説明

道路維持車両

【課題】凍結防止剤散布車を夏期等において、その凍結防止剤収容ホッパを利用して給水車や散水車として簡単に使用することができる道路維持車両を提供する。
【解決手段】散布車本体1上に設置している凍結防止剤収容ホッパ2内に水容器14を取り外し自在に設置すると共に上記凍結防止剤収容ホッパ2の下端開口部2aを通じて、この水容器14の底部に設けている管接続口15に給水管9を接続することにより給水車を構成する一方、給水管9に代えて管接続口15に散水配管19の一端部を接続すると共に他端部を散布車本体1上に搭載している溶液タンク8側に連通させることにより、上記水容器14とこの溶液タンク8内の水を散水管9を通じて散布車本体1の後端部下面に装着している散水ノズル9aから散水する散水車を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冬期において凍結防止剤散布車として使用する車両を、夏期等において給水車や散水車等として利用可能にした道路維持車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、冬期において使用される道路維持車両としては、道路に凍結防止剤を散布する散布車があり、夏期等において使用される車両として道路に散水を行う散水車があり、また、地震等の災害時に使用される給水車も広く知られている。
【0003】
上記凍結防止剤散布車は、例えば、特許文献1に記載されているように、散布車本体に設置した凍結防止剤収容ホッパと、この凍結防止剤収容ホッパから供給される凍結防止剤を後方に送り出す搬送手段と、該搬送手段から送り出される凍結防止剤を散布する散布装置とを備え、さらに、湿潤凍結防止剤を散布する場合には、溶液タンクを搭載して散布される乾燥塩等の凍結防止剤に溶液タンク内の溶液を噴霧することにより湿潤させて路面に散布するように構成しているが、この凍結防止剤散布車は、降雪時期に使用されるものであって、その時期が終わると活用されることなく休車状態となり、従って、稼働率が悪く維持管理費が嵩むといった問題点がある。
【0004】
一方、夏期等において道路や樹木に散水を行う散水車としては、例えば、特許文献2に記載されているように、車体上に散水タンクを設置し、この散水タンク内の水を散水管によって路面等散水するように構成しているが、散水車は、降雪時や路面凍結期間においては使用されることなく、モータプール等に保管されているので、上記降雪時に使用される凍結防止剤散布車と同様に稼働率が悪いといった問題点がある。
【0005】
このような問題点を解消するために、例えば、特許文献3に記載されているような道路維持補修用車両が開発されている。即ち、この道路維持補修用車両は、予め、散水装置や凍結防止剤散布装置、高圧洗浄装置、リフト装置、除雪装置等の各種の道路維持補修用装置を準備しておき、作業に応じた装置を車両に搭載して使用するように構成している。
【0006】
【特許文献1】特開2000−27139号公報
【特許文献2】特開平11−350443号公報
【特許文献3】特開2005−206059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような道路維持補修用車両によれば、既存の凍結防止剤散布車を利用するのではなく、その車両を含めて全ての道路維持補修用装置を新規に製造しておかねばならないために、極めて高価につき不経済であるばかりでなく、所望の道路維持補修を行うための装置を車両に搭載する場合、先に搭載、設置している道路維持補修用装置を全て車両から撤去する作業と、その撤去後に次に使用する道路維持補強用装置の搭載、設置作業を行わなければならないため、その作業が著しく煩雑であって多大な手間と労力を要するといった問題点がある。
