過酸化水素水の霧化装置
【課題】取付時の振動板の歪を抑制した霧化装置を提供する。
【解決手段】過酸化水素水が貯留される貯留部30と、貯留部内の過酸化水素水がキャリアガスとともに排出されるように過酸化水素水を超音波振動により霧化させる霧化部とを有する霧化装置において、貯留部は、底板311を貫通して収容部と連通する開口312と、底板の外面における開口の周囲に連続的に形成される溝313と、溝に底板の外面から突出するように配置される弾性シール部材33と、開口及び溝を覆う振動板32と、振動板の開口との対向部分を露出させた状態で、振動板が開口を密閉するように弾性シール部材および底板の外面に押し付けて固定する固定板34とを有し、底板の外面は、溝よりも内側の第1外面315と溝よりも外側の第2外面343との間に第1段差L1を有し、固定板の底板との対向面は、固定板が底板に嵌合されるように第1段差に対応する第2段差M1を有する。
【解決手段】過酸化水素水が貯留される貯留部30と、貯留部内の過酸化水素水がキャリアガスとともに排出されるように過酸化水素水を超音波振動により霧化させる霧化部とを有する霧化装置において、貯留部は、底板311を貫通して収容部と連通する開口312と、底板の外面における開口の周囲に連続的に形成される溝313と、溝に底板の外面から突出するように配置される弾性シール部材33と、開口及び溝を覆う振動板32と、振動板の開口との対向部分を露出させた状態で、振動板が開口を密閉するように弾性シール部材および底板の外面に押し付けて固定する固定板34とを有し、底板の外面は、溝よりも内側の第1外面315と溝よりも外側の第2外面343との間に第1段差L1を有し、固定板の底板との対向面は、固定板が底板に嵌合されるように第1段差に対応する第2段差M1を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過酸化水素水の霧化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト細胞等の生体由来材料を対象とする作業を行うアイソレータにおいては、作業前に作業室内を限りなく無菌状態にするために滅菌処理が行われる。この滅菌処理では、例えば、ガス化した過酸化水素水を作業室内に供給することで、作業室内に存在する雑菌等を殺滅する。このような過酸化水素水をガス化してアイソレータの作業室内に供給する滅菌物質供給装置を本願出願人は出願した(特許出願:特願2009−178085)。
【0003】
この滅菌物質供給装置では、過酸化水素水を溜めるカップと超音波振動子とヒータとを備え、超音波振動によって液体の過酸化水素水を霧化し、この霧化した過酸化水素水をヒータで加熱してガス化している。カップの過酸化水素水がなくなると超音波振動子が空焚き状態となってダメージを受けるので、カップの下に収容部を設けてそこに超音波伝播物質(例えば、純水)を満たし、超音波振動子は収容部の下に設けて、超音波振動を伝播物質を介してカップの過酸化水素水に伝えるようにしている。そして、カップの底部分、伝播物質を満たした収容部との境目には、伝播物質と過酸化水素水が混ざらないように密封するとともに、超音波振動が効率良く伝わるように、ステンレス製の薄板(振動板)を取り付けている。超音波振動子が発生した超音波振動は伝播物質を伝わり、振動板を透過して過酸化水素水表面に達するのでそこで水柱が立ち、霧化が促進されるものである。
【0004】
同装置では、振動板を取り付ける際、気密性を保つためにOリングを使用している。上記特許出願における図2A及び図3Aに示されるように、カップ214の底面に環状の溝2145を切り、そこにOリング2144を嵌め込んで、その上に振動板2141、そして、押え板としての平板2142を重ねて螺子2143で固定している。このような構成とするとき、通常、組み付け当初にはOリングが溝の外周側の壁面に当接するように、環状の溝2145の外径と溝の幅が設定されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−169366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような霧化装置では、螺子を締めこんで平板により振動板をOリングに押し付けていくと、Oリングは弾性変形しつつ溝の底面と外周面及び振動板に密着して気密にする。ところで、このときOリングは、押さえつけられて扁平となるので、振動板との接点が組み付け完了時には溝の外周面から離れる、即ち、内側に寄ることになる。振動板は極めて薄い板からなるため、装置に取り付けたとき、このOリングの変形に引きずられて皺が寄ったりひずみが生じることがあった。振動板に皺やひずみが生じた場合、そこで超音波振動が屈折したり反射するものと考えられ、超音波振動が拡散・減衰してしまい、過酸化水素水表面における水柱形成に悪影響を与えて霧化する速度が低下していた。また、振動板の寿命にも悪影響を与える虞があった。振動板に生じるひずみは、振動板を霧化装置に組み付ける作業の際に生じるので、個々の装置によりその程度が異なり、霧化装置の品質を一定に保つことが困難となる虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の過酸化水素の霧化装置は、過酸化水素水が貯留される貯留部と、前記貯留部内の前記過酸化水素水がキャリアガスとともに排出されるように前記過酸化水素水を超音波振動により霧化させる霧化部と、を有する過酸化水素水の霧化装置において、前記霧化部は超音波振動を伝播する伝播液を貯留する収容部を備え、前記貯留部は、底板を貫通して前記収容部と連通する開口と、前記底板の外面における前記開口の周囲に連続的に形成される溝と、前記溝に前記底板の外面から突出するように配置される弾性シール部材と、前記開口及び前記溝を覆う振動板と、前記振動板の前記開口との対向部分を露出させた状態で、前記振動板が前記開口を密閉するように前記弾性シール部材および前記底板の外面に押し付けて固定する固定板と、を有し、前記底板の外面は、前記溝よりも内側の第1外面と前記溝よりも外側の第2外面との間に第1段差を有し、前記固定板の前記底板との対向面は、前記固定板が前記底板に嵌合されるように前記第1段差に対応する第2段差を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の過酸化水素の霧化装置によれば、組み立ての際に振動板にひずみが生じることを防止できるため、過酸化水素水の霧化の高効率化、振動板の長寿命化、品質の一定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】アイソレータの構成例を示す図である。
【図2】滅菌ガス生成装置の構成例を示す図である。
【図3】(a)は、第1実施形態に係る霧化装置の貯留部の分解図であり、(b)は、(a)に示す霧化装置の貯留部を組み立てた図である。
【図4】(a)は第1実施形態にかかる霧化装置の貯留部を超音波振動子側から撮影した写真であり、(b)は比較対象の霧化装置のカップの底面に螺子によって固定された振動板及び平板を超音波振動子側から撮影した写真である。
【図5】第1実施形態に係る霧化装置及び比較対象の霧化装置において、それぞれ霧化を開始してからの経過時間と霧化量との関係を示す図である。
【図6】(a)は、第2実施形態に係る霧化装置の貯留部の分解図であり、(b)は、(a)に示す霧化装置の貯留部を組み立てた図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0011】
===第1実施形態===
以下、本発明の第1実施形態について説明する。なお、第1実施形態に係る霧化装置100は、本実施形態における滅菌ガス生成装置20として、アイソレータに組み込まれている。このため、アイソレータを例に挙げて説明する。
なお、本明細書において、過酸化水素水とは過酸化水素を水に溶解した過酸化水素水溶液のことであり、本実施形態では過酸化水素が35%の水溶液を主に使用している。また、過酸化水素ガスを生成するとは純粋に過酸化水素の気体のみを生成するのではなく、過酸化水素及び過酸化水素水のミストが一部混ざったものも含めて使用している。
【0012】
<アイソレータの全体構成>
図1に示すように、アイソレータは、作業室1、気体供給部2、気体排出部3、滅菌ガス供給装置4、及び制御部5を有している。
【0013】
作業室1は、無菌環境下での作業を行うための作業空間を区画する部分であり、前面に前面扉6を有する箱状部材によって構成されている。前面扉6は、外部から開閉可能に構成されている。この前面扉6には、作業用グローブ7が設けられている。この作業用グローブ7は、作業空間8で作業を行う際に作業者の腕が挿入される。
【0014】
作業室1における一方の側面には気体供給口9が設けられている。この気体供給口9を通じて気体供給部2からの気体(例えば滅菌ガスとしての過酸化水素ガス)が供給される。ここで、気体供給口9にはHEPAフィルタ10が設けられている。このため、気体供給部2からの気体に含まれる埃等はHEPAフィルタ10で捉えられ、気体のみが作業空間8に供給される。
【0015】
作業室1における他方の側面には気体排出口11が設けられている。この気体排出口11にもHEPAフィルタ10が設けられている。このため、気体排出口11を通じて埃等が作業空間8に入り込むことが防止される。そして、気体排出口11からは作業空間8内の気体が排出される。排出された気体は、気体排出部3へと送られる。
【0016】
気体供給部2は、作業室1へ気体を供給する部分である。この気体供給部2には、吸気口12、第1三方弁13、及びファン14が設けられている。
【0017】
吸気口12は、外部から空気を取り込む部分である。ファン14は、外部から取り込んだ空気を、第1三方弁13へと送出する。第1三方弁13は、滅菌ガス供給装置4、ファン14、及び作業室1のそれぞれと連通されている。そして、制御部5からの制御情報に応じて流路を切り替える。
【0018】
従って、第1三方弁13によって滅菌ガス供給装置4と作業室1とが連通されているとき、過酸化水素ガスが作業室1へと供給される。一方、第1三方弁13によってファン14と作業室1とが連通されているとき、ファン14の動作によって空気が作業室1へと供給される。なお、ファン14は、制御部5からの制御信号によって動作状態と停止状態とが切り替えられる。また、気体の送出量も調整することができる。
【0019】
気体排出部3は、作業室1の気体を排出する部分である。この気体排出部3には、第2三方弁15、滅菌物質低減処理部16、排気口17、及びファン21が設けられている。第2三方弁15は、作業室1の気体排出口11、ファン21、及び滅菌物質低減処理部16のそれぞれと連通されている。そして、制御部5からの制御情報に応じて流路を切り替える。例えば、気体排出口11と滅菌物質低減処理部16とを連通したり、気体排出口11とファン21とを連通したりする。
【0020】
