説明

道路施設の保守管理支援方法及びそのシステム

【課題】高速道路を含めた道路施設の保守管理に必要な情報を迅速に省力化して収集する。
【解決手段】道路設備の状態を検知するセンサが測定した情報をセンサの近傍に設置された無線等の通信機能を有する小型の路側ユニットが収集し、点検車両に搭載された無線等の通信機能を車載ユニットからの送信時間間隔や送信情報種別等の指示に従って、点検車両が前記路側ユニットの近傍を走行中に、路側ユニットから点検車両の車載ユニットに前記情報を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路施設の保守管理を支援するシステム、特に、各種センサを接続可能な路側ユニットを道路施設に設置し、道路施設の保守管理を支援するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路施設の保守管理を支援するシステム、特に、路面の保守管理を支援するシステムとしては、点検車両にGPS受信機、カメラ、マイク、音響センサ、振動センサ等の路面状況を測定する機器を搭載し、点検車両が道路を走行することにより、前記機器が自動的に路面状況を測定し、測定結果に基づいて路面の劣化を分類、予測して、どの領域をいつ補修すべきかを通知するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、橋梁等の構造物に関しては、橋梁等の構造物に検知機器を設置して、橋梁等の構造物が振動や劣化等によって所定の位置からずれることを検知し、異常を通知する方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−115687
【特許文献2】特開2001−4497
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
道路設備の保守管理のためには、道路設備の状況を把握し、補修すべき箇所を迅速に正確に特定することが重要である。
道路設備の保守管理の中で、路面の状態に関しては、例えば、特許文献1では、センサ等の路面状態を測定する機器が車載されて、点検車両で走行しながら測定機器によって路面状態を測定し、その測定情報に基づきリアルタイムに道路の補修計画案が作成される。しかしながら、特許文献1の技術では、走行している点検車両の機器から測定可能な情報しか利用できず、また、橋梁、トンネル、土構造物(切り土や盛り土などの斜面。いわゆる、山を削った切り土のり面、土を盛った盛り土などの道路を構成するもの)、交通管制施設等の路面以外に関する情報は収集できないため、橋梁、トンネル、土構造物、交通管制施設等を含めた道路設備の保守管理の支援情報としては十分な情報が収集できなかった。
【0005】
また、道路設備の保守管理の中で、橋梁、建築物等の構造物に関しては、例えば、特許文献2では、橋梁、建築物等の構造物にその移動を検知する測定機器を設置し、橋梁、建築物等の構造物の移動を検知することは可能であるが、検知した情報及びそれがどの場所であるか通知する必要がある。通知する手段としては、歩行により点検をする方法あるいは通信手段を使い通知する方法が考えられる。しかし、歩行による点検では効率が悪く補修すべき箇所を探すために時間がかかるとともにコストもかかる。他方、通信手段を用いる方法では、携帯電話等の広域通信網を利用する場合には、高出力の通信機器を要し、通信機器のコストが高くなるとともに、長期間の使用に耐えうる電源を用意する必要がある。また、狭域通信(DSRC:Dedicated Short Range Communication)のような路車間通信を使う方法もあるが、センサから路側ユニットが設置された箇所まで配線を行う必要があり、配線コストがかかるとともに、センサの取り付け場所によっては配線が困難な場合もある。
【0006】
本発明の課題は、路面以外の道路設備に関しても、経済的にかつ迅速に保守管理のための情報を収集することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するために考案されたものであり、無線等の通信機能を搭載した小型の路側ユニットを道路設備の状態を検知するセンサの近傍に設置し、無線等の通信機能を有する車載ユニットを搭載した点検車両が走行している時に、センサからの異常情報を含む測定情報を点検車両に通知するシステムである。
