説明

過給機付エンジンの排気温度の異常検出装置及び異常検出方法

【課題】 排気温度の検出精度を向上し、バルブの吹き抜け、過給機あるいは噴射量の異常等を確実に、速く、かつ効率良く検出することのできる過給機付エンジンの排気温度の異常検出装置及び異常検出方法を提供する。
【解決手段】 エンジンの回転速度及び燃料噴射量に対する出力トルク線と、エンジンの回転速度及び燃料噴射量に対するブースト圧力線と、出力トルクの定格出力点の近傍の出力トルク線及びブースト圧力線とからなる所定区域とを記憶する記憶手段を設け、エンジン回転速度センサ31からの回転速度及び燃料噴射量センサ32からの燃料の噴射量によりエンジンの出力を求め、この出力が所定区域内にあるときのみ、その時の測定した排気ガス温度33を定格出力点の回転速度及び燃料の噴射量時の排気ガス温度に補正して閾値と比較し、この補正した排気ガス温度が閾値よりも大きいときに吸気及び排気系統の異常を検出する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、過給機付エンジンの排気温度の異常検出装置及び異常検出方法に係わり、特に、エンジンの排気温度を検出するとともに、定格出力点近傍の時の排気温度に換算して判断し、バルブの吹き抜け、過給機あるいは噴射量の異常等を検出する過給機付エンジンの排気温度の異常検出装置及び異常検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ディーゼルエンジンにはターボチャジャーあるいは機械式過給機等が付設されて、吸入空気量の供給を増して出力を増大している。また、この吸入空気量の供給圧力を用いてディーゼルエンジンに供給する燃料の供給量を制御し、エンジンの停止の防止あるいは最大回転速度を制御するニューマチックガバナが用いられていることも知られている。また、ディーゼルエンジンの排気温度を測定し、その測定した排気温度と閾値とを比較して、次のようなエンジンの異常の有無を検出することも知られている。
■排気行程の排気ガスが吸気バルブから吸い込み側に流れ込むバルブの開閉の異常。
■排気ガス温度が上昇する過給機の故障。
■噴射量が増加して排気ガス温度が上昇する噴射装置の故障。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ディーゼルエンジンの排気温度を測定し、その測定した排気温度と閾値とを比較しただけでは、明らかに排気温度が閾値から離れて高いときには判断を誤らないが、排気温度が閾値に近い所で、閾値より低いときに、異常があっても異常がないと判断し、判断を誤りディーゼルエンジンの損傷を大きしてしまう。このとき、閾値を安全側にとって低めに設定すると、異常が無くても異常があると判断し、判断を誤ってしまい不要な点検を行い工数が無駄になるという問題がある。また、故障の少ない無負荷時、あるいは低速回転速度時にも排気ガス温度をいちいち測定するとともに、その値を補正して閾値と比較すると、大容量のコンピータが必要になりコスト高になるとともに、他の制御が行えなくなり制御速度が遅れるという問題がある。
【0004】本発明は上記の問題点に着目してなされたもので、過給機付エンジンの排気温度の異常検出装置及び異常検出方法に係わり、特に、エンジンの排気温度を検出するとともに、定格出力点近傍の時の排気温度に換算し、その値と閾値を比較して判断することにより検出精度を向上し、バルブの吹き抜け、過給機あるいは噴射量の異常等を確実に、速く、かつ効率良く検出する過給機付エンジンの排気温度の異常検出装置及び異常検出方法を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段及び作用効果】上記の目的達成のため、本発明に係る過給機付エンジンの排気温度の異常検出装置