説明

過酸化水素ガス検知用インキ組成物及び過酸化水素ガス検知インジケーター

【課題】より簡便に酸化性ガスを検出できる材料を提供する。
【解決手段】アゾ系染料、メチン系染料、トリアリールメタン系染料及びチアジン系染料の少なくとも1種を含有することを特徴とする酸化性ガス検知用インキ組成物。さらに、カチオン系界面活性剤を含有し、カチオン系界面活性剤が、アルキルトリメチルアンモニウム塩、イソキノリニウム塩、イミダゾリニウム塩及びピリジニウム塩から選ばれる少なくとも1種である酸化性ガス検知用インキ組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化性ガス検知用インキ組成物及び酸化性ガス検知インジケーターに関する。
【背景技術】
【0002】
オゾン等の酸化性ガスは、食品、器具類等の殺菌・消毒のほか、病院の手術室のような一定雰囲気中における殺菌・消毒あるいは消臭に利用されている。その一方で、オゾンのように、毒性がきわめて強く、人体にも影響を及ぼすガスがある。他方、光化学スモッグ予報においては、大気中のオキシダント濃度が重要な要素となる。このため、これらの酸化性ガス濃度を監視すべく、その検知方法が種々開発されている。例えば、オゾンを検知する方法としては、主として下式(1)の反応による変色が利用されている。
【0003】
2KI+O→I2+K2
この原理を利用した検知方法としては、例えばヨウ化カリ溶液にオゾンを含むガスを導入し、発生するヨウ素の量に比例した変色度合いを比色計により光学的に測定する方法、あるいは簡便なタイプの検知管による方法等が従来より知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の光学的な検知方法では、その測定方法が煩雑であり、検知するまでにある程度の時間がかかる。また、装置自体も非常に高価であるため、特に複数箇所のオゾン濃度を同時に測定しようとする場合には複数の装置を必要とすることから多大な費用がかかる。また、上記検知管においては、上記の光学的方法よりも簡便なものの、なお高価であり、しかも測定するたびに手動又は自動によりオキシダントを吸引する必要がある。
【0005】
従って、本発明は、より簡便に酸化性ガスを検出できる材料を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、従来技術の問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定組成のインキ組成物を採用することによって、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の酸化性ガス検知用インキ組成物及びそれを用いた酸化性ガス検知インジケーターに係る。
【0008】
1. アゾ系染料、メチン系染料、トリアリールメタン系染料及びチアジン系染料の少なくとも1種を含有することを特徴とする酸化性ガス検知用インキ組成物。
【0009】
2. さらに、カチオン系界面活性剤を含有する前記項1記載の酸化性ガス検知用インキ組成物。
【0010】
3. カチオン系界面活性剤が、アルキルトリメチルアンモニウム塩、イソキノリニウム塩、イミダゾリニウム塩及びピリジニウム塩から選ばれる少なくとも1種である請求項2記載の酸化性ガス検知用インキ組成物。
【0011】
4. さらに増量剤及び樹脂系バインダーの少なくとも1種を含有する前記項1〜3のいずれかに記載の酸化性ガス検知用インキ組成物。
【0012】
5. さらに、酸化性ガス雰囲気下で変色しない色素成分の少なくとも1種を含有する前記項1〜4のいずれかに記載の酸化性ガス検知用インキ組成物。
【0013】
6. 前記項1〜5のいずれかに記載のインキ組成物からなる変色層を含む酸化性ガス検知インジケーター。
【0014】
7. さらに酸化性ガス雰囲気下で変色しない非変色層を含む前記項6記載の酸化性ガス検知インジケーター。
【0015】
8.さらに、染料としてアントラキノン系染料を含む、前記項1〜7のいずれかに記載の酸化性ガス検知インジケーター。
【発明の効果】
【0016】
本発明インキ組成物及びインジケーターは、アゾ系染料、メチン系染料、トリアリールメタン系染料及びチアジン系染料の少なくとも1種を検知成分として用いるので、変色後にもとの色の戻ることがなく安定性に優れており、確実に酸化性ガス処理が行われたことを検知することができる。また、上記アゾ系染料の種類・配合割合を変えることによって検知感度、変色速度等を自由に制御することも可能である。
【0017】
本発明インキ組成物では、樹脂系バインダー等を配合することによって印刷用、筆記用又はスタンプ用インキとしても用いることができ、紙、フィルム等の基材上に塗布して用いることができる。
【0018】