ファン21は、気体排出口11からの気体を滅菌ガス供給装置4(滅菌ガス生成装置20)に供給する。このため、気体排出口11とファン21とが連通され、滅菌ガス供給装置4と作業室1とが連通されている場合には、気体排出口11からの気体は、アイソレータ内を循環することになる。
【0021】
滅菌物質低減処理部16は、第2三方弁15と排気口17との間に設けられており、第2三方弁15を通じて送られてきた気体中の過酸化水素(滅菌物質)について、その濃度を低減する処理を行う部分である。この滅菌物質低減処理部16は、例えば白金などの金属触媒や活性炭によって構成される。なお、滅菌物質低減処理部16に関し、過酸化水素の濃度を低減できれば、金属触媒や活性炭に限定されるものではない。排気口17は、滅菌物質低減処理部16で処理された後の気体を大気に排出する部分である。
【0022】
滅菌ガス供給装置4は、過酸化水素水をガス化して供給する。この滅菌ガス供給装置4は、滅菌物質カートリッジ18、ポンプ19、及び滅菌ガス生成装置20を有する。滅菌物質カートリッジ18は、滅菌物質としての過酸化水素水を貯蔵する。ポンプ19は、滅菌物質カートリッジ18に貯蔵された過酸化水素水を汲み上げ、滅菌ガス生成装置20に送出する。このポンプ19は、例えばペリスタポンプによって構成される。滅菌ガス生成装置20は、供給された過酸化水素水から過酸化水素ガス(滅菌ガス)を発生させる。発生した過酸化水素ガスは、例えば第1三方弁13に供給される。なお、滅菌ガス生成装置20については後で詳しく説明する。
【0023】
制御部5は、前述した各部を電気的に制御する部分である。この制御部5は、例えば、気体供給部2が有する第1三方弁13やファン14、気体排出部3が有する第2三方弁15やファン21、及び滅菌ガス供給装置4が有する滅菌ガス生成装置20等を制御する。
【0024】
制御部5による制御によって、例えば、滅菌ガス生成装置20で生成された過酸化水素ガスを、第1三方弁13を通じて作業室1へ供給するとともに、作業室1から排出された過酸化水素ガスを、第2三方弁15を通じて滅菌ガス生成装置20の側へ送り、系内を循環させることもできる。そして、系内で過酸化水素ガスを循環させると、この系内を無菌環境にすることができる。前述したように、無菌環境とは、作業室1で行われる作業に必要な物質以外の物質の混入を防いだ限りなく無塵、無菌に近い環境をいう。
【0025】
<滅菌ガス生成装置について>
次に、滅菌ガス生成装置20の一例について説明する。図2の部分断面図に示すように、滅菌ガス生成装置20は、貯留部30及び霧化部40からなる霧化装置100と、ガス化部50とを有している。尚、図2は、滅菌ガス生成装置20において主に後述するガス化部50のヒータ52を除く構成を鉛直方向に切断した場合の部分断面図であり、断面箇所を斜線によって示している。
【0026】
貯留部30は、ポンプ19から供給された過酸化水素水を貯留する部分である。この貯留部30は、過酸化水素水が貯留される貯留部本体31と、貯留部本体31内の過酸化水素水に超音波振動を伝える振動板32と、貯留部本体31に対して振動板32を固定するための弾性シール部材33及び固定板34等を備えている。貯留部30の詳細については後述する。
【0027】
霧化部40は、貯留部30に貯留された過酸化水素水を霧化する部分であり、収容部41と、超音波振動子42とを備えている。収容部41は、超音波振動子42や超音波伝播液43を収容する部分であり、上面に開口を有する中空円筒状の容器である。この収容部41は、ステンレス鋼等の金属や樹脂によって作製されている。収容部41の内側空間には、この内側空間を上下に仕切る円形板状の仕切板44が設けられている。
【0028】
超音波振動子42は、超音波振動を発生する素子であり、収容体45の内部に収容された状態で仕切板44に取り付けられている。この超音波振動子42は、制御部5からの制御情報に応じて動作が制御される。例えば、振動の開始や停止、振動の強さが制御部5によって制御される。
【0029】
収容部41における仕切板44よりも上側の空間には、超音波伝播液43が貯留される。本実施形態では、超音波伝播液43として水を用いている。なお、超音波伝播液43は水に限らず、超音波振動を伝播できる液体であればよい。この超音波伝播液43を介して、超音波振動子42による超音波振動が貯留部30の振動板32に伝播される。なお、超音波伝播液43は水に限られず、超音波振動を振動板32に伝播できる液体であればよい。
【0030】
そして、貯留部30に過酸化水素水が貯留された状態で超音波振動子42を動作させると、超音波伝播液43を介して超音波振動が振動板32に伝播され、更に、貯留部30の過酸化水素水に伝播され、過酸化水素水の表面に達したところで水柱が立ち、過酸化水素水が霧化される。
【0031】
次に、ガス化部50について説明する。ガス化部50は、霧化された過酸化水素水をガス化する部分であり、内筒部51、外筒部52、ガス導入管53等を含んで構成され、貯留部30の上方に設けられている。
【0032】
内筒部51は、金属製の円筒部材によって構成されている。なお、本実施形態の内筒部51は、ステンレス部材により作製されたステン部51Aと、ステン部51Aの下側に接続され、ステン部51Aよりも薄いアルミ部材により作製されたアルミ部51Bとを含む。内筒部51は、鉛直方向に向いた状態に取り付けられている。取り付け状態において、内筒部51は、その下端部55が貯留部30の直上となる高さとなるように位置決めされる。
【0033】
ヒータ52は、通電によって加熱される部材であり、円柱状の発熱体56と、発熱体56の周囲に取り付けられた伝熱性のフィン57とを有している。すなわち、発熱体56からの熱をフィン57によって拡散させている。このヒータ52は、内筒部51の内側空間に配置されている。例えば、上端側から内筒部51の長さの3/4程度の範囲に配置されている。
【0034】
ヒータ52の発熱体56と内筒部51の内壁面との間には、流路規制板58が取り付けられている。流路規制板58は、発熱体56との当接部分が半円形状に切り欠かれた略半円状の金属板によって構成される。この流路規制板58は、内筒部51の内側空間における片半部分を覆う状態で略水平方向に取り付けられている。また、流路規制板58は、上下方向に所定間隔をあけた状態で複数枚が互い違いに配置される。例えば、流路規制板58は、一定間隔で配置されたり、上側が密であって下側が粗になるように配置されたりする。また、ヒータ52の部分が密であってそれよりも下側で粗になるように配置されていてもよい。これらの流路規制板58によって、ヒータ52は、内筒部51の内側空間に位置決めされる。さらに、流路規制板58によって、内筒部51の内側空間には気体が通る蛇行流路が区画され、かつ、発熱体56で生じた熱が流路規制板58を通じて内筒部51に伝達される。
【0035】
内筒部51の上部側面には配管59が取り付けられている。この配管59を通じて、過酸化水素ガスが排出される。なお、温度センサ(不図示)によって配管59を流れるガスの温度が検出され、検出信号が制御部5へ出力される。また、内筒部51の上端部60は、フランジ状に形成されており、内側蓋部材61が取り付けられることで気密状態に封止されている。
【0036】
外筒部53は、内筒部51よりも一回り大きな直径の金属製の円筒部材によって構成されている。本実施形態の外筒部53は、ステンレス鋼管によって構成されている。
【0037】
外筒部53の内側空間には、内筒部51が配置されている。すなわち、外筒部53と内筒部51によって二重管が構成されている。外筒部53の下端部54は、前述したように貯留部30の上端部と気密状態で接続される。この外筒部53によって、内筒部51は、下端からその長さの約4/5程度の範囲が覆われている。外筒部53の上部側面には配管62が取り付けられている。この配管62はキャリアガスを導入するためのものである。すなわち、この配管62を通じてキャリアガスが外筒部53と内筒部51の間の空間(キャリアガス用のガス流路63)に流入する。なお、本実施形態では、キャリアガスとして清浄な空気を用いており、空気供給ファン(キャリアガス供給ファン)の回転によって空気が配管62に導入される。
【0038】
また、外筒部53の上端部65はフランジ状に形成されており、リング状の外側蓋部材66が取り付けられることで気密状態に封止されている。さらに、外筒部53の下部側面には、過酸化水素水を流すドレンチューブを通すためのチューブ用開口64が設けられている。なお、ドレンチューブとチューブ用開口64との隙間は、ブッシングによって塞がれる。このため、チューブ用開口64は気密状態で封止される。
【0039】
この滅菌ガス生成装置20は、前述したように、制御部5からの制御信号によって動作が制御され、滅菌ガスを生成する。滅菌ガス生成装置20では、制御信号によって、まず、ヒータ52(発熱体56)への通電と空気供給ファンの回転が開始される。これらにより、発熱体56の発熱、及び、キャリアガス(空気)の供給が開始される。また、ポンプ19が駆動されて滅菌物質カートリッジ18の過酸化水素水が、貯留部30に規定量供給される。
【0040】
配管62を流れるキャリアガスは、外筒部53の上部からガス流路63に流入し、このガス流路63を下方向に流れる。すなわち、内筒部51の外周面に沿って流れる。発熱体56からの熱は、流路規制板58やフィン57及び空気を通じて内筒部51に伝達されるので、内筒部51が加熱される。内筒部51が加熱されることで、内筒部51の外周面に沿って流れるキャリアガスとの間で熱交換が生じ、キャリアガスの温度が上昇する。
【0041】
キャリアガスは、貯留部30の位置で流れの方向を変える。すなわち、内筒部51の下端部55で回り込み、内筒部51の内側空間に流入する。そして、この内側空間を上昇する。発熱体56からの熱は、ヒータ52のフィン57を通じて内筒部51の内側空間に放出されるので、この内側空間を上昇するキャリアガスの温度をさらに上昇させる。加えて、内筒部51の内側空間には、複数の流路規制板58による蛇行流路が形成されているため、キャリアガスの移動距離を長くすることができ、キャリアガスの温度を確実に上昇させることができる。
【0042】
内筒部51から排出されるキャリアガスの温度が過酸化水素水の気化温度に達すると、超音波振動子42の駆動が開始される。前述したように、超音波振動子42による超音波振動は、超音波伝播液43を介して振動板32に伝播される。そして、振動板32の超音波振動によって貯留部30の過酸化水素水が霧化される。
【0043】
霧化された過酸化水素水はキャリアガスの流れに乗って内筒部51の内側空間を上昇する。このとき、キャリアガスがガス流路63を流れている最中に加熱されていること、及び、内側空間が蛇行流路を形成していることから、霧化された過酸化水素水を十分に加熱でき、確実にガス化することができる。また、キャリアガスが予め加熱されているので、霧化された過酸化水素水が内筒部51の下端部55に付着して液化されることを防止できる。
【0044】
