説明

過酸化水素の添加装置、及び過酸化水素の添加方法

【課題】過酸化水素の供給量を一定とすることにより供給作業を容易にすると共に、経済性に優れた過酸化水素の添加装置を提供する。
【解決手段】本発明の添加装置1は、スラリーを貯蔵するタンク2と、上記スラリーに含まれる過酸化水素濃度を、予め定められた時間の間隔で測定する濃度計4と、測定された上記過酸化水素濃度が予め定められた目標濃度よりも低い場合に、上記スラリーに一定量の過酸化水素を供給する過酸化水素導入バルブ6とを備え、上記一定量は、上記過酸化水素濃度が上記スラリーに過酸化水素を加えなかった場合に上記目標濃度から予め定められた下限濃度まで推移する推移時間、上記測定手段の測定間隔、及び、上記目標濃度と上記下限濃度との差の関係から求められる理論値だけ上記過酸化水素の濃度を上昇させる量以上、上記目標濃度と上記下限濃度との差の値だけ上記過酸化水素の濃度を上昇させる量以下の範囲から選ばれる量である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過酸化水素の添加装置、及び過酸化水素の添加方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程において化学機械研磨(CMP)に用いられるスラリーには、過酸化水素(H)を酸化剤として添加して使用することが一般的である(例えば、特許文献1〜4を参照)。
【0003】
また、スラリー中の過酸化水素は時間の経過と共に自然分解して濃度が低下することが知られており、スラリー中で分解した過酸化水素濃度から不足量を求め、当該不足量に対応する過酸化水素を添加することがある。スラリー中の過酸化水素濃度を測定し、濃度低下量から求めた不足分の過酸化水素を添加する技術は、例えば特許文献5,6に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−148286号公報(1999年10月22日公開)
【特許文献2】特開平11−243071号公報(2001年1月12日公開)
【特許文献3】特開2004−122354号公報(2004年4月22日公開)
【特許文献4】特開2003−71720号公報(2003年3月12日公開)
【特許文献5】特開2003−318144号公報(2003年11月7日公開)
【特許文献6】特開2003−347250号公報(2003年12月5日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献5、6に記載の方法では、スラリー中の過酸化水素濃度が目標濃度に満たない場合、その都度、測定濃度から添加する過酸化水素の量を算出し、添加時には実際の添加量をモニターしながら算出値に合わせる必要があり、処理が煩雑になる。
【0006】
また、添加する過酸化水素の量を算出するためには、系内のスラリー保有量を確認し、さらに添加量をモニターするために流量計等が必要になる。よって、流量計等の設置費用がかかり、また、メンテナンスに要する手間もかかる。さらに、流量計、濃度計が故障した場合には、過酸化水素水が過大に添加される虞がある。
【0007】
このように、従来の過酸化水素の添加方法では十分に容易且つ低コストではなく、より容易且つ低コストに適切な量の過酸化水素を供給できる方法が望まれている。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、過酸化水素の供給量を一定とすることにより供給作業を容易にすると共に、流量計等の設置が不要であるために経済性に優れた過酸化水素の添加装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る過酸化水素の添加装置は、上記の課題を解決するために、スラリーを貯蔵するタンクと、上記スラリーに含まれる過酸化水素濃度を、予め定められた時間の間隔で測定する測定手段と、測定された上記過酸化水素濃度が予め定められた目標濃度よりも低い場合に、上記スラリーに一定量の過酸化水素を供給する供給手段と、を備え、上記一定量は、上記過酸化水素濃度が上記スラリーに過酸化水素を加えなかった場合に上記目標濃度から予め定められた下限濃度まで推移する推移時間、上記測定手段の測定間隔、及び、上記目標濃度と上記下限濃度との差の関係から求められる理論値だけ上記過酸化水素の濃度を上昇させる量以上、上記目標濃度と上記下限濃度との差の値だけ上記過酸化水素の濃度を上昇させる量以下の範囲から選ばれる量である。
