α−トコフェロールおよび5mlのスクアレン)の混合物と混合し、次いでその混合物をマイクロフルイダイズすることによって、1つのそのようなエマルジョンを産生し得る。できたエマルジョンは、例えば100〜250nm、好ましくは約180nmの平均直径を有する、サブミクロンの油滴を有し得る。
【0079】
・スクアレン、トコフェロール、およびTriton界面活性剤(例えばTriton X−100)のエマルジョン。そのエマルジョンはまた、3d−MPLを含み得る(下記を参照のこと)。そのエマルジョンは、リン酸緩衝液を含み得る。
【0080】
・ポリソルベート(例えばポリソルベート80)、Triton界面活性剤(例えばTriton X−100)およびトコフェロール(例えばコハク酸α−トコフェロール)を含むエマルジョン。そのエマルジョンは、これらの3つの成分を、約75:11:10の質量比で含み得(例えば750μg/mlのポリソルベート80、110μg/mlのTriton X−100、および100μg/mlのコハク酸α−トコフェロール)、そしてこれらの濃度は、抗原からのこれらの成分のあらゆる寄与を含むだろう。そのエマルジョンはまた、スクアレンを含み得る。そのエマルジョンはまた、3d−MPLを含み得る(下記を参照のこと)。その水相は、リン酸緩衝液を含み得る。
【0081】
・スクアラン、ポリソルベート80およびポロクサマー401(「PluronicTM L121」)のエマルジョン。そのエマルジョンを、リン酸緩衝化生理食塩水、pH7.4中で処方し得る。このエマルジョンは、ムラミルジペプチドの有用な送達ビヒクルであり、そして「SAF−1」アジュバントにおいて、スレオニル−MDPと共に使用された[21](0.05−1%のThr−MDP、5%のスクアラン、2.5%のPluronic L121および0.2%のポリソルベート80)。「AF」アジュバント[22](5%のスクアラン、1.25%のPluronic L121および0.2%のポリソルベート80)におけるように、それをまたThr−MDP無しで使用し得る。マイクロフルイダイゼーションが好ましい。
【0082】
・スクアレン、水性溶媒、ポリオキシエチレンアルキルエーテル親水性非イオン性サーファクタント(例えばポリオキシエチレン(12)セトステアリルエーテル)および疎水性非イオン性サーファクタント(例えばソルビタンモノオレアート(monoleate)または「Span80」のような、ソルビタンエステルまたはマンニドエステル)を含むエマルジョン。そのエマルジョンは、好ましくは熱可逆的であり、および/または少なくとも90%の200nm未満のサイズを有する油滴(容積で)を有する[23]。そのエマルジョンはまた、1つまたはそれ以上のアルジトール;凍結保護剤(例えばドデシルマルトシドおよび/またはショ糖のような糖);および/またはアルキルポリグリコシドを含み得る。そのようなエマルジョンを、凍結乾燥し得る。
【0083】
・0.5−50%の油、0.1−10%のリン脂質、および0.05−5%の非イオン性サーファクタントを有するエマルジョン。参考文献24で記載されるように、好ましいリン脂質成分は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、スフィンゴミエリンおよびカルジオリピンである。サブミクロンの液滴サイズが有利である。
【0084】
・非代謝性油(軽油のような)および少なくとも1つのサーファクタント(レシチン、Tween80、またはSpan80のような)の、サブミクロンの水中油型エマルジョン。QuilAサポニン、コレステロール、サポニン−親油性結合体(参考文献25において記載され、グルクロン酸のカルボキシル基を介した脂肪族アミンのデスアシルサポニンへの付加によって産生される、GPI−0100のような)、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(dimethyidioctadecylammonium)ブロミドおよび/またはN,N−ジオクタデシル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミンのような、添加物を含み得る。
【0085】
・ミネラル油、非イオン性親油性エトキシ化脂肪アルコール、および非イオン性親水性サーファクタント(例えばエトキシ化脂肪アルコールおよび/またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)[26]を含むエマルジョン。
【0086】
・ミネラル油、非イオン性親水性エトキシ化脂肪アルコール、および非イオン性親油性サーファクタント(例えばエトキシ化脂肪アルコールおよび/またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)[26]を含むエマルジョン。
【0087】
・サポニン(例えばQuilAまたはQS21)およびステロール(例えばコレステロール)が、らせん状ミセルとして結合しているエマルジョン[27]。
【0088】