さらに、本実施形態では、内筒部51が伝熱性の良好なアルミニウムによって構成されているため、この点でもキャリアガスを効率良く加熱することができ、過酸化水素水を確実にガス化できる。加えて、キャリアガスが予め加熱されていることから、貯留部30に貯留された過酸化水素水とキャリアガスとの間でも熱交換が生じ、過酸化水素水の蒸発が促進される。
【0045】
<貯留部について>
次に、図3(a)、(b)の断面図を参照して貯留部30の一例について説明する。貯留部30は、貯留部本体31に対して、弾性シール部材33を介して振動板32が固定されるように、固定板34がビス35の螺合によって取り付けられている。先ず、図3(a)を参照して、貯留部本体31に固定板34が取り付けられる前の貯留部30の各構成について説明する。
【0046】
貯留部本体31は、例えば金属製であり、内面側に逆円錐台状に窪んだ凹部310を備え、凹部310の底面には、貯留部本体31の内部と超音波伝播液43が溜められた収容部41とを連通するように、底板311を貫通する円形状の開口312が形成されている。尚、凹部310の上面側の内径は、ガス化部50の外筒部53の内径と略等しく、内筒部51の直径よりも大きく定められている。
【0047】
貯留部本体31の底板311の外面における開口312の周囲には、環状の溝313が形成されている。底板311の外面において、溝313よりも内側(開口312側)を第1外面315とし、溝313よりも外側(開口312と反対側)を第2外面316とする。第1外面315は、第2外面316より例えば約0.2mm程度窪み、第1外面315と第2外面316との間には第1段差L1が形成されている。第2外面316には、開口312の周りに例えば等間隔となるように複数の螺子孔314が形成されている。この螺子孔314の内部には、ビス35の雄螺子と螺合する雌螺子が形成されている。
【0048】
溝313における開口312と反対寄りの外周面には、底板311の外面から突出するように弾性シール部材33が配置される。弾性シール部材33は、例えばシリコンゴムによって作製された環状のパッキンである。
【0049】
振動板32は、例えば厚さが20μm程度のステンレス鋼の薄板によって形成されている。この振動板32は、貯留部本体31の開口312と、弾性シール部材33が配置された溝313とを覆うように配置される。また、このように配置された振動板32において、貯留部本体31の螺子孔314に対応する位置には、ビス35が挿通される貫通孔320が形成されている。
【0050】
固定板34は、金属製の板部材であり、振動板32を介して貯留部本体31の底板311と対向するように配置される。このように配置された固定板34において、貯留部本体31の第1外面315との対向面を第1対向面342とし、第2外面316との対向面を第2対向面343とする。固定板34の第2対向面343部分の厚さは例えば2mm程度となっている。また固定板34の第1対向面342部分の厚さは第2対向面343部分の厚さに比べて約0.2mm程度厚くなっている。つまり、固定板34における底板311の外面との対向面では、第1対向面342が第2対向面343よりも突出し、第1段差L1と対応する第2段差M1が形成されている。尚、本実施形態では、固定板34の底板311との対向面において、溝313と対向する部分の厚さも第2対向面343部分と同様に例えば2mm程度となっている。
【0051】
また、固定板34において、貯留部本体31の開口312に対応する位置には、振動板32を露出させる貫通孔340が形成され、螺子孔314に対応する位置には、ビス35が挿通される貫通孔341が形成されている。
【0052】
次に、図3(b)を参照して、貯留部本体31に対して固定板34を取り付けた貯留部30の構造について説明する。
【0053】
貯留部本体31における底板311の外面に対して、前述したように弾性シール部材33、振動板32、固定板34が配置されることで、螺子孔314と同心となった貫通孔320、341に対してビス35が挿通される。そして、螺子孔314の雌螺子にビス35の雄螺子を螺合させ締め付けることで、第1段差L1及び第2段差M1が嵌合するように、固定板34は、振動板32及び弾性シール部材33と共に、貯留部本体31における底板311の外面に対して固定される。この結果、固定板34が振動板32を弾性シール部材33および底板311に押し付けて固定する。これによって、振動板32が開口312を密閉する。この際、振動板32には、第1外面315と第1対向面342との間に挟持される部分と、第2外面316と第2対向面343との間に挟持される部分が生じる。このため、第1段差L1及び第2段差M1の高さによって振動板32が折れ曲がり、更に振動板32に対して鉛直方向に弾性シール部材33の弾性力がかかる。これによって、振動板32の開口312との対向部分は、開口312の中心から外縁に向かう方向(図3(b)に矢印で示す方向)に応力F1が加えられる。よって、固定板34によって、貯留部本体31に振動板32を固定することで、振動板32の開口312と対向する部分にひずみが生じることを防止できる。つまり、貯留部本体31内に貯留される過酸化水素水に対して、超音波振動を伝える振動板32の面を平面状にすることができる。
【0054】
尚、貯留部本体31に対して固定板34を取り付けた状態では、弾性シール部材33の底板311から突出する部分が、振動板32を介して固定板34に押圧されるため、弾性シール部材33は、溝313の外周面から開口312寄りの内周面に向かって広がるように、弾性力に抗して変形している。つまり、弾性シール部材33は、溝313の内周面から外周面に向かう方向に加えられる力による変形が生じにくくなっている。このため、例えば、貯留部本体31の内部の圧力が貯留部本体31の外部の圧力よりも高い場合に、弾性シール部材33に対して溝313の内周面側から外周面側に向かう方向に力が加えられても、弾性シール部材33の変形を防止でき、振動板32を介して開口312を効率よく密閉できる。
【0055】
<霧化装置の特性の比較>
ここで、図4(a)、(b)及び図5を参照して、本実施形態に係る霧化装置100と、背景技術に記載された特許出願における図2A及び図3Aに示すようにカップ214の底面に振動板2141が固定される際に、振動板2141にひずみが生じた場合の霧化装置(以下、比較対象の霧化装置と称する)との特性を比較する。尚、図4(a)は、本実施形態に係る霧化装置100において、貯留部30を超音波振動子42側から撮影した写真であり、図4(b)は、比較対象の霧化装置において、カップ214の底面に螺子2143によって固定された振動板2141及び平板2142を超音波振動子側から撮影した写真である。また、図5は、図4(a)に示す霧化装置100の霧化を開始してからの経過時間と過酸化水素水の減少量との関係を実線で示し、図4(b)に示す比較対象の霧化装置の霧化を開始してからの経過時間と過酸化水素水の減少量との関係を破線で示す図である。
【0056】
図4(a)、(b)に示すように、本実施形態に係る霧化装置100の振動板32は、比較対象の霧化装置に比べて、皺やひずみがより抑制された平面状となっている。また、図5に示すように、本実施形態に係る霧化装置100では、約20gの過酸化水素水が約6分間で霧化されることが確認され、比較対象の霧化装置では、約20gの過酸化水素水が約11分間で霧化されることが確認された。よって、本実施形態に係る霧化装置100では、過酸化水素水をより効率よく霧化できることが確認された。
【0057】
===第2実施形態===
以下、図6(a)、(b)を参照して、本発明の第2実施形態に係る霧化装置について説明する。尚、図6(a)、(b)において、図3(a)、(b)に示す構成と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0058】
第2実施形態に係る霧化装置は、図6(a)、(b)に示すように前述した霧化装置100の貯留部30にかえて貯留部36を備えている。貯留部36は、前述した貯留部30における貯留部本体31にかえて貯留部本体37を備えるとともに固定板34にかえて固定板38を備えている。そして、貯留部本体37に対して、弾性シール部材33を介して振動板32が固定されるように、固定板38がビス35の螺合によって取り付けられている。先ず、図6(a)を参照して、貯留部本体37に固定板38が取り付けられる前の貯留部36の構成のうち、貯留部30と異なる構成について主に説明する。
【0059】
貯留部本体37は、前述した貯留部本体31における底板311にかえて、底板319を備え、この底板319は、前述した底板311における第1外面315及び第2外面316にかえてそれぞれ第1外面317及び第2外面318を備えている。底板319の外面において、第1外面317は溝313よりも内側の面であり、第2外面318は溝313よりも外側の面である。
【0060】
第1外面317は、第2外面318より例えば約0.2mm程度突出し、第1外面317と第2外面318との間には第1段差L2が形成されている。第2外面318には、開口312の周りに例えば等間隔となるように複数の螺子孔314が形成されている。
【0061】
固定板38は、前述した固定板34における第1対向面342及び第2対向面343にかえてそれぞれ第1対向面344及び第2対向面345を備えている。第1対向面344は、貯留部本体37の第1外面317と対向する面であり、第2対向面345は貯留部本体37の第2外面318と対向する面である。
【0062】
固定板38の第2対向面345部分の厚さは例えば2mm程度となっている。また固定板38の第1対向面344部分の厚さは第2対向面345部分の厚さに比べて約0.2mm程度薄くなっている。つまり、固定板38における底板319の外面との対向面では、第1対向面344が第2対向面345よりも窪み、第1段差L2と対応する第2段差M2が形成されている。尚、本実施形態では、固定板38の底板311との対向面において、溝313と対向する部分の厚さも第2対向面345部分と同様に例えば2mm程度となっている。
【0063】
次に、図6(b)を参照して、貯留部本体37に対して固定板38を取り付けた貯留部36の構造について説明する。
【0064】
貯留部本体37における底板319の外面に対して、前述したように弾性シール部材33、振動板32、固定板38が配置されることで、螺子孔314と同心となった貫通孔320、341に対してビス35が挿通される。そして、螺子孔314の雌螺子にビス35の雄螺子を螺合させることで、第1段差L2及び第2段差M2が嵌合するように、固定板38は、振動板32及び弾性シール部材33を介して、底板319の外面に対して固定される。これによって、振動板32が開口312を密閉する。この際、弾性シール部材33が弾性変形することで開口312と振動板32との間の気密性が確保される。また、振動板32には、第1外面317と第1対向面344との間に挟持される部分と、第2外面318と第2対向面345との間に挟持され部分が生じる。このため、第1段差L2及び第2段差M2の高さによって振動板32が折れ曲がることで、振動板32の開口312との対向部分は、開口312の中心から外縁に向かう方向(図6(b)に矢印で示す方向)に応力F2が加えられる。よって、固定板38によって、貯留部本体37に振動板32を固定することで、振動板32の開口312と対向する部分にひずみが生じることを防止できる。つまり、貯留部本体37内に貯留される過酸化水素水に対して、超音波振動を伝える振動板32の面を平面状にすることができる。