【0008】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、凍結防止剤散布車からなる道路維持車両の構造を変更することなく、この道路維持車両を散水、給水、洗浄等の使用目的に応じた車両として簡単に利用可能に構成した道路維持車両を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の道路維持車両は、請求項1に記載したように、散布車本体に設置した凍結防止剤収容ホッパと、この凍結防止剤収容ホッパから供給される凍結防止剤を後方に送り出す搬送手段と、該搬送手段から送り出される凍結防止剤を散布する散布装置とを備えた凍結防止剤散布車からなる道路維持車両において、上記凍結防止剤収容ホッパ内に水容器を着脱自在に設置すると共にこの水容器に散水用、給水用配管を連結、連通させた構造としている。
【0010】
このように構成した道路維持車両において、請求項2に係る発明は、上記凍結防止剤収容ホッパ内の中央部に前後方向に水平状に架設されているコンベヤカバーに水容器載置台を着脱自在に支持させ、この水容器載置台上に、底部に凍結防止剤収容ホッパの下端開口部に臨ませている管接続口を有する水容器を設置するように構成したことを特徴とし、請求項3に係る発明は、上記水容器の底部に設けている管接続口に散水管又は給水管を接続するように構成したことを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に係る発明は、散布車本体の後端部下面に先端に散水ノズルを設けた散水管を配設していると共にこの散水管を散布車本体に搭載されている溶液タンクに溶液ポンプを介して連結、連通させてあり、凍結防止剤収容ホッパ内に水容器を設置すると共にこの水容器と上記溶液タンクに連結した散水管とを散水配管により連結、連通して散水車を構成したことを特徴とし、請求項5に係る発明は、上記溶液ポンプを切換弁を介して散水管と凍結防止剤散布円盤上に配設した水噴霧ノズルを有する噴霧管とに連結、連通させていることを特徴とする。
【0012】
上記請求項4又は請求項5に記載の発明において、請求項6に係る発明は、溶液タンクと溶液ポンプ間の配水管に分岐管を接続してあり、この分岐管の管路中に高圧ポンプを介装すると共に該分岐管の先端に高圧水噴射ノズルを取付けていることを特徴とし、請求項7に係る発明は、上記溶液ポンプを切換弁を介して散水管と、凍結防止剤散布円盤上に配設した水噴霧ノズルを有する噴霧管と、先端に水容器内を攪拌する攪拌ノズルを備えた送水管とに連結、連通させていることを特徴とする。
【0013】
また、上記請求項1又は請求項2に記載の発明において、請求項8に係る発明は、水容器の底部に設けている管接続口に凍結防止剤収容ホッパの下端開口部を通じて給水管を着脱自在に連結、連通させるように構成している。
【0014】
請求項9に係る発明は、上記請求項1乃至請求項4、又は請求項8に記載した水容器を厚手の防水布によって折り畳み可能な袋形状に形成してあり、その天壁面に注水口を、底部に管接続口を設けていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、凍結防止剤散布車からなる道路維持車両において、散布車本体に設置した凍結防止剤収容ホッパ内に水容器を着脱自在に設置すると共にこの水容器に散水用、給水用配管を連結、連通させるように構成しているので、冬期における降雪時期には従来通り、凍結防止剤収容ホッパ内に凍結防止剤を投入して道路に凍結防止剤を散布する散布車として使用できると共に、夏期においてはこの凍結防止剤散布車をそのまま使用して凍結防止剤収容ホッパを撤去することなくその広い内部空間を水容器の配設空間部に有効利用することができ、しかも、凍結防止剤収容ホッパはその下端が下方に配設している凍結防止剤搬送装置に向かって開口しているので、この下端開口部を利用して凍結防止剤収容ホッパ内に設置した水容器の底部に散水用や給水用の配管を簡単に接続することができ、既存の凍結防止剤散布車をそのまま散水車や給水車として有効に利用することができて、通年稼働時間を増加させ、維持管理コストの軽減を図ることができる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、凍結防止剤収容ホッパ内の中央部に前後方向に水平状に架設されているコンベヤカバーに水容器載置台を着脱自在に支持させ、この水容器載置台上に、底部に凍結防止剤収容ホッパの下端開口部に臨ませている管接続口を有する水容器を設置するように構成しているので、凍結防止剤収容ホッパ内に設けているコンベヤカバーを水容器の支持部材に使用して、凍結防止剤収容ホッパ内への水容器の設置が簡単且つ確実に行えると共に水容器の底部に設けている管接続口を凍結防止剤収容ホッパの下端開口部に臨ませた状態にすることができ、この管接続口に凍結防止剤収容ホッパの下端開口部を通じて請求項3に記載したように散水管や給水管を接続することにより、簡単に散水車や給水車としての道路維持車両を構成することができる。
