説明

道筋探索装置、道筋探索方法およびコンピュータプログラム

【課題】ユーザが希望する形状の道筋を道路網から探索して出力する技術を提供する。
【解決手段】道筋探索装置は、図形の形状を表す図形データを取得する図形データ取得部と、道路のつながり状態を表す道路網データを記憶する道路網データ記憶部と、道路網データと図形データとを対比して、図形データが表す図形の形状につながり状態が近似した道路群を道路網データから探索する道路群探索部と、探索された道路群を出力する出力部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道筋を探索する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、出発地と目的地とを結ぶ経路を探索するナビゲーション装置が普及している。こうしたナビゲーション装置では、ユーザが自分の希望する経路を細かく指定しようとすると、多くの経由地を指定しなければならず、操作が煩雑であった。
【0003】
このような問題に関し、例えば、特許文献1には、指定された出発地と目的地とを含む地図を画面上に表示し、この画面上でユーザが指やペンで希望の経路をなぞることで、その経路に近似する経路を探索する技術が開示されている。この技術によれば、画面上でなぞった経路に近似する経路が探索されるので、経由地を指定することなく、自分の希望する経路を探索することができる。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術では、最初に、出発地と目的地とを決定しなければならず、また、既に画面上に表示されている地図の範囲内からしか経路の探索を行うことができなかった。そのため、例えば、探索しようとする道筋の形状だけが決まっており、出発地や目的地、探索エリアなどが具体的に決まっていない場合や、遊び的な目的で、ユーザの描いたイラストや文字に近似する道筋を既存の道路網の中から単純に探索したい場合などには、特許文献1に記載の技術では、希望する形状の道筋を探索することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−74481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような問題を考慮し、本発明が解決しようとする課題は、ユーザが希望する形状の道筋を道路網から探索して出力する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]道筋探索装置であって、図形の形状を表す図形データを取得する図形データ取得部と、道路のつながり状態を表す道路網データを記憶する道路網データ記憶部と、前記道路網データと前記図形データとを対比して、前記図形データが表す図形の形状につながり状態が近似した道路群を前記道路網データから探索する道路群探索部と、前記探索された道路群を出力する出力部とを備える道筋探索装置。
【0009】
このような態様の道筋探索装置であれば、図形データが表す図形の形状につながり状態が近似した道路群を道路網データから探索するので、出発地や目的地、あるいは、具体的な探索エリア(地域)が決まっていない場合でも、ユーザが希望する形状の道筋を探索することが可能になる。
【0010】
[適用例2]適用例1に記載の道筋探索装置であって、更に、前記道路群探索部によって探索された道路群に含まれる道路を移動するための経路を探索する経路探索部を備え、前記出力部は、前記探索された道路群と、前記探索された経路とを出力する道筋探索装置。このような態様であれば、ユーザが希望する形状の道筋を移動するための経路をユーザに提示することができる。
【0011】
[適用例3]適用例1または適用例2に記載の道筋探索装置であって、更に、前記道路網データの中から、任意のエリアの指定を受け付けるエリア指定部を備え、前記道路群探索部は、前記道路網データの中の、前記指定されたエリアの中から、前記道路群の探索を行う道筋探索装置。このような態様であれば、道路群を探索するエリア(範囲)を指定することができるので、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0012】
[適用例4]適用例1ないし適用例3のいずれかに記載の道筋探索装置であって、更に、ユーザの移動手段の指定を受け付ける移動手段指定部を備え、前記道路網データ記憶部は、移動手段毎にそれぞれ前記道路網データを記憶しており、前記道路群探索部は、前記指定された移動手段に応じた前記道路網データを用いて前記道路群の探索を行う道筋探索装置。このような態様であれば、車や徒歩などの移動手段に応じた道筋を探索することができる。
【0013】
