説明

過渡減衰電流測定法

バイオセンサシステムは、Cottrell減衰なしに電気化学的プロセスを使用して生物学的サンプルの分析対象物濃度を測定する。バイオセンサシステムは、過渡減衰を有する出力シグナルを生成し、ここで出力シグナルは時間の平方根に反比例しない。過渡減衰は、-0.5の減衰定数のCottrell減衰よりも大きいかまたはそれよりも小さい。過渡減衰は、比較的短いインキュベーション期間、比較的小さなサンプル容器容量、電極表面とセンサストリップの蓋との間の比較的短い距離、および/または試薬層の平均初期厚に関して比較的短い励起、から生じる可能性がある。バイオセンサシステムは、過渡減衰を有する出力シグナルから分析対象物濃度を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への参照
[001] 本件出願は、2006年10月24日に出願され、その全体を参考として援用される、“過渡減衰(Transient Decay)電流測定法”という名称のU.S.仮出願No. 60/854,060の利益、2006年12月11日に出願され、その全体を参考として援用される、“過渡減衰電流測定法”という名称のU.S.仮出願No. 60/869,557の利益、および2006年12月12日に出願され、その全体を参考として援用される、“過渡減衰電流測定法”という名称のU.S.仮出願No. 60/869,625の利益、を主張する。
【背景技術】
【0002】
[002] バイオセンサは、全血、尿、または唾液などの、生体液の分析をもたらす。典型的には、バイオセンサは生体液サンプルを分析して、生体液中の、グルコース、尿酸、乳酸塩、コレステロール、またはビリルビンなどの、一つあるいはそれ以上の分析対象物の濃度を決定する。この分析は、生理学的異常の診断および治療に有用である。例えば、糖尿病個体はバイオセンサを使用して、食餌および/または投薬の調節のため、全血中のグルコース濃度を決定することができる。
【0003】
[003] バイオセンサは、卓上、携帯用、および、同様の測定装置を使用して実行することができる。携帯用の測定装置は、手持ち式であってよい。バイオセンサを、一つあるいはそれ以上の分析対象物を分析するように設計することが可能であり、またバイオセンサは、異なる容量の生体液を使用することができる。いくつかのバイオセンサは、容量が0.25〜15マイクロリットル(μL)であるような、一滴の全血を分析することができる。携帯型の測定装置の例には、Bayer CorporationのAscensia Breeze(登録商標)およびElite(登録商標)測定装置;イリノイ州Abbott ParkのAbbottから入手可能なPrecision(登録商標)バイオセンサ;インディアナ州IndianapolisのRocheより入手可能なAccucheck(登録商標)バイオセンサ;および、カリフォルニア州MilpitasのLifescanより入手可能なOneTouch Ultra(登録商標)バイオセンサが含まれる。卓上測定装置の例には、インディアナ州West LafayetteのBAS Instrumentsより入手可能なBAS 100B Analyzer;テキサス州AustinのCH Instrumentsより入手可能なCH Instruments' Electrochemical Workstation;カンザス州LawrenceのCypress Systemsより入手可能なCypress Electrochemical Workstatioin;および、ニュージャージー州PrincetonのPrinceton Research Instrumentsより入手可能なEG&G Electrochemical Instrumentが含まれる。
【0004】
[004] バイオセンサは通常、電気シグナルを測定して、生体液サンプル中の分析対象物濃度を決定する。分析対象物は一般に、サンプルに入力シグナルが印加されると、酸化/還元または酸化還元反応を受ける。酵素または同様の種をサンプルに添加して、酸化還元反応を亢進させることができる。入力シグナルは通常、電流または電圧などの電気的シグナルである。酸化還元反応により、入力シグナルに応じた出力シグナルが生じる。出力シグナルは通常、電流または電圧などの電気的シグナルであり、それを測定して、そして生体液中の分析対象物の濃度と相関させることができる。
【0005】
[005] 多数のバイオセンサには、測定装置およびセンサストリップが含まれる。センサストリップは、生物の外側、生物の内側、または生物の部分的に内側で使用するために適合させることができる。生物の外側で使用される場合、生体液サンプルは、センサストリップ中のサンプル容器内に導入される。センサストリップは、分析のためにサンプルを導入する前、導入した後、または導入の最中に、測定装置中に静置することができる。生物の内側または生物の部分的に内側の場合、センサストリップを、持続的にサンプル中に浸漬させていてもよく、またはサンプルを断続的にストリップに導入してもよい。センサストリップには、サンプル容量を部分的に隔てた容器が含まれていてもよく、またはセンサストリップはサンプルに対して開放されていてもよい。同様に、サンプルは、連続的にストリップを貫流してもよく、または分析のために遮断されてもよい。
【0006】
[006] 測定装置は通常、センサストリップの導電体と接続する電気的接点を有する。導電体は一般に、サンプル容器へと伸びる、作用電極、カウンタ電極、および/またはその他の電極に接続される。測定装置は、電気的接点を介して、センサストリップの導電体へと入力シグナルを印加する。導電体は電極を介して、サンプル容器内に存在するサンプルへと入力シグナルを伝達する。分析対象物の酸化還元反応により入力シグナルに応じた出力シグナルが生じる。測定装置により、出力シグナルに応じた分析対象物濃度が決定される。
【0007】
[007] センサストリップには、生体液サンプル中の分析対象物と反応する試薬が含まれてもよい。試薬には、分析対象物の酸化還元反応を促進するためのイオン化剤、および、分析対象物と導体との間の電子の移動を補助するメディエータまたはその他の物質が含まれてもよい。イオン化剤は、全血サンプル中のグルコースの酸化を触媒する、分析対象物特異的な酵素などの、酸化還元酵素であってもよい。試薬には、酵素とメディエータを一緒に保持する接着剤が含まれてもよい。
【0008】
[008] 多数のバイオセンサが、測定出力シグナルが電流であるのに対して、電流測定法を使用し、その場合、定電位(voltage)の電気的シグナルがセンサストリップの導電体に対して印加される。従って、電流測定システムにおいて、センサストリップの作用電極とカウンタ電極のあいだに定電位が印加されるため、電流を測定することができる。次いで、測定電流を使用して、サンプル中の分析対象物の存在および/またはサンプル中の分析対象物の量を測定することができる。電流測定法は、測定可能な種、そして従って分析対象物、が作用電極で酸化されまたは還元される速度を測定する。分析対象物に加えて、例えば生物学的基質およびメディエータが測定可能な種として機能することができる。
【0009】
[009] 入力シグナルがセンサストリップに対して印加される時間が増加すればするほど、測定可能な種が作用電極で酸化されまたは還元される速度が低下する。従って、高電流出力の開始期間ののち、入力シグナルが印加され続けるため、センサストリップから記録される電流が減少する。時間と共に生じるこの電流の低下は、電気化学的減衰と呼ぶことができ、そしてこの減衰の速度は、サンプル中の測定可能な種、従って分析対象物、の濃度と相関する可能性がある。電気化学的減衰は、一過性のものであるか、またはCottrell減衰である可能性がある。
【0010】
[0010] 電気化学的減衰は、例えば、自然対数関数(ln)により電流を時間と関連させる直線を記述する式により、減衰を表現することによって、サンプル中の分析対象物濃度と相関させることができる。従って、出力電流は、指数係数により時間の関数として表現することができ、ここで負の指数係数は減衰のプロセスを示す。電流出力が最初に低下したのち、低下速度は比較的一定であるか、または不規則に変動し続ける可能性がある。
【0011】
[0011] U.S. Pat. No. 5,942,102(“'102特許”)は、従来法の分析のあいだの、測定出力電流と時間との間の関係について記述する。電気的シグナルは、全血サンプルをストリップに対して導入してから約60秒後の、センサストリップに対する入力である。最初は、急速に減少する電流が観察され、その後比較的一定になるか、またはカウンタ電極から作用電極へのメディエータのフィードバックにより生成される“定常状態” 電流出力が観察される。電極間の短い距離により提供されるメディエータのフィードバックの結果、最初の低下の後、実質的には時間とは無関係になる電流が生じる。この従来法での分析において、サンプルの分析対象物濃度を、メディエータの濃度および拡散係数から以下の様にして決定することができる:(1)時間の関数として電流を測定し;そして次いで(2)定常状態電流を推定する。
【0012】
[0012] '102特許に記載される分析方法は、電流減衰の定常状態部分に依存するが、一方U.S. Pat. Nos. 6,153,069(“'069特許”)および6,413,411(“'411特許”)は、メディエータの濃度、従ってそれを裏打ちする分析対象物の濃度、が、メディエータの拡散係数から決定される場合の方法を記載する。これらのシステムは、Cottrellの式により記述される電流減衰の速度を提供する様に構成される。
【0013】
[0013] 電流測定は、測定電流が時間の平方根に対して反比例する場合に、Cottrell減衰 を示す。Cottrell減衰を伴う電流測定を、式(1)として以下に示すCottrellの式により記述することができる:
【0014】
【数1】

【0015】
ここで、iは測定電流であり;Cbは電気化学的に活性な種の全体の濃度(mol/cm3)であり;Aは電極面積(cm2)であり;F は96,500 coul/相当物のファラデー定数であり;nは相当物/molにおいて移動された電子の数であり;Dは拡散係数(cm2/秒)であり;そしてtは電気化学的反応の時間(秒)である。従って、Cottrellの式は、時間の指数関数として電流を記述し、-0.5の減衰定数または指数係数を有する。Cottrellの式のさらなる詳細およびCottrellの振る舞いに必要とされる境界条件は、Electrochemical Methods: Fundamentals and Applications by Bard and Faulkner (1980)の第5章pp. 136-45に見出すことができる。
【0016】
