説明

過給機の制御装置

【課題】多段ターボ過給機の排気バイパスバルブを開く際に過給圧の低下を防止することができる過給機の制御装置を提供する。
【解決手段】車両のエンジン10に設けられた大型ターボ過給機2の高圧側に、その大型ターボ過給機2よりも小型の小型ターボ過給機3を直列に設け、その小型ターボ過給機3をバイパスする排気バイパス通路4に排気バイパスバルブ5を設け、上記エンジン10の排気ガス流量が増加する際に、上記排気バイパスバルブ5を開いて上記排気バイパス通路4を通り上記大型ターボ過給機2に導入される排気ガス流量を増加させるようにした過給機の制御装置1において、上記排気バイパスバルブ5を開く際に、上記大型ターボ過給機2の応答時間を確保すべく、上記排気バイパスバルブ5の単位時間あたりの開度変化量を所定の制限値に制限する開度変化量制限手段6を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型のターボ過給機と大型のターボ過給機とが直列に配置された多段過給機の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、大小2つの過給機を直列に配置した内燃機関が存在する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そのような内燃機関の一例を図7(a)から図7(c)に基づき説明する。
【0004】
図7(a)−(c)に示すように、エンジン本体101には、吸気通路102と排気通路103とが接続され、それら吸気通路102および排気通路103には、過給システムを構成するターボ式の大型過給機104と小型過給機105とが直列に配置される。
【0005】
小型過給機105には、そのタービン106をバイパスする排気バイパス通路107が設けられ、その排気バイパス通路107には、排気バイパスバルブ108が設けられる。また、コンプレッサ109をバイパスする吸気バイパス通路110には吸気切り替えバルブ111が設けられる。
【0006】
このような過給システムにおいては、排気ガスのエネルギーが小さい低負荷領域では、図7(a)に示すように、エンジン本体101からの排気ガスを全て小型過給機105に導入し、小型過給機105を主に作動させ、加速時の過給圧の立ち上がりを促進させる。
【0007】
負荷が上昇してくると、小型過給機105の回転が高まり過給圧が所望の値以上に上昇して、小型過給機105の効率低下や過回転の可能性が高くなる。
【0008】
そこで、中負荷領域では、図7(b)に示すように、小型過給機105に導入される排気ガスの一部を排気バイパス通路107によりバイパスさせ、小型および大型過給機105、104を併用し、小型過給機105に取り付けた排気バイパスバルブ108により小型過給機105の仕事量を調整しつつ、所望の吸気過給圧を達成する。
【0009】
さらに、負荷が上昇すると、排気ガスの一部をバイパスしたとしても小型過給機105では、過給機の効率が低下し、過給機自体が過回転してしまったり、エンジン排圧上昇により燃費や排気ガス性能への悪影響がでる。
【0010】
そこで、高負荷領域では、図7(c)に示すように、排気ガスに小型過給機105のタービン106を完全にバイパスさせ、かつ吸気切り替えバルブ111により吸気ガスに小型過給機105の圧縮機(コンプレッサ)109もバイパスさせ、大型過給機104のみを使用する。
【0011】
このようにして、中低負荷でのレスポンスと、高負荷での高出力を両立することが、従来から行われてきた2段過給システムの利点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−140653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、このような過給システムにおいては、図7(a)の低負荷領域から図7(b)の中負荷領域に領域が移動した直後、または図7(b)の中負荷領域から図7(c)の高負荷領域に移動した直後は、応答の遅い大型過給機104は依然加速中である。
【0014】
そのため、このときに従来の制御方式にしたがって排気バイパスバルブ108を一気に開くと、開いた直後に大型過給機104の仕事量が低いため、過給圧の一時的な低下、すなわち加速性能の低下が起こる。
【0015】
特にアクセルペダルを急激に踏み込み、ほとんど中負荷領域を経由せずに低負荷領域から高負荷領域に急加速をした場合においては、小型過給機105を使用せずにレスポンスの遅い大型過給機104を予回転のない状態で使用して過給を行う状態になるので、加速性能の低下が著しい。
【0016】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、多段ターボ過給機の排気バイパスバルブを開く際に過給圧の低下を防止することができる過給機の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために本発明は、車両のエンジンに設けられた大型ターボ過給機の高圧側に、その大型ターボ過給機よりも小型の小型ターボ過給機を直列に設け、その小型ターボ過給機をバイパスする排気バイパス通路に排気バイパスバルブを設け、上記エンジンの排気ガス流量が増加する際に、上記排気バイパスバルブを開いて上記排気バイパス通路を通り上記大型ターボ過給機に導入される排気ガス流量を増加させるようにした過給機の制御装置において、上記排気バイパスバルブを開く際に、上記大型ターボ過給機の応答時間を確保すべく、上記排気バイパスバルブの単位時間あたりの開度変化量を所定の制限値に制限する開度変化量制限手段を備えたものである。