【0010】
また、本発明に係る過酸化水素の添加装置において、上記理論値は、上記目標濃度と上記下限濃度との差の値を、上記推移時間を上記測定間隔で等分した値で割ることによって求められる濃度の値であればよい。
【0011】
また、本発明に係る過酸化水素の添加装置では、上記一定量は、上記過酸化水素濃度が上記理論値の2倍だけ上記過酸化水素の濃度を上昇させる量であることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る過酸化水素の添加装置では、上記測定手段によって測定された上記過酸化水素濃度が、上記目標濃度よりも低いか否かを判定する判定手段をさらに備えていることが好ましく、上記判定手段は、上記過酸化水素濃度が上記目標濃度よりも低いと判定した場合、上記供給手段に過酸化水素の供給を指示するものであり、上記供給手段は当該指示を受けて過酸化水素を供給するものである。
【0013】
また、本発明に係る過酸化水素の添加装置では、上記測定手段が上記過酸化水素濃度を測定する際の上記スラリーの圧力を一定に制御する圧力制御手段をさらに備えることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る過酸化水素の添加装置では、上記測定手段は、超音波濃度計又は屈折率濃度計であることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る過酸化水素の添加装置では、上記スラリーは、化学機械研磨用のスラリーであることが好ましい。
【0016】
本発明に係る過酸化水素の添加方法は、上記の課題を解決するために、スラリーに含まれる過酸化水素濃度を、予め定められた時間の間隔で測定する測定工程と、上記測定工程において測定された上記過酸化水素濃度が予め定められた目標濃度よりも低い場合に、上記スラリーに一定量の過酸化水素を供給する供給工程と、を含み、上記供給工程では、上記過酸化水素濃度が上記スラリーに過酸化水素を加えなかった場合に上記目標濃度から予め定められた下限濃度まで推移する推移時間、上記測定手段の測定間隔、及び、上記目標濃度と上記下限濃度との差の関係から求められる理論値だけ上記過酸化水素の濃度を上昇させる量以上、上記目標濃度と上記下限濃度との差の値だけ上記過酸化水素の濃度を上昇させる量以下の範囲から選ばれる、一定量の過酸化水素を供給する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、過酸化水素の供給量を一定とすることにより供給作業を容易にすると共に、経済性に優れた過酸化水素の添加装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る過酸化水素の添加装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】本実施形態における過酸化水素を添加するタイミングを説明するための図である。
【図3】従来の過酸化水素の添加装置の構成を模式的に示す図である。
【図4】従来技術の過酸化水素を添加するタイミングを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔添加装置1の構成〕
まず、図1を参照して本発明の一実施形態に係る添加装置1の構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る添加装置1の構成を模式的に示す図である。図1に示すように、添加装置1は、タンク2、供給ポンプ3、濃度計4(測定手段)、コントローラ5(判定手段)、過酸化水素導入バルブ6(供給手段)、流量制御バルブ7(流量制御手段)及びサンプルバルブ15(圧力制御手段)を備えている。
【0020】
添加装置1は、スラリーに過酸化水素を添加する装置である。添加装置1では、過酸化水素の供給量を一定とすることにより供給作業を容易にすると共に、流量計等の設置が不要であるために経済性に優れている。さらに、濃度計の誤指示又は流量計の誤指示により過酸化水素が過剰添加される虞がなく、安定性に優れている。
【0021】