また、本発明インジケーターでは、非変色層を形成する場合、変色をより確実に識別することができる。さらに、全体の構成として、例えばシート状、板状等にすればスペースもとらず、しかも基材の選択によりフレキシブル性をもたせることもできるので、どこにでも設置することが可能となる。
【0019】
本発明インジケーターは、変色層と非変色層を適当に組み合わせることによって使用目的に応じた図柄、文字、記号等を表わすことができ、優れた意匠性を付与することができるので、幅広い用途に用いることができる。
【0020】
特に、本発明インジケーターでカチオン系界面活性剤を用いた場合には、より優れた変色性が得られ、高感度での検知を実現することができる。このカチオン系界面活性剤、増量剤等の成分の種類及び配合割合を変えることによって検知感度、変色速度等を自由に制御でき、定量的な測定を行うことも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<酸化性ガス検知用インキ組成物>
本発明の酸化性ガス検知用インキ組成物は、アゾ系染料、メチン系染料、トリアリールメタン系染料及びチアジン系染料の少なくとも1種(以下「本発明染料」ともいう。)を含有することを特徴とする。
【0022】
アゾ系染料は、発色団としてアゾ基−N=N−を有するものであれば限定されない。例えば、モノアゾ染料、ポリアゾ染料、金属錯塩アゾ染料、スチルベンアゾ染料、チアゾールアゾ染料等が挙げられる。より具体的に染料番号で表記すれば、C.I.Disperse Red 13
、C.I.Disperse Red 52、C.I.Disperse Violet 24、C.I.Disperse Blue、44、C.I.Disper
se Red 58、C.I.Disperse Red 88、C.I.Disperse Yellow 23、C.I.Disperse Orange 1、C.I.Disperse Orange 5、C.I.Solvent Red 1、 C.I.Solvent Red 3、 C.I.Solvent Red 23等を挙げることができる。これらは、1種又は2種以上で用いることができる。
【0023】
メチン系染料としては、メチン基を有する染料であれば良い。従って、本発明において、ポリメチン系染料、シアニン系染料等もメチン系染料に包含される。これらは、公知又は市販のメチン系染料から適宜採用することができる。具体的には、C.I.Basic Red 12、C.I.Basic Red 13、C.I.Basic Red 14、C.I.Basic Red 15、C.I.Basic Red 27、C.I.Basic Red 35、C.I.Basic Red 36、C.I.Basic Red 37、C.I.Basic Red 45、C.I.Basic Red 48、C.I.Basic Yellow 11、C.I.Basic Yellow 12、C.I.Basic Yellow 13、C.I.Basic Yellow 14、C.I.Basic Yellow 21、C.I.Basic Yellow 22、C.I.Basic Yellow 23、C.I.Basic Yellow 24、C.I.Basic Violet 7、C.I.Basic Violet 15、C.I.Basic Violet 16、C.I.Basic Violet 20、C.I.Basic Violet 21、C.I.Basic Violet 39、C.I.Basic Blue 62、C.I.Basic Blue 63等を挙げることができる。これらは、1種又は2種以上で用いることができ
る。
【0024】
トリアリールメタン系染料は限定的でなく、公知又は市販のものを使用することができる。例えば、C.I.Basic Blue 1、C.I.Basic Blue 26、C.I.Basic Blue 5、C.I.Basic Blue 8、C.I.Basic Green 1、C.I.Basic Red 9、C.I.Basic Violet 12、C.I.Basic Violet 14、C.I.Basic Violet 3、C.I.Solvent Green 15、C.I.Solvent Violet 8等を挙げること
ができる。これらは、1種又は2種以上で用いることができる。これらトリアリールメタン系染料の中でも、C.I.Solvent Violet 8、C.I.Basic Green 1、C.I.Basic Red 9、C.I.Basic Blue 1等を好適に用いることができる。
【0025】
チアジン系染料は特に限定されることなく、公知又は市販のものから選ぶことができる。例えば、C.I.Basic Blue 9、C.I.Basic Blue 25、C.I.Basic Blue 24、C.I.Basic Blue
17、C.I.Basic Green 5、C.I.Solvent Blue 8等を挙げることができる。これらは、1種又は2種以上で用いることができる。これらチアジン系染料の中でも、C.I.Basic Blue 9等を好適に用いることができる。