【0018】
好ましくは、上記開度変化量制限手段は、上記エンジンの燃料噴射量とエンジン回転数とを基に上記所定の制限値を求め、その所定の制限値は、エンジン回転数が高いほど、燃料噴射量が多いほど大きく設定されるものである。
【0019】
好ましくは、上記開度変化量制限手段は、運転領域が低負荷側から高負荷側へ変化した場合と、その逆に高負荷側から低負荷側へ変化した場合において、独立した制限値を提供するものである。
【0020】
好ましくは、上記所定の制限値と、上記エンジン回転数および上記燃料噴射量との関係を、マップとして記憶する記憶手段を備え、上記開度変化量制限手段は、上記記憶手段の上記マップから上記所定の制限値を読み取るものである。
【0021】
好ましくは、上記開度変化量制限手段は、上記排気バイパスバルブを開く際に、所定の制御周期ごとに、上記所定の制限値を求めるものである。
【0022】
好ましくは、上記排気バイパスバルブの目標開度を、エンジン負荷により区分された複数の運転領域ごとに各々設定すると共に、上記エンジン負荷が高いほど開弁側に設定する目標開度設定手段を備え、上記開度変化量制限手段は、上記運転領域が低負荷側から高負荷側に変化したときに、上記大型ターボ過給機の応答時間を確保し過給圧の一時的な低下を防止すべく上記単位時間あたりの開度変化量の制限を行いつつ、上記排気バイパスバルブを、上記目標開度設定手段が設定した変化後の運転領域における目標開度まで開くためのものである。
【0023】
好ましくは、上記運転領域が高負荷側から低負荷側へ変化した際に、上記排気バイパス通路を通り上記大型ターボ過給機に導入される排気ガス流量を減少させるべく上記排気バイパスバルブが閉じられ、その排気バイパスバルブが閉じる際に、上記開度変化量制限手段は、上記小型ターボ過給機の作動遅れによる過給圧の一時的な低下および大型ターボ過給機の残余回転による過給圧の一時的な上昇を防止すべく、上記排気バイパスバルブの単位時間あたりの開度変化量を所定の制限値に制限するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、多段ターボ過給機の排気バイパスバルブを開く際に過給圧の低下を防止することができるという優れた効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明に係る一実施形態による過給機の制御装置の概略構成図である。
【図2】図2は、本実施形態のエンジンの運転領域を説明するための図である。
【図3】図3は、本実施形態の開度変化Mapの一例である。
【図4】図4は、本実施形態の制御装置による異なる運転条件での過給機の切り替え時間を説明する図である。
【図5】図5は、本実施形態の排気バイパスバルブの目標開度を算出するためのフローチャートの一例である。
【図6】図6は、本実施形態の現在運転領域での排気バイパスバルブの目標開度を算出するためのフローチャートの一例である。
【図7】図7(a)から図7(c)は、従来の2段過給機付き内燃機関の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0027】
本実施形態の過給機の制御装置(以下、制御装置という)は、例えば、トラックなどの大型車両のディーゼルエンジンに設けられた多段ターボシステムを対象とする。
【0028】
図1に基づき、制御装置が適用されるエンジンの概略構造を説明する。
【0029】
図1に示すように、エンジン10は、複数の気筒12を有するエンジン本体11と、そのエンジン本体11に吸気ガスを供給する吸気通路13と、エンジン本体11からの排気ガスを排出する排気通路14と、それら吸気通路13および排気通路14に設けられた複数のターボ過給機2、3を有する多段ターボシステム15と、その多段ターボシステム15を制御するための上記制御装置をなす制御ユニット1とを備える。
【0030】
本実施形態の多段ターボシステム15は、直列に配置された2つのターボ過給機2、3で構成され、それらのうちの高圧側(エンジン本体11に近い側)のターボ過給機3が低圧側のターボ過給機2よりも小型に構成される。以下、高圧側のターボ過給機3を小型過給機3、低圧側のターボ過給機2を大型過給機2という。
【0031】
吸気通路13には、上流から順に、エアクリーナー16と、大型過給機2のコンプレッサ17と、小型過給機3のコンプレッサ18とが設けられ、吸気通路13の下流端がエンジン本体11の各気筒12に接続される。
【0032】
排気通路14は、その上流端がエンジン本体11の各気筒12に接続される。その排気通路14には、上流から順に、小型過給機3のタービン19と、大型過給機2のタービン20と、排気ガスを浄化するためのエキゾースト装置(例えば、排気ガス中の粒子状物質を捕集する後処理装置など)21が設けられる。
【0033】
大型過給機2は、排気ガスにより回転駆動される上記タービン20と、そのタービン20からの駆動力が伝達され吸気ガスを加圧する上記コンプレッサ17とを有する。この大型過給機2は、主にエンジン10が高負荷(および/または高回転)のときの排気ガス流量にマッチングするように、タービン容量やタービンホイール径などが設定される。この大型過給機2の高圧側(排気上流)に、小型過給機3が配置されている。
【0034】
