説明

道路網解析システム

【課題】 プローブ情報に基づいて重要な道路網の変化を検出する。
【解決手段】 複数のプローブカー10からのプローブ情報を日ごとに集計し、日単位での通行量の変化を道路ごとに算出する。そして、特定の基準日前後で通行量が顕著に変化している道路が検出された場合には、その周辺で、交通に影響を与える重要な道路網の変化があったと判断し、その道路を変化関連道路とする。次に、複数の変化関連道路の端点間で経路探索を行って、探索された経路と変化関連道路との重なりが多いものを選択し、一つの原因によって共通して影響を受ける関連性のある変化関連道路およびその端点を特定する。このように、通行量の変化と経路探索との利用によって関連性のある箇所を特定することによって、重要な道路網の変化に対して効率的に現地調査を行うことが可能な調査ルート候補を設定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブカーの走行軌跡を表すプローブ情報に基づいて、道路網の変化を解析する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
地図データの整備に、プローブカーの走行軌跡を表すプローブ情報の活用が図られている。プローブカーとは、自車の位置をGPS(Global Positioning System)などで時々刻々と検出し、ネットワークを介してその履歴を送信する車両である。特許文献1は、プローブカーから未登録の道路の通行情報が3回以上得られたときは、その未登録の道路を地図データベースに登録する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−243391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、地図データの整備は、必ずしも全ての道路について即時に行わなければならないというものでもないが、新たな幹線道路の供用開始、廃止、または通行止めなどの情報は、利用者に大きな影響を与えるため、速やかに地図データに反映させる必要がある。この点について、従来技術では、新たな道路が開通したことを検出することは可能であるが、利用者への影響を判断することはできなかった。また、全ての道路を現地調査することは大変である。
本発明は、かかる課題に鑑み、利用者に影響を与え、速やかに地図データに反映させる必要がある重要な道路網の変化を検出可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
車両の走行軌跡を表すプローブ情報に基づいて、道路網の変化を解析する道路網解析システムとしての本発明の構成を示す。本発明の道路網解析システムは、プローブ情報記憶部、道路ネットワークデータ記憶部、通行量解析部、および道路網変化判定部を備える。
プローブ情報記憶部は、時系列的にプローブ情報を記憶する。車両のプローブ情報は、走行軌跡を必ずしも連続に記憶したものである必要はなく、分断されていても構わない。複数の車両のプローブ情報を記憶しておくことが好ましい。
道路ネットワークデータ記憶部は、道路網を表した道路ネットワークデータを記憶する。道路網ネットワークデータは交差点および道路を、それぞれノードおよびリンクで表したものとすることができ、さらに、交差点および道路の種別、広さなどの属性や、既に設定済みの通行規制情報などを併せて格納してもよい。
【0006】
通行量解析部は、プローブ情報記憶部から対象領域の道路網に対し、所定基準時の前後所定期間内のプローブ情報を読み出し、道路ネットワークデータに対応づけることによって道路網を構成する既存の各道路について、所定基準時の前後それぞれの所定期間の通行量を求める。通行量は、進行方向別に求めてもよいし、進行方向に関わらずに求めても良い。通行量を求めるべき期間は、通行量の変化の傾向を把握できる程度で任意に設定すればよい。また、必ずしも連続した期間の通行量を求める必要はなく、離散的に設定された期間の通行量を求めるようにしてもよい。
【0007】
道路網変化判定部は、所定基準時前後の通行量に基づいて変化関連道路を求める。変化関連道路とは、その周囲において道路網に変化があったと認められる道路を言う。道路網変化判定部は、道路ごとに、所定基準時の前の所定期間にわたる通行量と、所定基準時より後の所定期間にわたる通行量とを比較し、その変化が所定値以上となる道路を変化関連道路と判定する。
変化関連道路を判断するための所定値は、任意に設定可能である。所定値が大きくなれば、変化関連道路として検出されるのは、交通に与える影響が大きいものに絞られることになる。所定値が小さくなれば、交通に与える影響が小さいものも含まれ数が増えることになる。所定値は、こうした効果を考慮して設定すればよい。
上述の所定基準時は、道路の開通などの情報に基づいてオペレータが指定すればよい。
【0008】
本発明によれば、プローブ情報に基づいて既存の各道路の通行量の変化を検出し、これに基づいて道路網の変化を判定することができる。例えば、新たな幹線道路の供用開始があれば、その幹線道路を利用しようとして、幹線道路に接続されている道路の通行量が増え、従前、利用されていた道路の通行量が減るなど、周囲の交通の流れに変化が生じる。利用者が多い主要な道路の廃止、通行止めなどが起きた場合も同様に、周囲の道路に通行量の変化が現れる。これに対し、利用者が非常に少ない細街路が開通したとしても、その周囲の通行量には有意な変化は生じない。このように、既存の道路に生じる通行量の変化に着目することによって、本発明は、交通に与える影響が大きい道路網の変化を検出することができるのである。
本発明において変化関連道路が判定できれば、その周囲を現地調査することによって、道路網の変化、即ち新たな道路の開通、既存の道路の廃止、通行止めなどを見いだすことができ、地図データに速やかに反映させることが可能となる。
