説明

過給機

【課題】過給機の設計に関わらず、取り付け作業が煩雑化することなく、コンプレッサハウジングやタービンハウジングを高精度に取り付ける。
【解決手段】過給機1は、タービン軸7と、ベアリングハウジング2と、タービンハウジング4と、タービン軸7の軸回りの角度を予め定められた角度に保持された状態で、固定手段によってベアリングハウジング2の他端面に固定されるコンプレッサハウジング6とを備え、当該コンプレッサハウジング6は、タービン軸7の軸回りの角度を予め定められた角度に調整するための治具もしくは角度計測用の器具が面接触可能な角度調整平坦面30bを備え、角度調整平坦面30bは、タービン軸7の軸心7aを中心とした円弧7bの接線7cを含み、かつ、軸心7aに平行な面である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンインペラおよびコンプレッサインペラが同軸上に設けられた過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されるように、一端にタービンインペラが設けられ他端にコンプレッサインペラが設けられたタービン軸が、ベアリングハウジングに回転自在に保持された過給機が知られている。こうした過給機は、ベアリングハウジングの一端面に、タービンインペラが収容されるタービンハウジングが固定され、ベアリングハウジングの他端面に、コンプレッサインペラが収容されるコンプレッサハウジングが固定される。
【0003】
そして、上記の過給機を例えばエンジンに接続する場合には、エンジンから排出される排気ガスによってタービンインペラを回転させるとともに、このタービンインペラの回転によって、タービン軸を介してコンプレッサインペラを回転させる。このようにしてコンプレッサインペラが回転すると、過給機に設けられた吸気口からコンプレッサハウジング内に流体が吸気されるとともに、当該吸気された流体がディフューザ流路やコンプレッサスクロール流路において昇圧されて、エンジンの吸気口に導かれることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平2−36761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の過給機においては、コンプレッサハウジングやタービンハウジングを予め定められた角度でベアリングハウジングに取り付ける必要がある。そのため、コンプレッサハウジング(タービンハウジング)をベアリングハウジングに取り付ける際には、治具等で固定されたベアリングハウジングの取付面に、コンプレッサハウジング(タービンハウジング)の取付面を対向させ、当該コンプレッサハウジング(タービンハウジング)をタービン軸の軸回りに回転させながら取付角度を調整する。
【0006】
このとき、特許文献1に示される過給機においては、コンプレッサスクロール流路の出口、すなわち、エンジン等の機器に接続される円筒状の吐出口が、タービン軸の軸心を中心とした円弧の接線を含み、かつ、タービン軸の軸心に平行な面となるように設けられている。したがって、コンプレッサハウジングをベアリングハウジングに取り付ける際には、吐出口を角度基準面として、当該吐出口に角度測定用の器具を当ててコンプレッサハウジングの取付角度を測定するのが一般的となっている。
【0007】
しかしながら、過給機の中には、設計上の都合により、吐出口が、タービン軸の軸心を中心とした円弧の接線を含む面であってもタービン軸の軸心に平行でない面となるように設けられているものがあり、こうした過給機においては、上記の測定方法によってコンプレッサハウジングの取付角度を測定することができず、取り付け作業が煩雑化してしまう。
【0008】
本発明の目的は、過給機の設計に関わらず、取り付け作業が煩雑化することなく、コンプレッサハウジングやタービンハウジングを高精度に取り付けることができる過給機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の過給機は、一端にタービンインペラが設けられ他端にコンプレッサインペラが設けられたタービン軸と、前記タービン軸を回転自在に保持するベアリングハウジングと、前記ベアリングハウジングの一端面に固定され、前記タービンインペラが収容されるタービンハウジングと、前記ベアリングハウジングの他端面に固定され、前記コンプレッサインペラが収容されるコンプレッサハウジングと、を備え、前記コンプレッサハウジングは、前記タービン軸の軸回りの角度を予め定められた角度に保持された状態で、固定手段によって前記ベアリングハウジングの他端面に固定される過給機であって、前記コンプレッサハウジングは、前記タービン軸の軸回りの角度を前記予め定められた角度に調整するための治具もしくは角度計測用の器具が面接触可能な角度調整平坦面を備え、前記角度調整平坦面は、前記タービン軸の軸心を中心とした円弧の接線を含み、かつ、該軸心に平行な面であることを特徴とする。
