説明

道路勾配データ作成装置及び作成方法、記憶媒体、並びに、車両のエネルギー消費量予測装置

【課題】道路地図データにおける各リンクの勾配度合を表す勾配データを、エネルギー消費量を予測する場合に適したデータとして作成する。
【解決手段】本体部16は、地図データベース17からリンクデータを入力し、標高データベース18から標高データを入力し、計算用データ記憶部19から計算用データを入力する。本体部16は、燃料換算勾配データを作成するにあたって、各リンクに関して、リンク構成点を割付けるリンク構成点割付部20、各リンク構成点の標高データに基づきリンク構成点の前後の直線での勾配変化の度合が閾値より大きくなる点を勾配変化点として抽出する勾配変化点抽出部21、各リンクの燃料換算勾配データを算出する算出部22を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路地図データにおける各リンクの勾配度合を表す道路勾配データを作成する道路勾配データ作成装置及び作成方法、記憶媒体、並びに、所定の走行経路を走行する際の車両のエネルギー消費量を予測する車両のエネルギー消費量予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両(自動車)に搭載されるカーナビゲーション装置においては、ユーザの指定した目的地までの推奨する経路を探索し、案内するルートガイダンスの機能を備えている。経路探索の計算には周知のダイクストラ法が用いられ、この経路探索は、簡単にいうと、道路地図データ中のリンクデータに基づき、出発地(現在地)から目的地へ向けて、次に到達できる交差点(ノード)までの道路(リンク)のコストの計算(積算)を順次行なっていき、目的地までが最小コストとなる経路を選ぶことにより行なわれる。尚、日本では、1つの道路リンクのリンク長は、1リンク当たり数百mが一般的であり、また、高速道路の場合、1リンク当たり数km程度となることが多い。
【0003】
ところで、近年では、燃費の向上(経済走行)や排出ガスの低減を図ろうとするエコドライブという考え方が強く求められてきている。カーナビゲーション装置においても、経路探索と併せて、当該経路を走行した際の燃料消費量を予測することが考えられている(例えば、特許文献1参照)。このとき、上記経路探索に用いられるリンクデータ中には、各リンクのリンク長や、始点、終点の位置(座標)の他に、制限速度、道路幅員(車線数)、平均的な勾配のデータ等が含まれている。例えば上り坂では平坦な道路に比べて燃料の消費が大きくなる事情があり、上記特許文献1では、車両の予測される走行速度と、平均勾配のデータとから、より正確な燃焼消費量の予測を行おうとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−24833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したリンクデータ中に含まれる勾配データは、始点と終点との間の標高差を、リンク長(始点から終点までの平面的な距離)で除算した数値となり、つまり、そのリンクにおける平均的な勾配となる。しかしながら、各リンクにおける平均勾配のデータを用いて、燃料消費量を求めた場合には、平均勾配が実情を反映していないことがあり、燃料消費量を正確に予測する点では、必ずしも十分とはいえなかった。
【0006】
例えば、リンクの始点から終点までのほとんどの部分は平坦であるが、一部のみ急な上り坂がある場合や、リンクの始点から終点まで上り坂、下り坂が何度も繰返されるような場合には、実際の燃料消費量が、平均勾配データを用いた計算よりも大きくなる。従って、予測される燃料消費量を求める際に、リンクの実際の勾配を考慮した計算手法の開発が要望されるのである。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、道路地図データにおける各リンクの勾配度合を表す勾配データを、エネルギー消費量を予測する場合に適したデータとして作成することができる道路勾配データ作成装置及び作成方法、記憶媒体を提供するにある。本発明の第2の目的は、所定の走行経路を走行する際のエネルギー消費量を予測するものにあって、各リンク内における勾配変化を考慮して、エネルギー消費量をより正確に算出することが可能な車両のエネルギー消費量予測装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の道路勾配データ作成装置は、道路をノード及びリンクの組合せで表現した道路地図データにおける、前記各リンクの勾配度合を表すデータを作成するものにおいて、前記道路地図データを記録した地図データベースから、前記各リンクの始点、終点の位置及び道路種別を含むリンクデータを入力するリンクデータ入力手段と、地形図を所定間隔のメッシュで区切った各位置についての標高を記録した標高データベースから、標高データを入力する標高データ入力手段と、前記リンクデータ及び標高データに基づいて、前記各リンクにおける前記始点から終点までの間がどれくらいの勾配であるかを示す指標となる勾配のデータを、当該リンクを車両が走行した際のエネルギー消費量に換算して評定した燃料換算勾配データとして作成する勾配データ作成手段とを具備するところに特徴を有する(請求項1の発明)。
【0009】
本発明の道路勾配データ作成方法は、道路をノード及びリンクの組合せで表現した道路地図データにおける、前記各リンクの勾配度合を表すデータを作成する方法において、前記道路地図データを記録した地図データベースから、前記各リンクの始点、終点の位置及び道路種別を含むリンクデータを入力するリンクデータ入力工程と、地形図を所定間隔のメッシュで区切った各位置についての標高を記録した標高データベースから、標高データを入力する標高データ入力工程と、前記リンクデータ及び標高データに基づいて、前記各リンクにおける前記始点から終点までの間がどれくらいの勾配であるかを示す指標となる勾配データを、当該リンクを車両が走行した際のエネルギー消費量に換算して評定した燃料換算勾配データとして作成する勾配データ作成工程とを含むところに特徴を有する(請求項8の発明)。