小型過給機3は、大型過給機2と同様に、コンプレッサ18とタービン19とを有する。この小型過給機3は、主にエンジン10が低負荷(および/または低回転)のときの排気ガス流量にマッチングするように、タービン容量やタービンホイール径などが大型過給機2よりも小さく設定される。
【0035】
その小型過給機3には、コンプレッサ18をバイパスするための吸気バイパス通路25と、タービン19をバイパスするための排気バイパス通路4とが各々設けられる。
【0036】
排気バイパス通路4は、その上流端がエンジン本体11と小型過給機3のタービン19との間の排気通路14に接続され、下流端が小型過給機3のタービン19と大型過給機2のタービン20との間の排気通路14に接続される。
【0037】
排気バイパス通路4には、排気バイパス通路4内の排気ガスの流量を調整するための排気バイパスバルブ5が設けられる。排気バイパスバルブ5は、全開と全閉との間で弁開度を連続的に設定可能な弁(例えば、バタフライバルブなど)からなる。
【0038】
排気バイパスバルブ5は、制御ユニット1に接続され、制御ユニット1からの制御信号(目標制御量)により弁開度が連続的に制御される。具体的には、排気バイパスバルブ5は、図示しない弁体がアクチュエータにより駆動され、そのアクチュエータが制御ユニット1により制御(例えば、デューティ制御)される。
【0039】
ここで、本実施形態の排気バイパスバルブ5は、ノーマルオープンバルブであり制御ユニット1からの出力が大きいほど、排気バイパスバルブ5は閉じることになる。そこで、以下の説明において、排気バイパスバルブ5の弁開度は、全開を0%、全閉を100%として定義する。したがって、排気バイパスバルブ5は、弁開度が大きくなるにつれて排気バイパス通路4を絞ることになる。
【0040】
この排気バイパスバルブ5は、車両加速時などエンジン本体11からの排気ガス流量が増加する際に制御ユニット1により開かれ、それにより、排気バイパス通路4を通り大型ターボ過給機2に導入される排気ガス流量が増加される。他方、車両減速時などのエンジン本体11からの排気ガス流量が減少する際には、制御ユニット1により排気バイパスバルブ5が閉じられ、大型ターボ過給機2への排気ガス流量が減少される。
【0041】
このエンジン本体11からの排気ガス流量が増加または減少するかは、エンジン負荷の高低により判断される。具体的には、排気バイパスバルブ5の目標開度が、エンジン負荷に応じて区分された運転領域ごとに各々設定される。
【0042】
図2に示すように、本実施形態の運転領域は、主に小型過給機3により過給が行われる低負荷領域、小型過給機3と大型過給機2との両方により過給が行われる中負荷領域、大型過給機2のみにより過給が行われる高負荷領域の3つに区分される。それら低負荷領域と中負荷領域とは図2のラインB1により区画され、中負荷領域と高負荷領域とは図2のラインB2により区画される。
【0043】
これらの運転領域において、排気バイパスバルブ5の目標開度は、低負荷領域では全閉、中負荷領域ではエンジン回転数と燃料噴射量とに応じた中間開度、高負荷領域では全開に設定される。
【0044】
図1に戻り、吸気バイパス通路25は、その上流端が大型過給機2のコンプレッサ17と小型過給機3のコンプレッサ18との間の吸気通路13に接続され、下流端が小型過給機3のコンプレッサ18とエンジン本体11との間の吸気通路13に接続される。
【0045】
その吸気バイパス通路25には、吸気切り替えバルブ26が設けられる。吸気切り替えバルブ26は、その弁開度が全開と全閉とのいずれかで切り替えられるON−OFF弁である。その吸気切り替えバルブ26は、図示しない弁体がアクチュエータにより駆動され、そのアクチュエータが制御ユニット1に接続される。吸気切り替えバルブ26は、制御ユニット1からの制御信号により開閉制御される。
【0046】
吸気切り替えバルブ26は、排気バイパスバルブ5と同様に、目標開度が運転領域ごとに各々設定されており、その目標開度が、低負荷領域および中負荷領域で全閉、高負荷領域で全開に設定される。
【0047】
制御ユニット1は、燃料噴射量演算部31と、開度変化Map32と、運転領域判定演算部35と、排気バイパスバルブ目標開度演算部6と、低負荷領域排気バイパスバルブ目標開度演算部36と、中負荷領域排気バイパスバルブ目標開度演算部37と、高負荷領域排気バイパスバルブ目標開度演算部38と、開度制御量変換Map39とを有する。これら演算部6、31、35−38は、互いに通信可能に接続される。また、Map32、39は制御ユニット1に設けられた図示しない記憶手段に記憶される。
【0048】
本実施形態では、排気バイパスバルブ目標開度演算部6が、排気バイパスバルブ5の目標開度を、運転領域ごとに、かつエンジン負荷が高いほど開弁側に設定する目標開度設定手段と、排気バイパスバルブ5を開く際に、大型ターボ過給機2の応答時間を確保すべく、排気バイパスバルブ5の単位時間あたりの開度変化量を所定の制限値(以下、制限値という)に制限する開度変化量制限手段とをなす。詳しくは後述するが、排気バイパスバルブ目標開度演算部6は、エンジン運転領域が低負荷側から高負荷側に変化したときに、単位時間あたりの開度変化量の制限を行いつつ、排気バイパスバルブ5を、変化後のエンジン運転領域における目標開度まで開く。
【0049】
制御ユニット1には、エンジン本体11に設けられたエンジン回転数センサ40と、アクセルペダル41に設けられたアクセルペダルポジションセンサ42とが接続される。
