説明

過張力検出表示装置

【課題】懸架物の荷重乃至張力を直接検出し、当該荷重乃至張力が閾値を越えているかどうかの目安となるようにこれを表示する。
【解決手段】過張力検出表示装置において、フレーム本体1に設けたシャフト3に吊り下げた作動体4に懸架物を直接又は間接に吊り下げ、作動体4は略縦板形状で、上部に作動孔4cを有し、当該作動孔4cの内周径より小径の環状体10を当該作動孔4cに配置し、当該環状体10の下端から前記作動孔4cの下部の内周縁まで達する小幅の連結片11で一体に接続され、シャフト3を環状体10の孔に嵌め入れて作動体4を吊り下げ、作動体4の下部に懸架孔4aを設け、懸架物の荷重乃至張力が閾値を超えると連結片11が破断し、これにより作動体4の作動孔4cの上部の内周縁が環状体10の上縁に当たるまで作動体4が落下し、この作動体4の落下動作に連動して表示体が表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クレーン等の吊上げ重機で重い物を吊り上げて移動させる場合や、電線の移線の場合のような金車等に電線が懸架された場合、荷重乃至張力がある閾値を超えるとこれを検知し、その状態が危険であることを直ちに作業員に知らせるための表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クレーンで重いものを吊り上げて移動する場合、通常、クレーンには荷重計が装着されているため、作業員は、危険を予測することができる。しかし、一般的な道路工事、建築現場では、重いとは言え、荷重計付きのクレーンを使用するほど重くない物を吊り上げる場合の方が多いので、荷重計の装着されていないクレーンを使用することのほうが多い。
【0003】
このような場合、作業員は荷重が何キロあるかを知ることよりも、吊り上げた状態で、荷重を支えきれないような危険な状態なのか否かを知ることの方が重要である。
【0004】
また、荷重計が装着されたクレーンで吊り上げる場合でも、クレーンの運転者は運転席に装着されている荷重計で危険な状態か否かを常時知ることができるが、クレーンから離れて、玉掛け等荷物をクレーンに取り付ける作業員は、それを知ることができない。このため、クレーンを取り巻く作業員は、クレーンの懸架状態を勘で行わざるを得ず、事故を起こしやすい。
【0005】
また、クレーンではなく、図15のように、既設の鉄塔から仮鉄塔へ電線を移線する場合や、鉄塔に支持されている電線をその鉄塔の上部へ移線する場合には、金車を使用しているが、電線の移線作業中に、移線する電線の張力が変化して金車に掛る荷重が変化し、金車ごと落下する場合があるため、電線や金車の荷重が一定値を超えないようロードセルや張力計を介在させて、常時自動制御監視している。
【0006】
しかしながら、このような電線の移線作業においては、山間部のような作業の困難な場合だけでなく、平地で人家が少なく、移線作業が簡単にできる場合もあり、このようなケースの方が多いが、いずれの場合も現在は、高価なロードセルや張力計を使用している。
【0007】
【特許文献1】特開平9−151083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、重いとは言え、荷重計付きのクレーンを使用するほど重くはない物を吊り上げる場合、作業員は、荷重が何キロあるかを知ることよりも、吊り上げた状態が、荷重を支え切れないような危険な状態なのか否かを知りたいのに、これを簡単に知ることができる手段は、これまで開発されていない。
【0009】
また、荷重計付きクレーンを使用して吊り上げる場合でも、クレーンの運転者は、荷重状態を常時知ることができるが、クレーンから離れてクレーンに荷物を取り付ける作業員は、クレーン運転者の合図等があっても、現場の騒音等によりキャッチすることができない状況である。
【0010】