本発明において過酸化水素の添加対象となるスラリーは様々な用途に用いることが可能であり、中でも半導体製造工程においてウエーハなどを研磨する、化学機械研磨(CMP)に好適に用いることができる。スラリーの成分としては、例えば、シリカ(SiO;二酸化シリコン)、アルミナ(Al;酸化アルミニウム)、セリア(CeO;二酸化セリウム)、チタニア(TiO;二酸化チタン)、又はジルコニア(ZrO;二酸化ジルコン)などと、酸又はアルカリなどとを組み合わせたものを含むが、これらに限定されない。なお、スラリーに添加される過酸化水素は、スラリーの酸化剤として添加されるものであり、当該スラリーにはその他各種の添加剤が添加され得る。
【0022】
また、添加装置1は、過酸化水素が添加されたスラリーを供給先14へ供給する。供給先14は、添加装置1から供給されたスラリーを様々な設備へ分岐させてさらに供給する供給手段であってもよく、直接スラリーを使用する場所(ユースポイント)であってもよい。ユースポイントとしては、例えばCMP用にスラリーを用いる研磨装置が挙げられるがこれに限定されるものではない。なお、供給先14において一部のスラリーは使用せずに、再び添加装置1に戻すこともできる。
【0023】
タンク2は、スラリーを貯蔵し、当該スラリーに過酸化水素を添加するためのタンクである。タンク2には、配管8,9,11,13が接続されている。配管8には、過酸化水素導入バルブ6及び流量制御バルブ7が設けられており、図示しない供給源から供給された過酸化水素は、配管8を通じてタンク2に供給される。また、配管9には供給ポンプ3が設けられており、タンク2において過酸化水素が添加されたスラリーは配管9に送られる。なお、タンク2には、図示しないが、スラリーを混合・攪拌するため攪拌手段が設けられていてもよい。
【0024】
供給ポンプ3は、配管9を介してタンク2内のスラリーを吸引し、配管10及び配管11に当該スラリーを吐出する。配管10は供給先14に接続され、配管11には濃度計4が設けられている。なお、配管11に送られたスラリーは再びタンク2内に戻される。なお、図示しないが、供給ポンプ3の代わりにN加圧の供給ポッドが設けられていてもよい。
【0025】
濃度計4は、配管11内を流れるスラリー中の過酸化水素濃度を測定する。本実施形態において、濃度計4は配管11に設けられているが、濃度計4が設置される場所はこれに限定されるものではなく、例えばタンク2内のスラリー中の過酸化水素濃度を測定できるような構成であってもよい。
【0026】
また、濃度計4は、測定した値をコントローラ5に出力する。濃度計4は、スラリー中の過酸化水素濃度を予め定められた時間の間隔で測定することが可能であればよい。予め定められた時間とは、スラリー中の過酸化水素濃度の許容幅にもよるが、例えば、10分〜2時間の範囲であることが好ましい。これにより、スラリー中の過酸化水素濃度が大幅に低下する前に、当該濃度が目標濃度以下となったことを確認することができる。
【0027】
濃度計4の具体例としては、例えば、超音波濃度計又は屈折率濃度計であることが好ましい。濃度計4が超音波濃度計又は屈折率濃度計であれば、短時間で高頻度に過酸化水素濃度を測定することができる。また、これらの濃度計は、自動滴定装置などと比較して、試薬の補充等のメンテナンスに要する時間を短縮することができ、維持管理費用を削減することもできる。なお、本発明における測定手段はこれらに限定されるものではなく、例えば、導電率計、又は紫外線・赤外線・近赤外線を用いた各種吸光度計であってもよい。
【0028】
コントローラ5は、濃度計4によって測定された過酸化水素濃度が、予め定められた目標濃度よりも低いか否かを判定する。すなわち、コントローラ5は濃度計4からの出力信号12に基づいて、過酸化水素濃度が当該目標濃度よりも低いか否かを判定する。コントローラ5は、過酸化水素濃度が目標濃度よりも低いと判定した場合、過酸化水素導入バルブ6に過酸化水素を供給するよう指示する。
【0029】
過酸化水素導入バルブ6は、スラリーに一定量の過酸化水素を供給する。すなわち、過酸化水素導入バルブ6はコントローラ5の指示を受けて開閉することにより、過酸化水素の供給を制御する。詳細は後述するが、添加装置1では、過酸化水素を供給する量を一定量としているため、供給する度に過酸化水素の必要量を算出する必要がない。
【0030】
過酸化水素の供給量の調整は、例えば、過酸化水素導入バルブ6の開時間によって制御してもよいが、これに限定されるものではない。なお、開時間は、例えば、予め単位時間当たりに配管8を流れる過酸化水素の流量を測定しておき、その測定値から求めればよい。
【0031】
流量制御バルブ7は、配管8を介してタンク2に供給される過酸化水素の流量を制御する。
【0032】