【0010】
本発明の道路勾配データ作成装置及び道路勾配データ作成方法によれば、リンクデータ入力手段(リンクデータ入力工程)により入力されたリンクデータ、及び、標高データ入力手段(標高データ入力工程)により入力された標高データに基づいて、勾配データ作成手段(勾配データ作成工程)により、各リンクにおける勾配のデータが、該リンクを車両が走行した際のエネルギー消費量に換算して評定した燃料換算勾配データとして作成される。
【0011】
この場合、燃料換算勾配データは、リンクにおける始点、終点間の平均勾配のデータと異なり、そのリンクの走行時のエネルギー消費量を計算する場合に関して、実情に見合ったデータとなる。従って、作成された燃料換算勾配データを用いることにより、リンク内における勾配変化を考慮したエネルギー消費量をより正確に算出することができる。しかも、燃料換算勾配データはリンク毎に設けられるデータであるため、徒にデータ量が増えることなく、エネルギー消費量を算出するためのデータを少なく済ませることが可能となる。
【0012】
本発明においては、上記勾配データ作成手段(勾配データ作成工程)を、前記各リンクに関して、当該リンクに沿って始点から終点まで所定間隔でリンク構成点を割付けるリンク構成点割付手段(リンク構成点割付工程)と、前記各リンク構成点の標高データに基づき、前記始点、各リンク構成点、終点を順に直線でつないだ際に、前記各リンク構成点の前後の直線での勾配変化の度合が閾値より大きくなる点を勾配変化点として抽出する勾配変化点抽出手段(勾配変化点抽出工程)と、前記リンクの始点から終点までの間を前記勾配変化点で区切った区間に分け、予め設定されている勾配、車速、燃費の相互の関係を示す計算用データに基づいて、前記各区間に関してエネルギー消費量を求めそれらを積算して該リンク全体のエネルギー消費量を求めると共に、そのエネルギー消費量及び該リンク全体の長さから燃料換算勾配データを逆算する算出手段(算出工程)とを備えて構成することができる(請求項2、9の発明)。
【0013】
これによれば、リンク内における勾配の変化状態の特徴を、勾配が比較的大きく変動する勾配変化点を求めて、リンクをその勾配変化点で複数の区間に区切ることに基づいて捉えるようにしている。そして、計算用データに基づいて各区間のエネルギー消費量を求め、それらを積算することに基づいてリンク全体のエネルギー消費量ひいては燃料換算勾配データを求めるので、道路の勾配の変化状態を、エネルギー消費の観点から正確に反映した燃料換算勾配データを得ることができる。
【0014】
更にこのとき、前記勾配変化点抽出手段(勾配変化点抽出工程)を、まず、前記リンクの始点と終点とを結ぶ第1基準直線を引き、それら始点と終点との間にあるリンク構成点のうち、前記第1基準直線から最も離間した点の離間距離が基準値より大きい場合に、そのリンク構成点を、第1勾配変化点として抽出し、次に、前記始点と第1勾配変化点とを結ぶ第2基準直線を引き、それら始点と第1勾配変化点との間にあるリンク構成点のうち、前記第2基準直線から最も離間した点の離間距離が基準値より大きい場合に、そのリンク構成点を、第2勾配変化点として抽出すると共に、前記第1勾配変化点と終点を結ぶ第3基準直線を引き、それら第1勾配変化点と終点との間にあるリンク構成点のうち、前記第3基準直線から最も離間した点の離間距離が基準値より大きい場合に、そのリンク構成点を、第3勾配変化点として抽出し、更に、始点、複数の勾配変化点、終点に関して、隣り合う点間を結ぶ基準直線を引き、同様に、前記基準直線から最も離間した点の離間距離が基準値より大きいリンク構成点を、勾配変化点として抽出していくことを、新たな勾配変化点が抽出されなくなるまで繰返すことにより、全ての勾配変化点を求めるように構成することができる(請求項3、10の発明)。
【0015】
これによれば、前後で勾配が比較的大きく変動する勾配変化点を確実に求めることが可能となる。またその際の基準値の設定によって、どの程度の勾配変動を勾配変化点として設定するかの精度を調整することができ、必要な精度を容易に得ることができる。
【0016】
また、上記した計算用データとして、予め標準的な車両に関して基準となる計算用データが与えられており、前記勾配データ作成手段(勾配データ作成工程)において、前記基準となる計算用データに対し、車両の車種又は重量又は排気量に応じて設定されている係数を乗算することにより、該当車両における前記燃料換算勾配データを算出するように構成することができる(請求項4、11の発明)。
【0017】
これによれば、勾配や車速が同じであっても、燃費が異なるような複数の車両間においても、計算用データに設定された係数を乗算することによって該当車両におけるエネルギー消費量を正確に求めることができる。この結果、計算用データを共用化することができ、その計算用データや燃料換算勾配データを用いて、車両の車種又は重量又は排気量に応じたエネルギー消費量を算出することが可能となる。
【0018】
本発明の請求項5の記憶媒体は、請求項1ないし4のいずれかに記載の道路勾配データ作成装置により作成された各リンクの燃料換算勾配データを記憶する。また、本発明の請求項6の記憶媒体は、請求項1ないし4のいずれかに記載の道路勾配データ作成装置により作成された各リンクの燃料換算勾配データを、前記道路地図データと関連付けて記憶する。これによれば、各リンクの燃料換算勾配データを、記憶媒体を介して流通することができる。尚、記憶媒体としては、ハードディスク、光ディスク、磁気ディスク、スティック型やカード型のメモリ等、各種メディアを採用できることは勿論である。
【0019】
