説明

過酸化水素と有機化合物との反応の開始

過酸化水素と有機化合物との反応開始方法であって、過酸化水素と有機化合物とを液相において触媒の存在下で接触させる工程を包含し、a)有機化合物が、アルコール、炭水化物、アルデヒド、ケトン、カルボン酸またはエーテルであり;b)触媒が、第7、8、9、10、または11族遷移金属の少なくとも一種類を含有し;c)H:有機化合物中の原子炭素の比が、0.2:1〜6:1であり;かつd)存在する全ての水:有機化合物中の原子炭素の比が、0:1〜2:1である(但し、有機化合物はメタノールであったりメタノールを含有したりしない)、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物と過酸化水素との反応を含みガス(例えば、高温ガス混合物)を製造する方法、特に、触媒を使用する方法に関する。この方法は、反応物が触媒に接触すると、好ましくは室温であっても自発的に開始することができる。
【背景技術】
【0002】
水素または別のガスを製造するための炭化水素改質が当業者によく知られている。これらの反応は、しばしば蒸気改質(steam reforming)、ドライ改質(dry reforming)または部分酸化を通じて起こる。この反応を開始するために、反応物をメタノールの場合少なくとも200℃に、エタノールの場合少なくとも400℃に加熱する必要がある。酸素を使用する部分酸化は、発熱反応であるが、200℃またはそれ以上において初期化する必要があり、反応が開始した後、別の入熱なしに継続する。
【0003】
未公開出願PCT/GB2005/000401は、第7、8、9、10または11族遷移金属を含有する触媒を使用するメタノールと過酸化物との反応の開始を開示している。
【0004】
公開先行技術において、固体触媒上の気相中で有機化合物と過酸化水素との反応を開始するために、反応物を230℃に加熱する。この反応は発熱性であり、反応開始後、わずかな入熱でまたは入熱なしで反応が連続しうる。しかしながら、過酸化水素は、そのような高温において、有機化合物と反応する前に、蒸気または液体水と酸素とに分解しうる。反応物をそのような高温に加熱せずに反応を開始することが望ましく、特に、反応が液相において起こりうるように、反応を反応物の沸点未満の温度において開始することが望ましい。直接加熱は非効率であり、場合によっては、例えば、移動乗物または携帯電化製品において反応物を反応させて水素を製造する場合、利用できない。更に、過酸化水素をそのような高温に加熱することは、過酸化水素が爆発性であるので危険である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機化合物(例えば、メタノールよりも長い炭素鎖を有するアルコールまたはカルボン酸)が過酸化水素と、最初に高温に加熱する必要なく、直接反応しうる方法を発見した。この方法は、特定の触媒および特定の開始条件を利用する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、本発明は、過酸化水素と有機化合物との反応を開始する方法であって、過酸化水素と有機化合物とを、触媒の存在下、液相中で接触する工程を包含し、
a) 有機化合物が、アルコール、炭水化物、アルデヒド、ケトン、カルボン酸またはエーテルであり;
b) 触媒が、第7、8、9、10または11族遷移金属の少なくとも一種類を含有し;
c) H:有機化合物中の原子炭素の比が、0.2:1〜6:1、好ましくは0.5:1〜6:1であり;かつ
d) 存在する全ての水:有機化合物中の原子炭素の比が、0:1〜2:1である;
(但し、有機化合物はメタノールであったりメタノールを含有したりしない。)
方法を提供する。
【0007】
元素の周期表の族に言及すると、IUPACの周期表を使用した。第7、8、9、10および11族遷移金属は、更に、第VIIB、VIIIおよびIB族遷移金属としても知られている。
【0008】
開始が行われる圧力は、大気圧と同じか、大気圧未満か、または大気圧超でありうる。好ましくは、圧力は、大気圧と同じか、または大気圧超である。
【0009】
本発明の方法において、有機化合物と過酸化水素との反応は、反応物を特定の触媒の存在下、液相において接触させることによって開始される。この反応は、同じ反応媒体中で起こる。従って、有機化合物と過酸化水素反応物とは、互いに同じ媒体中で接触し、膜(例えば、燃料電池膜)を横切らない。
【0010】
驚くべきことに、反応を開始するために系に熱がほとんど提供される必要がないことがわかった。反応が開始された後、反応が発熱性である場合、有機化合物と過酸化物とは反応し続ける。反応が触媒なしに継続しうる場合、反応が開始された後に触媒が反応系に残る必要はないが、実際には、通常、触媒が除去されるよりもむしろその場にとどまる。
【0011】
有機化合物は、アルコール、炭水化物、アルデヒド、ケトン、カルボン酸もしくはエーテルまたはそれらの二種類以上の混合物である。有機化合物は、固体である場合、望ましくは、反応開始時に反応媒体に可溶性である。アルコールは、例えば、C〜C12アルコール、例えば、C〜Cアルコールでありうる。アルコールは、1、2、3またはそれ以上のヒドロキシル基を含みうる。好適なアルコールの例は、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ブタノールおよびジオールおよびトリオール、例えばグリコールおよびグリセロールである。アルデヒドは、例えば、C〜C12アルデヒド、例えば、C〜Cアルデヒドでありうる。好適なアルデヒドの例は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドおよびプロパナールである。ケトンは、例えば、C〜C12ケトン、例えば、C〜Cケトンでありうる。好適なケトンの例は、アセトンである。カルボン酸は、例えば、CまたはC〜C12カルボン酸、例えば、CまたはC〜Cカルボン酸でありうる。好適なカルボン酸の例は、蟻酸および酢酸である。エーテルは、例えば、C〜C12エーテル、例えば、C〜Cエーテルでありうる。好適なエーテルの例は、ジエメルエーテル、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテルおよびCH−O−C−O−CHである。
