説明

道路内部の損傷部の打音調査工法及び道路内部の損傷部調査用打音装置

【課題】 路面に添って台車を押し進めるという、労力の少ない労働で、自重の大きい回動打音器を追従させて、大きな衝撃音を発生させ、道路の内部における損傷部の有無に対応する衝撃音を正確に判別できる打音調査工法及び打音装置を提供する。
【解決手段】
回動打音器2の本体20の断面形状は多角形に形成し、路面上41を回動させるときには外周の各頂点22が等間隔24で次々と路面41に対して衝撃的接地して衝撃音を発するように構成し、この本体20を台車1に連結し、台車1で引いて路面上41を移動させ、次々と衝撃音を発生させる。各頂点22から次々と発生する衝撃音の音圧レベルが、道路内部に損傷部48が有る場合36aと、道路内部に損傷部が無い場合36bとでは相違することを利用して、道路40の内部における損傷部48の有無を探知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の移動車両の輪荷重を直接負担する道路(床版を含む、以下単に道路又は床版と称する)の内部の損傷部を打音装置を用いて叩くことにより、打音を発生させ、発生する打音の変化により損傷部の有無を判別する打音調査工法、及び道路内部の損傷部を叩いて打音を発生させ、発生する打音の変化により損傷部の有無を判別するために用いられる道路内部の損傷部調査用打音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より道路内部の損傷部調査用の点検ハンマー等の打音器は広く知られている。道路内部の損傷部を調査する場合は次に示す非特許文献1に記載されているように点検ハンマーが用いられている。即ち、
非特許文献1における「17-9-4 施工及び品質管理」の項には、コンクリート(アスファルトも同じ)床版面のひび割れ、浮き、剥離、空洞等の劣化・損傷部(以下単に損傷部ともいう)の調査点検方法に関し次のように記載されている。
「 床版現況調査について・・・ 床版現況調査は、保全点検要領(構造物編)、設計図書及び監督員の指示に従って、コンクリート床版面を目視法および点検ハンマー等を使用した打音法により、劣化部・損傷部を調査点検し、必要な調書を監督員に提出しなければならない。
床版現況調査により、床版にひび割れ、浮き、剥離等の劣化・損傷が発見された場合には、その範囲をマーキングし、 監督員に報告し確認を受けるものとする。」と記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】橋梁補修工事(H21年度)・ 特記仕様書・「17-9-4 施工及び品質管理の項」・ 中日本高速道路株式会社名古屋支社平成21年5月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来の道路内部の損傷部の調査に用いられている打音器としての点検ハンマーを用いた場合、即ち、道路面などの広い範囲の路面の点検を点検ハンマーで叩いて点検する場合、点検ハンマーを、腕で、反復、上下方向に振り動かす作業は、根気を必要とし、作業者に敬遠される問題点がある。
・ また点検ハンマーで路面を叩いて点検する打音法によると、点検ハンマーが軽いと、アスファルト舗装道路のように床版の厚さ寸法が大きい場合、打音が小さく、道路内部における損傷部の有無が判別しがたい問題点がある。
・ そこで、 点検ハンマーを大きくして重たくし、大きな打音が出るようにすると、作業者の腕に加わる作業負担が増大する悩みがあった。
【0005】
さらに点検対象とする道路面が広い範囲に渡る場合には、作業者の疲労が蓄積し、点検ハンマーの上下動作に斑が生じ、結局、打音に斑が発生し、判別し難くなって、点検結果が信用できなくなる問題点もあった。
【0006】
さらに、出願人会社においては、点検ハンマーの操作に代えて、レーダー等の電磁波を利用する装置により道路内部の損傷部調査を行うことも考えたが、上記電磁波を利用する装置は、現場において電磁波を発生させたり、道路に向けて電磁波を照射したり、得られる反射波を処理するなどの装置が極めて高額となり、コストが嵩み、手軽に道路の損傷部の調査には利用できない問題点がある。
また上記電磁波を利用する装置の取り扱いには専門的知識を必要とし、土木工事に従事している作業員が、手軽に電磁波を活用する装置を操作することはできない人材面での難点もあった。
【0007】
本件出願の目的は、上記課題を解決するもので、台車を、労少なく体でもって、押し進めることにより、台車に連結してある回動打音器を追従させ、その回動打音器から発する音により、道路の損傷部の有無の調査ができるようにした道路内部の損傷部の打音調査工法を提供しようとするものである。
