説明

過酸化水素の定量方法および定量装置

【課題】試料溶液中の過酸化水素濃度を、正確に、かつ連続して定量できる過酸化水素の定量方法と過酸化水素の定量装置を提供する。
【解決手段】過酸化水素を含む試料溶液を、白金を担持した過酸化水素分解触媒と接触させた後の処理液中の溶存酸素濃度を光酸素センサで測定し、その溶存酸素濃度から前記試料溶液中の過酸化水素濃度を定量する過酸化水素の定量方法。また、前記方法において、前記試料溶液中の溶存酸素を過酸化水素分解前に測定すると、精度が向上する。さらに過酸化水素を含む試料溶液を、光酸素センサに供給して前記試料溶液中の溶存酸素濃度を測定後、切替手段によって、前記溶液を、白金を担持した過酸化水素分解触媒と前記試料溶液接とを接触させた後、その処理液中の溶存酸素濃度を前記光酸素センサで測定し、前記光酸素センサにより得られた両者の溶存酸素濃度から、前記試料溶液中の過酸化水素濃度を定量することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過酸化水素を含む試料溶液中の過酸化水素濃度を測定する過酸化水素の定量方法、およびその定量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
過酸化水素は、その優れた酸化作用により、食品、医薬品、紙パルプ、繊維、および電子工業などで、洗浄剤や漂白剤、殺菌消毒剤等として利用されている。特に、半導体や液晶製造工場等では、電子部品の洗浄や製造プラントの殺菌消毒処理のために使用されている。また、水処理分野では、被処理物質の処理のために、オゾン等の酸化剤が使用される結果、副生物として過酸化水素が発生し、後処理工程における悪影響を防ぐために過酸化水素を分解、消失させる必要が生じる。特に、この処理水が放流水として系外に放出される際には、含有される過酸化水素を完全に分解処理する必要がある。
このような用水や排水を扱う水処理分野では、過酸化水素の濃度を連続的に、かつ正確に把握して、管理しなければならない必要性が高い。
【0003】
過酸化水素の濃度を測定する方法として、従来、ヨウ素滴定法や硫酸チタン、過マンガン酸による吸光光度法が知られている。しかし、これらの方法は連続測定には不向きで、感度も十分ではなかった。
そこで、酵素を用いた発光法による過酸化水素の測定法(特許文献1)や、紫外線分光分析による過酸化水素の測定法(特許文献2)、検体水中の過酸化水素を溶存酸素に分解し、検体水中の過酸化水素濃度を演算する方法(特許文献3)、などが提案されている。
特許文献1記載の発明方法は、過酸化水素と反応して発光する化学発光物質を含むサンプル溶液を触媒酵素の存在下で反応させて、過酸化水素濃度に比例する化学発光量を光センサで検出するようにしたもので、化学発光物質としてルミノールを、触媒酵素としてペルオキシダーゼを用いた過酸化水素センサを使用している。
一方、特許文献2記載の方法は、過酸化水素と過酸化水素の濃度測定を妨害する成分とを含む試料溶液中の過酸化水素の濃度を、前記試料溶液の紫外線の透過光量と、前記試料溶液から、過酸化水素を所定量分解除去した紫外線の透過光量との比から推定して測定するものである。
この特許文献2の記載では、試料溶液槽と過酸化水素の分解槽と三方切替弁を有し、分解槽には過酸化水素分解触媒であるコイル状の白金線が配設されている。この分解槽には振動モータも付設され、過酸化水素分解を促進する。過酸化水素の濃度減衰試料は分解槽で、例えば10分間保持して調製され、三方切替弁で試料溶液と適宜切り替えて、分光分析器に供給される。
特許文献3の記載の方法は、水処理プロセスからの検体水を有する過酸化水素分解部と溶存酸素測定部に通液し、検体水中の過酸化水素濃度を演算するものである。
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の方法では、過酸化水素の測定が酵素を含む膜内での酵素反応に起因しているため、過酸化水素量に対する発光光量が温度等によって影響を受ける酵素活性によって変化したり、化学発光物質を被測定対象となる試料溶液に所定量含有させる必要があるため、測定は必然的にバッチ式となり、安定した測定が困難である等の理由のため、特に多量の試料溶液中の過酸化水素を常時モニターするような用途には適さなかった。
特許文献2記載の方法についても、上記紫外線による分光測定方法では、紫外領域で広帯域の光源、すなわち大型で高電圧が必要な放電管(水銀ランプ、キセノンランプなど)と電源が必要なため、また、紫外線の分光計測装置は、波長が短いために波面収差を小さくするためには、可視光と比較して波長の比率の分だけ、高精度で紫外線透過率に優れた光学部品を使用する必要があるため、装置が大型化、重量化、および高価格化してしまう。加えて、紫外線による分光測定方法では、試料溶液中の妨害物質の吸光スペクトルが過酸化水素の吸光スペクトルに被っている場合が多いため、過酸化水素濃度を正確に測定できないという問題があった。