【0012】
炭水化物は、例えば、糖、デンプン、セルロースまたはガムでありうる。好適な糖の例は、グルコース、スクロース、フルクトースおよびマルトースである。好適なデンプンの例は、可溶性デンプンおよび野菜由来のデンプン、例えば、ジャガイモデンプンまたはフラワー(flour)、例えば、穀物フラワーである。セルロースの例は、変性セルロース、例えば、ヒドロキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースである。ガムの例は、天然由来のガム、例えば、キサンタンガムまたはグアーガムである。これらの天然製品を使用する場合、それらを反応を開始する温度に予熱してもよい。この反応は、別の入熱なしに維持されうる。
【0013】
フラワーまたは不溶性デンプンを使用する場合、通常、H溶液と混合し、50℃以上に加熱してゲルを形成する。
【0014】
有機化合物は、それ自体でまたは別の成分(例えば、別のアルコールまたは炭化水素、例えば、C〜Cアルコール、例えば、エタノール、プロパノールおよびブタノール、ガソリン、アルカン、例えば、ペンタンおよびヘキサン、ディーゼルまたは水)との混合物中で使用されうる。反応が発熱性であるので、一旦有機化合物と過酸化水素との反応が開始されると、別の成分、例えば、エタノール、ガソリンおよび/またはディーゼルと過酸化水素との反応または別の有機化合物と水との反応の開始を生じる熱が発生される。
【0015】
アルコールと過酸化水素との反応は、例えば、存在する反応物の化学量論量に依存して変化しうる。例えば、反応は、
CHCHOH+H+HO→5H+2CO
CHCHOH+3H→2CO+3HO+3H
CHCHOH+2H→2CO+HO+4H
CHCHOH+H→HO+2CO+3H
の少なくとも一種類を包含しうる。
【0016】
対エタノールのモル比は、少なくとも0.2:1、特に0.25:1でなければならない。
【0017】
カルボン酸と過酸化水素との反応は、
2CHCOOH+H→2CO+2HO+H
3CHCOOH+H→3CO+2HO+2H
4CHCOOH+H→4CO+2HO+3H
CHCOOH+H→CO+2H+HO+CO
2CHCOOH+H→2CO+4H+2CO
CHCOOH+2H→CO+H+3HO+CO
HCOOH+H→2HO+CO
HCOOH+0.5H→1.5HO+CO+0.5H
CHCOOH+4H→2CO+6H
の少なくとも一種類を包含しうる。
【0018】
:原子炭素の比は、0.2:1〜6:1、好ましくは0.5:1〜6:1、より好ましくは0.5:1〜4:1である。
【0019】
エーテルと過酸化水素との反応は、
CHOCH+H→2CO+3H+H
CHOCH+H→CO+4H+CO
CHOCH+2H→CO+3H+HO+CO
CHOCH+3H→3H+2HO+2CO
CHOCH+4H→2H+4HO+2CO
の少なくとも一種類を包含しうる。
【0020】
アルデヒドと過酸化水素との反応は、
2CHO+H→CO+CO+HO+2H
2CHO+H→2CO+3H
CHO+H→CO+HO+H
CHCHO+H→CO+CO+3H
CHCHO+2H→2CO+HO+3H
CHCHO+2H→CO+CO+2HO+2H
CHCHO+3H→2CO+3HO+2H
CHCHO+4H→2CO+5HO+H
CHCHO+5H→2CO+7H
の少なくとも一種類を包含しうる。
【0021】
グルコースと水素残基との反応は、
12+12H→18HO+6CO
12+11H→H+16HO+6CO→17HO+CO+5CO
12+10H→2H+14HO+6CO→15HO+CO++H+5CO
12+9H→3H+12HO+6CO→13HO+CO+
2H+5CO
12+81H→4H+1OHO+6CO→11HO+CO+3H+5CO
12+71H→5H+8HO+6CO→9HO+CO+
4H+5CO
12+61H→6H+6HO+6CO→7HO+CO+
5H+5CO
12+51H→7H+4HO+6CO→5HO+CO+
65H+5CO
12+41H→8H+2HO+6CO→3HO+CO+
7H+5CO
12+31H→9H+6HO+6CO→HO+CO+8H+5CO
の少なくとも一種類を包含しうる。
【0022】
一態様において、有機化合物と過酸化水素との反応によって発生された熱を使用して改質反応を推進する。有機化合物と過酸化水素との反応を使用して改質反応に必要ないくつかのまたは全ての熱を提供し、わずかな更なる加熱でまたは更なる加熱なしに改質反応が行われるようにしうる。一態様において、有機化合物と過酸化水素との反応によって、改質反応を推進するのに必要な熱の少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも95%、更に好ましくは100%を提供する。
【0023】
改質工程に必要とされる水を反応に添加するかまたはその場で、例えば、有機化合物と過酸化物との反応の結果として、製造してもよい。
【0024】
この改質反応は、有機化合物と過酸化水素および/または水との直接改質反応でありうる。代わりにまたは更に、この改質工程において一種類以上の別の有機化合物を改質してもよい。改質されうる化合物の例としては、アルコールおよび炭化水素が挙げられる。好適なアルコールとしては、CまたはC〜Cアルコール、好ましくは、C〜CまたはC〜Cアルコール、例えば、エタノール、プロパノールおよびブタノールが挙げられる。好適な炭化水素としては、アルカン、例えばC〜C30アルカン、例えば、C〜C25アルカンが挙げられる。好適なアルカンの例としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンおよびそれらの混合物が挙げられる。ガソリンおよび/またはディーゼルも更に改質されうる。改質を行い、水素および二酸化炭素を、任意に一酸化炭素と共に形成しうる。メタンも更に生成物ストリーム中に、例えば、副生成物として存在しうる。
【0025】
要すれば、この改質反応において製造される全ての一酸化炭素を、水性ガスシフト反応において水と反応させ、二酸化炭素と水素に転化しうる。従って、改質反応は、任意に水性ガスシフト反応の前駆反応として行われてもよい。この水性ガスシフト反応に必要とされる水は、改質工程の生成物に添加されても、改質工程または有機化合物と過酸化水素との反応由来の残留水であってもよい。