【0050】
そのアクセルペダルポジションセンサ42により検出されたアクセル開度(アクセルペダル41の踏み込み量)が、燃料噴射量演算部31に入力される。その燃料噴射量演算部31は、入力されたアクセル開度に基づいて、インジェクタ(図示せず)からエンジン本体11に供給する燃料噴射量を求める。
【0051】
その燃料噴射量演算部31により求められた燃料噴射量と、エンジン回転数センサ40により検出されたエンジン回転数とが、運転領域判定演算部35に入力される。その運転領域判定演算部35は、入力された燃料噴射量とエンジン回転数とに基づきエンジン負荷を求めて、現在のエンジン10の負荷領域(エンジン運転領域)を低負荷領域、中負荷領域および高負荷領域のいずれかに決定(判定)する。さらに、運転領域判定演算部35は、その判定結果を運転領域情報として排気バイパスバルブ目標開度演算部6に出力する。
【0052】
ここで、応用例として、運転領域の判定に、エンジン回転数と燃料噴射量とに加え、過給機2、3に導入される排気ガスのエネルギーに応じた領域判定をするために、制御ユニット1により求められた燃料噴射タイミング、排気通路14の排気ガス圧力ないし温度、図示しない冷却水温センサにより検出されたエンジン水温、吸気通路13の吸気温度センサにより検出されたエンジン吸気温度、大気圧センサなどの入力を使用してもよい。
【0053】
低負荷領域排気バイパスバルブ目標開度演算部36と、中負荷領域排気バイパスバルブ目標開度演算部37と、高負荷領域排気バイパスバルブ目標開度演算部38とは、各負荷領域に応じた排気バイパスバルブ5の目標開度(以下、領域別目標開度という)を、排気バイパスバルブ目標開度演算部6に各々出力する。
【0054】
低負荷領域排気バイパスバルブ目標開度演算部36が出力する領域別目標開度は全閉であり、高負荷領域排気バイパスバルブ目標開度演算部38が出力する領域別目標開度は全開である。
【0055】
中負荷領域排気バイパスバルブ目標開度演算部37が出力する領域別目標開度は、目標過給圧を基に決定される。具体的には、エンジン回転数と燃料噴射量とを基に目標過給圧が求められ、その目標過給圧に、図示しない過給圧センサが検出する実際の過給圧が一致するように、排気バイパスバルブ5の中負荷領域での領域別目標開度が求められる。
【0056】
開度変化Map32には、燃料噴射量演算部31の燃料噴射量とエンジン回転数センサ40のエンジン回転数とが入力される。排気バイパスバルブ目標開度演算部6は、その入力された燃料噴射量とエンジン回転数とに基づき決定される開度変化Map32の制限値を読み取る。
【0057】
その開度変化Map32には、制限値と、エンジン回転数および燃料噴射量との関係が記述される。図例の開度変化Map32は、排気バイパスバルブ5が開弁方向に作動する際の制限値を記憶するための開弁用Map33と、閉弁方向に作動する際の制限値を記憶するための閉弁用Map34とからなる。
【0058】
また、排気バイパスバルブ目標開度演算部6には、運転領域判定演算部35の運転領域情報と、低負荷領域排気バイパスバルブ目標開度演算部36、中負荷領域排気バイパスバルブ目標開度演算部37および高負荷領域排気バイパスバルブ目標開度演算部38の領域別目標開度とが入力される。その排気バイパスバルブ目標開度演算部6は、入力された運転領域情報および領域別目標開度と、開度変化Map32から読み取った制限値とに基づいて、排気バイパスバルブ5の目標開度を求める。
【0059】
さらに、排気バイパスバルブ目標開度演算部6は、求めた目標開度から排気バイパスバルブ5の目標制御量を求める。図例では、排気バイパスバルブ目標開度演算部6は、目標開度を開度制御量変換Map39により目標制御量に変換する。
【0060】
その開度制御量変換Map39は、目標開度を目標制御量に変換する際に、排気バイパスバルブ5が比例流量制御弁となるように、目標制御量を補正する。つまり、開度制御量変換Map39には、入力である目標開度と、排気バイパスバルブ5の開口面積(または通過流量)とがリニア(比例関係)になる値が設定される。例えば、排気バイパスバルブ5をバタフライバルブで構成した場合には、その流量特性がイコール%特性からリニア特性に変換されることになる。
【0061】
開度制御量変換Map39は、例えば、排気バイパスバルブ5を排気バイパス通路4に取り付けた状態で実験を行い予め求められる。
【0062】
この開度制御量変換Map39により変換、補正された目標制御量により、制御ユニット1は、小型過給機3の排気バイパスバルブ5の弁開度を制御する。この排気バイパスバルブ5を作動させる手段は、バキュームアクチュエータ、電動モーター、油圧アクチュエータなど、排気バイパスバルブ5の弁開度を連続的に調整できる手段であればいずれの手段を用いてもよい。
【0063】
また、制御ユニット1は、小型過給機3の吸気切り替えバルブ26の開閉も制御する。この吸気切り替えバルブ26を作動させる手段は、バキュームアクチュエータ、電動モーター、油圧アクチュエータなどの手段を用いてもよいが、全開、全閉ができればよく、弁開度を連続的に調整する必要はない。
【0064】
次に、図1から図6に基づき、本実施形態の制御装置1の作用を説明する。
【0065】
