説明

道路用安全システム及び警報方法

【課題】災害現場に進入する車両による、現場作業者らの二次災害を防止するために、災害現場付近に進入しようとする車両を未然に判別し、作業者らに、極めてたやすく可聴できる可聴信号、視認できる可視信号、体感できる体感信号等により危険警告を与えることができ、設置、撤去が極めて容易で作業性に優れ、従来のものよりも低コストで簡便な構成で、繰り返しの使用にも耐えうる道路用安全システムを提供すること。
【解決手段】災害現場の後方に、走行車両が踏圧することによって空気圧変化を生ずる踏圧部と、該空気圧変化を感知可能な圧力センサーとを具備し、該圧力センサーの判別に応じて外部出力信号を発信可能な道路用安全装置を設置し、他方、該外部出力信号を受信することによって警音を発する警音発生装置を有する道路用警報装置を作業者近傍に設置することで、速やかに、災害現場の作業者に警告、注意を与えることができる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路における事故又は道路工事等の現場後方に設置し、現場処理作業者に対して、警告、注意を喚起する道路用安全システム及び警報方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路等において、事故等の災害が発生した場合、災害現場に到着した警察車両や道路作業車及び作業者らが、現場付近を走行する車両の進入による二次災害を防止するため、災害現場付近の後方に、発炎筒や矢印板、コーン等の車両誘導体を設置して、走行車線の規制を行っている。走行車両の進入を防止し、作業を安全に行うためには、災害現場の数十〜数百メートル後方の少なくとも一車両通行帯に、発炎筒や矢印板、コーン等を設置することが必要である。
【0003】
しかし、発炎筒や矢印板、コーン等は、可視信号であり、居眠り運転や脇見運転の車両(以下「暴走車両」という。)に対しては警告、注意を促す効果が低く、暴走車両の進入による二次災害の発生も少なくない。作業者らは、災害現場での事故処理以外にも、進入する暴走車両への注意も払わなければならず、安全かつ迅速に作業することが困難であった。
【0004】
そのような二次災害を抑制するための道路用警報装置について、例えば、特許文献1には、車両のタイヤが踏圧することによって空気圧を発生する踏圧部と、該空気圧を警報発生手段に伝達する空気圧伝達部と、該空気圧が伝達されたことを合図に警音を発する警音発生手段とを有する道路用警報装置が開示されている。
該警報発生装置は、低コストで簡便な構成であるが、上記踏圧部、伝達部及び警報発生手段が、連接され一体化された構造であるがゆえ、該装置の設置、撤収作業が煩雑であるという問題点が指摘されている。
すなわち、中空のチューブ体からなる踏圧部及び空気圧伝達部は、通常少なくとも数十メートルから数百メートルの長さを要するが、該文献に開示されているように巻き取り式の中空チューブ体を用いた場合においても、その設置、撤収作業に非常に多大な時間を要する。
従って、より簡便に設置、撤収が可能な道路用警報装置が求められている。
さらに、該文献に開示されている中空チューブ体からなる伝達部は非常に長いため、車両が踏圧することによって生じた空気圧変化が、該伝達部内において圧力損失による空気圧の低下を引き起こし、ひいては、装置の警報感度の低下を招く虞があった。従って、より高感度で確実な警報を発生することができる道路用安全システムが望まれていた。
【0005】
特許文献2には、カラーコーン等からなる車両誘導体に取り付ける道路用安全装置が開示されている。
該文献によれば、車両の衝突により、車両誘導体に取り付けられた衝突部材が、圧電素子に衝突して発電する発電部材を具備し、この発電部材の電力により車両の衝突を報知する道路用安全装置が開示されている。
しかしながら、当該道路用安全装置によれば、車両の衝突を前提としているため、数多くの車両誘導体を設置する必要があり、事故等による緊急時の作業には適さない可能性があった。
【0006】
【特許文献1】特開2007−309078号公報
【特許文献2】特開2003−253630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、災害現場に進入する車両による、現場作業者らの二次災害を防止するために、災害現場付近に進入のおそれがある車両を未然に判別し、作業者らに、極めてたやすく可聴できる可聴信号、視認できる可視信号、体感できる体感信号等により危険警告を与えることができ、設置、撤去が極めて容易で作業性に優れ、従来のものよりも低コストで簡便な構成で、繰り返しの使用にも耐えうる道路用安全システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、災害現場の後方に、走行車両が踏圧することによって空気圧変化を生ずる踏圧部と、該空気圧変化を感知可能な圧力センサーとを具備し、該圧力センサーの判別に応じて外部出力信号を発信可能な道路用安全装置を設置し、他方、該外部出力信号を受信することによって警音を発する警音発生装置を有する道路用警報装置を作業者近傍に設置することで、速やかに、災害現場の作業者に警告、注意を与えることができることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は以下の(1)〜(7)に示すものである。