【0009】
通行量解析部は、解析対象となる道路網の属性に基づいてプローブ情報を選択的に読み出すようにしてもよい。道路網の属性とは、例えば、観光地、遊興施設、オフィス街など、道路網の利用傾向を与える情報を含むことができる。観光地であれば、その地の観光シーズン、遊興施設であれば休日、オフィス街であれば平日というように、道路網の属性に応じて期間や曜日を限定してプローブ情報を選択的に読み込むようにすれば、主要な利用者に対する影響を的確に把握することが可能となる。
属性情報は、また道路の種別や道路幅などとしてもよい。かかる場合には、その道路幅に応じて、通行可能な車種を特定し、この車種に対応するプローブ情報を選択的に読み出すようにしてもよい。比較的狭い道路が多い道路網の場合には、大型車両を避けてプローブ情報を読み出せばよい。
【0010】
また通行量解析部は、プローブ情報の所定期間内の総数に基づいて、読み出したプローブ情報を正規化する処理を施してもよい。プローブ情報が所定の単位期間ごとに時系列的に記憶されている場合には、単位期間内の総数を用いて正規化する処理を行ってもよい。ここで単位期間は、任意に設定することができ、年月日単位、時間単位などとすることができる。プローブ情報の総数が期間ごとに変動する場合には、総数の変化が通行量にも影響を及ぼす。プローブ情報を総数で除して正規化すれば、総数の影響を緩和することができ、通行量の変動を精度良く把握することが可能となる。
【0011】
変化関連道路が複数見いだされている時、これらの変化関連道路には、新たな幹線道路の開通など一つの道路網の変化による影響を共通して受けているものが存在する可能性が高い。従って、このように共通の原因によって通行量が変化している変化関連道路を特定することができれば、道路網に変化のある領域を絞り込むことができる。
道路網解析システムに、さらに、前記道路ネットワークデータに基づいて指定された2点間の経路探索を行う経路探索部を備えることにより、次の方法で、道路網の変化を調査するための調査ルート候補を設定してもよい。まず、複数の変化関連道路の端点を特定する。そして、異なる変化関連道路の端点間で、経路探索部による経路探索を行う。こうして探索された経路のうち、変化関連道路と重なる経路を抽出するのである。
2つの変化関連道路間の経路探索によって得られた経路が、いずれかの変化関連道路と重なる場合には、これらの変化関連道路は、一つの道路網の変化によって共通して影響を受けている可能性が高い。従って、両者を結ぶ経路上を調査ルートに設定すれば、こうした道路網の変化を効率的に見いだすことが可能となる。
【0012】
このように調査ルート候補が見いだされた場合には、更に次の方法で調査ルート候補を設定してもよい。まず、通行量が増大している変化関連道路または通行量が減少している変化関連道路の一方を探索対象から除外する。そして、先に得られた調査ルート候補の両端点間で、経路探索部による経路探索を行い、探索された経路のうち、残存する変化関連道路と重なる経路を抽出するのである。通行量が増大する変化関連道路を除外した場合は、通行量が減少する変化関連道路と重なる経路が調査ルート候補となり、通行量が減少する変化関連道路を除外した場合は、通行量が増大する変化関連道路と重なる経路が調査ルート候補となる。
【0013】
道路網全体の通行量が概ね一定であると考えると、いずれかの道路で通行量が増大すれば、いずれかの道路で通行量が減少していることになる。その逆も同様である。上述の方法によれば、通行量が増大または減少した変化関連道路を除外した状態で経路探索をすることによって、こうした変化の影響を受けて、通行量が減少または増加という逆の変化を見せた変化関連道路を特定することができる。従って、この経路を調査ルート候補とすれば、かかる影響を与えた道路網の変化を効率的に見いだすことが可能となる。
【0014】
以上の説明では、プローブ情報は、所定期間内の通行量や変化量を求めるものとした。所定期間は種々の設定が可能であり、一日単位としてもよいし、2日を単位として集計してもよいし、7日つまり1週間や、30日つまり1月を単位として集計してもよい。また、24時間単位でとらえるというものでもなく、通勤時間帯に絞るなどとしてもよい。
【0015】
本発明は、その他、コンピュータによって道路網の変化を判定するための道路網解析方法として構成してもよいし、かかる解析をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムとして構成してもよい。また、かかるコンピュータプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体として構成してもよい。記録媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置等、コンピュータが読取り可能な種々の媒体を利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】道路網解析システムの構成を示す説明図である。
【図2】プローブ情報の前解析処理のフローチャートである。
【図3】基準日設定の考え方を示す説明図である。
【図4】通行量変化解析処理のフローチャートである。
【図5】調査ルート設定の考え方を示す説明図である。
【図6】特異ノード検出の考え方を示す説明図である。
【図7】ノード間の関連性の判断方法を示す説明図である。
【図8】調査ルート設定処理のフローチャート(1)である。
【図9】調査ルート設定処理のフローチャート(2)である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0017】
A.システム構成:
図1は、道路網解析システムの構成を示す説明図である。道路網解析システム