【0065】
尚、第2実施形態に係る貯留部36では、弾性シール部材33が溝313における開口312と反対寄りの外周面に配置されることとしたが、特にこれに限定されるものではない。例えば、弾性シール部材33は、環の直径が溝313の直径よりも僅かに小さく、溝313の内周面に弾性力を抗して密着するように配置されてもよい。これによって、弾性シール部材33が溝313に密着した状態で、底板319の外面に対して固定板38等を取り付けることができるため、貯留部36の組み立てを容易にすることができる。
【0066】
<まとめ>
以上より、第1実施形態に係る霧化装置100(第2実施形態に係る霧化装置)は、少なくとも、過酸化水素水が貯留される貯留部30(36)と、貯留部30(36)内の過酸化水素水がキャリアガスとともに排出されるように過酸化水素水を超音波振動により霧化させる霧化部40とを有し、霧化部40は超音波振動伝播液43を貯留する収容部41を備え、貯留部30(36)は、底板311(319)を貫通して収容部41と連通する開口312と、底板311(319)の外面における開口312の周囲に連続的に形成される溝313と、溝313に底板311(319)の外面から突出するように配置される弾性シール部材33と、開口312及び溝313を覆う振動板32と、振動板32の開口312との対向部分を露出させた状態で、振動板32が開口312を密閉するように弾性シール部材33及び底板311(319)の外面に押し付けて固定する固定板34(38)とを有し、底板311(319)の外面は、溝313よりも内側の第1外面315(317)と溝313よりも外側の第2外面316(318)との間に第1段差L1(L2)を有し、固定板34(38)の底板311(319)との対向面は、固定板34(38)が底板311(319)に嵌合されるように第1段差L1(L2)に対応する第2段差M1(M2)を有していればよい。
【0067】
この第1実施形態に係る霧化装置100(第2実施形態に係る霧化装置)によれば、貯留部30(36)を組み立てる際に、第1段差L1(L2)及び第2段差M1(M2)によって、固定板34(38)と底板311(319)とが振動板32を介して嵌合する。これによって、振動板32の開口312との対向部分は、開口312の中心から外縁に向かう方向に応力F1(F2)が加えられるため、均一な平面状に保たれる。よって、霧化装置100の組み立てごとの品質を一定に保ちながら振動板32にひずみが生じることを防止することができる。そして、これにより、過酸化水素水の霧化速度を向上させるとともに振動板32を長寿命化することが期待できる。
【0068】
また、前述した第1実施形態に係る霧化装置100において、底板311の外面は、第1段差L1として、第1外面315が第2外面316よりも窪んだ段差を有し、弾性シール部材33は、溝313における開口312とは反対寄りの外周面に配置され、固定板34の底板311との対向面は、第2段差M1として、第1外面315との対向面である第1対向面342が第2外面316との対向面である第2対向面343よりも突出する段差を有している。
【0069】
この霧化装置100によれば、振動板32の開口312との対向部分にひずみが生じることを防止して、過酸化水素水の霧化速度を向上させること、霧化装置100の組み立てごとの品質を一定に保つことができる。さらに、弾性シール部材33は、溝313の外周面から内周面に向かって広がるように弾性変形した状態で固定板34によって固定されるため、弾性シール部材33の変形を効率よく防止でき、開口312を効率よく密閉できる。
【0070】
また、前述した第2実施形態に係る霧化装置において、底板319の外面は、第1段差L2として、第1外面317が第2外面318よりも突出した段差を有し、固定板38の底板319との対向面は、第2段差M2として、第1外面317との対向面である第1対向面344が第2外面318との対向面である第2対向面345よりも窪んだ段差を有している。
【0071】
この霧化装置によれば、振動板32にひずみが生じることを防止して、過酸化水素水の霧化速度を向上させること、霧化装置の組み立てごとの品質を一定に保つことができる。
【0072】
また、前述した第1実施形態に係る霧化装置100(第2実施形態に係る霧化装置)において、溝313は、環状の溝であり、弾性シール部材33は、環状のパッキンである。この霧化装置によれば、環状の溝313及び環状のパッキンである弾性シール部材33によって、振動板32の開口312との対向部分の中心から外縁側に向かってより均一に応力F1(F2)を加えることができる。このため、振動板32の開口312との対向部分をより均一な平面状とすることができる。
【0073】
また、前述した第1実施形態に係る霧化装置100(第2実施形態に係る霧化装置)において、固定板34(38)は、一枚板であり、溝313の周囲において底板311(319)に螺合される。この霧化装置によれば、振動板32の開口312との対向部分に霧化部40からの超音波振動をより確実に伝えることができる。また、ビス35の雄螺子と、底板311(319)に形成された螺子孔314の雌螺子との螺合によって、固定板34(38)が底板311(319)に取り付けられるため、底板311(319)の外面に対して振動板32をより確実且つ容易に固定することができる。
【0074】
また、前述した第1実施形態に係る霧化装置100(第2実施形態に係る霧化装置)において、固定板34(38)は、溝313の周囲において振動板32を介して底板311(319)に螺合される。この霧化装置によれば、振動板32に設けられた貫通孔321にビス35が挿通されるため、底板311(319)に振動板32をより確実に固定することができる。
【0075】
===その他の実施形態===
前述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更や改良等が可能であり、また本発明はその等価物も含むものである。
【0076】
前述した第1実施形態に係る霧化装置100では、螺子孔314に対して、貫通孔320、341を介して、ビス35が螺合されることで、固定板34によって、底板311の外面に振動板32が固定されることとしたが、特にこれに限定されるものではない。例えば、底板311の外面に対して、固定板34が接着剤によって取り付けられることで、振動板32が固定されてもよい。また、底板311の外面には螺子孔314のかわりに係止孔が設けられ、この係止孔に係止する爪部が固定板34に設けられてもよい。これによって、底板311の係止孔に固定板34の爪部が係止し、底板311に固定板34が取り付けられることで、底板311の外面に対して振動板32が固定されてもよい。これは、前述した第2実施形態に係る霧化装置においても、固定板38及び底板319について同様である。
【0077】
また、前述した第1実施形態に係る霧化装置100では、振動板32は、螺子孔314に対応する位置に貫通孔320が形成されていることとした。つまり、振動板32の径は、開口312を挟んで対向する螺子孔314同士の距離よりも長いこととした。しかし、特にこれに限定されるものではなく、振動板32の径は、環状の溝313の直径よりも長ければよい。これは、前述した第2実施形態に係る霧化装置においても同様である。
【符号の説明】
【0078】
1…作業室,2…気体供給部,3…気体排出部,4…滅菌ガス供給装置,5…制御部,6…前面扉,7…作業用グローブ,8…作業空間,9…気体供給口,10…HEPAフィルタ,11…気体排出口,12…吸気口,13…第1三方弁,14…ファン,15…第2三方弁,16…滅菌物質低減処理部,17…排気口,18…滅菌物質カートリッジ,19…ポンプ,20…滅菌ガス生成装置,21…ファン,30、36…貯留部,31、37…貯留部本体,32…振動板,33…弾性シール部材,34、38…固定板,35…ビス,40…霧化部,41…収容部,42…超音波振動子,43…超音波伝播液,44…仕切板,45…収容体,50…ガス化部,51…内筒部,51A…ステンレス部,51B…アルミ部,52…ヒータ,53…外筒部,54…外筒部の下端部,55…内筒部の下端部,56…発熱体,57…ファン,58…流路規制板,59、62…配管,60…内筒部の上端部,61…内側蓋部材,64…チューブ用開口,65…外筒部の上端部,66…外側蓋部材,100…霧化装置,310…凹部,311、319…底板,312…開口,313…溝,314…螺子孔,315,317…第1外面、316,318…第2外面、320、340、321…貫通孔,342、344…第1対向面,343、345…第2対向面
【技術分野】
【0001】
本発明は、過酸化水素水の霧化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト細胞等の生体由来材料を対象とする作業を行うアイソレータにおいては、作業前に作業室内を限りなく無菌状態にするために滅菌処理が行われる。この滅菌処理では、例えば、ガス化した過酸化水素水を作業室内に供給することで、作業室内に存在する雑菌等を殺滅する。このような過酸化水素水をガス化してアイソレータの作業室内に供給する滅菌物質供給装置を本願出願人は出願した(特許出願:特願2009−178085)。
【0003】
この滅菌物質供給装置では、過酸化水素水を溜めるカップと超音波振動子とヒータとを備え、超音波振動によって液体の過酸化水素水を霧化し、この霧化した過酸化水素水をヒータで加熱してガス化している。カップの過酸化水素水がなくなると超音波振動子が空焚き状態となってダメージを受けるので、カップの下に収容部を設けてそこに超音波伝播物質(例えば、純水)を満たし、超音波振動子は収容部の下に設けて、超音波振動を伝播物質を介してカップの過酸化水素水に伝えるようにしている。そして、カップの底部分、伝播物質を満たした収容部との境目には、伝播物質と過酸化水素水が混ざらないように密封するとともに、超音波振動が効率良く伝わるように、ステンレス製の薄板(振動板)を取り付けている。超音波振動子が発生した超音波振動は伝播物質を伝わり、振動板を透過して過酸化水素水表面に達するのでそこで水柱が立ち、霧化が促進されるものである。
【0004】
