説明

過熱水蒸気供給装置及び基板処理装置

【課題】水蒸気中の不純物を低減することで基板上の微粒子等を確実に除去すること。
【解決手段】純水PWを加熱沸騰させて水蒸気を発生させる石英ガラス製の水蒸気発生容器110と、水蒸気発生容器110に純水PWを供給する純水供給部400と、水蒸気発生容器110で発生した飽和水蒸気SVを加熱して過熱水蒸気HVを生成する石英ガラス製の過熱水蒸気生成容器150と、過熱水蒸気生成容器150で発生した過熱水蒸気HVを基板Wの表面に噴射させる基板処理装置300とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体基板、液晶基板、マスク基板、記録ディスク用の基板等の表面上の微粒子、有機物、金属粉、残留薬液等の除去を行う過熱水蒸気供給装置及びこれを用いた基板処理装置に関し、特に不純物を最大限に除去することができる技術に関する。
【0002】
また、高純度過熱水蒸気による殺菌効果、環境浄化に関する分野、さらには、環境保全、低炭素社会実現等、環境問題に関する分野、その他、一般的に加熱プロセスによる高温ガス取得並びに加熱水蒸気の提供に関する分野である。
【背景技術】
【0003】
半導体基板の洗浄方法として、過酸化水素と水酸化アンモニウムのSC−1溶液と、過酸化水素と希塩酸のSC−2溶液を用いたRCA洗浄法が知られている。しかしながら、近年の半導体基板の大口径化、微細プロセス化、新配線材料導入の対応、並びに地球環境に対する負荷を低減するという観点から大量の薬液・超純水を使用する従来のRCA洗浄プロセスを見直す必要があった。このため、過熱水蒸気生成装置により生成された過熱水蒸気を用いて洗浄する方法が開発された(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
過熱水蒸気生成装置は、金属を使用したボイラ等で高圧下で水を高温加熱して、過熱水蒸気を生成している。また、ボイラ等で発生した水蒸気を、バーナ、電気ヒータで直接加熱したり、誘導加熱方式で間接的に高温加熱し、過熱水蒸気を生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−121816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した過熱水蒸気生成装置では、次のような問題があった。すなわち、水を収容する容器として金属を使用しているため、金属不純物の溶出を防ぐことは困難である。また、高温の過熱水蒸気を生成するに従い、金属不純物の溶出は多くなるとともに、容器の金属疲労が生じやすくなる。
【0007】
このため、クリーン洗浄、乾燥が要求される半導体基板、液晶基板、マスク基板、記録ディスク用の基板及びその他の基板等の洗浄、乾燥では過熱水蒸気による洗浄方法は使用できない、という問題があった。
【0008】
そこで本発明は、水蒸気中の不純物を極限まで低減することで基板上の微粒子、有機物、金属粉、残留薬液等を確実に除去する過熱水蒸気供給装置及びこの過熱水蒸気供給装置を有する基板処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明の過熱水蒸気供給装置及び基板処理装置は次のように構成されている。
【0010】
純水を加熱沸騰させて水蒸気を発生させる石英ガラス製の水蒸気発生容器と、前記水蒸気発生容器に純水を供給する純水供給部と、前記水蒸気発生容器で発生した水蒸気を加熱して過熱水蒸気を生成する石英ガラス製の過熱水蒸気生成容器とを備えている。
【0011】
純水を加熱沸騰させて水蒸気を発生させる石英ガラス製の水蒸気発生容器と、前記水蒸気発生容器に純水を供給する純水供給部と、前記水蒸気発生容器で発生した水蒸気を加熱して過熱水蒸気を生成する石英ガラス製の過熱水蒸気生成容器と、この過熱水蒸気生成容器で発生した過熱水蒸気を被処理基板の表面に噴射させる基板処理機構とを備えている。
【0012】