本実施形態の制御装置1は、排気バイパスバルブ5を開く際に、単位時間あたりの排気バイパスバルブ5の開度変化に対して制限を行う。その単位時間あたりの開度変化量の制限値を、エンジン回転数と燃料噴射量とのマップ(開度変化Map32)にし、かつ開弁方向と閉弁方向で別々のマップ33、34とすることにより、車両加速時には過給圧の低下や小型過給機3の過回転を防止し、車両減速時には小型過給機3の作動遅れによる過給圧の一時的な低下の防止や大型過給機2の残余回転による過給圧の一時的な上昇の防止を効果的に行うことができる。
【0066】
まず、一例として、ドライバーが自動車を加速させるときの動作を説明する。
【0067】
初期状態としてエンジン10がアイドリング状態にあり、エンジン回転数および燃料噴射量が図2のP1に位置するとする。この場合、運転領域判定演算部35において、低負荷領域と判定され、通常は排気バイパスバルブ5は全閉され、エンジン本体11からの排気ガスは全て小型過給機3を通過する。このときは、主に小型過給機3によって過給圧がエンジン本体11に供給される。
【0068】
自動車が加速される際には、ドライバーのアクセルペダル41の踏み込み操作により、アクセルペダルポジションセンサ42から操作に相応の信号(アクセル開度)が制御ユニット1に入力される。制御ユニット1は、与えられた信号に相当する燃料噴射量を求め、その求めた量の燃料をエンジン本体11に供給する。その結果、エンジン回転数が上昇し、エンジン回転数と燃料噴射量とが増加すると、排気ガスの量も増加する。
【0069】
やがて、エンジン回転数および燃料噴射量が図2のP2に移行し、運転領域判定演算部35において運転状態が中負荷領域に入ったと判定されると、制御ユニット1は排気バイパスバルブ5を開く。これにより、大型過給機2が作動し始め、小型過給機3に加えて大型過給機2によっても過給圧がエンジン本体11に供給される。
【0070】
この際に、排気バイパスバルブ5の弁開度を一度に目標開度にするのではなく、エンジン回転数と燃料噴射量とによる単位時間あたりの開度変化Map32(開弁用Map33)により算出される開度変化量(すなわち、制限値)に制限する。さらに、この制限値によって算出された排気バイパスバルブ5の制御量を、開度制御量変換Map39により補正する。
【0071】
これにより、単位時間あたりの開口面積増加が所望の値になるように排気バイパスバルブ5が制御され、過給圧の低下を防止しつつ、大型過給機2への作動の切り替えが行われる。
【0072】
ここで、排気バイパスバルブ5を開く場合、その排気バイパスバルブ5の開弁スピード(最大)に比べると、大型過給機2の回転数が上昇するスピードは遅い。そのため、排気バイパスバルブ5を急激に開くと、大型過給機2の回転数上昇が追いつかず、追いつくまでの間(応答時間の間)は過給圧が低下してしまう。
【0073】
そこで、本実施形態では、大型過給機2の応答時間を確保するために、排気バイパスバルブ5の単位時間あたりの開度変化量を制限値に制限して、排気バイパスバルブ5が開くスピードを、大型過給機2の回転数上昇のスピードに合わせて遅く調整している。
【0074】
これにより、排気バイパスバルブ5が開くときには、その弁開度に連動して大型過給機2の回転数も上昇することになり、過給圧の低下が抑制される。
【0075】
さらに、排気バイパスバルブ5が中負荷領域の目標開度に達したときには、その目標開度に見合った回転数で大型過給機2が回転していることになる。
【0076】
このように本実施形態では、排気バイパスバルブ5を開く際に大型過給機2の応答時間を確保することで、過給圧の低下を防止することができる。
【0077】
次に、図3に基づき開弁用Map33およびその制限値の一例を説明する。図3において、制限値の等高線をラインL1−L4で示す。この制限値は、上述したように単位時間あたりの開度変化量であり、制限値が大きいほど排気バイパスバルブ5は素早く作動(開閉)し、制限値が小さいほど排気バイパスバルブ5はゆっくりと作動する。
【0078】
図3に示すように、開弁用Map33では、制限値が燃料噴射量とエンジン回転数とをパラメータとして設定されており、燃料噴射量が多いほど、エンジン回転数が高いほど制限値が大きく設定される。
【0079】
すなわち、燃料噴射量が多く、エンジン回転数が高い場合には、排気ガスのエネルギーが大きくなり小型過給機3が過回転し易くなるので、その過回転を防止するために制限値が大きく設定される。
【0080】
開弁用Map33は、例えば、実験などにより予め求められ、その制限値は、大型過給機2の応答時間を確保することができる値であって、かつ小型過給機3が過回転しない値に設定される。すなわち、制限値の下限値が大型過給機2の応答時間により規定され、上限値が小型過給機3の過回転により規定される。なお、図3は開弁用Map33の一例であり、本発明はこれに限定されない。
【0081】
また、開弁用Map33と同様に、閉弁用Map34も例えば実験などにより予め求められる。閉弁用Map34の制限値は、小型過給機3の作動遅れによる過給圧の一時的な低下や大型過給機2の残余回転による過給圧の一時的な上昇を防止する値に設定される。
【0082】
次に、図4に基づき自動車が加速する際の過給圧の変化について説明する。図4において、ラインLおよびラインlは、自動車が緩加速する場合の過給圧の変化を示し、実線のラインLが本実施形態の例であり、点線のラインlが従来技術による過給圧の一時的な低下の例である。また、ラインHおよびラインhは、自動車が急加速する場合の過給圧の変化を示し、実線のラインHが本実施形態の例であり、点線のラインhが従来技術による過給圧の一時的な低下の例である。
【0083】