サンプルバルブ15は、濃度計4により過酸化水素濃度が測定される際のスラリーの圧力を一定に制御する。つまり、過酸化水素濃度の測定時にサンプルバルブ15を閉めることによって、配管11を流れるスラリーの圧力をタンク2内と同じ圧力にする。これにより、測定される過酸化水素濃度の値がスラリーの圧力変動の影響を受けることがなく、測定結果の補正等をしなくとも、より正確に過酸化水素濃度を測定することができる。
【0033】
〔過酸化水素の添加方法〕
次に、添加装置1にて本発明に係る過酸化水素の添加方法を実施する場合の一実施形態を以下に説明する。なお、本発明に係る過酸化水素の添加方法は、スラリーに含まれる過酸化水素濃度を、予め定められた時間の間隔で測定する測定工程と、上記測定工程において測定された上記過酸化水素濃度が予め定められた目標濃度よりも低い場合に、上記スラリーに一定量の過酸化水素を供給する供給工程とを含めばよい。
【0034】
(測定工程)
測定工程は、スラリーに含まれる過酸化水素濃度を、予め定められた時間の間隔で測定する工程である。測定工程では、タンク2から供給ポンプ3によって吸引されて配管11を流れる、スラリー中の過酸化水素濃度を濃度計4によって測定する。また、濃度計4は、測定した値をコントローラ5に出力する。なお、本実施形態の添加方法では、濃度計4によって測定された値に基づいて、コントローラ5が過酸化水素導入バルブ6に過酸化水素を供給するよう指示するが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、測定値に基づいて手動で過酸化水素導入バルブ6の開閉操作を行なってもよい。
【0035】
濃度計4によって測定される間隔は、予め定められた時間の間隔であればよく、例えば、10分〜2時間であることが好ましい。このように、比較的短い間隔でスラリー中の過酸化水素濃度を測定することによって、当該過酸化水素濃度が大幅に低下する前に予め定められた目標濃度よりも低くなったことを確認することができる。よって、後述する供給工程において、一定量の過酸化水素を供給したとしても、目標濃度以上にすることができる。加えて、濃度計4から測定値が入力されるコントローラ5は、過酸化水素濃度が大幅に低下する前に過酸化水素導入バルブ6に過酸化水素を供給するよう指示することが可能であるため、過酸化水素の供給量を最小限に留めることができる。
【0036】
なお、目標濃度は特に限定されるものではなく、スラリーの種類、使用目的等に応じて予め定められた任意の値であればよい。一例として、目標濃度を2.0%とした場合、下限濃度を1.9%とし、上限濃度を2.1%としてもよい。また、例えば目標濃度を15.0%とした場合、下限濃度を14.4%とし、上限濃度を15.6%としてもよい。なお、上限濃度と目標濃度との差、及び下限濃度と目標濃度との差の値は同じでなくてもよい。
【0037】
(供給工程)
供給工程は、測定工程において測定された過酸化水素濃度が予め定められた目標濃度よりも低い場合に、スラリーに一定量の過酸化水素を供給する工程である。つまり、供給工程では、コントローラ5が、濃度計4によって測定された過酸化水素濃度の値が目標濃度よりも低いと判定した場合、過酸化水素導入バルブ6を開いて一定量の過酸化水素を供給する。
【0038】
ここで、一定量とは、理論値だけ過酸化水素の濃度を上昇させる量以上、目標濃度と下限濃度との差の値だけ過酸化水素の濃度を上昇させる量以下の範囲から選ばれる量であればよい。
【0039】
また、理論値とは、過酸化水素濃度がスラリーに過酸化水素を加えなかった場合に目標濃度から下限濃度まで推移する推移時間、濃度計4の測定間隔、及び、目標濃度と下限濃度との差の関係から求められる値であればよい。例えば、理論値は、目標濃度と下限濃度との差の値を、当該推移時間を測定間隔で等分した値で割ることによって求められる濃度の値である。
【0040】
ところで、添加装置1では、例えば供給先14においてスラリーの消費量が多い場合、新たに調合した新規のスラリーを推移時間以内にタンク2内へ供給することがある。このとき、新規のスラリーを供給することによってタンク2内に保有されるスラリー中の過酸化水素濃度が上昇し、目標濃度から下限濃度まで推移する推移時間が、新規のスラリーを供給しない場合の推移時間よりも長くなり得る。そのため、新規のスラリーを供給する場合には、それに応じて延長する推移時間に基づいて、上述した理論値を求めてもよい。
【0041】