[適用例5]適用例1ないし適用例4のいずれかに記載の道筋探索装置であって、前記図形データ取得部は、前記図形データを、所定の通信回線を介して前記道筋探索装置に接続された端末装置から取得し、前記出力部は、前記通信回線を介して前記端末装置に前記探索された道路群を出力する道筋探索装置。このような態様であれば、道筋探索装置側で道路群の探索を行うので、端末装置側の処理負担を軽減することができる。
【0014】
[適用例6]適用例1ないし適用例5のいずれかに記載の道筋探索装置であって、更に、現在位置を測位可能な複数の携帯端末から、所定の通信回線を介して前記各携帯端末の現在位置を表す位置データを取得する位置データ取得部を備え、前記出力部は、前記探索された道路群と、前記各携帯端末の現在位置を表す位置データとを、前記各携帯端末に出力する道筋探索装置。このような態様であれば、同じ道筋を移動する各ユーザのそれぞれの位置を携帯端末上に表示させることができる。なお、適用例5と適用例6における端末装置と携帯端末とは、同一の装置であってもよいし、別々の装置であってもよい。
【0015】
本発明は、上述した道筋探索装置としての構成のほか、道筋探索方法や、コンピュータプログラムとしても構成することができる。かかるコンピュータプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に記録されていてもよい。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスクやCD−ROM、DVD−ROM、光磁気ディスク、メモリカード、ハードディスク等の種々の媒体を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】道筋探索システム10の概略構成を示す説明図である。
【図2】第1実施例における道筋探索処理のフローチャートである。
【図3】図形入力画面の一例を示す説明図である。
【図4】ブラウザ上への道筋の表示例を示す図である。
【図5】第2実施例における道筋探索処理のフローチャートである。
【図6】第2実施例における図形入力画面の一例を示す説明図である。
【図7】ブラウザ上への道筋と経路の表示例を示す図である。
【図8】第3実施例における道筋探索システム10bの構成を示す説明図である。
【図9】携帯電話300のディスプレイに表示される表示内容を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
A.第1実施例:
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ実施例に基づき説明する。
図1は、本発明の実施例としての道筋探索システム10の概略構成を示す説明図である。この道筋探索システム10は、ユーザから入力された図形に近似する形状の道筋を既存の道路網の中から探索するシステムである。図1に示すように、本実施例の道筋探索システム10は、道筋の探索を行う道筋探索装置としてのサーバ装置100と、図形の入力や探索された道筋の表示を行う端末装置としてのコンピュータ200とを備えている。更に、本実施例の道筋探索システム10は、道筋の表示を行う装置として携帯電話300を備えている。道筋探索システム10を構成するこれらの装置は、インターネットや携帯電話網等からなる通信ネットワークNTによって相互に接続されている。
【0018】
サーバ装置100は、CPU110と、RAM120と、通信ネットワークNTに対する通信を制御する通信インターフェース130と、各種制御プログラムやデータベースを記憶するハードディスク140とを備えている。サーバ装置100は、ハードディスク140にインストールされた所定のプログラムをCPU210がRAM220にロードして実行することにより、WWW(ワールドワイドウェブ)システム上で道筋探索サービスを提供するWebサーバとして機能する。ハードディスク240には、道路(車道、歩道、線路等を含む)のつながり状態がリンクデータやノードデータによって表された道路網データベース142が記憶されている。
【0019】
コンピュータ200は、CPU210やRAM220、通信インターフェース230、ハードディスク240を備えている。コンピュータ200には、プリンタ250が接続されている。コンピュータ200にはWebブラウザがインストールされており、このWebブラウザを介して、サーバ装置100に対する図形の入力やサーバ装置100から送信された道筋データの表示を行う。なお、図形の入力や道筋データの表示は、Webブラウザに限られず、汎用的な画像処理ソフトウェアや専用のアプリケーションによって行ってもよい。
【0020】