まず、自動車が緩加速する場合には、燃料噴射量が比較的抑えられることから、上述した図3の開弁用Map33によれば制限値は小さな値となる。
【0084】
そのため、緩加速では、排気バイパスバルブ5はゆっくりと開くことになり、図4のラインLに示すように大型過給機2への切り替え期間T2が長くなる。これにより、緩加速のように排気ガス流量があまり増加しない場合でも、大型過給機2を十分に予回転する時間が与えられ、過給圧の低下を防止することができる。
【0085】
他方、自動車が急加速する場合には、緩加速の場合に比べて、燃料噴射量が多くなり制限値が大きな値となる。
【0086】
そのため、急加速では、排気バイパスバルブ5は素早く開くことになり、図4のラインHに示すように、緩加速に比べて大型過給機2への切り替え期間T1(<T2)が短くなり早めに大型過給機2が切り替わり作動する。これにより、急加速時には過給圧の低下を防止しつつも、小型過給機3の過回転を防止し加速性を向上させることができる。また、急加速では、切り替え期間T1おける過給圧の傾きが、緩加速の切り替え期間T2における過給圧の傾きに比べて小さくなる。
【0087】
次に、車両減速時などにおける中負荷領域から低負荷領域への切り替えを説明する。
【0088】
ドライバーのアクセルペダル操作によりアクセルペダルポジションセンサ42からの信号が変化すると、制御ユニット1の指示する燃料噴射量が低下し、エンジン回転数も低下する。すると、運転領域判定演算部35において、運転領域が低負荷領域と判断され、排気バイパスバルブ5が全閉まで閉じられる。
【0089】
この際に、一度に全閉するのではなく、単位時間あたりの開度変化量を、エンジン回転数と燃料噴射量による単位時間あたり開度変化Map32(閉弁用Map34)により算出される変化量(すなわち、制限値)に制限する。
【0090】
さらに、この制限値によって算出された排気バイパスバルブ5の制御量を、開度制御量変換Map39により補正する。
【0091】
これにより、単位時間あたりの開口面積減少が所望の値になるように、排気バイパスバルブ5が制御され、小型過給機3の作動遅れによる過給圧の一時的な低下や大型過給機2の残余回転による過給圧の一時的な上昇を防止することができる。
【0092】
中負荷領域と高負荷領域との切り替えも、上述した低負荷領域と中負荷領域の切り替えと同様の動作を行う。但し、中負荷領域から高負荷領域に入った場合は、低負荷領域から中負荷領域に入った場合と異なり、吸気切り替えバルブ26も開く。
【0093】
次に、図5および図6のフローチャートに基づき、排気バイパスバルブ目標開度演算部6での動作の詳細を説明する。図5および図6のフローチャートは、所定の制御周期ごとに制御ユニット1により繰り返し実行される。なお、以下の説明において、現在とは、実行中の今回の制御周期をいい、前回とは、既に実行した1制御周期前の制御周期をいう。
【0094】
まず、図5のフローチャートによる制御を説明する。この図5のフローチャートは、エンジン10の運転状態に応じて排気バイパスバルブ5の目標開度を決定するためのものである。
【0095】
排気バイパスバルブ目標開度演算部6には、運転領域判定演算部35から現在の運転領域情報(現在運転領域)として、低負荷領域、中負荷領域、高負荷領域のいずれかが入力される。
【0096】
排気バイパスバルブ目標開度演算部6は、ステップS1で現在運転領域が低負荷領域か否か判断し、低負荷領域の場合にステップS2で排気バイパスバルブ目標開度を低負荷領域排気バイパスバルブ目標開度演算部36の出力(全閉)に設定する。
【0097】
他方、ステップS1で現在運転領域が低負荷領域ない場合、排気バイパスバルブ目標開度演算部6は、ステップS3で現在運転領域が中負荷領域か否か判断し、中負荷領域の場合にステップS4で排気バイパスバルブ目標開度を中負荷領域排気バイパスバルブ目標開度演算部37の出力(目標過給圧により決定される中間開度)に設定する。
【0098】
他方、ステップS3で現在運転領域が中負荷領域ない場合、現在運転領域が高負荷領域であると判断して、ステップS5で排気バイパスバルブ目標開度を高負荷領域排気バイパスバルブ目標開度演算部38の出力(全開)に設定する。
【0099】
以上の制御により設定された排気バイパスバルブ目標開度は、図6のフローチャートの後述するステップS14、ステップS15、ステップS17、ステップS20などで、現在運転領域での排気バイパスバルブ目標開度(以下、最終目標開度という)として使用される。
【0100】
次に、図6のフローチャートによる制御を説明する。この図6のフローチャートは、開度変化量の制限を行うか否かの判断と、排気バイパスバルブ5の作動とを行うためのものである。なお、上述したように、排気バイパスバルブ5は、弁開度が増加すると閉弁方向に作動し(全閉のとき100%)、減少すると開弁方向に作動する(全開のとき0%)。
【0101】
ステップS11では、排気バイパスバルブ目標開度演算部6は、開度変化量を制限中か否か判断する。図例では、開度変化制限中フラグが1か否かにより判断する。詳しくは後述するが、開度変化制限中フラグは、開度変化量の制限が開始されてから終了するまでの間は1が設定され、開始前および終了後は0が設定される。
【0102】
開度変化量を制限中でない場合、排気バイパスバルブ目標開度演算部6は、ステップS12で、運転領域判定演算部35の運転領域情報から、エンジン10の運転領域が変更されたか否か判断する。
【0103】