[0014] Cottrell電流減衰で動作する様に設計されたシステムは、-0.5の減衰定数を必要とする。-0.5減衰定数を示す電気化学的システムは、Cottrell電流の必要条件が存在すること、すなわち分析対象物が測定可能な種に完全に変換されたこと、そしてこの測定可能な種の実質的に一定の濃度分布が電流測定の前にサンプル容器を占有していること、を暗示している。これらの必要条件は、'069特許および'411特許においてさらに記載される。
【0017】
[0015] '411特許の第4欄、39〜40行に、15〜90秒間、好ましくは20〜45秒間の最初のインキュベーション期間を、グルコース試験のために使用することが開示される。最初のインキュベーション期間および単一励起入力シグナルの印加の後、Cottrell減衰を示す電流測定を、2〜30秒間、または好ましくは10〜20秒間記録し、その後センサストリップに対して入力シグナルを印加することができる。より長い最初のインキュベーション期間の必要条件もまた、'411特許の図7に示されており、ここでサンプルを160秒間センサストリップ中で反応させ(インキュベートし)、その後入力シグナルの印加を行わせる。
【0018】
[0016] 分析対象物を測定可能な種に完全に変換するために必要とされるより長いインキュベーション期間は、以下のものをもたらす:(1)試薬を含有する試薬層の水和のための時間;そして(2)分析対象物を変換するための試薬のための時間。例えば、'411特許の第4欄36〜44行には、酵素反応が完了に達することができる十分な長さのインキュベーション期間が記載されている。グルコース分析対象物が測定可能な種へと完全に変換されるこのインキュベーション期間ののち、装置が既知の電位を電極間に負荷して、結果として生じるCottrell電流減衰のあいだの特定の時間、得られた拡散限界の(すなわちCottrell)電流を測定する。このように、分析対象物を測定可能な種に変換することは、Cottrell減衰が観察されるよりも前に完了する。試薬層の完全な水和もまた、Cottrell減衰の必要条件として'411特許中で認識されている。'411特許は、試薬の不完全な湿潤は、結果としてシステムがCottrell曲線減衰を追跡することを不可能にし、結果として不正確な分析対象物濃度値が得られることを開示している。
【0019】
[0017] 延長されたインキュベーション期間に加えて、Cottrell減衰もまた、電極表面からの距離が増加するため、サンプル中の測定可能な種の実質的に一定の濃度分布を必要とする。実質的に一定の濃度分布は、(1)相対的に大きなサンプル容量;および/または(2)表面平面電極または実質的に平面な電極とセンサストリップの蓋の底部表面との間の相対的に大きな距離;により達成することができる。例えば、'069特許の第8欄40行には、50μLのサンプル容量をもたらすサンプル容器をしめる作用電極が記載されており、ここで作用電極と蓋との間の垂直距離は500〜2000μmである。別の例において、'102特許の近接した間隔の電極とは異なり、'411特許の第7欄62〜66行に記載される作用電極とカウンタ電極との距離は、少なくとも100μmであり、そして好ましくは100μm以上でなければならない。
【0020】
[0018] 従来法の分析方法は、システムがCottrell減衰を有することを可能にするために十分なインキュベーション期間、電極距離、そしてサンプル容器容量を必要とすることにより、典型的には、サンプルを解析するために必要とされる時間を長くする。従って、改良されたバイオセンサについての継続的な要望が存在する;特に、サンプルの分析対象物濃度をより迅速に測定するもの、そして定常状態電流値の推定に基づくものではないもの、が求められている。本発明のシステム、装置および方法は、従来型のバイオセンサに関する少なくとも1つの欠点を克服する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】U.S. Pat. No. 5,942,102
【特許文献2】U.S. Pat. Nos. 6,153,069
【特許文献3】U.S. Pat. No. 6,413,411
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Electrochemical Methods: Fundamentals and Applications by Bard and Faulkner (1980)の第5章pp. 136-45
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0023】
[0019] 本発明は、過渡減衰を有する出力シグナルから生物学的サンプルの分析対象物濃度を測定するバイオセンサシステムを提供する。出力シグナルは、時間の平方根に反比例せず、そして従ってCottrell減衰の減衰定数よりも高いかまたは低い減衰定数を有する。
【0024】
[0020] 一側面において、サンプル中の分析対象物濃度を測定するための方法には、インキュベーション期間の後にサンプルに対して入力シグナルを印加し、測定可能な種のレドックス反応に応じた過渡減衰(一過性減衰)を有する出力シグナルを生成し;そして出力シグナルから分析対象物濃度を測定する;ことが含まれる。分析対象物はグルコースであってもよく、そしてサンプルをセンサストリップに対して導入することができる。この方法には、サンプル中の分析対象物からまたは分析対象物へ少なくとも1つの電子を移動させて、少なくとも1つのメディエータが含まれてもよい測定可能な種を形成することが含まれてもよい。
【0025】
[0021] 入力シグナルには、緩和により間隔をあけた少なくとも2回の励起が含まれていてもよく、その場合、少なくとも2回の励起は0.1〜5秒間の期間を有し、そして緩和の期間は少なくとも0.1秒または少なくとも0.5秒である。各励起期間および/または緩和期間は、同一であっても異なっていてもよい。1またはそれ以上の緩和のための期間は、0.1〜3秒間であってもよい。入力シグナルには、少なくとも3回の励起と少なくとも2回の緩和が含まれていてもよい。入力シグナルには、5秒間のあいだに印加される少なくとも2回の負荷サイクルが含まれていてもよい。
【0026】
[0022] インキュベーション期間は、例えば、0.1〜8秒間、0.1〜6秒間、または0.5〜4.75秒間であってもよい。インキュベーション期間および入力シグナルの印加は、最大でも12秒間、最大でも6秒間、または最大でも4秒間で完了することができる。過渡減衰は、-0.52〜-1、または-0.001〜-0.48の減衰定数を有していてもよい。過渡減衰は、最大でも-0.45または最大でも-0.35の減衰定数を有していてもよい。分析対象物濃度を測定する出力シグナルには、サンプルへ入力シグナルを印加してから2秒間以内に記録された電流値が含まれていてもよい。サンプルの分析対象物濃度は、最大でも入力シグナルを印加してから6秒間、3秒間、または1.5秒間以内に測定することができる。
【0027】
[0023] サンプルは、蓋の底部表面と蓋の底部表面から20〜200μm離れているセンサストリップ基板とにより規定される容器中に存在することができる。容器中のサンプル容量は、0.25〜10μLであってもよく、0.25〜1.5μLであってもよい。容器には、最大でも20μm、14μm未満、または最大でも5μmの平均初期厚を有する少なくとも1つの試薬層が含まれていてもよい。入力シグナルに少なくとも2回の励起が含まれ、励起の少なくとも一方が最大でも0.5秒間の期間を有する場合、容器には、最大でも2μmの平均初期厚を有する少なくとも1つの試薬層が含まれていてもよい。容器には、別個の拡散バリア層を含む少なくとも1つの試薬層が含まれていてもよい。
【0028】
[0024] センサストリップ基板から蓋の底部までの容器の高さは、最大でも250μmであってよく、容器内のサンプル容量は最大でも5μLであってよく、容器には最大でも20μmの平均初期厚を有する少なくとも1つの試薬層が含まれていてもよく、そしてインキュベーション期間は最大でも12秒間であってよい。センサストリップ基板から蓋の底部までの容器の高さは、最大でも150μmであってよく、容器内のサンプル容量は最大でも3.5μLであってよく、容器には14μm未満の平均初期厚を有する少なくとも1つの試薬層が含まれていてもよく、そしてインキュベーション期間は最大でも6秒間であってよい。センサストリップ基板から蓋の底部までの容器の高さは最大でも100μmであってよく、容器内のサンプル容量は最大でも3μLであってよく、容器には最大でも2μmの平均初期厚を有する少なくとも1つの試薬層が含まれていてもよく、そしてインキュベーション期間は最大でも2秒間であってよい。
【0029】
[0025] 別の側面において、サンプル中の分析対象物濃度を測定するための方法には、最大でも12秒間のインキュベーション期間の後にサンプルに対して入力シグナルを印加し、測定可能な種のレドックス反応に応じた過渡減衰を有する出力シグナルを発生させ;そして出力シグナルから分析対象物濃度を測定することが含まれる。
【0030】
[0026] 別の側面において、サンプル中の分析対象物濃度を測定するためのバイオセンサには、センサインターフェースに接続されたプロセッサを有する測定装置;基板上にサンプルインターフェースを有するセンサストリップが含まれ、ここでセンサインターフェースはサンプルインターフェースと電気的に連通しており、サンプルインターフェースは基板により形成される容器に隣接し;最大でも12秒間のインキュベーション期間の後、プロセッサは充電器に容器に対して入力シグナルを印加する様に指示し;そしてプロセッサは、サンプル中の分析対象物のレドックス反応に応じて、過渡減衰を有する出力シグナルからサンプル中の分析対象物濃度を測定する。
【0031】
[0027] 容器には、充電器と電気的に連通した少なくとも1つの作用電極、約1μm〜約20μmの平均初期厚を有する組合せDBL/試薬層を有する作用電極上の試薬層が含まれていてもよい。組合せDBL/試薬層は、最大でも1μmの平均初期厚を有することができる。
【0032】
[0028] 別の側面において、サンプル中の分析対象物濃度を測定するための方法には、最大でも12秒間のインキュベーション期間の後に、サンプルに対して入力シグナルを印加し;サンプル容器中で測定可能な種の様々な濃度分布を生成し;測定可能な種のレドックス反応に応じた出力シグナルを生成し;そして出力シグナルから分析対象物濃度を測定すること、が含まれる。
【0033】