は、パーソナルコンピュータ(CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えている)によって構成される解析端末200と、データベースを蓄積するサーバ100(CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えている)から構成されている。両者は、ネットワークLANで接続されている。解析端末200とサーバ100とを一体で構成してもよいし、解析端末200の機能を更に多数のサーバ等によって分散処理する構成をとってもよい。
【0018】
サーバ100には、プローブ情報データベース110、地図データベース120、道路ネットワークデータベース130が格納されている。
地図データベース120は、地図を描画するためのポリゴンデータを格納している。地図データベース120は、解析端末200において地図上で解析結果を表示するためや、プローブカー10に搭載されたナビゲーション装置における地図表示するために使用される。
道路ネットワークデータベース130は、道路および交差点からなる道路網を、それぞれリンク、ノードの形式で表した道路ネットワークデータを格納する。道路ネットワークデータは、経路探索にも利用可能である。道路ネットワークデータには、それぞれのリンク、ノードについて、国道・県道などの道路種別、車線数などの道路幅、右左折禁止などの進行方向規制や一方通行などの通行規制を表す情報が併せて記録されている。
【0019】
プローブ情報データベース110は、プローブカー10の走行軌跡を時系列的に記録したデータベースである。
図中にプローブカー10の構成を模式的に示した。各プローブカー10には、GPS(Global Positioning System)11が搭載されており、位置座標を計測可能となっている。位置座標の計測は、GPS以外の方法によっても構わない。プローブカー10は、通信モジュール12を搭載しており、ネットワークNEを介して、所定のタイミングでGPS11によって計測された位置情報をサーバ100に送信(以下、アップロードということもある)する。サーバ100は、この位置情報をプローブカー10ごとにプローブ情報データベース110に蓄積する。プローブカー10からアップロードされる情報には、位置情報の他、プローブカー10の走行速度、アクセル、ブレーキ、ハンドルなどの運転操作を表す情報も含めることができる。
プローブカー10からサーバ100にプローブ情報をアップロードするタイミングは種々の設定が可能である。本実施例では、解析に実効性のある情報を収集するため、プローブカー10が所定の速度以上で走行している状態、かつ道路ネットワークデータベース130に格納されたいずれかのノード、リンク上にいる場合にアップロードするものとした。リンク、ノード上にいるか否かの判断は、道路ネットワークデータベース130と同等の道路ネットワークデータを利用するナビゲーション装置をプローブカー10に搭載しておくことにより、容易に実現可能である。
【0020】
図中には、解析端末200が実現する機能をブロック図で示した。これらの機能は、解析端末200に、各機能を実現するためのコンピュータプログラムをインストールすることによって実現される。機能の一部または全部を、ハードウェア的に実現する構成としても構わない。
【0021】
以下、解析端末200の機能について説明する。
プローブ情報読出部230は、サーバ100のプローブ情報データベース110から解析に必要となるプローブ情報を読み出し、プローブ情報記憶部240に格納する。プローブ情報データベース110では、各プローブカー10の位置情報は座標形式で格納されている。本実施例では、プローブ情報読出部230は、解析に利用しやすいよう、位置情報を、ノード、リンクで表す形式に変換する前解析処理を施した上でプローブ情報記憶部240に格納する。この前解析処理の内容は、後述する。以下の説明では、特に示さない限り、前解析処理を施した後の情報をプローブ情報と称する。
経路探索部220は、道路ネットワークデータを利用して、指定された2点間の経路探索を行う。経路探索は、周知のダイクストラ法などを用いることができる。本実施例では、経路探索の結果は、プローブ情報解析部210での種々の解析に利用される。
【0022】
プローブ情報解析部210は、プローブ情報記憶部240に格納されたプローブ情報に基づく解析を実行する。本実施例の解析端末200では、通行規制の解析と、道路網の変化の判定が可能である。
通行規制判定部211は、プローブ情報に基づいて、道路および交差点に付された通行規制を判定する。先に説明した通り道路ネットワークデータには、通行規制情報も併せて格納されているが、道路および交差点によっては漏れがあったり、新たに規制が付されたり、従前に付されていた規制と異なる規制になったりしている可能性がある。通行規制判定部211は、プローブ情報に基づいて通行規制情報を判定することによって、道路ネットワークデータの通行規制情報の整備を支援する。
忌避要因判定部212は、道路および交差点について、運転者に通行を避けさせる要因の有無および程度を判定する。以下、この要因を忌避要因と呼ぶ。忌避要因としては、例えば、対象通行方法で通行する場合、進入しようとする道路が現在の道路よりも幅が狭いことや、道路が交差点で鋭角状に接続されていることや、大回りになることがユーザに知られていることや、主要道路から外れた閉鎖的な地域に入ることなどが挙げられる。忌避要因判定部212による判定結果は、通行規制判定部211による解析に利用される。
【0023】
道路網変化判定部213は、プローブ情報から得られる各道路および交差点の通行量の日々の変化に基づいて、道路ネットワークデータに反映させる必要があるほどの道路網の変化を判定する。
通行量解析部214は、上述の解析に利用するため、プローブ情報に基づいて、各道路および交差点の日々の通行量を統計的に集計する。