【0026】
水性ガスシフト反応は、好適な反応条件下において、水性ガスシフト好適触媒を使用して行われうる。例えば、温度150〜600℃、好ましくは200〜500℃、例えば200〜250℃または300〜450℃が用いられうる。好適な水性ガスシフト触媒としては、銅および/または亜鉛ベースの、任意に支持体上に支持されていてもよい、触媒が挙げられる。例としては、Cu/Zn/AlおよびCuO/Mn/ZnOが挙げられる。水性ガスシフト反応に必要な熱は、少なくとも部分的に有機化合物と過酸化水素との発熱反応によって提供されうる。
【0027】
水性ガスシフト反応後に残る残留COは、例えば、膜分離、選択的酸化またはメタン化によって除去されうる。選択的酸化に関して、酸素は、例えば、気体酸素またはH蒸気によって提供されうる。
【0028】
本発明の別の側面によると、改質反応を行う器械であって、
過酸化水素および有機化合物を含み、有機化合物がアルコール、炭水化物、アルデヒド、ケトン、カルボン酸またはエーテルである(但し、有機化合物はメタノールであったりメタノールを含有したりしない。)、貯蔵手段;
第7、8、9、10または11族遷移金属触媒の少なくとも一種類、好ましくは白金含有触媒を含むハウジング;および
過酸化水素および有機化合物をハウジングの中に導入する手段;
を備える器械が提供される。
【0029】
有機化合物および過酸化水素は、好ましくは別々の貯蔵手段に貯蔵されるが、一緒に貯蔵されてもよい。
【0030】
使用において、有機化合物および過酸化水素を貯蔵手段からハウジングの中に移動させ、触媒と接触させる。液相において反応物を触媒と接触させることによって有機化合物と過酸化物との反応を開始する。上記のように、反応を開始するためにこのシステムに熱を提供する必要がほとんどないかまたは全くない。この反応は発熱反応であるので、反応開始後、有機化合物と過酸化物は反応を継続する。
【0031】
有機化合物と過酸化水素との反応によって発生される熱を少なくとも部分的に使用して改質反応を推進する。例えば、改質反応を推進するのに必要な熱の少なくとも50%、好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも95%、更により好ましくは100%を有機化合物と過酸化物との反応によって提供する。従って、本発明の器械は改質反応を加熱する別の手段を含む必要がない。
【0032】
ハウジングの中に導入される反応物供給も、更に、加熱される必要がない。
【0033】
改質反応用の水は、ハウジングの中に導入され、かつ/またはその場で、例えば有機化合物と過酸化水素との反応の結果として、発生されうる。
【0034】
一態様において、有機化合物の少なくとも一部が改質される。代わりにまたは更に、有機化合物と過酸化水素との反応によって発生される熱を使用して、少なくとも一種類の別の有機化合物(この化合物は、好ましくは入口を通じてハウジングの中に導入される)を改質する。一態様において、この器械は有機化合物の貯蔵手段を含みうる。代わりにまたは更に、有機化合物を開始に使用される有機化合物と共に貯蔵してもよい。
【0035】
改質される有機化合物は、アルコールおよび/または炭化水素でありうる。好適なアルコールおよび炭化水素の例は、上に記載されている。
【0036】
上記のように、改質反応は、水素および二酸化炭素を含有する生成物ストリームを製造しうる。生成物ストリーム、および特に製造される水素をハウジングから回収し、好適な目的に使用しうる。一態様において、例えば、改質反応において製造される水素を使用して燃料電池を作動しうる。従って、本発明の器械を燃料電池と組み合わせて使用してもよい。
【0037】
改質反応は、更に、一酸化炭素および前記生成物、例えば、アルカンまたはオレフィン、を製造しうる。水性ガスシフト反応を使用して、製造される全ての一酸化炭素を二酸化炭素および水素に転化しうる。従って、この器械のハウジングは、好ましくは第7、8、9、10または11族遷移金属の少なくとも一種類を含有する触媒の下流に配置される水性ガスシフト触媒を含む。好適な水性ガスシフト触媒は、上に記載されている。水性ガスシフト反応由来の生成物ストリームは、典型的には、改質反応から現れる生成物ストリームよりも水素リッチである。一態様において、この水素富化生成物ストリームを直接または間接的に使用して燃料電池を作動する。
【0038】
第7、8、9、10または11族遷移金属の少なくとも一種類を含有する触媒および/または水性ガスシフト触媒を、必要な時にハウジングから取り外し交換しうる取り外し可能な挿入物の形態で提供してもよい。
【0039】
本発明の方法および器械において用いられる過酸化水素は、いずれの好適な形態であってもよい。要すれば、有機過酸化物と共に使用してもよい。
【0040】
過酸化水素は、純粋な形態で使用されうるが、好ましくは溶液、特に水溶液またはアルコール溶液において使用される。過酸化水素は、更に、ペレット、例えばユリアペレットの形態であってもよい。一般的に、過酸化水素は、過酸化水素少なくとも6vol%、好ましくは過酸化水素8vol%、より好ましくは少なくとも10vol%、更に好ましくは15vol%、更により好ましくは20〜90vol%、例えば、20〜80vol%、最も好ましくは25〜60vol%を含有する水溶液、アルコール溶液またはペレットにおいて使用される。
【0041】
しかしながら、開始時に反応混合物中に存在する水の量が正確に制御されなければならないことがわかった。存在する水(HO分子として測定。) 対 有機化合物中の原子炭素(有機化合物の分子数に各分子中の炭素原子数を乗じて測定。)の比は、0:1〜2:1、好ましくは1.5:1以下、より好ましくは1:1以下、更に好ましくは0.5:1でなければならない。水の量は、例えば、過酸化水素を水溶液の形態で使用しないようにすることによって制御されうる。水溶液の形態である場合、好ましくは、例えば、容積に基づいて過酸化水素少なくとも30vol%、好ましくは少なくとも51vol%、最も好ましくは少なくとも70vol%を含有する、濃溶液の形態である。