同装置では、振動板を取り付ける際、気密性を保つためにOリングを使用している。上記特許出願における図2A及び図3Aに示されるように、カップ214の底面に環状の溝2145を切り、そこにOリング2144を嵌め込んで、その上に振動板2141、そして、押え板としての平板2142を重ねて螺子2143で固定している。このような構成とするとき、通常、組み付け当初にはOリングが溝の外周側の壁面に当接するように、環状の溝2145の外径と溝の幅が設定されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−169366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような霧化装置では、螺子を締めこんで平板により振動板をOリングに押し付けていくと、Oリングは弾性変形しつつ溝の底面と外周面及び振動板に密着して気密にする。ところで、このときOリングは、押さえつけられて扁平となるので、振動板との接点が組み付け完了時には溝の外周面から離れる、即ち、内側に寄ることになる。振動板は極めて薄い板からなるため、装置に取り付けたとき、このOリングの変形に引きずられて皺が寄ったりひずみが生じることがあった。振動板に皺やひずみが生じた場合、そこで超音波振動が屈折したり反射するものと考えられ、超音波振動が拡散・減衰してしまい、過酸化水素水表面における水柱形成に悪影響を与えて霧化する速度が低下していた。また、振動板の寿命にも悪影響を与える虞があった。振動板に生じるひずみは、振動板を霧化装置に組み付ける作業の際に生じるので、個々の装置によりその程度が異なり、霧化装置の品質を一定に保つことが困難となる虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の過酸化水素の霧化装置は、過酸化水素水が貯留される貯留部と、前記貯留部内の前記過酸化水素水がキャリアガスとともに排出されるように前記過酸化水素水を超音波振動により霧化させる霧化部と、を有する過酸化水素水の霧化装置において、前記霧化部は超音波振動を伝播する伝播液を貯留する収容部を備え、前記貯留部は、底板を貫通して前記収容部と連通する開口と、前記底板の外面における前記開口の周囲に連続的に形成される溝と、前記溝に前記底板の外面から突出するように配置される弾性シール部材と、前記開口及び前記溝を覆う振動板と、前記振動板の前記開口との対向部分を露出させた状態で、前記振動板が前記開口を密閉するように前記弾性シール部材および前記底板の外面に押し付けて固定する固定板と、を有し、前記底板の外面は、前記溝よりも内側の第1外面と前記溝よりも外側の第2外面との間に第1段差を有し、前記固定板の前記底板との対向面は、前記固定板が前記底板に嵌合されるように前記第1段差に対応する第2段差を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の過酸化水素の霧化装置によれば、組み立ての際に振動板にひずみが生じることを防止できるため、過酸化水素水の霧化の高効率化、振動板の長寿命化、品質の一定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】アイソレータの構成例を示す図である。
【図2】滅菌ガス生成装置の構成例を示す図である。
【図3】(a)は、第1実施形態に係る霧化装置の貯留部の分解図であり、(b)は、(a)に示す霧化装置の貯留部を組み立てた図である。
【図4】(a)は第1実施形態にかかる霧化装置の貯留部を超音波振動子側から撮影した写真であり、(b)は比較対象の霧化装置のカップの底面に螺子によって固定された振動板及び平板を超音波振動子側から撮影した写真である。
【図5】第1実施形態に係る霧化装置及び比較対象の霧化装置において、それぞれ霧化を開始してからの経過時間と霧化量との関係を示す図である。
【図6】(a)は、第2実施形態に係る霧化装置の貯留部の分解図であり、(b)は、(a)に示す霧化装置の貯留部を組み立てた図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0011】
===第1実施形態===
以下、本発明の第1実施形態について説明する。なお、第1実施形態に係る霧化装置100は、本実施形態における滅菌ガス生成装置20として、アイソレータに組み込まれている。このため、アイソレータを例に挙げて説明する。
なお、本明細書において、過酸化水素水とは過酸化水素を水に溶解した過酸化水素水溶液のことであり、本実施形態では過酸化水素が35%の水溶液を主に使用している。また、過酸化水素ガスを生成するとは純粋に過酸化水素の気体のみを生成するのではなく、過酸化水素及び過酸化水素水のミストが一部混ざったものも含めて使用している。
【0012】
<アイソレータの全体構成>
図1に示すように、アイソレータは、作業室1、気体供給部2、気体排出部3、滅菌ガス供給装置4、及び制御部5を有している。
【0013】
作業室1は、無菌環境下での作業を行うための作業空間を区画する部分であり、前面に前面扉6を有する箱状部材によって構成されている。前面扉6は、外部から開閉可能に構成されている。この前面扉6には、作業用グローブ7が設けられている。この作業用グローブ7は、作業空間8で作業を行う際に作業者の腕が挿入される。
【0014】
作業室1における一方の側面には気体供給口9が設けられている。この気体供給口9を通じて気体供給部2からの気体(例えば滅菌ガスとしての過酸化水素ガス)が供給される。ここで、気体供給口9にはHEPAフィルタ10が設けられている。このため、気体供給部2からの気体に含まれる埃等はHEPAフィルタ10で捉えられ、気体のみが作業空間8に供給される。
【0015】
作業室1における他方の側面には気体排出口11が設けられている。この気体排出口11にもHEPAフィルタ10が設けられている。このため、気体排出口11を通じて埃等が作業空間8に入り込むことが防止される。そして、気体排出口11からは作業空間8内の気体が排出される。排出された気体は、気体排出部3へと送られる。
【0016】
気体供給部2は、作業室1へ気体を供給する部分である。この気体供給部2には、吸気口12、第1三方弁13、及びファン14が設けられている。
【0017】
吸気口12は、外部から空気を取り込む部分である。ファン14は、外部から取り込んだ空気を、第1三方弁13へと送出する。第1三方弁13は、滅菌ガス供給装置4、ファン14、及び作業室1のそれぞれと連通されている。そして、制御部5からの制御情報に応じて流路を切り替える。
【0018】
従って、第1三方弁13によって滅菌ガス供給装置4と作業室1とが連通されているとき、過酸化水素ガスが作業室1へと供給される。一方、第1三方弁13によってファン14と作業室1とが連通されているとき、ファン14の動作によって空気が作業室1へと供給される。なお、ファン14は、制御部5からの制御信号によって動作状態と停止状態とが切り替えられる。また、気体の送出量も調整することができる。
【0019】
気体排出部3は、作業室1の気体を排出する部分である。この気体排出部3には、第2三方弁15、滅菌物質低減処理部16、排気口17、及びファン21が設けられている。第2三方弁15は、作業室1の気体排出口11、ファン21、及び滅菌物質低減処理部16のそれぞれと連通されている。そして、制御部5からの制御情報に応じて流路を切り替える。例えば、気体排出口11と滅菌物質低減処理部16とを連通したり、気体排出口11とファン21とを連通したりする。
【0020】
ファン21は、気体排出口11からの気体を滅菌ガス供給装置4(滅菌ガス生成装置20)に供給する。このため、気体排出口11とファン21とが連通され、滅菌ガス供給装置4と作業室1とが連通されている場合には、気体排出口11からの気体は、アイソレータ内を循環することになる。
【0021】
滅菌物質低減処理部16は、第2三方弁15と排気口17との間に設けられており、第2三方弁15を通じて送られてきた気体中の過酸化水素(滅菌物質)について、その濃度を低減する処理を行う部分である。この滅菌物質低減処理部16は、例えば白金などの金属触媒や活性炭によって構成される。なお、滅菌物質低減処理部16に関し、過酸化水素の濃度を低減できれば、金属触媒や活性炭に限定されるものではない。排気口17は、滅菌物質低減処理部16で処理された後の気体を大気に排出する部分である。
【0022】
滅菌ガス供給装置4は、過酸化水素水をガス化して供給する。この滅菌ガス供給装置4は、滅菌物質カートリッジ18、ポンプ19、及び滅菌ガス生成装置20を有する。滅菌物質カートリッジ18は、滅菌物質としての過酸化水素水を貯蔵する。ポンプ19は、滅菌物質カートリッジ18に貯蔵された過酸化水素水を汲み上げ、滅菌ガス生成装置20に送出する。このポンプ19は、例えばペリスタポンプによって構成される。滅菌ガス生成装置20は、供給された過酸化水素水から過酸化水素ガス(滅菌ガス)を発生させる。発生した過酸化水素ガスは、例えば第1三方弁13に供給される。なお、滅菌ガス生成装置20については後で詳しく説明する。
【0023】
制御部5は、前述した各部を電気的に制御する部分である。この制御部5は、例えば、気体供給部2が有する第1三方弁13やファン14、気体排出部3が有する第2三方弁15やファン21、及び滅菌ガス供給装置4が有する滅菌ガス生成装置20等を制御する。
【0024】
制御部5による制御によって、例えば、滅菌ガス生成装置20で生成された過酸化水素ガスを、第1三方弁13を通じて作業室1へ供給するとともに、作業室1から排出された過酸化水素ガスを、第2三方弁15を通じて滅菌ガス生成装置20の側へ送り、系内を循環させることもできる。そして、系内で過酸化水素ガスを循環させると、この系内を無菌環境にすることができる。前述したように、無菌環境とは、作業室1で行われる作業に必要な物質以外の物質の混入を防いだ限りなく無塵、無菌に近い環境をいう。
【0025】
<滅菌ガス生成装置について>
次に、滅菌ガス生成装置20の一例について説明する。図2の部分断面図に示すように、滅菌ガス生成装置20は、貯留部30及び霧化部40からなる霧化装置100と、ガス化部50とを有している。尚、図2は、滅菌ガス生成装置20において主に後述するガス化部50のヒータ52を除く構成を鉛直方向に切断した場合の部分断面図であり、断面箇所を斜線によって示している。
【0026】
貯留部30は、ポンプ19から供給された過酸化水素水を貯留する部分である。この貯留部30は、過酸化水素水が貯留される貯留部本体31と、貯留部本体31内の過酸化水素水に超音波振動を伝える振動板32と、貯留部本体31に対して振動板32を固定するための弾性シール部材33及び固定板34等を備えている。貯留部30の詳細については後述する。
【0027】
霧化部40は、貯留部30に貯留された過酸化水素水を霧化する部分であり、収容部41と、超音波振動子42とを備えている。収容部41は、超音波振動子42や超音波伝播液43を収容する部分であり、上面に開口を有する中空円筒状の容器である。この収容部41は、ステンレス鋼等の金属や樹脂によって作製されている。収容部41の内側空間には、この内側空間を上下に仕切る円形板状の仕切板44が設けられている。
【0028】
超音波振動子42は、超音波振動を発生する素子であり、収容体45の内部に収容された状態で仕切板44に取り付けられている。この超音波振動子42は、制御部5からの制御情報に応じて動作が制御される。例えば、振動の開始や停止、振動の強さが制御部5によって制御される。