【0024】
B.前解析処理:
サーバ100に蓄積されているプローブ情報を読み出す際に、解析端末200は、位置情報を座標から、ノード、リンクの形式に変換する前解析処理を施す。
図2は、プローブ情報の前解析処理のフローチャートである。プローブ情報読出部230の処理内容に当たるものであり、ハードウェア的には解析端末200のCPUが実行する処理である。
【0025】
まずCPUは、サーバ100からプローブ情報を読出す(ステップS10)。図中にプローブ情報の構成を例示した。時刻t1〜t3に対応して、位置座標が(LAT1、LON1)〜(LAT3、LON3)、のように緯度経度の座標形式で格納されている。その他、速度V1〜V3および運転操作などを読み出しても良い。
【0026】
CPUは、この位置座標に対し、マップマッチング処理を施す(ステップS12)。図中に処理の考え方を示した。リンクL1〜L3およびノードN1で構成される交差点を例示する。これらのリンクL1〜L3に対して、車線数など道路幅を表す属性に基づき、幅W1〜W3の領域AL1〜AL3を設定する。幅W1〜W3は、GPSによる位置情報の計測誤差を考慮して道路幅よりも大きい値としてもよい。ノードN1には、これらの領域AL1〜AL3を重ね合わせて定義される領域AN1を設定する。図中では、各領域を判別しやすいよう、領域AN1にハッチングを付した。
CPUは、プローブ情報の位置座標が、領域AL1〜AL3、AN1のいずれにあるかを判定することで、位置座標をリンク、ノードに変換する。図中の点P1〜P3は、時刻t1〜t3の位置座標に対応する点を表している。点P1は領域AL1内にあるため、位置座標はリンクL1に変換される。点P2は領域AL1から外れているため、位置座標の変換はエラーとなる。点P3は領域AN1内にあるため、位置座標はノードN1に変換される。
【0027】
CPUは、上述の解析による解析後のプローブ情報を、プローブ情報記憶部240に出力する(ステップS14)。図中に解析後のデータ構造を示した。解析前に対し、時刻t1に対する位置情報はリンクL1、時刻t3に対する位置情報はノードN1というように、位置情報をリンク、ノードに変換した形式となっている。時刻t2は、位置座標の変換はエラーであったため、エラー表示(Err)となっている。
【0028】
C.通行量変化解析処理:
本実施例は、プローブ情報の通行量の変化に基づいて道路網の変化を検出する。道路網の変化が生じたと推定される日を以下では「基準日」と称する。基準日は、行政機関などから提供される情報に基づいてオペレータが設定することも可能であるが、プローブ情報の変化に基づいて解析的に設定することも可能である。 以下では、まず基準日を解析的に設定する考え方を示した後、通行量変化解析処理について説明する。
【0029】
C1.基準日設定の考え方:
図3は、基準日設定の考え方を示す説明図である。上側には、日付ごとのプローブ情報、つまり解析対象となる道路の通過台数の日ごとの変化を示した。細線で示したギザギザ状のグラフが、プローブ情報の生データ、つまり日ごとの通行台数の集計結果を示している。全てのプローブカーが、毎日、規則正しく行動するとは限らないし、プローブカーの走行軌跡を全て漏れなくプローブ情報として検出できるとも限らないため、通行台数は、このように日々、激しい変化を示すグラフとなる。
図中に太線で示した曲線は、通行台数を平滑化した結果を示している。平滑化は、種々の方法で行うことができる。例えば、ある日の通行台数として、その前後3〜5日ほどの通行台数の平均値を用いるようにしてもよい。また、生データに対して、最小二乗法で平滑化した曲線を求めたり、スプライン曲線を算出してもよい。いわゆるローパスフィルタに生データを通して、ノイズ成分を除去するようにしてもよい。
生データおよび平滑化曲線のいずれを見ても、後半の部分で、ある期間を境に、通行台数が顕著に増大していることが分かる。このように通行台数が顕著に変化する境となる日を解析的に特定することが、ここでの目的である。
【0030】
平滑化した曲線が得られると、その微分によって変化率を算出する。下側には、変化率の曲線を示した。平滑化した曲線も凹凸を有しているため、図示するように、全般にわたってプラスまたはマイナスの変化率が現れる。ただし、通行台数が顕著に増大している部分では、プラスの大きな変化率が現れ、その他の期間では、変化率の絶対値は比較的小さい範囲にとどまる。
そこで、プローブ情報の日常的な変動に伴う変化率が収まると判断される閾値±Thを設定し、この閾値Thを超えるところで不連続的とも言える顕著な変化が生じているものと判断し、この期間内の代表日を基準日とする。ノイズによる影響を回避するため、複数日にわたって連続的に変化率が閾値Thを超える期間のみを抽出してもよい。代表日は、閾値Thを初めて超えた日、閾値Thを超える最終日、閾値Thを超える期間の中央日などとすることができる。
【0031】
基準日が定まると、基準日前後の通行量の変化を求めることができる。図中に示すように、変化率の絶対値が閾値Thに収まる基準日前後の期間内で、所定日数分の期間PD1、PD2を選択し、この期間の通行量の平均値を求める。そして、その平均値の変化量(図中のAに相当)を求めることにより、基準日前後の通行量の変化を得ることができる。平均値を求める所定日数は、任意に設定可能である。
【0032】
C2.通行量変化解析処理:
図4は、通行量変化解析処理のフローチャートである。通行量解析部214(図1参照)が実行する処理であり、ハードウェア的には解析端末200のCPUが実行する処理である。
【0033】