の第1の発明では、過給機付エンジンの排気温度を測定してエンジンの燃料系統、あるいは、吸気及び排気系統等の異常を検出する過給機付エンジンの異常検出装置において、エンジンの排気ガス温度を検出する排気ガス温度センサと、エンジン回転速度を検出するエンジン回転速度センサと、燃料の噴射量を測定する燃料噴射量センサと、エンジンの回転速度及び燃料噴射量に対する出力トルク線と、エンジンの回転速度及び燃料噴射量に対するブースト圧力線と、出力トルクの定格出力点の近傍の出力トルク線及びブースト圧力線とからなる所定区域を記憶する記憶手段と、エンジン回転速度センサからの回転速度及び燃料噴射量センサからの燃料の噴射量によりエンジンの出力を求めるとともに、この出力が所定区域内にあるか、否かを比較し、かつ、この出力が所定区域内にあるときのみ、その時の測定した排気ガス温度を定格出力点の回転速度及び燃料の噴射量時の排気ガス温度に補正して閾値と比較する比較手段と、補正した排気ガス温度が閾値よりも大きいときに、吸気及び排気系統の異常を検出する検出手段とからなることを特徴とする。上記構成により、エンジンの出力トルクの定格出力点の近傍の出力トルク線及びブースト圧力線とからなる所定区域を記憶するとともに、この所定区域内及びその近傍のエンジンの排気ガス温度、回転速度、及び燃料の噴射量を検出する。この検出した回転速度、及び燃料の噴射量からエンジンの出力を求めるとともに、この出力が所定区域内にあるときのみ、その時の測定した排気ガス温度を定格出力点の回転速度及び燃料の噴射量時の排気ガス温度に補正する。この補正した排気ガス温度が閾値よりも大きいときに、吸気及び排気系統の異常を検出する。したがって、ディーゼルエンジンの排気温度を測定した後に、絶えず一定条件での換算した排気温度と閾値とを比較しているため、安定した比較ができるので閾値を異常発生時の近い数値に設定できる。これにより、ディーゼルエンジンの異常検出の精度が向上するため、判断を誤りディーゼルエンジンの損傷を大きしてしまうこと、あるいは、不要な点検を行い工数が無駄になることなどが無くなる。また、故障の少ない無負荷時、あるいは低速回転速度時には、回転速度、燃料の噴射量、及び排気温度を求めないため、コンピータへの負荷が少なくなり、効率良くコンピータが活用ができるとともに、他の制御にも活用できる。
【0006】また、本発明に係る他の過給機付エンジンの排気温度の異常検出装置の第2の発明では、過給機付エンジンの排気温度を測定してエンジンの燃料系統、あるいは、吸気及び排気系統等の異常を検出する過給機付エンジンの異常検出装置において、大気の圧力を検出する大気圧力センサと、大気の温度を検出する大気温度センサと、エンジンの排気ガス温度を検出する排気ガス温度センサと、エンジン回転速度を検出するエンジン回転速度センサと、燃料の噴射量を測定する噴射量センサと、大気温度25℃、大気圧力760mmHg時に、エンジンの回転速度及び燃料噴射量に対する出力トルク線と、エンジンの回転速度及び燃料噴射量に対するブースト圧力線と、出力トルクの定格出力点の近傍の出力トルク線及びブースト圧力線とからなる所定区域を記憶する記憶手段と、エンジン回転速度センサからの回転速度及び燃料噴射量センサからの燃料の噴射量によりエンジンの出力を求めるとともに、この出力が所定区域内にあるか、否かを比較し、かつ、この出力が所定区域内にあるときのみ、その時の測定した排気ガス温度を大気温度25℃、大気圧力760mmHg、定格出力点の回転速度、及び定格出力点の燃料の噴射量時の排気ガス温度に補正して閾値と比較する比較手段と、補正した排気ガス温度がしきい値よりも大きいときに、吸気及び排気系統の異常を検出する検出手段とからなることを特徴とする。