[0029] 別の側面において、サンプル中の分析対象物濃度を測定するための方法には、センサストリップに対してサンプルを導入し;最大でも8秒間のインキュベーション期間の後、入力シグナルをサンプルに対して印加し;測定可能な種のレドックス反応に応じて、過渡減衰を有する出力シグナルを生成し;そして出力シグナルの過渡減衰から分析対象物濃度を測定すること、が含まれる。過渡減衰は、サンプルに対して入力シグナルを印加してから0.5〜5秒間以内、または約0.5〜約3秒間で得られた減少する電流減衰であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
[0030] 本発明を、以下の図面および説明を参照することにより、より良く理解することができる。図中の構成要素は、必ずしも等縮尺ではなく、代わりに、本発明の原理を示す際に強調されている場合がある。さらに、図中において、同じ参照番号は、異なる図面を通じて対応する部分を一般的に示す。
【図1A】[0031] 図1Aは、組み立てられたセンサストリップの透視描写である。
【図1B】[0032] 図1Bは、蓋が外された場合のセンサストリップの上面図である。
【図2A】[0033] 図2Aは、図1Bのセンサストリップの端面図である。
【図2B】[0034] 図2Bは、サンプル中の分析対象物濃度を測定するバイオセンサシステムのスキーム図を示す。
【図3】[0035] 図3は、サンプル中の分析対象物の存在および濃度を決定する電気化学的方法のフローチャートを示す。
【図4A】[0036] 図4Aは、下部電極表面と上部蓋とにより境界を作られたサンプル容器を示す。
【図4B】[0037] 図4Bは、インキュベーション時間t1〜t5が入力シグナルの印加の前に経過する場合に、センサシステムから形成される濃度プロファイルを示す。
【図4C】[0038] 図4Cは、容器中の測定可能な種の濃度と電流減衰の速度との間の関係を示す。
【図5】[0039] 図5は、様々なインキュベーション期間の後に50、100、200、または400 mg/dLのグルコースを含有する全血サンプルについて作用電極から得られる減衰速度を示す。
【図6A】[0040] 図6A〜6Cは、それぞれが反応層の異なる平均初期厚を有する3種類のセンサストリップから複数の初期インキュベーション期間において得られる電流プロファイルをプロットする。
【図6B】[0040] 図6A〜6Cは、それぞれが反応層の異なる平均初期厚を有する3種類のセンサストリップから複数の初期インキュベーション期間において得られる電流プロファイルをプロットする。
【図6C】[0040] 図6A〜6Cは、それぞれが反応層の異なる平均初期厚を有する3種類のセンサストリップから複数の初期インキュベーション期間において得られる電流プロファイルをプロットする。
【図7A】[0041] 図7A〜7Bは、40%ヘマトクリットで100〜300 mg/dLのグルコースを含む全血サンプルについて、6秒の初期インキュベーション期間の後に得られる、電流vs.時間の自然対数のプロットである。
【図7B】[0041] 図7A〜7Bは、40%ヘマトクリットで100〜300 mg/dLのグルコースを含む全血サンプルについて、6秒の初期インキュベーション期間の後に得られる、電流vs.時間の自然対数のプロットである。
【図8A】[0042] 図8A〜8Cは、0.25秒のインキュベーション期間、そしてその後0.5秒の励起時間と0.25秒の緩和時間とを有するゲート入力シグナルを行うことに由来する電流減衰プロファイルである。
【図8B】[0042] 図8A〜8Cは、0.25秒のインキュベーション期間、そしてその後0.5秒の励起時間と0.25秒の緩和時間とを有するゲート入力シグナルを行うことに由来する電流減衰プロファイルである。
【図8C】[0042] 図8A〜8Cは、0.25秒のインキュベーション期間、そしてその後0.5秒の励起時間と0.25秒の緩和時間とを有するゲート入力シグナルを行うことに由来する電流減衰プロファイルである。
【図8D】[0043] 図8Dは、図8A〜8Cにおいて示されるように、薄い試薬層センサストリップから得られた、最初の3回の励起の終点電流(p1、p2、p3)をプロットすることにより得られた較正プロットである。
【図8E】[0044] 図8Eは、図8A〜8Cにおいて示されるように、中等度厚試薬層を有するセンサストリップから得られた励起4、5、および6の終点電流(p4、p5、p6)をプロットすることにより得られた較正プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[0045] バイオセンサシステムは、Cottrell減衰定数を伴わない電気化学的プロセスを使用して、生物学的サンプルの分析対象物濃度を測定する。バイオセンサシステムは、過渡減衰を有する生物学的サンプルから出力シグナルを生成し、この場合、出力シグナルは時間の平方根に反比例しない。バイオセンサシステムからの過渡減衰(一過性減衰)出力は、-0.5よりも大きいかまたはそれよりも小さい減衰定数を有し、そしてこのシステムは、分析対象物濃度を測定するために、定常状態電流値の推定に依存しない。好ましくは、分析対象物濃度を測定する過渡減衰は、連続的に減少する。
【0036】
[0046] Cottrell減衰は、拡散依存性であり、そして分析対象物が測定可能な種に完全には変換されず、そしてこの測定可能な種の実質的に一定の濃度分布が電流測定の前にサンプル容器をしめない場合、Cottrell減衰は存在しない可能性がある。比較的長いインキュベーション時間および多い量のサンプル容量が、Cottrell減衰を得るためには必要とされる。これらの条件がない場合には、出力電流は時間の平方根に関して反比例せず、そして従ってバイオセンサはCottrell減衰のために必要とされる-0.5の減衰定数を示さない。出力電流が時間の平方根に関して反比例しない場合または-0.5以外の減衰定数が出力シグナル中に存在する場合、Cottrell減衰を用いて操作するためにデザインされたバイオセンサは、不正確な解析をもたらす。
【0037】
[0047] 本発明のバイオセンサシステムは、過渡減衰を使用して操作し、ここで-0.5よりも小さな減衰定数または-0.5よりも大きな減衰定数が観察される。一過性の従って非-Cottrell減衰定数は、結果として相対的に短いインキュベーション期間から得られる可能性がある。過渡減衰定数もまた、相対的に小さなサンプル容器容量、電極表面とセンサストリップの蓋との間の相対的に短い距離、および/または試薬層の平均初期厚に関して相対的に短い励起から得られる可能性がある。
【0038】
[0048] 過渡減衰を伴う出力電流または-0.5よりも大きいかまたは小さい過渡減衰定数を生成するため、バイオセンサシステムは、12秒間またはそれ未満のインキュベーション期間、5μLまたはそれ未満の容器容量、200μmまたはそれ未満の容器高、および/または20μmまたはそれ未満の試薬層についての平均初期厚を、使用することができる。3.5μLまたはそれ未満の容器容量、150μmまたはそれ未満の容器高、および/または10μmまたはそれ未満の試薬層についての平均初期厚と共に使用するための好ましいインキュベーション期間は、最大でも8秒間、最大でも6秒間、または最大でも4秒間である。現時点では、3.0μLまたはそれ未満のサンプルストリップサンプル容量、100μmまたはそれ未満のサンプルストリップキャップ-ギャップ高、および/または2μmまたはそれ未満の試薬層についての平均初期厚、と共に使用するための特に好ましいインキュベーション期間は、最大でも2秒間または最大でも1秒である。その他のインキュベーション期間、容器容量、容器高、および試薬層厚を使用することができる。
【0039】
[0049] 図1Aおよび図1Bは、バイオセンサとともに使用することができるセンサストリップ100を示す。図1Aは、組み立てられたセンサストリップ100の透視図であり、蓋120により少なくとも部分的に覆われたセンサ基板110を含み、蓋120には穴130、サンプルカバー領域140、および、投入端開口部150が含まれる。部分的に囲まれたサンプル容器160(キャピラリーギャップまたはキャップ-ギャップ)は、基板110と蓋120との間に形成される。アメリカ合衆国特許第5,120,420号および第5,798,031号に記述されるものなど、その他のセンサストリップ設計もまた、使用することができる。具体的な構造は図1A〜1B中に示されるが、センサストリップ100は、追加の構成成分を伴うものを含むその他の構造を有するものであってもよい。
【0040】
[0050] センサ基板110と蓋120との間の容器160の高さは、20〜250μmであってもよく、より好ましくは50〜150μmであってもよい。容器160の容量は、0.25〜10μLであってもよく、好ましくは0.8〜4μLであってもよく、そしてより好ましくは0.5〜1.5μLであってもよい。その他の高さおよび容量を使用することができる。
【0041】
[0051] 分析のための液体サンプルは開口部150へ液体を導入することにより、容器160へと移すことができる。液体は、先に含まれていた空気を穴130から押し出しながら、容器160を満たす。容器160は、容器中に液体サンプルを保持することを補助する組成物(示されていない)を含むことができる。そのような組成物の例には、カルボキシメチルセルロースおよびポリエチレングリコールなどの水膨潤性ポリマー;および、デキストランおよびポリアクリルアミドなどの多孔性ポリマーマトリクスが含まれる。
【0042】
[0052] 図1Bは、蓋120を外したセンサストリップ100の上面図を示す。導体170および180は、開口部150からそれぞれ作用電極175およびカウンタ電極185へと誘電層190の下を走行することができる。センサストリップ100には、1つより多い作用電極が含まれてもよい。作用電極175およびカウンタ電極185は、実質的に同一平面に存在することができる。電極は別の向きであってもよい。誘電層190は、部分的に電極175、185を覆うことができ、そして、絶縁ポリマーなどの適当な誘電物質から作ることができる。具体的な電極構造が示される一方で、電極は、追加の構成要素を有するものを含む、その他の構造を有していてもよい。
【0043】
[0053] カウンタ電極185は、センサストリップ100の作用電極175における電気化学的活性を補佐することができる。作用電極175における電気化学的活性を補佐する電位は、カウンタ電極185を炭素などの不活性物質から形成すること、および、容器160内にフェリシアン化物(ferricyanide)などの可溶性酸化還元種を含ませることにより、センサ系に提供されることができる。カウンタ電極185における電位は、Ag/AgClなどの酸化還元ペアからカウンタ電極185を形成することにより達せられる参照電位であってよく、組み合わさった参照-カウンタ電極を提供する。酸化還元対には、異なる酸化数を有する化学物質の2つの複合体種が含まれる。より高い酸化数を有する種の還元は、より低い酸化数を有する種を生成する。あるいは、より低い酸化数を有する種の酸化は、より高い酸化数を有する種を生成する。センサストリップ100には、第三導体および第三電極とを提供して、センサ系に参照電位を提供することができる。