また、電線の移線作業のように、ロードセルや張力計で荷重や張力を常時測定し、これらの荷重や張力の変化に伴って駆動装置を自動的に制御するには、装置のコストがかかる。また、作業員が逐次変化する荷重を絶えず監視する場合は、作業員の労力の負担となり、作業が煩雑となる。
【0011】
そこで、この発明はこれらの従来技術に鑑み、荷重計、ロードセル、張力計等を装着せずに、重い物を懸架する装置が懸架し、荷重乃至張力がある閾値を越えた場合に、それを表示する、簡易な過張力表示装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、懸架物が一定値以上の荷重乃至張力を受けた際これを検出して表示する、過張力検出表示装置において、装置本体に設けたシャフトに吊り下げた作動体に前記懸架物を直接又は間接に吊り下げ、前記作動体は略縦板形状で、上部に作動孔を有し、当該作動孔の内周径より小径の環状体を当該作動孔内に配置し、当該環状体の下端から前記作動孔の下部の内周縁まで達する小幅の連結片で一体に接続され、当該作動孔の内周縁と環状体の外周縁との間は前記連結片箇所を除いて透孔を有し、前記シャフトを前記環状体の孔に嵌め入れて前記作動体を吊り下げ、当該作動体の下部に前記懸架物を直接又は間接に吊り下げるための懸架孔を設け、前記懸架物の荷重乃至張力が閾値を超えると前記連結片が破断し、これにより前記作動体の作動孔の上部の内周縁が環状体の上縁に当たるまで前記作動体が落下し、この作動体の落下動作に連動して表示体が表示する構成である、過張力検出表示装置とした。
【0013】
請求項2の発明は、前記作動体を、連結片の幅が異なるものを複数用意しておき、要求される荷重に応じた幅の連結片を有する作動体を選択的に取り替えることができる構成とした、請求項1に記載の過張力検出装置とした。
【0014】
請求項3の発明は、前記作動体の前記懸架孔が、前記作動体の下部に設けた第2の作動孔内に設けた第2の環状体に設けられ、第2の環状体の外径は第2の作動孔の内周径より小さく、当該第2の環状体の上端から前記第2の作動孔の上部の内周縁まで達する小幅の第2の連結片で一体に接続され、当該第2の作動孔の内周縁と第2の環状体の外周縁との間は前記第2の連結片箇所を除いて透孔を有し、前記懸架物の荷重乃至張力が前記閾値より小さい値の第2の閾値を超えると前記第2の連結片が破断し、第2の環状体の下端が第2の作動孔の内周下端縁に落下する構成とした、請求項1又は2に記載の過張力検出器とした。
【0015】
また、請求項4の発明は、前記作動体の両側に、前記作動体の前記懸架孔に相応する懸架孔を有する補助板を夫々重ねて設け、これらの各補助板には前記シャフトの通る長孔を設け、前記吊り下げた状態で各長孔の下部に前記シャフトが位置し、前記作動体が落下した時、各長孔の上端に前記シャフトが当接する構成である、請求項1〜3のいずれかに記載の過張力検出表示装置とした。
【0016】
また、請求項5の発明は、前記表示体の表示が視覚的表示又は聴覚的表示のいずれか又は双方である、請求項1〜4のいずれかに記載の過張力検出表示装置とした。
【0017】
また、請求項6の発明は、前記作動体の落下動作に連動して表示体が表示する構成が、前記装置本体の一側上部に回転自在に設けられ、常時バネの力で回転するように付勢された回動係止体が設けられ、前記作動体の一側に設けられた突出片が前記回転係止体をバネの力に抗して係止し、前記装置本体の一側の回転係止体の下方に二つ割の横長筒体が設けられ、当該筒体は、上半分が装置本体に固定され、下半分がシャフトにより回転自在に装置本体に設けられ、この筒体内に、上半分に一端を固定され他端を筒状に巻き付けた帯状の表示体が挿入され、当該筒体の下半分の開口部に一端を固定した紐状体の他端が前記回転係止体に係止され、前記作動体の落下動作により、前記突出片の回転係止体に対する係止が解かれ、当該回転係止体は前記バネの力で回転し、当該回転係止体に係止されていた紐状片の他端が前記回転係止体から外れ、これにより紐状体が垂下して筒体の下半分が開き、筒体の中から帯状の表示体が筒体下方に垂れさがる構成とした、請求項1〜4のいずれかに記載の過張力検出表示装置とした。