組成物中の抗原およびアジュバントは、典型的には患者への送達時には混合物である。そのエマルジョンを、製造の間に、または送達に際し即席で抗原と混合し得る。従って、そのアジュバントおよび抗原を、パッケージまたは分配したワクチンにおいて別々に維持し、使用時の最終的な処方に備え得る。その抗原は一般的に水性形態であり、そのためワクチンを、最終的に2つの液体を混合することによって調製する。混合するための2つの液体の容積比は変動し得るが(例えば5:1〜1:5)、一般的に約1:1である。
【0089】
C.サポニン処方物[参考文献19の第22章]
本発明において、サポニン処方物もアジュバントとして使用し得る。サポニンは、広い範囲の植物種の、樹皮、葉、茎、根、さらには花において見出される、ステロールグリコシドおよびトリテルペノイドグリコシドの異種群である。Quillaia saponaria Molinaの木の樹皮由来のサポニンは、アジュバントとして広く研究されている。サポニンをまた、Smilax ornata(サルサパリラ(sarsaprilla))、Gypsophilla paniculata(ブライズベール(brides veil))、およびSaponaria officianalis(ソープルート(soap root))から、市販で得ることができる。サポニンアジュバント処方は、QS21のような精製した処方物、およびISCOMのような脂質処方物を含む。QS21は、StimulonTMとして販売されている。
【0090】
サポニン組成物を、HPLCおよびRP−HPLCを用いて精製した。これらの技術を用いて、QS7、QS17、QS18、QS21、QH−A、QH−B、およびQH−Cを含む、特定の精製画分が同定された。好ましくは、そのサポニンはQS21である。QS21の産生方法が、参考文献28において開示される。サポニン処方物はまた、コレステロールのようなステロールを含み得る[29]。
【0091】
サポニンおよびコレステロールの組み合わせを使用して、免疫刺激複合体(ISCOM;参考文献19の第23章;参考文献30および31も参照のこと)と呼ばれる独特な粒子を形成し得る。ISCOMはまた、典型的にはホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリンのようなリン脂質を含む。あらゆる公知のサポニンを、ISCOMにおいて使用し得る。好ましくは、そのISCOMは、1つまたはそれ以上のQuilA、QHAおよびQHCを含む。任意で、そのISCOMは、さらなる界面活性剤を欠き得る[32]。
【0092】
サポニンに基づくアジュバントの開発の概説を、参考文献33および34において見出し得る。
【0093】
D.細菌または微生物誘導体
本発明において使用するために適当なアジュバントは、腸内細菌リポ多糖(LPS)の無毒性誘導体、リピドA誘導体、免疫刺激性オリゴヌクレオチドならびにADP−リボシル化毒素およびその無毒化誘導体のような、細菌または微生物誘導体を含む。
【0094】
LPSの無毒性誘導体は、モノホスホリルリピドA(MPL)および3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)を含む。3dMPLは、4、5、または6アシル化鎖を有する3脱O−アシル化モノホスホリルリピドAの混合物である。3脱O−アシル化モノホスホリルリピドAの好ましい「小粒子」形態が、参考文献35において開示される。そのような3dMPLの「小粒子」は、0.22μmの膜を通して滅菌ろ過するために十分小さい[35]。他の無毒性LPS誘導体は、アミノアルキルグルコサミニドリン酸塩誘導体、例えばRC−529のような、モノホスホリルリピドA模倣物を含む[36、37]。
【0095】
リピドA誘導体は、OM−174のようなEscherichia coli由来のリピドAの誘導体を含む。OM−174は、例えば参考文献38および39において記載される。
【0096】
本発明においてアジュバントとして使用するために適当な免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、CpGモチーフ(リン酸結合によってグアノシンに結合した非メチル化シトシンを含むジヌクレオチド配列)を含むヌクレオチド配列を含む。2本鎖RNAおよびパリンドロームまたはポリ(dG)配列を含むオリゴヌクレオチドも、免疫刺激性であることが示された。
【0097】
CpGは、ホスホロチオエート修飾のようなヌクレオチド修飾/アナログを含み得、そして2本鎖または1本鎖であり得る。参考文献40、41、および42は、可能性のあるアナログ置換、例えばグアノシンの2’−デオキシ−7−デアザグアノシンによる置換を開示する。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果は、参考文献43−48においてさらに議論される。
【0098】
CpG配列を、モチーフGTCGTTまたはTTCGTTのような、TLR9に向け得る[49]。そのCpG配列は、CpG−A ODNのように、Th1免疫反応を誘発するために特異的であり得、またはそれはCpG−B ODNのように、B細胞反応を誘発するためにより特異的であり得る。CpG−AおよびCpG−B ODNは、参考文献50−52において議論される。好ましくは、そのCpGはCpG−A ODNである。
【0099】