【0017】
また、請求項4に係る発明によれば、凍結防止剤散布車の後端部には、凍結防止剤散布装置と共に先端に散布ノズルを設けた散水管を配設してあり、この散水管を、凍結防止剤を湿潤させるために散布車本体に搭載されている溶液タンクに溶液ポンプを介して連結、連通させているので、散布車として使用する際には、凍結防止剤収容ホッパ内に水容器を設置すると共にこの水容器と上記溶液タンクに連通させている散水管とを散水配管によって接続する作業を行うだけで、簡単に散布車を構成することができると共に、水容器内の水と共に散布車本体に搭載している溶液タンクも水タンクとして利用することができ、多量の水を散水することができる。
【0018】
その上、請求項5に係る発明によれば、上記溶液ポンプを切換弁を介して散水管と凍結防止剤散布円盤上に配設した水噴霧ノズルを有する噴霧管とに連結、連通させているので、散水車として使用する場合には、溶液ポンプを散水管側に連通させることによって、溶液タンク内の水を散水管に供給することができ、凍結防止剤散布車として使用する場合には、切換弁の切換えによって溶液ポンプを水噴霧ノズル側に連通させれば、凍結防止剤収容ホッパから搬送手段を介して散布円盤上に落下する乾燥状態の凍結防止剤に水を噴霧して湿潤凍結防止剤を作成しながら道路に散布する湿潤凍結防止剤散布車として使用することができる。
【0019】
また、請求項6に係る発明によれば、溶液タンクと溶液ポンプ間の配水管に分岐管を接続してあり、この分岐管の管路中に高圧ポンプを介装すると共に該分岐管の先端に高圧水噴射ノズルを取付けているので、上記配水管を利用して水容器や溶液タンク内の水を車体や路面の洗浄水として噴射ノズルから噴出させることができる。
【0020】
さらに、上記請求項5に記載の発明において、請求項7に係る発明によれば、溶液ポンプを切換弁を介して散水管と、凍結防止剤散布円盤上に配設した水噴霧ノズルを有する噴霧管と、先端に水容器内を攪拌する攪拌ノズルを備えた送水管とに連結、連通させているので、降雪期においても凍結防止剤収容ホッパ内に水容器を設置しておき、この水容器に塩等の乾燥凍結防止剤を投入すると共に上記切換弁を送水管側に切り換えれば、溶液ポンプによって溶液タンク内の水を上記水容器内に噴射させて水容器内の凍結防止剤と攪拌、混合させることにより融雪液を簡単に作成することができ、この融雪液の作成後、上記切換弁を散水管側に切り換えれば、水容器内の融雪液を溶液ポンプの作動によって散水管を通じて路面に円滑に噴射させることができる。
【0021】
一方、請求項8に係る発明によれば、水容器の底部に設けている管接続口に凍結防止剤収容ホッパの下端開口部を通じて給水管を着脱自在に連結、連通させるように構成しているので、ポンプなどを使用することなく、水容器内から蛇口付給水管等の給水管に水を自然流下させながら簡単に給水できる給水車として活用することができる。
【0022】
また、上記水容器として請求項9に係る発明によれば、厚手の防水布からなり、折り畳み可能な袋形状に形成しているので、安価に提供できるのは勿論、使用しない時には折り畳んでコンパクトに収納、保管しておくことができ、従って、水容器の維持管理が効率的に行うことができると共に、合成樹脂製や金属製の容器とは異なり、軽量にして且つ折り畳まれているので、使用時には単数の作業員によって凍結剤収容ホッパ内への設置作業が簡単に行えるものであり、さらに、その天壁面に注水口を設け、且つ、底部に管接続口を設けているので、管接続口側を閉止した状態で注水口からこの水容器内に水を注入することによって凍結剤収容ホッパの内部形状に沿って膨張した水容器を容易に得ることができ、凍結剤収容ホッパ内に安定した状態で設置しておくことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1は湿式凍結防止剤散布車からなる道路維持車両の簡略側面図であって、1は散布車本体、2は該散布車本体1の車台上に搭載、設置している凍結防止剤収容ホッパで、その両側壁面の下半部を下端に向かって徐々に狭くなる漏斗状に形成していると共に底部を凍結防止剤を下方に落下排出する開口部2aに形成してあり、この開口部2aの下方に沿って、該開口部2aから排出される凍結防止剤を後方に搬送するベルトコンベア等からなる搬送手段3を備えている。