【発明の効果】
【0018】
請求項1〜5の発明では、懸架物の荷重乃至張力が閾値を越えると、当該懸架物を吊っている前記作動体の作動孔内の環状体の連結片が破断するように、当該作動体を構成しているので、前記懸架物の荷重乃至張力が閾値を超えると確実に作動体が落下動作を起こし、これにより確実に表示が行われることとなる。この表示は、帯状の表示体の出現や、ランプ等の点灯や点滅による視覚的な表示や、音声による聴覚的な表示でも良く、また、これらの双方による表示であっても良い。従って、この表示があると、作業者は前記懸架物の荷重乃至張力を直ちに緩めるように作業し、安全を確保することができる。また、従来のように作業者が常に荷重乃至張力を監視している必要がない。また、前記作動体の連結片はヒューズの作用をするものであり、前記作動体の連結片の幅を変えることにより所望の荷重乃至張力で破断させて、当該過張力を表示することができる。
【0019】
また、請求項2の発明によれば、連結片の幅が異なる作動体を複数用意してあるため、要求される荷重に応じた幅の連結片を有する作動体を選択して取り替えることができるため、装置全体を代えることなく、作動体のみを代えれば懸架物の所望の荷重乃至は張力の過張力を表示できる。
【0020】
また、請求項3の発明によれば、前記作動体の、シャフトを支持している環状体と作動孔とを繋いでいる連結片が破断する前に、懸架物を支持する懸架孔が設けられた第2の環状体と第2の作動孔とを繋ぐ第2の連結片が破断するので、当該装置を使用する前に、作動体の第2の連結片を点検し、当該第2の連結片が変形又は破断していれば、当該作動体を取り替える等の処置が行え、さらに安全である。また、この作動体の第2の連結片の破断を気付かずに使用した場合でも前記作動体のシャフトを支持する環状体と作動孔の連結片が破断して過張力を表示するため、二重の安全策を施していることとなる。
【0021】
また、請求項4によれば、前記作動体の両側に、前記作動体の前記懸架孔に相応する懸架孔を有する補助板を夫々重ねて設けているため、懸架物の荷重乃至張力が一定値を超え作動体が落下動作をした際、両側の補助板の長孔の上端で装置本体のシャフトに係止するため、懸架物を作動体とその両側の補助板で支持する構成となっている。従って、一定の荷重乃至張力を越えた場合であっても、懸架物は、作動体と補助板の二つによって当該装置本体に二重に支持され、落下するおそれはない。
【0022】
また、請求項6の発明によれば、作動体の落下動作により、回転係止体の係止が解けて、回転係止体はバネの力で勢いよく回転し、これにより紐状体の一端が回転係止体から外れ、当該紐状体は筒体の下半分の開口部に設けられた他端を中心に回転し、垂下し、筒体の下半分が前記紐状体の回転、垂下により開き、筒体内の帯状の表示体が筒体から垂れさがる。従って、作業者は表示体の垂下によって前記懸架物の荷重乃至張力が一定値を超えていることを検知し、次の対策が打つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
この発明は、懸架物が一定値以上の荷重乃至張力を受けた際これを検出して表示する、過張力検出表示装置において、装置本体に設けたシャフトに吊り下げた作動体に前記懸架物を直接又は間接に吊り下げ、前記作動体は略縦板形状で、上部に作動孔を有し、当該作動孔の内周径より小径の環状体を当該作動孔に配置し、当該環状体の下端から前記作動孔の下部の内周縁まで達する小幅の連結片で一体に接続され、当該作動孔の内周縁と環状体の外周縁との間は前記連結片箇所を除いて透孔を有し、前記シャフトを前記環状体の孔に嵌め入れて前記作動体を吊り下げ、当該作動体の下部に前記懸架物を直接又は間接に吊り下げるための懸架孔を設け、前記懸架物の荷重乃至張力が閾値を超えると前記連結片が破断し、これにより前記作動体の作動孔の上部の内周縁が環状体の上縁に当たるまで前記作動体が落下し、この作動体の落下動作に連動して表示体が表示する構成である、過張力検出表示装置とした。
