説明

過般型植物育成器及び過般型植物育成器を用いた植物の育成方法

【課題】都市のベランダや屋上等で土を使って植物を育成することは土の流出による汚れの問題、土自体が重いことからの過般性・設置容易性の問題、使用後の廃棄の際に土は一般ごみとして排出出来ないという問題、等々の多くの課題があった。
【解決手段】本発明は、簡便な方法で主にビルの屋上や庭園、集合住宅のベランダ等で用いる植物の育成方法、及び食品等に用いる植物の育成方法を得るという目的を、少なくとも間伐材等の木質を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体を上面を解放した筐体容器に収納し、該植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体を基盤材として植物を育成するという非常に簡便な方法によって実現した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にベランダや屋上等で用いる過般型植物育成器に関するものであり、また本発明は過般型植物育成器を用いた植物の育成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、地球温暖化が世界的な課題となり、都市部での緑地の拡大による二酸化炭素固定吸収を図り、ヒートアイランドを緩和するために、屋上緑化等への要請が大きくなっている。また、食の安全が揺らぎ、自らの手で安心安全で清浄な野菜やハーブなどを作ろうというニーズも大きくなっている。
【0003】
これに対して、従来、主にベランダや屋上等で用いる植物育成器としては、プラスチック容器等に土を入れたプランターが多く用いられていた。また、都市のベランダ等での土の使用は問題が多いことから、水耕栽培の提案も多くみられる。
【特許文献1】特開2005−269998号公報
【特許文献2】特開2005−224211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の方法によっては、都市のベランダや屋上等で土を使って植物を育成することは土の流出による汚れの問題、土自体が重いことからの過般性・設置容易性の問題、使用後の廃棄の際に土は一般ごみとして排出出来ないという問題、等々の多くの課題があった。
【0005】
また、水耕栽培による方法にあっては、水耕に適する植物しか育成出来ないという問題があり、またウレタンフォーム等の保水基盤材を用いる必要がありコストアップに繋がるという問題があった。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、少なくとも間伐材等の木質を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体を上面を解放した筐体容器に収納し、該植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体を基盤材として植物を育成することを特徴とする、過般型植物育成器である。
また本発明は、少なくとも間伐材等の木質を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体を上面を解放した筐体容器に収納し、該植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体を基盤材として植物を育成する植物の育成方法であって、該過般型植物育成器の過般性を活かし過般型植物育成器を集合住宅のベランダや建物の屋上等で利用し、簡易で清浄な家庭菜園或いは屋上緑化・屋上庭園・屋上菜園として用いることを特徴とする、過般型植物育成器を用いた植物の育成方法である。
前記の方法を用いる事により、簡便な方法によって安価に主にビルの屋上、庭園等で用いる植物の育成、及び集合住宅のベランダ等にに設置して食品等に用いる植物の育成が出来、環境保護・エコロジー等の観点からも優れ、産業に多大なる貢献をする事が出来るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
簡便な方法で主にビルの屋上や庭園、集合住宅のベランダ等で用いる植物の育成方法、及び食品等に用いる植物の育成方法を得るという目的を、少なくとも間伐材等の木質を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体を上面を解放した筐体容器に収納し、該植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体を基盤材として植物を育成するという非常に簡便な方法によって実現した。
【実施例1】
【0008】
図1は、本発明の1実施例の略図である。ここでは、本発明にかかる植物の育成器及びそれを用いた植物育成方法の一例を示している。11は本発明にかかる構造体を収納する筐体容器、12は本発明にかかる構造体を含む基盤材、13は育成する植物である。
【0009】
ここで、本実施例では、少なくとも間伐材等の木質を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体を用いている。本実施例では、通常は用途がほとんど無く、産業廃棄物として処理されていた間伐材を有効に再利用しており、エコロジーという観点からも非常に有効である。
【0010】
本実施例では、基盤材として用いた構造体に収納した植物性材料は、木質原料としての間伐材を破砕した後、緑葉をブレンドして一次発酵を行い、さらに二次破砕を行った後にネット状の袋に収納した。ここで、一次発酵は間伐材等の木質材料による発芽障害等を抑え、植物の育成のために有効であった。また、緑葉のブレンドは構造体の軽量・過般性に悪影響を与えずに養分の含有率を高め、植物の育成に有効であった。ここで、ブレンドする材料としては緑葉に限定されるものではなく、もみ殻等の穀類副産物を加えてもよい。
【0011】
