説明

道路標識認識装置

【課題】 CPU、撮像装置の能力、コストを抑制し、車両へ現実的に搭載でき、確実に道路標識を認識することができる道路標識認識装置を提供すること。
【解決手段】 自車前方を撮像するステレオカメラ5と、撮像した画像を撮像対象までの距離を示す距離画像に変換する距離画像作成部21と、撮像した画像から道路標識部分を認識するデータ探索部42と、複数の道路標識のデータを有するテンプレートデータと、画像の道路標識部分とテンプレートデータとのマッチングを行い、道路標識を認識する画像判定部44とを備える道路標識認識装置1において、自車と道路標識との距離により段階的にテンプレートサイズを変更するテンプレート拡大縮小部44を設け、画像判定部44は、自車と道路標識との距離により段階的に認識処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援を行うために、自車前方に設置されている道路標識を認識して、道路標識認識装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来では、自車の前方を撮像し、テンプレートマッチングにより道路標示、道路標識を認識している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−123197号公報(第2−14頁、全図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来にあって画像に撮像されたテンプレートマッチングを行うには、撮像範囲を各種ある標識のテンプレートと照合処理しなければならず、対象物の遠近も考慮してテンプレートの拡大、縮小を行わなければならない。しかも、道路標識が近傍に位置しないと正確な種類を見分けることができなかった。しかし、望遠レンズを使用し、遠方から認識するには、画角が狭く使用が困難であった。
そのため、道路標識を認識する処理では、CPU、撮像装置が非常に高価な物になってしまっていた。また、これにより車両への搭載が現実的に困難であった。
【0004】
本発明は、上記問題点に着目してなされたもので、その目的とするところは、CPU、撮像装置の能力、コストを抑制し、車両へ現実的に搭載でき、確実に道路標識を認識することができる道路標識認識装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、自車前方を撮像する撮像手段と、撮像した画像を撮像対象までの距離を示す距離画像に変換する変換手段と、撮像した画像から道路標識部分を認識する手段と、複数の道路標識のデータを有するテンプレートデータと、画像の道路標識部分とテンプレートデータとのマッチングを行い、道路標識を認識するマッチング手段とを備える道路標識認識装置において、自車と道路標識との距離により段階的にテンプレートサイズを変更する手段を設け、マッチング手段は、自車と道路標識との距離により段階的に認識処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
よって、本発明にあっては、CPU、撮像装置の能力、コストを抑制し、車両へ現実的に搭載でき、確実に道路標識を認識することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の道路標識認識装置を実現する実施の形態を、請求項1,2,3に係る発明に対応する実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
まず、構成を説明する。
図1は実施例1の道路標識認識装置のブロック図である。図3は実施例1の道路標識認識装置の画像処理の説明図である。
道路標識認識装置1は、ASIC2、画像メモリ3、プロセッサ4を主な構成にし、ステレオカメラ5(撮像手段に相当する)が接続されている。
ASIC2は、ステレオカメラ5で撮像した画像のA/D変換を行い、内部に有する距離画像作成部21(距離画像変換手段に相当する)で距離画像を作成し、画像メモリ3へ出力する。
画像メモリ3は、距離画像を一時的に記憶する。
プロセッサ4は、距離画像撮り込み部41、データ探索部42(道路標識部分を認識する手段に相当する)、テンプレート拡大縮小部43(テンプレートサイズを変更する手段に相当する)、画像判定部44(マッチング手段に相当する)、表示部45(警告伝達手段に相当する)を主な構成にしている。
【0009】
距離画像撮り込み部41は、画像メモリ3に記憶している距離画像をプロセッサ4にデータで撮り込む。
データ探索部42は、画像データの特定エリア内に特定の距離データがあるかどうかを探索する。
テンプレート拡大縮小部43は、データ探索部42で確認した距離データに対応する画像データを参照し、距離に合わせてテンプレートのサイズ変更を行う。
画像判定部44は、対象となる画像データとテンプレートマッチングを行う。
表示部45は、ドライバに警告などの表示を行う。