いずれの方法も、特に、多量の試料溶液中の過酸化水素を常時連続してモニタリングする用途には適さなかった。
一方、特許文献3記載の方法は、検体水の過酸化水素濃度を自動化できる方法であるが、溶存酸素測定手段としては、公知の溶存酸素計により構成される旨の記載がある。このような公知の溶存酸素計では常にメンテナンスを十分しておかないと、すぐに誤差が発生する。従って、測定自体は自動化できても、装置のメンテナンスが大変になる可能性がある。
さらに、特許文献3記載の過酸化水素分解手段についても、金属触媒(Ptなど)の例示はあるが、活性炭や合成吸着材が特に好適である旨記載されているが、これらの材料では活性が十分でないため、大量の材料を必要としたり、交換頻度が増えたりする可能性がある。
【0005】
【特許文献1】特開平2-86798号公報
【特許文献2】特開2002-139430号公報
【特許文献3】特開2005-274386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
試料溶液中の過酸化水素濃度を、正確に、迅速に、かつ必要に応じて、連続して定量することができる過酸化水素の定量方法、および過酸化水素の定量装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明方法に想達し、当該目的を達成し得ることを見出したものである。
すなわち、本発明は、以下を要旨とするものである。
1.過酸化水素を含む試料溶液を、白金を担持した過酸化水素分解触媒と接触させた後の処理液中の溶存酸素濃度を光酸素センサで測定し、その溶存酸素濃度から前記試料溶液中の過酸化水素濃度を定量することを特徴とする過酸化水素の定量方法。
2.過酸化水素を含む試料溶液中の溶存酸素濃度と、白金を担持した過酸化水素分解触媒を前記試料溶液と接触させた後の処理液中の溶存酸素濃度とを、それぞれ光酸素センサで測定し、前記光酸素センサにより得られた両者の溶存酸素濃度から、前記試料溶液中の過酸化水素濃度を定量することを特徴とする過酸化水素の定量方法。
3.過酸化水素を含む試料溶液を、光酸素センサに供給して前記試料溶液中の溶存酸素濃度を測定後、切替手段によって、前記試料溶液と白金を担持した過酸化水素分解触媒とを接触させた後、その処理液中の溶存酸素濃度を前記光酸素センサで測定し、前記光酸素センサにより得られた両者の溶存酸素濃度から、前記試料溶液中の過酸化水素濃度を定量することを特徴とする過酸化水素の定量方法。
4、前記試料溶液を脱気した後、前記過酸化水素分解触媒と接触させる上記1〜3のいずれかに記載の過酸化水素の定量方法。
5.前記白金が、保護コロイド形成剤を0〜200質量ppm含む上記1〜4のいずれかに記載の過酸化水素の定量方法。
6.前記白金が、白金ナノ粒子である上記1〜5のいずれかに記載の過酸化水素の定量方法。
7.前記白金ナノ粒子が、体積平均粒径1〜50nmの粒子である上記6記載の過酸化水素の定量方法。
8.過酸化水素分解触媒が、アニオン交換基を持つ表面に白金を担持したものである上記1〜7のいずれかに記載の過酸化水素の定量方法。
9.前記光酸素センサが、可視光で励起し、蛍光又は燐光で溶存酸素を検出するものである上記1〜8のいずれかに記載の過酸化水素の定量方法。
10.前記過酸化水素を含む試料溶液が連続的に供給されて、過酸化水素濃度が連続的に定量される上記1〜9のいずれかに記載の過酸化水素の定量方法。
11.過酸化水素を含む試料溶液供給手段と、白金を担持した過酸化水素分解触媒を充填した過酸化水素分解槽と、光酸素センサによる溶存酸素測定手段と、前記光酸素センサによる溶存酸素測定手段で測定された溶存酸素濃度から試料溶液中の過酸化水素濃度を演算する演算手段と、前記試料溶液供給手段からの試料溶液を前記過酸化水素分解槽に供給する手段と、前記過酸化水素分解槽からの処理液を前記光酸素センサによる溶存酸素測定手段に供給する手段と、を具備することを特徴とする過酸化水素濃度の定量装置。
12.過酸化水素を含む試料溶液供給手段と、光酸素センサによる溶存酸素測定手段Aと、白金を担持した過酸化水素分解触媒を充填した過酸化水素分解槽と、光酸素センサによる溶存酸素測定手段Bと、前記光酸素センサによる溶存酸素測定手段A、Bで測定された各溶存酸素濃度から、前記試料溶液中の過酸化水素濃度を演算する演算手段と、前記試料溶液供給手段からの試料溶液を前記光酸素センサによる溶存酸素測定手段Aに供給する手段と、前記溶存酸素測定手段Aからの流出液を前記過酸化水素分解槽に供給する手段と、前記過酸化水素分解槽からの処理液を前記光酸素センサによる溶存酸素測定手段Bに供給する手段と、を具備することを特徴とする過酸化水素濃度の定量装置。