本発明の方法を用いる事により、安価に簡便な方法で植物の育成という機能を実現することが出来、に非常に有効であった。また、本発明に係る植物育成器は、用いている基盤材が間伐材等の木質を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体であるため、乾燥重量が小さくまた袋で取り回しが出来るため過般性に優れ、ビルの屋上やベランダ等での利用に非常に有効であった。従来の土を用いる方法等では、土は非常に重くベランダ等に運び入れることにも困難があると同時に風雨等により流出して周囲を汚損したりすることがあったが、本発明による基盤材を用いることによりその虞はなくなった。
【0012】
また、本発明の構造体は、利用後に廃棄する場合にも木質及び植物性材料からなるため、使用後は筐体容器から出して乾燥すれば軽量になるとともに、一般の可燃ごみとして廃棄することが出来、この面でも非常に優れたものであった。
【0013】
本実施例に於いては、ブレンド及び一次発酵後に二次破砕を行っているが、これにより基盤材の粒度が揃い、基盤材としての機能が更に向上した。
【0014】
ここで、図1に於いては簡易的にキャベツを育成した図を示したが、本発明に係る植物育成方法の対象となる植物はこれに限定されるものではなく、ホウレンソウやコマツナなどの葉菜、ナスやキュウリなどの果菜など、いずれの植物にも対応出来る。また、特に屋上緑化基盤材としての利用の場合、芝やツル系植物などを植栽してもよい。さらに、ベランダ菜園としての利用の場合、スイートバジルやタイム、オレガノなどのハーブ類を栽培することは都市の消費者のニーズにもマッチし、非常に有効である。
【0015】
図1に於いては水位計を図示していないが、本発明に係る基盤材を用いた植物育成方法は土を用いる方法と異なり、半ば水耕栽培に近い方法で以て植物を育成している。本発明に係る基盤材は木質チップを主成分としているため、ある程度の内部水位を維持していても根腐れ等が生じにくく、ベランダ等での育成管理に好適であった。この内部水位を確認管理するため、水位計を設置して活用することは、本発明の方法を応用するにあたり非常に有効であった。
【実施例2】
【0016】
図2は、本発明に係る他の実施例の略図である。ここでは、本発明にかかる植物の育成器及びそれを用いた植物育成方法の一例を示している。21は本発明にかかる構造体を収納する筐体容器、22は本発明にかかる構造体、23は構造体上に設置して一体的に基盤材として機能する層、24は育成する植物、25は根菜類等の育成に対応する筒状部材である。
【0017】
本実施例の方法を用いることにより、葉菜、果菜類等のみならず、大根等の根菜類も本発明に係る植物育成器により育成することが可能となり、利用範囲を拡大することが出来た。
【0018】
また、本実施例に於いては構造体上に設置して一体的に基盤材として機能する層23として二次破砕した木質チップとバーク堆肥、及び破砕した枯葉を1:1:1の割合で混合したものを用いた。これを用いることで、種からの育種も容易になり、本発明の応用範囲を拡大する効果があった。ここで、本発明に係る構造体上に設置して一体的に基盤材として機能する層の材料としては、本実施例の材料及び混合比に限定されるものではなく、凡そ植物の育成が可能な材料であれば何を用いてもよい。
【実施例3】
【0019】
図3は、本発明の一実施例を示す図面代用写真である。写真から明らかなように、本発明に係る基盤材を用いて、葉菜や果菜が健全に育成していることがわかる。
【0020】
本実施例に於いては、写真中に見える水位計(黄色の筒中に発泡スチロール棒を挿入したもの)を用いて水位管理を行っているが、これにより水耕栽培に近い効果が得られ、植物の健全育成が実現された。この内部水位を管理して植物の育成を図る方法はゴルフ場に於けるグリーンの保全を助ける工法としてのパー・ウィック方式に似通った方法であって、水管理の自由度向上、灌水回数の減少、養分の貯蔵、病害発生の減少等の効果があった。
【0021】
なお、本発明に係る過般型植物育成器及びこれを用いた植物の育成方法に於いて使用する水位計は本図面代用写真に示す形式のものに限定されるものではなく、市販品含めていずれの形式のものでも活用することが出来る。
【0022】
また、本実施例に係る本図面代用写真では、本発明に係る筐体容器として木製の箱の内面に防水性のフィルム(実施例ではビニールシート)を設置して用いた。これにより、本発明の用途に相応しい外観を構成することが出来るが、本発明に係る過般型植物育成器及びこれを用いた植物の育成方法に於いては筐体容器はこれら形状及び材質に限定されるものではなく、市販のプラスチック製プランターなど非透水性の筐体であればいずれを用いても問題ない。
【0023】
また、本実施例に係る本図面代用写真に示す木製の筐体の内面に防水性のフィルムを設置する形態に於いては、筐体の底部を窓空きにすることも可能であり、この場合は保水分が防水性のフィルムを介して設置面に接するようにすることが出来る。この方法を特にビルの屋上緑化等の応用の際に用いると、屋上面の冷却に寄与し、ビル全体の冷房効果を高め、エネルギーの削減にも有効であった。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上説明したように簡便な方法で主にビルの屋上や庭園、集合住宅のベランダ等で用いる植物の育成方法、及び食品等に用いる植物の育成方法を得るという目的を、少なくとも間伐材等の木質を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体を上面を解放した筐体容器に収納し、該植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体を基盤材として植物を育成するという非常に簡便な方法によって実現出来、以って産業に多大なる貢献をする事が出来るものである。
更に本発明の方法は、環境、エコロジー、リサイクルという観点からも非常に有効なものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明にかかる植物育成器及び植物育成方法の一例を示す略図である。(実施例1)
【図2】本発明にかかる植物育成器及び植物育成方法の一例を示す略図である。(実施例2)