【0029】
収容部41における仕切板44よりも上側の空間には、超音波伝播液43が貯留される。本実施形態では、超音波伝播液43として水を用いている。なお、超音波伝播液43は水に限らず、超音波振動を伝播できる液体であればよい。この超音波伝播液43を介して、超音波振動子42による超音波振動が貯留部30の振動板32に伝播される。なお、超音波伝播液43は水に限られず、超音波振動を振動板32に伝播できる液体であればよい。
【0030】
そして、貯留部30に過酸化水素水が貯留された状態で超音波振動子42を動作させると、超音波伝播液43を介して超音波振動が振動板32に伝播され、更に、貯留部30の過酸化水素水に伝播され、過酸化水素水の表面に達したところで水柱が立ち、過酸化水素水が霧化される。
【0031】
次に、ガス化部50について説明する。ガス化部50は、霧化された過酸化水素水をガス化する部分であり、内筒部51、外筒部52、ガス導入管53等を含んで構成され、貯留部30の上方に設けられている。
【0032】
内筒部51は、金属製の円筒部材によって構成されている。なお、本実施形態の内筒部51は、ステンレス部材により作製されたステン部51Aと、ステン部51Aの下側に接続され、ステン部51Aよりも薄いアルミ部材により作製されたアルミ部51Bとを含む。内筒部51は、鉛直方向に向いた状態に取り付けられている。取り付け状態において、内筒部51は、その下端部55が貯留部30の直上となる高さとなるように位置決めされる。
【0033】
ヒータ52は、通電によって加熱される部材であり、円柱状の発熱体56と、発熱体56の周囲に取り付けられた伝熱性のフィン57とを有している。すなわち、発熱体56からの熱をフィン57によって拡散させている。このヒータ52は、内筒部51の内側空間に配置されている。例えば、上端側から内筒部51の長さの3/4程度の範囲に配置されている。
【0034】
ヒータ52の発熱体56と内筒部51の内壁面との間には、流路規制板58が取り付けられている。流路規制板58は、発熱体56との当接部分が半円形状に切り欠かれた略半円状の金属板によって構成される。この流路規制板58は、内筒部51の内側空間における片半部分を覆う状態で略水平方向に取り付けられている。また、流路規制板58は、上下方向に所定間隔をあけた状態で複数枚が互い違いに配置される。例えば、流路規制板58は、一定間隔で配置されたり、上側が密であって下側が粗になるように配置されたりする。また、ヒータ52の部分が密であってそれよりも下側で粗になるように配置されていてもよい。これらの流路規制板58によって、ヒータ52は、内筒部51の内側空間に位置決めされる。さらに、流路規制板58によって、内筒部51の内側空間には気体が通る蛇行流路が区画され、かつ、発熱体56で生じた熱が流路規制板58を通じて内筒部51に伝達される。
【0035】
内筒部51の上部側面には配管59が取り付けられている。この配管59を通じて、過酸化水素ガスが排出される。なお、温度センサ(不図示)によって配管59を流れるガスの温度が検出され、検出信号が制御部5へ出力される。また、内筒部51の上端部60は、フランジ状に形成されており、内側蓋部材61が取り付けられることで気密状態に封止されている。
【0036】
外筒部53は、内筒部51よりも一回り大きな直径の金属製の円筒部材によって構成されている。本実施形態の外筒部53は、ステンレス鋼管によって構成されている。
【0037】
外筒部53の内側空間には、内筒部51が配置されている。すなわち、外筒部53と内筒部51によって二重管が構成されている。外筒部53の下端部54は、前述したように貯留部30の上端部と気密状態で接続される。この外筒部53によって、内筒部51は、下端からその長さの約4/5程度の範囲が覆われている。外筒部53の上部側面には配管62が取り付けられている。この配管62はキャリアガスを導入するためのものである。すなわち、この配管62を通じてキャリアガスが外筒部53と内筒部51の間の空間(キャリアガス用のガス流路63)に流入する。なお、本実施形態では、キャリアガスとして清浄な空気を用いており、空気供給ファン(キャリアガス供給ファン)の回転によって空気が配管62に導入される。
【0038】
また、外筒部53の上端部65はフランジ状に形成されており、リング状の外側蓋部材66が取り付けられることで気密状態に封止されている。さらに、外筒部53の下部側面には、過酸化水素水を流すドレンチューブを通すためのチューブ用開口64が設けられている。なお、ドレンチューブとチューブ用開口64との隙間は、ブッシングによって塞がれる。このため、チューブ用開口64は気密状態で封止される。
【0039】
この滅菌ガス生成装置20は、前述したように、制御部5からの制御信号によって動作が制御され、滅菌ガスを生成する。滅菌ガス生成装置20では、制御信号によって、まず、ヒータ52(発熱体56)への通電と空気供給ファンの回転が開始される。これらにより、発熱体56の発熱、及び、キャリアガス(空気)の供給が開始される。また、ポンプ19が駆動されて滅菌物質カートリッジ18の過酸化水素水が、貯留部30に規定量供給される。
【0040】
配管62を流れるキャリアガスは、外筒部53の上部からガス流路63に流入し、このガス流路63を下方向に流れる。すなわち、内筒部51の外周面に沿って流れる。発熱体56からの熱は、流路規制板58やフィン57及び空気を通じて内筒部51に伝達されるので、内筒部51が加熱される。内筒部51が加熱されることで、内筒部51の外周面に沿って流れるキャリアガスとの間で熱交換が生じ、キャリアガスの温度が上昇する。
【0041】
キャリアガスは、貯留部30の位置で流れの方向を変える。すなわち、内筒部51の下端部55で回り込み、内筒部51の内側空間に流入する。そして、この内側空間を上昇する。発熱体56からの熱は、ヒータ52のフィン57を通じて内筒部51の内側空間に放出されるので、この内側空間を上昇するキャリアガスの温度をさらに上昇させる。加えて、内筒部51の内側空間には、複数の流路規制板58による蛇行流路が形成されているため、キャリアガスの移動距離を長くすることができ、キャリアガスの温度を確実に上昇させることができる。
【0042】
内筒部51から排出されるキャリアガスの温度が過酸化水素水の気化温度に達すると、超音波振動子42の駆動が開始される。前述したように、超音波振動子42による超音波振動は、超音波伝播液43を介して振動板32に伝播される。そして、振動板32の超音波振動によって貯留部30の過酸化水素水が霧化される。
【0043】
霧化された過酸化水素水はキャリアガスの流れに乗って内筒部51の内側空間を上昇する。このとき、キャリアガスがガス流路63を流れている最中に加熱されていること、及び、内側空間が蛇行流路を形成していることから、霧化された過酸化水素水を十分に加熱でき、確実にガス化することができる。また、キャリアガスが予め加熱されているので、霧化された過酸化水素水が内筒部51の下端部55に付着して液化されることを防止できる。
【0044】
さらに、本実施形態では、内筒部51が伝熱性の良好なアルミニウムによって構成されているため、この点でもキャリアガスを効率良く加熱することができ、過酸化水素水を確実にガス化できる。加えて、キャリアガスが予め加熱されていることから、貯留部30に貯留された過酸化水素水とキャリアガスとの間でも熱交換が生じ、過酸化水素水の蒸発が促進される。
【0045】
<貯留部について>
次に、図3(a)、(b)の断面図を参照して貯留部30の一例について説明する。貯留部30は、貯留部本体31に対して、弾性シール部材33を介して振動板32が固定されるように、固定板34がビス35の螺合によって取り付けられている。先ず、図3(a)を参照して、貯留部本体31に固定板34が取り付けられる前の貯留部30の各構成について説明する。
【0046】
貯留部本体31は、例えば金属製であり、内面側に逆円錐台状に窪んだ凹部310を備え、凹部310の底面には、貯留部本体31の内部と超音波伝播液43が溜められた収容部41とを連通するように、底板311を貫通する円形状の開口312が形成されている。尚、凹部310の上面側の内径は、ガス化部50の外筒部53の内径と略等しく、内筒部51の直径よりも大きく定められている。
【0047】
貯留部本体31の底板311の外面における開口312の周囲には、環状の溝313が形成されている。底板311の外面において、溝313よりも内側(開口312側)を第1外面315とし、溝313よりも外側(開口312と反対側)を第2外面316とする。第1外面315は、第2外面316より例えば約0.2mm程度窪み、第1外面315と第2外面316との間には第1段差L1が形成されている。第2外面316には、開口312の周りに例えば等間隔となるように複数の螺子孔314が形成されている。この螺子孔314の内部には、ビス35の雄螺子と螺合する雌螺子が形成されている。
【0048】
溝313における開口312と反対寄りの外周面には、底板311の外面から突出するように弾性シール部材33が配置される。弾性シール部材33は、例えばシリコンゴムによって作製された環状のパッキンである。
【0049】
振動板32は、例えば厚さが20μm程度のステンレス鋼の薄板によって形成されている。この振動板32は、貯留部本体31の開口312と、弾性シール部材33が配置された溝313とを覆うように配置される。また、このように配置された振動板32において、貯留部本体31の螺子孔314に対応する位置には、ビス35が挿通される貫通孔320が形成されている。
【0050】
固定板34は、金属製の板部材であり、振動板32を介して貯留部本体31の底板311と対向するように配置される。このように配置された固定板34において、貯留部本体31の第1外面315との対向面を第1対向面342とし、第2外面316との対向面を第2対向面343とする。固定板34の第2対向面343部分の厚さは例えば2mm程度となっている。また固定板34の第1対向面342部分の厚さは第2対向面343部分の厚さに比べて約0.2mm程度厚くなっている。つまり、固定板34における底板311の外面との対向面では、第1対向面342が第2対向面343よりも突出し、第1段差L1と対応する第2段差M1が形成されている。尚、本実施形態では、固定板34の底板311との対向面において、溝313と対向する部分の厚さも第2対向面343部分と同様に例えば2mm程度となっている。
【0051】
また、固定板34において、貯留部本体31の開口312に対応する位置には、振動板32を露出させる貫通孔340が形成され、螺子孔314に対応する位置には、ビス35が挿通される貫通孔341が形成されている。
【0052】
次に、図3(b)を参照して、貯留部本体31に対して固定板34を取り付けた貯留部30の構造について説明する。
【0053】