13.白金を担持した過酸化水素分解触媒を充填した過酸化水素分解槽と、光酸素センサによる溶存酸素測定手段と、過酸化水素を含む試料溶液を前記光酸素センサによる溶存酸素測定手段、または前記白金担持触媒を充填した過酸化水素分解槽のいずれかに供給可能とされた切替手段を有する試料溶液供給手段と、前記白金担持触媒を充填した過酸化水素分解槽からの処理液を前記光酸素センサによる溶存酸素測定手段に供給する手段と、前記光酸素センサによる溶存酸素測定手段で測定された溶存酸素濃度と、前記白金担持触媒を充填した過酸化水素分解槽からの処理液を前記光酸素センサによる溶存酸素測定手段で測定された溶存酸素濃度とから、前記試料溶液中の過酸化水素濃度を演算する演算手段と、を具備する過酸化水素濃度の定量装置。
14.前記過酸化水素分解槽が、脱気装置を前置したものである上記11〜13のいずれかに記載の過酸化水素濃度の定量装置。
15.前記白金が、保護コロイド形成剤を0〜200質量ppm含む上記11〜14のいずれかに記載の過酸化水素濃度の定量装置。
16.前記白金が、白金ナノ粒子である上記11〜15のいずれかに記載の過酸化水素濃度の定量装置。
17.前記白金ナノ粒子が、体積平均粒径1〜50nmの粒子である上記16記載の過酸化水素濃度の定量装置。
18.過酸化水素分解触媒が、アニオン交換基を持つ表面に白金を担持したものである上記11〜17のいずれかに記載の過酸化水素濃度の定量装置。
19.前記光酸素センサが、可視光で励起し、蛍光又は燐光で溶存酸素を検出するものである上記11〜18のいずれかに記載の過酸化水素濃度の定量装置。
20.前記過酸化水素を含む試料溶液が連続的に供給されて、過酸化水素濃度が連続的に定量される上記11〜19のいずれかに記載の過酸化水素濃度の定量装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、試料溶液中の過酸化水素濃度を、正確に、迅速に、かつ、必要に応じて連続的に定量することができる過酸化水素の定量方法、および過酸化水素の定量装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明においては、できるだけ高い過酸化水素分解能力を持ち、不純物の混入、溶出のない材料を最適な形態で用いると共に、過酸化水素の分解によって発生した酸素のみを測定するようにしたもので、白金を担持した触媒を用いて試料溶液中の過酸化水素を分解し、そのとき発生した溶存酸素を光酸素センサで測定して、試料溶液中の過酸化水素濃度を定量するものであり、以下に本発明の過酸化水素濃度の定量方法および装置を、図1〜4を用いて説明する。
先ず図1は、光酸素センサを2台使用した本発明の一実施態様を示すフロー図であり、光酸素センサAによる溶存酸素測定手段10(以下、単に光酸素センサAと言うことがある。)と、過酸化水素を含む試料溶液を前記光酸素センサAに供給する手段(以下、単に試料溶液供給手段と言うことがある。)3と、白金担持触媒を充填した過酸化水素分解槽(以下、単に過酸化水素分解槽と言うことがある。)2と、光酸素センサBによる溶存酸素測定手段10(以下、単に光酸素センサBと言うことがある。)と、前記光酸素センサAからの流出液を前記過酸化水素分解槽2に供給する手段(以下、単に流出液供給手段と言うことがある。)4と、前記過酸化水素分解槽2からの処理液を前記光酸素センサBに供給する手段(以下、単に処理液供給手段と言うことがある。)5と、前記光センサAおよびBにより測定された溶存酸素濃度から、前記試料溶液中の過酸化水素濃度を演算する演算手段(図示せず)と、を具備する。なお、光酸素センサBからの流出液は、試料溶液排出手段6によってこの測定系から排出される。
【0010】
次に図2は、本発明の他の実施態様を示すフロー図である。なお、図3および図4においては、共通部材には同一番号を付してある。
図2は、図1に示したような光酸素センサを2台設置する代わりに、試料供給手段に切替手段を配して、光酸素センサ1台で測定することができるようにしたフローを示す。
すなわち、過酸化水素を含む試料溶液を、光酸素センサCによる溶存酸素測定手段10(以下、単に酸素センサCと言うことがある。)に供給する配管3aと、前記過酸化水素分解槽2に供給する配管3bとを設け、かつ、配管3a、3bにそれぞれ切替手段8、9を設けた試料溶液供給手段3と、前記過酸化水素分解槽2からの処理液を、処理液供給手段5により前記酸素センサCに供給するようになされたものである。
このフローによれば、先ず切替弁8を開、切替弁9を閉として、試料溶液を光酸素センサCに供給し、前記試料溶液中の溶存酸素を測定後、前記切替弁8を閉、切替弁9を開として試料溶液の流路を切り替え、過酸化水素分解槽2に供給し、そこで過酸化水素を分解して酸素を発生させた後、その処理液を処理液供給手段5により前記光酸素センサCに供給して前記過酸化水素の濃度を測定することができる。
ここで、図2では、過酸化水素分解槽2に設けられた処理液供給手段5は、前記配管3aに合流するように示されているが、直接光酸素センサCと連結するようにしても良い。また、図2では、切替弁2個を有する切替手段が示されているが、それに限られず、例えば、三方弁1個を用いた切替手段を採用しても良い。
図2のフローを採用すれば、光酸素センサは1台だけ使用すれば良く、より経済性に優れる。