上記構成により、大気温度25℃、大気圧力760mmHg時のエンジンの出力トルクの定格出力点の近傍の出力トルク線及びブースト圧力線とからなる所定区域を記憶するとともに、この所定区域内及びその近傍のエンジンの排気ガス温度、回転速度、及び燃料の噴射量を検出する。この検出した回転速度、及び燃料の噴射量からエンジンの出力を求めるとともに、この出力が所定区域内にあるときのみ、その時の測定した排気ガス温度を、大気温度25℃、大気圧力760mmHg、定格出力点の回転速度、及び定格出力点の燃料の噴射量時の排気ガス温度に補正する。この補正した排気ガス温度が閾値よりも大きいときに、吸気及び排気系統の異常を検出する。したがって、上記に加えて、さらに排気ガスの温度が大気圧力及び大気温度に応じて変化するので、排気ガス温度を所定の大気条件に合わせて換算し、その換算した排気ガス換算温度を一定の所定の閾値と比較し異常の有無を判断しているので、さらに精度良く検出することができる。また、第1実施例と同様に、ディーゼルエンジンの異常検出のさらに精度が向上するため、判断を誤りディーゼルエンジンの損傷を大きしてしまうこと、あるいは、不要な点検を行い工数が無駄になることなどが無くなる。また、第1実施例と同様に、コンピータへの負荷が少なくなり、効率良くコンピータが活用ができるとともに、他の制御にも活用できる。
【0007】本発明に係るエンジンの潤滑用油圧の異常検出方法は、過給機付エンジンの排気温度を測定してエンジンの燃料系統、あるいは、吸気及び排気系統等の異常を検出する過給機付エンジンの異常検出方法において、エンジンの出力トルクの定格出力点の近傍の出力トルク線及びブースト圧力線とからなる所定区域を記憶するとともに、エンジンの出力を求め、この出力が所定区域内にあるときのみ、その時の測定した排気ガス温度を定格出力点の回転速度及び燃料の噴射量時の排気ガス温度に補正してしきい値と比較し、補正した排気ガス温度が閾値よりも大きいときに、吸気及び排気系統の異常を検出することを特徴とする。上記構成により、エンジンの潤滑用油圧の異常検出装置の第1の発明と同様な作用、効果が得られる。
【0008】また、 本発明に係る他のエンジンの潤滑用油圧の異常検出方法は、過給機付エンジンの排気温度を測定してエンジンの燃料系統、あるいは、吸気及び排気系統等の異常を検出する過給機付エンジンの異常検出方法において、大気温度25℃、大気圧力760mmHg時のエンジンの出力トルクの定格出力点の近傍の出力トルク線及びブースト圧力線とからなる所定区域を記憶するとともに、エンジンの出力を求め、この出力が所定区域内にあるときのみ、その時の測定した排気ガス温度を、大気温度25℃、大気圧力760mmHg、定格出力点の回転速度、及び定格出力点の燃料の噴射量時の排気ガス温度に補正してしきい値と比較し、補正した排気ガス温度が閾値よりも大きいときに、吸気及び排気系統の異常を検出することを特徴とする。上記構成により、エンジンの潤滑用油圧の異常検出装置の第2の発明と同様な作用、効果が得られる。
【0009】
【発明の実施の形態及び実施例】以下に、本発明に係る過給機付ディーゼルエンジンの排気温度の異常検出装置及び異常検出方法の実施例について、図面を参照して詳述する。図1は本発明の過給機付ディーゼルエンジンの排気温度の異常検出装置30の全体構成図である。同図において、過給機付ディーゼルエンジン1(以下、エンジン1という。)は、エンジン本体2と、燃料噴射装置10と、ターボチャジー等の過給機20と、エアクリーナ25からなり、さらに、エンジン1には、排気温度の異常検出装置30が付設されている。エンジン本体2は、クランクケース3に設けられたシリンダ内にピストン4が慴動自在に挿入され、ピストン4はクランクシャフト5にロッド6を介して連結されている。