【0026】
本発明染料の含有量は、用いる染料の種類、所望の検知特性等により異なるが、インキ組成物中0.01〜10重量%とし、好ましくは0.05〜5重量%、より好ましくは0.1〜2重量%とすれば良い。
【0027】
本発明では、本発明染料以外の染料又は顔料を併存させても良い。例えば、アントラキノン系染料も併用することができる。アントラキノン系染料は、アントラキノンを基本骨格するものであれば特に制限されず、公知のアントラキノン系分散染料等も使用できる。
【0028】
より具体的には、例えば1,4−ジアミノアントラキノン(C.I.Disperse Violet 1)
、1−アミノ−4−ヒドロキシ−2−メトキシアントラキノン(C.I.Disperse Red 4)、1−アミノ−4−メチルアミノアントラキノン(C.I.DisperseViolet 4)、1,4−ジアミノ−2−メトキシアントラキノン(C.I.Disperse Red 11)、1−アミノ−2−メチル
アントラキノン(C.I.Disperse Orange 11)、1−アミノ−4−ヒドロキシアントラキノン(C.I.Disperse Red 15)、1,4,5,8−テトラアミノアントラキノン(C.I.Disperse Blue 1)、1,4−ジアミノ−5−ニトロアントラキノン(C.I.Disperse Violet 8
)等を挙げることができる(カッコ内は染料番号)。その他にも C.I.Solvent Blue 14、C.I.Solvent Blue 63、C.I.Solvent Violet 13、C.I.Solvent Violet 14、C.I.SolventRed 52、C.I.Solvent Red 114、C.I.Vat Blue 21、C.I.Vat Blue 30、C.I.VatViolet 15、C.I.Vat Violet 17、C.I.Vat Red 19、C.I.Vat Red 28、C.I.Acid Blue 23、C.I.Acid Blue 80、C.I.Acid Violet 43、C.I.Acid Violet 48、C.I.Acid Red 81、C.I.Acid Red 83、
C.I.Reactive Blue 4、C.I.Reactive Blue 19、C.I.Disperse Blue 7 等として知られて
いる染料も使用することができる。これらのアントラキノン系染料は、単独で又は2種以上併用することができる。これらアントラキノン系染料の中でも、C.I Disperse Blue 7
、C.I Disperse Violet1 等が好ましい。また、本発明では、これらのアントラキノン系
染料の種類(分子構造等)を変えることによって検知感度の制御を行うこともできる。
【0029】
アントラキノン系染料の含有量は限定的ではないが、インキ組成物中0.01〜10重量%、特に0.05〜5重量%とすることが望ましい。
【0030】
本発明では、これら以外の染料又は顔料を併存させても良い。特に、酸化性ガス処理雰囲気下で変色しない色素成分(「非変色色素」という)を含有させても良い。これによって、ある色から他の色への色調の変化により視認効果をいっそう高めることができる。非変色色素としては、公知のインキ(普通色インキ)を使用することができる。この場合の非変色色素の含有量は、その非変色色素の種類等に応じて適宜設定すれば良い。
【0031】
本発明インキ組成物中にカチオン系界面活性剤をさらに含有することがより好ましい。
【0032】
上記カチオン系界面活性剤としては、特に制限されないが、特にアルキルアンモニウム塩、イソキノリニウム塩、イミダゾリニウム塩及びピリジニウム塩のすくなくとも1種を用いることができる。これらは、公知のもの又は市販品も使用できる。本発明では、これらカチオン系界面活性剤を前記アントラキノン系染料と併用することによって、より優れた検知感度を得ることができる。
【0033】
アルキルアンモニウム塩の中でも、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩等が好ましい。具体的には、塩化ヤシアルキルトリメチルアンモニウム、塩化牛脂アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化ジオクチルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウム等が挙げられる。特に、塩化ヤシアルキルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等が好ましい。
【0034】