【0024】
これにより、当該懸架物の荷重乃至張力が閾値を超えた場合、懸架物を支持している作動体が動作し、表示が確実に行われることとなる。
【実施例1】
【0025】
以下、この発明の実施例1を図に基づいて説明する。図1はこの発明の過張力検出表示装置の断面図、図2は同斜視図、図3は同正面図、図4は同一部省略背面図、図5は同過張力検出表示装置の作動体及び補助板箇所の断面図である。
【0026】
断面門型のフレーム本体1の上面から吊り下げ体2が設けられ、当該フレーム本体1の両側板に渡したシャフト3に作動体4の上部が吊されている。当該作動体4の下部には、懸架物を直接又は他物を介して間接的に懸架する懸架孔4aが設けられ、さらに当該作動体4の上部一側から横方向に突出片4bが設けられている。
【0027】
また、フレーム本体1の開口する一側に、当該フレーム本体1の両側板に渡した小径シャフト5に一端を回転自在に支持した回転係止体6が設けられている。この回転係止体6の両側の各上向き係止片6aに対向するように、前記フレーム本体1の開口両側縁から下向き係止片7が設けられている。さらに当該回転係止体6の下方の、フレーム本体1の開口する一側下部に表示体8を丸めて収納した筒体9が設けられている。
【0028】
前記作動体4は、図5に示すように、略縦板形状のヒューズ金具で、上部に作動孔4cを有し、当該作動孔4cの内周径より小径の環状体10を当該作動孔4cに配置し、当該環状体10の下端から前記作動孔4cの下部の内周縁まで達する小幅の連結片11で一体に接続され、当該作動孔4cの内周縁と環状体10の外周縁との間は前記連結片11箇所を除いてC字型の透孔12を有し、前記シャフト3を前記環状体10の孔に嵌め入れて前記作動体4を吊り下げている。この作動体4の材質は、降伏比(降伏点又は耐力/引張強さ)の高い材料、つまり伸びが少なくて一気に破断するような材質のものが好ましい。
【0029】
この作動体4の作動孔4cに挿入された環状体10及び連結片11は、作動体4と同じ材質で一体に成形されている。そして前記連結片11が、当該作動体4に懸架した懸架物の荷重乃至張力が閾値以上になった際に破断する、ヒューズの働きをする構成となっている。従って、連結片11の幅を変えることにより、破断する荷重値乃至張力値を変えることができる。また、この実施例1では、1本の連結片11を設けたが、複数本の連結片11を設け、これらが破断すると作動体4が落下する構成としても良い。
【0030】
また、当該作動体4の、前記作動孔4cの側方には長孔から成るガイド孔4dが設けられ、当該ガイド孔4d内に、フレーム本体1の両側板に渡した小径シャフト13が通っており、前記連結片11の破断の際、当該ガイド孔4dによって作動体4が垂直に落下できるようになっている。
【0031】
前記回転係止体6は縦板形状で、中央に縦長の透孔6bが穿ってあり、前記作動体4の突出片4bのフック部4eが当該透孔6bに入り、フック部4eが透孔6bの上端縁に係止され、これにより回転係止体6は係止されている。また、この回転係止体6の小径シャフト5との軸支部にはバネ14が設けられ、当該バネ14により回転係止体6は、図1において時計方向に回転し、下方に回転するよう常時付勢されている。従って、前記突出片4bのフック部4eの透孔6bとの係止が解けた場合、回転係止体6はバネの力により回転する。
【0032】
また、この回転係止体6の両側の上向き係止片6aには棒状体15の両端部が係止され、この棒状体15のさらに両端部が前記上向き係止片7に係止されている。また、この棒状体15の両端には連結体16が設けられ、各連結体16に紐状体17の一端が接続され。当該紐状体17の他端は前記筒体9に固定されている。
【0033】