携帯電話300は、サーバ装置100から配信された電子メールを受信する機能を備えている。この電子メールには、道筋を表す画像データを表示するためのデータが添付されており、携帯電話300は、このデータに基づいて画面に道筋の表示を行う。
【0021】
続いて、道筋探索システム10によって実行される道筋探索処理の詳細について説明する。
図2は、第1実施例における道筋探索処理のフローチャートである。図2には、コンピュータ200による処理とサーバ装置100による処理とを併記している。この道筋探索処理ルーチンでは、まず、ユーザが、コンピュータ200にインストールされたWebブラウザを起動し、サーバ装置100のURLを入力する。すると、コンピュータ200からサーバ装置100に対して、ユーザが図形を入力するための画面(以下、図形入力画面という)を表示するための要求メッセージが送信される(ステップS100)。サーバ装置100は、この要求メッセージを受信すると(ステップS200)、ハードディスク140に記憶されているHTML形式の図形入力画面をコンピュータ200に送信する(ステップS202)。コンピュータ200は、こうしてサーバ装置100から送信された図形入力画面を受信し、Webブラウザ上に表示する(ステップS102)。
【0022】
図3は、図形入力画面の一例を示す説明図である。図3に示すように、本実施例の図形入力画面には、ポインティングデバイスによって図形が描画可能な図形描画エリアFAと、描画された図形に近似した道路群を探索する条件を入力する探索条件入力欄SCと、探索された道筋を配信する方法を指定する配信方法指定欄TCとが用意されている。
【0023】
図形描画エリアFAによる図形描画機能は、ブラウザ上で動作するJava(登録商標)アプレットによって実現されている。コンピュータ200は、ブラウザ上でこのJavaアプレットを動作させることにより、図形描画エリアFA上を移動するカーソルの軌跡をサンプリングして図形データを生成する。具体的には、ポインティングデバイスのボタンがクリックされた状態で移動しているカーソルの座標を所定の時間間隔で取得し、各座標を、その座標が取得された順に線分で結ぶことにより図形データを生成する。図3には、図形描画エリアFAに、「そ」という文字を表す図形が描画された例を示している。
【0024】
探索条件入力欄SCには、道筋を探索するエリアを指定する探索エリア指定欄と、ユーザの移動手段を、自動車、自転車、徒歩、公共交通機関の中から指定する移動手段指定欄と、探索する道筋の大まかな範囲(東西および南北の距離)を指定する範囲指定欄と、図形描画エリアFAに描画された図形と探索される道筋との形状誤差を指定する誤差指定欄と、探索された道筋を移動するのに要する時間を指定する時間指定欄と、道筋の総移動距離を指定する距離指定欄とが用意されている。ユーザは、これらの欄のすべてに入力を行う必要はなく、その一部のみを入力することも可能である。入力されなかった欄については、その欄についての条件が指定されなかったことになる。なお、入力されなかった欄については、予め設定されたデフォルトの情報が指定されたとみなしてもよい。本実施例では、図3に示すように、道筋を探索するエリアを、探索エリア指定欄に表示されるドロップダウンリストの中から選択する方式を採用している。しかし、探索エリアの指定は、ブラウザに表示される地図画像上で直接的に指定可能としてもよい。この場合、例えば、ブラウザ上に表示される地図画像上でユーザから任意の2点の指定を受け付け、その2点を対角の頂点とする矩形範囲を、探索エリアとして指定することができる。
【0025】
配信方法指定欄TCには、探索された道筋を配信する方法として、Web、電子メールおよび郵送のうち、少なくともいずれか1つ指定するチェックボックスが用意されている。この配信方法指定欄TCによって、「Web」が選択されれば、サーバ装置100で探索された道筋は、コンピュータ200のブラウザ上に表示される。また、電子メールが選択されれば、配信方法指定欄TCで指定されたメールアドレス(例えば、図1に示した携帯電話300のメールアドレス)に、道筋を表すデータが添付された電子メールが配信される。また、「郵送」が、選択されれば、配信方法指定欄TCで指定された住所に、道筋の印刷された書面が郵送される。なお、配信方法指定欄TCでは、コンピュータ200に道筋を配信する方法として、その道筋を表示させるアプリケーション(例えば、ブラウザ、汎用的な画像処理ソフトウェア、画像ビューワ、専用アプリケーション等)を指定可能としてもよい。この場合、後述するステップS208の処理では、サーバ装置100は、そのアプリケーションで取り扱い可能なファイル形式で道筋を表すデータを配信する。
【0026】