好ましくは、そのCpGオリゴヌクレオチドは、5’末端が受容体認識のためにアクセス可能であるように構築される。任意で、2つのCpGオリゴヌクレオチド配列を、その3’末端で結合して、「イムノマー」を形成し得る。例えば、参考文献53−55を参照のこと。
【0100】
免疫刺激性オリゴヌクレオチドに基づく特に有用なアジュバントは、IC−31TMとして公知である[56−58]。従って、本発明で使用されるアジュバントは、(i)少なくとも1つ(および好ましくは複数)のCpIモチーフ(すなわち、イノシンと結合してジヌクレオチドを形成するシトシン)を含むオリゴヌクレオチド(例えば15−40ヌクレオチド)、および(ii)少なくとも1つ(および好ましくは複数)のLys−Arg−Lysトリペプチド配列を含む、オリゴペプチド(例えば5−20アミノ酸)のようなポリカチオン性ポリマーの混合物を含み得る。そのオリゴヌクレオチドは、26マーの配列5’−(IC)13−3’(配列番号7)を含むデオキシヌクレオチドであり得る。そのポリカチオン性ポリマーは、11マーのアミノ酸配列KLKLLLLLKLK(配列番号6)を含むペプチドであり得る。配列番号6および7のこの組み合わせが、IC−31TMアジュバントを提供する。
【0101】
細菌ADPリボシル化毒素およびその無毒化誘導体を、本発明でアジュバントとして使用し得る。好ましくは、そのタンパク質は、E.coli(E.coli熱不安定性エンテロトキシン「LT」)、コレラ(「CT」)、または百日咳(「PT」)由来である。粘膜アジュバントとして無毒化ADPリボシル化毒素を用いることが、参考文献59に、そして非経口アジュバントとして用いることが、参考文献60に記載されている。その毒素またはトキソイドは、好ましくは、AおよびBサブユニットを両方含むホロ毒素の形態である。好ましくは、Aサブユニットが、無毒化変異を含み;好ましくは、Bサブユニットは変異していない。好ましくは、そのアジュバントは、LT−K63、LT−R72、およびLT−G192のような、無毒化LT変異体である。ADPリボシル化毒素およびその無毒化誘導体、特にLT−K63およびLT−R72をアジュバントとして使用することは、参考文献61−68において見出し得る。有用なCT変異体は、CT−E29Hである[69]。アミノ酸置換に関する数字の言及は、好ましくは、本明細書中にその全体が明確に参考として組み込まれる、参考文献70において記載されたADPリボシル化毒素のAおよびBサブユニットのアライメントに基づく。
【0102】
E.ヒト免疫調節物質
本発明においてアジュバントとして使用するために適当なヒト免疫調節物質は、インターロイキン(例えばIL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12[71]等)[72]、インターフェロン(例えばインターフェロン−γ)、マクロファージコロニー刺激因子、および腫瘍壊死因子のようなサイトカインを含む。好ましい免疫調節物質はIL−12である。
【0103】
F.生体付着性物質(bioadhesive)および粘膜付着性物質(mucoadhesive)
生体付着性物質および粘膜付着性物質も、本発明においてアジュバントとして使用し得る。適当な生体付着性物質は、エステル化ヒアルロン酸ミクロスフェア[73]またはポリ(アクリル酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖類およびカルボキシメチルセルロースの架橋誘導体のような粘膜付着性物質を含む。キトサンおよびその誘導体も、本発明においてアジュバントとして使用し得る[74]。
【0104】
G.微粒子
微粒子も、本発明においてアジュバントとして使用し得る。生物分解性および無毒性である材料(例えばポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリカプロラクトン等、(ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)が好ましい))から形成された、微粒子(すなわち、直径約100nmから約150μm、より好ましくは直径約200nmから約30μm、そして最も好ましくは直径約500nmから約10μmの粒子)が好ましく、任意で負に荷電した表面(例えばSDSによって)または正に荷電した表面(例えばCTABのような陽イオン性界面活性剤によって)を有するように処理する。
【0105】
H.リポソーム(参考文献19の第13および14章)
アジュバントとして使用するために適当なリポソーム処方物の例が、参考文献75−77において記載されている。
【0106】
I.イミダゾキノロン化合物
本発明においてアジュバントとして使用するために適当なイミダゾキノロン化合物の例は、参考文献78および79においてさらに記載される、イミキモド(Imiquamod)およびそのホモログ(例えば「Resiquimod3M」)を含む。
【0107】