【0008】
すなわち、道路設備保守管理の支援情報として十分な情報を収集するためには、保守管理すべき道路設備の必要箇所に当該箇所の保守管理に必要となるセンサを設置可能とする必要がある。
【0009】
他方、無線タグの通信可能距離の長距離化は、目覚しいものがあり、数十メートル程度までに伸びており、この無線タグを路側ユニットとして活用する。すなわち、道路設備の各所に設置されたセンサによって計測された情報をセンサに接続された路側ユニットによって、近隣(数十メートル程度)を走行中の自動車等の移動体に車載された車載ユニットに送信して、まず、車載の車載ユニットに道路設備保守管理の支援情報を収集し、その後、必要に応じて、基地局(データ収集局であり、道路設備保守管理のための各種情報を蓄積、管理する等の機能を有する)に送信し、基地局で道路設備保守管理の支援情報を蓄積、処理するようにする。
【0010】
このように、通信可能距離の伸張が著しい無線タグ(路側ユニット)によって走行中の自動車等の移動体に情報を送信する方法では、高速走行中の移動体による情報収集も可能となる。例えば、高速道路の施設管理の支援情報を収集するため、高速道路を高速走行中の自動車によって収集可能となる。
【0011】
ここで、道路施設とは、道路、橋梁、トンネル、土構造物、交通管制施設等のことである。更に、移動体とは、自動車、バス、トラック、自動二輪車、電車、ヘリコプタ、飛行機、船舶等のことである。
【0012】
具体的には、以下の通りである。
前記の路側ユニットでは、センサからの測定情報は、中央処理装置(CPU)で処理され、予め定められている測定情報をメモリに蓄積する。また、同時に、その測定情報が、予め規定された基準によって異常かどうかの判定を行う。その測定情報が異常と判定された場合には、異常の旨を車載ユニットに対して通知するための準備を行う。
【0013】
すなわち、点検車両の無線装置からの周波数fで発信される呼び出し信号の検知機能を働かせて検知する。路側ユニット呼び出し信号を検知した場合、呼び出し信号と異なる周波数frを使い、自分の識別番号とセンサの異常を示す番号を一定間隔で発信する。
【0014】
走行している点検車両は、路側ユニットの通信を受信し、センサ異常を通知している路側ユニットの識別番号とセンサの異常状態を知ることができる。
更に、前記路側ユニットに資産情報を蓄積しておき、路側ユニットが近隣を走行中の検査車両に資産情報を送ることによって、道路施設の各所に設置された路側ユニットの資産の管理が経済的に迅速に行える。資産情報とは、路側ユニットを識別するための固有の番号であり、各路側ユニットに書き込まれる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、道路設備に取り付けられたセンサによって測定された情報は異常情報も含めて無線等の通信可能距離の広い通信手段により、点検車両が近隣を走行することによって自動収集されるので、また、点検車両が高速で移動していても点検車両で受信可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明のシステム構成の一例を図1に示す。
システムは、センサ10、路側ユニット20、車載ユニット30及び基地局40を含み、センサ10ー路側ユニット20間、路側ユニット20ー車載ユニット30間、及び、車載ユニット30ー基地局40間は、特定小電力無線で接続されても良い。
【0017】
センサは、道路施設の保守管理に当たって現象を捉えられる場所に設置する。
道路施設の保守管理を支援するためのセンサとは、自然現象や人工物の機械的・電磁気的・熱的・音響的・科学的性質あるいはそれらで示される空間情報・時間情報を、科学的原理を応用して、人間や機械が扱いやすい別媒体の信号に置き換えるセンサのことである。