なお、本発明において、各手段の通液速度等が異なる場合には、溶液の調整槽を設ければ良いが、図1、図2においては図示していない。
なお、本発明では、上記の過酸化水素分解触媒と接触させる前に、試料溶液を脱気装置(図示せず。)で脱気すると、測定精度を高めることができるので、好ましい。
このような脱気装置としては、窒素ガスパージ脱気装置、減圧蒸留装置、および膜式脱気装置などを挙げることができる。
【0011】
本発明における過酸化水素を含む試料溶液は、過酸化水素濃度を測定、またはモニタリングしたい溶液であれば、特に限定されないが、例えば、食品、医薬品、紙パルプ、繊維、および電子工業などで使用される過酸化水素を含む洗浄剤、漂白剤、および殺菌消毒剤等が挙げられる。特に、半導体や液晶製造工場で使用される純水や、超純水、排水処理場、下水処理場における処理水や放流水などが挙げられる。これらのうち、本発明は、連続的にモニタリングする必要のある溶液系を対象とする過酸化水素定量手段として、好適に用いられる。
【0012】
本発明では、このような過酸化水素を含む対象溶液系から、一部の試料溶液をサンプリングして本発明における光酸素センサや過酸化水素分解槽に供給する。このような試料溶液供給手段3としては、任意の手段を採用すれば良く、市販のサンプリング装置を採用することができる。また、この試料溶液供給手段3には定量ポンプを備え、一定流量の試料溶液を前記測定手段や過酸化水素分解槽に供給するようにする。
【0013】
サンプリングされた試料溶液は、光酸素センサAまたはCに供給されるが、この光酸素センサAまたはCによる溶存酸素の測定は、過酸化水素濃度の測定精度を上げるため、試料溶液中にすでに含まれている溶存酸素を検出するものであり、予め、溶存酸素がまったく含まれていないか、または溶存酸素量が既知の場合には、特に行う必要がなく、図2の場合には、直接過酸化水素分解槽2に供給し、その後、光酸素センサCにより溶存酸素を測定すれば良い。
以上の説明で、光酸素センサA、BおよびCは、いずれも可視光で励起し、蛍光又は燐光で溶存酸素を検出できるものが好ましい。また、光酸素センサAおよびBは同一物を採用することが好ましい(以下、光酸素センサA、BおよびCをまとめて光酸素センサ1と言うことがある。)。
これに対して、従来の電気化学の酸素センサを使用すると、装置の立上げ時に平衡状態に達するまでに時間がかかる、流量の制御が難しいなどの理由で測定誤差が大きくなってしまう。
【0014】
可視光で励起し、蛍光又は燐光で溶存酸素を検出できる光酸素センサ1としては、以下のものが例示される。
I.ガラス等の基材上に、酸素センシング材料として、アミノ基を有する疎水性官能基と親水性官能基を有するシランカップリング剤を含む第1層と、ポルフィリン等の脂溶性の機能性物質を含有する乾燥ゲルからなる第2層とを、この順で備えた酸素センサ(特開2006-189271号公報を参照)。
II.ガラス等の基材上に、酸素センシング材料として、ポルフィリン化合物を含むアルキル基またはアリール基を有するシランアルコキシドの加水分解・重合膜を備える光学式酸素センサーチップを装備した酸素センサ(特開2008-14896号公報を参照)。
III.酸素センシング材料として、ルテニウム錯体をゴムやプラスチックに分散させた光学式酸素センサ(特開2002−501363号公報を参照)。
IV.酸素センシング材料として、ルテニウム錯体をシランアルコキシド加水分解・重合物に分散させた光学式酸素センサ(Effect of Processing Temperature on the Oxygen Quenching Behavior of Tris(4,7' - diphenyl - 1,10' - phenanthroline)Ruthenium(II) Sequestered Within Sol-Gel-Derived Xerogel Films. Journal of Sol-Gel Science and Technology 1771-82 2000を参照)。
本発明においては、前記試料溶液をバッチ式でも連続式でも測定可能であるが、特に上記に例示した酸素センサのうち、IおよびIIに記載のセンサは、感度、寿命共に優れており、連続使用にも十分対応できることから、本発明に使用される酸素センサとして好ましい。が、それらに限定されることなく、その他の公知の光酸素センサを採用しても良い。
【0015】
このような光酸素センサ1を用いた溶存酸素測定手段の実施態様を図3および図4で説明する。なお、図3および図4においては、共通部材には同一番号を付してある。
図3の光酸素センサ1を含む溶存酸素測定手段10では、励起光源11から照射された励起光のうち、必要以外の不要なスペクトルを励起用フィルタ12によりカットし、バンドルファイバ13を介して前記酸素センシング材料14を照射する。そして酸素センシング材料14で発生した蛍光または燐光の消光作用を利用して、バンドルファイバ13を経由して受光用フィルタ15に送り、そこで励起光の迷光などの不要なスペクトル成分をカットし、所定の波長のみの発光量を選択的に受光器16で検出するように構成されている。なお、試料溶液は試料溶液流路17を通って流れ、途中で、酸素センシング材料14と直接接触するようにされている。