【0024】
さらに、散布車本体1の後端下部に搬送手段3から送り出される凍結防止剤の散布装置4を配設していると共にこの散布装置4を囲むようにして搬送手段3からの凍結防止剤を受け入れる筒状のシュート5を設けている。なお、散布装置4は周知のようにモータ4aによって回転させられる垂直回転軸4bの下端にシュート5から下方に突出した散布円盤4cを一体に設けてなるものである。
【0025】
また、散布車本体1の車台前部上に凍結防止剤散布車の各種機器類を作動させるための油圧タンク6と油圧ポンプ7を設置していると共に上記凍結防止剤収容ホッパ2の両側方の車台上に乾燥凍結防止剤を湿潤化させるための水、又は、予め、水と乾燥した塩(凍結防止剤)とを混合してなる溶液を収容した複数個の溶液タンク8を搭載している。これらの全ての溶液タンク8は図2の配管系統図に示すように、互いに接続管によって連通していると共に一つの溶液タンク8に散水管9の一端部を連結、連通してあり、この散水管9の他端部(先端部)を散布車本体1の後端部下面にまで配管してこの後端部下面に取付けている散水ノズル9aに連通させている。
【0026】
散水管9の管路中には、散布車本体1の車台上に設置している溶液ポンプ10を介装してあり、この溶液ポンプ10の駆動モータ10a を上記油圧ポンプ7により油圧回路を介して作動させるように構成している。さらに溶液ポンプ10と散布ノズル9a間の散水管9の管路中に切換弁11を設けている。この切換弁11は、溶液ホンプ10の作動による送水される溶液タンク8側からの水をこの切換弁11に接続している上記散水ノズル9a側の散水管9と水噴霧管12と送水管13とにそれぞれ切換えて送り込むように構成している。
【0027】
水噴霧管12の先端に取付けている水噴霧ノズル12a は、上記散布装置4の凍結防止剤散布円盤4bの上方におけるシュート5の内壁面に取付けられていて、シュート5内を落下する乾燥状態の凍結防止剤に水を噴霧して湿潤させるようにしている。上記散水ノズル9aを有する散水管9と水噴霧ノズル12a を有する水噴霧管12とは、溶液タンク8や溶液ポンプ7と共に凍結防止剤散布車の構成の一部として常備されているが、送水管13はその先端に設けている攪拌ノズル13a によって後述する水容器14内を攪拌するものであって、不使用時には切換弁11側から取り外されている。
【0028】
水容器14は、厚手の防水布製であって折り畳み可能な袋形状に形成されてあり、不使用時には図7に示すように、コンパクトに折り畳んで効率よく保管可能に構成していると共に、使用時には、図6に示すように内部に注入する水の圧力によって膨張させて、図4、図5に示すように凍結剤収容ホッパ2の内部形状に適合する形態となるように構成している。即ち、凍結剤収容ホッパ2内に設置した状態においては、この水容器14は、その両側壁面の下半部が凍結防止剤収容ホッパ2の両側壁面と同じ傾斜角度でもって下方に向かって徐々に幅狭くなる方向に傾斜する傾斜壁面を構成するように形成して、該両側壁面の外側面を凍結防止剤収容ホッパ2の両側壁面の内側面に当接、受止させるように構成している。
【0029】
この水容器14の天壁面は全面的に密閉されていて、その天壁面の適所に、水容器14内に連通している短筒形状の可撓性を有する注水口22を装着していると共に、底部の適所に、同じくこの水容器14内に連通している短筒形状の可撓性を有する管接続口15を下方に向かって突設している。一方、凍結防止剤収容ホッパ2内の中央部には図3に示すように、該凍結防止剤収容ホッパ2内に投入される凍結防止剤を分散させるための断面山形状のコンベヤカバー2bが前後方向に水平状に架設されてあり、このコンベヤカバー2b上に上記図4、図5に示すように、支持フレーム16を介して水容器載置台17を設置し、該水容器載置台17に水容器14をその底部に設けている上記管接続口15を載置台17から下方に突出させた状態にして凍結防止剤収容ホッパ2の下端開口部2aから下方に突出させるようにしている。