・ 他の目的は、台車が一定の寸法間隔で進むごとに上記回動打音器から発する衝撃的接地音と、その一定の寸法間隔で発する衝撃的接地音と同期させて、道路内部の損傷部の有無によって変化する衝撃音の音圧レベルの変化状況を収録可能にすることにより、後日、収録したデータから、回動打音器の移動距離と、道路内部の損傷部の位置等の参考に供することのできるデータを得ることのできる道路内部の損傷部の打音調査工法を提供しようとするものである。
・ 他の目的は、 台車と、回動打音器と、これらの連係機構を備えることにより、 道路内部の損傷部の調査に用いることのできる打音装置を提供しようとするものである。
・ 他の目的は、移動中、台車が上下動しても、台車の上下動が回動打音器を揺動させる等の悪影響を及ぼして回動打音器からの打音に斑を発生させることのないようにしてある打音装置を提供しようとするものである。
他の課題、目的及び利点は図面及びそれに関連した以下の説明により容易に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明における道路内部の損傷部の打音調査工法は、
断面の外周形状が多角形に形成され、回動どきには外周の各頂点22が等間隔24で次々と路面41に対して衝撃的接地して衝撃音を発するように中心部25を回転中心にして回動自在に形成してある回動打音器2の本体20を、
台車1に連結した状態で、
上記台車1を路面上41を移動させることにより、上記回動打音器2の本体20を回動させながら上記台車1に追従させ、
上記回動打音器2の本体20の外周の多角形の各頂点22を等間隔24で、路面41に対して衝撃的接地させて、次々と衝撃音を発生させ、
次々と発生する衝撃音の音圧レベルが、道路40の内部において損傷部48が有る場合36aと、道路40の内部に損傷部が無い場合36bとでは相違することを利用して、道路40の内部における損傷部48の有無を探知するようにした。
【0009】
また好ましくは、上記台車1には、回動打音器2の本体20における外周の各頂点22が路面に対して衝撃的接地をして発する衝撃音を収録する為のマイクロフォン6を装備し、回動打音器2の本体20における外周の各頂点22が一定の寸法間隔24で路面41に接することにより発する衝撃的接地音と、その一定の寸法間隔24で発する衝撃的接地音と同期して、道路内部の損傷部48の有無によって変化する衝撃音の音圧レベル36a、36bの変化状況を、同時に、収録するようにした。
【0010】
本発明における道路内部の損傷部調査用打音装置は、
中心軸25を回転中心にして回動自在に形成してある回動打音器2の本体20であって、その本体20の断面の外周21の形状は多角形で、回動どきには外周21の各頂点22が等間隔24で路面41に対して衝撃的接地して衝撃音を発するように外周21における各頂点22は、夫々突設させてある回動打音器2の本体20を備え、
上記回動打音器2の本体20は、路面41上を移動可能に構成されている台車1に対し、
台車1の進行に伴って台車1と同方向に回動して、台車1に追従するように連係機構4を介して連係してあり、
台車1と回動打音器2の本体20との連係機構4を介しての連係状態は、回動打音器2の本体20の回動に伴い回動打音器2の本体20の中心部25が、台車1に対し、上下方向56に揺動することを許容するように支持してある。
【0011】
また好ましくは、上記台車1には、台車1の移動距離を表示するためのカウントメジャー5が付設されているものであればよい。
【0012】
また好ましくは、上記台車1に連係してある回動打音器2の本体20の近くには、台車1の進行に伴って台車1に追従して回動する回動打音器2の本体20における各頂点22が路面41に対して衝撃的接地をして発する衝撃音を収録する為のマイクロフォン6が装備されているものであればよい。
【0013】
また好ましくは、上記台車1には、路面上41を回動させる回動打音器2の本体20から発する衝撃音に変化があった個所の路面上41に対して目印を付すために、路面上41に向けて目印用流体を流出させるためのノズル7aと、ノズル7aに向けて流体を供給するための流体貯蔵タンク7bと、ノズル7aからの流体量を調節するためのレバー7cとからなる目印付設手段7を備えるものであればよい。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明は、例えばコンクリート舗装されている広い道路の内部における損傷部48の調査をする場合、回動打音器の本体20は、台車を動かす方向に追従するようにしてあるから、作業員は、単に路面上を、軽々と台車を押し進めることにより、回動打音器の本体20を追従させながら回動させ、打音器の本体20の周囲に備える複数の突出状の各頂点を夫々路面に衝突させ、夫々の各頂点を発音部とし、そこから、「損傷部に対応する音圧レベル」、又は、「損傷部が無い場合に対応する音圧レベル」を発生させ、道路内部の損傷部の有無を判別調査することができる特長がある。