【0016】
一方、図4においては、励起光源11から、結合レンズ22を介して光ファイバ23に励起光を入射し、光分波合波器24で光ファイバ25に励起光を結合した上で、対物レンズ26を介して前記酸素センシング材料14に照射する。そして酸素センシング材料14で発生した蛍光または燐光の消光作用を利用して、再度対物レンズ26を介して光ファイバ25に結合した後、光分波合波器24で光ファイバ27に結合し、結合レンズ28を介して受光器16で検出されるように構成されている。試料溶液の流れは図3と同じである。
【0017】
ここで、励起光源11としては、ガラス基材29表面に分散担持された、後述の光酸素センシング材料14に適した波長の光を出す光源であれば、任意のものを採用することができる。一例としては、緑色LED、白色LED、ハロゲンランプ、放電管、緑色レーザ等が挙げられる。
受光器16としては、光酸素センシング材料14が溶存酸素を検出することにより発生した蛍光または燐光の消光作用を検知できるものであれば、任意のものを使用できるが、一例としてはフォトマルチプライヤ、アバランシェフォトダイオード、フォトダイオード等が挙げられる。
バンドルファイバ13および光ファイバ23、25、27としては、任意の光ファイバが使用できるが、自家蛍光の少ない石英製の大口径光ファイバや石英製のイメージバンドル等が好適な例として示される。
これらの光酸素センサにおいては、酸素による消光作用は、Stern−Volmer則(I=I0[O2](ただし、I:発光量、I0:材料定数、[O2]:酸素濃度)で表され、発光量と酸素濃度は比例する。)に従って、検知されるものである。
【0018】
以上のようにして、予め溶存酸素濃度が測定された試料溶液は、次いで、流出液供給手段4又は配管3bによって、過酸化水素分解槽2に供給される。
ここで用いられる過酸化水素分解槽は、過酸化水素含有液と接触して過酸化水素を分解し、酸素を生成することができる過酸化水素分解触媒7を槽内に充填した槽である。
過酸化水素分解触媒7としては、本発明では、白金粒子が、過酸化水素分解能が高いので、採用される。
同じ白金族金属で、パラジウムは高い過酸化水素分解能力を持つが、同時に水素を吸蔵する性質もあるため、過酸化水素の分解によって生成した酸素が、パラジウム表面の水素と反応して水を生成する。このため、生成した水が妨害して正確に測定できないという問題がある。
一方、白金は、そのような問題がなく、しかもパラジウムに比べて触媒活性が高い。
本発明では、前記白金でも、特に、その体積平均粒径が1〜50nm、好ましくは1.2〜20nmの白金ナノ粒子を使用すると、表面積が増大して接触効率があがり、その結果、過酸化水素分解効率が向上して望ましい。
この体積平均粒径が1nm未満であると、過酸化水素分解活性が低下する恐れがあり、逆に50nmを超えると、金属ナノ粒子の比表面積が小さくなって、やはり分解活性が低下する恐れがある。
さらに、本願では、前記白金が、保護コロイド形成剤を0〜200質量ppm、すなわち、実質的に保護コロイド形成剤を含まないタイプのものが、最大限に触媒活性を発揮することができて好ましい。しかも、保護コロイド形成剤を含まない白金においては、余計な成分を含まないので、有機物が触媒活性の阻害となったり、コンタミを発生したり、副反応を起こしたりことがなく、純水や超純水などの極純度の系における測定においては、極めて重要である。
これらの点から、特に保護コロイド形成剤を含まない白金ナノ粒子は最適である。
【0019】
本発明では、これらの白金族ナノ粒子をそのまま用いることもできるが、操作性、活性の効率などの問題により、担体を用いて前記ナノ粒子を担持することが好ましい。
前記担体としては、白金族ナノ粒子を担持できるものであれば、限定されず、任意のものを採用することができるが、例えば、マグネシア、チタニア、アルミナ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、活性炭、ゼオライト、ケイソウ土、イオン交換樹脂などを挙げることができる。これらの中で、アニオン交換樹脂が下記の理由で、特に好適に用いることができる。
すなわち、白金族ナノ粒子は電気二重層を有し、負に帯電しているので、アニオン交換樹脂に安定に担持されて剥離しにくく、アニオン交換樹脂に担持された白金族ナノ粒子は、過酸化水素の分解除去に対して強い触媒活性を示すからである。
このようなアニオン交換樹脂としては、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体を母体とした強塩基性アニオン交換樹脂であることが好ましく、特にゲル型樹脂であることがより好ましい。また、アニオン交換樹脂の交換基は、OH形であることが好ましい。OH形アニオン交換樹脂は、樹脂表面がアルカリ性となり、過酸化水素の分解を促進する。