【0030】
そして、水容器14は使用時に、上記凍結防止剤収容ホッパ2内に上記支持フレーム16、載置台17を介して設置され、注水口22から内部に水を注入、充満させることにより膨張させるように構成している。なお、上記支持フレーム16は、両側端面が凍結防止剤収容ホッパ2の両側壁面の内側面に当接状態で受止させる傾斜端面に形成した横長の板材からなり、その横幅方向の中央部に上記コンベヤカバー2bに係合可能な山形状の凹部を形成している。
【0031】
また、上記水容器14の管接続口15に凍結防止剤収容ホッパ2の下端開口部を通じて給水管18や散水配管19の先端部を着脱自在に連結、連通させるように構成している。この散水配管19はその基端側を上記溶液タンク8に連通している上記散水管9に接続している。
【0032】
さらに、溶液タンク8と溶液ポンプ10間の散水管9に分岐管20を着脱可能に接続して、この分岐管20の管路中に介装している高圧ポンプ21の作動によって分岐管20の先端に取付けている高圧水噴射ノズル20a から高圧水を噴射させるように構成している。21a は上記高圧ポンプ21の駆動モータで、この駆動モータ21a は凍結防止剤散布車の搬送手段3や散布装置4、溶液ポンプ7等を駆動する上記溶液ポンプ7に接続してこの溶液ポンプ7により作動させるように構成している。図2にはこれらの全ての管からなる配管回路を示している。なお、溶液タンク8を設置していない乾燥凍結防止剤散布車の場合には、上記散水管9を水容器14の管接続口15に接続させるようにしている。
【0033】
このように構成した凍結防止剤散布車からなる道路維持車両の使用態様を説明すると、冬期においてはこの凍結防止剤散布車によって路面に凍結防止剤を散布するものであるが、その際、凍結防止剤収容ホッパ2内に投入した凍結防止剤を路面に散布する場合には、凍結防止剤収容ホッパ2内には水容器14が設置されてなく、さらに、溶液タンク8と水容器14間を接続する散水配管19や送水管13、分岐管、給水管18は配管されていない状態にして凍結防止剤の散布作業を行う。
【0034】
この散布作業は周知のように、凍結防止剤収容ホッパ2に乾燥した塩等の凍結防止剤を投入、収容して散布現場にまで走行し、現場において凍結防止剤収容ホッパ2の下端開口部2aに沿って配設している凍結防止剤搬送手段3を作動させて凍結防止剤をこの搬送手段3により散布車本体1の後端側にまで搬送し、該搬送手段3からシュート5内に落下させる。一方、この凍結防止剤散布作業時には、管路中の上記切換弁11を水噴霧管12側に切り換えてあり、溶液ポンプ10を作動させて溶液タンク8内の水を散水管9から切換弁11、水噴霧管12を通じて水噴霧ノズル12a からシュート5を落下する凍結防止剤に噴射することにより湿潤化させ、この湿潤凍結防止剤を散布装置4の散布円盤4cによって路面に散布するものである。
【0035】
また、冬期においても凍結防止剤収容ホッパ2内に水容器14を配設して融雪車として使用することができる。即ち、凍結防止剤収容ホッパ2内に水容器14を設置すると共に切換弁11に送水管13を連結しておき、水容器14に塩等の乾燥した凍結防止剤を収容したのち、上記切換弁11を送水管13側に切り換えて溶液ポンプ10を作動させると、溶液タンク8内の水が散水管9から切換弁11、送水管13を通じて水容器14内に挿入している該送水管13の先端攪拌ノズル13a から水容器14内に供給され、攪拌ノズル13a からの噴流によって水容器14内で水と凍結防止剤が攪拌、混合されて融雪液が調製(作成)される。
【0036】
この融雪液の作成後、水容器14の管接続口15と散水管9とを散水配管19によって連結、連通し、上記切換弁11を散水管9の散水ノズル9a側に切り換えて溶液ポンプ10を作動させると、水容器14内の融雪液を散水配管19から散水管9を通じて散水ノズル9aから路面に散布することができる。なお、上記散水配管19は融雪液の作成前、或いは、作成中に水容器14の管接続口15に接続させておいてもよい。