このことは、路面に添って台車を軽快に押し進めるという、労力の少ない軽労働で、自重の大きい回動打音器を追従操作して、判別が容易となる大きな衝撃音を発生させることを可能にし、道路の内部における損傷部の有無を、次々と正確に判別できるという作業上の効果がある。
【0015】
その上本発明にあっては、 台車と回動打音器の本体20との連係状態は、回動打音器の本体20の中心部の上下方向の揺動を許容するように支持するものであるから、台車が、路面の都合によって上下に揺動することがあっても、台車の上下の揺動に追従して回動打音器の本体20が浮き沈みする恐れはなく、路面上を正確に回動し、次々と衝撃的に接地して道路内部の状況に対応した良質の衝撃音を信頼性高く発する効果がある。
【0016】
さらに本発明にあって、台車に対して、台車の移動距離を表示するためのカウントメジャーを付設しておく場合には、道路内部の損傷部の有無によって衝撃音の音圧レベルが変化して場合に、即座に、基点位置から道路内部の音圧レベルが変化場所までの距離を知ることができ、手元の地図にその距離を記録することのできる利点がある。
【0017】
さらに本発明にあって、 回動打音器の本体20における外周の各頂点が一定の寸法間隔で路面に接することにより発する衝撃的接地音を、マイクロフォンを装備して収録可能に構成すると、上記の一定の寸法間隔で発する衝撃的接地音の解析により後日、台車の移動距離を知ることができ、
また同期して、道路内部の損傷部の有無によって変化する衝撃音の音圧レベルの変化状況をも、同時に収録できるものであるから、基点位置から道路内部の損傷部が存在していた場所までの距離を、後日、記録として再認識する上に効果がある。
【0018】
さらに本発明にあって、台車に対し目印付設手段を備えさせることにより、台車を進行させて回動打音器の本体20の周囲に備える複数の突出状の発音部から次々と衝撃音を生じさせている場合、その衝撃音の音圧レベルの変化(損傷部の存在場所)が認められた地点において、台車を押し進める姿勢でもって、レバーを操作し、ノズルから流体を流出させて路面上に目印を付すことが出来、後日、損傷部の存在場所を明確にしておくことが出来る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】道路の平面図。
【図2】図1におけるII−II位置拡大断面図。
【図3】打音装置の斜視図。
【図4】打音装置の平面図。
【図5】(A)は、図4におけるV−V位置断面図。(B)は、回動打音器の本体20を図5(C)の右側から見た側面図。(C)は、回動打音器の本体20の斜視図。
【図6】(A)は、回動打音器の本体20における外周の各頂点が一定の寸法間隔で路面に接することにより発する衝撃的接地音の音圧レベルの変化を表す図。 (B)は、回動打音器の本体20における外周の各頂点が一定の寸法間隔で路面に接することにより発する衝撃的接地音をスペクトログラムで表す図。
【図7】(A)は、異なる打音装置の実施例を示す斜視図。(B)は、異なる打音装置に装備した目印付設手段の実施例を示す正面図。
【図8】異なる打音装置の実施例を示す側面図。
【図9】異なる実施例を示す連係機構の部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1は、コンクリート舗装道路(床版面)の平面図を例示し、図2は、図1におけるII−II位置断面図を示す。図1、2に例示する道路40の内部40aにおいて構造物として存在するコンクリート(アスファルトも同じ)構造物46には、経年利用により道路(床版)のひび割れ、浮き、剥離、空洞等の損傷部48が生じるので、これらを早期に発見し、回復させる必要がある。図3は上記道路(床版)40の損傷部48を打音により調査する為の工法に用いることのできる打音装置Sを示す。この打音装置Sは、左上に位置する横杆11bを手で握り、矢印55の方向に向けて台車1を押し進めることにより、台車1に連係機構4で連結してある回動打音器2の本体20(図4、5参照)を追従させて回動させ、次々と頂点22を衝撃的に接地させて衝撃音を発生させ、その衝撃音の音圧レベルの変化により上記損傷部48の存在の有無を判別できるようになっている。
【0021】