【0042】
過酸化水素および有機化合物は、過酸化水素対有機化合物中の原子炭素として測定(上記のように)すると、0.2:1〜6:1、好ましくは0.5:1〜6:1の比において存在する。好ましくは、この比は、0.5:1〜4:1、より好ましくは1:1〜4:1、更に好ましくは1:1〜3:1、最も好ましくは1:1〜2:1である。
【0043】
要すれば、別の溶媒、例えば、水または有機溶媒、が存在してもよい。水は、好ましくは液相において使用される。反応物を液相において接触させ、これは有機化合物と過酸化水素の両方であり、液相である。もちろん、次の反応中、熱の存在のため、一種類以上の反応物が少なくとも部分的に気相であってもよい。要すれば、別のガス(例えば、酸素含有ガス、例えば、空気)が存在してもよい。従って、有機化合物と過酸化水素との反応は、有機化合物と、過酸化水素と、酸素との反応であってもよい。
【0044】
改質反応は、過熱蒸気およびCOと微量のH、O2、CHおよび/またはCOを含有する生成物ストリームを製造しうる。このガス混合物は、水と混合されて好適な蒸気を製造するかまたは、機械ツール、機械もしくは乗物を駆動するためにまたは蒸気タービンもしくは発電機に使用されうる。
【0045】
触媒は、第7、8、9、10または11族遷移金属を含有する。従って、触媒は、Fe、Co、Ni、Cu、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Re、Os、Ir、PtおよびAuの一種類以上を含有する。好ましくは、金属は、周期表の第8、9、10および/または11族から選択される。好適な第8、9、10または11族金属としては、Ni、Co、Cu、Ag、Ir、Au、Pd、Ru、RhおよびPtが挙げられる。金属は、好ましくは白金である。二種類以上の金属の組み合わせが触媒中に存在してもよい。
【0046】
触媒は、好ましくは、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類または別の遷移金属の酸化物一種類以上で促進される。好適な促進剤の例は、金属、酸化物または塩の形態のSn、Ni、Ag、Zn、Au、Pd、Mnおよび別の遷移金属である。触媒を、更に、別の成分、例えば、ホウ素、燐、シリカ、セリウムまたはテルルの一種類以上で変性してもよい。
【0047】
金属は、金属形態または合金形態で使用されうる。触媒として効果的に作用するために、金属は、当業者によく知られているように、望ましくは、粒径の小さな粒子の形態である。触媒は、支持されていなくてもよい。しかしながら、望ましくは、触媒は支持されている。例えば、一態様において、触媒は反応容器またはチューブの側面または不活性粒子支持体に支持されている。例えば、微細ニッケルまたは白金粒子は、FID検出用のGCにおけるメタン化のためのステンレス鋼チューブにおける中間層にめっきされうる。
【0048】
支持体は、所望の反応における触媒を支えうるいずれの支持体であってもよい。そのような支持体は、当業者によく知られている。支持体は、不活性支持体であっても活性支持体であってもよい。好適な支持体の例としては、炭素支持体および/または固体酸化物、例えば、アルミナ、変性アルミナ、スピネル酸化物、シリカ、変性シリカ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、ゼオライト、β−アルミン酸塩および酸化マンガン、酸化ランタンまたはそれらの組み合わせが挙げられる。アルミナまたは変性アルミナは、例えば、α−アルミナ、β−アルミナまたはγ−アルミナでありうる。β−アルミナおよびスピネル酸化物、例えばバリウムヘキサアルミネートが、それらの安定性を考慮して特に有用であることがわかった。炭素は、例えば、活性炭、グラファイトまたはカーボンナノチューブの形態でありうる。モレキュラーシーブ、例えば、ゼオライト、を所望の最終生成物に依存して選択しうる。従って、例えば、孔またはチャネルを備えうる。亜リン酸塩、臭化物、硫化物および/または金属支持体もまた好適でありうる。
【0049】
好ましくは、支持体は、多孔質である。粒径は、望ましくは、0.1μm〜10mm、より好ましくは0.2μm〜0.4mmである。表面積は、望ましくは、1m/g超、好ましくは5m/g超である。支持体一種類または二種類以上の混合物が使用されうる。
【0050】
触媒として用いられる金属は、更に、錯体またはそれらの配合物の形態であってもよい。例は、白金カルボニル錯体、アルミニウム白金ナイトレートおよび白金メトキシ錯体、および配位子(例えば、塩素、ホスフィンまたは有機芳香族種、例えば、ベンゼンまたはシクロペンタジエン)を有する白金錯体、例えば、(CO)CO(CO)Pt(CO)(PPhまたはPt(CO)(PPhである。
【0051】
好ましくは、触媒は、支持触媒、特に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類または別の遷移金属の酸化物少なくとも一種類によって促進される白金含有触媒である。
【0052】
使用前に、触媒は、要すれば、例えば、水素または水素含有ガスで活性化されうる。
【0053】
支持金属触媒を製造しうる方法は、例えば、Catalysis Today、1999年、第51巻、535頁、Catalysis Today、2003年、第77巻、229頁、DE−A−19 841 227、DE−A−3,340,569およびDE−A−3,516,580に記述されている。好適な方法は、例えば、含浸、イオン交換またはゾル−ゲル法である。例えば、支持体(例えば、ジルコニア、アルミナまたはシリカ)を乾燥し、次に、第7、8、9、10または11族遷移金属塩、例えば硝酸塩、例えば、(NHPt(NO、Pd(NO、Cu(NO、Co(NOまたはRu(NO)(NOの溶液で含浸するかまたはその溶液と混合し、乾燥し、(例えば、温度約400℃で)焼成して触媒前駆体を得る。次に、触媒前駆体を、例えば、200℃以上の水素流において、還元する。更に、塩化物塩を使用してもよいが、触媒として使用する前に残留塩化物を完全に除去しなければならない。
【0054】