本発明はまた、上記で同定した1つまたはそれ以上のアジュバントの局面の組み合わせを含み得る。例えば、以下のアジュバント組成物を、本発明において使用し得る:(1)サポニンおよび水中油型エマルジョン[80];(2)サポニン(例えばQS21)+無毒性LPS誘導体(例えば3dMPL)[81];(3)サポニン(例えばQS21)+無毒性LPS誘導体(例えば3dMPL)+コレステロール;(4)サポニン(例えばQS21)+3dMPL+IL−12(任意で+ステロール)[82];(5)3dMPLと、例えばQS21および/または水中油型エマルジョンとの組み合わせ[83];(6)サブミクロンのエマルジョンにマイクロフルイダイズしたか、またはより大きな粒子サイズのエマルジョンを産生するためにボルテックスした、10%のスクアラン、0.4%のTween80TM、5%のプルロニックブロックポリマーL121、およびthr−MDPを含むSAF;(7)2%のスクアレン、0.2%のTween80、ならびにモノホスホリルリピドA(MPL)、トレハロースジミコラート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)からなる群からの1つまたはそれ以上の細菌細胞壁成分、好ましくはMPL+CWS(DetoxTM)を含むRibiTMアジュバントシステム(RAS)、(Ribi Immunochem);および(8)1つまたはそれ以上のミネラル塩(アルミニウム塩のような)+LPSの無毒性誘導体(3dMPLのような)。
【0108】
免疫刺激剤として作用する他の物質が、参考文献19の第7章において開示される。
【0109】
水酸化アルミニウムアジュバントが有用であり、そして抗原は一般的にこの塩に吸着させられる。サブミクロンの油滴を有し、スクアレンを含む水中油型エマルジョンも、特に高齢者において好ましい。有用なアジュバントの組み合わせは、CpG&アルミニウム塩、またはレシキモド&アルミニウム塩のような、Th1およびTh2アジュバントの組み合わせを含む。アルミニウム塩および3dMPLの組み合わせを使用し得る。
【0110】
免疫化
上記で記載したような免疫原性組成物を提供することに加えて、本発明はまた、本発明の免疫原性組成物を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物において抗体反応を起こす方法を提供する。その抗体反応は、好ましくは保護的抗体反応である。本発明はまた、そのような方法において使用するための本発明の組成物を提供する。
【0111】
本発明はまた、本発明の免疫原性組成物を哺乳動物に投与することを含む、Shigella感染および/または疾患に対して(例えば細菌性赤痢、ライター症候群、および/または溶血性尿毒症症候群に対して)哺乳動物を保護するための方法を提供する。
【0112】
本発明は、薬物として(例えば免疫原性組成物またはワクチンとして)使用するための本発明の組成物を提供する。それはまた、哺乳動物においてShigella感染を防止するための、例えば細菌性赤痢、ライター症候群、および/または溶血性尿毒症症候群を防止するための薬物の製造において、本発明の小胞を使用することを提供する。それはまた、哺乳動物においてShigella感染を防止するための、例えば細菌性赤痢を防止するための、ブレブを含まない薬物の製造において、ブレブタンパク質(上記で定義したような)を使用することを提供する。
【0113】
その哺乳動物は、好ましくはヒトである。そのヒトは、成人、または好ましくは小児であり得る。そのワクチンを予防的に使用する場合、ヒトは好ましくは小児(例えば幼児または乳児)であり;そのワクチンを治療的に使用する場合、そのヒトは好ましくは成人である。小児を意図したワクチンをまた、例えば安全性、投与量、免疫原性等を評価するために、成人に投与し得る。
【0114】
その使用および方法は、細菌性赤痢、ライター症候群、および/または溶血性尿毒症症候群を含むがこれに限らない疾患を防止/処置するために特に有用である。
【0115】
治療的処置の有効性を、本発明の組成物の投与後にShigella感染をモニターすることによって試験し得る。予防的処置の有効性を、その組成物の投与後に、ブレブ中の免疫原性タンパク質または他の抗原に対する免疫反応をモニターすることによって試験し得る。本発明の組成物の免疫原性を、それらを試験被験体(例えば12−16ヶ月齢の小児)に投与し、そして次いで標準的な血清学的パラメーターを決定することによって決定し得る。これらの免疫反応を、一般的に組成物の投与のおよそ4週間後に決定し、そして組成物の投与前に決定した値と比較する。1回より多くその組成物の投与を行う場合、1回より多い投与後の決定を行い得る。
【0116】
本発明の組成物を、一般的に患者へ直接投与する。直接的な送達を、非経口注射(例えば皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、または組織の間質腔に)によって、または直腸、経口、膣、局所、経皮、鼻腔内、眼、耳、肺、もしくは他の粘膜投与によって達成し得る。大腿または上腕への筋肉内投与が好ましい。注射は、針(例えば皮下針)により得るが、代替的に無針注射を使用し得る。典型的な筋肉内投与量は、約0.5mlである。
【0117】
本発明を使用して、全身性および/または粘膜免疫を誘発し得る。
【0118】
投薬処置は、単回投与スケジュールまたは複数回投与スケジュールであり得る。一次免疫化スケジュールにおいて、および/または追加免疫化スケジュールにおいて、複数回投与を使用し得る。一次投与スケジュールの後に、追加投与スケジュールが続き得る。一次投与の間(例えば4−16週間)および一次投与と追加投与との間の適当な時間を、日常的に決定し得る。