次に、上記損傷部調査用打音装置Sに備えさせた、回動打音器2にあっては、図4、5に良く表れているように、本体20は、中心軸25を回転中心にして回動自在に形成してある。回動打音器2の本体20の断面の外周21の形状は、図5(A)に表れているように多角形(例えば、図示のものは6角形にしてあるが、5〜8角形であってもよい)にしてある。回動打音器2の本体20は回転中心25を芯にして回動するときには外周面21の各頂点22の間の寸法24が等間隔にしてあって、各頂点22は次々と路面41に対して、一定間隔の寸法でもって、衝撃的接地して衝撃音を発するように構成されている。
なお、各頂点22、22・・・22の間の夫々の辺23、23・・・23は、各頂点22、22・・・22の接地を妨げることがないように、図5(B)に表れているように湾曲状に凹設して、凹部23aが形成してある。
【0022】
回動打音器2の本体20の重量は、大きな衝撃音を発生させるためには大きいことが望ましいが、取り扱いに不便をもたらすため、5kg〜8kg前後の重さがあるものが作業上好ましい。
また図5(B)に表れている、例えば6角形の例においては回動打音器2の本体20の外周面21の寸法(一つの辺の寸法24の角数倍の寸法)としては、最も大きい外径となる部分(各頂点22、22・・・22の相互間の寸法(例えば63mm)の6倍として、例えば378mm前後になる。また図5(A)に表れている状態において、回動打音器2の本体20の本体20の中心点25から道路面41迄の寸法は、例えば56mm前後になるようにしてある。
なお図示の実施例においては、図5(C)に表れているように回動打音器2の本体20の外形寸法は軸線方向の中心部22a(最も大きい外径となっている部分)は大きく、両側が比較的小径になるように各頂点22、22・・・22の形状は、図5(C)に表れているように湾曲させてある。なお、5〜8角形にあっては、上記の例を参考にして適宜変更実施すればよい。
また、上記回動打音器2の本体20は、台車1に連結して軽快に追従させるように構成してあるから、上記よりも少し重くしても作業負担は少なく、大きな打音が出るようになり、近くで発生するノイズとの判別ができるような大きな信号が出せる利点が生まれる。
【0023】
次に台車1は、道路40の面上を移動自在にしてある台枠10に対して、図3、4に表れているように連係機構4を介して回動打音器2の本体20を連結し、回動打音器2の本体20を追従回動させる為のもので、10は台枠を示し、10a、10bは構造部分を構成する四周の側枠、10c、10d、10e は夫々補強のための補助材を示す。これらの部材は、鉄材を用い、各要所を溶接するなどして丈夫に構成してある。しかし、持ち運びを考えれば、周知の台車(手押し車とも称されている)のようにアルミ材、合成樹脂材を用いて軽々と(例えば5〜10kg)に構成して持ち運びができるように構成しても良い。図4に表れている台枠の大きさは、取り扱いに不便がない程度の大きさであればよい。例えば図示のように平面形状を400mm×500mm前後の大きさにしてあってもよい。
【0024】
次に、11は手押し杆を示し、図3に表れているように、夫々側枠10a、10aに対し、連結部12において、周知の手押し車のように折り畳み自在に連結してあったり、又は、二重筒構造による抜き差し着脱自在に装着する状態にしてあったりして立ち上げた、立上杆11a、11aと、立上杆11a、11aの上方を連結する状態で横架している横杆11bを備える。横杆11bの路面からの寸法は、作業者の身長を考慮して定めてあり、例えば押し進め易いように700〜900mm位に設定してある。従って、上記横杆11bを矢印55方向に押すと、回動打音器2の本体20も同方向に向けて回動することになる。
次に14は、台枠10を矢印55方向に向けて軽快に押し進めることができるように配設した車輪(空気入り)を示し、台枠10の両側に複数(2個以上)の車輪を備える。
例えば台枠10の両側に備える側枠10aに対して任意の手段でもって回転自在に装着してある。装着の手段としては各車輪における回転自在の車軸15を側枠10aに対して固着してもよいし、側枠10aに対して車軸15を回転自在に装着し、それに車輪を固着しても良い。
車輪の大きさは任意(例えば200mm前後)であるが、回動打音器2の本体20よりも大きい方が、台枠10に対する回動打音器2の本体20の収まりがよい。
【0025】
次に連係機構4について説明する。連係機構4は、回動打音器2の本体20が 台車1の進行に伴って台車1と同方向55に回動して、台車1に追従するように連係させる機構で、図4,5によく表れている。