開始は、望ましくは、室温付近(例えば、約20℃)において行われうる。好ましくは、反応物の加熱や別の開始源の提供をせずに開始を行う。しかしながら、要すれば、熱を提供して、例えば、過酸化物と天然可溶性生成物(例えば、糖、デンプン、小麦粉またはライスフラワー)との反応を促進してもよいが、供給される熱の量はあまり大きくなくてよい。従って、一方または両方の反応物、または反応混合物は、例えば、700℃未満、好ましくは100℃未満、より好ましくは80℃未満、より好ましくは50℃未満、更に好ましくは30℃未満である。
【0055】
更に、反応は、別の触媒の存在下においても行われうる。例えば、改質反応において、CO含量を10ppm未満に減らすために水性ガスシフト触媒および選択的酸化触媒を使用してもよい。そのような場合、H:有機化合物比は、一般的に3未満である。
【0056】
有機化合物と過酸化水素との反応は、多くの用途を有する。例えば、推進力が必要とされる場合(例えば、ロケットに関してまたは衛星操縦に関して)、この有機化合物と過酸化水素との反応を使用しうる。この反応は、更に、例えば、自己触媒開始のためのまたはエンジンに動力を供給するための、熱を発生するために使用されうる。
【0057】
水素を製造するとき、例えば密閉または圧力容器中で反応を行うことによって、利用可能な大気酸素の量を制限することが重要である。
【0058】
水素を製造するとき、水素それ自身を別の方法(例えば、燃料電池)において使用しうる。望ましくは、本発明の方法を、燃料電池においてまたは燃料電池に関連して行い、水素を次の反応に提供するかまたは(例えば、エアバッグをふくらませる用途に関して)ガスおよび/または熱のすばやい発生を提供するか、機械装置、例えば液圧応用機械もしくはリフトに圧力をかけるか、または触媒排ガスコンバータもしくはNO清浄器の迅速な始動のためにか、またはモーターの駆動のためにか、電気を発生させるためにか、または消毒もしくは汚染除去のために使用しうる。
【実施例】
【0059】
これから、本発明を更に以下の実施例に記述する。
【0060】
触媒製造の詳細は以下の通りである。
【0061】
支持体、例えば、ZrO2(Saint Gobain Norpro)、γ−Al(Akzo−Nobel)、シリカ(Aldrich)、MCM−41(水熱法を使用して自己生産)、αアルミナ(Synetix)を最初に100℃において乾燥し、次に等容積1M NaOH溶液に含浸し、100℃において2時間乾燥し、600℃において4時間焼成して変性支持体を得る。これらを次に(NHPt(NO、Pd(NO、Cu(NO、またはRu(NO)(NOの溶液または混合溶液に周囲条件下において含浸し、100℃において乾燥し、次に400℃において焼成して触媒前駆体を得る。触媒を改質反応に使用する前に、触媒前駆体を水素流で200℃以上において1時間還元する。改質反応において、この触媒を水性ガスシフト触媒の触媒層上に加え(laod)てCO濃度を減らす。触媒を最初に水素流(8ml/分)を使用して2℃/分の速度において300℃まで加熱し、1時間保持し、次に水素流中で室温に冷却して還元する。
【0062】
以下の実施例において言及する有機化合物と過酸化水素水溶液との予備混合物をガラスフラスコ中に貯蔵し、次に、上記のように製造される改質触媒0.1gの層および水性ガスシフト触媒(CuZnAlO(0.2g))の下層を含む9mm(外径)石英反応器に液体を0.2ml/分の速度でポンピングする。この液体が触媒に接触すると、ガスが自発的に製造される。
【0063】
実施例1
蟻酸と過酸化水素との混合物を2wt%Pt/NaO/ZrO 0.1gにポンピングする(CHOOH/H/HO=1:0.6:0.4;流速:0.2ml/分;室温において開始)。水素ガスが直ちに製造され、触媒床の温度は150℃〜250℃に上昇し、外部加熱なしにこの範囲に維持される。
【0064】
生成物の分析は、水、水素、二酸化炭素および一酸化炭素を生成物として示す。水素収率は99.8%超である。蟻酸転化率は100%である。
【0065】
実施例2
酢酸と過酸化水素との混合物を2wt%Pt/ZrO 0.1gにポンピングする(CHCOOH/H/HO=1:2:0.8;流速:0.2ml/分;室温において開始)。水素ガスが直ちに製造され、触媒床の温度は250℃〜300℃に上昇し、外部加熱なしにこの範囲に維持される。
【0066】
生成物の分析は、水、水素、一酸化炭素、メタンおよび二酸化炭素を生成物として示す。水素収率は99.5%超である。COのうちいくつかはNaOH溶液コンデンサによって吸着される。
【0067】
実施例3
エタノールと過酸化水素との混合物を2wt%Pt/ZrO 0.1gにポンピングする(CHCOOH/H/HO=1:2:0.8;流速:0.2ml/分;室温において開始)。水素ガスが直ちに製造される。定常状態における温度は約600℃であり、外部加熱なしにおよそこの温度に維持される。
【0068】
主生成物は水素および二酸化炭素である。水素収率は95%である。製造される微量のオレフィンとメタンとが存在する。
【0069】
実施例4
エタノールと過酸化水素との混合物を1wt%Pt/Al 0.1gにポンピングする(CHCHOH/H/HO=1:2.5:1.1;流速:0.2ml/分;室温において開始)。水素ガスが直ちに製造され、定常状態における温度は約580℃であり、外部加熱なしにおよそこの温度に維持される。
【0070】
主生成物は、水素および二酸化炭素である。水素収率は94%である。製造される微量のオレフィンとメタンとが存在する。
【0071】
実施例5
エタノールと過酸化水素との混合物を0.9wt%Pt0.2Pd/0.5NaO/ZrO 0.1gにポンピングする(CHCHOH/H/HO=1:3:1.2;流速:0.2ml/分;室温において開始)。水素ガスが直ちに製造され、定常状態における温度は約520℃であり、外部加熱なしにおよそこの温度に維持される。
【0072】
主生成物は、水素および二酸化炭素である。水素収率は92%であり、エタノール転化率は96%である。製造される微量のオレフィンとメタンとが存在する。
【0073】
実施例6