【0010】
また、前記コンプレッサハウジングは、前記ベアリングハウジングよりも前記タービン軸の径方向外方に突出する突出部を備え、前記固定手段は、前記コンプレッサハウジングの突出部および前記ベアリングハウジングの外周近傍の双方に対向する挟持片と、前記挟持片を前記コンプレッサハウジングの突出部に圧接するとともに、当該圧接力によって前記挟持片と前記突出部との間に前記ベアリングハウジングの外周部分を挟持するボルトと、を備えているとよい。
【0011】
また、前記ベアリングハウジングは、前記コンプレッサハウジングよりも前記タービン軸の径方向外方に突出する突出部を備え、前記固定手段は、前記ベアリングハウジングの突出部および前記コンプレッサハウジングの外周近傍の双方に対向する挟持片と、前記挟持片を前記ベアリングハウジングの突出部に圧接するとともに、当該圧接力によって前記挟持片と前記突出部との間に前記コンプレッサハウジングの外周部分を挟持するボルトと、を備えているとよい。
【0012】
また、本発明の過給機は、一端にタービンインペラが設けられ他端にコンプレッサインペラが設けられたタービン軸と、前記タービン軸を回転自在に保持するベアリングハウジングと、前記ベアリングハウジングの一端面に固定され、前記タービンインペラが収容されるタービンハウジングと、前記ベアリングハウジングの他端面に固定され、前記コンプレッサインペラが収容されるコンプレッサハウジングと、を備え、前記タービンハウジングは、前記タービン軸の軸回りの角度を予め定められた角度に保持された状態で、固定手段によって前記ベアリングハウジングの一端面に固定される過給機であって、前記タービンハウジングは、前記タービン軸の軸回りの角度を前記予め定められた角度に調整するための治具もしくは角度計測用の器具が面接触可能な角度調整平坦面を備え、前記角度調整平坦面は、前記タービン軸の軸心を中心とした円弧の接線を含み、かつ、該軸心に平行な面であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、過給機の設計に関わらず、取り付け作業が煩雑化することなく、コンプレッサハウジングやタービンハウジングを高精度に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】過給機の概略断面図である。
【図2】コンプレッサハウジングを説明する図である。
【図3】第1変形例のコンプレッサハウジングを説明する図である。
【図4】第2変形例のベアリングハウジングおよびコンプレッサハウジングを説明する図である。
【図5】タービンハウジングを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
ここでは、まず、過給機の構成について説明し、その後、本実施形態の特徴であるコンプレッサハウジングについて具体的に説明する。
【0017】
図1は、過給機1の概略断面図である。以下では、図に示す矢印F方向を過給機1の前側とし、矢印R方向を過給機1の後側として説明する。図1に示すように、過給機1は、ベアリングハウジング2と、ベアリングハウジング2の前側に締結ボルト3によって連結されるタービンハウジング4と、ベアリングハウジング2の後側に締結ボルト5によって連結されるコンプレッサハウジング6と、を備えている。
【0018】
ベアリングハウジング2には、過給機1の前後方向に貫通する軸受孔2aが形成されており、この軸受孔2aにタービン軸7がベアリングを介して回転自在に支持されている。タービン軸7の前端部にはタービンインペラ8が一体的に連結されており、このタービンインペラ8がタービンハウジング4内に回転自在に収容されている。また、タービン軸7の後端部にはコンプレッサインペラ9が一体的に連結されており、このコンプレッサインペラ9がコンプレッサハウジング6内に回転自在に収容されている。
【0019】
タービンハウジング4の後面には、ベアリングハウジング2に設けられたネジ孔に対応するネジ孔が設けられている。そして、両ハウジング2、4に設けられたネジ孔に締結ボルト3を螺挿することによって、ベアリングハウジング2にタービンハウジング4が固定される。タービンハウジング4には、過給機1の前側に開口するとともに不図示の排気ガス浄化装置に接続される吐出口13が形成されている。また、締結ボルト3によってベアリングハウジング2とタービンハウジング4とが連結された状態では、これら両ハウジング2、4の対向面間に流路14が形成される。この流路14は、タービン軸7(タービンインペラ8)の径方向内側から外側に向けて環状に形成されている。