まず、CPUは解析対象となる対象領域の属性に基づいてプローブ情報の抽出条件を設定する(ステップS20)。図中には、プローブ情報の抽出期間または曜日を特定する条件を例示した。対象領域が、旅行などで訪れるような観光地である場合には、その場所に応じた観光シーズンに絞ってプローブ情報を抽出する。日帰りで出かけるような行楽地や遊園地その他の遊興施設周辺の対象領域については、休日のプローブ情報を抽出する。その他の対象領域については平日(月曜日から金曜日)のプローブ情報を抽出する。対象領域がいずれに該当するかは、オペレータが入力するようにしてもよいし、解析端末200が、対象領域内に観光地や行楽地が存在するか否かを判定するようにしてもよい。抽出条件は、このように期間を絞る他、種々の設定が可能である。このような抽出条件を設定することなく、全プローブ情報を使用するものとしてもよい。
【0034】
次に、CPUは抽出条件に基づいて対象領域内の各道路のプローブ情報を抽出し、1日当たりの通過台数を算出する(ステップS22)。そして、各日の通過台数を対象領域内の総台数で除することによって正規化する(ステップS24)。対象領域内のプローブカーの総数は、各道路の通行量に影響を与える。プローブカーの総数が増えれば、道路網に変化がない場合であっても、各道路の通行量に不連続的な増加が生じることがある。正規化は、この影響を緩和するための処理である。プローブカーの総数とは、単にプローブ情報を送信する装置を搭載した車両の総数という意味ではなく、1日当たりにプローブ情報を送信してきたプローブカーの総数を意味する。
正規化処理は、必ずしも必要という訳ではない。例えば、プローブカーの総数が十分に確保できている場合には、日々の総数の変動による影響は相対的に小さくなるから、正規化処理を省略してもよい。また、この実施例では、日ごとに正規化する例を示したが、上述した平均値を求める所定日数分の総数で正規化するようにしてもよい。さらに、正規化は、必ずしも日単位で行う必要はなく、1日のプローブ情報のうち、特定の時間帯の情報のみを活用する場合には、その時間帯における総数を用いて処理するようにしてもよい。
【0035】
各日の通行量が求まると、CPUは、各道路の通行量を平滑化し、通行量変化率を算出する(ステップS26)。図3の上側に示した平滑化曲線、および下側に示した変化率を求めるのである。そして、変化率の絶対値が閾値Thを超える期間を特定し、基準日を設定する(ステップS28)。その設定方法は、図3で説明した通りである。
図4のステップS28中には、複数の道路について基準日が見いだされた場合の処理例を示した。対象領域内の各道路について、通行量の変化に基づく解析を実行すると複数の道路で基準日が求められる場合がある。かかる場合には、各道路の解析結果が重複する期間に基づいて基準日を設定するものとした。
例えば、図示する通り、道路Aについては、期間A1、A2で変化率が閾値Thを超えており、道路Cについては、期間C1で変化率が閾値Thを超えているとする。道路Bでは、変化率が閾値Thを超える期間は存在しない。このような場合、道路Aについて検出された期間A1、A2と、道路Cについて検出された期間C1が重複する期間SDに基づいて基準日を設定するのである。期間A2、C1における道路網の変化は、道路A、Cに影響を与える共通の変化であると考えられ、重要性が高いと判断されるからである。
【0036】
こうして基準日が定まると、CPUは、基準日前後の期間の通行量に基づき、各道路の通行量の変化を算出する(ステップS30)。先に図3で説明した変化量Aを求める処理に相当する。変化量は、通行量の変化台数、変化割合(%)などの形式で表すことができる。後述する通り、この通行量の変化が大きい道路が、道路網の変化によって影響を受けた部分と判断される。かかる道路を、本実施例では、変化関連道路と称する。
【0037】
D.調査ルートの設定:
次に、調査ルートの設定方法について説明する。本実施例では、上述の通り、通行量の変化によって変化関連道路を特定するが、このように通行量に変化を与えた原因については、現地調査を行い、道路ネットワークデータに反映させるものとした。道路ネットワークデータに正確な情報を反映させるためには、プローブ情報の解析だけでは不十分であり、現地調査が欠かせないからである。本実施例の解析端末200は、この現地調査を効率的に行うことができるよう、道路網の変化が生じている箇所、つまり現地調査を行う調査領域または調査ルートの候補を絞り込むことができる。
【0038】
D1.調査ルート設定の考え方:
図5は、調査ルート設定の考え方を示す説明図である。図5(a)に示すように、リンクL1〜L16、ノードN1〜N4からなる道路網を考える。ここに、従前は存在しなかったバイパスBPS(破線で示した)の供用が開始されたものとする。
バイパスBPSの開通前は、利用者の多くは、経路Ra1(リンクL1、L3、L6、L16)を通って通行していたとする。バイパスBPSが開通すると、利用者はバイパスBPSを利用するようになるから、経路Ra2(リンクL1、L7)を通り、バイパスBPSを通って、経路Ra3(リンクL16)を通るようになる。バイパスBPSは道路ネットワークデータが存在しないため、プローブ情報上は、各プローブカーがバイパスBPSを走行したということまでは特定できない。バイパスBPS上を走行している間は、プローブ情報は、リンクL12をはじめいずれのリンクにもマップマッチングされず、単にエラーとして処理されることになる(図2参照)。従って、プローブ情報上は、ノードN3に流入したプローブカーは、そこで忽然と消え、ノードN2で突然、現れたかのような状態となる。
【0039】
上述したように交通の流れに変化が生じると、各リンクの通行量に変化が生じる。リンクL3、L6(実線と破線の二重線で示した)では、従前の利用者がリンクL7に流れたことによって、通行量が減少する。これに対し、リンクL7、L16(太線で示した)では、バイパス利用者が走行することによって通行量が増加する。その他のリンクでは、通行量に顕著な変化は生じない。このように、通行量が顕著に増加または減少するリンクL3、L6、L7、L16が、変化関連道路に当たる。