アルデヒドと過酸化水素との混合物を0.9wt%Pt/5.6CuO/ZrO 0.1gにポンピングする(CHCHO/H/HO=1:2.6:1.2;流速:0.15ml/分;室温において開始)。水素ガスが直ちに製造される。定常状態における温度は約600℃であり、外部加熱なしにおよそこの温度に維持される。
【0074】
主生成物は、水素および二酸化炭素である。水素収率は92%であり、アルデヒド転化率は93%である。製造される微量のオレフィンとメタンとが存在する。
【0075】
実施例7
エタノールと過酸化水素との混合物を1.5wt%Pt/2.5NaO/ZrO 0.1gにポンピングする(CHCHO/CHCOOH/H/HO=1:0.5:2:1;流速:0.2ml/分;室温において開始)。水素ガスが直ちに製造される。定常状態における温度は約540℃であり、外部加熱なしにおよそこの温度に維持される。
【0076】
主生成物は、水素および二酸化炭素である。水素収率は90%であり、エタノール転化率は91%である。製造される微量のオレフィンとメタンとが存在する。
【0077】
実施例8
メチルエチルエーテルと過酸化水素との混合物を2wt%Pt/α−Al 0.09gにポンピングする(CHCHOCH/H/HO=1:3:1.2;流速;0.2ml/分;室温において開始)。水素ガスが直ちに製造される。定常状態における温度は約540℃であり、外部加熱なしにおよそこの温度に維持される。
【0078】
主生成物は、水素および二酸化炭素である。水素収率は85%であり、メチルエチルエーテル転化率は90%である。製造される微量のオレフィンとメタンとが存在する。
【0079】
実施例9
エタノールとオクタンとの混合物(ガソリンに相当)および過酸化水素を3wt%Pt/KO変性ZrO 0.1g上にポンピングする(CHCHOH/オクタン/H/HO=1:0.07:4:1.8;流速:0.3ml/分;室温において開始)。水素ガスが直ちに製造される。定常状態における温度は約900℃であり、外部加熱なしにおよそこの温度に維持される。
【0080】
主生成物は、水素および二酸化炭素である。水素収率は85%であり、エタノール転化率は99.5%である。オクタン転化率は98%である。製造される微量のオレフィンとメタンとが存在する。
【0081】
実施例10
エタノール、アセトン、およびセタン(ディーゼルに相当)および過酸化水素を2wt%Pt/2.5wt%NaO変性γAl 0.1g上にポンピングする(CHCHOH/アセトン/セタン/H/HO=1:0.2:0.05:4.6:2.1;流速:0.3ml/分;室温において開始)。水素ガスが直ちに製造される。定常状態における温度は約820℃であり、外部加熱なしにおよそこの温度範囲に維持される。
【0082】
主生成物は、水素および二酸化炭素である。水素収率は95.5%であり、エタノール転化率は99.5%である。セタン転化率は97.8%である。製造される微量のオレフィンとメタンとが存在する。
【0083】
実施例12
エタノールと酢酸と過酸化水素との混合物を1.2wt%Pt0.4wtRu/SiO上に室温において開始してポンピングする。CHCHOH/CHCOOH/H/HO=1:0.4:3.5:1.2。室温において開始。水素ガスが直ちに製造される。定常状態における温度は約550℃であり、外部加熱なしにおよそこの温度に維持される。
【0084】
主生成物は、水素および二酸化炭素である。水素収率は97%であり、エタノール転化率は94%である。酢酸転化率は99.5%である。
【0085】
以下の実施例13〜15において、製造される触媒とサンプルとは以下の通りである:
乾燥支持体、γアルミナおよびZrO2それぞれ1gを2&Pt水溶液((NHPt(NO由来のPt)1mlに浸漬し、2時間静置し、過剰の水を気化し、次に500℃において2時間焼成する。支持PtO触媒前駆体を得る。このPtO/AlおよびPtO/ZrOを15ml/分のH流中、2℃/分において400℃まで加熱して還元した。次に、この触媒0.1gをシリカウールで栓をした9mm(外径)石英チューブに加える。
特定量のグルコースを70%H/HO中に溶解して70%H/HO中の25%、30%、50%糖溶液を得る。次に、室温において、この糖/0H溶液を、H−還元触媒を加えた石英チューブにポンピングする。ガス生成物をAutosystem GCを使用して分析した。
【0086】
実施例13
グルコース25%、H 53%および水12%からなるグルコースと過酸化水素との溶液を2Pt/γAl 0.1g上に液体流速0.2ml/分において室温において開始してポンピングする。定常速度における温度は約500℃であり、外部加熱なしにおよそこの温度に維持される。水素収率は85%であり、一酸化炭素収率は15%であり、二酸化炭素収率は85%である。
【0087】
実施例14
グルコース35%、H 46%および水19%からなるグリコースと過酸化水素との溶液を2Pt/γAl 0.1g上に液体流速0.2ml/分において室温において開始してポンピングする。定常速度における温度は約450℃であり、外部加熱なしにおよそこの温度に維持される。水素収率は85%であり、一酸化炭素収率は20%であり、二酸化炭素収率は78%である。
【0088】
実施例15
グルコース30%、H 50%および水20%からなるグルコースと過酸化水素との溶液を2Pt/γAl 0.1g上に液体流速0.2ml/分において室温において開始してポンピングする。定常速度における温度は約350℃であり、外部加熱なしにおよそこの温度に維持される。水素収率は60%であり、一酸化炭素収率は50%であり、いくつかのOが製造される。
【0089】
実施例16
Pt/Al(Ptは(NH)Pt(NO由来、4wt%、粒径:0.2mm)0.2gを9mm(外径)石英チューブ反応器に加える。H(38wt%/HO(30wt%)/と可溶性デンプン(32wt%)との混合物をこのチューブに供給する。一旦反応物が触媒床に接触すると、触媒床温度が150℃に上昇し、H、COおよびCOを含有するいくつかのガスが製造される。2時間の反応後、触媒床はいくつかの炭素付着物を有し、ガス流中にいくつかの酸素が存在する。
【0090】
実施例17