図において、28は回動打音器2の本体20を引き連れ可能な強度を有する連係杆で、例えば、鉄棒、板ばねで構成される。元部(止着部)29は、上記台枠の一部、例えば補助材10dに一体的に備えさせた突片30に対して重合させ、着脱自在にボルトを用いて締め付けて、連結してある(着脱自在の他の連結手段は、任意の周知の手段を用いればよい)。他方の自由端部32には、本体20を回動自在に連結する。手段としては任意であるが、例えば図示のように、硬質材を用いて、二叉状に形成された連繋部材33(一つの横持ち部材33aと、2つの縦引き部材33bとが二叉状に一体材で構成されている連繋部材)を用い、2つの縦引き部材33bの間に図5(C)に表れているように回動打音器2の本体20を納め、本体20の回転軸25を回転自在に2つの縦引き部材33bで支持する。一方、一つの横持ち部材33aの中央部は図5(C)に表れているように上記自由端部32の端部材28dに着脱取り外しを自在に連結する。
従って、上記構成によれば、台車1の持ち運びに当たって、台車1から回動打音器2を分離して夫々手軽な態様にして運搬することができる利点がある。
【0026】
なお連係杆28を上記のように板ばね28で構成している場合、他方の自由端部32に対して下方に向けての付勢力が常時加わるようにした場合には、回動打音器2の本体20に対して上方から加重する状態になり、本体20を小型軽量にしても、上述した衝撃音は、大きくなる作用効果が得られることになる。
【0027】
次に台車1と回動打音器2との連係機構4を介しての連係状態を説明する。上記のように台車1を矢印55の方向に向けて押し進めることにより、台車1に連係機構4で連結してある回動打音器2の本体20(図4、5参照)は追従する為に回動する。
その回動する場合、回動打音器2の本体20の頂点22、22・・・22は次々と衝撃的に接地して衝撃音を発生するのであるが、同時に、回動打音器2の本体20の回動に伴い回動打音器の中心部(軸心)が、台車に対し、上下方向に揺動することになる。係る状態においても、上記連係杆28が、例えば、板ばねで構成されている場合、台車1が上下動しなくても、板ばねは弾力的に上下方向56に変形し、本体20の上下動は許容される。なお連係杆28が鉄棒などの弾力性を備えない部材であっても、後述(図9参照)する支持の構成であれば、台車1に対し、回動打音器2の本体20の上下方向の揺動は許容される 。
次に、上記図5(A)に表れている補助材10dと回転軸25とを結ぶ線の傾斜角は、10度〜15度位にしておくとよい。
なお、上記構成による打音装置Sは、台車1と、回動打音器2と、連係機構4で構成されており、外観的にも簡易な機構だから、製作は容易で、コストは低く(安価)、その上、手軽に押し進めるだけの操作で活用できる特長があり、しかも、構成から明らかなように、故障になる部分が少ないので信頼性高く、道路内部の損傷部の打音調査に工法に利用できる特長がある。
さらに高架の道路上で利用したい場合等は、台車1と回動打音器2は夫々軽量に構成され得るので、夫々 持ち運びが簡単で、準備作業を迅速にできる効果がある。
【0028】
上記構成の打音装置Sを用いての道路内部の損傷部の打音調査工法についての実施例を説明する。
現場としては図1、2に表れているような道路(例えば高速道路)40があり、道路(床版)40の内部には、外部から見ることのできない損傷部(例えば空洞)48が1又は2カ所以上あることが予想(想像)される場合、損傷部48の存在の有無について打音調査が必要になる。
なお図中、41は道路の表面、42は上り線42aと、下り線42bの中間に設けられる中央線、43は走行車線と追越車線とを区分する車線境界線、46は構造物(コンクリート又はアスファルト材で構成されている)、47は必要に応じて介在されている鉄筋、金網を示す。
【0029】
現場においては、管理者の指示に従って調査範囲を確定する。例えば上り線42aの幅が4mあるものとすれば、両側から各1mのところに調査指示線44を引く。こうすることにより走行車線と追越車線に1本宛の調査指示線44が引かれたことになる。
次に図3に表れているように調査用の上記の打音装置Sを道路面上に配置する。なお運搬の都合上、台車1と、回動打音器2が分離してあった場合は、連係機構4を介して連結すると良い。
上記のようにして準備が整った後は、図3に表れている打音装置Sを、基点50から、調査指示線44に添わせ状態で矢印55方向に押し進めると、台車1は路面上を移動する状態で前進する。このように台車1が路面上41を移動することにより、台車1に連結した状態の回動打音器2の本体20は調査指示線44に添う状態で回動しながら台車1に追従する。
なお、本体20は図5(A)の最も安定した状態(下側に位置する一つの辺23が路面41に対向し、前後2つの頂点22、22が接地する状態)から、台車1の進行に伴い、連係杆28を介しての矢印55方向に向けての引っ張り力が軸心25に及ぶと上記2つの頂点22、22の内、前側に位置する頂点22を支点にして、軸心25は浮上する状態で前に移動し、前側に位置していた頂点22(支点)を超えると、自重も加わり、軸心25は急激な早さで前に移動する。このとき、上記の「前後の2つの頂点22、22」よりも前側に位置していた頂点22eが路面に向けて衝撃的に接地し、この頂点22eが発音部となって衝撃音を発する。