例えば、力を測定するセンサとしては、ストレインゲージ(ひずみゲージ)、ロードセル(荷重による変位量が分かっている物体とひずみゲージを組み合わせた荷重センサ)、半導体圧力センサ等が、変位を測定するセンサとしては、ポテンショメータ、差動トランス、回転角センサ、リニアエンコーダ、ロータリエンコーダ等が、位置を測定するセンサとしては、光位置センサ(PSD)等が、速度を測定するセンサとしては、タコジェネレータ、レーザドップラー振動速度計、レーザドップラー流速計等が、加速度を測定するセンサとしては、加速度センサ、地震センサ等が、角速度を測定するセンサとしては、ジャイロセンサ等が、回転数を測定するセンサとしては、タコジェネレータ、ロータリエンコーダ等が、距離を測定するセンサとしては、超音波距離計、静電容量変位計等が、光を測定するセンサとしては、光センサ、光電素子、フォトダイオード等が、液を測定するセンサとしては、漏液センサ(リークセンサ)、液検知センサ(レベルセンサ)等が、磁気を測定するセンサとしては、磁気センサ等が、温度を測定するセンサとしては、接触式センサ、サーミスタ、抵抗測温体、熱電対、非接触式センサ、放射温度計等が、化学関係のセンサとしては、イオン濃度センサ、ガス濃度センサ等が、音声関係のセンサとしては、マイクロフォン等が、その他のセンサとしては、時間・時計、硬度、電場、電流、電圧、放射線、流量、湿度、傾斜、振動、におい、赤外線等のセンサが利用可能である。
【0018】
これらのセンサによって、道路施設の状態あるいはその周辺の環境を計測し、センサの種別によって、測定値の収集周期が異なっても良い。
センサ10と路側ユニット20は、物理的に一体となっていてもよいし、分離していて両者が無線あるいは有線で接続されている構成でも良い。
【0019】
路側ユニットは、センサの近傍で、かつ、点検車両の車載ユニットとの通信が容易な場所に設置される。また、また、路側ユニットは、自らバッテリを持つが、バッテリ容量に制約があり、また、路側ユニットは走路施設の各所に設置されているのでバッテリの交換等は容易ではないので、下記の実施例で示すように、バッテリの有効利用を図る必要がある。
【0020】
本発明の第一の実施例である道路施設の保守情報の収集、蓄積処理について説明する。
路側ユニット20の構成の一例を図2に示す。
路側ユニット20は、外部のセンサを制御するためのセンサ制御部21、センサ10からの情報を蓄積するためのセンサ情報蓄積部22、資産情報を蓄積するための資産情報蓄積部23、センサからの測定値が異常な場合に異常情報を蓄積する異常判定情報蓄積部24、異常検知情報や蓄積情報を外部と通信する通信部25、通信部25の機能を制御するための呼び出し信号を受信する呼び出し信号検出部26、及び、これらを制御する処理部27、オペレーティングシステム(OS : Operating System)を含む。ここで、通信部25が利用する通信手段としては、無線であっても有線であっても良い。
【0021】
処理部27は、センサ番号(例えば、センサ#1)を指定して測定値の読出しをセンサ制御部21に要求する。センサ制御部21は、対応するセンサの測定値を読出して測定値を処理部27に通知する(S11)。処理部27では、測定値が各センサ対応に規定された範囲内の値であるかどうか判定し(S12)、範囲内の値である場合には、センサ番号、測定時刻及び測定値をセンサ情報蓄積部22に通知する。センサ情報蓄積部22では、通知された情報をセンサ情報蓄積情報として記憶する(S15)。センサ情報蓄積情報の構成の一例を図3に示す。ここで、測定時刻は、OS 28から取得しても良く、年月日時分秒のすべてあるいは一部を含んでも良い。
【0022】
処理部27では、測定値が各センサ対応に規定された範囲外の値である場合には、判定異常として、センサ番号及び測定時刻を判定異常情報蓄積部24に通知する。判定異常情報蓄積部24では、通知された情報を判定異常情報蓄積情報として記憶する(S13)。
【0023】
判定異常情報蓄積情報の構成の一例を図4に示す。また、処理部27では、上記と同様に、センサ番号、測定時刻及び測定値をセンサ情報蓄積部22に通知する。センサ情報蓄積部22では、通知された情報をセンサ情報蓄積情報として記憶する。
【0024】
処理部27は、異常判定が行われると、路側ユニット20の識別番号(ID)と異常の状況を示す情報を含めた信号のフォーマットを編集し、点検車両の車載ユニット30に送信する準備を行う(S14)。
【0025】
ここで、異常の状況を通知する信号のフォーマットの一例を図5に示す。
また、路側ユニット20におけるセンサ測定値の取得処理フローチャートの一例を図6に示す。
【0026】
路側ユニット20に接続されるセンサが複数の場合には、路側ユニットIDの一部はセンサの識別番号を示しても良い。
車載ユニット30の構成の一例を図7に示す。