PtPd/Al触媒(0.1g、2wt%Pt、3wt%Pd)を9mm石英チューブに加え、H(43wt%)/HO(15wt%)と加熱小麦粉(42wt%)との混合物をこの触媒に0.15ml/分の速度でポンピングする。液体が触媒に接触すると、ガスが製造され、このガスはOであると分析される。触媒床を120℃に加熱し、外部加熱源を除去すると、Hが60ml/分の速度で製造される。
【0091】
実施例18
還元5wt%Pd/Al 50mg(アルミナ上にPd(NOを浸漬することにより製造)を6mm(外径)石英チューブに加え、直立させる。56wt%H/24wt%HO/20wt%可溶性デンプンの液体混合物を反応に供給し、触媒床に上向きに流す。一旦液体混合物が触媒床に接触すると、蒸気およびCOが製造され、触媒床温度が850℃に上昇する。
【0092】
実施例19
70wt%/HO(30グラム)を小麦粉4グラムと混合し、撹拌し、100℃に加熱して流動性スラリーを形成する。次に、このスラリーを、シリカチューブに加えられた2wt%Pt/ZrO 100gを含む触媒床にポンピングする。液体混合物がチューブに接触すると、いくつかの酸素が製造され、温度はたったの60℃である。触媒床を200℃に加熱し、次に外部加熱源を除去すると、触媒床は赤色になり、蒸気およびCOが主生成物である。触媒床温度は700℃に達する。
【0093】
実施例20
50%/HO(50g)を糖4.6gと混合し、透明の溶液を形成する。この溶液を、1wt%Pd、2wt%Pt/ZrO(Hで500℃において2時間還元)0.2gを含む触媒床にポンピングする。一旦液体が触媒に接触すると、触媒床が赤色になる。温度は568℃に達し、主生成物は蒸気およびCOである。
【0094】
実施例21
蟻酸と過酸化水素との混合物を2wt%Pt/NaO/ZrO 0.1gにポンピングする(CHOOH/H/HO=1:1:2(モル比);流速=0.2ml/分;室温において開始)。熱蒸気とCOとの混合物がこのガスストリーム中CO濃度40wt%以下で直ちに製造され、触媒床の温度が150℃〜405℃に上昇し、外部加熱なしにこの範囲内に維持される。
【0095】
生成物の分析は、水、水素、二酸化炭素および一酸化炭素を生成物として示す。水素収量は99.8%超である。蟻酸転化率は100%である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化水素と有機化合物とを触媒存在下において液相中で接触させる工程を包含する、過酸化水素と有機化合物との反応開始方法であって、
a) 該有機化合物が、アルコール、炭水化物、アルデヒド、ケトン、カルボン酸またはエーテルであり;
b) 該触媒が、第7、8、9、10または11族遷移金属の少なくとも一種類を含有し;
c) H:該有機化合物中の原子炭素の比が、0.2:1〜6:1であり;かつ
d) 存在する全ての水:該有機化合物中の原子炭素の比が、0:1〜2:1であり;
但し、該有機化合物がメタノールであったりメタノールを含有したりしない、過酸化水素と有機化合物との反応開始方法。
【請求項2】
該金属が、ニッケル、コバルト、銅、銀、イリジウム、金、パラジウム、ルテニウム、ロジウムおよび白金の一種類以上から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該金属が白金である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該金属が金属の形態である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
該触媒が一種類以上の触媒前駆体を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
該過酸化水素が、過酸化水素少なくとも20vol%、好ましくは過酸化水素少なくとも30wt%を含有する水溶液、過酸化水素少なくとも6vol%を含有するアルコール溶液またはユリアペレットの形態である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
該過酸化水素が、過酸化水素少なくとも51vol%を含有する水溶液の形態である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
該過酸化水素が、過酸化水素少なくとも70wt%を含有する水溶液の形態である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
該過酸化物と該有機化合物との反応が、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、エタンおよび酸素の少なくとも一種類を製造する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
該H:該有機化合物中の原子炭素の比が0.5:1〜4:1、好ましくは1:1〜4:1である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
該H:該有機化合物中の原子炭素の比が1:1〜3:1である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
該有機化合物が、炭素原子数2〜6のアルコールまたは炭素原子数1〜6のアルデヒド、ケトン、カルボン酸もしくはエーテルである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
該有機化合物がエタノールである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
該有機化合物が、糖、デンプン、セルロース、フラワーもしくはガムまたはそれらの混合物である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
該糖が、グルコース、スクロース、フルクトースまたはマルトースである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
該反応が、
CHCHOH+H+HO→5H+2CO
CHCHOH+3H→2CO+3HO+3H
CHCHOH+2H→2CO+2HO+3H
CHCHOH+H→HO+2CO+3H
HCOOH+H→2HO+CO
HCOOH+0.5H→0.5H+CO+1.5H