【図3】本発明にかかる植物育成器及び植物育成方法の一例を示す図面代用写真である。(実施例3)
【符号の説明】
【0026】
11 本発明にかかる構造体を収納する筐体容器
12 本発明にかかる構造体を含む基盤材
13 育成する植物
21 本発明にかかる構造体を収納する筐体容器
22 本発明にかかる構造体
23 構造体上に設置して一体的に基盤材として機能する層
24 育成する植物
25 根菜類等の育成に対応する筒状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも間伐材等の木質を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体を上面を解放した筐体容器に収納し、該植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体を基盤材として植物を育成することを特徴とする、過般型植物育成器。
【請求項2】
該植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体に用いる植物性材料は、少なくとも木質原料を破砕した後、一次発酵を行った後にネット状の袋に収納してなるを特徴とする、請求項1記載の過般型植物育成器。
【請求項3】
該植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体に用いる植物性材料は、少なくとも木質原料を破砕した後、穀類副産物や緑葉をブレンドして一次発酵を行った後にネット状の袋に収納してなるを特徴とする、請求項1乃至2記載の過般型植物育成器。
【請求項4】
該植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体に用いる植物性材料は、少なくとも木質原料を破砕した後、一次発酵を行った後に二次破砕を行い、ネット状の袋に収納してなるを特徴とする、請求項1乃至2記載の過般型植物育成器。
【請求項5】
該植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体に用いる植物性材料は、少なくとも木質原料を破砕した後、穀類副産物や緑葉をブレンドして一次発酵を行った後に二次破砕を行い、ネット状の袋に収納してなるを特徴とする、請求項1乃至4記載の過般型植物育成器。
【請求項6】
少なくとも間伐材等の木質を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体を上面を解放した筐体容器に収納し、該植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体を基盤材として植物を育成する過般型植物育成器に於いて、該過般型植物育成器はその筐体内に水位計を設置してなることを特徴とする、請求項1乃至5記載の過般型植物育成器。
【請求項7】
少なくとも間伐材等の木質を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体を上面を解放した筐体容器に収納し、該植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体を基盤材として植物を育成する過般型植物育成器に於いて、該過般型植物育成器はその筐体内の一部に更に断面が略円形或いは略矩形の筒状の部材を有し、該筒状部在中にもに植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体が収納されてなり、該筒状部材中の構造体に於いて根菜類等の植物を育成することを特徴とする、請求項1乃至6記載の過般型植物育成器。
【請求項8】
少なくとも間伐材等の木質を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体を上面を解放した筐体容器に収納し、該植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体を基盤材として植物を育成する請求項1乃至7記載の過般型植物育成器を用いた植物の育成方法であって、該過般型植物育成器の過般性を活かし過般型植物育成器を集合住宅のベランダや建物の屋上等で利用し、簡易で清浄な家庭菜園或いは屋上緑化・屋上庭園・屋上菜園として用いることを特徴とする、過般型植物育成器を用いた植物の育成方法。
【請求項9】
該過般型植物育成器を集合住宅のベランダや建物の屋上等で利用し、簡易で清浄な家庭菜園或いは屋上緑化・屋上庭園・屋上菜園として用いる際に、設置された水位計を用いて保水水位を確認し、植物育成の維持管理を行うことを特徴とする、請求項6記載の過般型植物育成器を用いた植物の育成方法。
【請求項10】
少なくとも間伐材等の木質を原料とする木材チップを含む林産物や穀類副産物などの植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体を上面を解放した筐体容器に収納し、該植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体を基盤材として植物を育成する請求項1乃至7記載の過般型植物育成器を用いた植物の育成方法であって、該過般型植物育成器はその筐体内の一部に更に断面が略円形或いは略矩形の筒状の部材を有し、該筒状部在中にもに植物性材料がネット状の袋に収納されてなる構造体が収納されてなり、該筒状部材中の構造体に於いて根菜類等の植物を育成することを特徴とする、過般型植物育成器を用いた植物の育成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−39063(P2009−39063A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209080(P2007−209080)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(301011604)有限会社ノースグリーン (12)
【Fターム(参考)】