この変化関連道路の両端のノード(ノードN1〜N4)は、調査ルートを設定するために関連性が高いノードとなる。本実施例では、ノードN1、N2のように、通行量が増大しているリンクと、通行量が減少しているリンクとの交点に当たるノードを「重要ノード」と称する。ノードN4のように、変化関連道路のその他のノードを「留意ノード」と称する。さらに、ノードN3、N2を「特異ノード」と称するが、その内容については後述する。
【0040】
変化関連道路の両端のノード(ノードN1〜N4)が求められたとしても、これらが全て単一の道路網の変化による影響を受けているか否かは不明である。図5の例では、ノードN1〜N4のいずれも、バイパスBPSの建設によって影響を受けていることが明らかであるが、単に通行量の変化を解析しただけでは、そこまでの特定はできない。
そこで、単一の道路網によって影響を受けたという意味で関連性のあるノードの組合せを特定するために、これらのノードN1〜N4のうちの2点間の組合せすべてについて経路探索を行う。得られた経路の中から、変化関連道路と多く重なっている経路を選択し、その両端のノードは関連性があると判断するのである。図5の例では、ノードN1、N2の間の経路は、リンクL3、L6と重複するため、全経路にわたって変化関連道路と重なっているため、その両端のノードN1、N2に関連性があると判断するのである。
なお、ノードN1、N4間の経路、ノードN2、N4間の経路も、それぞれ変化関連道路L3、L6と重なるが、ノードN1、N2がともに重要性が高い「重要ノード」「特異ノード」であるのに対し、ノードN4は重要性が低い「留意ノード」であるため、ノードN1、N2を優先する。
【0041】
関連性のあるノードが特定できると、調査ルートは、この2つのノードを結ぶ経路で設定することになる。この時、バイパスBPSが開通した位置から明らかな通り、ノードN1からリンクL7を通る経路を調査ルートとして設定することが好ましい。本実施例では、次に示す方法で、かかる調査ルートを求める。
図5(b)に、調査ルートを設定する様子を示した。
まず、関連性のあるノードを特定する際に行った経路探索と重複する変化関連道路(リンクL3、L6)を探索対象から除外する。通行量が増加しているリンク、または通行量が減少しているリンクに絞って除外してもよい。図5(a)の例では、リンクL3、L6が除外されることになる。これらを除外した状態を図5(b)に示した。
そして、ノードN1、N2を包含する調査領域AAを設定する。調査領域AAの広さおよび形状は任意に設定可能である。この調査領域AAの周辺のノード間で経路探索を行い、調査領域AA内に存在する変化関連道路との重複が大きい経路を、調査ルートとして選択する。
図5(b)の例では、ノードS、D間の経路(矢印Rb1〜Rb3)が、変化関連道路に対応するリンクL7、L16と重複しているため、調査ルートとなる。こうして設定された調査ルートに沿った現地調査を行えば、リンクL7に沿って走っていったところで、リンクL7とバイパスBPSとの間に遮蔽物がなければ、バイパスBPSの開通を容易に発見することができることになる。
【0042】
D2.特異ノードの検出:
図5(a)の説明において、「重要ノード」、「留意ノード」を説明し、併せてノードN3、N2が「特異ノード」に該当することを示した。以下では、この特異ノードの意味および検出方法について説明する。
【0043】
図6は、特異ノード検出の考え方を示す説明図である。図6(a)〜図6(c)は、それぞれ図5(a)におけるノードN1、N3、N2について、これらのノードへの全進入量、全退出量の変化を示している。左側がバイパスBPSの開通前、右側がバイパスBPSの開通後の状態である。
図6(a)の左側に示すように、バイパスBPSの開通前は、ノードN1にはリンクL1から車が進入し、リンクL3に退出する流れが主であった。進入量、退出量をグラフにして示した。プローブ情報が、ノードN1への進入量/退出量を正確に検出できれば、両者は一致するはずであるが、実際には検出誤差が存在するため、進入量/退出量の間には差違E1が生じる。
図6(a)の右側に示すように、バイパスBPSの開通後は、ノードN1にはリンクL1から車が進入し、リンクL7に退出する流れが主となる。進入量、退出量の間には、プローブ情報の検出誤差に応じた差違E2が生じる。バイパスBPSの開通前は進入量が退出量よりも少なく、開通後は進入量が退出量よりも多くなるように示してあるが、これは、単に両者の差違は種々の態様で現れ得ることを示しているに過ぎず、必ずしもこうした逆転現象が生じることを意味するものではない。
【0044】
同様に、ノードN3についての変化を見る。
図6(b)の左側に示すように、バイパスBPSの開通前は、ノードN3にはリンクL7から車が進入し、リンクL10に退出する流れが主であった。進入量、退出量の間には、プローブ情報の検出誤差に応じた差違E3が生じる。
図6(b)の右側に示すように、バイパスBPSの開通後は、ノードN3にはリンクL7から車が進入し、バイパスBPSに退出する流れが主となる。リンクL7への進入量は開通前に比べて増加する。先に説明した通り、バイパスBPSに退出する車両からはプローブ情報は得られないから、見かけ上はノードN3からの退出量は、バイパスBPS以外に走行した車両分だけとなり、非常に少なくなる。この結果、進入量と退出量との間には、プローブ情報の検出誤差とは言えないほどの大きな差違E4が生じる。
【0045】
図6(c)はノードN2の変化を示している。
図6(c)の左側に示すように、バイパスBPSの開通前は、ノードN2にはリンクL6から車が進入し、リンクL16に退出する流れが主であった。進入量、退出量の間には、プローブ情報の検出誤差に応じた差違E5が生じる。