【0119】
一般
「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」および「からなる(consisting)」を包含し、例えばXを「含む(comprising)」組成物は、Xのみからなり得、またはさらなる何かを含み得る(例えばX+Y)。
【0120】
数値xに関連して「約」という用語は任意であり、そして例えばx±10%を意味する。
【0121】
「実質的に」という用語は、「完全に」を除外しない。例えばYを「実質的に含まない」組成物は、完全にYを含まない場合がある。必要な場合、「実質的に」という用語を、本発明の定義から省略し得る。
【0122】
2つのアミノ酸配列の間の配列同一性パーセンテージへの言及は、アライメントした場合に、2つの配列を比較して、そのパーセンテージのアミノ酸が同一であることを意味する。このアライメントおよび相同性または配列同一性パーセントを、当該分野で公知であるソフトウェアプログラム、例えば参考文献84の項7.7.18において記載されたものを用いて決定し得る。好ましいアライメントを、ギャップオープンペナルティーが12、およびギャップ伸長ペナルティーが2、BLOSUMマトリックスが62であるアフィンギャップサーチを用いたSmith−Waterman相同性検索アルゴリズムによって決定する。Smith−Waterman相同性検索アルゴリズムは周知であり、そして参考文献85において開示される。
【0123】
「GI」ナンバリングを上記で使用する。GIナンバー、または「GenInfo Identifier」は、配列がデータベースに加えられたときに、NCBIによって処理された各配列記録に連続的に割り当てられた一連の数字である。GIナンバーは、配列記録のアクセッション番号との類似性はない。配列がアップデートされた場合(例えば訂正のために、またはより多くのアノテーションまたは情報を加えるために)、それは新しいGIナンバーを受け取る。従って、所定のGIナンバーに関連する配列は決して変化しない。
【0124】
本発明が「エピトープ」に関する場合、このエピトープはB細胞エピトープおよび/またはT細胞エピトープであり得る。そのようなエピトープを、経験的に(例えばPEPSCAN[86、87]または同様の方法を用いて)同定し得、またはそれらを予測し得る(例えばJameson−Wolf抗原性指標[88]、マトリックスに基づくアプローチ[89]、MAPITOPE[90]、TEPITOPE[91、92]、神経ネットワーク(neural network)[93]、OptiMer&EpiMer[94、95]、ADEPT[96]、Tsites[97]、親水性[98]、抗原性指標[99]、または参考文献100−101において開示された方法等を用いて)。エピトープは、抗体またはT細胞受容体の抗原結合部位によって認識され、そしてそこに結合する抗原の一部であり、そしてそれらはまた「抗原決定基」とも呼ばれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】図1は、培養物から精製した本発明のブレブの電子顕微鏡写真を示す。
【図2】図2は、S.sonneiΔtolRΔgalU由来のブレブの2D SDS−PAGEを示す。
【図3】図3は、抗コア抗体で染色した、様々な示した株におけるブレブのLPSを示す。
【図4】図4は、免疫したマウス由来の血清を用いた、ブレブの2D分離タンパク質のイムノブロットを示す。
【図5】図5は、異なる条件下で増殖した細菌のSDS−PAGEを示す。
【図6】図6は、吸着したブレブ中のタンパク質を示す。レーン左から右へ:1)タンパク質分子量マーカー、2)SsOMB10μg、3)SsOMB2μg、4)1ヶ月間アルミニウムに吸着したSsOMB10μg。
【図7】図7は、示した株のFACSデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0126】
発明を実施するための様式
S.sonneiの変異体の調製
野生型S.sonnei53GのtolR遺伝子を、λ Redシステムを用いて欠失させた[11、102]。λ Redプラスミドで形質転換したコンピテント細胞を調製し、そして次いで相同的組換えによってtolR遺伝子を抗生物質耐性遺伝子と交換するようデザインされた直鎖状断片で形質転換する。その断片が染色体に組み込まれたクローンを、抗生物質に対する耐性によって選択し、そしてtolRの欠失を、PCRまたは他の技術によって確認する。次いで、37℃で新しいクローンを増殖させることによって、温度感受性λRedプラスミドを除去し得る。
【0127】
このΔtolR変異体におけるTolR発現の欠如を確認し、そしてもとの野生型単離物と比較し、増殖の間、培地へより多くのブレブが放出されることが確認された。
【0128】
galU遺伝子も、同様の方法で欠失させて、ΔgalU単一変異体およびΔtolRΔgalU二重変異体を生じた。変異体によって放出されるブレブは、O抗原を欠く欠損LPSを有することが確認される。
【0129】
修飾LPSを有するΔtolRΔmsbB二重変異体株を、同じ方法で調製する。
【0130】
有毒性プラスミドも、ΔtolRおよびΔtolRΔmsbB株から除去した。
【0131】