供給工程において、一定量は上記範囲から選ばれる量であればよいが、特に、過酸化水素濃度が理論値の2倍だけ上記過酸化水素の濃度を上昇させる量であることが好ましい。例えば、濃度計4によって測定された値にバラつきがあり、実際には過酸化水素濃度が目標濃度より低くなっている場合であっても目標濃度以上という測定結果を示すこともあり得る。この場合、次に目標濃度よりも低いという測定結果が示された時に理論値だけ過酸化水素の濃度を上昇させる量を供給したのでは、供給後の過酸化水素濃度が目標濃度に達しない。そこで、理論値の2倍だけ上記過酸化水素の濃度を上昇させる量という、少量の過酸化水素を供給することにより、過酸化水素の濃度変化が少なく、スラリーの安定性を高めることができ、安定的に過酸化水素濃度が目標濃度に達するようにできる。
【0042】
供給工程における過酸化水素を供給するタイミングについて、図2を参照して説明する。図2は、本実施形態における過酸化水素を添加するタイミングを説明するための図である。なお、図2中、「UCL」は上限濃度を示し、「CL」は目標濃度を示し、「LCL」は下限濃度を示す。また、「×」は測定濃度がどの範囲にあるかを示し、矢印は過酸化水素を供給することによる濃度上昇量を示す。
【0043】
図2の領域100に示すように、測定濃度が目標濃度を超える場合、過酸化水素を添加しない。一方、領域101に示すように、測定濃度が目標濃度を僅かに下回る場合、過酸化水素を添加する。また、領域103に示すように、測定濃度が目標濃度を大幅に下回る場合にも、過酸化水素を添加する。このとき、本発明において添加される過酸化水素の量は、領域102,104に示すように、測定濃度と目標濃度との差にバラつきがあったとしても一定である。
【0044】
ここで、従来の過酸化水素の添加方法について説明する。図3は、従来の過酸化水素の添加装置の構成を模式的に示す図であり、図4は、従来技術の過酸化水素を添加するタイミングを説明するための図である。
【0045】
図3に示すように、従来の過酸化水素の添加装置20では、タンク21と接続され、タンク21に供給される過酸化水素が流れる配管28に、流量計27が設けられている。なお、それ以外の構成は図1に示す添加装置1と同様であるため、説明を省略する。
【0046】
添加装置20では、コントローラ24は、濃度計23によって測定された値に基づいて、過酸化水素導入バルブ25に過酸化水素を供給するよう指示する。過酸化水素導入バルブ25は、当該指示に基づいて、コントローラ24において算出された量の過酸化水素を、配管28を流れる過酸化水素の流量を測定しながら流量積算値が所定量になるまでタンク21に供給する。
【0047】
この構成の添加装置20では、図4の領域200に示すように、測定濃度が目標濃度を超える場合、過酸化水素を添加しない。また、領域201に示すように、測定濃度が目標濃度を僅かに下回る場合、少量の過酸化水素を添加する(領域202)。一方、領域203に示すように、測定濃度が目標濃度を大幅に下回る場合には、多量の過酸化水素を添加する(領域204)。
【0048】
このように、従来の添加方法では、測定濃度と目標濃度との差に応じて添加する過酸化水素の量を変動させているので、その都度、測定濃度から添加する過酸化水素の量を算出する必要があり、また、都度、過酸化水素の供給量を変更する必要があるので、処理が煩雑である。
【0049】
これに対し、本発明の過酸化水素の添加方法によれば、測定濃度が目標濃度よりも低い場合、測定濃度と目標濃度との差がどのような値であっても、一定量の過酸化水素を供給するため、供給作業が容易である。
【0050】
また、従来の添加方法では、毎回添加する過酸化水素の量が異なるため、添加量をモニターするための流量計が必要である。一方、本発明では、一定量の過酸化水素を添加するために、流量制御バルブを初期設定するだけでよく、流量計の設置が不要である。よって、本発明の過酸化水素の添加方法は経済性に優れている。
【0051】
加えて、従来の添加方法では、測定濃度と目標濃度との差に応じて添加する過酸化水素の量を変動させているので、例えば濃度計が故障して測定結果が実際の濃度よりも低い値を示した場合、及び流量計が故障して流量を少なく表示した場合、一回当たりに添加される過酸化水素が過剰になってしまう。これに対し、本発明では、測定濃度と目標濃度との差によらず一定量の過酸化水素を供給するため、一回当たりに添加される過酸化水素が過剰にならず、許容限度内に抑えることができる。
【0052】
したがって、本発明によれば、供給作業を容易にすると共に、経済性に優れた過酸化水素の添加装置、及び添加方法を提供することができる。