ステレオカメラ5は、車両の左右にそれぞれ設けるようにし、自車前方の画像を撮像する。すると、画像は、その水平位置の違いにより視差を生じるため、その視差により撮像した対象物までの距離が分かることとなる。
【0010】
[画像処理]
図2は実施例1の道路標識認識装置の道路認識の画像処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。
ステップS1では、距離画像の特定エリアに特定の距離データがあるかどうかを探索する。
【0011】
ステップS2では、画像の特定エリアに特定の距離データを確認したかどうかを判断し、確認したならばステップS3へ移行し、確認しないならばステップS1へ移行する。
【0012】
ステップS3では、フレーム間引き処理として、該当する認識処理を行う認識可能距離に達したかどうかを判断し、認識可能距離に達したならばステップS4に移行し、認識可能距離に達しないならばステップS3に移行して待つようにする。
【0013】
ステップS4では、ステップS3の認識可能距離にあわせてテンプレートの拡大縮小を行う。
【0014】
ステップS5では、画像の特定エリアに特定の距離データを確認したかどうかを判断し、確認したならばステップS6へ移行し、確認しないならばステップS1へ移行する。
【0015】
ステップS6では、フレーム間引き処理として、該当する認識処理を行う認識可能距離に達したかどうかを判断し、認識可能距離に達したならばステップS7に移行し、認識可能距離に達しないならばステップS6に移行して待つようにする。
【0016】
ステップS7では、標識形状を判断し、標識形状が丸であるならばステップS14へ移行し、標識形状が三角であるならばステップS11へ移行し、標識形状がひし形であるならばステップS8へ移行する。
【0017】
ステップS8では、ステップS6の認識可能距離にあわせてテンプレートの拡大縮小を行う。
【0018】
ステップS9では、テンプレートマッチングにより、該当する標識データがあるかどうかを判断し、ある場合にはステップS10へ移行し、ない場合にはステップS1へ移行する。
【0019】
ステップS10では、認識した道路標識の内容に応じて警告の表示を行い、ステップS1へ移行する。
【0020】
ステップS11では、ステップS6の認識可能距離にあわせてテンプレートの拡大縮小を行う。
【0021】
ステップS12では、テンプレートマッチングにより、該当する標識データがあるかどうかを判断し、ある場合にはステップS13へ移行し、ない場合にはステップS1へ移行する。
【0022】
ステップS13では、認識した道路標識の内容に応じて警告の表示を行い、ステップS1へ移行する。
【0023】
ステップS14では、ステップS6の認識可能距離にあわせてテンプレートの拡大縮小を行う。
【0024】
ステップS15では、テンプレートマッチングにより、該当する標識データがあるかどうかを判断し、ある場合にはステップS16へ移行し、ない場合にはステップS1へ移行する。
【0025】
ステップS16では、認識した道路標識の内容に応じて警告の表示を行い、ステップS1へ移行する。
【0026】
[道路標識認識作用]
実施例1の道路標識認識装置1では、ステレオカメラ5で撮像し、距離画像に変換したものにおいて、特定のエリアに特定距離データが存在するかを、まず確認する。
ここで、特定のエリアとは、道路標識においては、その大きさや位置は概ね決まっているため、路側式の道路標識では、図3(a)のエリア6a、片持ち式、門型式、添架式の道路標識では、図3(b)のエリア7aを特定のエリアとして距離データの探索を行うようにする。
【0027】
まず、所定の遠い距離では、その距離に対応した面積となるエリア6a、又はエリア7aにテンプレートの大きさを合わせ、道路標識に該当する距離データが存在するかどうかの判定のみを行う。これを第1段階とする(ステップS1,S2)。
次に、第1段階よりも近い所定の距離に達すると、その距離に対応した面積となるエリア6b、又はエリア7bにテンプレートの大きさを合わせ、道路標識の形状に該当するデータとマッチングするかどうかの判定のみを行う。これを第2段階とする(ステップS3〜S5)。道路標識の形状を認識することによって、ある程度、道路標識の種類を絞り込むことになる。例としては、丸ならば、制限速度表示、駐車規則、指定方向進行等、三角ならば、一時停止等、ひし形ならば横断歩道、踏み切り等が挙げられる。
【0028】
次に、第2段階よりも近い所定の距離に達すると、その距離に対応した面積となるエリア6c、又はエリア7cにテンプレートの大きさを合わせ、道路標識の種類に該当するデータとマッチングするかどうかの判定のみを行う。これを第3段階とする(ステップS6〜S16)。
距離により段階を分けることは、画像処理上は、画像フレームを間引く処理になる。このように距離により、段階を分けて認識処理を行うことによって、プロセッサ4やASIC2の処理負担は、軽くなり、コストを抑制して車両への搭載が実現可能となる。また、段階を分けたことにより認識処理を確実に行う。