また、前記筒体9は、二つ割の横長の筒体であり、上半分9aが前記フレーム本体1に固定され、下半分9bがシャフト18により回転自在にフレーム本体1に設けられ、前記二つの紐状体17の他端は下半分9bの開口部に固定されている。また、この筒体9内に、上半分9aに一端を固定され他端を筒状に巻き付けた帯状の表示体8が挿入され、当該筒体9の下半分が回転して開くと、丸め込まれていた表示体8は自重で落下し、筒体9から下方に垂れさがる。
【0034】
また、前記作動体4の両側には、図4に示すように、前記作動体4の前記懸架孔4aと同じ箇所に、前記懸架孔4aと一体になった懸架孔19bを有する補助板19を夫々重ねて、ボルトナット20により固定されている。これらの各補助板19には、図6に示すように、前記シャフト3の通る長孔19aを設け、前記吊り下げた状態で各長孔19aの下部に前記シャフト3が位置し、前記作動体4が落下した時、図10に示すように、各長孔19aの上端に前記シャフト3が当接するようになっている。また、図4に示すように、両側に補助板19を有する作動体4とフレーム本体1の両側板との間のシャフト3にはスペーサ21が介在している。
【0035】
この実施例1の過張力検出表示装置において、前記作動体4の懸架孔4aに懸架物(図示省略)を直接又は他物を介して懸架する。そして当該懸架物の荷重乃至張力が、一定値を超えると、図7に示すように作動体4の作動孔4c内の連結片11がその張力に耐えかねて破断する。
【0036】
連結片11が破断すると作動体4は、図8(a)に示すように、作動孔4cの内周上縁に環状体10の外周上縁が当たるまで落下する。その際、ガイド孔4dのシャフト13にガイドされ、略垂直に落下する。すると図9の(a)図に示すように、作動体4の突出片4bのフック部4eが回転係止体6の透孔6bの上端縁に係止されていたが、これが図9の(b)図に示すように、前記フック部4eが前記透孔6bの上端縁から外れ、フック部4eが透孔6bから横に抜けられる位置に成る。そして、図8(b)及び図9の(c)図に示すように、回転係止体6はバネ14(図7参照)の力で回転し、上向き係止片6aは倒れる。
【0037】
これにより、前記回転係止体6の上向き係止片6aに支持されていた棒状体15が落下し、連結体16及び紐状体17が棒状体15の重みで下方に引っ張られ、これにより図8(c)に示すように、筒体9の下半分9bがシャフト18を中心に回転して筒体9は開き、中から表示体8が拡がりつつ落下し、筒体9の上半分に一端を支持された表示体8が、図8(d)に示すように、吊り下がる。これにより遠くからでも当該表示体8が認識され、前記懸架物の荷重乃至張力が閾値を超えたことが分かる。
【0038】
この表示は、装置が破壊する前の段階であることの警報であるが、例えば、使用荷重の2倍の荷重が加わったときに作動して、警報する(安全率2)装置の安全率は3以上であるので、装置が破壊する前に対処することができる。
【0039】
また、その際、作動体4の両側の補助板19は、図10に示すように、各長孔19aの上端に前記シャフト3が当接し、懸架物(図示省略)の荷重乃至張力を作動体4及び二枚の補助板19で受けることとなり、懸架物を落下させることがないように備えている。
【0040】
また、上記実施例1に代えて、図11に示すように、作動体4の懸架孔4aを、前記作動体4の下部に設けた第2の作動孔41内に設けた第2の環状体42に設けられ、第2の環状体42の外径は第2の作動孔41の内周径より小さく、当該第2の環状体42の上端から前記第2の作動孔41の上部の内周縁まで達する小幅の第2の連結片43で一体に接続され、当該第2の作動孔41の内周縁と第2の環状体42の外周縁との間は前記第2の連結片43箇所を除いてC字型の透孔44を有し、懸架物の荷重乃至張力が前記閾値より小さい値の第2の閾値を超えると前記第2の連結片43が破断し、第2の環状体42の下端が第2の作動孔41の内周下端縁に落下する構成としても良い。
【0041】