【0030】
この追従状態では、回動打音器2の本体20は、断面の外周形状が多角形に形成され、回動どきには外周の各頂点が等間隔で次々と路面に対して衝撃的接地して衝撃音を発するように中心部を回転中心にして回動自在に形成してあるので、道路の内部における損傷部48(例えば空洞)の有無に対応した音圧レベル(図6参照)の衝撃音を次々と発生する。
このように衝撃音の音圧レベルが、道路の内部において損傷部(例えば空洞48)が有る場合と、道路の内部に損傷部が無い場合(中実の場合40a)とでは、耳で聞き分けできるように相違するので、台車を押し進めている作業員は、道路の内部における損傷部(例えば空洞)の有無を、上記衝撃音の音圧レベルの変化から判別探知することができる。
【0031】
次に上記の作業において衝撃音の音圧レベルの変化を判別探知した場合には、手元にある道路地図(例えば図1のような図面)に、基点50から変化があった地点48までの距離を書き込む。乃至は、変化があった地点48に対し、後日知ることができるようにチョーク等、任意の手段で印を付ける。その後は引き続き、走行車線と追越車線に各1本宛引かれた調査指示線44に添った状態で同様の作業を繰り返す。なお、1本の調査指示線44の長さは任意であるが、高速道路では勿論のこと、県道などの一般道での車線を長時間通行止めにすることできないので、1本の調査指示線44の長さは、例えば50m〜100m位に止める場合が多い。
【0032】
次に上記台車1には、図4、7、8に表れているように、台車1が、基点50から損傷部があった地点48まで移動した場合に、その移動距離を表示するためのカウントメジャー(台車1の移動と連動して、地面を転がす車輪5aの回転角によって距離数が表示窓5bに表れるようになっている周知の機器で、通常、道路面41上の距離の計測に使用されている。ウォーキングメジャーとも称されている)5を付設しておくと、上記のように基点50から、損傷部48の存在により音に変化があった地点48までの距離を正確に知る上で便利である。5dは、カウントメジャー5を台車1に装着する場合の補助材10dに対する固着部を例示する。
なお、図7(A)は、カウントメジャー5、マイクロフォン6、目印付設手段7を備えさせた異なる打音装置の実施例を示す斜視図。(B)は、その打音装置の正面から見た模式図を示す。図8は台車1の側枠10aに対し、車輪14と同じ路面41に対して接地し、同様に回動するカウントメジャー5の車輪5aの存在を説明するための部分側面図である。
【0033】
次に 上記台車1においては、図7に表れているように、台車1に連係してある回動打音器2の本体20の近くに対して、回動打音器2の本体20における外周の各頂点22が路面41に対して衝撃的接地をして発する衝撃音を収録する為の衝撃音収録用マイクロフォン6を装備しておくとよい。衝撃音を収録する為のマイクロフォン6が装備されていると、回動打音器2の本体20における外周の各頂点22が一定の寸法間隔24、24・・・24で路面41に接することにより発する衝撃的接地音と、その一定の寸法間隔24、24・・・24で発する衝撃的接地音と同期して、道路内部の損傷部48の有無によって変化する衝撃音の音圧レベルの変化状況を、同時に、収録することができる。このような音圧レベルを、任意周知のレコーダーに収録しておくことにより、後日、周知の音響解析装置、例えばソノグラフを用いて道路内部40aの損傷部48に関する打音調査状況を知ることができる。
【0034】
上記のようにして収録された衝撃的接地音・音圧レベル等は図6(A)(B)に表れているように可視化できる。図6(A)は、回動打音器2の本体20における外周の各頂点22、22・・・22が矢印55方向に回動することにより一定の寸法間隔24、24・・・24で路面41に接し、発する衝撃的接地音の音圧レベル36a、36bの変化を表す図である。符号37、37・・・37は上記「一定の寸法間隔24、24・・・24」に対応するものであり、この数量を積算すれば、回動打音器2の移動距離が自明となる。また、音圧レベル36a、36bの高低の変化は、道路内部の損傷部48の有無の変化を表すものであり、36aは損傷部48がある場合の音圧レベル、36bは損傷部48がない場合の音圧レベルを夫々表す。