【0044】
[0054] 作用電極175とカウンタ電極185は、200μmよりも遠くまたは250μmよりも遠く離れていてもよい。作用電極175とカウンタ電極185は、200μm未満の距離で離れていてもよい。作用電極175とカウンタ電極185は、それ以外の距離で離れていてもよい。
【0045】
[0055] 図2Aは、容器160中に存在する作用電極175およびカウンタ電極185の層構造を示す図1Bに示されるセンサストリップ100の端面図を示す。導体170および180は、基板110上に直接載せることができる。その他の物質が、導体170、180と基板110との間に存在してもよく、従って導体は、基板と物理的に接触していてもしていなくてもよい。導体の一部は、基板の一部を貫通していてもよい。表面導体層270および280は、それぞれ導体170および180の上に、場合によっては沈着することができる。その他の物質が、表面導体層270、280および導体170、180のあいだに存在してもよく、従って表面導体は導体と物理的に接触していてもしていなくてもよい。表面導体の一部は、導体の一部を貫通していてもよい。表面導体層270、280は、同じ物質からまたは異なる物質から作ることができる。
【0046】
[0056] 導体170、180、および表面導体層270、280を形成するために使用される、1つあるいは複数の物質は、すべての電導体を含むことができる。導体170、180には、好ましくは、金、銀、白金、パラジウム、銅、またはタングステンなどの、金属または金属ペーストの薄い層が含まれる。表面導体層270、280には、好ましくは炭素、金、白金、パラジウム、またはそれらの組み合わせが含まれる。好ましい電導体は非イオン化物質であり、そのためその物質は、サンプルの分析の間に、正味の酸化、または、正味の還元を受けない。表面導体層が導体上に存在しない場合、導体は、好ましくは非イオン化物質(例えば、炭素、金、プラチナ、パラジウム、またはこれらの組合せ)から作られる。
【0047】
[0057] 箔蒸着、化学気相蒸着、スラリー塗布などを含む、センサストリップの操作と互換性のある従来のすべての手法によって、表面導体物質を、導体170、180上に沈着することができる。アメリカ合衆国特許第5,798,031号に記述される通り、スラリー蒸着の場合、導体物質をインクとして導体170、180に適用することができる。
【0048】
[0058] 試薬層275および285を、それぞれ導体170および180上に沈着することができる。その層は、接着剤を含んでいてもよく、少なくとも1つの試薬組成物から形成される。接着剤は、好ましくは、少なくとも部分的に水溶性のポリマー物質である。接着剤は、水和されると、ゲルまたはゲル状物質を形成することができる。接着剤は、水和されると、試薬と組み合わされて、ゲルまたはゲル状物質を形成することができる。ゲルまたはゲル状物質は、赤血球を阻害しおよび/または濾過して、表面導体270および/または導体170へ到達することを防止する。
【0049】
[0059] 接着剤としての使用に適する、部分的に水溶性のポリマー物質には、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ヒドロキシエチレンセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリリジンなどのポリアミノ酸、ポチスチレンスルホン酸、ゼラチン、アクリル酸、メタアクリル酸、でんぷん、それらの無水マレイン酸塩、それらの誘導体、およびそれらの組み合わせが含まれてもよい。上記の接着剤物質の中で、PEO、PVA、CMC、およびHECが好ましく、現在のところ、CMCがより好ましい。
【0050】
[0060] 接着剤に加えて、試薬層275および285には、同一の試薬、または異なる試薬が含まれてよい。同一の試薬が含まれる場合、試薬層275および285は同一の層であってよい。1つの観点において、第一層275中に存在する試薬を、作用電極175と共に使用するために選択することができ、一方、第二層285中に存在する試薬を、カウンタ電極185と共に使用するために選択することができる。例えば、層285中の試薬は、サンプルと導体180との間の電子の流れを促進することができる。同様に、層275中の試薬は、分析対象物の反応を促進することができる。
【0051】
[0061] 試薬層275には、分析対象物、特に複雑な生物学的サンプル中の分析対象物、へのセンサ系の特異性を高めることができる、分析対象物に特異的な酵素系を含むことができる。酵素系には、1つあるいはそれ以上の酵素、補因子、および/または、分析対象物との酸化還元反応に参加するその他の部分を含むことができる。例えば、アルコールオキシダーゼを使用して、サンプル中のアルコールの存在に対して感度の高いセンサストリップを提供することができる。そのような系は、血液アルコール濃度を測定するのに有用であるだろう。別の例では、グルコースデヒドロゲナーゼまたはグルコースオキシダーゼを使用して、サンプル中のグルコースの存在に対して感度の高いセンサストリップを提供することができる。この系は、例えば糖尿病であることが既知の患者、または、疑われる患者において、血液グルコース濃度を測定する際に有用であるだろう。
【0052】
[0062] 酵素系において使用される酵素には、アルコールデヒドロゲナーゼ、乳酸脱水素酵素、β-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ、リンゴ酸脱水素酵素、および3-ヒドロキシステロイド脱水素酵素が含まれる。好ましい酵素系は、酸素非依存性であり、つまり、実質的に酸素により酸化されない。
【0053】
[0063] グルコースセンサストリップにおいて使用するためのそのような酸素非依存性酵素ファミリーの1つは、グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)である。異なる補酵素または補因子を使用して、異なるメディエータにより異なる様式で、GDHを媒介することができる。GDHとのその関連性に応じて、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)などの補因子は、FAD-GDHの場合のように、宿主酵素によってきつく捕えられることができる;あるいは、ピロロキノリンキノン(PQQ)などの補因子は、PQQ-GDHというように、宿主酵素と共有結合することができる。これらの各酵素系の補因子は、宿主細胞により捕えられているか、あるいは、補酵素およびアポ酵素は、試薬組成物に酵素系が加えられる前に再構成することができる。補酵素はまた、試薬組成物中の宿主酵素に独立して加えられ、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドNAD/NADH+またはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸NADP/NADPH+の場合のように、宿主酵素の触媒的機能を補助することができる。
【0054】
[0064] 試薬層275には、分析対象物の酸化還元反応の結果を、表面導体270および/または導体170へ、より効率的に伝えるためのメディエータを含むことができる。メディエータはその電気化学的活性に基づいて、2つのグループに分けることができる。1電子移動メディエータは、電気化学的反応のあいだ、1つのさらなる電子を捕えることができる。1電子移動メディエータの例には、1,1'-ジメチルフェロセン、フェロシアン化物(ferrocyanide)、フェリシアン化物(ferricyanide)などの化合物、およびルテニウム(III)ヘキサアミンが含まれる。2電子移動メディエータは、2つの追加の電子を移動させることができる。
【0055】
[0065] 2電子メディエータには、フェナトロリンキノンなどの、有機キノンおよびヒドロキノン;フェノチアジンおよびフェノキサジン誘導体;3-(フェニルアミノ)-3H-フェノキサジン;フェノチアジン;および7-ヒドロキシ-9,9-ジメチル-9H-アクリジン-2-オンおよびその誘導体が含まれる。さらなる2電子メディエータの例には、例えば、本明細書中で参照として援用される、アメリカ合衆国特許第5,393,615号;第5,498,542号;および第5,520,786号に記載される、電子-活性有機分子が含まれる。その他の電気活性な有機分子には、酸化還元反応を受けることができる金属を持たない有機分子が含まれる。電気活性な有機分子は、酸化還元種としておよび/またはメディエータとして、振る舞うことができる。電気活性な有機分子の例には、補酵素ピロロキノリンキノン(PQQ)、ベンゾキノン、およびナフトキノン、N-オキシド、ニトロソ化合物、ヒドロキシルアミン、オキシン、フラビン、フェナジン、フェノチアジン、インドフェノール、およびインダミンが含まれる。
【0056】
[0066] 好ましい2電子移動メディエータには、3-フェニルイミノ-3H-フェノチアジン(PIPT)および3-フェニルイミノ-3H-フェノキサジン(PIPO)が含まれる。より好ましい2電子メディエータには、フェノキサジン誘導体の、カルボン酸または塩(たとえば、アンモニウム塩など)が含まれる。現在のところ、特に好ましい2電子メディエータには、(E)-2-(3H-フェノチアジン-3-イリデンアミノ)ベンゼン-1,4-ジスルホン酸、(E)-5-(3H-フェノチアジン-3-イリデンアミノ)イソフタル酸、アンモニウム(E)-3-(3H-フェノチアジン-3-イリデンアミノ)-5-カルボキシ安息香酸、およびそれらの組み合わせが含まれる。好ましい2電子メディエータは、フェリシアン化物(ferricyanide)よりも少なくとも100 mV低い、好ましくは少なくとも150 mV低い、酸化還元電位を有する。
【0057】
[0067] 印刷、液体沈着、またはインクジェット沈着などの便利な手法により、試薬層275、285を沈着させることができる。1つの観点において、この層は印刷により沈着される。その他の因子が等しい場合、印刷のブレードの角度が、試薬層の厚さに、逆向きに影響する可能性がある。例えば、ブレードが基板110に対して約82°の角度で動かされる場合、この層は約10μmの初期厚を有することができる。同様に、基板110に対して約62°のブレードの角度を使用する場合、より厚い30μmの層を作成することができる。このように、ブレードの角度が低いほど、より厚い試薬層を提供することができる。ブレードの角度に加えて、試薬組成物の粘度や、ふるいサイズ(screen-size)およびエマルション組み合わせ(emulsion combination)などのその他の因子が、試薬層275、285の結果的な厚さに影響を及ぼす可能性がある。