これは作動体4に降伏比の高い材料を使用しても、耐力と引張強さの間の荷重が加わったとき、前記連結片11は破断しないが永久変形が残ることがある。この永久変形が何度か起こると、想定していた荷重より低い荷重で前記連結片11が破断してしまう。当該作動体4の破断の安全率が約2で良いのであれば問題ないが、正確に安全率2を求めるのであれば、連結片を2箇所設けることが有効である。そこで、図11に示すように懸架孔4aを第2の環状体42に設け、この環境体42を第2の作動孔41の内周縁と第2の連結片43で繋ぎ、当該第2の連結片43は安全率1.5で破断するものとし、装置を使用する前の点検で当該第2の連結片43に破断又は変形があれば交換し、安全を高めることができる。
【0042】
さらに、前記作動体4の連結片11又は第2の連結片43の幅の異なるものを複数用意しておき、要求される荷重に応じて作動体4を選択して取り替えることができる。その際、前記補助板19もセットで交換することにより、作動体4の連結片11の幅だけではなく、板厚も変化させて各種の荷重に容易に対応することができる。
【実施例2】
【0043】
図12はこの発明の実施例2の過張力検出表示装置の断面図、図13は同要部拡大断面図を示す。この実施例2の過張力表示装置は、作動体4の懸架構造は実施例1のものとほぼ同一であり、懸架物の荷重乃至張力が閾値を越え、作動体の連結片が破断し、作動体が落下した後の構造、作用が異なる。また、前記作動体4の形状も若干異なる。
【0044】
作動体4の上部の一側に設けた突出片4bがない。その代わり、作動体4の上部に鍵型片4fを設け、フレーム本体1の両側板に渡したシャフト22に中央部を回転自在に設けたレバー23の一側が前記鍵型片4fの下に位置している。また、このレバー23の他側は、フレーム本体1の一側開口部上部を塞ぐ前側板1aの内側面と当該前側板1aに平行に設けたガイド板24との間に挿入された、上下方向に摺動自在に設けられた係止片25の上端の舌片25aに当接している。また、前記係止片25は、自体の透孔25bに設けたバネ26の力で常時下方に押し下げられるよう付勢されている。
【0045】
この係止片25の下端は、前記フレーム本体1の両側板間に渡した小径シャフト27に回転自在に設けられた回転係止片28の上縁段部28aに係止され、これにより当該回転係止片28の下方への回転(図12における時計方向の回転)が阻止されている。また、この回転係止片28は略水平状態でその上縁が前記前側板1aの下端縁に当接し、上方への回転(図12における反時計方向の回転)が阻止されている。この回転係止片28の先端には、上向き係止片28bが設けられ、棒状体15を、当該上向き係止片28bで支持している。
【0046】
また、この実施例2では、帯状の表示体8は、フレーム本体1の一側下端に、その一端を固定され、フレーム本体1の一側下端に一側縁を回転自在に支持された断面半円形の半円筒体29に挿入され、前記棒状体15に一端を固定された紐状体17はこの半円筒体29の開口部に固定されている。
【0047】
そして、前記作動体4に懸架した懸架物(図示省略)の荷重乃至張力が予め定めた閾値を超えると、図14(a)に示すように、作動体1の連結片11が破断する。すると作動体4の鍵型片4fが下方にさがり、レバー23が反時計方向に回転する。これにより、図14(b)に示すように、係止片25の舌片25aの下面に当接していたレバー23の他端が、係止片25のバネ26の力に抗して係止片25を持ち上げ、回転係止片28の上縁段部28aを係止していた係止片25の下端が当該上縁段部28aから外れ、回転係止片28は、シャフト27を中心に、時計方向に回転する。
【0048】
これにより、図14(c)に示すように、回転係止片28の上向き係止片28bで支持していた棒状体15は回転係止片28から外れて落下し、紐状体17が棒状体15の重みで下方に引っ張られ、これにより図14(d)に示すように、半円筒体29が回転して下方に吊り下がり、中の表示体8が拡がりつつ落下し、吊り下がる。これにより遠くからでも当該表示体8が認識され、前記懸架物の荷重乃至張力が閾値を超えたことが分かる。
【0049】