図6(B)は、回動打音器の本体20における外周の各頂点が一定の寸法間隔で路面に接することにより発する衝撃的接地音をスペクトログラムで表す図である。周知のように横軸が時間を、縦軸が周波数を表しており、色の濃い部分(図では密度が高い部分38a)が損傷部48のある場合を表しており、色の薄い部分(図では密度が粗い部分38b)が損傷部48のない場合を表している。
従って、図6(A)(B)を比較しながら検討すると、図1の基点50からどのくらいの距離のところに、損傷部48があったか、否かが判別できることになる。
【0035】
次に、上記台車1には、図7に表れているように、目印付設手段7を備えさせておくと便利である。即ち、台車1と共に回動打音器2を、路面41の上を回動させる作業を上記のように行っている場合には、連続的に回動打音器2の本体20から衝撃音が発生する。衝撃音に変化があった場合は、台車1を直ちに止め、道路面41の上に目印を付すことが望ましい。
停止場所の路面41上に対して迅速に目印を付すためには、路面上に向けて目印用流体を流出させるためのノズル7aと、ノズル7aに向けて流体を供給するための流体貯蔵タンク7bと、ノズル7aからの流体量を調節するためのレバー7cとからなる目印付設手段7を備えるのが望ましい。目印付設手段7を備えると、衝撃音に変化があった場合、瞬間的にレバー7cを操作すれば回動打音器2の本体20の傍にノズル7aから目印用流体が流出して、路面上に「道路内部の損傷部48」の存在を明確に示すことができる。
【0036】
図9は、図5(A)の図とは異なる実施例を示す連係機構の部分断面図で、台車1と、回動打音器2の本体20と、連係機構4との位置関係(取付の位置関係)を説明するための部分断面側面図である。
10aは、図5(A)の台車1の場合と同様の側枠を示し、10dも、台車1の両側の側枠10a、10aの間に架け渡した断面が丸棒形状の補助枠を示す。
図9において、28は回動打音器2の本体20を引き連れ可能な強度を有する連係杆で、例えば、鉄棒で構成される。
・元部(止着部)29は、断面形状を逆U字状に形成し、下方には補助枠10dを出入り自在(着脱自在)とし得る出入り口29aを設け、開放状態にしてある。内部の空間部29bは、上記補助枠10dが相対的に前後方向及び上下方向に夫々揺動自在で、回動自在となるように、補助枠10dの断面形状に比較して大きくし、余裕のある大きな空間29bに形成してある。
さらに引掛部材29cは大きく垂れ下がる状態にしておき、打音調査中に台車1が上下に揺動しても、補助枠10dから元部(止着部)29が浮き上がって外れることの無いように構成してある。
このような構成によると、台車1の補助枠10dに対して、連係杆28の元部29を上下に操作すると、回動打音器2の本体20は簡単に着脱可能な構成になる。
なお、他方の自由端32には、回動打音器2の本体20を回動自在に連結する。手段としては任意である。例えば図2〜図5に例示した構成と同じようにしてもよい。
【0037】
次に、台車1の連結部(補助枠10d)の位置と、回動打音器2の本体20の軸心25との路面41に対する高さの関係であるが、これらの高さは、台車1を押し進める上においても、回動打音器2の本体20の衝撃力の観点からも両者がほぼ水平の位置にあることが望ましい。しかしながら、設計の都合上、図9に表れているように補助枠10dの位置が僅かに高くなるように構成しても(30度以下の傾斜角がつく程度に傾斜させても)、その程度の範囲内の傾斜角であれば、実質的には「ほぼ水平状態」と認められ、実質的には台車1を押し進める上の荷重の増加も、回動打音器2の本体20の衝撃力の低下にも変化はない。
【0038】
なお上記構成にあっては、台枠10と回動打音器2の本体20との連係状態は 台枠に連なる補助枠10dが回動打音器の中心軸25を引く力(矢印55方向の推力)は、ほぼ水平方向に向くことになる。
このことは、例えば、回動打音器の本体20の中心軸25の位置に対して、連係杆28の元部29を連結する補助枠10dの位置が上方に位置し、両者を結ぶ線が、45度、或いは60度に傾斜することになった場合は、回動打音器の本体20に、上方に持ち上げる力がおよび、本体20からの衝撃音が小さくなったり、或いは、大小変化したりの、悪影響が発生するのである。しかし、本件実施例のように悪影響が発生しない傾斜、即ち、30度以下のほぼ水平状態で本体20を補助枠10dの位置に連結すると、台車1を急激に緩急変化移動さた場合でも、回動打音器に対して上方に向けて浮上力を及ぼす恐れはなく(回動打音器に対して人為的な圧力の変動を加えることなく)、路面上を水平方向に回動させ、次々と回動打音器2の本体20の外周における各頂点を接地させて道路内部の状況に対応した良質の衝撃音を信頼性高く発する効果もある。
また、台枠10の前方に位置する部分(本体20の位置よりも前にある部分)を連結部(例えば補助枠10d)と定めることにより、台枠10に追従させる回動打音器2の本体20の位置を、台車を押し進める作業員の歩行範囲より前に配置でき、作業員の歩行を邪魔しない効果もある。