貯留部本体31における底板311の外面に対して、前述したように弾性シール部材33、振動板32、固定板34が配置されることで、螺子孔314と同心となった貫通孔320、341に対してビス35が挿通される。そして、螺子孔314の雌螺子にビス35の雄螺子を螺合させ締め付けることで、第1段差L1及び第2段差M1が嵌合するように、固定板34は、振動板32及び弾性シール部材33と共に、貯留部本体31における底板311の外面に対して固定される。この結果、固定板34が振動板32を弾性シール部材33および底板311に押し付けて固定する。これによって、振動板32が開口312を密閉する。この際、振動板32には、第1外面315と第1対向面342との間に挟持される部分と、第2外面316と第2対向面343との間に挟持される部分が生じる。このため、第1段差L1及び第2段差M1の高さによって振動板32が折れ曲がり、更に振動板32に対して鉛直方向に弾性シール部材33の弾性力がかかる。これによって、振動板32の開口312との対向部分は、開口312の中心から外縁に向かう方向(図3(b)に矢印で示す方向)に応力F1が加えられる。よって、固定板34によって、貯留部本体31に振動板32を固定することで、振動板32の開口312と対向する部分にひずみが生じることを防止できる。つまり、貯留部本体31内に貯留される過酸化水素水に対して、超音波振動を伝える振動板32の面を平面状にすることができる。
【0054】
尚、貯留部本体31に対して固定板34を取り付けた状態では、弾性シール部材33の底板311から突出する部分が、振動板32を介して固定板34に押圧されるため、弾性シール部材33は、溝313の外周面から開口312寄りの内周面に向かって広がるように、弾性力に抗して変形している。つまり、弾性シール部材33は、溝313の内周面から外周面に向かう方向に加えられる力による変形が生じにくくなっている。このため、例えば、貯留部本体31の内部の圧力が貯留部本体31の外部の圧力よりも高い場合に、弾性シール部材33に対して溝313の内周面側から外周面側に向かう方向に力が加えられても、弾性シール部材33の変形を防止でき、振動板32を介して開口312を効率よく密閉できる。
【0055】
<霧化装置の特性の比較>
ここで、図4(a)、(b)及び図5を参照して、本実施形態に係る霧化装置100と、背景技術に記載された特許出願における図2A及び図3Aに示すようにカップ214の底面に振動板2141が固定される際に、振動板2141にひずみが生じた場合の霧化装置(以下、比較対象の霧化装置と称する)との特性を比較する。尚、図4(a)は、本実施形態に係る霧化装置100において、貯留部30を超音波振動子42側から撮影した写真であり、図4(b)は、比較対象の霧化装置において、カップ214の底面に螺子2143によって固定された振動板2141及び平板2142を超音波振動子側から撮影した写真である。また、図5は、図4(a)に示す霧化装置100の霧化を開始してからの経過時間と過酸化水素水の減少量との関係を実線で示し、図4(b)に示す比較対象の霧化装置の霧化を開始してからの経過時間と過酸化水素水の減少量との関係を破線で示す図である。
【0056】
図4(a)、(b)に示すように、本実施形態に係る霧化装置100の振動板32は、比較対象の霧化装置に比べて、皺やひずみがより抑制された平面状となっている。また、図5に示すように、本実施形態に係る霧化装置100では、約20gの過酸化水素水が約6分間で霧化されることが確認され、比較対象の霧化装置では、約20gの過酸化水素水が約11分間で霧化されることが確認された。よって、本実施形態に係る霧化装置100では、過酸化水素水をより効率よく霧化できることが確認された。
【0057】
===第2実施形態===
以下、図6(a)、(b)を参照して、本発明の第2実施形態に係る霧化装置について説明する。尚、図6(a)、(b)において、図3(a)、(b)に示す構成と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0058】
第2実施形態に係る霧化装置は、図6(a)、(b)に示すように前述した霧化装置100の貯留部30にかえて貯留部36を備えている。貯留部36は、前述した貯留部30における貯留部本体31にかえて貯留部本体37を備えるとともに固定板34にかえて固定板38を備えている。そして、貯留部本体37に対して、弾性シール部材33を介して振動板32が固定されるように、固定板38がビス35の螺合によって取り付けられている。先ず、図6(a)を参照して、貯留部本体37に固定板38が取り付けられる前の貯留部36の構成のうち、貯留部30と異なる構成について主に説明する。
【0059】
貯留部本体37は、前述した貯留部本体31における底板311にかえて、底板319を備え、この底板319は、前述した底板311における第1外面315及び第2外面316にかえてそれぞれ第1外面317及び第2外面318を備えている。底板319の外面において、第1外面317は溝313よりも内側の面であり、第2外面318は溝313よりも外側の面である。
【0060】
第1外面317は、第2外面318より例えば約0.2mm程度突出し、第1外面317と第2外面318との間には第1段差L2が形成されている。第2外面318には、開口312の周りに例えば等間隔となるように複数の螺子孔314が形成されている。
【0061】
固定板38は、前述した固定板34における第1対向面342及び第2対向面343にかえてそれぞれ第1対向面344及び第2対向面345を備えている。第1対向面344は、貯留部本体37の第1外面317と対向する面であり、第2対向面345は貯留部本体37の第2外面318と対向する面である。
【0062】
固定板38の第2対向面345部分の厚さは例えば2mm程度となっている。また固定板38の第1対向面344部分の厚さは第2対向面345部分の厚さに比べて約0.2mm程度薄くなっている。つまり、固定板38における底板319の外面との対向面では、第1対向面344が第2対向面345よりも窪み、第1段差L2と対応する第2段差M2が形成されている。尚、本実施形態では、固定板38の底板311との対向面において、溝313と対向する部分の厚さも第2対向面345部分と同様に例えば2mm程度となっている。
【0063】
次に、図6(b)を参照して、貯留部本体37に対して固定板38を取り付けた貯留部36の構造について説明する。
【0064】
貯留部本体37における底板319の外面に対して、前述したように弾性シール部材33、振動板32、固定板38が配置されることで、螺子孔314と同心となった貫通孔320、341に対してビス35が挿通される。そして、螺子孔314の雌螺子にビス35の雄螺子を螺合させることで、第1段差L2及び第2段差M2が嵌合するように、固定板38は、振動板32及び弾性シール部材33を介して、底板319の外面に対して固定される。これによって、振動板32が開口312を密閉する。この際、弾性シール部材33が弾性変形することで開口312と振動板32との間の気密性が確保される。また、振動板32には、第1外面317と第1対向面344との間に挟持される部分と、第2外面318と第2対向面345との間に挟持され部分が生じる。このため、第1段差L2及び第2段差M2の高さによって振動板32が折れ曲がることで、振動板32の開口312との対向部分は、開口312の中心から外縁に向かう方向(図6(b)に矢印で示す方向)に応力F2が加えられる。よって、固定板38によって、貯留部本体37に振動板32を固定することで、振動板32の開口312と対向する部分にひずみが生じることを防止できる。つまり、貯留部本体37内に貯留される過酸化水素水に対して、超音波振動を伝える振動板32の面を平面状にすることができる。
【0065】
尚、第2実施形態に係る貯留部36では、弾性シール部材33が溝313における開口312と反対寄りの外周面に配置されることとしたが、特にこれに限定されるものではない。例えば、弾性シール部材33は、環の直径が溝313の直径よりも僅かに小さく、溝313の内周面に弾性力を抗して密着するように配置されてもよい。これによって、弾性シール部材33が溝313に密着した状態で、底板319の外面に対して固定板38等を取り付けることができるため、貯留部36の組み立てを容易にすることができる。
【0066】
<まとめ>
以上より、第1実施形態に係る霧化装置100(第2実施形態に係る霧化装置)は、少なくとも、過酸化水素水が貯留される貯留部30(36)と、貯留部30(36)内の過酸化水素水がキャリアガスとともに排出されるように過酸化水素水を超音波振動により霧化させる霧化部40とを有し、霧化部40は超音波振動伝播液43を貯留する収容部41を備え、貯留部30(36)は、底板311(319)を貫通して収容部41と連通する開口312と、底板311(319)の外面における開口312の周囲に連続的に形成される溝313と、溝313に底板311(319)の外面から突出するように配置される弾性シール部材33と、開口312及び溝313を覆う振動板32と、振動板32の開口312との対向部分を露出させた状態で、振動板32が開口312を密閉するように弾性シール部材33及び底板311(319)の外面に押し付けて固定する固定板34(38)とを有し、底板311(319)の外面は、溝313よりも内側の第1外面315(317)と溝313よりも外側の第2外面316(318)との間に第1段差L1(L2)を有し、固定板34(38)の底板311(319)との対向面は、固定板34(38)が底板311(319)に嵌合されるように第1段差L1(L2)に対応する第2段差M1(M2)を有していればよい。
【0067】
この第1実施形態に係る霧化装置100(第2実施形態に係る霧化装置)によれば、貯留部30(36)を組み立てる際に、第1段差L1(L2)及び第2段差M1(M2)によって、固定板34(38)と底板311(319)とが振動板32を介して嵌合する。これによって、振動板32の開口312との対向部分は、開口312の中心から外縁に向かう方向に応力F1(F2)が加えられるため、均一な平面状に保たれる。よって、霧化装置100の組み立てごとの品質を一定に保ちながら振動板32にひずみが生じることを防止することができる。そして、これにより、過酸化水素水の霧化速度を向上させるとともに振動板32を長寿命化することが期待できる。
【0068】
また、前述した第1実施形態に係る霧化装置100において、底板311の外面は、第1段差L1として、第1外面315が第2外面316よりも窪んだ段差を有し、弾性シール部材33は、溝313における開口312とは反対寄りの外周面に配置され、固定板34の底板311との対向面は、第2段差M1として、第1外面315との対向面である第1対向面342が第2外面316との対向面である第2対向面343よりも突出する段差を有している。
【0069】
この霧化装置100によれば、振動板32の開口312との対向部分にひずみが生じることを防止して、過酸化水素水の霧化速度を向上させること、霧化装置100の組み立てごとの品質を一定に保つことができる。さらに、弾性シール部材33は、溝313の外周面から内周面に向かって広がるように弾性変形した状態で固定板34によって固定されるため、弾性シール部材33の変形を効率よく防止でき、開口312を効率よく密閉できる。