【0037】
次に、上記凍結防止剤散布車を夏期等において散水車として使用する場合には、まず、凍結防止剤収容ホッパ2内に図8に示すように上記水容器14を設置すると共にこの水容器14から底部に設けている管接続口15に凍結防止剤収容ホッパ2の下端開口部2aを通じて散水配管19の一端部を接続し、この散水配管19の他端部を上記散水管9に接続した状態にする。凍結防止剤収容ホッパ2内への水容器14の設置は、コンベヤカバー2bに前後方向に所定間隔を存して数枚の支持フレーム16を支持させ、これらの支持フレーム16間上に水容器載置台17を敷設したのちこの載置台17上に設置し、注水口22に注水用ホース(図示せず)を接続して該水容器14内に水を注入、充満させる。なお、送水管13や分岐管20は配管されていない。
【0038】
この状態にしたのち、水容器14内に水を充満させた状態で走行し、散布場所において切換弁11を散水管9の散水ノズル9a側に連通するように切り換えると共に溶液ポンプ10を駆動すると、水容器14内の水が散水配管19から散水管9、切換弁11を通じて散布車本体1の後端下面に装着している散水管9の先端散水ノズル9aから路面に散布される。この際、散水管9に連通している溶液タンク8内にも水を収容しておくことによって、該溶液タンク8内の水を散水管9を通じて散水ノズル9aから散布することができる。なお、散水管9と散水配管19の管路中に、開閉弁を設けておき、この開閉弁によって溶液タンク8に対する散水管9や散水配管19の連通の遮断を行うように構成しておくことが望ましい。
【0039】
また、凍結防止剤収容ホッパ2内に水容器14を設置してなる上記凍結防止剤散布車を車体の洗浄や路面の洗浄車両として使用する場合には、上記溶液タンク8と溶液ポンプ10との散水管9中に設けている継手部材(図示せず)に先端に高圧水噴射ノズル20a を設けている分岐管20を接続する(図9参照)。さらに、この分岐管20の管路中に設けている高圧ポンプ21の駆動モータ21a を上記油圧ポンプ7の油圧回路に接続してこの油圧ポンプ7により作動させるようにする。
【0040】
このように構成して上記溶液ポンプ10の不作動により切換弁11側の散水管9への水の供給を遮断した状態にして高圧ポンプ21を駆動すると、水容器14内の水や溶液タンク8内の水が分岐管20を通じて高圧水噴射ノズル20a から噴射させ、車体の洗浄や路面の洗浄を行う。
【0041】
次に、凍結防止剤収容ホッパ2内に水容器14を設置してなる上記凍結防止剤散布車を給水車として使用する場合には、図108に示すように、散布車本体1を給水場所で停止したのち、路面等に給水管18を設置し、この給水管18の基端側を水容器14の底部に突設している管接続口15に凍結防止剤収容ホッパ2の下端開口部2aを通じて接続し、管接続口15に設けている開閉弁(図示せず)を開くことによって水容器14内の水を水頭差によって給水管18内に自然流下させて給水するものである。なお、以上の実施の形態においては、水容器として折り畳み自在に形成した防水布製容器を使用しているが、凍結剤収容ホッパ2の傾斜内側壁面に接した状態で設置可能な一定形状を有する合成樹脂製の水容器や金属製の水容器であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】凍結防止剤散布車の側面図。
【図2】配管系統図。
【図3】凍結防止剤収容ホッパの簡略縦断正面図。
【図4】水容器を設置した状態の簡略縦断正面図。
【図5】その縦断側面図。
【図6】水容器の斜視図。
【図7】折り畳んだ状態の斜視図。
【図8】水容器を設置して散水車として使用した状態の側面図。
【図9】洗浄車両として使用した状態の側面図。
【図10】給水車として使用した状態の側面図。
【符号の説明】
【0043】
1 散布車本体
2 凍結防止剤収容ホッパ
3 搬送装置
4 散布装置
5 シュート
6 油圧タンク
7 油圧ポンプ
8 溶液タンク
9 散水管
10 溶液ポンプ
11 切換弁