【符号の説明】
【0039】
S・・・打音装置、1・・・台車、2・・・回動打音器、4・・・連係機構、5・・・カウントメジャー、6・・・衝撃音収録用マイクロホン、7・・・目印付着手段、10・・・台枠、10a、10b・・・側枠、10c、10d・・・補助材(補助枠)、11・・・手押し杆、11a・・・立上杆、11b・・・横杆、12・・・連結部、14・・・車輪、15・・・車軸、20・・・本体、21・・・外周面(5〜8角)、22・・・頂点、23・・・辺、24・・・辺の寸法(頂点間の寸法)、25・・・回動軸(中心軸)、28・・・連係杆、29・・・元部(止着部、30・・・突片、32・・・自由端部、33・・・連繋部材、33a・・・横持ち、33b・・・縦引き、34・・・軸受部材、40・・・道路(床版)、41・・・表面、42・・・中央線、43・・・車線境界線、44・・・調査指示線、46・・・構造物、47・・・鉄筋、48・・・(空洞)損傷部、50・・・基点、55・・・矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面の外周形状が多角形に形成され、回動どきには外周の各頂点が等間隔で次々と路面に対して衝撃的接地して衝撃音を発するように中心部を回転中心にして回動自在に形成してある回動打音器の本体を、
台車に連結した状態で、
上記台車を路面上を移動させることにより、上記回動打音器の本体を回動させながら上記台車に追従させ、
上記回動打音器の本体の外周の多角形の各頂点を等間隔で、路面に対して衝撃的接地させて、次々と衝撃音を発生させ、
次々と発生する衝撃音の音圧レベルが、道路の内部において損傷部が有る場合と、道路の内部に損傷部が無い場合とでは相違することを利用して、道路の内部における損傷部の有無を探知することを特徴とする道路内部の損傷部の打音調査工法。
【請求項2】
上記台車には、回動打音器の本体における外周の各頂点が路面に対して衝撃的接地をして発する衝撃音を収録する為のマイクロフォンを装備し、回動打音器の本体における外周の各頂点が一定の寸法間隔で路面に接することにより発する衝撃的接地音と、その一定の寸法間隔で発する衝撃的接地音と同期して、道路内部の損傷部の有無によって変化する衝撃音の音圧レベル、の変化状況を、同時に、収録することを特徴とする請求項1の道路内部の損傷部の打音調査工法。
【請求項3】
中心軸を回転中心にして回動自在に形成してある回動打音器の本体であって、その本体の断面の外周の形状は多角形で、回動どきには外周の各頂点が等間隔で路面に対して衝撃的接地して衝撃音を発するように外周における各頂点は、夫々突設させてある回動打音器の本体を備え、
上記回動打音器の本体は、路面上を移動可能に構成されている台車に対し、
台車の進行に伴って台車と同方向に回動して、台車に追従するように連係機構を介して連係してあり、
台車と回動打音器の本体との連係機構を介しての連係状態は、回動打音器の本体の回動に伴い回動打音器の本体の中心部が、台車に対し、上下方向に揺動することを許容するように支持してあることを特徴とする道路内部の損傷部調査用打音装置。
【請求項4】
上記台車には、台車の移動距離を表示するためのカウントメジャーが付設されていることを特徴とする請求項3記載の道路内部の損傷部調査用打音装置。
【請求項5】
上記台車に連係してある回動打音器の本体の近くには、台車の進行に伴って台車に追従して回動する回動打音器の本体における各頂点が路面に対して衝撃的接地をして発する衝撃音を収録する為のマイクロフォンが装備されていることを特徴とする請求項3又は4記載の道路内部の損傷部調査用打音装置。
【請求項6】
上記台車には、路面上を回動させる回動打音器の本体から発する衝撃音に変化があった個所の路面上に対して目印を付すために、路面上に向けて目印用流体を流出させるためのノズルと、ノズルに向けて流体を供給するための流体貯蔵タンクと、ノズルからの流体量を調節するためのレバーとからなる目印付設手段7を備える
ことを特徴とする請求項3、4又は5記載の道路内部の損傷部調査用打音装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−19808(P2013−19808A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154210(P2011−154210)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(595132441)▲蔦▼井株式会社 (10)
【Fターム(参考)】