【0010】燃料噴射装置10は、図示しない燃料ポンプからの燃料を受けて吐出するインジェクションポンプ11と、インジェクションポンプ11のプランジャ12に噛み合うラック13と、ラック13に接続され供給する燃料を増減するニューマチックガバナ14とからなる。ニューマチックガバナ14はラック13に接続するダイヤフラム15と、ダイヤフラム15を押圧するバネ16と、ダイヤフラム15を保持するとともにバネ16を収納するガバナケース17とからなる。バネ16を収納する側17aのガバナケース17は、後述する吸入配管21にガバナ用配管22で接続されている。また、ガバナケース17のバネ16を収納する反対側17bは大気に開放されている。
【0011】ターボチャジー等の過給機20は、ブロワ20aとタービン20bとからなり、ブロワ20aは図示しない吸入バルブを経て吸入配管21によりエンジンのシリンダに、また、タービン20bは図示しない排気バルブを経て排気配管23によりシリンダに接続されている。また、過給機20のブロワ20aはエアクリーナ用配管26を介してエアクリーナ25に接続されている。また、タービン20bは排気を大気に放出する図示しない排気管に接続されている。
【0012】排気温度の異常検出装置30は、エンジン回転速度センサ31と、噴射量センサ32と、排気温度センサ33と、大気圧力センサ34と、大気温度センサ35と、各センサに接続される制御部45とからなる。エンジン回転速度センサ31はクランクシャフト5に配設され過給機付ディーゼルエンジン1の回転速度Neを検出している。噴射量センサ32はラック13に配設され、ラック13の位置qを測定して燃料の噴射量Qを測定し、エンジン1の出力を検出している。前記では、噴射量センサ32はラック13を位置で検出したが、燃料を流量計、あるいは、タンクの減少量、あるいは、燃料ポンプからの噴射量で測定しても良い。排気温度センサ33は、エンジン1のシリンダと過給機15と間の排気配管17に配設され、エンジン1からの排気ガス温度Texを測定するとともに、後述する換算によりエンジンの異常の有無を検出している。大気圧力センサ34及び大気温度センサ35は、ガバナケース27のバネ26を収納する反対側27bに配設され、大気圧力Ttp及び大気温度Ttmを検出している。この大気圧力センサ34及び大気温度センサ35は、エンジン1の他の外観部に設けても良い。
【0013】制御部45は、上記の各センサが接続され、それぞれからの信号を受けるとともに、排気温度センサ33からの排気ガス温度Texを定格出力点の排気ガス換算温度TPeに換算し、かつ、閾値TPecと比較して、エンジン1の異常の有無を判定し、警報の信号を出力している。また、制御部45には、異常の有無を表示する表示装置46が接続されている。
【0014】次に、上記構成において、エンジン1の排気温度の異常検出方法を図2のフローチャート図を用いて第1実施例の作動について説明する。ステップ1では、エンジン1の回転速度Ne、ラック13の位置qから燃料の噴射量Qを測定し、その信号をそれぞれ制御部45に出力している。ステップ2では、制御部45は、回転速度Ne及び燃料の噴射量Qからエンジン1の出力Ftを演算する。ステップ3では、制御部45は、演算した出力Ftが出力トルクの定格出力点Wpの近傍の出力トルク線及びブースト圧力線とからなる囲まれた所定区域Saに入っているか、否かを比較する。このとき、所定区域Saは、図3に示すように、横軸にエンジン1の回転速度Neを、縦軸にラック13の位置q(燃料噴射量Q)を取り、エンジン1の出力トルク線と、エンジン1に吸入される標準ブースト圧力Bbの曲線(マップ)が描かれ、かつ、このマップにおいて定格出力点Wpの近傍の出力トルク線W(Fa点−Wp点−Fb点を結ぶ線)と、ブースト圧力線V(Va点−Vb点を結ぶ線)に囲まれた区域に設定され、この所定区域Saは制御部45の記憶部45aに記憶されている。ステップ3で出力Ftが所定区域Saに入っていない場合には、ステップ1に戻る。ステップ3で、例えば、回転速度Net、燃料噴射量Qet時の出力Ftが所定区域Saに入っている(図3の出力Ftを示すY点位置)場合には、ステップ4に行く。