【0053】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、化学機械研磨用のスラリーを使用する研磨装置又は半導体製造装置などに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 添加装置
2 タンク
3 供給ポンプ
4 濃度計(測定手段)
5 コントローラ(判定手段)
6 過酸化水素導入バルブ(供給手段)
7 流量制御バルブ
15 サンプルバルブ(圧力制御手段)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリーを貯蔵するタンクと、
上記スラリーに含まれる過酸化水素濃度を、予め定められた時間の間隔で測定する測定手段と、
測定された上記過酸化水素濃度が予め定められた目標濃度よりも低い場合に、上記スラリーに一定量の過酸化水素を供給する供給手段と、を備え、
上記一定量は、上記過酸化水素濃度が上記スラリーに過酸化水素を加えなかった場合に上記目標濃度から予め定められた下限濃度まで推移する推移時間、上記測定手段の測定間隔、及び、上記目標濃度と上記下限濃度との差の関係から求められる理論値だけ上記過酸化水素の濃度を上昇させる量以上、上記目標濃度と上記下限濃度との差の値だけ上記過酸化水素の濃度を上昇させる量以下の範囲から選ばれる量であることを特徴とする過酸化水素の添加装置。
【請求項2】
上記理論値は、上記目標濃度と上記下限濃度との差の値を、上記推移時間を上記測定間隔で等分した値で割ることによって求められる濃度の値であることを特徴とする請求項1に記載の過酸化水素の添加装置。
【請求項3】
上記一定量は、上記過酸化水素濃度が上記理論値の2倍だけ上記過酸化水素の濃度を上昇させる量であることを特徴とする請求項1又は2に記載の過酸化水素の添加装置。
【請求項4】
上記測定手段によって測定された上記過酸化水素濃度が、上記目標濃度よりも低いか否かを判定する判定手段をさらに備え、
上記判定手段は、上記過酸化水素濃度が上記目標濃度よりも低いと判定した場合、上記供給手段に過酸化水素の供給を指示するものであり、
上記供給手段は当該指示を受けて過酸化水素を供給するものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の過酸化水素の添加装置。
【請求項5】
上記測定手段が上記過酸化水素濃度を測定する際の上記スラリーの圧力を一定に制御する圧力制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の過酸化水素の添加装置。
【請求項6】
上記測定手段は、超音波濃度計又は屈折率濃度計であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の過酸化水素の添加装置。
【請求項7】
上記スラリーは、化学機械研磨用のスラリーであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の過酸化水素の添加装置。
【請求項8】
スラリーに含まれる過酸化水素濃度を、予め定められた時間の間隔で測定する測定工程と、
上記測定工程において測定された上記過酸化水素濃度が予め定められた目標濃度よりも低い場合に、上記スラリーに一定量の過酸化水素を供給する供給工程と、を含み、
上記供給工程では、上記過酸化水素濃度が上記スラリーに過酸化水素を加えなかった場合に上記目標濃度から予め定められた下限濃度まで推移する推移時間、上記測定工程における測定間隔、及び、上記目標濃度と上記下限濃度との差の関係から求められる理論値だけ上記過酸化水素の濃度を上昇させる量以上、上記目標濃度と上記下限濃度との差の値だけ上記過酸化水素の濃度を上昇させる量以下の範囲から選ばれる、一定量の過酸化水素を供給することを特徴とする過酸化水素の添加方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−177870(P2011−177870A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46914(P2010−46914)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(390027029)住友ケミカルエンジニアリング株式会社 (8)
【Fターム(参考)】