また、さらには、地球環境保全を目的として低炭素社会形成、太陽光発電、未利用エネルギー使用発電、自然環境利用発電排熱回収、高効率電池の開発等が行われている時代であるが、これ等の諸目的達成の為に当該高純度過熱水蒸気に前記窒素ガス、不活性ガス以外のガス体、例えば、CO等を用いて、ガス混合高純度過熱水蒸気を用いる事も可能である。従って、本発明は一般的に諸目的に応じて、合目的にガス体を選択して高温加熱ガス体を生成する手段の提供及び、当ガス体を加熱水蒸気と混在させて、過熱ガス混合高純度過熱水蒸気生成手段をも含むものとする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水蒸気中の不純物を極限まで低減することで基板上の微粒子、有機物、金属粉、残留薬液等を確実に除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る過熱水蒸気供給装置が組み込まれた基板処理装置の構成を示す説明図。
【図2】同基板処理装置の動作を示す説明図。
【図3】同基板処理装置の動作を示す説明図。
【図4】同基板処理装置に組み込まれた過熱水蒸気供給装置の要部を図3におけるX−X線の位置で切断し矢印方向に見た断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明の一実施の形態に係る過熱水蒸気供給装置100が組み込まれた基板処理装置10の構成を示す説明図、図2及び図3は基板処理装置10の動作を示す説明図、図4は過熱水蒸気供給装置100の要部を図3におけるX−X線の位置で切断し矢印方向に見た断面図である。なお、図中PWは純水、SVは飽和水蒸気、HVは過熱水蒸気、Wは半導体基板等の被処理対象となる基板を示している。
【0016】
基板処理装置10は、過熱水蒸気供給装置100と、基板洗浄装置300とを備えている。過熱水蒸気供給装置100は、純水PWを加熱して飽和水蒸気SVを発生させるための石英ガラス製の水蒸気発生容器110と、飽和水蒸気SVをさらに加熱して過熱水蒸気HVを発生させるための石英ガラス製の過熱水蒸気生成容器150と、水蒸気発生容器110の後述する純水供給口121に接続された第1配管部200と、水蒸気発生容器110の後述する水蒸気排出口122と過熱水蒸気生成容器150の後述する水蒸気供給口171の間に接続された第2配管部210と、過熱水蒸気生成容器150の水蒸気排出口172に接続された第3配管部220とを備えている。
【0017】
水蒸気発生容器110は、水平方向に延設された容器120を備えている。この容器120の一端下部には純水供給口121が設けられ、他端上部には、容器120内で発生した水蒸気排出口122とが設けられている。容器120内部には、純水供給口121から供給された純水が通流する純水流通路123と、この純水流通路123と隔離され、ハロゲンランプ130を収納するランプ収納管124が設けられている(図4参照)。
【0018】
容器120内部は、仕切り板140で、純水加熱貯蓄室141と水蒸気発生室142に分離され、純水加熱貯蓄室141の下部には、純水供給口121が連通し、水蒸気発生室142の上部には、水蒸気排出口122が連通している。なお、容器120は水位確認配管125を有し、この水位確認配管125の途中には純水適量検出液面センサ126が設けられている。なお、容器120の上部には温度センサ127が設けられている。
【0019】
過熱水蒸気生成容器150は、水平方向に延設された容器170を備えている。この容器170の一端下部には飽和水蒸気SVを導入する水蒸気供給口171が設けられ、他端上部には、容器170内で発生した過熱水蒸気HVを排出する水蒸気排出口172とが設けられている。容器170内部には、飽和水蒸気SVが通流する水蒸気流通路173と、この水蒸気流通路173と隔離され、赤外線ヒータ180を収納するランプ収納管174が設けられている。なお、容器170の上部には温度センサ175が設けられている。
【0020】
第1配管部200は、純水供給装置400に接続された純水供給弁201と、薬液供給装置410と接続された薬液供給弁202とを備えている。第2配管部210は、水蒸気排出口122と水蒸気供給口171との間に接続された水蒸気供給弁211と、外部に開放された水蒸気廃出口214と接続された水蒸気廃出弁212と、窒素ガス供給装置420と接続された窒素ガス供給弁213とを備えている。第3配管部220は、水蒸気排出口172と基板洗浄装置300との間に接続された石英ガラス製の過熱水蒸気供給管221と、この過熱水蒸気供給管221の周囲に配置されたヒータ222とを備えている。
【0021】
基板洗浄装置300は、筐体310と、洗浄対象となる基板Wを載置する支持台320とを備えている。