本発明の車両のエネルギー消費量予測装置は、所定の走行経路を走行する際の車両のエネルギー消費量を予測するものであって、請求項1ないし4のいずれかに記載の道路勾配データ作成装置により作成された各リンクの燃料換算勾配データを、前記道路地図データと関連付けて記憶する燃料換算勾配データ記憶手段と、この燃料換算勾配データ記憶手段に記憶された前記各リンクの燃料換算勾配データを用いて、前記走行経路を走行する際に予測される車両のエネルギー消費量を算出する消費量演算手段とを具備するところに特徴を有する(請求項7の発明)。
【0020】
これによれば、上記請求項1ないし4のいずれかに記載の道路勾配データ作成装置により作成された各リンクの燃料換算勾配データが、燃料換算勾配データ記憶手段により、リンクデータと関連付けて記憶される。そして、消費量演算手段により、走行経路を走行する際の予測される車両のエネルギー消費量が、前記燃料換算勾配データを用いて算出される。従って、リンク内における勾配変化を考慮したエネルギー消費量をより正確に算出することができる。しかも、燃料換算勾配データはリンク毎に設けられるデータであるため、徒にデータ量が増えることなく、エネルギー消費量を算出するためのデータを少なく済ませることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例を示すもので、道路勾配データ作成装置の機能ブロック図
【図2】計算用データの構成を概略的に示す図
【図3】勾配データ作成の手順を説明するための図(その1)
【図4】勾配データ作成の手順を説明するための図(その2)
【図5】勾配データ作成の手順を説明するための図(その3)
【図6】勾配データ作成の手順を説明するための図(その4)
【図7】平均勾配データと燃料換算勾配データとの相違を説明するための図
【図8】カーナビゲーション装置の電気的構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した一実施例について、図面を参照しながら説明する。尚、この実施例では、例えば、車両(自動車)としてのガソリンエンジン車に搭載されるカーナビゲーション装置に用いられる道路地図データにおける、勾配データを作成する場合を具体例としている。また、この場合、カーナビゲーション装置が、車両のエネルギー消費量予測装置として機能するようになっている。
【0023】
まず、図8を参照しながら、車両(ガソリンエンジン車)に搭載されるカーナビゲーション装置1の構成について簡単に述べる。カーナビゲーション装置1は、コンピュータ(CPU)を主体として構成され全体を制御する制御装置2を備えている。そして、その制御装置2に接続された、自車両の位置を検出するための自車位置検出手段としての位置検出部3、外部の情報通信センタ4との間で無線通信を行うための通信装置5、例えばハードディスク装置等の記憶装置6、例えばフルカラー液晶ディスプレイからなり表示手段として機能する表示装置7、表示装置7の画面上に設けられたタッチパネルや表示装置7の周囲に設けられたメカスイッチを含む操作スイッチ群8、合成音声をスピーカから出力する音声出力装置9、ナビ用地図データベース10等を備えて構成されている。
【0024】
前記位置検出部3は、GPS用の人工衛星からの送信電波に基づいて自車両の位置を検出(測位)するGPS(Global Positioning System )のためのGPS受信機11、地磁気センサ12、ジャイロセンサ13、車速センサ14を含んでいる。前記制御装置2は、そのソフトウエア構成(及びハードウエア構成)により、前記位置検出部3を構成する各センサ11〜14からの入力に基づいて、自車両の現在位置(絶対位置)、進行方向、速度や走行距離、現在時刻等を高精度で検出する。
【0025】
そして、制御装置2は、その自車両の現在位置、及び、前記ナビ用地図データベース10から得られる道路地図データに基づいて、前記表示装置7の画面に、自車両周辺の道路地図と共に、自車の現在位置や進行方向を重ね合せて表示させるロケーション機能を実現する。この場合、ロケーション機能を実現するにあたっては、自車両の位置を表示される電子地図上の道路に乗せるために、自車両の移動軌跡と道路地図データ中の道路形状とを比較照合して、現在走行中の道路を推測するマップマッチングが行われる。
【0026】
前記ナビ用地図データベース10は、例えば日本全土の道路地図データや、それに付随する、各種施設や店舗等の施設データ等を記憶するものである。前記道路地図データは、地図上の道路を線で表現した道路ネットワークからなり、交差点、分岐点等をノードとして複数の部分に分割し、各ノード間の部分をリンクとして規定したリンクデータとして与えられる。このリンクデータは、リンク固有のリンクID(識別子)、リンク長、リンクの始点,終点(ノード)の位置データ(経度,緯度)、角度(方向)データ、道路幅(車線数)、道路種別、制限速度などのデータを含んで構成される。また道路地図を表示装置7の画面上に再生(描画)するためのデータも含まれている。
【0027】
このとき、ナビ用地図データベース10には、本実施例に係る道路勾配データ作成装置(作成方法)によって作成された燃料換算勾配データが、リンクデータに付随して(各リンクと関連付けて)記憶されている。従って、ナビ用地図データベース10が燃料換算勾配データ記憶手段として機能する。尚、燃料換算勾配データを、ナビ用地図データベース10とは別の記憶手段(記憶装置6)に、前記道路地図データ(リンクデータ例えばリンクID)と関連付けて記憶していても良い。
【0028】
詳しくは後述するように、この燃料換算勾配データは、各リンクに関し、始点から終点までの間の勾配度合(平面的な距離に対して高度(標高)がどれだけ変動しているか)を表すものであるが、ここでは、各リンクを車両が走行した際のエネルギー(燃料)消費量に換算して評定したデータとされる。尚、燃料換算勾配データは、当該車両の車種(重量や排気量)に応じた値とされている。