【0070】
また、前述した第2実施形態に係る霧化装置において、底板319の外面は、第1段差L2として、第1外面317が第2外面318よりも突出した段差を有し、固定板38の底板319との対向面は、第2段差M2として、第1外面317との対向面である第1対向面344が第2外面318との対向面である第2対向面345よりも窪んだ段差を有している。
【0071】
この霧化装置によれば、振動板32にひずみが生じることを防止して、過酸化水素水の霧化速度を向上させること、霧化装置の組み立てごとの品質を一定に保つことができる。
【0072】
また、前述した第1実施形態に係る霧化装置100(第2実施形態に係る霧化装置)において、溝313は、環状の溝であり、弾性シール部材33は、環状のパッキンである。この霧化装置によれば、環状の溝313及び環状のパッキンである弾性シール部材33によって、振動板32の開口312との対向部分の中心から外縁側に向かってより均一に応力F1(F2)を加えることができる。このため、振動板32の開口312との対向部分をより均一な平面状とすることができる。
【0073】
また、前述した第1実施形態に係る霧化装置100(第2実施形態に係る霧化装置)において、固定板34(38)は、一枚板であり、溝313の周囲において底板311(319)に螺合される。この霧化装置によれば、振動板32の開口312との対向部分に霧化部40からの超音波振動をより確実に伝えることができる。また、ビス35の雄螺子と、底板311(319)に形成された螺子孔314の雌螺子との螺合によって、固定板34(38)が底板311(319)に取り付けられるため、底板311(319)の外面に対して振動板32をより確実且つ容易に固定することができる。
【0074】
また、前述した第1実施形態に係る霧化装置100(第2実施形態に係る霧化装置)において、固定板34(38)は、溝313の周囲において振動板32を介して底板311(319)に螺合される。この霧化装置によれば、振動板32に設けられた貫通孔321にビス35が挿通されるため、底板311(319)に振動板32をより確実に固定することができる。
【0075】
===その他の実施形態===
前述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更や改良等が可能であり、また本発明はその等価物も含むものである。
【0076】
前述した第1実施形態に係る霧化装置100では、螺子孔314に対して、貫通孔320、341を介して、ビス35が螺合されることで、固定板34によって、底板311の外面に振動板32が固定されることとしたが、特にこれに限定されるものではない。例えば、底板311の外面に対して、固定板34が接着剤によって取り付けられることで、振動板32が固定されてもよい。また、底板311の外面には螺子孔314のかわりに係止孔が設けられ、この係止孔に係止する爪部が固定板34に設けられてもよい。これによって、底板311の係止孔に固定板34の爪部が係止し、底板311に固定板34が取り付けられることで、底板311の外面に対して振動板32が固定されてもよい。これは、前述した第2実施形態に係る霧化装置においても、固定板38及び底板319について同様である。
【0077】
また、前述した第1実施形態に係る霧化装置100では、振動板32は、螺子孔314に対応する位置に貫通孔320が形成されていることとした。つまり、振動板32の径は、開口312を挟んで対向する螺子孔314同士の距離よりも長いこととした。しかし、特にこれに限定されるものではなく、振動板32の径は、環状の溝313の直径よりも長ければよい。これは、前述した第2実施形態に係る霧化装置においても同様である。
【符号の説明】
【0078】
1…作業室,2…気体供給部,3…気体排出部,4…滅菌ガス供給装置,5…制御部,6…前面扉,7…作業用グローブ,8…作業空間,9…気体供給口,10…HEPAフィルタ,11…気体排出口,12…吸気口,13…第1三方弁,14…ファン,15…第2三方弁,16…滅菌物質低減処理部,17…排気口,18…滅菌物質カートリッジ,19…ポンプ,20…滅菌ガス生成装置,21…ファン,30、36…貯留部,31、37…貯留部本体,32…振動板,33…弾性シール部材,34、38…固定板,35…ビス,40…霧化部,41…収容部,42…超音波振動子,43…超音波伝播液,44…仕切板,45…収容体,50…ガス化部,51…内筒部,51A…ステンレス部,51B…アルミ部,52…ヒータ,53…外筒部,54…外筒部の下端部,55…内筒部の下端部,56…発熱体,57…ファン,58…流路規制板,59、62…配管,60…内筒部の上端部,61…内側蓋部材,64…チューブ用開口,65…外筒部の上端部,66…外側蓋部材,100…霧化装置,310…凹部,311、319…底板,312…開口,313…溝,314…螺子孔,315,317…第1外面、316,318…第2外面、320、340、321…貫通孔,342、344…第1対向面,343、345…第2対向面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化水素水が貯留される貯留部と、前記貯留部内の前記過酸化水素水がキャリアガスとともに排出されるように前記過酸化水素水を超音波振動により霧化させる霧化部と、を有する過酸化水素水の霧化装置において、
前記霧化部は超音波振動を伝播する伝播液を貯留する収容部を備え、
前記貯留部は、
底板を貫通して前記収容部と連通する開口と、
前記底板の外面における前記開口の周囲に連続的に形成される溝と、
前記溝に前記底板の外面から突出するように配置される弾性シール部材と、
前記開口及び前記溝を覆う振動板と、
前記振動板の前記開口との対向部分を露出させた状態で、前記振動板が前記開口を密閉するように前記弾性シール部材および前記底板の外面に押し付けて固定する固定板と、を有し、
前記底板の外面は、前記溝よりも内側の第1外面と前記溝よりも外側の第2外面との間に第1段差を有し、
前記固定板の前記底板との対向面は、前記固定板が前記底板に嵌合されるように前記第1段差に対応する第2段差を有する
ことを特徴とする過酸化水素水の霧化装置。
【請求項2】
前記底板の外面は、前記第1段差として、前記第1外面が前記第2外面よりも窪んだ段差を有し、
前記弾性シール部材は、前記溝における前記開口とは反対寄りの外周面に配置され、
前記固定板の前記底板との対向面は、前記第2段差として、前記第1外面との対向面が前記第2外面との対向面よりも突出する段差を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の過酸化水素水の霧化装置。
【請求項3】
前記底板の外面は、第1段差として、前記第1外面が前記第2外面よりも突出した段差を有し、
前記固定板の前記底板との対向面は、第2段差として、前記第1外面との対向面が前記第2外面との対向面よりも窪んだ段差を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の過酸化水素の霧化装置。
【請求項4】
前記溝は、環状の溝であり、
前記弾性シール部材は、環状のパッキンである
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の過酸化水素水の霧化装置。
【請求項5】
前記固定板は、一枚板であり、前記溝の周囲において前記底板に螺合される
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の過酸化水素水の霧化装置。
【請求項6】
前記固定板は、前記溝の周囲において前記振動板を介して前記底板に螺合される
ことを特徴とする請求項5に記載の過酸化水素水の霧化装置。
【請求項1】
過酸化水素水が貯留される貯留部と、前記貯留部内の前記過酸化水素水がキャリアガスとともに排出されるように前記過酸化水素水を超音波振動により霧化させる霧化部と、を有する過酸化水素水の霧化装置において、
前記霧化部は超音波振動を伝播する伝播液を貯留する収容部を備え、
前記貯留部は、
底板を貫通して前記収容部と連通する開口と、
前記底板の外面における前記開口の周囲に連続的に形成される溝と、
前記溝に前記底板の外面から突出するように配置される弾性シール部材と、
前記開口及び前記溝を覆う振動板と、
前記振動板の前記開口との対向部分を露出させた状態で、前記振動板が前記開口を密閉するように前記弾性シール部材および前記底板の外面に押し付けて固定する固定板と、を有し、
前記底板の外面は、前記溝よりも内側の第1外面と前記溝よりも外側の第2外面との間に第1段差を有し、
前記固定板の前記底板との対向面は、前記固定板が前記底板に嵌合されるように前記第1段差に対応する第2段差を有する
ことを特徴とする過酸化水素水の霧化装置。
【請求項2】
前記底板の外面は、前記第1段差として、前記第1外面が前記第2外面よりも窪んだ段差を有し、
前記弾性シール部材は、前記溝における前記開口とは反対寄りの外周面に配置され、
前記固定板の前記底板との対向面は、前記第2段差として、前記第1外面との対向面が前記第2外面との対向面よりも突出する段差を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の過酸化水素水の霧化装置。
【請求項3】
前記底板の外面は、第1段差として、前記第1外面が前記第2外面よりも突出した段差を有し、
前記固定板の前記底板との対向面は、第2段差として、前記第1外面との対向面が前記第2外面との対向面よりも窪んだ段差を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の過酸化水素の霧化装置。
【請求項4】
前記溝は、環状の溝であり、
前記弾性シール部材は、環状のパッキンである
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の過酸化水素水の霧化装置。
【請求項5】
前記固定板は、一枚板であり、前記溝の周囲において前記底板に螺合される
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の過酸化水素水の霧化装置。
【請求項6】
前記固定板は、前記溝の周囲において前記振動板を介して前記底板に螺合される
ことを特徴とする請求項5に記載の過酸化水素水の霧化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図4】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図4】
【公開番号】特開2012−75578(P2012−75578A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222367(P2010−222367)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]