2CHCOOH+H→2CO+2HO+H
3CHCOOH+H→3CO+2HO+2H
4CHCOOH+H→4CO+2HO+3H
CHCOOH+H→CO+2H+HO+CO
2CHCOOH+H→2CO+4H+2CO
CHCOOH+2H→CO+H+3HO+CO
CHCOOH+4H→2CO+6H
CHOCH+H→2CO+3H+H
CHOCH+H→CO+4H+CO
CHOCH+2H→CO+3H+HO+CO
CHOCH+3H→3H+2HO+2CO
CHOCH+4H→2H+4HO+2CO
2CHO+H→CO+CO+HO+2H
2CHO+H→2CO+3H
CHO+H→CO+HO+H
CHCHO+H→CO+CO+3H
CHCHO+2H→2CO+HO+3H
CHCHO+2H→CO+CO+2HO+2H
CHCHO+3H→2CO+3HO+2H
CHCHO+4H→2CO+5HO+H
CHCHO+5H→2CO+7H
12+12H→18HO+6CO
12+11H→H+16HO+6CO→17HO+CO+5CO
12+10H→2H+14HO+6CO→15HO+CO++H+5CO
12+9H→3H+12HO+6CO→13HO+CO+
2H+5CO
12+81H→4H+1OHO+6CO→11HO+CO+3H+5CO
12+71H→5H+8HO+6CO→9HO+CO+
4H+5CO
12+61H→6H+6HO+6CO→7HO+CO+
5H+5CO
12+51H→7H+4HO+6CO→5HO+CO+
65H+5CO
12+41H→8H+2HO+6CO→3HO+CO+
7H+5CO
12+31H→9H+6HO+6CO→HO+CO+8H+5CO
の少なくとも一種類を包含する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
該開始が、200℃未満、好ましくは80℃未満の温度において行われる、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
該開始が、30℃未満の温度において行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
該開始が、室温付近またはそれ未満において行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
該開始が、反応物の加熱なしに行われる、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
該存在する全ての水:該有機化合物中の原子炭素の比が0:1〜1.5:1である、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
該存在する全ての水:該有機化合物中の原子炭素の比が0:1〜1:1である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
該有機化合物がエタノールであり、該存在する全ての水:該エタノール中の原子炭素の比が0:1〜1:1、好ましくは0:1〜0.5:1である、請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
該有機化合物が酢酸または蟻酸であり、該存在する全ての水:該エタノール中の原子炭素の比が0:1〜1.5:1、好ましくは0:1〜0.5:1である、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
該反応が開始後に継続される、請求項1〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
該反応が改質反応であり、二酸化炭素、水素および任意に一酸化炭素を含有する生成物ストリームを製造するかまたは該反応が、CO、O、Hおよび/またはCOの少なくとも一種類と共に蒸気およびCOを主生成物として含有する生成物ストリームを製造する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
該生成物ストリームを水の存在下で水性ガスシフト触媒に接触させることによって、製造される全ての一酸化炭素を二酸化炭素に転化する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
燃料電池中で行い、ロケットの動力を供給するか、エアバッグをふくらませるか、機械装置に圧力をかけるかまたは触媒排ガスコンバータもしくはNOx清浄器を迅速に始動する、請求項1〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
過酸化水素および有機化合物を含む貯蔵手段であって、該有機化合物がアルコール、炭水化物、アルデヒド、ケトン、カルボン酸またはエーテルであり、但し、該有機化合物がメタノールであったりメタノールを含有したりしない、貯蔵手段;
第7、8、9、10または11族遷移金属触媒の少なくとも一種類を含むハウジング;および
該過酸化物および有機化合物をハウジングの中に導入する手段
を備える、改質反応を行う器械。
【請求項30】
該ハウジングが白金含有触媒を含む、請求項25に記載の器械。
【請求項31】
該ハウジングが、該白金含有触媒の下流に配置される水性ガスシフト触媒を更に含む、請求項29または30に記載の器械。
【請求項32】
更に、該ハウジングの下流に燃料電池を備え、かつ該ハウジング中で製造される全ての水素を該燃料電池に移動する手段を備える、請求項29〜30のいずれか一項に記載の器械。

【公表番号】特表2009−502723(P2009−502723A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524578(P2008−524578)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002822
【国際公開番号】WO2007/015070
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(500056231)アイシス・イノベーション・リミテッド (17)
【氏名又は名称原語表記】ISIS INNOVATION LIMITED
【Fターム(参考)】