【0022】
このように構成された基板処理装置10は、図2及び図3に示すようにして基板Wの処理を行う。過熱水蒸気HVの生成を必要とする時に、純水供給弁201を開にし、純水加熱貯蓄室141内に純水PWを供給する。
【0023】
純水加熱貯蓄室141内に供給された純水PWは、仕切り板140の上部位置に設けられた純水供給補給口140aから水蒸気発生室142内に供給される。水蒸気発生室142内に供給されている純水PWが純水適量検出液面センサ126の位置に到達した時点で、純水供給弁201が閉となり、純水加熱貯蓄室141への純水PWの供給が停止される。
【0024】
次に、ハロゲンランプ130及び赤外線ヒータ180をONにする。この時、水蒸気発生容器110内の温度センサ127を100℃で制御し、過熱水蒸気生成容器150内の温度センサ175を200℃で制御する。水蒸気発生室142に貯蓄されている純水PWは、ハロゲンランプ130の照射を受けて蒸発し、水蒸気発生室142内に飽和水蒸気SVが発生する。この時、水蒸気供給弁211を閉、水蒸気廃出弁212を開とし、水蒸気発生室142内で発生している飽和水蒸気SVを水蒸気廃出口214から排出する。
【0025】
次に、温度センサ175が200℃で制御されていることを確認後、水蒸気廃出弁212を閉、水蒸気供給弁211を開とし、過熱水蒸気生成容器150内に飽和水蒸気SVを供給する。
【0026】
飽和水蒸気SVは過熱水蒸気生成容器150内の水蒸気流通路173を通過する際、通路壁からの直接加熱又は、赤外線ヒータ180の照射を受けて200℃の過熱水蒸気HVが生成される。生成された過熱水蒸気HVは、水蒸気排出口172から過熱水蒸気供給管221を通して基板Wに噴射して半導体基板Wを洗浄、乾燥する。過熱水蒸気供給管221の外側には、管内に供給されている過熱水蒸気HVの凝縮を防止するため、保温ヒータ222が設けられている。
【0027】
過熱水蒸気HVを基板W上に噴射することにより、基板Wを加熱しながらによる洗浄効果の増大と共に、基板W上での過熱水蒸気HVの凝縮作用による洗浄・剥離・脱脂効果による微粒子、有機物、金属粉等の除去が行われる。さらには、基板が過熱水蒸気の温度と同温度となった時点で、基板上での水蒸気の凝縮が終了し、基板上はクリーン乾燥される。
【0028】
なお、水蒸気発生容器110内で発生させる飽和水蒸気SVの発生量の調整は、ハロゲンランプ130の通電本数で調整することが可能である。
【0029】
例えば、図4に示すように、容器120内に3本のハロゲンランプ130が収納されていると、純水PWの蒸発量は、1本通電の場合は蒸発量は100(cc/min)、2本通電の場合は200(cc/min)、3本通電の場合は300(cc/min)となる。これは、温度センサ127の制御温度の上昇と共に増加する。
【0030】
過熱水蒸気生成容器150内で生成される過熱水蒸気HVの生成量は、当然、水蒸気発生容器110内で発生させる飽和水蒸気SVの発生量に比例する。
【0031】
過熱水蒸気生成容器150内で生成される過熱水蒸気HVの温度の調整は、水蒸気流通路温度174の制御温度を調整することにより、110〜1000℃の範囲で制御することが可能である。過熱水蒸気HVを110℃以上とすることで不純物の除去効果が得られる。また、石英管の軟化点が1200℃位なので、過熱水蒸気HVの最高温度を1000℃以下とすることで容器170や過熱水蒸気供給管221の軟化を防止し、耐久性を維持することができる。
【0032】
なお、上述した基板Wの洗浄後、水蒸気供給弁211を閉、窒素ガス供給装置420に接続されている窒素ガス供給弁213を開とし、過熱水蒸気生成容器150内に窒素ガスを供給し、所定温度(110〜1000℃)に加熱された加熱窒素ガスが水蒸気排出口172から過熱水蒸気供給管221を通して半導体基板Wに噴射され半導体基板Wを乾燥させるようにしてもよい。
【0033】
なお、必要に応じて薬液供給装置410と接続された薬液供給弁202を開き、純水PWの代わり、あるいは純水PWと共に、薬液を導入するようにしてもよい。なお、薬液としては、例えば、フッ酸、塩酸、過酸化水素水、硫酸、オゾン水、アンモニア水、イソプロピルアルコール、フッ素系有機溶剤、電解イオン水等である。
【0034】