【0020】
また、タービンハウジング4には、流路14よりもタービン軸7(タービンインペラ8)の径方向外側に位置する環状のタービンスクロール流路15が設けられている。タービンスクロール流路15は、エンジンから排出される排気ガスが導かれる不図示のガス流入口と連通するとともに、上記の流路14にも連通している。したがって、ガス流入口からタービンスクロール流路15に導かれた排気ガスは、流路14およびタービンインペラ8を介して吐出口13に導かれるとともに、その流通過程においてタービンインペラ8を回転させることとなる。そして、上記のタービンインペラ8の回転力は、タービン軸7を介してコンプレッサインペラ9に伝達されることとなる。以下に、コンプレッサハウジング6の構成について説明する。
【0021】
コンプレッサハウジング6には、過給機1の後側に開口するとともに不図示のエアクリーナに接続される吸気口10が形成されている。また、締結ボルト5によってベアリングハウジング2とコンプレッサハウジング6とが連結された状態では、これら両ハウジング2、6の対向面によって、空気を圧縮して昇圧するディフューザ流路11が形成される。このディフューザ流路11は、タービン軸7(コンプレッサインペラ9)の径方向内側から外側に向けて環状に形成されており、上記の径方向内側において、コンプレッサインペラ9を介して吸気口10に連通している。
【0022】
また、コンプレッサハウジング6には、ディフューザ流路11よりもタービン軸7(コンプレッサインペラ9)の径方向外側に位置する環状のコンプレッサスクロール流路12が設けられている。コンプレッサスクロール流路12は、ディフューザ流路11と連通するとともに、不図示のエンジンの吸気口に接続される吐出口にも連通している。したがって、上記のとおりに、タービンインペラ8の回転力がタービン軸7を介してコンプレッサインペラ9に伝達されて、コンプレッサインペラ9が回転すると、吸気口10からコンプレッサハウジング6内に流体が吸気されるとともに、当該吸気された流体は、ディフューザ流路11およびコンプレッサスクロール流路12で昇圧されてエンジンの吸気口に導かれることとなる。
【0023】
図2は、本実施形態にかかるコンプレッサハウジング6を説明する図であり、図2(a)は平面図、図2(b)は左側面図である。図2に示すように、コンプレッサハウジング6は、本体30と、吐出管40とを含んで構成される。本体30は、平面形状が円形に構成されており、その中心に吸気口10が形成されている。また、本体30は、ベアリングハウジング2に固定されたときに、ベアリングハウジング2の後面に対面する対向面30aを備えている。対向面30aの外周縁近傍には、ベアリングハウジング2よりもタービン軸7の径方向外方に突出する突出部32が複数(本実施形態では6つ)設けられている。突出部32には、タービン軸7の軸方向(図2中Y軸方向)に貫通するネジ孔32aが設けられている。また、詳しくは後述するが、本体30の外周面には、角度調整平坦面30bが設けられている。
【0024】
吐出管40は、本体30からコンプレッサハウジング6の後面方向に突出して形成された円筒状の管であり、本体30側に位置する一方の開口がコンプレッサスクロール流路12と連通し、他方の開口(以下、「吐出口」と称する。)40aが不図示のエンジンの吸気口に接続可能に構成されている。また、図2(b)に示すように、本実施形態においては、吐出口40aは、タービン軸7の軸心7aを中心とした円弧の接線40bを含む面ではあるものの、軸心7aに平行でない面となるように設けられている。
【0025】
続いて、図1を参照して、コンプレッサハウジング6のベアリングハウジング2への取り付けについて説明する。コンプレッサハウジング6をベアリングハウジング2に取り付ける際には、治具等で固定されたベアリングハウジング2の取付面(後面)に、コンプレッサハウジング6の取付面(対向面)を対向させ、固定手段によって固定する。この際、コンプレッサハウジング6のタービン軸7の軸回りの角度がどのような角度であっても、コンプレッサハウジング6をベアリングハウジング2に固定することが可能となっている。
【0026】