12 水噴霧管
13 送水管
14 水容器
15 管接続口
16 支持フレーム
17 水容器載置台
18 給水管
19 散水配管
20 分岐管
20a 高圧水噴射ノズル
21高圧ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
散布車本体に設置した凍結防止剤収容ホッパと、この凍結防止剤収容ホッパから供給される凍結防止剤を後方に送り出す搬送手段と、該搬送手段から送り出される凍結防止剤を散布する散布装置とを備えた凍結防止剤散布車からなる道路維持車両において、上記凍結防止剤収容ホッパ内に水容器を着脱自在に設置すると共にこの水容器に散水用、給水用配管を連結、連通させたことを特徴とする道路維持車両。
【請求項2】
凍結防止剤収容ホッパ内の中央部に前後方向に水平状に架設されているコンベヤカバーに水容器載置台を着脱自在に支持させ、この水容器載置台上に、底部に凍結防止剤収容ホッパの下端開口部に臨ませている管接続口を有する水容器を設置するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の道路維持車両。
【請求項3】
水容器の底部に設けている管接続口に散水管又は給水管を接続するように構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の道路維持車両。
【請求項4】
散布車本体の後端部下面に先端に散水ノズルを設けた散水管を配設していると共にこの散水管を散布車本体に搭載されている溶液タンクに溶液ポンプを介して連結、連通させてあり、凍結防止剤収容ホッパ内に水容器を設置すると共にこの水容器と上記溶液タンクに連結した散水管とを散水配管により連結、連通して散水車を構成したことを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の道路維持車両。
【請求項5】
溶液ポンプを切換弁を介して散水管と凍結防止剤散布円盤上に配設した水噴霧ノズルを有する噴霧管とに連結、連通させていることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項4に記載の道路維持車両。
【請求項6】
溶液タンクと溶液ポンプ間の配水管に分岐管を接続してあり、この分岐管の管路中に高圧ポンプを介装すると共に該分岐管の先端に高圧水噴射ノズルを取付けていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の道路維持車両。
【請求項7】
溶液ポンプを切換弁を介して散水管と、凍結防止剤散布円盤上に配設した水噴霧ノズルを有する噴霧管と、先端に水容器内を攪拌する攪拌ノズルを備えた送水管とに連結、連通させていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の道路維持車両。
【請求項8】
水容器の底部に設けている管接続口に凍結防止剤収容ホッパの下端開口部を通じて給水管を着脱自在に連結、連通させるように構成した請求項1又は請求項2に記載の道路維持車両。
【請求項9】
水容器は厚手の防水布製であって折り畳み可能な袋形状に形成されてあり、その天壁面に注水口を、底部に管接続口を設けていることを特徴とする請求項1乃至請求項4又は請求項8のうち、いずれか1項に記載の道路維持車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−287180(P2009−287180A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137628(P2008−137628)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(505398963)西日本高速道路株式会社 (105)
【出願人】(502246300)株式会社ジェイファスト (7)
【出願人】(000235163)範多機械株式会社 (26)
【出願人】(000158127)岩崎工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】