説明

過長部品の送出規制部構造

【課題】 過長部品を滑らかに移行させて送出を規制し、同時に、規制された過長部品の取り除き作業を簡素化することのできる過長部品の送出規制部構造を提供する。
【解決手段】 ガイドレール4を吊り下げ状態で移送されるヘッド部材付きの部品1の過長なものを規制するものであって、ガイドレール4の上位に規制部材8が設けられ、これに対向させて過長部品1Aの下端部に接触するとともに正常長さの部品1Bの下端部には接触しない検知部材8が設けられ、検知部材の基準面13とガイド面5との間隔L1が過長部品1Aの長さより短く正常部品1Bの長さよりも長く設定してあり、基準面の上流側にガイド傾斜面12が設置してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、過長部品の送出規制部構造に関するものであり、ガイドレールによって吊り下げ状態で移送される部品のうち、過長なものを規制の対象としている。
【背景技術】
【0002】
吊り下げ状態で移送されてきたヘッド部材付き部品のなかに過長部品が混入していると、過長部品をその下端部に接触する検知部材とそのヘッド部材に接触する規制部材との間で拘束して送出を禁止する過長部品の送出規制部構造が知られている。
【特許文献1】特開2007−118074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のような先行技術においては、過長部品が規制部材の下側において拘束されたときには、ヘッド部材が規制部材の下側に隠れた状態になる。とくに、規制部材の上流側にヘッド部材が突き出ていないために、作業者が過長部品を取り除くときには、いちいち工具を使用して取り出す必要があり、作業性の面で改良の必要がある。
【0004】
本発明は、上記の問題点を解決するために提供されたもので、過長部品を滑らかに移行させて送出を規制し、同時に、規制された過長部品の取り除き作業を簡素化することのできる過長部品の送出規制部構造の提供を目的とする。
【問題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、ガイドレールのガイド面を滑動しながら吊り下げ状態で移送されるヘッド部材付きの部品のうち、過長なものを規制の対象とするものであって、前記ガイドレールの上位に規制部材が設けられ、この規制部材に対向させて過長部品の下端部に接触するとともに正常長さの部品の下端部には接触しない検知部材が設けられ、前記検知部材に基準面が設けられ、この基準面と前記ガイド面との間隔が過長部品の長さより短く前記正常部品の長さよりも長く設定してあり、前記基準面の上流側に後流側に向かって上り傾斜とされているガイド傾斜面が設置してあることを特徴とする過長部品の送出規制部構造である。
【発明の効果】
【0006】
吊り下げ状態でガイドレール上を滑動してきた前記過長部品は、その下端部がガイド傾斜面にさしかかると、ガイド傾斜面によって徐々に上方へ押し上げられながら傾斜し、それに伴ってヘッド部材がガイドレールから浮上した状態になり、この傾斜した姿勢のまま下端部が基準面上を摺動するようになる。この摺動の後に、ヘッド部材が規制部材に接触することと、ヘッド部材がガイドレールのガイド面に接触することと、下端部が基準面に接触することの3箇所における接触が同時に成立し、過長部品の移送が禁止された状態となる。過長部品が吊り下げ状態の移送からガイド傾斜面によって徐々に傾斜姿勢に移行してゆくので、過長部品は滑らかな移動を行いながら前記3箇所接触が確実に成立し、信頼性の高い規制機能がえられる。また、前記正常長さの部品はガイド面上を滑動して終始吊り下げ状態で移送されてゆく。
【0007】
請求項2記載の発明は、傾斜状態の過長部品のヘッド部材が規制部材の下側に接触して前記ヘッド部材の一部が規制部材から上流側に露出するように、前記ガイド面と規制部材との間隔が設定されている請求項1記載の過長部品の送出規制部構造である。
【0008】
上述のように、傾斜姿勢の過長部品の下端部が基準面上を摺動し始めてからヘッド部材が規制部材に接触するので、前記ガイド面と規制部材との間隔を設定することにより、ヘッド部材全てが規制部材とガイド面との間に入り込むことができず、ヘッド部材の一部が規制部材から上流側に露出した状態とすることができる。したがって、異常な過長部品を除去するときには、作業者がこの露出した部分をつまんで簡単に除去することができ、作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
つぎに、本発明の過長部品の送出規制部構造を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0010】
図1および図2は実施例1を示す。
【0011】
まず、ヘッド部材付きの部品について説明する。
【0012】
ヘッド部材付きの部品1は、雄ねじが形成された軸部2とそれと一体のヘッド部材であるフランジ部3から構成されたプロジェクションボルトである。プロジェクション溶接用の溶着用突起はフランジ部3の上面あるいは下面に形成されているが、ここでは図示を省略してある。以下の説明において、プロジェクションボルトを単にボルトと表現する場合もある。
【0013】
以下の説明において、下流側とは部品が移送されて行く方向を意味しており、上流側とはその逆を意味している。
【0014】
つぎに、送出規制部構造について説明する。
【0015】
2本のガイドレール4が平行に配置され、その上面がガイド面5とされている。ガイドレール4間の空間部が通過空間部6である。ボルト1は、軸部2が前記通過空間部6に位置し、フランジ部3の下面がガイド面5上を滑動する。このようにして、ボルト1が吊り下げ状態で移送される。なお、両ガイドレール4は、その下部において結合板7によって一体化されている。
【0016】
この移送のための移送力は、種々な方法で確保することができる。例えば、ガイドレール4を図1(A)に示すように、傾斜させてボルト1を滑降させるものや、水平に配置されたガイドレール4に移送方向の振動を付与する通常の直進フィーダ形式とするもの等が採用できる。
【0017】
つぎに、規制部材、検知部材について説明する。
【0018】