【0009】
(1)車両が踏圧することにより内部に空気圧変化を生ずる車両踏圧部位及び該空気圧変化を感知可能な圧力センサー部位が接続されてなる踏圧部と、
該空気圧変化を感知し外部出力信号を発信する発信部と、
を少なくとも有することを特徴とする道路用安全装置。
【0010】
(2)前記車両踏圧部位が、
中空チューブ体であることを特徴とする前記(1)に記載の道路用安全装置。
【0011】
(3)前記踏圧部と、前記発信部とが、
連接されてなることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の道路用安全装置。
【0012】
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の道路用安全装置より発信された外部出力信号を受信することによって、
受信部が信号警報を発することを特徴とする警報発生装置。
【0013】
(5)前記信号警報が、
可聴信号、可視信号及び体感信号からなる群から選ばれる少なくとも1つの信号警報であることを特徴とする前記(4)に記載の警報発生装置。
【0014】
(6)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の道路用安全装置と、
前記(4)又は(5)に記載の警報発生装置と、
が少なくとも具備されてなる道路用安全システムにおいて、
前記道路用安全装置と、前記警報発生装置と、が道路上にそれぞれ離間して配置されることを特徴とする道路用安全システム。
【0015】
(7)圧力センサーが接続された中空チューブ体からなる車両踏圧部位と、外部出力信号を発信する発信部と、を有する道路用安全装置、
及び、
当該道路用安全装置とは離間して設置された受信部を具備する警報発生装置
を用い、
車両の通過によって前記車両踏圧部位に生じた空気圧変化を前記外部出力信号により受信部に送り、
前記警報発生装置により、警報を与えることを特徴とする道路用作業者への警報方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の道路用安全システムによれば、警報発生装置を災害現場にいる作業者の近くに設置でき、周囲が喧騒な状況においても作業者に極めてたやすく可聴信号、可視信号、体感信号を与えることができる。また、設置、撤去が極めて容易で作業性に優れ、迅速な作業を可能とする。また本システムは低コストで簡便な構成であるにもかかわらず、繰り返しの使用に十分耐えることができる。従って、本発明の道路用安全システム及び警報方法を用いれば、災害現場に進入する暴走車両による、作業者らの二次災害を抑制でき、作業者らが、安全かつ迅速に作業できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
まず本発明の道路用安全装置について図面を参照し詳細に説明する。
図1は、本発明の道路用安全装置の構成の一例を示す模式図である。
本発明の道路用安全装置は、車両が通過し踏圧することによってその内部に空気圧変化を発生する車両踏圧部位1と、
該空気圧変化を感知可能な圧力センサー部位4とが接続されてなる踏圧部と、
該圧力センサーの判別に応じて外部出力信号を発信可能な発信部2を具備している。
【0018】
該発信部2は図1のように車両誘導体3に付設されていても良い。
【0019】
前記車両踏圧部位は、車両がその上を通過、踏圧した時に、圧力センサーにて感知可能な空気圧変化を引き起こすようなものを用いることができ、
好ましくは中空チューブ体であることが好ましい。
該中空チューブ体の長さは通常1〜50mのものを使用でき、また、1本であっても複数本あっても構わない。
本発明に用いることができるこの中空チューブ体とは、
液体や気体を漏れることなく移送することができる管状のチューブ体であり、柔軟性、可撓性を有するホース状あるいはチューブ状のものを指し、車両に踏圧された前後に、筒状に回復可能なものを使用することができる。
中空チューブ体は走行車両のタイヤの踏圧により空気圧を発生させることができればよく、その材質は軟質塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーンゴム、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、ナイロン樹脂等が使用でき、特に限定されない。