具体的に説明すると、図1に示すように、本実施形態において固定手段は、挟持片50と、締結ボルト5とを含んで構成される。挟持片50は、締結ボルト5が貫通可能な貫通孔50aが設けられるとともに、コンプレッサハウジング6の各突出部32に配置され、突出部32およびベアリングハウジング2の外周近傍の双方に対向する。
【0027】
締結ボルト5は、挟持片50に設けられた貫通孔50aを貫通するとともに、突出部32に設けられたネジ孔32aに螺合する。したがって、締結ボルト5をネジ孔32aに螺挿することで、締結ボルト5は、挟持片50を突出部32に圧接するとともに、当該圧接力によって挟持片50と突出部32との間にベアリングハウジング2の外周部分を挟持する。このように、コンプレッサハウジング6は、タービン軸7の軸回りの角度をどのような角度にしても、ベアリングハウジング2に固定され得る。これにより、例えば、設計が異なるベアリングハウジング2に対しても、同一のコンプレッサハウジング6を適用することができるといった具合に、部品の共通化を図ることが可能となる。
【0028】
上記の取付構造により、本実施形態の過給機1の組立工程においては、コンプレッサハウジング6をタービン軸7の軸回りに回転させながら取付角度を調整し、所望の取付角度となったところで、上記の固定手段によってベアリングハウジング2にコンプレッサハウジング6を取り付ける必要がある。従来は、コンプレッサハウジングに設けられる吐出口が、タービン軸の軸心を中心とした円弧の接線を含み、かつ、タービン軸の軸心に平行な面となるように設けられていたため、吐出口を角度基準面とし、吐出口に角度測定用の器具を当ててコンプレッサハウジングの取付角度を測定することが可能であった。
【0029】
しかし、本実施形態にかかるコンプレッサハウジング6に設けられた吐出口40aは、タービン軸7の軸心7aを中心とした円弧の接線40bを含む面ではあるものの、軸心7aに平行でない面となるように設けられているため、吐出口40aを角度基準面とすることができない。
【0030】
そこで、本実施形態においては、コンプレッサハウジング6の本体30に設けられた角度調整平坦面30bを利用して、タービン軸7の軸回りの角度(取付角度)を予め定められた角度に調整することができるようにしている。
【0031】
図2に戻って説明すると、角度調整平坦面30bは、タービン軸7の軸回りの角度を予め定められた角度に調整するための治具(以下、単に「角度調整治具」と称する)もしくは角度計測用の器具が面接触可能な面である。ここで、角度調整平坦面30bは、タービン軸7の軸心7aを中心とした円弧7bの接線7cを含み、かつ、タービン軸7に平行な面である。
【0032】
このように、コンプレッサハウジング6の本体30に角度調整平坦面30bを設けることにより、吐出口40aが、軸心7aを中心とした円弧の接線を含む面であっても軸心7aに平行でない面となるように設けられていても、まず、角度調整治具を予め定められた基準面に面接触させ、次に、角度調整治具を角度調整平坦面30bに面接触させることで、取付角度を予め定められた角度に調整することができる。また、角度調整平坦面30bに角度測定用の器具を面接触させるだけで、コンプレッサハウジング6の角度を測定することができる。
【0033】
なお、上述したように角度調整平坦面30bは、コンプレッサハウジング6の取付角度を調整するために使用するものであるため、一定の面精度が確保されている必要がある。そのため、鋳造など、面精度の確保が困難な場合は、機械加工などを施すとよい。ただし、組立時の角度精度がそれほど大きくない場合は、高い面精度が必要ではないので、角度調整平坦面30bに対する機械加工を省略してもよい。また、ダイキャストなど、ある程度の面精度が確保できるような工法で製作される場合にも、機械加工を省略することができる。
【0034】
(第1変形例)
角度調整平坦面30bは、タービン軸7の軸心7aを中心とした円弧7bの接線7cを含み、かつ、軸心7aに平行な面であれば、コンプレッサハウジング6のどの部分に角度調整平坦面30bが設けられていてもよい。
【0035】
図3は、第1変形例のコンプレッサハウジング6を説明する図である。例えば、図3に示すように、締結ボルト5によってベアリングハウジング2とコンプレッサハウジング6とが連結された状態において、角度調整平坦面30bが水平面(図3中XY平面)になるように、本体30に角度調整平坦面30bを設けておけば、角度調整平坦面30bに水準器を乗せるだけで、取付角度を調整することができる。
【0036】
(第2変形例)
上述した実施形態においては、コンプレッサハウジング6に突出部32が設けられる場合を例に挙げて説明したが、ベアリングハウジング2に突出部が設けられていてもよい。
【0037】