【0015】ステップ4では、制御部45は、排気温度センサ33で排気ガス温度Texを測定したのを受けるとともに、その測定した排気ガス温度Texを定格出力点Wpの回転速度Nep及び燃料の噴射量Qpでの排気ガス温度Tepになるように補正する。この排気ガス温度Tep(以下、補正排気ガス温度Tepという。)の補正は、制御部45に記憶されている実験により求めたマップにより行われる。このマップは、例えば、図4に示すように、横軸に定格出力時の回転速度Nepに対する測定時の回転速度Netを、縦軸に補正係数ΔNをとり、回転速度の比と図中の換算線Uaより、回転速度に対する補正係数ΔNを求め、乗算(補正排気ガス温度Tep=ΔN×排気ガス温度Te)により補正排気ガス温度Tepを求める。ステップ5では、この補正排気ガス温度Tepは、さらに測定時のエンジン1の出力Ftを定格出力点Wpの排気ガス温度になるように補正し、第2補正排気ガス温度Tepaを求める。この第2補正排気ガス温度Tepaの補正は、制御部45に記憶されている実験により求めたマップにより行われる。このマップは、例えば、図5に示すように、横軸に定格出力時の出力トルクWpに対する測定時の出力トルクFtを、縦軸に補正係数ΔFをとり、出力トルクの比と図中の換算線Vaより、補正係数ΔFを求め、乗算(第2補正排気ガス温度Tepa=ΔF×補正排気ガス温度Tep)により第2補正排気ガス温度Tepaを求める。
【0016】ステップ6では、第2補正排気ガス温度Tepaが閾値よりも小さい(Tepa<TEXH)か、否かを判定している。ステップ6で小さい場合には、ステップ2に戻る。ステップ6で大きい場合には、ステップ7に行く。ステップ7では、エンジン1の異常の有と判定し、表示装置46あるいは警報音等に警報の信号を出力している。上記において、ステップ4とステップ5は入れ換えても良く、また、ステップ4で排気ガス温度を測定しているが、ステップ1で測定しても良い。さらに、ステップ1で排気ガス温度を測定し、温度が低く安全にあるときは、ステップ2から以降の演算を省略しても良い。
【0017】次に、上記構成において、エンジン1の排気温度の異常検出方法を図6のフローチャート図を用いて第2実施例の作動について説明する。第2実施例では、第1実施例の異常検出方法に、さらに、大気圧、大気温度の条件を追加補正している。なお、フローチャート図において、第1実施例と同一ステップには、同一ステップ符号を付して説明は省略する。
【0018】ステップ11では、制御部45は、演算した出力Ftが出力トルクの定格出力点Wpの近傍の出力トルク線及びブースト圧力線とからなる囲まれた所定区域Saに入っているか、否かを比較する。なお、このとき、所定区域Saは、図7に示すように、横軸にエンジン1の回転速度Neを、縦軸にラック13の位置qを取り、図中に標準時、すなわち、吸入される空気の大気温度25℃、大気圧力760mmHg時における、エンジン1の出力トルク線と、エンジン1に吸入される標準ブースト圧力Bbの曲線(マップ)が描かれ、かつ、このマップにおいて定格出力点Wpの近傍の出力トルク線F(Fa点−Wp点−Fb点を結ぶ線)と、ブースト圧力線V(Va点−Vb点を結ぶ線)に囲まれた区域に設定され、この所定区域Saは制御部45の記憶部45aに記憶されている。