イソキノリニウム塩としては、例えばラウリルイソキノリニウムブロマイド、セチルイソキノリニウムブロマイド、セチルイソキノリニウムクロライド、ラウリルイソキノリニウムクロライド等が挙げられる。この中でも、特にラウリルイソキノリニウムブロマイドが好ましい。
【0035】
イミダゾリニウム塩としては、例えば1−ヒドロキシエチル−2−オレイルイミダゾリニウムクロライド、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムクロライド等が挙げられる。この中でも、特に2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムクロライドが好ましい。
【0036】
ピリジニウム塩としては、例えばピリジニウムクロライド、1−エチルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、1−ブチルピリジニウムクロライド、N−n−ブチルピリジニウムクロライド、ヘキサデシルピリジニウムブロマイド、N−ヘキサデシルピリジニウムブロマイド、1−ドデシルピリジニウムクロライド、3−メチルヘキシルピリジニウムクロライド、4−メチルヘキシルピリジニウムクロライド、3−メチルオクチルピリジニウムクロライド、2−クロロ−1−メチルピリジニウムアイオダイド、3,4−ジメチルブチルピリジニウムクロリド、ピリジニウム−n−ヘキサデシルクロリド−水和物、N−(シアノメチル)ピリジニウムク
ロリド、N−アセトニルピリジニウムブロマイド、1−(アミノホルミルメチル)ピリジニウムクロライド、2−アミジノピリジニウムクロライド、2−アミノピリジニウムクロライド、N−アミノピリジニウムアイオダイド、1−アミノピリジニウムアイオダイド、1−アセトニルピリジニウムクロリド、N−アセトニルピリジニウムブロマイド等が挙げられる。この中でも、特にヘキサデシルピリジニウムクロライドが好ましい。
【0037】
カチオン系界面活性剤の含有量は、用いるカチオン系界面活性剤の種類等により変更できるが、本発明インキ組成物中0.2〜30重量%、特に0.5〜10重量%とすることが好ましい。
【0038】
本発明のインキ組成物では、必要に応じて樹脂系バインダー、増量剤、溶剤等の公知のインキに用いられている成分を適宜配合することができる。
【0039】
樹脂系バインダーとしては、基材の種類等に応じて適宜選択すれば良く、例えば筆記用、印刷用等のインキ組成物に用いられている公知の樹脂成分をそのまま採用できる。具体的には、例えばマレイン酸樹脂、アミド樹脂、ケトン樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジン変性樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、セルロース系樹脂、ポリエステル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、スチレンアクリル酸樹脂、アクリル系樹脂等を挙げることができる。
【0040】
樹脂系バインダーの含有量は、用いる樹脂系バインダーの種類、所望のインキ特性等により適宜設定できるが、本発明インキ組成物中50重量%以下、特に5〜35重量%とすることが好ましい。
【0041】
増量剤としては、特に制限されず、例えばベントナイト、活性白土、酸化アルミニウム、シリカ等を挙げることができる。その他にも公知の体質顔料として知られている材料を用いることができる。この中でも、多孔質のものが好ましく、特にシリカがより好ましい。このような増量剤を添加することにより、主として検知感度を高めることができる。
【0042】
増量剤の含有量は、用いる増量剤の種類等にもよるが、本発明インキ組成物中1〜30重量%、特に2〜20重量%とすることが好ましい。
【0043】
本発明で使用できる溶剤としては、通常、印刷用、筆記用等のインキ組成物に用いられる溶剤であればいずれも使用できる。例えば、アルコール系、エステル系、エーテル系、ケトン系、炭化水素系等の各種溶剤が使用でき、使用する染料、樹脂系バインダーの溶解性等に応じて適宜選択すれば良い。
【0044】
溶剤の含有量は、本発明インキ組成物から溶剤以外の成分を除いた残部となるように適宜調整すれば良い。
【0045】
これら各成分は、同時に又は順次に配合し、ホモジナイザー、デゾルバー等の公知の攪拌機を用いて均一に混合すれば良い。例えば、まず溶剤に本発明染料、必要に応じてカチオン系界面活性剤、樹脂系バインダー、増量剤等を順に配合し、攪拌機により混合・攪拌すれば良い。
【0046】
(2)酸化性ガス検知インジケーター
本発明の酸化性ガス検知インジケーターは、前記インキ組成物からなる変色層を有する。一般的には、変色層は、基材上に好適に形成することができる。
【0047】
基材としては、変色層を形成できるものであれば特に制限されない。例えば、金属・合