図6(c)の右側に示すように、バイパスBPSの開通後は、ノードN3にはバイパスBPSから車が進入し、リンクL16に退出する流れが主となる。バイパスBPSから進入する車両からはプローブ情報は得られないから、見かけ上はノードN2への進入量は、バイパスBPS以外から進入した車両分だけとなり、非常に少なくなる。この結果、進入量と退出量との間には、プローブ情報の検出誤差とは言えないほどの大きな差違E6が生じる。
【0046】
図6(b)、図6(c)に示した通り、道路網の変化状態によっては、ノードへの進入量と退出量との間に、プローブ情報の検出誤差とは言えないほどの差違が生じる部分がある。このように大きな差違が生じるノードは、その直近で道路網の変化が生じていることを表す非常に特異なノードであると判断できる。
【0047】
D3.ノード同士の関連性の判断:
図5においては、比較的狭い領域内でノードの関連性を判断する例を示した。道路網変化の解析対象領域が広い場合には、変化関連道路の中には、異なる要因で通行量の変化が生じているものも含まれる。かかる場合であっても、先に図5(a)で説明した経路探索を利用する方法で、ノード間の関連性を判断できることを例示する。
【0048】
図7は、ノード間の関連性の判断方法を示す説明図である。図中のノードN1、N2、N3が図5(a)に示した範囲に相当し、この領域内にバイパスBPSが建設されたものとする。図中、太線(リンクL7、L16、L20)は通行量が増大した変化関連道路を示し、実線と破線の二重線(リンクL3、L6、L21)は通行量が減少した変化関連道路を示している。右上に示すリンクL20、L21は、それぞれ変化関連道路に相当するが、バイパスBPSの開通とは別の要因によるものであることが明らかである。
ノードN1〜N3およびN10は、それぞれ特異ノードまたは重要ノードを表している。
【0049】
ノードN1〜N3、N10の関連性を調べるために、これらのノードを端点とする経路探索を行う。図の煩雑化を回避するため、全経路の図示は省略するが、ノードの組合せに応じて、それぞれ経路R71〜R74などを得ることができる。
そして、これらの経路のうち、変化関連道路との重複割合が高いものを選択する。
経路R71は、通行量が減少する変化関連道路L3、L6と完全に重複しているため、選択される。
経路R72は全く変化関連道路と重ならないため、除外される。
経路R73はリンクL20と、経路R74はリンクL20、L7と重なるが、その経路中に占める割合は、経路R71に比較して小さいため、除外される。
従って、経路R71が選択されることになり、その両端にあるノードN2、N3が関連性のあるノードと判定されることになる。リンクL20、L21のように、バイパスBPSの開通と異なる要因で通行量の変化が生じているノードに対しては、図7で示したように経路探索の結果、通行量の変化と無関係の道路を通る経路が探索されることになるから、自ずと変化関連道路と重なる割合が小さくなり、関連性がないノードと判断されるようになるのである。
【0050】
D4.調査ルート設定処理:
図8、9は、調査ルート設定処理のフローチャートである。道路網変化判定部213(図1参照)が実行する処理であり、ハードウェア的には解析端末200のCPUが実行する処理である。
CPUは、まず基準日以後のノードへの進入量と退出量の誤差が閾値Eth以上となるノードを特異ノードとして抽出する(ステップS50)。先に図6で説明した処理を実行するのである。閾値Ethは、交差点への進入量と退出量との間に、プローブ情報の検出誤差とは言えないほどの差違が生じているか否かを判断するための基準値である。プローブ情報によって生じる検出誤差を予め調査しておき、これを超える値を任意に設定することができる。
【0051】
CPUは、次に、通行量の変化の絶対値が閾値δよりも大きくなるリンクを変化関連リンクとして抽出する(ステップS52)。通行量が増大する変化関連リンクを「増大リンク」、通行量が減少する変化関連リンクを「減少リンク」と称する。通行量の変化(図3におけるAに相当)は、台数または変化割合のいずれで表してもよい。変化関連リンクと判断するか否かの閾値δは、任意に設定可能である。閾値δを大きくすれば、道路網変化の検出感度が低下することになるし、小さくし過ぎれば、道路網の変化によるものとは言えないほどの影響まで検出することになる。閾値δは、両者の効果を考慮しながら設定すればよい。
そして、CPUは、増大リンクと減少リンクとが交わるノードを重要ノードとして抽出し(ステップS54)、その他の増大リンク、減少リンクの端点を留意ノードとして抽出する(ステップS56)。留意ノードには、増大リンク同士、減少リンク同士の交点、変化関連道路以外の道路と増大リンクまたは減少リンクとの交点が含まれる。
【0052】
次に、CPUは抽出された特異ノード、重要ノード、留意ノードの関連性を調べるため、これらのノード間で経路探索し、増大リンクまたは減少リンクを通る経路を抽出する(ステップS58)。ノード数が多い場合には、留意ノードを省略して経路探索するようにしてもよい。
経路探索が完了すると、CPUは、以下に示す優先順位に従って、一つの経路を選択する(ステップS60)。
条件1 増大リンク、減少リンクが占める割合が高い;
条件2 優先順位の高いノードを通る;
優先順位は、「特異ノード」、「重要ノード」、「留意ノード」の順とする。条件1によって1つの経路に絞り込めなかった場合に、条件2を考慮する。
【0053】
一つの経路を選択すると、その両端は関連性のあるノードということになる。CPUは、選択された経路を包含する領域を調査領域として設定する(ステップS62)。これが図5(b)における領域AAに相当する。そして、調査領域内の減少リンクを探索対象から除外し、調査領域周辺のノード間で経路探索を行う(ステップS64)。図5(b)で説明した処理に相当する。減少リンクに代えて、ステップS60で選択された経路上の変化関連リンクに限定して除外するようにしてもよいし、減少リンクに代えて増加リンクを除外するようにしてもよい。