以上述べたように、本実施の形態に係る基板処理装置10によれば、高純度の石英ガラス製の容器内で純水PWを蒸発させ、過熱して生成した高純度の過熱水蒸気HVを使用しているため、金属イオンやダスト等の不純物を一切含まない。よって、基板Wに対する洗浄効果、半導体デバイスの信頼性を向上させながら、洗浄装置のコストの低減とコンパクト化を図ることができる。
【0035】
また、過熱水蒸気HVには、有機物質に対する強い溶解力、加水分解能力があり、従来の薬液を使用した洗浄から過熱水蒸気HVのみの洗浄に切り替えることができ、環境負荷の大幅な低減となる。また、洗浄以外にも不純物を含まない過熱水蒸気HVは、安全に食品の加熱、滅菌、乾燥等ができる。
【0036】
なお、筐体310又は支持台320にヒータを設けることで、基板Wを100℃以上に保つようにしてもよい。基板Wが100℃を超える温度が維持されるように制御することで、ドライ洗浄を行うことができる。ドライ洗浄とは、基板Wに過熱水蒸気HVを噴射しても基板W上で凝縮することがないため、基板Wが濡れることなく洗浄されることとなる。基板Wで凝縮した場合に残るウォータマークや、基板W上で水分が蒸発する際に生じるパターンの倒壊を防止することができる。また、凝縮した液の処理や乾燥工程が不要に成るため、洗浄工程を単純化することができる。
【0037】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。窒素ガスの代わりに不活性ガスや炭酸ガスを用いてもよい。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【符号の説明】
【0038】
10…基板処理装置、100…過熱水蒸気供給装置、110…水蒸気発生容器、130…ハロゲンランプ、150…過熱水蒸気生成容器、180…赤外線ヒータ、200…第1配管部、210…第2配管部、220…第3配管部、300…基板洗浄装置、PW…純水、SV…飽和水蒸気、HV…過熱水蒸気、W…基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
純水を加熱沸騰させて水蒸気を発生させる石英ガラス製の水蒸気発生容器と、
前記水蒸気発生容器に純水を供給する純水供給部と、
前記水蒸気発生容器で発生した水蒸気を加熱して過熱水蒸気を生成する石英ガラス製の過熱水蒸気生成容器とを備えていることを特徴とする過熱水蒸気供給装置。
【請求項2】
純水を加熱沸騰させて水蒸気を発生させる石英ガラス製の水蒸気発生容器と、
前記水蒸気発生容器に純水を供給する純水供給部と、
前記水蒸気発生容器で発生した水蒸気を加熱して過熱水蒸気を生成する石英ガラス製の過熱水蒸気生成容器と、
この過熱水蒸気生成容器で発生した過熱水蒸気を被処理基板の表面に噴射させる基板処理機構とを備えていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
前記過熱水蒸気生成容器に窒素ガスを供給する窒素ガス供給部をさらに備えていることを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記基板処理機構は、基板表面が100℃を超える温度に維持されるヒータを備えていることを特徴とする請求項2記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記水蒸気発生容器に薬液を供給する薬液供給部をさらに備えていることを特徴とする請求項2記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記薬液は、フッ酸、塩酸、過酸化水素水、硫酸、オゾン水、アンモニア水、フッ素系有機溶剤、電解イオン水等から選択された少なくとも1種類以上の薬液を含むことを特徴とする請求項5記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−119388(P2012−119388A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265478(P2010−265478)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(597025574)オメガセミコン電子株式会社 (2)
【Fターム(参考)】