【0029】
また、カーナビゲーション装置1(制御装置2)は、前記通信装置5により、例えば、図示しない無線基地局及びインターネット等の通信ネットワークを介して、情報通信センタ4のサーバとの間で通信を行う。これにより、道路交通情報(渋滞、事故、工事、車線規制、交通規制などの情報)、気象情報(天候、風向き、路面状況)、POI情報(周辺の施設情報)などの最新のデータを受信し記憶するようになっている。
【0030】
カーナビゲーション装置1は、制御装置2における経路探索、案内プログラムの実行により、出発地(現在地)から、例えばユーザの操作スイッチ群8の操作によって設定された目的地までの推奨する走行経路(ルート)を演算により求め、その推奨する走行経路を案内するルートガイダンス機能を実行する。そのうち経路探索には、例えば周知のダイクストラ法が用いられる。
【0031】
このダイクストラ法は、簡単に言うと、指定された優先条件などに応じて、ナビ用地図データベース10の道路地図データ(リンクデータ)を用いて、出発地(現在地)から目的地へ向けて、次に到達できる交差点(ノード)までの道路(リンク)の探索及びそのコスト(評価値)の計算を順次行っていき、目的地までが最小コストとなるつながったルート(リンク列)を求めることにより行われる。前記コストは、各リンクにおける、道路長や道路種別、道路幅(車線数)、有料無料の別、渋滞度等から、所定の重み付けがなされて計算される。この経路探索において、上記道路交通情報や気象情報等を加味することもできる。
【0032】
このとき、制御装置2は、目的地までの推奨する1又は複数の走行経路の候補を探索し、それら走行経路の候補をユーザに提示するのであるが、本実施例では、走行経路の探索と共に、それら各走行経路を自車両が走行した際に、予測される燃料(エネルギー)消費量を算出し、併せてユーザに提示(表示)するようになっている。
【0033】
具体的には、制御装置2は、走行経路を構成する各リンクを走行する際に想定される速度(道路種別や道路幅員、制限速度から求められる)と、当該リンクの燃料換算勾配データとから、リンクの燃費(単位距離あたりの燃料消費量)を求め、その燃費にリンク長(距離)を乗算することにより、当該リンクの燃料消費量を求める。そして、走行経路を構成する全リンクの燃料消費量の総和から、予測される燃料消費量を演算する。従って、制御装置2が、消費量演算手段として機能するのである。
【0034】
尚、上記経路案内は、周知のように、表示装置7の画面に、道路地図上の走行すべきルートを例えば他の道路と異なる色で表示すると共に、自車の現在位置が所定のポイントに至ったときに、音声出力装置9により案内音声を出力することにより行われる。具体的には、例えば交差点での右左折や分岐を案内する場合には、まず、当該交差点の十分に手前の位置において、例えば「300m先、右方向です。」といった、予告的な案内が行われ、その後、自車両が交差点の直前に至ったタイミングで、表示装置7の画面に交差点の拡大表示が行われると共に、「まもなく右方向です。」といった音声出力が行われる。
【0035】
次に、上記燃料換算勾配データを作成する(道路勾配データ作成方法を実行する)ための本実施例に係る道路勾配データ作成装置15の構成について、図1及び図2を参照して述べる。図1は、道路勾配データ作成装置15の機能ブロック図を示している。ここで、道路勾配データ作成装置15は、パソコン等のコンピュータシステムから構成され、詳しく図示はしないが、コンピュータ本体からなる本体部16に、表示装置、キーボードやマウス等の入力装置、記憶装置等を接続して構成されている。
【0036】
そして、本体部16には、内蔵するインタフェース(図示せず)を介して、例えば日本全国の道路地図データを記録した地図データベース17が接続され、この地図データベース17からリンクデータが入力される。これと共に、日本全土の標高データを記録した標高データベース18が接続され、この標高データベース18から標高データが入力される。従って、前記インタフェースが、リンクデータ入力手段及び標高データ入力手段として機能する。また、本体部16には、計算用データ記憶部19から後述する計算用データが入力されるようになっている。
【0037】
前記道路地図データ(リンクデータ)は、上記と同様に、道路をノードとリンクとの組合せで表現したものであり、リンクデータは、リンク固有のリンクID、リンク長、リンクの始点,終点の位置データ(経度,緯度)、方向データ、道路幅(車線数)、道路種別、制限速度等のデータを含んで構成される。前記標高データは、日本全土の地形図を、所定間隔のメッシュ(例えば都市部で5m間隔、郡部(地方部)で10m間隔)で東西南北に区切った各位置(メッシュの交点)の標高(高度)を示すもので、国土地理院から無償で提供されるものである。
【0038】
更に、前記計算用データは、道路勾配、車速、燃費の相互の関係を示すものである。具体的には、図2に示すように、縦に勾配、横に車速をとって、それらに関する燃費(この場合単位距離(1m)あたりの燃料消費量(ml))を示すデータテーブルとされている。つまり、道路の勾配がa(%)で、車速がb(km/h)のとき、燃費がc(ミリリットル/m)になるといった関係を示すものである。尚、燃費としては、単位燃料量あたりの走行距離(m/ミリリットル)を用いても良い。勾配についても、%(100mの距離で1m上がっていれば1%)を用いるのでなく、角度を用いても良い。
【0039】
このとき本実施例では、計算用データは、標準的な車両、例えば中型の乗用車に関する基準計算用データとされ、それ以外の車両については、燃費のデータに関し、車種又は重量又は排気量に応じた所定の係数を乗算したデータを用いて、燃料換算勾配データを作成するようになっている。標準的な乗用車よりも大型(重量や排気量の大きい)の車両の場合には、単位距離あたりの燃料消費量は中型車よりも大きくなるので、係数は1より大きくなり、重量や排気量の小さい小型車の場合には、係数が1未満となる。