運転領域が変更された場合、排気バイパスバルブ目標開度演算部6は、ステップS13で開度変化制限中フラグに1を設定し、開度変化量の制限を開始する。他方、運転領域が変更されていない場合、ステップS14にて、最終目標開度を目標制御量に変換して排気バイパスバルブ5に出力し、開度変化量の制限を行わずに排気バイパスバルブ5を作動させる。
【0104】
ステップS13で開度変化量の制限を開始した後、またはステップS11で開度変化量を制限中と判断した場合、排気バイパスバルブ目標開度演算部6は、ステップS15で、開度変化が閉弁方向か開弁方向かを判断する。
【0105】
図例のステップS15では、現在の排気バイパスバルブ5の弁開度(以下、現在排気バイパスバルブ開度という)が、最終目標開度未満か否か判断する。例えば、車両加速時など、エンジン10の運転領域が低負荷領域(全閉=100%)から中負荷領域(中間開度<100%)に変化する場合には、現在排気バイパスバルブ開度は最終目標開度以上(すなわち、目標開度未満でない)となる。この場合は、開度変化が開弁方向(減少)であると判断してステップS16に進む。なお、現在排気バイパスバルブ開度は、前回の制御周期における排気バイパスバルブ5の目標開度であり、例えば、ステップS14の最終目標開度や、後述するステップS16の現在の排気バイパスバルブ目標開度などが設定される。
【0106】
ステップS16では、排気バイパスバルブ目標開度演算部6は、単位時間あたりの開度変化量を開弁方向の制限値(開弁方向開度制限値)に制限して排気バイパスバルブ5を作動させる。
【0107】
図例のステップS16では、排気バイパスバルブ目標開度演算部6は、現在のエンジン回転数および燃料噴射量と、開弁用Map33とから現在の開弁方向開度制限値を求め、その開弁方向開度制限値を、前回の排気バイパスバルブ目標開度から引いて、現在の排気バイパスバルブ目標開度(以下、現在目標開度という)を求める。排気バイパスバルブ目標開度演算部6は、その求めた現在目標開度を目標制御量に変換して排気バイパスバルブ5に出力する。なお、排気バイパスバルブ目標開度演算部6は、次回の制御周期のために、現在目標開度を、前回の排気バイパスバルブ目標開度として記憶する。
【0108】
このように本実施形態では、制御周期が単位時間をなしており、制御周期ごとに、排気バイパスバルブ5の弁開度を開弁方向開度制限値ずつ減算することになる。
【0109】
ステップS17では、排気バイパスバルブ目標開度演算部6は、ステップS16の現在目標開度が最終目標開度に達したか否か判断する。
【0110】
ステップS17で、ステップS16の現在目標開度が最終目標開度以上の場合、排気バイパスバルブ目標開度演算部6は、現在の制御周期を終了して次回の制御周期を開始する。この場合、次回の制御周期では、開度変化量の制限が継続され、ステップS11からステップS15−S17へと進む。
【0111】
他方、ステップS17で、ステップS16の現在目標開度が最終目標開度未満の場合、ステップS18にて開度変化制限中フラグに0を設定して、開度変化量の制限を終了する。
【0112】
ここで、再びステップS15の説明に戻ると、ステップS15で現在排気バイパスバルブ開度が最終目標開度未満の場合(車両減速時など)、排気バイパスバルブ目標開度演算部6は、ステップS19、ステップS20に進む。
【0113】
ステップS19はステップS16とほぼ同様の内容であり、制限値が閉弁方向の制限値(以下、閉弁方向開度制限値)である点と、その閉弁方向開度制限値を前回の排気バイパスバルブ目標開度に加えて現在目標開度を求める点が異なる。
【0114】
このステップS19によれば、排気バイパスバルブ目標開度演算部6は、排気バイパスバルブ5が閉じる際に、小型過給機3の作動遅れによる過給圧の一時的な低下や大型過給機2の残余回転による過給圧の一時的な上昇を防止を防止すべく、排気バイパスバルブ5の単位時間あたりの開度変化量を閉弁方向開度制限値に制限する。
【0115】
また、ステップS20は、ステップS17とほぼ同様の内容であり、現在目標開度が、最終目標開度以上のときにステップS18に進み開度変化量の制限を終了し、最終目標開度未満のときに開度変化を継続する点が異なる。
【0116】
以上のように本実施形態によれば、排気バイパスバルブ5による小型過給機3から大型過給機2への切り替え時に、排気バイパスバルブ5の単位時間あたりの開度変化量を制限値に制限して大型過給機2に予回転を与えることにより、切り替え直後の過給圧の低下を回避することができる。
【0117】
例えば、排気バイパスバルブ5をフィードバック制御する場合には、排気バイパスバルブ5の単位時間あたりの開度変化量は、現在の弁開度と目標開度との偏差に基づき決定される。この場合、小型過給機3から大型過給機2への切り替え直後は偏差が大きいことから、排気バイパスバルブ5が急激に開かれることになり、大型過給機2の応答遅れが生じて過給圧の低下を招いてしまう(図4のラインh、ラインl参照)。
【0118】
これに対して、本実施形態では、排気バイパスバルブ5の単位時間あたりの開度変化量を、目標開度や偏差に拘わらず、エンジン負荷や排気ガスエネルギーなど大型過給機2の応答性(回転上昇スピード)に影響を及ぼす因子に基づき求めている。そのため、本実施形態では大型過給機2の応答遅れによる過給圧の低下を防止できる。
【0119】