【0027】
点検車両に搭載される車載ユニット30は、路側ユニット20からの情報を受信する通信部31、路側ユニット20の送信を起動させる信号を発信する呼び出し信号送出部32、路側ユニットから受信したセンサ情報を蓄積するセンサ情報蓄積部33、路側ユニットから受信した資産情報を蓄積する資産情報蓄積部34、路側ユニットから受信した異常信号を蓄積する異常情報蓄積部35、操作者に異常情報を通知する表示部36、操作者が操作するための入力部37、道路設備の地図や設計図等を蓄積する地図情報蓄積部38、及び、これらを制御するための処理部39、OS(図示せず)を含む。ここで、通信部31が利用する通信手段としては、無線であっても有線であっても良い。また、利用頻度の高い道路施設の地図や設計図等を予め地図情報蓄積部38に蓄積しておいても良いし、予め全く蓄積しなくても良い。
【0028】
道路を走行中の点検車両側の車載ユニット30では、処理部39は、センサ番号と送信時間間隔を指定してセンサ情報蓄積情報を通信部31を経由して路線ユニット21に要求するとともに応答待ちタイマをスタートさせる(S21)。ここで、情報は、1回の送信では正常に車載ユニット30へ到達ができない可能性があることを考慮し、少なくて通信可能な電波の届く範囲内で車載ユニットに3回程度受信可能なように送信時間間隔は設定される。また、送信時間間隔とは、路側ユニット20が車載ユニット30にセンサ情報蓄積情報を送信する時間間隔のことである。
【0029】
応答待ちタイマがタイムアウトかどうか判定し(S22)、タイムアウトするまで以下の処理を行う。
例えば、道路から高さ10メートルに設置された路側ユニット20、時速80キロメートル(秒速22.2メートル)で走行する自動車、無線タグ(路側ユニット)の通信可能距離を200メートルとした場合、自動車は無線タグ(路側ユニット)の通信可能距離を18秒で通過することになる。従って、送信時間間隔は、18秒の間に、複数回の情報の送信が可能な値に設定される。ここで、路側ユニット20の通信可能距離と自動車の速度等の関係を図8に示す。
【0030】
ここで、送信時間間隔について説明する。
路側ユニットからの通信可能距離x(m)、点検車両の速度v(m/s)とすると、受信可能時間t(s)=2x/vとなる。通信できる範囲は、通過して反対側もxの距離まで受信できるので、2xとなる。
【0031】
この受信可能時間内にn回送信するための送信時間間隔τは、τ<(2x)/(nv)
となり、このような送信時間間隔を設定する。
路側ユニット20では、点検車両が近づき、通信部25がセンサ番号と送信時間間隔を指定したセンサ情報蓄積情報の送信の要求を受信すると、処理部27に通知する。処理部27は、指定されたセンサ番号に対応するセンサ情報蓄積情報をセンサ情報蓄積部22から読出し、対応するセンサ情報蓄積情報を通信部25を介して車載ユニット30に送信する。処理部27は、指定された送信時間間隔で同様の処理を行う。ここで、送信されるセンサ情報蓄積情報のフォーマットの一例を図9に示す。
【0032】
車載ユニット30では、対応するセンサ情報蓄積情報は通信部31を経由して処理部39に通知される(S23)。処理部39は、通知された値が各センサ対応に規定された範囲外の値である場合には、その値を無視し(S24)、通知された値が各センサ対応に規定された範囲内の値である場合には、路側ユニットID、センサ番号、測定時刻及び測定値をセンサ情報蓄積部33に通知する。センサ情報蓄積部33では、通知された情報をセンサ情報蓄積情報として記憶し(S25)、応答待ちタイマをストップする(S26)。センサ情報蓄積情報の構成の一例を図10に示す。センサ情報蓄積情報の送受信に係わる通信シーケンスの一例を図11に示す。
【0033】
ここで、測定時刻には、年月日時分秒のすべてあるいは一部を含んでも良い。
応答待ちタイマがタイムアウトした場合には、路側ユニット、センサ番号対応に不受信を蓄積する(S27)。
【0034】
車載ユニット30におけるセンサ測定値の取得処理フローチャートの一例を図12に示す。
本実施形態における車載ユニット30と路側ユニット20との間の通信について、以下に更に説明する。
【0035】
また、点検車両の車載ユニット30では、処理部39からの指示に基づき、呼び出し信号送出部32は、周波数fによる呼び出し信号を発信する。