金、木質材料、紙、セラミックス、ガラス、コンクリート、プラスチックス、繊維類(不織布、織布、その他の繊維シート)、これらの複合材料等を用いることができる。
【0048】
本発明における変色層は、色が他の色に変化するもののほか、色が退色又は消色するものも包含される。
【0049】
変色層の形成は、本発明インキ組成物を用い、シルクスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、フレキソ印刷等の公知の印刷方法に従って行うことができる。また、印刷以外の方法でも形成できる。例えば、基材をインキ組成物中に浸漬することによって変色層を形成することもできる。紙、不織布等のようにインキが浸透する材料には特に好適である。
【0050】
本発明では、さらに酸化性ガス雰囲気下で変色しない非変色層が基材上及び/又は変色層上に形成されていても良い。非変色層は、通常は市販の普通色インキにより形成することができる。例えば、水性インキ、油性インキ、無溶剤型インキ等を用いることができる。非変色層の形成に用いるインキには、公知のインキに配合されている成分、例えば樹脂系バインダー、増量剤、溶剤等が含まれていても良い。
【0051】
非変色層の形成は、変色層の場合と同様にすれば良い。例えば、普通色インキを用い、シルクスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、フレキソ印刷等の公知の印刷方法に従って行うことができる。なお、変色層・非変色層の印刷の順序は特に制限されず、印刷するデザイン等に応じて適宜選択すれば良い。
【0052】
本発明インジケーターでは、変色層及び非変色層をそれぞれ1層ずつ形成しても良いし、あるいはそれぞれ複数層形成しても良い。また、変色層どうし又は非変色層どうしを積層しても良い。この場合、変色層どうしが互いに同じ組成であっても又は異なる組成であっても良い。同様に、非変色層どうしが互いに同じ組成であっても又は異なる組成であっても良い。
【0053】
さらに、変色層及び非変色層は、基材又は各層の全面に形成しても良く、あるいは部分的に形成しても良い。これらの場合、特に変色層の変色を確保するために、少なくとも1つの変色層の一部又は全部が酸化性ガス処理雰囲気に晒されるように変色層及び非変色層を形成すれば良い。
【0054】
本発明では、酸化性ガス処理の完了が確認できる限り、変色層と非変色層とをどのように組み合わせても良い。例えば、変色層の変色によりはじめて変色層と非変色層の色差が識別できるように変色層及び非変色層を形成したり、あるいは変色によってはじめて変色層及び非変色層との色差が消滅するように形成することもできる。本発明では、特に、変色によってはじめて変色層と非変色層との色差が識別できるように変色層及び非変色層を形成することが好ましい。
【0055】
色差が識別できるようにする場合には、例えば変色層の変色によりはじめて文字、図柄及び記号の少なくとも1種が現れるように変色層及び非変色層を形成すれば良い。本発明では、文字、図柄及び記号は、変色を知らせるすべての情報を包含する。これら文字等は、使用目的等に応じて適宜デザインすれば良い。
【0056】
また、変色前における変色層と非変色層とを互いに異なる色としても良い。例えば、両者を実質的に同じ色とし、変色後にはじめて変色層と非変色層との色差(コントラスト)が識別できるようにしても良い。
【0057】
本発明インジケーターでは、変色層と非変色層とが重ならないように変色層及び非変色層を形成することができる。これにより、使用するインキ量を節約することが可能である。
【0058】
さらに、本発明では、変色層及び非変色層の少なくとも一方の層上にさらに変色層又は非変色層を形成しても良い。例えば、変色層と非変色層とが重ならないように変色層及び非変色層を形成した層(「変色−非変色層」という)の上からさらに別のデザインを有する変色層を形成すれば、変色−非変色層における変色層及び非変色層の境界線が実質的に識別できない状態にすることができるので、より優れた意匠性を達成することができる。
【0059】
本発明のインジケーターは、酸化性ガスを検知する場合に適用できる。特に、酸化性ガスとして、例えば、オゾン、過酸化水素、エチレンオキサイド、窒素酸化物等が挙げられる。これらのガスに晒された本発明インジケーターは、本発明染料が反応することにより本発明染料の色が変化する。従って、インジケーターの使用に際しては、例えば市販の酸化性ガス処理装置内に本発明インジケーターを置き、酸化性ガスにより滅菌、消毒等を施す器材等とともに酸化性ガス雰囲気下に晒せば良い。この場合、装置内に置かれたインジケーターの変色層の変色により所定の酸化性ガスによる処理が行われたこと検知することができる。
【実施例】
【0060】
以下に実施例を示し、本発明の特徴を一層明確にする。なお、本発明は、実施例の態様に制限されない。
【0061】
実施例1〜18