【0040】
さて、次の作用説明にて述べるように、前記本体部16は、そのハードウエア及びソフトウエア的構成により、前記リンクデータ及び標高データを入力し、それらリンクデータ及び標高データ、並びに前記計算用データを用いて、前記各リンクに関する燃料換算勾配データを作成する工程を実行する勾配データ作成手段として機能する。
【0041】
このとき、本体部16は、燃料換算勾配データを作成するにあたって、各リンクに関して、当該リンクに沿って始点から終点まで所定間隔でリンク構成点を割付ける工程を実行するリンク構成点割付手段としてのリンク構成点割付部20、各リンク構成点の標高データに基づき、前記始点、各リンク構成点、終点を順に直線でつないだ際に、各リンク構成点の前後の直線での勾配変化の度合が閾値より大きくなる点を勾配変化点として抽出する工程を実行する勾配変化点抽出手段としての勾配変化点抽出部21、各リンクの燃料換算勾配データを算出する工程を実行する算出手段としての算出部22を備えている。
【0042】
より具体的には、前記算出部22は、リンクの始点から終点までの間を勾配変化点で区切った区間に分け、前記計算用データに基づいて各区間に関して燃料(エネルギー)消費量を求める区間燃料算出部23、各区間の燃料(エネルギー)消費量を積算して該リンク全体の燃料(エネルギー)消費量を求めるリンク燃料算出部24、リンク全体の燃料(エネルギー)消費量と当該リンクを走行する際の標準車速とから、前記計算用データを用いて燃料換算勾配データを逆算する燃料換算勾配データ算出部25を備えている。
【0043】
次に、上記構成の作用について、図3〜図7も参照して述べる。尚、以下、燃料換算勾配データの作成の例をあげるが、ここでは、図4〜図6に示すように、始点Aから、緩やかに上った後、緩やかに下り、更に緩やかに上って終点Bに至るような勾配形状を有する道路(リンクL)を具体例として説明する。このリンクLのリンク長は平面的に見て約240mであり、所定間隔として、平面的に10m毎にリンク構成点を割付けるものとしている。この場合の所定間隔は、前記標高データのメッシュの細かさの度合に応じたものとされる。また、各リンクに関して、道路種別、道路幅員(車線数)、制限速度等から、リンク毎の標準車速が求められている。
【0044】
道路勾配データ作成装置15(本体部16)において燃料換算勾配データの作成の処理を実行するにあたっては、まず、リンクデータ及び標高データが入力され、リンク構成点割付部20によるリンク構成点割付の工程が実行される。この工程では、図3に示すように、リンクLの始点Aから順に該リンクLに沿って、所定間隔として10m毎の位置をリンク構成点Pとして割付ける。図3(b)に示すように、各リンク構成点Pは、始点Aを原点(0,0)として、横軸Xを始点Aからの平面的な距離(単位m)、縦軸Yを始点Aからの高度(単位m)としたXY平面が想定され、そのXY平面上にプロットされる。図3(a)に示すように、1番目のリンク構成点P1は、始点Aからの距離がx1(この場合10m)であり、高さがy1であるため、(x1、y1)と表される。
【0045】
このようにして、リンクLに沿ってリンク構成点PをXY平面上にプロット(割付)していくと、図4(a)に示すように、リンクLに沿って始点Aから終点Bまで、例えば平面的に見て10m間隔で複数個のリンク構成点Pが割付けられる。次に、勾配変化点抽出部21による、リンク構成点Pのうち前後の勾配変化の度合が大きくなる勾配変化点の抽出の工程が実行される。
【0046】
この勾配変化点の抽出にあたっては、上記図4(a)のように、始点A、各リンク構成点P、終点BをXY平面上にプロットした状態で、図4(b)に示すように、まず、リンクの始点Aと終点Bとを結ぶ第1基準直線ABを引き、その第1基準直線ABと各リンク構成点Pとの間の距離(垂線を下ろした際の垂線の長さ)を求める。それら始点Aと終点Bとの間にあるリンク構成点Pのうち、前記第1基準直線ABから最も離間した点の離間距離が基準値(例えば0.2m)より大きい場合に、そのリンク構成点Pを、第1勾配変化点として抽出する。
【0047】
図4(c)に示すように、リンク構成点Pのうち点Cについては、第1基準直線ABから最も離間しており、且つ、その離間距離が基準値(0.2m)よりも大きいので、第1勾配変化点Cが求められる。尚、このときの基準値は、例えば、リンク構成点Pの割付け間隔(この場合10m)の2%といった数値に設定される。1%或いは3%以上の値を基準値とすることもできる。
【0048】
第1勾配変化点Cが求められると、次に、図5(a)に示すように、始点Aと第1勾配変化点Cとを結ぶ第2基準直線ACを引き、それら始点Aと第1勾配変化点Cとの間にあるリンク構成点Pのうち、前記第2基準直線ACから最も離間した点の離間距離が基準値より大きい場合に、そのリンク構成点Pを、第2勾配変化点Dとして抽出する。これと共に、第1勾配変化点Cと終点Bを結ぶ第3基準直線CBを引き、それら第1勾配変化点Cと終点Bとの間にあるリンク構成点Pのうち、前記第3基準直線CBから最も離間した点の離間距離が基準値より大きい場合に、そのリンク構成点Pを、第3勾配変化点Eとして抽出する。
【0049】
更に、図5(b)に示すように、始点A、複数の勾配変化点D、C、E、終点Bに関して、隣り合う点間を結ぶ基準直線(直線AD、直線DC、直線CE、直線EB)を引き、同様に、前記基準直線から最も離間した点の離間距離が基準値より大きいリンク構成点Pを、勾配変化点として抽出していく。この場合、点Aと点Dとの間に勾配変化点Fが抽出され、点Dと点Cとの間に勾配変化点Gが抽出される。直線CE間、直線EB間には、離間距離が基準値より大きいリンク構成点Pは存在しない。このような処理を繰返すことにより、図5(c)に示すように、点Dと点Gとの間に勾配変化点Hが抽出される。
【0050】