【0029】
このようにして、道路標識の認識を行ったならば、表示部45によりその道路標識の内容に応じて表示で警告を行う。
次に、効果を説明する。
実施例1の道路標識認識装置1にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1)自車前方を撮像するステレオカメラ5と、撮像した画像を撮像対象までの距離を示す距離画像に変換する距離画像作成部21と、撮像した画像から道路標識部分を認識するデータ探索部42と、複数の道路標識のデータを有するテンプレートデータと、画像の道路標識部分とテンプレートデータとのマッチングを行い、道路標識を認識する画像判定部44とを備える道路標識認識装置1において、自車と道路標識との距離により段階的にテンプレートサイズを変更するテンプレート拡大縮小部44を設け、画像判定部44は、自車と道路標識との距離により段階的に認識処理を行うため、CPU、撮像装置の能力、コストを抑制し、車両へ現実的に搭載でき、確実に道路標識を認識することができる。
【0030】
(2)画像判定部44は、道路標識の有無を認識する処理を第1段階とし、テンプレートマッチングにより標識の形状を認識する処理を第2段階とし、テンプレートマッチングにより標識の種類を認識する処理を第3段階とし、道路標識と自車との距離が近づくに従って、第1段階から順に段階的に処理を行うため、処理負担を3つの段階に分けることにより、CPU、撮像装置の能力、コストを抑制し、確実に道路標識を認識することができる。
【0031】
(3)認識した道路標識の内容に応じて、ドライバに警告を伝達する表示部45を備えたため、認識した道路標識に応じてドライバに警告を表示で行うことができる。
【0032】
以上、本発明の道路標識認識装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例1の道路標識認識装置のブロック図である。
【図2】実施例1の道路標識認識装置の道路認識の画像処理の流れを示すフローチャート図である。
【図3】実施例1の道路標識認識装置の道路認識の処理画像の説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1 道路標識認識装置
2 ASIC
21 距離画像作成部
3 画像メモリ
4 プロセッサ
41 距離画像撮り込み部
42 データ探索部
43 テンプレート拡大縮小部
44 画像判定部
45 表示部
5 ステレオカメラ
6 (路側式の道路標識のある)処理画像
6a (距離画像により特定距離データが存在するか確認する)エリア
6b (テンプレートマッチングを行い標識の形状を認識する)エリア
6c (テンプレートマッチングを行い標識の種類を確定する)エリア
7 (片持式、門型式、添架式の道路標識のある)処理画像
7a (距離画像により特定距離データが存在するか確認する)エリア
7b (テンプレートマッチングを行い標識の形状を認識する)エリア
7c (テンプレートマッチングを行い標識の種類を確定する)エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車前方を撮像する撮像手段と、
撮像した画像を撮像対象までの距離を示す距離画像に変換する変換手段と、
撮像した画像から道路標識部分を認識する手段と、
複数の道路標識のデータを有するテンプレートデータと、
画像の道路標識部分とテンプレートデータとのマッチングを行い、道路標識を認識するマッチング手段と、
を備える道路標識認識装置において、
自車と道路標識との距離により段階的にテンプレートサイズを変更する手段を設け、
前記マッチング手段は、
自車と道路標識との距離により段階的に認識処理を行う、
ことを特徴とする道路標識認識装置。
【請求項2】
請求項1に記載された道路標識認識装置において、
前記マッチング手段は、
道路標識の有無を認識する処理を第1段階とし、
テンプレートマッチングにより標識の形状を認識する処理を第2段階とし、
テンプレートマッチングにより標識の種類を認識する処理を第3段階とし、
道路標識と自車との距離が近づくに従って、第1段階から順に段階的に処理を行う、
ことを特徴とする道路標識認識装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された道路標識認識装置において、
認識した道路標識の内容に応じて、ドライバに警告を伝達する警告伝達手段を備えた、
ことを特徴とする道路標識認識装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−3994(P2006−3994A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177289(P2004−177289)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】