コンピュータ200は、図3に示した図形描画エリアFA、探索条件入力欄SCおよび配信方法指定欄TCに対する図形や情報の入力をユーザから受け付け(ステップS104)、図形入力画面中の「送信ボタン」が押されたかを判断する(ステップS106)。送信ボタンが押された場合には、コンピュータ200は、サーバ装置100に対して、図形描画エリアFAに描画された図形の図形データと、探索条件入力欄SCに入力された情報(以下、探索条件情報という)と、配信方法指定欄TCに入力された情報(以下、配信方法情報という)とを送信する(ステップS108)。
【0027】
サーバ装置100は、図形データ、探索条件情報および配信方法情報をコンピュータ200から受信すると(ステップS204)、受信した図形データが表す図形に近似する形状の道路群を、受信した探索条件情報に応じて道路網データベース142から探索する(ステップS206)。具体的には、サーバ装置100は、道路網データベース142に記録された道路網の中から、探索条件情報によって指定されたエリアを抽出し、こうして抽出されたエリア内から、探索条件情報によって指定された移動手段に対応する道路の種別(自動車や自転車であれば車道、徒歩であれば歩道、公共交通機関であれば、線路や路線)を選択する。そして、選択された種別の道路の中から、探索条件情報によって指定されたコース範囲、総移動時間、総移動距離を満たし、受信した図形データの形状に近似する形状の道路群を、周知のパターンマッチング処理によって探索する。
【0028】
このパターンマッチング処理では、例えば、コース範囲が指定されていれば、その範囲に大きさが略一致する道路群を探索し、総移動時間が指定されていれば、ユーザの移動手段に予め対応付けられた平均速度(例えば、自動車であれば30km/h、徒歩であれば4km/h)に、総移動時間を積算することにより得られる距離に図形データをスケーリングして、パターンマッチングを行う。また、総移動距離が指定されていれば、その総移動距離に図形データをスケーリング(拡大/縮小)してパターンマッチングを行う。また、許容誤差が指定されていれば、図形データを構成する各線分を許容誤差に応じて太らせ、その太らせた範囲内に収まる道路群を探索する。なお、ステップS206において、複数の道路群が道路網データベース142から探索された場合には、最も形状誤差が小さい道路群を選択することとする。もちろん、探索された複数の道路群をユーザにすべて提示してもよい。
【0029】
パターンマッチングによって、ユーザが描画した図形に近似した道路群を探索すると、サーバ装置100は、探索された道路群(道筋)の形状を表す道筋データを、配信方法情報によって指定された配信先に配信する(ステップS208)。このとき、配信方法として、「Web」が指定されていれば、サーバ装置100は、コンピュータ200に対して、道筋データを配信する。コンピュータ200は、道筋データをサーバ装置100から受信すると(ステップS110)、その道筋データによって表される道筋をブラウザ上に表示し、ユーザから印刷指示があれば、プリンタ250を用いて表示された道筋の印刷を行う(ステップS112)。
【0030】
図4は、ブラウザ上への道筋の表示例を示す図である。図4には、「そ」という文字の形状に近似する道筋が表示されている例を示している。図示するように、本実施例では、コンピュータ200は、地図画像(あるいは衛星写真画像)によって表される既存の道路網上に、探索された道路群を強調して表示することで、道筋の表示を行う。本実施例では、更に、道筋上に、ユーザが描画した図形を重畳して表示し、更に、その道筋が存在する場所の住所と、その道筋の総距離、および、指定された移動手段に応じた推定移動時間を表示する。これらの情報は、上記ステップS208において、サーバ装置100から道筋データとともに配信される。なお、ブラウザへの道筋以外の表示は任意であり省略してもよい。また、本実施例で挙げた情報以外の情報を表示してもよい。
【0031】
以上で説明した第1実施例の道筋探索システム10によれば、ユーザが描画した図形に近似した道筋を道路網データベース142から探索してユーザに提示することができる。そのため、ユーザは、ウォークラリーやオリエンテーリング、自動車レースなどのコース(道筋)を決定する際に、既存の道路網の中から自分のイメージに近いコースを容易に探索することが可能になる。また、本実施例によれば、図形と道路網とのパターンマッチングによって道筋の探索を行うこととしたため、出発地や目的地、経由地などを入力することなく道筋を探索することができる。そのため、極めて高い自由度でコースの探索を行うことができる。なお、上記実施例では、ユーザがポインティングデバイスで図形を描画する例を示したが、例えば、ユーザがテキストデータをキーボード等から入力し、そのテキストの形状に近似した道筋を探索することも可能である。
【0032】
B.第2実施例:
上述した第1実施例では、ユーザが描画した図形に近似した道筋を探索した。これに対して、第2実施例では、ユーザが描画した図形に近似した道筋を探索した上で、その道筋を移動するための経路の探索を行う。本実施例の道筋探索システム10の構成は第1実施例と同じであるため、以下では、処理内容についてのみ説明する。
【0033】
図5は、第2実施例における道筋探索処理のフローチャートである。この道筋探索処理ルーチンでは、ユーザが、コンピュータ200にインストールされたWebブラウザを起動して、サーバ装置100のURLを入力すると、コンピュータ200からサーバ装置100に対して、図形入力画面を表示するための要求メッセージが送信される(ステップS100b)。サーバ装置100は、この要求メッセージを受信すると(ステップS200b)、図形入力画面をコンピュータ200に送信する(ステップS202b)。コンピュータ200は、こうしてサーバ装置100から送信された図形入力画面面を受信し、Webブラウザ上に表示する(ステップS102b)。
【0034】
図6は、第2実施例における図形入力画面の一例を示す説明図である。図6に示すように、本実施例の図形入力画面は、図3に示した第1実施例の図形入力画面とほぼ同じであるが、図形描画エリアFA内に、出発地と目的地とを指定可能となっている。ユーザは、図形描画エリアFA内に図形を描画すると、その図形上の位置に、出発地(S)と目的地(G)とをポインティングデバイスを用いて指定する。
【0035】
コンピュータ200は、図6に示した図形入力画面の図形描画エリアFA、探索条件入力欄SCおよび配信方法指定欄TCに対する図形や情報の入力をユーザから受け付け(ステップS104b)、図形入力画面中の「送信ボタン」が押されたかを判断する(ステップS106b)。送信ボタンが押された場合には、コンピュータ200は、サーバ装置100に対して、出発地と目的地の座標を含む図形データと、探索条件情報と、配信方法情報とを送信する(ステップS108b)。サーバ装置100は、出発地と目的地の座標を含む図形データ、探索条件情報および配信方法情報をコンピュータ200から受信すると(ステップS204b)、受信した図形データに近似する道路群を、探索条件情報に応じて道路網データベース142から探索する(ステップS206b)。道路群の探索方法は第1実施例と同じである。
【0036】
道路群を探索すると、サーバ装置100は、ユーザが指定した出発地と目的地とを結び、探索された道路群に含まれる道路をすべて経由する経路を探索する(ステップS207b)。このとき、サーバ装置100は、周知のオイラーの一筆書き定理に基づいて、探索された道路群が一筆書き可能であるかを判定し、一筆書きが可能であれば、周知のフラーリー(Fleury)のアルゴリズムによって経路を求める。一方、一筆書きが不可能であれば、周知のダイクストラ法を用いて、全ての道路を経由地とする経路を探索する。
【0037】
経路の探索を終了すると、コンピュータ200は、ステップS206bで探索された道筋を表す道筋データと、ステップS207bで探索された経路を表す経路データとを、配信方法情報によって指定された配信先に配信する(ステップS208b)。コンピュータ200は、道筋データと経路データとをサーバ装置100から受信すると(ステップS110b)、その道筋データによって表される道筋と、経路データによって表される経路とをブラウザ上に表示し、ユーザから印刷指示があれば、プリンタ250を用いて表示された道筋および経路の印刷を行う(ステップS112b)。
【0038】
図7は、ブラウザ上への道筋と経路の表示例を示す図である。図7には、「町」という文字の形状に近似する道筋が強調表示され、その周囲に、経路を示す矢印が表示されている例を示している。
【0039】
以上で説明した第2実施例によれば、ユーザが描画した図形に近似した道筋を探索するだけではなく、その道筋の経路も探索してユーザに提示することができる。そのため、ユーザは、描画した図形に近似した道筋を効率的に移動することが可能になる。
【0040】
C.第3実施例:
上述した第1実施例および第2実施例では、ユーザの描画した図形に近似する道筋を探索する技術について説明した。これに対して、第3実施例では、探索された道筋を利用する技術について説明する。
【0041】
図8は、第3実施例における道筋探索システム10bの構成を示す説明図である。図8に示すように、本実施例では、携帯電話300は、現在位置を逐次測位するGPS回路310と、GPS回路310によって測位した現在位置を示す位置データをサーバ装置100に送信する通信回路320とを備えている。サーバ装置100は、通信インターフェース130を介して複数の携帯電話300から送信された位置データを受信すると、受信した位置データを、送信元の携帯電話300毎(電話番号毎)にハードディスク140内の位置データベース144に記録する。つまり、本実施例では、携帯電話300のユーザの移動の履歴が、サーバ装置100に収集されることになる。