新たな勾配変化点が抽出されなくなった時点で、全ての勾配変化点の抽出が完了する。リンクLの例では、図6(a)に示すように、始点Aと終点Bとの間に、勾配変化点F、D、H、G、C、Eが抽出される。これら勾配変化点F、D、H、G、C、Eは、始点A、各勾配変化点F、D、H、G、C、E、終点Bを順に直線でつないだ際に、各勾配変化点F、D、H、G、C、Eの前後での勾配変化の度合が比較的(閾値よりも)大きくなるリンク構成点となっている。
【0051】
勾配変化点抽出部21による勾配変化点の抽出の工程が終了すると、算出部22による各リンクの燃料換算勾配データの算出の工程が実行される。ここではまず、区間燃料算出部23により、リンク中の勾配変化点で区画された各区間に関して燃料(エネルギー)消費量が求められる。リンクLの例では、図6(b)、(c)に示すように、始点Aから終点Bまでの間が、勾配変化点F、D、H、G、C、Eによって、複数の区間(この場合、区間AF、区間FD、区間DH、区間HG、区間GC、区間CE、区間EBの7区間)に区切られる。
【0052】
そして、各区間(区間AF、区間FD、区間DH、区間HG、区間GC、区間CE、区間EB)に関して、夫々、勾配a(%)と距離d(m)とが求められる。各リンク毎に当該リンクの標準車速bは求められているので、前記計算用データに基づいて各区間に関しての燃料消費量が求められる。この場合、ある区間において、道路の勾配がa(%)で、標準車速(リンク内で共通)がb(km/h)であるとすると、計算用データから燃費c(ミリリットル/m)が求められるので、その燃費cに、区間の距離d(m)を乗算すれば、燃料消費量(ミリリットル)が算出される。
【0053】
次のリンク燃料算出部24では、区間燃料算出部23で求められた各区間の燃料消費量が積算され、リンク全体の燃料消費量(ミリリットル)が求められる。そして、燃料換算勾配データ算出部25では、そのリンク全体の燃料消費量(ミリリットル)を、リンク全体の距離(リンク長:m)で除算して、燃費c(ミリリットル/m)を求める。そして、その燃費cとリンクの標準車速b(km/h)とから、計算用データを用いて該当する勾配a(%)を逆算する。この勾配a(%)が燃料換算勾配データとなる。
【0054】
以上のようにして、リンクデータ中の全てのリンクに関して燃料換算勾配データが求められる。求められた燃料換算勾配データは、道路地図データ(リンクデータ)に各リンクと関連付けて(リンクデータに付随したデータとして)記憶される。この燃料換算勾配データは、上記のように、カーナビゲーション装置1(車両のエネルギー消費量予測装置)において、ナビ用地図データベース10に書込まれ、例えば目的地までの推奨する走行経路の探索において、走行経路を車両が走行した際に予測される燃料消費量の算出に用いられる。
【0055】
この燃料換算勾配データは、通常では、従来の平均勾配のデータとは異なる値を撮るケースが多くなる。図7に例示するように、リンク内で、上り勾配、下り勾配が繰返されるような場合を考えると、従来の平均勾配は、リンクの始点と終点との標高の差から、例えば2%と求められる。これに対し、本実施例の燃料換算勾配データは、リンクを車両が走行した際のエネルギー消費量に換算して評定したデータであり、例えば3%といった値となる。
【0056】
このとき、もし、リンクの始点から終点までずっと2%の勾配の緩やかな上り坂の道路が続いていると仮定すると、平均勾配の2%で当該リンク走行時の燃料消費量を算出しても、正確な燃料消費量が求められるが、上記の勾配変動を考えると、実際には、より多くの燃料を消費するものとなる。燃料換算勾配データ(例えば3%)は、リンクの走行時のエネルギー消費量を計算する場合に関して実情に見合ったデータとなるので、この燃料換算勾配データを用いることにより、リンク内における勾配変化を考慮したエネルギー消費量をより正確に算出することができるのである。
【0057】
尚、詳しく説明しなかったが、上記したように、計算用データは、標準的な車両についてのデータとされているので、車種や重量又は排気量が標準とは異なる場合には、燃費cのデータに関し、車種又は重量又は排気量に応じた所定の係数を乗算した燃費のデータを用いて、同様に燃料換算勾配データを作成することができる。例えば、ワンボックス車等の大型車両では、燃費(単位走行距離あたりの燃焼消費量)は大きくなるので、燃費cの値に係数1.1を乗算し、排気量1000ccの小型車両では、燃費は小さくなるので、係数0.9を乗算する等により、計算用データを共用化しながら、該当車両における燃料換算勾配データひいてはエネルギー消費量を正確に求めることができる。
【0058】
以上のように、本実施例の道路勾配データ作成装置15及び作成方法によれば、各リンクの勾配を車両走行時のエネルギー消費量に換算して評定した燃料換算勾配データという考え方を導入したので、従来の平均勾配のデータと異なり、リンクの走行時のエネルギー消費量を計算する場合に関して、実情に見合ったデータとなる。従って、作成された燃料換算勾配データを用いることにより、リンク内における勾配変化を考慮したエネルギー消費量をより正確に算出することができる。しかも、燃料換算勾配データはリンク毎に設けられるデータであるため、徒にデータ量が増えることなく、エネルギー消費量を算出するためのデータを少なく済ませることが可能となる。
【0059】
また、特に本実施例では、勾配データの作成にあたって、リンク内における勾配の変化状態の特徴を、勾配が比較的大きく変動する勾配変化点を求めて、リンクをその勾配変化点で複数の区間に区切ることに基づいて捉えるようにしている。そして、計算用データに基づいて各区間のエネルギー消費量を求め、それらを積算することに基づいてリンク全体のエネルギー消費量ひいては燃料換算勾配データを求めるので、道路の勾配の変化状態を、エネルギー消費の観点から正確に反映した燃料換算勾配データを得ることができるといったメリットを得ることができる。