【0020】
本発明において、前記担体、特にアニオン交換樹脂への白金族ナノ粒子の担持量は、0.01〜5質量%であることが好ましく、0.04〜1質量%であることがより好ましい。
白金族ナノ粒子の担持量が0.01質量%未満であると、過酸化水素の分解除去に対する触媒活性が不足するおそれがある。白金族ナノ粒子の担持量は0.2質量%以下で過酸化水素の分解除去に対して十分な触媒活性が発現し、通常は5質量%を超えて白金族ナノ粒子を担持させると、不経済となるうえに、水中への白金の溶出の恐れが出てくる。
本発明においては、白金族ナノ粒子を含む過酸化水素分解触媒の充填方式は、流動床方式でもよいし、固定床方式でも良い。
また、その通液速度は、含まれる過酸化水素の分解効率ができるだけ100%に近づける方が好ましく、空間速度として、通常500/h〜1/h程度とするが、センサーへの通液量と分解効率の観点から、100/h〜10/h程度とするのがより好ましい。
過酸化水素が分解処理され、溶存酸素が発生した処理液は、処理液供給手段5を介して、次いで光酸素センサB、又はCに送られ、そこで、前記と同様にして溶存酸素濃度が測定され、その後、試料溶液排出手段6を介して排出される。
【0021】
以上のようにして、試料溶液中の過酸化水素が分解される前後の溶存酸素が測定されると、その情報が本発明のコンピュータ等の演算手段に送られる。もちろん、事前に試料溶液中に溶存酸素が含まれていなかったり、既知量であったりすれば、その値をインプットすれば良い。
前記演算手段では、以下の過酸化水素の定量原理に従って、過酸化水素量が演算される。
試料溶液中の過酸化水素と白金族ナノコロイド状金属粒子触媒とが接触すると、次式にしたって過酸化水素が分解して酸素を発生する。
2H22 → 2H2O +O2
このように発生した酸素は、試料溶液中の溶存酸素濃度が酸素の溶解濃度に比較して十分に小さい場合には、全量が試料溶液中に溶解するため、過酸化水素分解触媒に接触する前の試料溶液よりも溶存酸素濃度が増加する。
ここで過酸化水素分解触媒の分解効率(=分解触媒に接触した過酸化水素の内、実際に前記反応で分解される過酸化水素の比率)をα、試料溶液中に存在する単位体積あたりの溶存酸素量をM、過酸化水素量をNとすれば、分解触媒に接触後の単位体積あたりの溶存酸素量は、M+α(N/2)と表される。
この増加分 α(N/2)を測定することで、試料溶液中に含まれていた過酸化水素量Nを求めることができる。
過酸化水素分解触媒の分解効率は、前記白金属金属触媒の材質、構造、表面積、担体の材質、担持方法、流速などによって大きく変化する。前述のようにαが1に近い方が発生する溶存酸素量が増えるため、過酸化水素の検出性能があがる。また、試料溶液の流速を下げることで、αを1に近づけることができる。
こうして、求められた結果は、適当な出力手段によって表示したり、印刷したりすれば良い。
【0022】
以上のように、本発明においては、試料溶液を過酸化水素分解触媒で処理する前後での溶存酸素濃度の変化を、可視光を用いた光学式の酸素センサで測定し、溶存酸素濃度差を評価することで、多量な試料溶液においても、過酸化水素濃度を正確に、連続的に、かつ安定的にモニターできる、小型軽量で低価格の過酸化水素の定量方法を実現することができる。
【実施例】
【0023】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この実施例になんら限定されるものではない。
本発明の実施例に使用した装置構成は以下の通り。
I.光酸素センサ
1)酸素センシング材料
可視光で励起可能であり、かつ、酸素消光性をもつ複素環式化合物(ポルフィリン化合物)、遷移金属錯体化合物(ルテニウム(II)錯体)をゾルゲルガラスのマトリクスに分散担持したものを使用。
2.図3に示す光酸素センサ
励起光源は波長530nmの緑色LEDを使用。バンドルファイバには、コア径200μmの7芯バンドルファイバを使用。波長650nmの赤色の燐光に合わせて受光波長を選択し、受光器にはフォトマルチプライヤを使用。
3.図4に示す光酸素センサ
励起光源は波長530nmの緑色LEDを使用。光分波合波器は、カットオフ波長を580nmとした。650nmの赤色の燐光成分のみの発光量を選択的に測定した。受光器にはフォトマルチプライヤを使用。光ファイバには、自家蛍光の少ない石英製の大口径光ファイバ(コア径200μm)を使用。
II.過酸化水素分解槽
スチレン−ジビニルベンゼン共重合体を母体とするOH型強塩基性ゲル型アニオン交換樹脂に、体積平均粒径が3.5nmである白金ナノコロイド金属を0.1質量%の割合で担持した触媒を、容器に20ml充填した。試料溶液の供給速度は空間速度50/hに設定し、分解効率α=100%になるようにした。なお、膜式脱気装置(マクエース、栗田工業社製)を前置した。
III.配管
外部からの酸素の浸透のないステンレス製配管を採用。