CPUは、さらにステップS64の処理で得られた経路探索の中から、増大リンクが占める割合が高い経路を調査ルートとして特定する(ステップS66)。ステップS64で減少リンクを除外しているため、増大リンクが占める割合を見るものとしたが、ステップS64で増大リンクを除外する場合には、減少リンクが占める割合を見るようにすればよい。
こうすることによって、図5(b)で示したように、道路網への変化を効率的に検出するための調査ルートを設定することができる。
【0054】
E.効果:
本実施例の道路網解析システムによれば、プローブ情報の解析結果に基づき、道路網の変化のうち、交通に与える影響が大きい重要な変化の有無を検出することができる。そして、経路探索を利用した方法によって、この変化を効率的に現地調査するための調査ルートを特定することができる。
【0055】
以上の実施例では、バイパスなど新たに道路が開通した場合を例にとって説明したが、本実施例は、このような場合だけでなく、既存の道路が廃止された場合や、通行止めになった場合などにも適用することができる。既存の道路の廃止や通行止めなどのときには、従前、利用されていた道路の通行量が減少し、代わりに他の道路の通行量が増大するという変化が生じる。このように交通に変化が生じるほど重要な変化であれば、実施例と同様の考え方によって検出することが可能である。
【0056】
以上、本発明の実施例について説明した。道路網システムは、必ずしも上述した実施例の全ての機能を備えている必要はなく、一部のみを実現するようにしてもよい。また、上述した内容に追加の機能を設けてもよい。
本発明は上述の実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができることはいうまでもない。例えば、実施例においてハードウェア的に構成されている部分は、ソフトウェア的に構成することもでき、その逆も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、交通に影響を与えるほどの重要な道路網の変化を検出し、地図データの整備を支援するために利用可能である。
【符号の説明】
【0058】
10…プローブカー
11…GPS
12…通信モジュール
100…サーバ
110…プローブ情報データベース
120…地図データベース
130…道路ネットワークデータベース
200…解析端末
210…プローブ情報解析部
211…通行規制判定部
212…忌避要因判定部
213…道路網変化判定部
214…通行量解析部
220…経路探索部
230…プローブ情報読出部
240…プローブ情報記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行軌跡を表すプローブ情報に基づいて、道路網の変化を解析する道路網解析システムであって、
複数の車両について前記プローブ情報を時系列的に記憶するプローブ情報記憶部と、
道路網を表した道路ネットワークデータを記憶する道路ネットワークデータ記憶部と、
対象領域の道路網に対し、前記プローブ情報記憶部から所定基準時の前後の所定期間内のプローブ情報を読み出し、前記道路ネットワークデータに対応づけることによって前記道路網を構成する既存の各道路について、前記所定基準時の前後それぞれの所定期間の通行量を求める通行量解析部と、
前記所定基準時より前の所定期間にわたる通行量に対し、該所定基準時より後の所定期間にわたる通行量の変化が所定値以上となる道路を、該道路の周囲において前記道路網に変化があった変化関連道路と判定する道路網変化判定部とを備える道路網解析システム。
【請求項2】
請求項1記載の道路網解析システムであって、 前記通行量解析部は、
前記解析対象となる道路網の属性に基づいて前記プローブ情報を選択的に読み出す処理、および前記プローブ情報の前記所定期間内の総数、または前記プローブ情報が所定の単位期間ごとに時系列的に記憶されている場合における該単位期間内の総数に基づいて、前記読み出したプローブ情報を正規化する処理の少なくとも一方を施して前記通行量を求める道路網解析システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の道路網解析システムであって、
さらに、前記道路ネットワークデータに基づいて指定された2点間の経路探索を行う経路探索部を備え、
前記道路網変化判定部は、
前記複数の変化関連道路の端点を特定し、
異なる前記変化関連道路の端点間で、前記経路探索部による経路探索を行い、
該探索された経路のうち、前記変化関連道路と重なる経路を抽出する道路網解析システム。
【請求項4】
請求項3記載の道路網解析システムであって、
前記道路網変化判定部は、
通行量が増大している前記変化関連道路または通行量が減少している前記変化関連道路の一方を除去した状態で、前記抽出した経路の両端点間で、前記経路探索部による経路探索を行い、
該探索された経路のうち、残存する変化関連道路と重なる経路を抽出する道路網解析システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−150016(P2012−150016A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9158(P2011−9158)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(597151563)株式会社ゼンリン (155)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】