その具体例としては、エアインパクトレンチやエアドリル等の空圧工具に使用するエアーホース、エアチューブが挙げられる。
【0020】
本発明に用いることができる前記圧力センサー部位とは、
空気圧の変化を内部の感圧素子にて電気信号に変換し、予め設定した圧力を超えたときに電気信号として出力するものを指す。
踏圧部位によって感知する圧力は瞬間的なものであり、高速応答性に優れた圧力センサーを用いる必要があるため、好ましくは1〜50ミリ秒の応答速度の条件を満たすものを使用することができる。
その具体例としてはシリコンダイヤフラム式、ステンレスダイヤフラム式の圧力センサーが挙げられる。
【0021】
前記車両踏圧部位は圧力センサー部位に接続され、車両が踏圧したことを判別できるようになっており、本発明においては、車両踏圧部位及び圧力センサーを合わせたものを踏圧部と言う。
また、本発明において車両とは事故処理等の作業に行う車線規制内に進入する車両のことを指す。
【0022】
本発明の道路用安全装置は、前記車両踏圧部位を車両が踏圧したと判別された場合に、外部に出力信号を発信できる発信部を有していることを特徴とする。この発信部は圧力センサーを介して、好ましくは前記踏圧部と連接されており、図1のように伝達部によって接続されていても良い。
この発信部は、図1に示したコーンのような車両誘導体に付設することができる。
車両誘導体の外観や形状には種々の形態があり、矢印板やカラーコーン、停止表示機材、誘導用の人形、柵、看板等を用いることができ、特に制限されるものでない。
また、本発明において発信部とは、外部に出力信号を発信可能な発信装置のことを言い、出力信号とは、無線信号、電波信号、光信号、赤外線信号、超音波信号、音波信号等のことを指す。
また発信装置とは、情報を送り出す電気通信装置のことを意味し、好ましくは電波を使用した送信装置のことを言い、主に高周波信号を発生する回路、信号を所定の電力まで増大させる増幅回路及び情報を高周波信号に乗せる変調回路により構成されるものを指す。
そのような発信部としては具体的に、トランシーバーが挙げられる。
【0023】
本発明の道路用安全装置は、車両踏圧部位1を収納可能な収納部を具備していてもよく、折りたたみや巻き取りによって収納できるものが好ましい。巻き取り式の場合、手回しハンドルによる手動式、モーターを利用する自動式によるものでもよく、特に限定されない。
【0024】
次に本発明の警報発生装置について説明する。
本発明の警報発生装置は、上記道路用安全装置より発信された外部出力信号を受信することによって信号警報を発することを特徴とするものである。
当該警報発生装置には、道路用安全装置より発信された信号を受信できる受信部(信号を受け取り、復調して情報を復元する装置)が具備されている。
そのような受信部としては、レシーバー、チューナーが挙げられる。
【0025】
さらに本発明の警報発生装置には、受信部と連動し信号警報を発生可能な警報部も具備している。
ここで、信号警報として好ましくは可聴信号、可視信号及び体感信号からなる群から選ばれる少なくとも1つの信号警報であることが好ましい。
ここで、前記可聴信号とは、電子ブザーやサイレン、ベル等周囲の人間に警告、警報を与える信号のことを示す。
また、前記可視信号とは、工事現場等で使用する回転灯やフラッシュ式ライトのことを示す。
また、前記体感信号とは、携帯電話やゲーム機のコントローラ等に利用されている物理的に振動を与えるバイブレーター等のことを示す。
そのような信号警報を発生することができる警報部としては、警報付回転灯が挙げられる。
【0026】
本発明の警報発生装置は受信部及び警報部を風雨や衝撃から防護するため保護容器を有していても良く、その形状、形態は特に限定されない。保護容器の材質はその使用環境から金属やプラスチックを好ましく用いることができる。
【0027】
次に本発明の道路用安全システムについて説明する。本発明の道路用安全システムは上記した道路用安全装置と、警報発生装置とが少なくとも具備されてなることを特徴とする。
【0028】
図2に本発明のシステム概念のブロック図を示す。
図3に、本発明の道路用安全システムの適用形態の一例を表す概略図を示す。
上記道路用安全装置5が、事故車両(あるいは道路工事現場)7の後方に一定の距離をとって設置されている。
ここで、一定の距離とは通常数十メートル〜数百メートルの距離であり、特に限定されるものでない。
そして、事故車両(あるいは道路工事現場)7の近傍には、作業を行う作業者9に警報を与えるための警報発生装置6が設置されている。この警報発生装置6は、道路用安全装置5とは離間して設置されており、該道路用安全装置5の踏圧部が走行車両8により踏圧されると、空気圧変化を感知し、発信部が出力信号を発生し、当該信号を受信した警報発生装置6が警報を発し、作業者9に警報を与える仕組みとなっている。