図4は、第2変形例のベアリングハウジング2およびコンプレッサハウジング6を説明する図である。図4に示す例では、ベアリングハウジング2の外周縁近傍には、コンプレッサハウジング6よりもタービン軸7の径方向外方に突出する突出部62が複数設けられている。突出部62には、タービン軸7の軸方向(図4中Y軸方向)に貫通するネジ孔62aが設けられている。この場合、挟持片50は、ベアリングハウジング2の突出部62ごとに設置され、突出部62およびコンプレッサハウジング6の外周近傍の双方に対向する。
【0038】
そして、締結ボルト5は、挟持片50に設けられた貫通孔50aを貫通するとともに、突出部62に設けられたネジ孔62aに螺合する。したがって、締結ボルト5をネジ孔62aに螺挿することで、締結ボルト5は、挟持片50を突出部62に圧接するとともに、当該圧接力によって挟持片50と突出部62との間にコンプレッサハウジング6の外周部分を挟持する。
【0039】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0040】
例えば、上述した実施形態では、コンプレッサハウジング6に角度調整平坦面30bを設け、ベアリングハウジング2に対するコンプレッサハウジング6の取付角度を調整または測定する場合について説明したが、タービンハウジング4に角度調整平坦面を設けることとしてもよい。この場合、図5に示すように、タービンハウジング4は、本体70と、ガス流入管72と、吐出口13とを含んで構成される。本体70は、平面形状が円形に構成されており、その中心に吐出口13が形成されている。また、本体70は、ベアリングハウジング2に固定されたときに、ベアリングハウジング2の前面に対面する対向面70aを備えている。また、詳しくは後述するが、本体70の外周面には、角度調整平坦面70bが設けられている。
【0041】
ガス流入管72は、本体70からタービンハウジング4の前面方向に突出して形成された円筒状の管であり、本体70側に位置する一方の開口がタービンスクロール流路15(図1参照)と連通し、他方の開口(以下、「吸気口」と称する)72aが不図示のエンジンの排気ガス排出口に接続可能に構成されている。
【0042】
そこで、ここでも、上記コンプレッサハウジング6と同様に、タービンハウジング4の本体70に、タービン軸7の軸回りの角度を予め定められた角度に調整するための角度調整治具もしくは角度計測用の器具が面接触可能な角度調整平坦面70bを設けておく。なお、角度調整平坦面70bは、コンプレッサハウジング6に設けられた角度調整平坦面30bと同様に、角度調整平坦面30cは、タービン軸7の軸心7aを中心とした円弧7bの接線7cを含み、かつ、軸心7aに平行な面である。
【0043】
こうすることで、吸気口72aが、タービン軸7の軸心7aを中心とした円弧7bの接線7cを含み、かつ、軸心7aに平行な面であるか否かにかかわらず、まず、角度調整治具を予め定められた基準面に面接触させ、次に、角度調整治具を角度調整平坦面70bに面接触させることで、取付角度を予め定められた角度に調整することができる。また、角度調整平坦面70bに角度測定用の器具を面接触させるだけで、タービンハウジング4の角度を測定することができる。
【0044】
また、上述した実施形態において、軸心7aを中心とした円弧の接線を含むものの軸心7aに平行でない面となるような吐出口40aが設けられたコンプレッサハウジング6を例に挙げて説明したが、吐出口がタービン軸7の軸心7aを中心とした円弧7bの接線7cを含み、かつ、軸心7aに平行な面であるコンプレッサハウジングに角度調整平坦面を設けてもよい。同様に、軸心7aを中心とした円弧の接線を含むものの軸心7aに平行でない面となるような吸気口72aが設けられたタービンハウジング4に角度調整平坦面を設けてもよい。
【0045】
さらに、上述した実施形態において、固定手段を挟持片50と、締結ボルト5で構成する場合を例に挙げて説明したが、コンプレッサハウジング6をベアリングハウジング2に固定できれば、固定手段に限定はない。例えば、ベアリングハウジングおよびコンプレッサハウジングの双方にネジ孔を設けておき、双方のネジ孔に締結ボルトを螺挿することで、ベアリングハウジングおよびコンプレッサハウジングを固定してもよい。この場合であっても、ネジ孔に公差があるため、若干ではあるものの、ベアリングハウジングに対するコンプレッサハウジングの取付角度は予め定められた角度よりずれるおそれがある。したがって、角度調整平坦面を設けることにより、より高精度にコンプレッサハウジングをベアリングハウジングに取付けることが可能となる。
【0046】