【0042】
図9は、第3実施例において、携帯電話300のディスプレイに表示される表示内容を示す図である。図9には、第2実施例でも示したように、「町」という文字の形状に近似する道筋が強調表示され、その周囲に、経路を示す矢印が表示されている例を示している。本実施例では、道筋と経路以外に、他のユーザの現在位置が経路上に表示される。図9では、星印が、GPS回路310によって測位されたユーザ自身の現在位置を示し、「A」、「B」、「C」と示した位置が、他のユーザの現在位置を示している。他のユーザの現在位置は、サーバ装置100によって位置データベース144から読み出され、各携帯電話300に逐次送信される。更に、本実施例では、図9に示すように、サーバ装置100から、経路全体におけるユーザの移動の達成率と順位とが配信されて携帯電話300のディスプレイに表示される。サーバ装置100は、経路全体の距離に対する、出発地からユーザの現在位置までの経路上の距離の割合を求めることで、達成率を算出することができる。また、サーバ装置100は、ユーザ毎に、目的地から現在位置までの経路上の距離を求め、この距離が短い順に、各ユーザに順位を割り当てることができる。
【0043】
以上で説明したように、本実施例の道筋探索システム10bでは、道筋と経路とを携帯電話300のディスプレイ上に表示し、更に、その上に、自己の現在位置と他人の現在位置とを表示する。そのため、ウォークラリーやオリエンテーリング、レースなどにおいて、ユーザは、自分と他人との位置関係を容易に把握することが可能になる。また、本実施例では、達成率や順位も携帯電話300に表示することとしたため、本実施例の道筋探索システム10bを利用して様々な趣向のレクリエーションや競技を催すことが可能になる。
【0044】
なお、本実施例では、携帯電話300に経路を表示することとしたが、経路の表示は省略することとしてもよい。また、達成率や順位の表示も任意である。もちろん、達成率や順位だけではなく、様々の情報を携帯電話300に表示させることが可能である。例えば、経路を表示しない場合において、各ユーザの道筋の移動効率を表示させてもよい。移動効率とは、道筋全体の距離に対する、ユーザが実際に移動した距離の比率である。また、道筋をはずれたユーザを、位置データに基づきサーバ装置100が検出し、検出されたユーザの情報を配信して携帯電話300に表示させてもよい。そのほかにも、例えば、道筋の一部を携帯電話300に表示させることで、ユーザに道筋の完成形の予測を行ってもらい、サーバ装置100は、受信したユーザの位置データに基づいて、その予測が正解かどうかを判断するという処理を行ってもよい。このとき、予測が正解したユーザには、正確な道筋を携帯電話300に配信して表示させることなども可能である。
【0045】
以上、本発明の種々の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができることはいうまでもない。例えば、ソフトウェアによって実現した機能は、ハードウェアによって実現するものとしてもよい。
【0046】
その他、例えば、ユーザが閉じた図形を描画した場合には、その図形に近似する道路群を探索するとともに、更に、その道路群に内包される道路をすべて経由する経路を探索してもよい。こうすることで、ユーザが指定した範囲(観光エリア等)を効率よく移動することが可能な経路を提示することが可能になる。
【0047】
また、上述した各実施例では、ユーザから文字を表す図形の入力を受け付けた例を説明したが、ユーザから入力される図形は文字に限られない。ハートマークや星印、多角形、曲線、予め登録された図形、フリーハンドで描画した図形など、種々の図形の入力を受け付けることが可能である。
【0048】
また、図4や図7には、サーバ装置100から配信された道筋(経路)の表示例を示したが、これらの表示例に示した事項に加えて、道筋(経路)上には、その道筋(経路)上に沿って存在する所定のコンテンツの表示を行ってもよい。コンテンツとは、例えば、コンビニエンスストアや飲食店、衣料品店などの各種店舗や、観光ポイント、ランドマークなどのことをいう。画面上に表示されるコンテンツは、ユーザから指定されることとしてもよいし、ユーザから指定されたテーマに応じて選択されることとしてもよい。テーマとは、ユーザがその道筋(経路)を通行する目的のことをいう。テーマとしては、例えば、ショッピングや、食べ歩き、観光などが挙げられる。この場合、例えば、ショッピングというテーマが選択されれば、道筋(経路)上に、その道筋(経路)に沿って存在する衣料品店を表示し、食べ歩きというテーマが選択されればその道筋(経路)に沿って存在する飲食店の表示を行う。また、画面上には、サーバ装置100から配信された道筋に加えて(あるいは換えて)、ユーザが指定したコンテンツをできるだけ多く経由する道筋などを表示してもよい。