【0058】
[0068] より薄い試薬層が好ましい場合、マイクロピペッティング、インクジェッティング、または、ピン-沈着などの、印刷以外の沈着方法を使用することができる。これらの沈着方法は一般に、1〜2μmなどの、マイクロメートルまたはマイクロメートル未満の厚さの乾燥試薬層を与える。例えば、ピン-沈着法は、約1μmの平均初期厚の試薬層を提供することができる。ピン-沈着の結果である試薬層の厚さは、例えば、試薬組成物中に含まれるポリマーの量により調節することができ、ポリマー含有量が高いほどより厚い試薬層を提供する。望ましい測定性能を維持するためおよび/または拡散バリア層(DBL)内の分析対象物を実質的に測定するために、より薄い試薬層は、より厚い試薬層よりも短い励起期間を必要とする可能性がある。
【0059】
[0069] 作用電極175には、図2Aに示されるような、試薬層275と一体のものである(integral)DBLか、または、異なる層290であるDBLが含まれていてもよい。つまりDBLを、導体上の試薬/DBLの組み合わせとして、導体上の異なる層として、または、試薬層上の区別される層として、形成することができる。作用電極175が異なるDBL 290を含む場合、試薬層275はDBL 290上に存在してもよいし、存在しなくてもよい。かわりに、試薬層275は、試薬をサンプル中に溶解することができるセンサストリップ100のどの部分にあってもよい。例えば、試薬層175は、基板110にあってもまたは蓋120上にあってもよい。
【0060】
[0070] DBLは、測定可能な種が存在できそして赤血球を導体表面から濾過することもできる内部容量を有する、多孔空間を提供する。DBLの孔を、測定可能な種がDBL内に拡散することができるが、赤血球などの物理的に大きなサンプル構成成分は実質的に排除されるように選択することができる。従来のセンサストリップは、様々な物質を用いて作用電極の表面から赤血球を濾過してきたが、DBLは内部多孔空間を提供して、サンプルから測定可能な種の一部分を含有させ、そして分離する。
【0061】
[0071] 試薬層275に水溶性接着剤が含まれる場合、励起の印加に先立ってサンプルに溶解しない接着剤の部分は、一体のDBLとして機能することができる。DBL/試薬層の組み合わせの平均初期厚は、好ましくは、20あるいは10マイクロメートル(μm)より薄く、そしてより好ましくは、5μmより薄い。DBL/試薬層の組み合わせの望ましい平均初期厚は、DBLから、導体表面(図2Aの導体170の表面または表面導体270の表面など)への、測定可能な種の拡散速度が比較的一定になったときを基準にして、特異的な励起の長さにおいて選択されることができる。0.25秒またはそれより短い励起期間と組み合わされる場合、DBL/試薬層の組合せは2μm、1μm、またはそれより薄い、平均初期厚を有することができる。
【0062】
[0072] 異なるDBL 290は、望ましい多孔空間を提供するすべての物質を含むことができ、一方、サンプル中に、部分的に、またはゆっくりと溶解する。異なるDBL 290は、試薬のない試薬接着物質を含むことができる。異なるDBL 290は、1〜15μm、また、より好ましくは2〜5μmの平均初期厚を有してもよい。
【0063】
[0073] 図2Bは、生体液などのサンプル中の分析対象物濃度を測定するバイオセンサシステム200のスキーム図を示す。バイオセンサシステム200には、分析方法を行う測定装置202とセンサストリップ204とが含まれる。センサストリップ204は、例えば、図1A、図1B、および図2Aに示すような電気化学的センサストリップであってもよい。測定装置202は、卓上装置、携帯型または手持ち型装置などとして実施することができる。測定装置202およびセンサストリップ204は、電気化学的分析、光学的分析、これらの組合せなどを行うことができる。バイオセンサシステム200は、生物学的サンプル中のアルコール、グルコース、尿酸、乳酸、コレステロール、ビリルビンなどの濃度を含む分析対象物濃度を測定することができる。具体的な構造が示されるが、バイオセンサシステム200は、追加の構成成分を有するものを含め、その他の構造を有していてもよい。
【0064】
[0074] センサストリップ204は、サンプル容器208と開口部212を伴うチャネル210とを形成する基板206を有する。図1Aを参照する場合、チャネル210は、容器208と一体である場合がある。容器208およびチャネル210は、穴が開いた蓋により覆われていてもよい。容器208は、部分的に囲まれた容量(キャップ-ギャップ)を規定する。容器208は、水-膨潤性ポリマーまたは多孔性ポリマーマトリクスなどの液体サンプルを保持することを補助する組成物を含有していてもよい。試薬は、容器208および/またはチャネル210中に入れていてもよい。試薬組成物には、1またはそれ以上の酵素、結合剤、メディエータなどが含まれていてもよい。試薬には、光学系のための化学指示薬が含まれていてもよい。センサストリップ204は、その他の構造を有していてもよい。
【0065】
[0075] センサストリップ204はまた、サンプルインターフェース214を有していてもよい。電気化学的システムにおいて、サンプルインターフェース214は、少なくとも2つの電極(例えば、作用電極とカウンタ電極)に接続された導体を有する。電極は、容器208を形成する基板206の表面に配置されていてもよい。サンプルインターフェース214は、その他の電極および/または導体を有していてもよい。
【0066】
[0076] 測定装置202には、センサインターフェース218およびディスプレイ220に接続された電気回路216が含まれる。電気回路216には、シグナル発生器224、光学温度センサ226、および保存媒体228に対して接続されたプロセッサ222が含まれていてもよい。電気回路216は、追加の構成成分を伴うものなどその他の構造を有していてもよい。
【0067】
[0077] シグナル発生器224は、プロセッサ222に応じて、電気的入力シグナルをセンサインターフェース218に対して提供する。光学システムにおいて、電気的入力シグナルを使用して、センサインターフェース218中の検出器および光源を操作しまたは調節することができる。電気化学的システムにおいて、電気的入力シグナルは、センサインターフェース218によりサンプルインターフェース214へと伝達され、電気的入力シグナルを容器208に対してそして従ってサンプルに対して印加することができる。
【0068】
[0078] 電気的入力シグナルは、電位であるかまたは電流であってもよく、そして例えば、ACシグナルがDCシグナルオフセットと共に印加される場合など、一定であっても、可変であっても、またはそれらの組合せであってもよい。電気的入力シグナルを単回パルスとしてまたは複数回パルスで、連続的にまたはサイクル状に印加することができる。シグナル発生器224もまた、発生器-記録装置としてセンサインターフェース218からの出力シグナルを記録することができる。
【0069】
[0079] 保存媒体228は、磁気メモリ、光学的メモリ、または半導体メモリ、その他のコンピュータ読み取り可能保存装置などであってもよい。保存媒体228は、固定式のメモリ装置またはメモリカードなどの取り外し可能メモリ装置であってもよい。
【0070】
[0080] プロセッサ222は、分析対象物分析およびコンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードとおよび保存媒体228に保存されたデータとを使用したデータ処理を行うことができる。プロセッサ222は、センサインターフェース218でのセンサストリップ204の存在に応じた分析対象物分析、ユーザ入力に応じたサンプルのセンサストリップ204への適用などを開始することができる。プロセッサ222は、シグナル発生器224に指示を出して、電気的入力シグナルをセンサインターフェース218に対してもたらすことができる。プロセッサ222は、そのように備わっていれば、温度センサ226からサンプル温度を受け取ることができる。
【0071】
[0081] プロセッサ222は、センサインターフェース218から出力シグナルを受け取る。出力シグナルは、サンプル中の分析対象物のレドックス反応に応じて生成される。出力シグナルは、光学的システム、電気化学的システムなどを使用して生成することができる。プロセッサ222は、相関式を使用して、1またはそれ以上の出力シグナルからサンプル中の分析対象物の濃度を測定することができる。分析対象物分析の結果は、ディスプレイ220へ出力することができ、そして保存媒体228に保存することができる。
【0072】
[0082] 分析対象物濃度および出力シグナルに関する相関式は、グラフ的に、数学的に、それらの組合せなどで、示すことができる。相関式は、保存媒体228中に保存される、プログラム数割り当て(program number assignment;PNA)表、その他のルックアップ表などにより示すことができる。分析の実施に関する指示は、保存媒体228中に保存されるコンピュータ読み取り可能ソフトウェアコードにより提供することができる。このコードは、オブジェクトコードであっても、または本明細書中に記載される機能性を記述しまたは制御するその他のいずれかのコードであってもよい。分析対象物分析からのデータは、減衰速度の測定、K定数の測定、傾きの測定、切片の測定、および/またはプロセッサ222中のサンプル温度の測定を含む、1またはそれ以上のデータ処理の対象であってもよい。
【0073】
[0083] 電気化学的システムにおいて、センサインターフェース218は、電気的または光学的にサンプルインターフェース214と連通している。電気的な連通には、センサインターフェース218中の接点とサンプルインターフェース214中の導体との間の、入力シグナルおよび/または出力シグナルの伝達が含まれる。電気的な連通は、例えば、ワイヤレスで行われてもあるいは物理的接点を介して行われてもよい。センサインターフェース218は、電気的入力シグナルを、シグナル発生器224から、接点を介して、サンプルインターフェース214中のコネクタへと伝達する。センサインターフェース218もまた、出力シグナルを、サンプルから接点を介してプロセッサ222および/またはシグナル発生器224へと伝達する。
【0074】
[0084] 光学的な連通には、サンプルインターフェース202中の光学的入り口とセンサインターフェース208中の検出器との間の光の伝達が含まれる。光学的な連通には、サンプルインターフェース202中の光学的入り口とセンサインターフェース208中の光源との間の光の伝達もまた含まれる。
【0075】