【0029】
本発明の警報方法は、好ましくは上記に説明した道路用安全システムを用いた警報方法であり、災害現場等の後方数十〜数百mの車両走行車線上に走行車両が踏圧部を踏圧できるように配置し、一方、作業者近傍に警報発生装置を配置し用いる。道路用安全装置及び警報発生装置の配置位置は適宜選択することができ、特に制限されない。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を挙げ、本発明をより詳細に説明する。
【0031】
アルミ製保護容器に送信部とダイヤフラム式圧力センサーを接続・固定し、ダイヤフラム式圧力センサーと踏圧部となる中空チューブ(エアーホース)接続させ、道路用安全装置とした。道路用安全装置は車両誘導体であるカラーコーンにセットした。
また、アルミ製保護容器に受信部と警報付き回転灯を接続・固定し、警報部とした。
作業車両および作業者の後方100mの位置にカラーコーンに取り付けた車両進入感知部をセットして規制ラインとした。100km/hで走行する車両が踏圧検知部(中空チューブ5m)を踏圧すると踏圧部が圧縮、変形し直ちに圧力センサーを介し、送信部、受信部を経て警報器付き回転灯が警報および回転灯が発動し、周囲の人員に注意を喚起することができた。人員は車両到達までに2〜3秒程あり、ショック体勢や安全域への避難ができたことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の道路用安全システムは、高速道路等で生じた災害の処理作業に従事する作業者への二次災害防止に資するものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の道路用安全装置の構成の一例を示す模式図。
【図2】本発明の道路用安全システムのブロック図。
【図3】本発明の道路用安全システムの適用形態の一例を示す概略図
【符号の説明】
【0034】
1 車両踏圧部位
2 発信部
3 車両誘導体
4 圧力センサー部位
5 道路用安全装置
6 警報発生装置
7 事故車両
8 車両
9 作業者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が踏圧することにより内部に空気圧変化を生ずる車両踏圧部位及び該空気圧変化を感知可能な圧力センサー部位が接続されてなる踏圧部と、
該圧力センサーの判別に応じて外部出力信号を発信する発信部と、
を少なくとも有することを特徴とする道路用安全装置。
【請求項2】
前記車両踏圧部位が、
中空チューブ体であることを特徴とする請求項1に記載の道路用安全装置。
【請求項3】
前記踏圧部と、前記発信部とが、
連接されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の道路用安全装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の道路用安全装置より発信された外部出力信号を受信することによって、
受信部が信号警報を発することを特徴とする警報発生装置。
【請求項5】
前記信号警報が、
可聴信号、可視信号及び体感信号からなる群から選ばれる少なくとも1つの信号警報であることを特徴とする請求項4に記載の警報発生装置。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の道路用安全装置と、
請求項4又は5に記載の警報発生装置と、
が少なくとも具備されてなる道路用安全システムにおいて、
前記道路用安全装置と、前記警報発生装置と、が道路上にそれぞれ離間して配置されることを特徴とする道路用安全システム。
【請求項7】
圧力センサーが接続された中空チューブ体からなる車両踏圧部位と、外部出力信号を発信する発信部と、を有する道路用安全装置、
及び、
当該道路用安全装置とは離間して設置された受信部を具備する警報発生装置
を用い、
車両の通過によって前記車両踏圧部位に生じた空気圧変化を前記外部出力信号により受信部に送り、
前記警報発生装置により、警報を与えることを特徴とする道路用作業者への警報方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−65403(P2010−65403A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230595(P2008−230595)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.カラーコーン
【出願人】(000228349)日本カーリット株式会社 (269)
【Fターム(参考)】