説明

道路トンネルの床構造及び道路トンネルの床構築方法

【課題】床版の部材重量の軽減、コストの削減、施工ステップの削減、工期の短縮化、接合工増の簡略化を可能とした道路トンネルの床構造を提供する。
【解決手段】シールドトンネル10のセグメント22内面の一対のアーチ台座24上に両端部が載置され、前記両端部に押えコンクリート26を打設して固定された上方に突出する状態のアーチ状のプレキャストコンクリート製の床版16と、床版16上に打設された埋め戻し材18と、埋め戻し材18上に形成された路面20とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドトンネル内部に構築する道路トンネルの床構造及び道路トンネルの床構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、シールド道路トンネルは、図3に示すように、トンネル1のほぼ中央に構築された床版2を境に、車道として利用される上部空間3と、排水、電気等の保全施設、避難施設などとして利用される下部空間4に区画され、さらに下部空間4は必要に応じて中壁5によって複数の空間に区画されている。
【0003】
床版2の施工に際しては、例えば、トンネル1内の両側部に側壁部鉄筋を組み立て、それを側壁部型枠にて覆い、型枠内に側壁コンクリートを打設して側壁6を形成すると共に、トンネル1の下部に中壁土台コンクリート7を打設し、この中壁土台コンクリート7にプレキャストコンクリート製の中壁5を設置し、側壁6頂部と中壁5頂部にプレキャストコンクリート製の床版2を設置するようにしている。
【特許文献1】特開2006−152746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなシールド道路トンネルにあっては、床版2が平板状となっているため、床版2の厚さが比較的厚く、重量が重く、コスト高にもなる。
【0005】
また、床版2の強度を補助するため、床版2を支持する中壁5が必要となる。
【0006】
さらに、施工ステップが多く、工期が長くなる。
【0007】
そしてさらに、床版2が平板状であるため、強度を持たせるために床版2と側壁6、中壁5、あるいは床版2同士の接合構造が複雑となる等の問題がある。
【0008】
本発明の目的は、床版の部材重量の軽減、コストの削減、施工ステップの削減、工期の短縮化、接合構造の簡略化を可能とした道路トンネルの床構造及び道路トンネルの床構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明の道路トンネルの床構造は、シールドトンネルの覆工内面の一対の台座上に両端部が載置され、前記両端部に押えコンクリートを打設して固定された上方に突出する状態のアーチ状のプレキャストコンクリート製の床版と、前記床版上に打設された埋め戻し材と、前記埋め戻し材上に形成された路面とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、床版がプレキャストコンクリート製のアーチ状となっているため、平板状の床版に比し部材の厚さ、重量を低減、コストの削減が可能となり、さらに、床版をアーチ状とすることで強度向上を望め、しかも、台座と押えコンクリートという簡単な作業で固定ができ、かつ、中壁を省略することが可能となり、その分施工ステップの省略ができ、工期の短縮を図ることができる上に、接合構造も簡略なものとすることができる。
【0011】
本発明においては、前記台座は、前記シールドトンネルの覆工内面に配筋、型枠の設置及びコンクリートの打設を行って形成されるようにすることができる。
【0012】
このような構成とすることで、現場内コンクリートの打設で容易かつ確実に台座を形成することができる。
【0013】
また、本発明においては、前記現場打ちコンクリートによる台座の形成に変えて、プレキャストコンクリート製の台座をシールドトンネルの覆工内壁面に設置、固定することができる。
【0014】
このような構成とすることにより、より容易かつ確実に台座の形成が可能となる。
【0015】
本発明においては、、隣接する前記プレキャストコンクリート製の床版同士は、ボルト結合されるようにすることができる。
【0016】
このような構成とすることにより、床版同士の接合を簡略なものにして、施工の迅速化を図ることができる。
【0017】
本発明においては、前記埋め戻し材として流動化処理土を用いるようにすることができる。
【0018】
このような構成とすることにより、シールド掘削残土の利用、産廃土の削減、残土処理費の低減を図ることができる。
【0019】
本発明の道路トンネルの床構築方法は、シールドトンネルの覆工内面に一対の台座を形成する工程と、前記台座上に上方に突出する状態のアーチ状のプレキャストコンクリート製の床版の両端部を載置する工程と、前記アーチ状の床版の両端部に押えコンクリートを打設して床版を固定する工程と、前記アーチ状上の床版上に埋め戻し材を打設する工程と、前記埋め戻し材の天面を均して路面を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、床版の部材重量の軽減、コストの削減、施工ステップの削減、工期の短縮化、接合構造の簡略化を可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0022】
図1及び図2は、本発明の一実施の形態に係る道路トンネルの床構造を示す図で、図1はその縦断面図、図2は図1の部分拡大図である。
【0023】
この道路トンネルの床構造は、図1に示すように、シールドトンネル10の内部を道路用の上部空間12と、パイプスペース用の下部空間14とに区画するもので、床版16と、埋め戻し材18と、路面20とを有している。
【0024】
床版16は、アーチ状に形成されたプレキャストコンクリート部材製のもので、予め工場にて生産されて施工現場に搬入されるようになっている。
【0025】
また、この床版16は、中央部が上方に突出する状態で、シールドトンネル10の覆工であるセグメント22の内面に両端部を固定させた状態となっている。
【0026】
この床版16の両端部は、図2にも示すように、セグメント22内面の取付固定位置に形成したアーチ台座24上に載置され、両端部に打設した押えコンクリート26にて横ズレを防止し、固定されるようになっている。
【0027】
アーチ台座24は、上面に載置用凹部28が形成され、この載置用凹部28内に敷きモルタル30を施して、その上に床版16の両端部が載置されるようになっている。