[0085] ディスプレイ220は、アナログであってもデジタルであってもよい。ディスプレイ220は、LCD、LED、または数値的読み取り値を表示する様に改造された真空蛍光ディスプレイであってもよい。
【0076】
[0086] 使用時には、液体を開口部212に導入することにより、分析用の液体サンプルを容器208中へと移動させる。液体サンプルは、事前に含まれていた空気を押し出しながら、チャネル210を通過して、容器208中へと流される。液体サンプルは、チャネル210および/または容器208中に配置される試薬と化学的に反応する。プロセッサ222は、シグナル発生器224へと向けられ、入力シグナルをセンサインターフェース218に対してもたらす。光学的システムにおいて、センサインターフェース218 は、入力シグナルに応じて、検出器および光源を操作する。電気化学的システムにおいては、センサインターフェース218が、入力シグナルをサンプルインターフェース214を介してサンプルに対してもたらす。プロセッサ222は、サンプル中の分析対象物のレドックス反応に応じて生成される出力シグナルを受け取る。プロセッサ222は、1またはそれ以上の相関式を使用して、サンプルの分析対象物濃度を測定する。測定された分析対象物濃度は、表示してもよくおよび/または将来的な参照のために保存してもよい。
【0077】
[0087] 図3は、サンプル312中の分析対象物322の存在そして場合によってはその濃度を測定するための電気化学的分析300のフローチャートを示す。310において、サンプル312が、図1A〜図1Bおよび図2Aにおいて示されるセンサストリップなどのセンサストリップ314に対して導入される。図2Aに示される275および/または285などの試薬層は、サンプル312中に溶解され始め、その結果反応が可能になる。
【0078】
[0088] 315において、最初のインキュベーション期間317は、入力シグナルが印加される前に、試薬がサンプル312と反応することを可能にする。好ましくは、インキュベーション期間317は、0.1〜10秒間であってよく、より好ましくは0.1〜8秒間または0.5〜4秒間であってもよい。現在は、インキュベーション期間317としては、0.1〜1秒がより好ましい。その他のインキュベーション期間を使用することができる。
【0079】
[0089] インキュベーション期間317のあいだ、サンプル312中に存在する分析対象物322の一部は、320中でレドックス反応により化学的にまたは生化学的に酸化または還元され、測定可能な種332を形成する。測定可能な種332は、酸化されたかまたは還元された分析対象物322であってもよく、またはメディエータであってもよい。酸化または還元に際して、電子が分析対象物322へと移動されるかまたは分析対象物322から移動され、330中の測定可能な種332へと移動されるかまたは330中の測定可能な種332から移動される。例えば、メディエータは還元されて、分析対象物322の酸化を介して測定可能な種332を形成することができる。好ましくは、インキュベーション期間317のあいだに形成される測定可能な種332は、インキュベーション期間317のあいだに電気化学的には励起されない。
【0080】
[0090] 340において、測定可能な種332は、電気化学的に励起される(酸化されまたは還元される)。この様式において、電子は、分析対象物322とセンサストリップ314の作用電極との間を選択的に移動される。励起340は、0.1〜5秒間の期間であってもよく、または0.1〜1秒間の期間であってもよい。励起340を繰り返してもよい。
【0081】
[0091] 350において、励起340のあいだに生成される電流は、時間の関数として記録することができる。複数の励起340がセンサストリップ314に対して印加される場合、励起340から得られる1またはそれ以上の電流を、350において記録することができる。電流を、測定装置により記録することができる。
【0082】
[0092] 360において、サンプルは緩和を受ける。好ましくは、電流を緩和360のあいだは記録しない。複数の励起を印加する場合、緩和360は、励起340のそれぞれの後に行うことができる。緩和360のあいだ、励起340のあいだに存在する電流は、少なくとも半分まで、好ましくは一桁まで、そしてより好ましくはゼロまで、実質的に減少させる。好ましくは、ゼロ電流状態が、開回路によりもたらされるか、または実質的にゼロ電流をもたらすことが当業者に知られているその他の方法によりもたらされる。測定装置は、センサストリップ314を介して回路を開放して、開回路を提供することができる。ゼロ電流状態がもたらされる場合、緩和360は、断続的なインキュベーション期間と考えることができる。
【0083】
[0093] 緩和360は、少なくとも0.1秒間の期間または少なくとも0.5秒間の期間であってもよい。緩和360は、0.1〜3秒間の期間、0.2〜2秒間の期間、または0.5〜1秒間の期間であってもよい。その他の緩和期間を使用することができる。
【0084】
[0094] 370において、1またはそれ以上の記録された350からの電流値および時間値を解析して、サンプル312中の分析対象物322の存在および/または濃度を測定することができる。好ましくは、分析対象物濃度は、最初に印加される励起の開始から2秒間または1秒間以内に行われる電流測定から決定される。より好ましくは、複数の短い励起を最初に印加される入力シグナルから2秒間以内、1秒間以内、またはそれ未満に行われる電流測定と組み合わせて、サンプルの分析対象物濃度を測定する。記録された電流値および時間値を、1またはそれ以上の相関式を使用して、サンプル312中の分析対象物322の濃度と相関させることができる。
【0085】
[0095] 励起340および緩和360は、一回の負荷サイクルを構成する。好ましくは、センサストリップ314に対して印加される入力シグナルには、独立して選択される3秒、5秒、7秒、または9秒の期間内に印加される、少なくとも2回、4回、または6回の負荷サイクルが含まれる。従って、入力シグナルの最初の印加から、電気化学的分析300の励起340および緩和360の部分のために必要とされる全体の時間は、最大でも3秒間、最大でも5秒間、最大でも7秒間、または最大でも9秒間であってもよい。負荷サイクルは、1〜3秒の期間のあいだ印加することができる。2〜6回の負荷サイクルを8秒間以内の間に印加することができる。2〜4回の負荷サイクルを3〜6秒間以内に印加することができる。その他の期間を使用することができる。
【0086】
[0096] 連続的なモニタリングのため、移植されたセンサまたは部分的に移植されたセンサと共に使用する場合と同様に、負荷サイクルを連続的に繰り返すことができる。システムを操作するために必要とされるエネルギーを減少させることができ、そしてそのシステムの耐用年数を緩和を含まない方法に関して延長することができる。さらに、複数の負荷サイクルの印加を、より長い期間(例えば5分またはそれ以上)の間隔を開けて行うことができる。
【0087】
[0097] 電流測定センサ系は電位(電圧)を電極に印加し、測定可能な種を励起させて、その間に電流(電流量)をモニターする。従来型の電流測定センサ系は、例えば5秒から10秒の電流を測定している間、励起電位を維持することができる。従来の方法と対照的に、電気化学的分析300において使用される入力シグナルは、連続的で長期間の励起を、複数回の短期間の励起および緩和に置き換えることができる。複数回の励起および緩和、または“ゲート(gated)”パルスシーケンスの、より詳細な説明は、“Gated Amperometry”と題された、2006年7月19日に出願されたPCT/US2007/013915に見い出すことができる。
【0088】
[0098] 本発明の短い最初のインキュベーション時間および/またはゲート入力シグナルを使用する場合、一過性のまたは非-Cottrell電流減衰が結果として得られる可能性がある。サンプル312中の分析対象物322の濃度を測定するために、-0.5のCottrell減衰定数に依存しないことにより、8秒間以内、4秒間以内、またはより好ましくは3秒間以内の過渡減衰を使用して、電気化学的分析300を完了させることができる。電気化学的分析300は、2秒間以内に完了させることができる。電気化学的分析300は、約0.5〜約3秒間で完了させることができる。過渡減衰を使用する電気化学的分析300は、その他の期間を使用して完了させることができる。
【0089】
[0099] 図4Aは、下部電極表面402および上部蓋403により境界を作られるサンプル容器400を示す。試薬層の事実上の上部境界405もまた、示される。従って、電極表面402と事実上の上部境界405との間の面積は、試薬層により含有されるサンプルを示す。同様に、事実上の上部境界405と上部蓋403との間の面積は、試薬層上のサンプルを示す。x-軸は、電極表面からの距離を示し、一方y-軸は、分析対象物のレドックス反応から生成される測定可能な種のサンプル濃度を示す。この図は、容器400の残留部分内のDBLと液体サンプルとの間を分割する分析対象物の作用を排除する。
【0090】
[00100] 濃度プロファイル410は、サンプルをストリップに対して導入した直後に見られる可能性があるものを示すが、一方濃度プロファイル420は相対的に長いインキュベーション期間の後に見られる可能性があるものを示す。濃度プロファイル410は一過性 条件を示し、一方濃度プロファイル420はCottrell条件を示す。複数の一過性状態は、一過性濃度プロファイル410およびCottrell濃度プロファイル420のあいだに存在する可能性がある。
【0091】
[00101] 図4Bは、入力シグナルが電極に印加される前にインキュベーション時間t1〜t5が経過する場合に、異なる濃度プロファイルが形成されることを示す。15〜30秒のインキュベーション期間を示すt5での濃度プロファイルは、サンプルを通じた測定可能な種の実質的に一定の濃度分布を示し、それが-0.5の減衰定数を有するCottrell減衰をもたらす。従って、t5線下面積および関連する測定可能な種の濃度は、電極表面402から相対的に大きな距離離れるまで、実質的に変化しない。
【0092】
[00102] t5線とは対照的に、t4線は、1〜12秒間のインキュベーション期間およびサンプル中の測定可能な種の様々な濃度分布を有する。t4線は、-0.30(1秒)〜-0.48(12秒間)のよりゆっくりとした過渡減衰定数を有する。従って、t4線下面積およびそれを裏付ける測定可能な種の濃度は、電極表面402から容器400の上部蓋403への実質的な変化を受ける〜すなわち、可変である。
【0093】