また、上述した実施形態において、ベアリングハウジング2とタービンハウジング4とを固定する固定手段を、ベアリングハウジング2およびタービンハウジング4の双方に設けられたネジ孔と締結ボルト3とで構成される場合を例に挙げて説明したが、タービンハウジング4をベアリングハウジング2に固定できれば、固定手段に限定はない。例えば、コンプレッサハウジング6をベアリングハウジング2に固定する固定手段と同様に、挟持片と締結ボルトで構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、タービンインペラおよびコンプレッサインペラが同軸上に設けられた過給機に利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 …過給機
2 …ベアリングハウジング
3、5 …締結ボルト(ボルト)
30、70 …本体
30a、70a …対向面
30b、70b …角度調整平坦面
32、62 …突出部
32a、62a …ネジ孔
40 …吐出管
3 …締結ボルト
4 …タービンハウジング
50 …挟持片
50a …貫通孔
6 …コンプレッサハウジング
7 …タービン軸
7a …軸心
72 …ガス流入管
72a …吸気口
8 …タービンインペラ
9 …コンプレッサインペラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端にタービンインペラが設けられ他端にコンプレッサインペラが設けられたタービン軸と、
前記タービン軸を回転自在に保持するベアリングハウジングと、
前記ベアリングハウジングの一端面に固定され、前記タービンインペラが収容されるタービンハウジングと、
前記ベアリングハウジングの他端面に固定され、前記コンプレッサインペラが収容されるコンプレッサハウジングと、を備え、
前記コンプレッサハウジングは、前記タービン軸の軸回りの角度を予め定められた角度に保持された状態で、固定手段によって前記ベアリングハウジングの他端面に固定される過給機であって、
前記コンプレッサハウジングは、
前記タービン軸の軸回りの角度を前記予め定められた角度に調整するための治具もしくは角度計測用の器具が面接触可能な角度調整平坦面を備え、
前記角度調整平坦面は、
前記タービン軸の軸心を中心とした円弧の接線を含み、かつ、該軸心に平行な面であることを特徴とする過給機。
【請求項2】
前記コンプレッサハウジングは、
前記ベアリングハウジングよりも前記タービン軸の径方向外方に突出する突出部を備え、
前記固定手段は、
前記コンプレッサハウジングの突出部および前記ベアリングハウジングの外周近傍の双方に対向する挟持片と、
前記挟持片を前記コンプレッサハウジングの突出部に圧接するとともに、当該圧接力によって前記挟持片と前記突出部との間に前記ベアリングハウジングの外周部分を挟持するボルトと、を備えていることを特徴とする請求項1記載の過給機。
【請求項3】
前記ベアリングハウジングは、
前記コンプレッサハウジングよりも前記タービン軸の径方向外方に突出する突出部を備え、
前記固定手段は、
前記ベアリングハウジングの突出部および前記コンプレッサハウジングの外周近傍の双方に対向する挟持片と、
前記挟持片を前記ベアリングハウジングの突出部に圧接するとともに、当該圧接力によって前記挟持片と前記突出部との間に前記コンプレッサハウジングの外周部分を挟持するボルトと、を備えていることを特徴とする請求項1記載の過給機。
【請求項4】
一端にタービンインペラが設けられ他端にコンプレッサインペラが設けられたタービン軸と、
前記タービン軸を回転自在に保持するベアリングハウジングと、
前記ベアリングハウジングの一端面に固定され、前記タービンインペラが収容されるタービンハウジングと、
前記ベアリングハウジングの他端面に固定され、前記コンプレッサインペラが収容されるコンプレッサハウジングと、を備え、
前記タービンハウジングは、前記タービン軸の軸回りの角度を予め定められた角度に保持された状態で、固定手段によって前記ベアリングハウジングの一端面に固定される過給機であって、
前記タービンハウジングは、
前記タービン軸の軸回りの角度を前記予め定められた角度に調整するための治具もしくは角度計測用の器具が面接触可能な角度調整平坦面を備え、
前記角度調整平坦面は、
前記タービン軸の軸心を中心とした円弧の接線を含み、かつ、該軸心に平行な面であることを特徴とする過給機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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