なお、この発明は、前記実施例に限定されるものではなく、作動体4が落下動作をすることに連動して、表示体が表示する構成としても良い。例えば、作動体4の落下動作により、スイッチがオンとなり警報器が鳴ったり、ランプが点灯又は点滅する等、適宜の聴覚的表示や視覚的表示をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】この発明の実施例1の過張力検出表示装置の断面図である。
【図2】この発明の実施例1の過張力検出表示装置の斜視図である。
【図3】この発明の実施例1の過張力検出表示装置の正面図である。
【図4】この発明の実施例1の過張力検出表示装置の一部省略背面図である。
【図5】この発明の実施例1の過張力検出表示装置の作動体の正面図である。
【図6】この発明の実施例1の過張力検出表示装置の作動体及び補助板箇所の断面図である。
【図7】この発明の実施例1の過張力検出表示装置が過張力を表示した状態の断面図である。
【図8】この発明の実施例1の過張力検出表示装置の作動体の連結片が破断した状態での表示体での表示までの各部の作動工程を示す説明図で、(a)図は作動体の連結片が破断した状態を示す、(b)図は回転係止体が作動体のフック部から離れた状態を示す、(c)図は回転係止体から棒状体が外れて落下した状態を示す、(d)図は、表示体の下端が下方に落下して表示された状態を示す説明図である。
【図9】この発明の実施例1の過張力検出表示装置の作動体と回転係止体の係止、作動状態を示す説明図であり、(a)図は係止状態、(b)図は係止状態が解かれた状態、(c)図は係止状態が解かれて回転係止体が回転した状態を夫々示すものである。
【図10】この発明の実施例1の過張力検出表示装置の作動後の作動体及び補助板箇所の断面図である。
【図11】この発明の実施例1の過張力検出表示装置の作動体の他の例の正面図である。
【図12】この発明の実施例2の過張力検出表示装置の断面図である。
【図13】この発明の実施例2の過張力検出表示装置の要部拡大断面図である。
【図14】この発明の実施例2の過張力検出表示装置の作動体の連結片が破断した状態での表示までの各部の作動工程を示す説明図で、(a)図は作動体の連結片が破断し、係止片が回転係止片から外れた状態を示す、(b)図は回転係止片が下方に回転した状態を示す、(c)図は回転係止片から棒状体が外れて落下した状態を示す、(d)図は、表示体に下端が下方に落下して表示された状態を示す説明図である。
【図15】鉄塔間の電線の移線工法を示す概略構成斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
1 フレーム本体 2 吊り下げ体
3 シャフト 4 作動体
4a 懸架孔 4b 突出片
4c 作動孔 4d 長孔
4e フック部 5 小径シャフト
6 回転係止体 6a 上向き係止片
6b 透孔 7 下向き係止片
8 表示体 9 筒体
9a 上半分 9b 下半分
10 環状体 11 連結片
12 透孔 13 小径シャフト
14 バネ 15 棒状体
16 連結体 17 紐状体
18 シャフト 19 補助板
19a 長孔 19b 懸架孔
20 ボルトナット 21 スペーサ
22 シャフト 23 レバー
24 ガイド板 25 係止片
25a 舌片 25b 透孔
26 バネ 27 小径シャフト
28 回転係止片 28a 上縁段部
28b 上向き係止片 29 半円筒体
41 第2の作動孔 42 第2の環状体
43 第2の連結片 44 透孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸架物が、一定値以上の荷重乃至張力を受けた際これを検出して表示する、過張力検出表示装置において、
装置本体に設けたシャフトに吊り下げた作動体に前記懸架物を直接又は間接に吊り下げ、