【0019】ステップ12では、大気圧力センサ34及び大気温度センサ35により、エンジンの排気ガスを測定するときの大気の温度Ttm及び圧力Ttpを測定する。ステップ13では、制御部45は、大気圧力Ttpと排気ガス温度Texとの関係が、大気圧力Ttpが高い程、排気ガス温度Texが高くなることに着目して、大気圧力Ttpに合わせて、第2補正排気ガス温度Tepaをさらに、図7に示す実験により求めたマップを用いて補正する。図7に示すように、横軸に測定した大気圧力Ttpと大気圧力760mmHgとの比を、縦軸に圧力換算用補正係数ΔPaを取り、図中の換算線Xaより換算する圧力換算用補正係数ΔPaを求め、乗算(第3補正排気ガス温度Tepb=ΔPa×第2補正排気ガス温度Tepa)により第3補正排気ガス温度Tepbを求める。
【0020】ステップ14では、制御部45は、大気温度Ttmと排気ガス温度Texとの関係が、大気温度Ttmが高い程、排気ガス温度Texが高くなることに着目して、大気温度Ttmに合わせて、第3補正排気ガス温度Tepbをさらに、図8に示す実験により求めたマップを用いて補正する。図8に示すように、横軸に測定した大気温度Ttmと大気温度25℃との比を、縦軸に温度換算用補正係数ΔMaを取り、図中の換算線Xaより換算する温度換算用補正係数ΔMaを求め、乗算(第4補正排気ガス温度Tepc=ΔMa×第2補正排気ガス温度Tepa)により第4補正排気ガス温度Tepcを求める。
【0021】ステップ15では、第2補正排気ガス温度Tepaが閾値よりも小さい(Tepa<TEXH)か、否かを判定している。ステップ15で小さい場合には、ステップ2に戻る。ステップ15で大きい場合には、ステップ7に行く。上記において、ステップ4、ステップ5、ステップ13、及びステップ14、は入れ換えても良く、また、ステップ12で排気ガス温度を測定しているが、ステップ1で測定しても良い。さらに、ステップ1で排気ガス温度を測定し、温度が低く安全にあるときは、ステップ2から以降の演算を省略しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の過給機付ディーゼルエンジンの排気温度の異常検出装置の全体構成図である。
【図2】本発明の過給機付ディーゼルエンジンの排気温度の第1実施例の異常検出方法のフローチャート図である。
【図3】エンジンの回転速度、燃料噴射量に対するエンジンに吸入されるブースト圧力との関係、及び、定格出力時近傍の排気ガス温度を補正する範囲を説明する図である。
【図4】測定時のエンジンの回転速度と定格出力時の回転速度の比と、回転速度の補正係数の関係を説明する図である。
【図5】測定時のエンジンの出力トルクと定格出力時の出力トルクの比と、出力トルクの補正係数の関係を説明する図である。
【図6】本発明の過給機付ディーゼルエンジンの排気温度の第2実施例の異常検出方法のフローチャート図である。
【図7】測定時の大気圧力と大気圧力760mmHgの比と、圧力換算用補正係数の関係を説明する図である。
【図8】測定時の大気温度と大気温度25℃の比と、温度換算用補正係数の関係を説明する図である。
【符号の説明】
1…過給機付ディーゼルエンジン、2…エンジン本体、3…クランクケース、4…ピストン、5…クランクシャフト、6…ロッド、10…燃料噴射装置、11…インジェクションポンプ、12…プランジャ、13…ラック、14…ニューマチックガバナ、15…ダイヤフラム、16…バネ、17…ガバナケース、20…過給機、21…吸入配管、23…排気配管、25…エアクリーナ、30…排気温度の異常検出装置、31…エンジン回転速度センサ、32…噴射量センサ、33…排気温度センサ、34…大気圧力センサ、35…大気温度センサ、36…吸入空気圧力センサ、37…吸入空気温度センサ、45…制御部、46…表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 