【0060】
更に、本実施例の車両のエネルギー消費量予測装置(カーナビゲーション装置1)によれば、上記の道路勾配データ作成装置15により作成された燃料換算勾配データをリンクデータと関連付けて記憶し、各リンクの燃料換算勾配データを用いて、走行経路を走行する際に予測される車両の燃料(エネルギー)消費量を算出するので、リンク内における勾配変化を考慮した燃料消費量をより正確に算出することができ、しかも、燃料消費量を算出するためのデータを少なく済ませることが可能となる。
【0061】
尚、本発明は上記した一実施例に限定されるものではなく、種々の拡張、変更が可能である。
例えば、上記実施例では、ガソリンエンジン車における燃料消費量を求める場合を例としたが、エネルギー消費量として、電気自動車の場合にはバッテリの電力消費量を求めることができ、エンジンと電気モータとを併用するハイブリッド車の場合にも本発明を適用できることは勿論である。さらには、燃料消費量の予測だけでなく、別の用途、例えばハイブリッド車における先読み制御等に、本発明の燃料換算勾配データを利用することもできる。
【0062】
また、上記実施例では、カーナビゲーション装置において、探索した走行経路に関する燃料消費量を予測するようにしたが、経路探索の処理時に、燃料換算勾配データを用いて燃料消費量を計算しながら燃料消費量が最小となる走行経路を求めるようにしても良い。情報センタにおいて推奨経路を探索して車両に配信するようにしたセンタ計算型のカーナビゲーションシステムにおいても、情報センタにおいて、道路地図データに付随した燃料換算勾配データを用いたエネルギー消費量の算出を行う構成とすることができる。情報センタのコンピュータにおいて、燃料換算勾配データを作成(演算)しても良い。
【0063】
本発明においては、上記した道路勾配データ作成装置(道路勾配データ作成方法)によって作成された各リンクの燃料換算勾配データを、記憶媒体に記憶し、メディアとして流通させることも可能である。この場合、各リンクの燃料換算勾配データを、前記道路地図データと関連付けて記憶するようにしても良い。また、記憶媒体としては、ハードディスク、光ディスク、磁気ディスク、スティック型やカード型のメモリ等、各種のメディアを採用できることは勿論である。
【0064】
上記実施例では、勾配変化点抽出の処理において、2点間に基準直線を引いて、その基準直線からのリンク構成点の離間距離に基づいて勾配変化点を求めるようにしたが、勾配変化点を求めるための手法としては、それ以外にも、最小二乗法を用いる等、様々な方法が可能である。この場合、標高データの誤差を考慮して勾配変化点の抽出処理も可能である。その他、計算用データを車種(重量、排気量)毎に設けるようにしても良いなど、本発明は要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【符号の説明】
【0065】
図面中、1はカーナビゲーション装置(エネルギー消費量予測装置)、2は制御装置(消費量演算手段)、10はナビ用地図データベース(燃料換算勾配データ記憶手段)、15は道路勾配データ作成装置、16は本体部(勾配データ作成手段)、17は地図データベース、18は標高データベース、19は計算用データ記憶部、20はリンク構成点割付部(リンク構成点割付手段)、21は勾配変化点抽出部(勾配変化点抽出手段)、22は算出部(算出手段)、Lはリンク、Aは始点、Bは終点、Pはリンク構成点、C〜Hは勾配変化点を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路をノード及びリンクの組合せで表現した道路地図データにおける、前記各リンクの勾配度合を表すデータを作成する道路勾配データ作成装置において、
前記道路地図データを記録した地図データベースから、前記各リンクの始点、終点の位置及び道路種別を含むリンクデータを入力するリンクデータ入力手段と、
地形図を所定間隔のメッシュで区切った各位置についての標高を記録した標高データベースから、標高データを入力する標高データ入力手段と、
前記リンクデータ及び標高データに基づいて、前記各リンクにおける前記始点から終点までの間がどれくらいの勾配であるかを示す指標となる勾配のデータを、当該リンクを車両が走行した際のエネルギー消費量に換算して評定した燃料換算勾配データとして作成する勾配データ作成手段とを具備することを特徴とする道路勾配データ作成装置。
【請求項2】
前記勾配データ作成手段は、
前記各リンクに関して、当該リンクに沿って始点から終点まで所定間隔でリンク構成点を割付けるリンク構成点割付手段と、
前記各リンク構成点の標高データに基づき、前記始点、各リンク構成点、終点を順に直線でつないだ際に、前記各リンク構成点の前後の直線での勾配変化の度合が閾値より大きくなる点を勾配変化点として抽出する勾配変化点抽出手段と、
前記リンクの始点から終点までの間を前記勾配変化点で区切った区間に分け、予め設定されている勾配、車速、燃費の相互の関係を示す計算用データに基づいて、前記各区間に関してエネルギー消費量を求めそれらを積算して該リンク全体のエネルギー消費量を求めると共に、そのエネルギー消費量及び該リンク全体の長さから燃料換算勾配データを逆算する算出手段とを備えることを特徴とする請求項1記載の道路勾配データ作成装置。
【請求項3】
前記勾配変化点抽出手段は、
まず、前記リンクの始点と終点とを結ぶ第1基準直線を引き、それら始点と終点との間にあるリンク構成点のうち、前記第1基準直線から最も離間した点の離間距離が基準値より大きい場合に、そのリンク構成点を、第1勾配変化点として抽出し、
次に、前記始点と第1勾配変化点とを結ぶ第2基準直線を引き、それら始点と第1勾配変化点との間にあるリンク構成点のうち、前記第2基準直線から最も離間した点の離間距離が基準値より大きい場合に、そのリンク構成点を、第2勾配変化点として抽出すると共に、前記第1勾配変化点と終点を結ぶ第3基準直線を引き、それら第1勾配変化点と終点との間にあるリンク構成点のうち、前記第3基準直線から最も離間した点の離間距離が基準値より大きい場合に、そのリンク構成点を、第3勾配変化点として抽出し、