S.flexneriの変異体の調製
S.flexneriのtolR遺伝子を、上記でS.sonneiに関して記載したように、λRedシステムを用いて欠失させた。S.flexneriのO抗原生合成を、完全なrfbG遺伝子ならびにrfbFおよびrfcの一部を含む染色体断片の欠失によって破壊し、このことは、3つの遺伝子全ての活性化を引き起こす。その欠失を、λRedシステムを用いて産生し、そしてΔrfbGと省略される。
【0132】
ΔtolRΔrfbG二重変異体を、同じ方法で産生した。
【0133】
修飾LPSを含むΔtolRΔhtrB二重変異体を、同じ方法で産生した。
【0134】
有毒性プラスミドも、これらの株から除去した。
【0135】
ブレブの精製
二重変異体ΔtolRΔgalU株の発酵を、以下の条件下で行った:pH7.1、37℃、撹拌を調節し、そして通気を最大に設定することによって溶存酸素を30%飽和に維持。pHを、4Mの水酸化アンモニウムを加えることによって調節した。泡を、実施の間に10%のPPGを加えることによって調節した。培地は以下の成分からなっていた:KHPO 5g/l、KHPO 20g/l、および酵母抽出物30g/l。オートクレーブによって培地を滅菌した後、グリセロール 15g/lおよびMgSO 2mMを、接種の前に加えた。培養接種材料は、発酵槽容量の5%であった。その発酵プロセスは約13時間かかり、そして細胞濃度を600nmにおける光学密度として測定した。
【0136】
S.sonnei ΔtolRΔmsbB二重変異体株の発酵プロセスを、規定の培地で行った:グリセロール 30g/l、KHPO 13.3g/l、(NHHPO 4g/l、MgSO・7HO(1M) 2ml、クエン酸1.7g/l、CoCl・6HO 2.5mg/l、MnCl・4HO 15mg/l、CuCl・2HO 1.5mg/l、HBO 3mg/l、NaMoO・2HO 2.5mg/l、Zn(CHCOO)・2HO 13mg/l、クエン酸第二鉄2μM、チアミン 50mg/l、ニコチン酸10mg/l、L−アスパラギン酸2.5g/l。
【0137】
発酵ブロスにおいて産生した小胞を、2つの連続的なTFF(タンジェンシャルフローろ過)工程:0.22μmにおけるマイクロろ過(micro−filtration)および次いで0.1μmにおける2番目のマイクロろ過を用いて精製した。最初のろ過工程中に、孔径0.22μmのカセットを通したTFFによって、小胞をバイオマスから分離した。そのバイオマスを最初に4倍に濃縮し、PBSに対する5回のダイアフィルトレーション工程の後に、その小胞をろ液中で収集した。2番目のろ過工程において、小胞を可溶性タンパク質から精製するために、0.22μmTFFからのろ液を、さらに0.1μmカットオフカセットを通してマイクロろ過した。その小胞はフィルターカセットを通過できなかった。5回のダイアフィルトレーション工程後、小胞を含む保持物(retentate)を収集した。
【0138】
最終的な精製産物を、TEMで観察した(図1)。ブレブは、直径約50nmの均一なサイズを有する。
【0139】
S.flexneri変異体由来のブレブを、S.sonneiΔtolRΔgalUに関して使用したのと同じ方法で、酵母抽出培地中で様々な株を増殖させた後、精製した。
【0140】
ブレブの特徴付け
プロテオミクスアプローチは、そのブレブが本質的に純粋な外膜であることを確認した。外膜の破壊によって得られる従来の外膜小胞(OMV)と異なり、そのブレブは親油性タンパク質を保存し、そして本質的に細胞質および内膜成分を含まない。
【0141】
S.sonneiおよびS.flexneri由来のブレブを、界面活性剤で変性させ、そしてタンパク質をLC−MS/MSアプローチで同定した。あるいは、ブレブをSDSpageまたは2Dゲル電気泳動によって分離した(図2)。目に見えるバンドおよびスポットをゲルから切り取り、そしてタンパク質マスフィンガープリントによってタンパク質を同定した。異なるタンパク質の相対的な量を、SDS−PAGEのバンドまたは2Dゲルのスポットの濃度計分析によって研究した。
【0142】
図3は、野生型ShigellaおよびE.coli(全ての株はΔtolRバックグラウンドである)と比較した、ΔgalU変異体株のLPS移動度のシフトを示す。
【0143】
表面の消化に基づく、2番目のプロテオミクスアプローチを使用して、膜タンパク質の露出した部分を特徴付けした。タンパク質のセットは、ブレブで免疫化したマウス由来の血清と反応性であると同定され、そしてこれらの多くは、株の大きなパネルにおいて保存されていることが見出された。大部分の内在性外膜タンパク質の構造については、ほとんど何も知られていない。ブレブのサーフォーム(surfome)を、プロテアーゼによる処理および放出されたペプチドのLC−MS/MSによる回収および同定によって調査した。ブレブは生の細菌細胞全体の表面を示すはずであるため、このマップはS.sonneiの表面の露出タンパク質を表すはずである。
【0144】
これらおよび他のアプローチによって、表1に列挙した129個のタンパク質がブレブにおいて見られた。
【0145】
ブレブ免疫原性
ΔtolRΔgalU株由来のブレブで免疫化したマウスは、図4で示すように、ブレブの2Dゲルと反応する血清を産生する。従ってそのブレブは免疫原性である。