【0028】
このように、床版16をアーチ状とすることで、平板状の床版に比し部材の厚さ、重量を低減、コストの削減を図ることができ、さらに、床版16をアーチ状とすることで強度向上が望め、中壁を省略して下部空間14のスペースの有効利用を図ることが可能となり、しかも、中壁の分施工ステップの省略ができ、工期の短縮を図ることができる。
【0029】
また、床版16をプレキャストコンクリート部材にて形成することで、施工の迅速化、省力化を行うことができる。
【0030】
さらに、アーチ状のプレキャストコンクリート製の床版16は、強度が高いため、シールドトンネル10の軸方向で隣接するプレキャストコンクリート部材製の床版16同士を簡略なボルト結合として、施工の迅速化を図るようにしている。
【0031】
埋め戻し材18は、床版16の天面が隠れるようにアーチ状の床版16上に打設されるようになっている。
【0032】
この埋め戻し材18としては、流動化処理土を用いるようにしており、これによって、シールド掘削残土の利用ができ、産廃土の削減及び残土処分費の低減を図るようにしている。
【0033】
路面20は、床版16上に打設された埋め戻し材18を均して、アスファルト舗装を行うことによって形成されている。。
【0034】
次に、このような道路トンネルの床構築方法について説明する。
【0035】
まず、シールドトンネル10のセグメント22の内面に配筋、例えばジベル筋32、型枠を設置し、コンクリートの打設を行って一対のアーチ台座24を形成する。
【0036】
この場合、アーチ台座24の上面には、アーチ状の床版16の両端部を載置する載置用凹部28を形成しておく。
【0037】
次に、アーチ台座24上面の載置用凹部28内に敷きモルタル30を施し、アーチ状の床版16を中央部が上方に突出する状態にして、その両端部を載置用凹部28内に載置する。
【0038】
次いで、アーチ状の床版16の両端部に押えコンクリート26を打設して、アーチ状の床版16を固定する。
【0039】
なお、シールドトンネル10の軸方向において、床版16同士はボルトにて接合する。
【0040】
次に、アーチ上の床版16上に埋め戻し材18として流動化処理土を床版16が隠れる程度に打設する。
【0041】
そして、埋め戻し材18の天面を均してアスファルト舗装を施して路面20を形成すれば施工が完了する。
【0042】
このように、アーチ状の床版16を用いることで、発生曲げモーメントを抑制し、床版16の薄肉化、部材重量の軽減を図ることができる。
【0043】
また、アーチ特性により中壁が不要となり部材ピースの削減ができる。
【0044】
さらに、床版16をプレキャストコンクリート部材にて形成することで、現場作業の省力化を図り、施工効率の効率化を図ることができる。
【0045】
また、埋め戻し材18に、流動化処理土を用いることで、シールド掘削残土の資源化と産廃土量の削減化を図ることができる。
【0046】
さらに、アーチ状の床版16とセグメント22との接合構造を簡略化でき、現場作業の省力化を図ることができる。
【0047】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の形態に変形可能である。
【0048】
例えば、前記実施の形態においては、埋め戻し材として流動化処理土を用いているが、この例に限らず、砕石や一般土を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施の形態に係る道路トンネルの床構造を示す縦断面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】背景技術に係る道路トンネルの断面図である。
【符号の説明】
【0050】
10 シールドトンネル
12 上部空間
14 下部空間
16 床版
18 埋め戻し材
20 路面
22 セグメント
24 アーチ台座
26 押えコンクリート
28 載置用凹部
30 敷きモルタル
32 ジベル筋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールドトンネルの覆工内面の一対の台座上に両端部が載置され、前記両端部に押えコンクリートを打設して固定された上方に突出する状態のアーチ状のプレキャストコンクリート製の床版と、
前記床版上に打設された埋め戻し材と、
前記埋め戻し材上に形成された路面と、
を有することを特徴とする道路トンネルの床構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記台座は、前記シールドトンネルの覆工内面に配筋、型枠の設置及びコンクリートの打設を行って形成されることを特徴とする道路トンネルの床構造。
【請求項3】
請求項1において、
前記台座は、プレキャストコンクリート製とされ、前記シールドトンネルの覆工内面に設置、固定されることを特徴とする道路トンネルの床構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
隣接する前記プレキャストコンクリート製の床版同士は、ボルト結合されることを特徴とする道路トンネルの床構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記埋め戻し材として流動化処理土を用いることを特徴とする道路トンネルの床構造。
【請求項6】
シールドトンネルの覆工内面に一対の台座を形成する工程と、
前記台座上に上方に突出する状態のアーチ状のプレキャストコンクリート製の床版の両端部を載置する工程と、
前記アーチ状の床版の両端部に押えコンクリートを打設して床版を固定する工程と、
前記アーチ状上の床版上に埋め戻し材を打設する工程と、
前記埋め戻し材の天面を均して路面を形成する工程と、
を含むことを特徴とする道路トンネルの床構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−74330(P2009−74330A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246807(P2007−246807)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【出願人】(000150110)株式会社竹中土木 (101)
【出願人】(391034499)鶴見コンクリート株式会社 (15)
【Fターム(参考)】