路線ユニット21では、点検車両が近づくと、呼び出し信号検出部26が、呼び出し信号を検出する。呼び出し信号検出部26は、呼び出し信号の検出を処理部27に通知する。処理部27は、前記で用意した異常情報を通信部を経由して一定間隔で繰り返し送信する。
【0036】
ここで、通信部で送信する周波数は、fとしてfと異なる値に設定する。両信号で異なる周波数を利用するのは混信を防止するためであり、両信号で変調方法を変える等の混信を防止する処理を行った場合には同一周波数を利用しても良い。
【0037】
また、路側ユニット20の呼び出し信号検出は、電源使用量を抑えるために間欠的に行う方法や異常判定がさめるまでは行わない方法がある。
路線ユニットは、近傍に複数設置される場合もあり、複数の路側ユニットが同時にfの周波数で送信することによって、複数の路側ユニット間で混信を起こす場合もある。このため、路側ユニットが送信する情報を少なくし、一定間隔ごとに発信することにより混信が発生しにくいようにしている。
【0038】
更に、路側ユニットにキャリアセンス機能を付加することによって、路側ユニットがfのキャリア信号を検出して他の路側ユニットが送信していることを検出した場合には、自路側ユニットからの送信を少し遅らせて混信を減らすことも可能である。
【0039】
車載ユニット30では、路側ユニット20の設置箇所に近づいた場合、処理部39は呼び出し信号送出部32に呼び出し信号の送出を指示する。呼び出し信号送出部32は、呼び出し信号を発信する。車載ユニット30では、路側ユニット20から異常信号を受信した場合、処理部39は異常信号を異常情報蓄積部35に通知するとともに、表示部36に通知する。異常情報蓄積部35は、異常信号を蓄積する。表示部36は、異常を表示して操作者に知らせる。ここで、処理部39は、図5に示される異常信号に含まれる路側ユニットIDを参照して、設置場所に関する情報を抽出して表示部36に通知すれば、表示部36は、文字あるいは地図等の図を表示することができる。処理部39は、前記車載ユニットが所在する道路施設の地図あるいは設計図が地図情報蓄積部38に蓄積されているかどうか判定し、前記地図情報蓄積部38に蓄積されていれば前記地図情報蓄積部38から地図あるいは設計図を読出し、前記地図情報蓄積部38に蓄積されていなければ点検車両の所在位置を通信部31を介して基地局40に通知し、基地局40が対応する位置の地図あるいは設計図を点検車両に送信することによって、処理部39は地図あるいは設計図を取得する。また、処理部39は、異常信号の状況を分析することによって、異常状況を分析し、分析結果を表示部36に通知すると、表示部36は、操作者に文字等で知らせる。例えば、現在の異常個所を示した地図あるいは設計図を表示する。
【0040】
異常個所が特定できた場合、近傍に停止し、人が路側ユニット20の近傍に近づいて、無線あるいは有線で路側ユニット20に蓄積されている詳細情報を取得することができる。人が路側ユニット20の近傍に近づいて無線で情報を取得する場合には、車載ユニット30と同様な構成の装置を利用可能であるが、呼び出し信号の形式を変えることにより異常信号の代わりに蓄積情報に蓄積された詳細情報を送出するようにできる。
【0041】
路側ユニットは、数十m程度の通信可能距離を実現すれば良いので、小型で低コストの路側ユニットが実現可能となる。また、実際の異常時の通信は点検車両からの呼び出し信号を受信した短い時間だけの発信のため、路側ユニットのバッテリの有効利用が図られ、バッテリの長期間の動作が可能である。更に、センサから路側ユニットまでの配線も短くて良いので、配線のための困難さも軽減され、センサを道路施設の保守管理にあたり必要となる任意の場所に取り付けることが可能となる。
【0042】
車載ユニット30は、蓄積されている情報をネットワーク経由でリアルタイムに基地局40に送信しても良いし、点検車両が車庫に戻ったら基地局40へ自動送信しても良い。
センサによって測定され、路側ユニット20によって収集、蓄積及び送信された情報に異常が検出された場合には、車載ユニット30は、基地局40に異常通知を行い、人手によって詳細な検査が行われても良い。
【0043】
また、これらの情報を基礎データとして分析処理し、あるいは、必要な工事を計画して工事を実施することにより、地震等の災害時における損傷状態や損傷範囲等の迅速な把握、損傷や劣化の予測、事故防止、予防保全が可能となる。