【0146】
アジュバント(水酸化アルミニウムまたはフロイント完全)有りまたは無しで、2μgまたは10μgのS.sonneiΔtolRΔgalUブレブ(全タンパク質として測定)をマウスに投与した。免疫化研究から得られた血清におけるIgGの産生を分析するために、伝統的なELISA法を行った。全ての群のマウス由来の血清は、ブレブ特異的IgGの高レベルの産生を示した。ブレブを単独で、またはアジュバントと組み合わせて使用した場合に、IgG産生に有意な差は検出されなかった。2μgの低用量で免疫化した群は、10μgで免疫化した群と同じレベルのブレブ特異的IgGを示し、このことは、低用量ワクチンが達成可能であり得ることを示す(すなわち1ドルあたりより多くの投与)。他のS.SonneiおよびS.flexneri株由来のブレブが、同様に免疫原性であった。
【0147】
ブレブに対して産生した血清を、3つの異なる細菌:S.sonneiG53、S.flexneri 2a 2457T、またはS.flexneri 5 M90Tとの反応性に関して試験した。次いでサンプルを標識した二次Abで染色し、そしてフローサイトメトリーによって分析した。図7で示すように、S.sonneiおよびS.flexneri株は、上記血清と交差反応する。
【0148】
従って、ブレブアプローチは、有効かつ低コストのワクチンを産生する強い可能性を有し、そして広域スペクトルのワクチンへ向けて、様々なShigella株へと拡張し得る。
【0149】
ブレブの吸着
ブレブを、吸着のために水酸化アルミニウム(2mg/ml)と組み合わせた。吸着した物質を、4℃で1日、1週間、または1ヶ月間保存した。ブレブは1日後完全に吸着され、そして1ヶ月後でも脱着の証拠は存在しなかった(図6)。
【0150】
鉄制限増殖
図5は、様々な条件下で増殖したShigellaによって発現されるタンパク質を示す。レーン4において、細菌を200μMのFeSOの存在下で増殖させ、一方レーン5においてその培養は200μMのジピリジルを有していた。挿入図は、鉄制限条件下で3つのタンパク質がアップレギュレートされることを示す。これらの3つのタンパク質は、FepA外膜受容体(GI74311118)、コリシンI受容体(GI74312677)、および推定鉄シデロホア受容体(GI74313972)と同定された。これらのタンパク質は、Shigella spp.およびenterobacteriaceae内でよく保存されており、そして潜在的に高度に免疫原性である。従って鉄制限条件下でShigellaを増殖させることは、通常の増殖条件と比較して、これらのタンパク質が濃縮されたブレブの放出を引き起こし得る。
【0151】
本発明は、単なる例とし記載され、そして本発明の範囲および精神に留まりながら修飾を行い得ることが理解される。
【0152】
【表1−1】

【0153】
【表1−2】

【0154】
【表1−3】

【0155】
【表1−4】

配列番号70、71、73、74、76、111、112、114−129および131−135は、S.sonneiΔtolRブレブから同定された。配列番号8−15および17−58は、S.sonneiΔtolRΔgalUブレブから同定された。配列番号83、94、97、および107は、S.flexneriΔtolRブレブから同定された。配列番号68、69、72、75、77−82、84−93、95、96、98−106、108−10、113、130、および136は、S.flexneriΔtolRΔrfbGブレブから同定された。配列番号60−67は、S.sonneiの表面消化から同定された。
【0156】
サブセット1:配列番号68、69、72、75、77−110、113、130および136
サブセット2:配列番号8−15、17−58、60−67、70、71、73、74、76、111、112、114−129および131−135
サブセット3:配列番号1−60
NB:配列番号18は、配列番号5と同一である;配列番号33は、配列番号2と同一である;配列番号9および16は関連している(約97%の同一性);配列番号23および59は関連している(約98%の同一性)。
【0157】
【数1】

【0158】
【数2】

【0159】
【数3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
TolAタンパク質、TolBタンパク質、TolQタンパク質、TolRタンパク質、およびPalタンパク質のうちの4つ以下を発現する、Shigella細菌。
【請求項2】
前記タンパク質のうちの4つを発現し、TolRを発現しない、請求項1に記載の細菌。
【請求項3】
TolRタンパク質を発現しない、Shigella細菌。
【請求項4】
ShigellaのΔtolR株である、細菌。
【請求項5】
天然のShigellaリポ多糖を発現しない、前述の請求項のいずれかに記載の細菌。
【請求項6】
天然のShigella O抗原を発現しない、請求項5に記載の細菌。
【請求項7】
前記株が、ΔtolRΔgalU株である、請求項4に記載の細菌。
【請求項8】
stxA遺伝子および/またはstxB遺伝子が、不活性化されている、前述の請求項のいずれかに記載の細菌。
【請求項9】