前記作動体は略縦板形状で、上部に作動孔を有し、当該作動孔の内周径より小径の環状体を当該作動孔に配置し、当該環状体の下端から前記作動孔の下部の内周縁まで達する小幅の連結片で一体に接続され、当該作動孔の内周縁と環状体の外周縁との間は前記連結片箇所を除いて透孔を有し、前記シャフトを前記環状体の孔に嵌め入れて前記作動体を吊り下げ、当該作動体の下部に前記懸架物を直接又は間接に吊り下げるための懸架孔を設け、
前記懸架物の荷重乃至張力が閾値を超えると前記連結片が破断し、これにより前記作動体の作動孔の上部の内周縁が環状体の上縁に当たるまで前記作動体が落下し、この作動体の落下動作に連動して表示体が表示する構成であることを特徴とする、過張力検出表示装置。
【請求項2】
前記作動体を、連結片の幅が異なるものを複数用意しておき、要求される荷重に応じた幅の連結片を有する作動体を選択的に取り替えることができる構成としたことを特徴とする、請求項1に記載の過張力検出装置。
【請求項3】
前記作動体の前記懸架孔が、前記作動体の下部に設けた第2の作動孔内に設けた第2の環状体に設けられ、第2の環状体の外径は第2の作動孔の内周径より小さく、当該第2の環状体の上端から前記第2の作動孔の上部の内周縁まで達する小幅の第2の連結片で一体に接続され、当該第2の作動孔の内周縁と第2の環状体の外周縁との間は前記第2の連結片箇所を除いて透孔を有し、前記懸架物の荷重乃至張力が前記閾値より小さい値の第2の閾値を超えると前記第2の連結片が破断し、第2の環状体の下端が第2の作動孔の内周下端縁に落下する構成としたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の過張力検出器。

【請求項4】
前記作動体の両側に、前記作動体の前記懸架孔に相応する懸架孔を有する補助板を夫々重ねて設け、これらの各補助板には前記シャフトの通る長孔を設け、前記吊り下げた状態で各長孔の下部に前記シャフトが位置し、前記作動体が落下した時、各長孔の上端に前記シャフトが当接する構成であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の過張力検出表示装置。
【請求項5】
前記表示体の表示が、視覚的表示又は聴覚的表示のいずれか又は双方であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の過張力検出表示装置。
【請求項6】
前記作動体の落下動作に連動して表示体が表示する構成が、前記装置本体の一側上部に回転自在に設けられ、常時バネの力で回転するように付勢された回転係止体が設けられ、前記作動体の一側に設けられた突出片が前記回転係止体をバネの力に抗して係止し、前記装置本体の一側の回転係止体の下方に二つ割の横長筒体が設けられ、当該筒体は、上半分が装置本体に固定され、下半分がシャフトにより回転自在に装置本体に設けられ、この筒体内に、上半分に一端を固定され他端を筒状に巻き付けた帯状の表示体が挿入され、当該筒体の下半分の開口部に一端を固定した紐状体の他端が前記回転係止体に係止され、
前記作動体の落下動作により、前記突出片の回転係止体に対する係止が解かれ、当該回転係止体は前記バネの力で回転し、当該回転係止体に係止されていた紐状片の他端が前記回転係止体から外れ、これにより紐状体が垂下して筒体の下半分が開き、筒体の中から帯状の表示体が筒体下方に垂れさがる構成としたことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の過張力検出表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−211011(P2012−211011A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78489(P2011−78489)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000141060)株式会社関電工 (115)
【出願人】(000223687)藤井電工株式会社 (60)