更に、始点、複数の勾配変化点、終点に関して、隣り合う点間を結ぶ基準直線を引き、同様に、前記基準直線から最も離間した点の離間距離が基準値より大きいリンク構成点を、勾配変化点として抽出していくことを、新たな勾配変化点が抽出されなくなるまで繰返すことにより、全ての勾配変化点を求めることを特徴とする請求項2記載の道路勾配データ作成装置。
【請求項4】
前記計算用データは、予め標準的な車両に関して基準となる計算用データが与えられており、
前記勾配データ作成手段は、前記基準となる計算用データに対し、車両の車種又は重量又は排気量に応じて設定されている係数を乗算したデータに基づいて、該当車両における前記燃料換算勾配データを算出することを特徴とする請求項2又は3記載の道路勾配データ作成装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の道路勾配データ作成装置により作成された各リンクの燃料換算勾配データを記憶する記憶媒体。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかに記載の道路勾配データ作成装置により作成された各リンクの燃料換算勾配データを、前記道路地図データと関連付けて記憶する記憶媒体。
【請求項7】
所定の走行経路を走行する際の車両のエネルギー消費量を予測する車両のエネルギー消費量予測装置であって、
請求項1ないし4のいずれかに記載の道路勾配データ作成装置により作成された各リンクの燃料換算勾配データを、前記道路地図データと関連付けて記憶する燃料換算勾配データ記憶手段と、
この燃料換算勾配データ記憶手段に記憶された前記各リンクの燃料換算勾配データを用いて、前記走行経路を走行する際に予測される車両のエネルギー消費量を算出する消費量演算手段とを具備することを特徴とする車両のエネルギー消費量予測装置。
【請求項8】
道路をノード及びリンクの組合せで表現した道路地図データにおける、前記各リンクの勾配度合を表すデータを作成する道路勾配データ作成方法において、
前記道路地図データを記録した地図データベースから、前記各リンクの始点、終点の位置及び道路種別を含むリンクデータを入力するリンクデータ入力工程と、
地形図を所定間隔のメッシュで区切った各位置についての標高を記録した標高データベースから、標高データを入力する標高データ入力工程と、
前記リンクデータ及び標高データに基づいて、前記各リンクにおける前記始点から終点までの間がどれくらいの勾配であるかを示す指標となる勾配データを、当該リンクを車両が走行した際のエネルギー消費量に換算して評定した燃料換算勾配データとして作成する勾配データ作成工程とを含むことを特徴とする道路勾配データ作成方法。
【請求項9】
前記勾配データ作成工程は、
前記各リンクに関して、当該リンクに沿って始点から終点まで所定間隔でリンク構成点を割付けるリンク構成点割付工程と、
前記各リンク構成点の標高データに基づき、前記始点、各リンク構成点、終点を順に直線でつないだ際に、前記各リンク構成点の前後の直線での勾配変化の度合が閾値より大きくなる点を勾配変化点として抽出する勾配変化点抽出工程と、
前記リンクの始点から終点までの間を前記勾配変化点で区切った区間に分け、予め設定されている勾配、車速、燃費の相互の関係を示す計算用データに基づいて、前記各区間に関してエネルギー消費量を求めそれらを積算して該リンク全体のエネルギー消費量を求めると共に、そのエネルギー消費量及び該リンク全体の長さから燃料換算勾配データを逆算する算出工程とを実行することを特徴とする請求項8記載の道路勾配データ作成方法。
【請求項10】
前記勾配変化点抽出工程は、
まず、前記リンクの始点と終点とを結ぶ第1基準直線を引き、それら始点と終点との間にあるリンク構成点のうち、前記第1基準直線から最も離間した点の離間距離が基準値より大きい場合に、そのリンク構成点を、第1勾配変化点として抽出し、
次に、前記始点と第1勾配変化点とを結ぶ第2基準直線を引き、それら始点と第1勾配変化点との間にあるリンク構成点のうち、前記第2基準直線から最も離間した点の離間距離が基準値より大きい場合に、そのリンク構成点を、第2勾配変化点として抽出すると共に、前記第1勾配変化点と終点を結ぶ第3基準直線を引き、それら第1勾配変化点と終点との間にあるリンク構成点のうち、前記第3基準直線から最も離間した点の離間距離が基準値より大きい場合に、そのリンク構成点を、第3勾配変化点として抽出し、
更に、始点、複数の勾配変化点、終点に関して、隣り合う点間を結ぶ基準直線を引き、同様に、前記基準直線から最も離間した点の離間距離が基準値より大きいリンク構成点を、勾配変化点として抽出していくことを、新たな勾配変化点が抽出されなくなるまで繰返すことにより、全ての勾配変化点を求めることを特徴とする請求項9記載の道路勾配データ作成方法。
【請求項11】
前記計算用データは、予め標準的な車両に関して基準となる計算用データが与えられており、
前記勾配データ作成工程は、前記基準となる計算用データに対し、車両の車種又は重量又は排気量に応じて設定されている係数を乗算したデータに基づいて、該当車両における前記燃料換算勾配データを算出することを特徴とする請求項9又は10記載の道路勾配データ作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−242110(P2012−242110A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109325(P2011−109325)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】