その他にも、排気バイパスバルブ5による大型過給機2から小型過給機3への切り替え時に、小型過給機3の作動遅れによる過給圧の一時的な低下や大型過給機2の残余回転による過給圧の一時的な上昇を防止することができる。
【0120】
また、開度制御量変換Map39により、排気バイパスバルブ5の弁開度と開口面積が比例しない場合でも、連続的に、一定割合で、排気ガスの流量分配を変化させることができる。例えば、排気バイパスバルブ5を段階的に開くことにより過給圧の低下を防止することも考えられるが、本実施形態では、排気バイパスバルブ5を連続的に、かつ排気バイパスバルブ5の特性に合わせてその開度を非直線的に開弁することができるため、バイパスされる排気ガス流量を過給圧の低下が起こらないように直線的に増加させることができ、段階的に開く場合よりもさらにスムーズな加速フィーリングを得ることができる。
【0121】
また、排気バイパスバルブ5の制限値が、エンジン回転数と燃料噴射量のマップ(開弁用Map33)になっていることから、図4のラインLおよびラインHに示すように、運転条件に応じて、過給機2、3の切り替え期間の長さを可変にすることが可能である。
【0122】
この切り替え期間の長さの変更は、切り替え中(開度変化量の制限中)にも実施されるので、エンジン回転数と燃料噴射量の変化により切り替え時間を連続的に修正し続けることが可能である。これにより運転条件が異なっても過給圧の低下を効果的に防止し、スムーズな加速を得ることができる。
【0123】
また、排気バイパスバルブ5の制限値を、運転領域が低負荷側から高負荷側へ変化する場合(開弁方向開度制限値)と、その逆に高負荷側から低負荷側へ変化した場合(閉弁方向開度制限値)とで独立して各々設定しているので、各過渡時の状態に応じて開度変化量の制限を最適に行うことができる。
【0124】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、様々な変形例や応用例が考えられるものである。
【0125】
例えば、上述の実施形態では、排気バイパスバルブ5の弁開度は、全開を0%全閉を100%として定義したが、これに限定されない。
【符号の説明】
【0126】
1 制御ユニット(制御装置)
2 大型過給機(大型ターボ過給機)
3 小型過給機(小型ターボ過給機)
4 排気バイパス通路
5 排気バイパスバルブ
6 排気バイパスバルブ目標開度演算部(開度変化量制限手段、目標開度設定手段)
10 エンジン
32 開度変化Map(マップ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンに設けられた大型ターボ過給機の高圧側に、その大型ターボ過給機よりも小型の小型ターボ過給機を直列に設け、その小型ターボ過給機をバイパスする排気バイパス通路に排気バイパスバルブを設け、上記エンジンの排気ガス流量が増加する際に、上記排気バイパスバルブを開いて上記排気バイパス通路を通り上記大型ターボ過給機に導入される排気ガス流量を増加させるようにした過給機の制御装置において、
上記排気バイパスバルブを開く際に、上記大型ターボ過給機の応答時間を確保すべく、上記排気バイパスバルブの単位時間あたりの開度変化量を所定の制限値に制限する開度変化量制限手段を備えたことを特徴とする過給機の制御装置。
【請求項2】
上記開度変化量制限手段は、上記エンジンの燃料噴射量とエンジン回転数とを基に上記所定の制限値を求め、その所定の制限値は、エンジン回転数が高いほど、燃料噴射量が多いほど大きく設定される請求項1記載の過給機の制御装置。
【請求項3】
上記所定の制限値と、上記エンジン回転数および上記燃料噴射量との関係を、マップとして記憶する記憶手段を備え、
上記開度変化量制限手段は、上記記憶手段の上記マップから上記所定の制限値を読み取る請求項2記載の過給機の制御装置。
【請求項4】
上記開度変化量制限手段は、上記排気バイパスバルブを開く際に、所定の制御周期ごとに、上記所定の制限値を求める請求項3記載の過給機の制御装置。
【請求項5】
上記排気バイパスバルブの目標開度を、エンジン負荷により区分された複数の運転領域ごとに各々設定すると共に、上記エンジン負荷が高いほど開弁側に設定する目標開度設定手段を備え、
上記開度変化量制限手段は、上記運転領域が低負荷側から高負荷側に変化したときに、上記大型ターボ過給機の応答時間を確保し過給圧の一時的な低下を防止すべく上記単位時間あたりの開度変化量の制限を行いつつ、上記排気バイパスバルブを、上記目標開度設定手段が設定した変化後の運転領域における目標開度まで開く請求項1記載の過給機の制御装置。
【請求項6】
上記運転領域が高負荷側から低負荷側へ変化した際に、上記排気バイパス通路を通り上記大型ターボ過給機に導入される排気ガス流量を減少させるべく上記排気バイパスバルブが閉じられ、その排気バイパスバルブが閉じる際に、上記開度変化量制限手段は、上記小型ターボ過給機の作動遅れによる過給圧の一時的な低下および大型ターボ過給機の残余回転による過給圧の一時的な上昇を防止すべく、上記排気バイパスバルブの単位時間あたりの開度変化量を所定の制限値に制限する請求項5記載の過給機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−159666(P2010−159666A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1564(P2009−1564)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】