【0044】
本発明の第二の実施例である道理施設の資産情報の収集及び蓄積処理について説明する。
走行中の点検車両に搭載された車載ユニット30では、処理部39が資産情報を要求すると、通信部31は、路側ユニット20に対して資産情報を要求する。ここで、路側ユニットの資産情報としては、路側ユニットIDを使用しても良い。
【0045】
路側ユニット20では、通信部25を経由して資産情報の要求が処理部27に通知される。処理部27では、資産情報蓄積部23から資産情報を読出し、資産情報を通信部25を経由して車載ユニット30に対して送信する。
【0046】
車載ユニット30では、通信部31を経由して資産情報を処理部39に通知する。処理部39は、資産情報を資産情報蓄積部34に蓄積する。蓄積された資産情報は、リアルタイムで、あるいは、点検車両が車庫に戻った場合等に、基地局40に対して送信し、基地局40は資産情報を蓄積する。
【0047】
これにより、人手で現場の路側ユニットの存否等を確認することなく、点検車両で走行中に、自動的に、近傍の路側ユニットの資産情報を収集して、基地局等で管理されている資産の原簿と照合して、各所に設置された路側ユニットの資産管理が迅速にかつ経済的に実現可能となる。なお、原簿には、各路側ユニット対応に、設置日、補修日、名称等の情報が格納されている。
【0048】
以上、実施形態例に基づき本発明に係る道路施設の保守管理支援方法及びそのシステムについて説明したが、前記実施形態例は本発明の理解を容易にするためのものであって本発明を限定するものではない。本発明は、請求項の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が当然含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明のシステム構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の路側ユニットの構成の一例を示す図である。
【図3】路側ユニットにおけるセンサ情報蓄積情報の構成の一例を示す図である。
【図4】路側ユニットにおける判定異常情報蓄積情報の構成の一例を示す図である。
【図5】路側ユニットから車載ユニットに異常の状況を通知する信号のフォーマットの一例を示す図である。
【図6】路側ユニットにおけるセンサ測定値の取得処理フローチャートの一例を示す図である。
【図7】車載ユニットの構成の一例を示す図である。
【図8】路側ユニットの通信可能距離と点検車両の速度等の関係を示す図である。
【図9】路側ユニットから車載ユニットにセンサ情報蓄積情報を通知する信号のフォーマットの一例を示す図である。
【図10】車載ユニットにおけるセンサ情報蓄積情報の構成の一例を示す図である。
【図11】センサ情報蓄積情報の送受信に係わる通信シーケンスの一例を示す図である。
【図12】車載ユニットにおけるセンサ測定値の取得処理フローチャートの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
10 センサ
20 路側ユニット
21 センサ制御部センサ
22 センサ情報蓄積部
23 資産情報蓄積部
24 異常判定情報蓄積部
25 通信部
26 呼び出し信号検出部
27 処理部
28 オペレーティングシステム
30 車載ユニット
31 通信部
32 呼び出し信号送出部
33 センサ情報蓄積部
34 資産情報蓄積部
35 異常情報蓄積部
36 表示部
37 入力部
38 地図情報蓄積部
39 処理部
40 基地局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路施設に設置されたセンサによって測定された情報を収集及び蓄積する道路施設保守管理支援システムにおいて、
路側ユニットは、前記路側ユニットに接続されている前記センサによって測定された情報を収集してメモリに蓄積し、
走行中の移動体に搭載された車載ユニットからの前記情報の送信要求に対応して、前記情報を前記メモリから読み出して前記車載ユニットに対して送信し、
前記車載ユニットでは前記情報をメモリに蓄積する道路施設保守管理支援方法。
【請求項2】
請求項1に記載の道路施設保守管理支援方法において、