TolAタンパク質、TolBタンパク質、TolQタンパク質、TolRタンパク質およびPalタンパク質を発現するShigella細菌であって、該TolAタンパク質、該TolQタンパク質、該TolRタンパク質および/または該Palタンパク質は、(a)該細菌の内膜または外膜に位置し、かつ(b)1つまたはそれ以上のアミノ酸配列変異を含み、ここで、該細菌は、培地中で増殖する場合に、該変異を含まない同じ細菌と比較して、より多量の外膜ブレブを放出する、Shigella細菌。
【請求項10】
Shigella細菌であって、該Shigella細菌のTol−Palシステムの1つまたはそれ以上の成分が修飾を有し、ここで、該細菌は、培地中で増殖する間に、該修飾を欠いている同じ細菌よりも、該培地中に多量の外膜ブレブを放出し、かつ該細菌は、(i)天然のShigellaリポ多糖および/または(ii)Shigella腸毒素を発現しない、Shigella細菌。
【請求項11】
Shigellaブレブを調製するためのプロセスであって、請求項1から10のいずれか一項に記載の細菌を含む培地から該ブレブを分離する工程を含み、該細菌が、該細菌による該培地へのブレブの放出を可能にする条件下で増殖させられた、プロセス。
【請求項12】
前記細菌が、鉄制限条件下で増殖させられた、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
過剰ブレブ形成Shigella細菌を調製する方法であって、培地中で増殖させられた場合に、修飾によって該細菌が開始細菌より多量の外膜ブレブを該培地中へ放出するように、該開始細菌のTol−Palシステムの1つまたはそれ以上の成分をコードする遺伝子を修飾する工程を含み、該修飾は、該開始細菌のtolA遺伝子、tolB遺伝子、tolQ遺伝子、tolR遺伝子、および/またはpal遺伝子の1つまたはそれ以上を変異させることを含む、方法。
【請求項14】
請求項1から10のいずれか一項に記載の細菌もしくは請求項13に記載の方法によって得ることができる細菌から単離されたかもしくは得ることができるか、または請求項11もしくは請求項12に記載のプロセスによって単離されたかもしくは得ることができる、ブレブ。
【請求項15】
ブレブを含む組成物であって、該ブレブは、請求項1から10のいずれか一項に記載の細菌または請求項13に記載の方法によって得ることができる細菌の培養の間に培地に放出される、組成物。
【請求項16】
任意の生の細菌および/または細菌全体を含まない、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
ブレブを含む組成物であって、該ブレブが、培地の0.22μmのフィルターを通したろ過後に得ることができるろ液に存在し、請求項1から10のいずれか一項に記載の細菌または請求項13に記載の方法によって得ることができる細菌が、該培地中で増殖させられた、組成物。
【請求項18】
請求項1から10に記載の細菌または請求項13に記載の方法によって得ることができる細菌を含む培地であって、該細菌が、該細菌による該培地へのブレブの放出を可能にする条件下で増殖させられた、培地。
【請求項19】
機能的HtrB酵素を発現しない、Shigella株。
【請求項20】
htrBがノックアウトされている、請求項19に記載のShigella株。
【請求項21】
以下:
(a)配列番号8から67から選択されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b)配列番号8から67のうちの1つと少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ/または配列番号8から67のいずれか1つの少なくとも7個の連続的なアミノ酸の断片であって、エピトープを含む、断片を含む、タンパク質
のうちの1つまたはそれ以上を含む、Shigellaブレブ。
【請求項22】
ブレブを含まない免疫原性組成物であって、該組成物は、
(a)アミノ酸配列配列番号8から136;
(b)配列番号8から136のうちの1つと少なくとも85%の同一性を有し、かつ/または配列番号8から136のいずれか1つの少なくとも7個の連続的なアミノ酸の断片を含み、かつ配列番号8から136のうちの1つに由来するエピトープを含む、アミノ酸配列
を含むタンパク質を含む、組成物。
【請求項23】
鉄利用可能性を制限している、Shigellaを培養するためのプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−505716(P2013−505716A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530359(P2012−530359)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【国際出願番号】PCT/IB2010/002582
【国際公開番号】WO2011/036564
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(512078982)ノバルティス バクシンズ インスティテュート フォー グローバル ヘルス エスアールエル (1)
【Fターム(参考)】