なお、前記超純水を手分析によるフェノールフタリ吸光光度法で分析した結果、20,3ppbであった。
【0024】
実施例1
図3に示す光酸素センサを装備した図1記載の構成を有する装置で本発明を実施した。
用いた過酸化水素試料溶液は、某半導体製造工場で使用されている超純水で、超純水供給配管の一部に、サンプリング装置を取り付け、UV酸化によるTOC除去の結果、発生した過酸化水素を含む試料溶液を供給した。
なお、酸素濃度は光酸素センサ立上げ後、約5分経過した後の測定値を読み取った。
【0025】
実施例2
図4の光酸素センサを装備した図1記載の構成を有する装置で、本発明を実施した。
用いた過酸化水素試料溶液は、実施例1と同じものである。
【0026】
実施例3
図3の光酸素センサを装備した図2記載の構成を有する装置で、本発明を実施した。
用いた過酸化水素試料溶液は、実施例1と同じものである。
【0027】
実施例4
図4の光酸素センサを装備した図2記載の構成を有する装置で、本発明を実施した。
用いた過酸化水素試料溶液は、実施例1と同じものである。
【0028】
実施例5
過酸化水素分解手段として、保護コロイド形成剤を5000ppm含む白金ナノコロイド(体積平均粒径3.5nm)を用いた以外は、実施例1と同じ条件で過酸化水素量を測定した。
【0029】
比較例1
過酸化水素分解手段として、市販の活性炭を用いた以外は、実施例1と同じ条件で過酸化水素量を測定した。
【0030】
比較例2
過酸化水素分解手段として、パラジウムナノコロイド(体積平均粒径3.5nm)を用いた以外は、実施例1と同じ条件で過酸化水素量を測定した。
【0031】
比較例3
酸素センサとして、オービスフェア製3600を用い、かつ立上げ後10分経過後の測定値を求めた以外は、実施例1と同じ条件で過酸化水素量を測定した。
【0032】
以上の結果をまとめて表1に示す。
【表1】

【0033】
表1から、本発明の実施例1〜5では、自動分析により、迅速に、かつ正確に超純水中の過酸化水素量を定量することができることが分かる。特に保護コロイドを含む実施例5と、それを含まない実施例1〜4との結果を比較すると、含まないほうが、より精度よく定量することができることがわかる。
実施例に比べて、比較例1〜3では、過酸化水素分解手段、又は酸素センサが本発明とは異なるものを採用したため、精度が劣ることがわかる。
【0034】
以上から、本発明においては、できるだけ高い過酸化水素分解能力を持ち、不純物の混入、溶出のない材料を最適な形態で用いると共に、過酸化水素の分解によって発生した酸素のみを測定するようにすることで、測定精度と測定測度が高められた過酸化水素の定量方法、およびそのための装置が提供されることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
食品、医薬品、紙パルプ、繊維、および電子工業などで、洗浄剤や漂白剤、殺菌消毒剤として利用されている過酸化水素の濃度管理用に使用される。また、水処理分野では、過酸化水素による後処理工程における悪影響を防ぐため、あるいは、処理水が放流水として系外に放出される系における過酸化水素の濃度管理用に使用される。特に後者では、連続的に、かつ正確に把握して管理する必要があり、そのような分野に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施態様を示すフロー図
【図2】本発明の他の実施態様を示すフロー図
【図3】本発明に使用される光酸素センサの一実施態様を示す図
【図4】本発明に使用される光酸素センサの他の実施態様を示す図
【符号の説明】
【0037】
1、A、B、C 光酸素センサ
2 過酸化水素分解槽
3 試料溶液供給手段
3a 配管
3b 配管
4 流出液供給手段
5 処理液供給手段
6 試料溶液排出手段
7 過酸化水素分解触媒
8、9 切替弁
10 溶存酸素測定手段
11 励起光源
12 励起フィルタ
13 バンドルファイバ
14 酸素センシング材料
15 受光フィルタ
16 受光器
17 試料溶液流路
22、28 結合レンズ
23、25、27 光ファイバ
24 光分波合波器
26 対物レンズ
29 ガラス基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化水素を含む試料溶液を、白金を担持した過酸化水素分解触媒と接触させた後の処理液中の溶存酸素濃度を光酸素センサで測定し、その溶存酸素濃度から前記試料溶液中の過酸化水素濃度を定量することを特徴とする過酸化水素の定量方法。
【請求項2】
過酸化水素を含む試料溶液中の溶存酸素濃度と、白金を担持した過酸化水素分解触媒を前記試料溶液と接触させた後の処理液中の溶存酸素濃度とを、それぞれ光酸素センサで測定し、前記光酸素センサにより得られた両者の溶存酸素濃度から、前記試料溶液中の過酸化水素濃度を定量することを特徴とする過酸化水素の定量方法。
【請求項3】