前記車載ユニットからの前記送信要求に情報送信の時間間隔、情報種別の指定が含まれるとき、前記路側ユニットに対して指示すると、前記路側ユニットは、前記時間間隔に従って前記情報種別に対応する情報の前記車載ユニットへの送信を繰返し、
前記情報の送信停止が車載ユニットから指示されたとき、以降の前記情報の送信を停止する道路施設保守管理支援方法。
【請求項3】
請求項2に記載の道路施設保守管理支援方法において、
前記車載ユニットは、前記路側ユニットからの通信可能距離及び前記移動体の走行速度を元に路側ユニットからの情報送信信号を複数回受信可能なように前記時間間隔を決定する道路施設保守管理支援方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の道路施設保守管理支援方法において、
前記車載ユニットは、前記路側ユニットから受信した前記情報の値が所定の範囲内かを判定し、前記情報の値が所定の範囲内であれば前記情報をメモリに蓄積し、前記情報が所定の範囲外であれば前記情報をメモリに蓄積するとともに異常を示す情報をメモリに蓄積する、あるいは、異常を車載ユニットの操作者に通知する道路施設保守管理支援方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の道路施設保守管理支援方法において、
前記車載ユニットは、利用頻度の高い道路施設の地図あるいは設計図を予め前記車載ユニットのメモリに蓄積しておき、道路施設の地図あるいは設計図を画面上に表示する場合、前記車載ユニットが所在する道路施設の地図あるいは設計図が前記メモリに蓄積されているかどうか判定し、前記メモリに蓄積されていれば前記メモリから読出し、前記メモリに蓄積されていなければ前記車載ユニットが所在する道路施設の地図あるいは設計図を基地局に要求し、
前記基地局は前記道路施設の地図あるいは設計図を前記車載ユニットに対して送信し、
前記車載ユニットは、前記情報、あるいは、前記異常を示す情報を前記地図あるいは設計図を示す画面上に表示する道路施設保守管理支援方法。
【請求項6】
センサとして、道路施設の保守管理を支援するためのセンサを含む請求項1から5のいずれかに記載の道路施設保守管理支援方法。
【請求項7】
道路施設に路側ユニットが設置される道路施設保守管理支援方法において、走行中の移動体に搭載された車載ユニットが前記路側ユニットに対して資産情報を要求すると、前記路側ユニットは蓄積している前記資産情報を前記車載ユニットに対して送信し、前記車載ユニットでは前記資産情報を蓄積する道路施設保守管理支援方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の道路施設保守管理支援方法において、前記車載ユニットは前記メモリに蓄積された情報あるいは前記蓄積された異常を示す情報を基地局に対して送信し、基地局は前記蓄積された情報あるいは前記蓄積された異常を示す情報をメモリに蓄積する道路施設保守管理支援方法。
【請求項9】
道路施設に設置されたセンサによって測定された情報を収集及び蓄積さする道路施設保守管理支援システムにおいて、
前記センサによって測定された前記情報を収集してメモリに蓄積し、外部からの要求に対応して前記情報を外部に送信する路側ユニットと
前記路側ユニットに対して前記情報の送信を要求し、前記路側ユニットから前記情報を受信すると前記情報をメモリに蓄積する、走行中の移動体に搭載された車載ユニットと
を含む道路施設保守管理支援システム。
【請求項10】
請求項9に記載の道路施設保守管理支援システムにおいて、
前記車載ユニットから送信される前記情報を受信して前記情報を蓄積する基地局を含む道路施設保守管理支援システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−117837(P2010−117837A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289867(P2008−289867)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(597165618)株式会社ネクスコ東日本エンジニアリング (18)
【出願人】(397065136)株式会社横須賀テレコムリサーチパーク (28)
【Fターム(参考)】