[00103] インキュベーション期間がさらに、t3では0.4〜1秒にまで減少され、またはt2では0.1〜0.3秒まで減少されるため、過渡減衰定数は、それぞれ、t3については-0.25〜-0.3の範囲であり、そしてt2については-0.15〜-0.25の範囲であってもよい。0.01〜0.1秒のインキュベーション期間を示すt1減衰は、-0.15またはそれ未満の過渡減衰定数を有していてもよい。インキュベーション期間がt4からt1まで減少されるため、線下面積そして電極表面402と容器400の上部蓋403との間の関連する測定可能な種の濃度は、益々可変になる。
【0094】
[00104] 電極表面402で、容器400の他の部分よりも、測定可能な種が低い濃度を有する場合(t1からt4までの図4Bの可変の濃度分布プロファイルで示される場合など)、電流減衰の速度は、Cottrell減衰に必要とされる-0.5の減衰定数よりもゆっくりとしていてもよい。このよりゆっくりとした減衰は、測定可能な種がサンプル容器400全体に均等に分散された場合よりも、高い濃度の測定可能な種が電極表面402から遠ざかり電極表面により迅速に到達することに起因する可能性がある。同様に、より早い減衰速度は、高い濃度の測定可能な種のよりサンプル容器400の他の部分よりも電極表面402において存在する場合に、得ることができる。
【0095】
[00105] 図4Cは、容器400中の測定可能な種の濃度と電流減衰定数との間の関係を示す。測定可能な種の濃度プロファイル430および440は、それぞれ、-0.5のCottrell減衰定数と対応する420と比較して、よりゆっくりとした減衰速度およびより速い減衰速度を有する。-0.5のCottrell減衰定数未満の減衰定数(例えば、-0.3)を有する濃度プロファイル430に関して、電流減衰速度は、Cottrellシステムに関して得られた速度よりもゆっくりである。同様に、-0.5のCottrell減衰定数よりも大きな減衰定数(例えば、-0.7)を有する濃度プロファイル440に関して、電流減衰速度は、Cottrellシステムに関して得られた速度よりも速い。従って、420により示される-0.5のCottrell減衰定数と比較して、過渡減衰定数430、440は、容器400中での測定可能な種の可変の濃度分布を反映する。
【0096】
[00106] 長いインキュベーション期間を使用してCottrell減衰を生成する場合、測定励起のあいだに産生される測定可能な種の量は、それ以前のインキュベーション期間のあいだに産生される測定可能な種の量と比較して少ない。従って、入力シグナルの印加前に、分析対象物が測定可能な種へと完全に酸化還元変換されることを示す濃度プロファイル420とは異なり、濃度プロファイル430、440は、不完全な変換を示す。さらに、対流またはその他の経路を介した測定可能な種の電極への拡散速度のいずれかの変化もまた、インキュベーション期間のあいだに生成される測定可能な種の量に関して小さい。従って、長いインキュベーション期間は、-0.5のCottrell減衰定数を変化させる可能性がある効果を実質的に無視する。
【0097】
[00107] 対照的に、短いインキュベーション期間(例えば、12秒間、10秒間、およびそれよりも短い期間)を使用する場合、測定励起のあいだに生成される測定可能な種の量および拡散以外のプロセスに由来する拡散速度のいずれかの変化は、-0.5のCottrell値よりも遅い実際の減衰速度をもたらす可能性がある。この減衰プロセスは、以下の正規化電流式、式(2)により記述することができる:
【0098】
【数2】

【0099】
式中、aは、インキュベーション期間中に形成される測定可能な種由来の減衰定数の部分であり、bは、測定励起のあいだに形成される測定可能な種由来の減衰定数の部分であり、そしてcは、サンプル容器中の測定可能な種の濃度分布の分散から生じる減衰定数の部分である。bおよびcのマイナス値は、測定された測定可能な種の濃度の増加の結果であり、一方bおよびcのプラス値は、測定された測定可能な種の濃度の減少の結果である。従って、aまたはbのいずれかがゼロではない場合、a減衰値からの偏差が生じる。Cottrell減衰が aについて-0.5値によりもたらされる場合、bまたはcからの顕著な寄与により、過渡減衰定数がもたらされる。式(2)のもと、期間aは、濃度プロファイル420から得られた減衰定数を調節し、一方期間bは、濃度プロファイル430および440から得られた減衰定数に実質的に寄与し、そして分析対象物の酸化還元変換が完了する前に入力シグナルが印加される。
【0100】
[00108] 式(2)は、システムの減衰定数が、これらの裏付けとなる因子が測定の際の電流減衰に影響を与えることに応じて、時間の経過と共に変化することができることを示す。例えば、より長いインキュベーション期間は、bを減少させる一方でaを増加させる。というのも、インキュベーション期間の間に測定可能な種へと変換された分析対象物が多くなればなるほど、励起の間に測定可能な種へと変換されるためのサンプルに残る分析対象物はより少なくなるためである。
【0101】
[00109] 分析対象物の測定可能な種への酸化還元変換は、水和した試薬層中で生じる。より厚い試薬層は水和のためにより長い時間が必要であるため、入力シグナルが試薬層が水和される前に印加される場合に、より厚い試薬層は、aの期間と比較してbの期間の増加をもたらす。Cottrell減衰は、測定励起のあいだ(式(2)のbの期間)に形成される測定可能な種の減衰定数の寄与のため、試薬層が水和される前には得られない。このことは、'069特許の第4欄、58〜59行において認識されており、試薬の不完全な湿潤化の結果、このシステムがCottrell曲線減衰を生じることができず、不正確な分析対象物濃度値が得られるという結果を生じることを開示する。従って、過渡減衰定数は、相対的に短い最初のインキュベーション期間の結果として部分的に水和した試薬層から得ることができる。
【0102】
[00110] 測定可能な種の実質的に一定の濃度分布を含むセンサストリップ容器は、cに起因する減衰定数に対するいずれかの作用を低下させることができる。励起期間がサンプル容量に対して非常に長い場合、cの期間もまた減衰定数に影響を与える可能性があり、結果として、電極の表面からの距離が大きくなればなるほど、測定可能な種の濃度が迅速に減少する。短い励起を使用しまたは複数の短い励起を1または複数の緩和と組み合わせて使用することにより、cの期間の減衰定数に対する影響を減少させることを補助することができる。
[00111] 例えば、'069特許は、160秒の最初のインキュベーション期間を50μLのサンプル容器と組み合わせる場合に、-0.5のCottrell減衰定数をもたらすシステムを記載する。このシステムに関して、インキュベーション期間が十分に短くされた場合、式(2)のbの期間は増加され、従って非-Cottrell減衰が提供される。同様に、容器容量が十分に減少された場合、非-Cottrell減衰が式(2)のcの期間の増加を結果として生じる。
【0103】
[00112] 図5は、約3.5μLの容器容量および約250μmの電極から蓋までの距離を有するセンサストリップから、インキュベーション期間を変化させることにより、50、100、200、または400 mg/dLのグルコースを含有する全血サンプルについて得られた減衰定数を示す。減衰の速度は、インキュベーション時間が増加すると共に増加した;しかしながら、-0.5のCottrell減衰定数は、6秒のインキュベーション期間以内には得られなかった。従って、このシステムは、これらの状況の下では、過渡減衰をもたらした。
【0104】
[00113] 以下の表Iは、図5の1〜6秒のインキュベーション期間のあいだの減衰定数を提供し、そして10秒および15秒のインキュベーション期間のあいだの予想される定数を提供する。予想される減衰定数もまた、延長される20秒のインキュベーション期間のあいだ提供される。
【0105】
【表1】

【0106】
[00114] それぞれの事例において、入力シグナルには、4秒の最初の励起、次に可変期間の開回路型の断続的なインキュベーション期間、そして1秒の測定励起が含まれ、測定励起の間に電流を記録した。このセンサシステムは、1〜6秒のインキュベーション期間のいずれかの間にCottrell減衰条件を達成しなかった。このセンサシステムは、50 mg/dLの低グルコース濃度であっても、12秒以内にCottrell減衰条件を達成すると予測されなかった。好ましい過渡減衰定数は、-0.001〜-0.48および-0.52〜-1である。より好ましい過渡減衰定数は、最大でも-0.45、最大でも0.35、および最大でも-0.3である。その他の過渡減衰定数を使用してもよい。
【0107】
[00115] 図6A〜図6Cは、それぞれが異なる反応層平均初期厚を有する3つのセンサストリップから得られた、0.125秒間、0.5秒間、1秒間、2秒間、4秒間、および6秒間の最初のインキュベーション期間での電流プロファイルをプロットする。各ストリップのサンプル容器は約1μLであった。図6Aのプロットは、約15μm〜約20μmの(“厚い”)平均初期厚を有する反応層を有する複数のセンサストリップから得られた。図6Bのプロットおよび図6Cのプロットは、10μm〜15μmの(“中間”の)平均初期厚を有する反応層を有する複数のセンサストリップおよび1μm〜2μmの(“薄い”)平均初期厚を有する反応層を有する複数のセンサストリップからそれぞれ得られた。その他の厚さを使用してもよい。
【0108】
[00116] この図は、インキュベーション時間、試薬層の厚さ、そして層水和の関連する速度の関係を示す。より厚い試薬層は、試薬層を水和するためにより長い時間を必要とし、そして試薬層を水和するために必要とされる時間が長くなればなるほど、電流減衰が連続的減少の時点に到達する前の時間が長くなる。減少する過渡減衰から得られる電流値は、サンプルの分析対象物濃度と相関させることが好ましい。
【0109】
[00117] 図6Aの厚い層をなすストリップに関して、連続的に減少する電流減衰は、約4秒間またはそれ以上の長さのインキュベーション期間の後に得られた。しかしながら、約2秒間およびそれ未満の長さのインキュベーション期間のあいだ、連続的に減少する電流減衰は、約2秒またはそれ以上の長さの入力シグナルが印加されるまで、厚い層をなすストリップに関して得られなかった。
【0110】
[00118] 図6Bのセンサストリップの中間厚の試薬層に関して、連続的に減少する電流減衰が、約2秒間またはそれ以上の長さのインキュベーション期間の後に得られた。約1秒およびそれ未満の長さのインキュベーション期間に関して、約2秒またはそれ以上の長さの入力シグナルにより連続的に減少する電流減衰がもたらされた。
【0111】