【符号の説明】
【0049】
10,10b…道筋探索システム
100…サーバ装置
110…CPU
120…RAM
130…通信インターフェース
140…ハードディスク
142…道路網データベース
144…位置データベース
200…コンピュータ
210…CPU
220…RAM
230…通信インターフェース
240…ハードディスク
250…プリンタ
300…携帯電話
310…GPS回路
320…通信回路
FA…図形描画エリア
SC…探索条件入力欄
TC…配信方法指定欄
NT…通信ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道筋探索装置であって、
図形の形状を表す図形データを取得する図形データ取得部と、
道路のつながり状態を表す道路網データを記憶する道路網データ記憶部と、
前記道路網データと前記図形データとを対比して、前記図形データが表す図形の形状につながり状態が近似した道路群を前記道路網データから探索する道路群探索部と、
前記探索された道路群を出力する出力部と
を備える道筋探索装置。
【請求項2】
請求項1に記載の道筋探索装置であって、
更に、前記道路群探索部によって探索された道路群に含まれる道路を移動するための経路を探索する経路探索部を備え、
前記出力部は、前記探索された道路群と、前記探索された経路とを出力する道筋探索装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の道筋探索装置であって、
更に、前記道路網データの中から、任意のエリアの指定を受け付けるエリア指定部を備え、
前記道路群探索部は、前記道路網データの中の、前記指定されたエリアの中から、前記道路群の探索を行う道筋探索装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の道筋探索装置であって、
更に、ユーザの移動手段の指定を受け付ける移動手段指定部を備え、
前記道路網データ記憶部は、移動手段毎にそれぞれ前記道路網データを記憶しており、
前記道路群探索部は、前記指定された移動手段に応じた前記道路網データを用いて前記道路群の探索を行う道筋探索装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の道筋探索装置であって、
前記図形データ取得部は、前記図形データを、所定の通信回線を介して前記道筋探索装置に接続された端末装置から取得し、
前記出力部は、前記通信回線を介して前記端末装置に前記探索された道路群を出力する道筋探索装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の道筋探索装置であって、
更に、現在位置を測位可能な複数の携帯端末から、所定の通信回線を介して前記各携帯端末の現在位置を表す位置データを取得する位置データ取得部を備え、
前記出力部は、前記探索された道路群と、前記各携帯端末の現在位置を表す位置データとを、前記各携帯端末に出力する道筋探索装置。
【請求項7】
コンピュータが道筋を探索する道筋探索方法であって、
コンピュータが、図形の形状を表す図形データを取得する図形データ取得工程と、
コンピュータが、記憶装置に記憶された道路のつながり状態を表す道路網データと前記図形データとを対比して、前記図形データが表す図形の形状につながり状態が近似した道路群を前記道路網データから探索する道路群探索工程と、
前記探索された道路群を出力する出力工程と
を備える道筋探索方法。
【請求項8】
コンピュータが道筋を探索するためのコンピュータプログラムであって、
図形の形状を表す図形データを取得する図形データ取得機能と、
記憶装置に記憶された道路のつながり状態を表す道路網データと前記図形データとを対比して、前記図形データが表す図形の形状につながり状態が近似した道路群を前記道路網データから探索する道路群探索機能と、
前記探索された道路群を出力する出力機能と
をコンピュータに実現させるコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−204016(P2010−204016A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52098(P2009−52098)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(500578216)株式会社ゼンリンデータコム (231)
【Fターム(参考)】