過給機付エンジンの排気温度を測定してエンジンの燃料系統、あるいは、吸気及び排気系統等の異常を検出する過給機付エンジンの異常検出装置において、エンジンの排気ガス温度を検出する排気ガス温度センサと、エンジン回転速度を検出するエンジン回転速度センサと、燃料の噴射量を測定する燃料噴射量センサと、エンジンの回転速度及び燃料噴射量に対する出力トルク線と、エンジンの回転速度及び燃料噴射量に対するブースト圧力線と、出力トルクの定格出力点の近傍の出力トルク線及びブースト圧力線とからなる所定区域を記憶する記憶手段と、エンジン回転速度センサからの回転速度及び燃料噴射量センサからの燃料の噴射量によりエンジンの出力を求めるとともに、この出力が所定区域内にあるか、否かを比較し、かつ、この出力が所定区域内にあるときのみ、その時の測定した排気ガス温度を定格出力点の回転速度及び燃料の噴射量時の排気ガス温度に補正して閾値と比較する比較手段と、補正した排気ガス温度が閾値よりも大きいときに、吸気及び排気系統の異常を検出する検出手段とからなることを特徴とする過給機付エンジンの異常検出装置。
【請求項2】 過給機付エンジンの排気温度を測定してエンジンの燃料系統、あるいは、吸気及び排気系統等の異常を検出する過給機付エンジンの異常検出装置において、大気の圧力を検出する大気圧力センサと、大気の温度を検出する大気温度センサと、エンジンの排気ガス温度を検出する排気ガス温度センサと、エンジン回転速度を検出するエンジン回転速度センサと、燃料の噴射量を測定する噴射量センサと、大気温度25℃、大気圧力760mmHg時に、エンジンの回転速度及び燃料噴射量に対する出力トルク線と、エンジンの回転速度及び燃料噴射量に対するブースト圧力線と、出力トルクの定格出力点の近傍の出力トルク線及びブースト圧力線とからなる所定区域を記憶する記憶手段と、エンジン回転速度センサからの回転速度及び燃料噴射量センサからの燃料の噴射量によりエンジンの出力を求めるとともに、この出力が所定区域内にあるか、否かを比較し、かつ、この出力が所定区域内にあるときのみ、その時の測定した排気ガス温度を大気温度25℃、大気圧力760mmHg、定格出力点の回転速度、及び定格出力点の燃料の噴射量時の排気ガス温度に補正して閾値と比較する比較手段と、補正した排気ガス温度が閾値よりも大きいときに、吸気及び排気系統の異常を検出する検出手段とからなることを特徴とする過給機付エンジンの異常検出装置。
【請求項3】 過給機付エンジンの排気温度を測定してエンジンの燃料系統、あるいは、吸気及び排気系統等の異常を検出する過給機付エンジンの異常検出方法において、エンジンの出力トルクの定格出力点の近傍の出力トルク線及びブースト圧力線とからなる所定区域を記憶するとともに、エンジンの出力を求め、この出力が所定区域内にあるときのみ、その時の測定した排気ガス温度を定格出力点の回転速度及び燃料の噴射量時の排気ガス温度に補正して閾値と比較し、補正した排気ガス温度が閾値よりも大きいときに、吸気及び排気系統の異常を検出することを特徴とする過給機付エンジンの異常検出方法。
【請求項4】 過給機付エンジンの排気温度を測定してエンジンの燃料系統、あるいは、吸気及び排気系統等の異常を検出する過給機付エンジンの異常検出方法において、大気温度25℃、大気圧力760mmHg時のエンジンの出力トルクの定格出力点の近傍の出力トルク線及びブースト圧力線とからなる所定区域を記憶するとともに、エンジンの出力を求め、この出力が所定区域内にあるときのみ、その時の測定した排気ガス温度を、大気温度25℃、大気圧力760mmHg、定格出力点の回転速度、及び定格出力点の燃料の噴射量時の排気ガス温度に補正して閾値と比較し、補正した排気ガス温度が閾値よりも大きいときに、吸気及び排気系統の異常を検出することを特徴とする過給機付エンジンの異常検出方法。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図6】
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