表1に示す成分を用いてインキを調製した。より具体的には、溶剤、染料及び樹脂をディゾルバーで攪拌混合した後、非変色色素(必要な場合)、樹脂バインダーを加えてさらに攪拌し、カチオン系界面活性剤及び増量剤を添加混合することにより、インキを得た。
【0062】
【表1】

【0063】
なお、表1中の各成分の詳細は、以下のとおりである。
(1)染料
C.I.Basic Red 14:メチン系染料
C.I.Basic Violet 7:アゾ系染料
C.I.Disperse Orange 13:アゾ系染料
C.I.Basic Blue 9:チアジン系染料
C.I.Solvent Violet 8:トリアリールメタン系染料
C.I.Solvent Blue 14:アントラキノン系染料
(2)非変色色素
マイクロリスグリーンG−T(チバスペシャリティケミカルズ製)
マイクロリスイエロー3R−T(チバスペシャリティケミカルズ製)
(3)樹脂バインダー
バーサミド756(コグニスジャパン製、ポリアミド)
ジョンクリル690(ジョンサンポリマー製、スチレンアクリル酸樹脂)
デンカブチラール#2000−L(電気化学工業製、ポリビニルブチラール)
硝化綿RS1/2(ダイセル化学製、ニトロセルロース)
(4)カチオン系界面活性剤
NIKKOL CA−2150(日光ケミカルズ製)
NIKKOL CA−2465(日光ケミカルズ製)
ラウリルイソキノリニウムブロマイド(和光純薬工業株式会社製、試薬)
2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムクロライド(和光純薬工業株式会社製、試薬)
塩化セチルピリジニウム(和光純薬工業株式会社製、試薬)
(5)増量剤
アエロジルR−972(日本アエロジル製)
(6)溶剤
ブチルセロソルブ
シクロヘキサノン
試験例1
各実施例で得られたインキ組成物のオゾンによる変色性を調べた。各インキ組成物を用いてシルクスクリーン印刷(350メッシュ)によりPETフィルム上に印刷した。オゾン発生装置でCT値が1000ppm・minの条件で印刷物をオゾンに晒した。処理後のサンプルの変色を目視にて観察した。その結果を表1に示す。
【0064】
試験例2
各実施例で得られたインキ組成物の過酸化水素ガスによる変色性を調べた。各インキ組成物を用いてシルクスクリーン印刷(350メッシュ)によりPETフィルム上に印刷した。40℃の減圧した密閉容器中に18000ppm・minとなるように過酸化水素水を滴下し、その雰囲気中に印刷物を暴露した。暴露後のサンプルの変色を目視にて観察した。その結果を表1に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アゾ系染料、メチン系染料、トリアリールメタン系染料及びチアジン系染料の少なくとも1種を含有することを特徴とする酸化性ガス検知用インキ組成物。
【請求項2】
さらに、カチオン系界面活性剤を含有する請求項1記載の酸化性ガス検知用インキ組成物。
【請求項3】
カチオン系界面活性剤が、アルキルトリメチルアンモニウム塩、イソキノリニウム塩、イミダゾリニウム塩及びピリジニウム塩から選ばれる少なくとも1種である請求項2記載の酸化性ガス検知用インキ組成物。
【請求項4】
さらに増量剤及び樹脂系バインダーの少なくとも1種を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の酸化性ガス検知用インキ組成物。
【請求項5】
さらに、酸化性ガス雰囲気下で変色しない色素成分の少なくとも1種を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の酸化性ガス検知用インキ組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のインキ組成物からなる変色層を含む酸化性ガス検知インジケーター。
【請求項7】
さらに酸化性ガス雰囲気下で変色しない非変色層を含む請求項6記載の酸化性ガス検知インジケーター。
【請求項8】
さらに、染料としてアントラキノン系染料を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の酸化性ガス検知インジケーター。

【公開番号】特開2011−81007(P2011−81007A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263654(P2010−263654)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【分割の表示】特願2005−64179(P2005−64179)の分割
【原出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(390039734)株式会社サクラクレパス (211)
【Fターム(参考)】