前記ガイドレール4の上位にガイド面5から所定の間隔をあけて規制部材8が設けられ、この規制部材8に対向させて過長部品1Aの下端部に接触するとともに正常部品1Bの下端部には接触しない検知部材9が設けられている。この検知部材9は両ガイドレール4間の下部にボルト付け等で固定された細長い部材である。検知部材9の上面には、過長部品1Aの下端部が接触することのない高さとされた導入面11と、この導入面11に連続した状態で形成され後流側に向かって上り傾斜とされたガイド傾斜面12と、このガイド傾斜面12に連続し後流側に延びた状態で形成された基準面13が形成されている。この基準面13は、ガイド面5と平行になっている。ガイド面5と導入面11との間隔は、過長部品1Aの軸部長さよりも長く設定してある。
【0019】
ガイド面5と基準面13との間隔L1は、過長部品1Aの軸部長さより短く正常長さ部品1Bの長さよりも長く設定してある。さらに、傾斜状態の過長部品1Aのフランジ部3が規制部材8の下側に接触してフランジ部の一部が規制部材8から上流側に露出するように、前記ガイド面5と規制部材8との間隔L2が設定されている。規制部材8は厚板を屈曲させて形成したもので、フランジ部3の上面が規制部材8の前面側の下側角部14に接触するようになっている。このように間隔L2を設定することによってフランジ部3の一部が規制部材8の端部から上流側に突出した状態となる。この突出長さは図2にL3で示されている。図1(D)に示すように、規制部材8はL字型の部材で構成され、その摺動片15がボルト16でガイドレール4の横側面に固定してある。前記ボルト16は上下方向に延びる長孔17を貫通しており、ボルト16を緩めて規制部材8の高さ位置すなわち間隔L2を調節できるようになっている。
【0020】
前記間隔L2は、フランジ部3全てが規制部材8とガイド面5との間に入り込むことができず、フランジ部3の一部が規制部材8から上流側に露出するように設定されている。つまり、この間隔L2が大きすぎると、フランジ部3全体が規制部材8とガイド面5との間に隠れた状態になる。
【0021】
規制部材8の変形例として、図2に2点鎖線で示した形状のものがある。すなわち、これは断面円形の棒材18を通過空間部6の幅方向に配置したものである。これは、前記摺動片15に棒材18を溶接することによって構成することができる。
【0022】
以上に説明した実施例1の作用効果は、つぎのとおりである。
【0023】
吊り下げ状態でガイドレール4上を滑動してきた前記過長部品1Aは、その下端部がガイド傾斜面12にさしかかると、ガイド傾斜面12によって徐々に上方へ押し上げられながら傾斜し、それに伴ってフランジ部3がガイド面5から浮上した状態になり、この傾斜した姿勢のまま軸部2の下端部が基準面13上を摺動するようになる。この摺動の後に、フランジ部3が規制部材8に接触点20で接触することと、フランジ部3がガイドレール4のガイド面5に接触点21接触することと、下端部が基準面13に接触点22で接触することの3箇所における接触が同時に成立し、過長部品1Aの移送が禁止された状態となる。過長部品1Aが吊り下げ状態の移送からガイド傾斜面12によって徐々に傾斜姿勢に移行してゆくので、過長部品1Aは滑らかな移動を行いながら前記3箇所接触が確実に成立し、信頼性の高い規制機能がえられる。また、前記正常長さの部品1Bはガイド面5上を滑動して終始吊り下げ状態で検知部材9に接触することなく移送されてゆく。
【0024】
傾斜状態の過長部品1Aのフランジ部3が規制部材8の下側に接触して前記フランジ部3の一部が規制部材8から上流側に露出するように、前記ガイド面5と規制部材8との間隔L2が設定されている。
【0025】
上述のように、傾斜姿勢の過長部品1Aの下端部が基準面13上を摺動し始めてからフランジ部3が規制部材8に接触するので、前記ガイド面5と規制部材8との間隔L2を設定することにより、フランジ部3全てが規制部材8とガイド面5との間に入り込むことができず、フランジ部3の一部が規制部材8から上流側に、長さL3で示す露出した状態とすることができる。したがって、異常な過長部品1Aを除去するときには、作業者がこの露出した部分をつまんで簡単に除去することができ、作業性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0026】
上述のように、本発明によれば、過長部品を滑らかに移行させて送出を規制し、同時に、規制された過長部品の取り除き作業を簡素化することのできる過長部品の送出規制部構造であるから、自動車の車体溶接工程や、家庭電化製品の板金溶接工程などの広い産業分野で利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】送出規制部構造の側面図と断面図である。
【図2】部分的な拡大側面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 プロジェクションナット
3 フランジ部、ヘッド部材
4 ガイドレール
5 ガイド面
6 通過空間部
8 規制部材
9 検知部材
12 ガイド傾斜面
13 基準面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドレールのガイド面を滑動しながら吊り下げ状態で移送されるヘッド部材付きの部品のうち、過長なものを規制の対象とするものであって、前記ガイドレールの上位に規制部材が設けられ、この規制部材に対向させて過長部品の下端部に接触するとともに正常長さの部品の下端部には接触しない検知部材が設けられ、前記検知部材に基準面が設けられ、この基準面と前記ガイド面との間隔が過長部品の長さより短く前記正常部品の長さよりも長く設定してあり、前記基準面の上流側に後流側に向かって上り傾斜とされているガイド傾斜面が設置してあることを特徴とする過長部品の送出規制部構造。
【請求項2】
傾斜状態の過長部品のヘッド部材が規制部材の下側に接触して前記ヘッド部材の一部が規制部材から上流側に露出するように、前記ガイド面と規制部材との間隔が設定されている請求項1記載の過長部品の送出規制部構造。

【図1】
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【図2】
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