[00119] 図6Cのセンサストリップの薄い試薬層に関して、連続的に減少する電流減衰は、約1秒またはそれ以上の長さのインキュベーション期間の後に得られた。約0.5秒およびそれ未満のインキュベーション期間に関して、約1秒またはそれ以上の長さの入力シグナルにより、連続的に減少する電流減衰がもたらされた。従って、より薄い試薬層は、より短いインキュベーション期間と組み合わされて、より短い全分析時間をもたらす。その一方、より厚い試薬層は、より長い期間のインキュベーション期間および/または入力シグナルを必要とする可能性がある。
【0112】
[00120] 図7A〜図7Bは、40%のヘマトクリットを有し、100または300 mg/dLのグルコースを含む全血サンプルについて、6秒の最初のインキュベーション期間の後に得られた、電流vs.時間の自然対数をプロットする。サンプル容器容量および試薬層の平均初期厚は、上記の図6A〜図6Cと同様であった。プロットは、10秒の励起の最初の5秒間のあいだに得られた電流値から生成され、式(2)のaの期間は、減衰定数を左右する。観察された減衰定数のそれぞれ〜ln(電流、nA)vs. ln(時間、sec)プロットの傾き〜は、-0.5のCottrell減衰定数とは異なり、約-0.35〜約-0.45の範囲の過渡減衰定数を有する。従って、6秒間の最長の最初のインキュベーション期間であっても、Cottrell減衰は観察されない。
【0113】
[00121] 図8A〜図8Cは、0.25秒の最初のインキュベーション期間、その後0.5秒の励起および0.25秒の緩和を含むゲート入力シグナルを行って、0.75秒の負荷サイクル期間をもたらすことによる電流減衰プロファイルである。約1μLのサンプル容器容量を有する中間厚の試薬層センサストリップおよび薄い試薬層センサストリップを両方とも使用して、40%のヘマトクリットを有し、50、100、または400 mg/dLのグルコースを含む全血サンプルを解析した。50 mg/dLのサンプル中の分析対象物濃度と相関する可能性がある連続的に減少する電流減衰は、薄い試薬層に関して0.75秒以内に、すなわち最初の励起の間に、得られた。より厚い中間厚の試薬層に関して、連続的に減少する電流減衰が3秒間以内に、すなわち3回目の励起のあいだに、得られた。
【0114】
[00122] 図8Dは、図8A〜図8Cに示される様な薄い試薬層のセンサストリップから得られる、最初の3回の励起の終点電流(p1、 p2、p3)をプロッティングすることにより得られる較正プロットである。この図は、本発明に従って非常に短い0.25秒のインキュベーション期間の後に得られる電流値が、全血サンプルの実際の血漿グルコース濃度と正確に相関する(R2=0.999)可能性があることを示す。
【0115】
[00123] 図8Eは、図8A〜図8Cに示される様な中間厚の試薬層を有するセンサストリップから得られる、励起4、5、および6の終点電流(p4、p5、p6)をプロッティングすることにより得られる較正プロットである。この図は、本発明に従って非常に短い0.25秒の最初のインキュベーション期間および0.5秒の励起および0.25秒の緩和を含む複数の負荷サイクルの後に得られる電流値が、全血サンプルの実際の血漿グルコース濃度と正確に相関する(R2=0.99)可能性があることを示す。
【0116】
[00124] 本件出願の明細書および請求の範囲の明確で一貫した理解をもたらすために、以下の定義が提供される。
【0117】
[0125] “サンプル”は、未知量の分析対象物を含むことができる組成物である。サンプルは、全血液、尿、唾液などの水性のもの、または抽出物、希釈物、濾過物、または再構成沈殿物などの派生物であってもよい。
【0118】
[00126] “インキュベーション期間”は、励起が印加される前の(例えば、最初の励起が印加される前の)試薬とサンプルが反応する時間の長さおよび/または入力シグナルに複数の励起が含まれる場合の励起間の時間の長さである。
【0119】
[00127] “測定可能な種”は、電極表面において適切な電位の下、酸化または還元されることができる、すべての電気化学的に活性である種である。
【0120】
[00128] “酸化還元酵素”は、分析対象物または生物学的物質の酸化または還元を促進する。例えば、Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology, Revised Edition, A.D. Smith, Ed., New York: Oxford University Press (1997) pp. 161, 476, 477, and 560を参照。
【0121】
[00129] 本発明の様々な態様が記述されたが、当業者においては、その他の態様および実施が本発明の範囲内で可能であることは明らかだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルをセンサストリップに対して導入し;
最大でも8秒間のインキュベーション期間の後、シグナルをサンプルに対して印加し;
測定可能な種のレドックス反応に応答して、過渡減衰(transient decay)を有するシグナルを生成し;そして
生成されたシグナルの過渡減衰から、分析対象物濃度を決定する;
ことを含む、サンプル中の分析対象物濃度を測定するための方法。
【請求項2】
測定可能な種が少なくとも1つのメディエータを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
インキュベーション期間が最大でも6秒間である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
インキュベーション期間が最大でも4.75秒間である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
インキュベーション期間が0.5〜4秒間である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
過渡減衰がシグナルをサンプルに印加してから0.5〜5秒間以内に得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
過渡減衰が漸減する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
漸減する電流減衰がシグナルをサンプルに印加してから約0.5〜約3秒間以内に得られる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
分析対象物濃度が単一励起の漸減する生成シグナルから決定される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
サンプル容器中で測定可能な種の様々な濃度分布を生成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
インキュベーション期間およびシグナルの印加が、最大でも6秒間で完了する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
インキュベーション期間およびシグナルの印加が最大でも4秒間で完了する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
過渡減衰が-0.52〜-1の減衰定数を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
過渡減衰が最大でも-0.35の減衰定数を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
分析対象物濃度を決定する際の生成シグナルが、シグナルをサンプルに対して印加してから2秒間以内に生成される電流値を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
生成シグナルから分析対象物濃度を測定することが、シグナルを印加してから3秒間以内に完了する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
サンプルがセンサストリップベースおよび蓋の底部表面により規定される容器中に存在し、ここで
ベースは蓋の底部表面から50〜150μmであり、
容器中のサンプルの容量は最大でも3.5μLであり、そして
インキュベーション期間が最大でも6秒間である、
請求項1に記載の方法。
【請求項18】
センサストリップベースから蓋の底部までの容器高が最大でも100μmであり、容器中のサンプルの容量が最大でも3μLであり、容器には最大でも2μmの平均初期厚を有する少なくとも1つの試薬層が含まれ、そしてインキュベーション期間が最大でも2秒間である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
それぞれが0.1〜5秒間の期間を有する少なくとも3回の励起を含むシグナルを、サンプルに対して印加し;
測定可能な種のレドックス反応に応答して過渡減衰を有するシグナルを生成し;そして
生成シグナルの過渡減衰から分析対象物濃度を決定する;
ことを含む、サンプル中の分析対象物濃度を測定するための方法。
【請求項20】
励起が、それぞれが0.1〜3秒間の期間を有する少なくとも2回の緩和により分離されている、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
印加されるシグナルに5秒間以内に印加される少なくとも2回の負荷サイクルが含まれる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
印加されるシグナルの後、0.1〜10秒間のインキュベーション期間を行う、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
シグナルの印加が最大でも4秒間で完了する、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
過渡減衰が-0.52〜-1の減衰定数を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
過渡減衰が最大でも-0.35の減衰定数を有する、請求項19に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【公表番号】特表2010−507808(P2010−507808A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534761(P2009−534761)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/081368
【国際公開番号】WO2008/051742
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(503106111)バイエル・ヘルスケア・エルエルシー (154)