過酸化水素を含む試料溶液を、光酸素センサに供給して前記試料溶液中の溶存酸素濃度を測定後、切替手段によって、前記試料溶液と白金を担持した過酸化水素分解触媒とを接触させた後、その処理液中の溶存酸素濃度を前記光酸素センサで測定し、前記光酸素センサにより得られた両者の溶存酸素濃度から、前記試料溶液中の過酸化水素濃度を定量することを特徴とする過酸化水素の定量方法。
【請求項4】
前記試料溶液を脱気した後、前記過酸化水素分解触媒と接触させる請求項1〜3のいずれかに記載の過酸化水素の定量方法。
【請求項5】
前記白金が、保護コロイド形成剤を0〜200質量ppm含む請求項1〜4のいずれかに記載の過酸化水素の定量方法。
【請求項6】
前記白金が、白金ナノ粒子である請求項1〜5のいずれかに記載の過酸化水素の定量方法。
【請求項7】
前記白金ナノ粒子が、体積平均粒径1〜50nmの粒子である請求項6記載の過酸化水素の定量方法。
【請求項8】
過酸化水素分解触媒が、アニオン交換基を持つ表面に白金を担持したものである請求項1〜7のいずれかに記載の過酸化水素の定量方法。
【請求項9】
前記光酸素センサが、可視光で励起し、蛍光又は燐光で溶存酸素を検出するものである請求項1〜8のいずれかに記載の過酸化水素の定量方法。
【請求項10】
前記過酸化水素を含む試料溶液が連続的に供給されて、過酸化水素濃度が連続的に定量される請求項1〜9のいずれかに記載の過酸化水素の定量方法。
【請求項11】
過酸化水素を含む試料溶液供給手段と、白金を担持した過酸化水素分解触媒を充填した過酸化水素分解槽と、光酸素センサによる溶存酸素測定手段と、前記光酸素センサによる溶存酸素測定手段で測定された溶存酸素濃度から試料溶液中の過酸化水素濃度を演算する演算手段と、前記試料溶液供給手段からの試料溶液を前記過酸化水素分解槽に供給する手段と、前記過酸化水素分解槽からの処理液を前記光酸素センサによる溶存酸素測定手段に供給する手段と、を具備することを特徴とする過酸化水素濃度の定量装置。
【請求項12】
過酸化水素を含む試料溶液供給手段と、光酸素センサによる溶存酸素測定手段Aと、白金を担持した過酸化水素分解触媒を充填した過酸化水素分解槽と、光酸素センサによる溶存酸素測定手段Bと、前記光酸素センサによる溶存酸素測定手段A、Bで測定された各溶存酸素濃度から、前記試料溶液中の過酸化水素濃度を演算する演算手段と、前記試料溶液供給手段からの試料溶液を前記光酸素センサによる溶存酸素測定手段Aに供給する手段と、前記溶存酸素測定手段Aからの流出液を前記過酸化水素分解槽に供給する手段と、前記過酸化水素分解槽からの処理液を前記光酸素センサによる溶存酸素測定手段Bに供給する手段と、を具備することを特徴とする過酸化水素濃度の定量装置。
【請求項13】
白金を担持した過酸化水素分解触媒を充填した過酸化水素分解槽と、光酸素センサによる溶存酸素測定手段と、過酸化水素を含む試料溶液を前記光酸素センサによる溶存酸素測定手段、または前記白金担持触媒を充填した過酸化水素分解槽のいずれかに供給可能とされた切替手段を有する試料溶液供給手段と、前記白金担持触媒を充填した過酸化水素分解槽からの処理液を前記光酸素センサによる溶存酸素測定手段に供給する手段と、前記光酸素センサによる溶存酸素測定手段で測定された溶存酸素濃度と、前記白金担持触媒を充填した過酸化水素分解槽からの処理液を前記光酸素センサによる溶存酸素測定手段で測定された溶存酸素濃度とから、前記試料溶液中の過酸化水素濃度を演算する演算手段と、を具備する過酸化水素濃度の定量装置。
【請求項14】
前記過酸化水素分解槽が、脱気装置を前置したものである請求項11〜13のいずれかに記載の過酸化水素濃度の定量装置。
【請求項15】
前記白金が、保護コロイド形成剤を0〜200質量ppm含む請求項11〜14のいずれかに記載の過酸化水素濃度の定量装置。
【請求項16】
前記白金が、白金ナノ粒子である請求項11〜15のいずれかに記載の過酸化水素濃度の定量装置。
【請求項17】
前記白金ナノ粒子が、体積平均粒径1〜50nmの粒子である請求項16記載の過酸化水素濃度の定量装置。
【請求項18】
過酸化水素分解触媒が、アニオン交換基を持つ表面に白金を担持したものである請求項11〜17のいずれかに記載の過酸化水素濃度の定量装置。
【請求項19】
前記光酸素センサが、可視光で励起し、蛍光又は燐光で溶存酸素を検出するものである請求項11〜18のいずれかに記載の過酸化水素濃度の定量装置。
【請求項20】
前記過酸化水素を含む試料溶液が連続的に供給されて、過酸化水素濃度が連続的に定量される請求項11〜19のいずれかに記載の過酸化水素濃度の定量装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−127830(P2010−127830A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304585(P2008−304585)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】