説明

道路縁石

【課題】除雪車による飛散・変形を防止することができる道路縁石を提供する。
【解決手段】道路縁石10は、道路の車線に沿って設置されるように一方向に伸長されており、底面11と、上面12と、これらを結ぶ側面13とを備えている。底面11は、伸長方向の一方を前方として上から見て、右辺11Aと、左辺11Bと、前辺11Cと、後辺11Dとを有しており、右辺11Aの前端部11Eは左辺11Bの前端部11Fよりも後ろ側に位置し、右辺11Aの後端部11Gは左辺11Bの後端部11Hよりも後ろ側に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の中央分離や車線分離等のために道路の車線に沿って設置される道路縁石に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路縁石としては、例えば、図3に示したように、底面が細長い長方形の略四角錐台状のものが広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。図3において、(A)は上から見た図、(B)は長辺側の側面から見た図である。この道路縁石100では、角錐台状とすることにより、誤って自動車が接触したときに、乗り上げて衝突を避けると共に、乗り上げた際のショックを和らげ、進行方向が急に変わらないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−230218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、降雪地域では、除雪車による除雪作業の際に、除雪車のプラウが道路縁石に接触し、道路縁石が飛散したり、変形してしまう場合があるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、除雪車による飛散・変形を防止することができる道路縁石を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の道路縁石は、道路の車線に沿って設置されるように一方向に伸長され、底面と、上面と、これらを結ぶ側面とを備え、底面は、伸長方向の一方を前方として上から見て、右辺と、左辺と、前辺と、後辺とを有し、右辺の前端部は伸長方向において左辺の前端部よりも後ろ側に位置すると共に、右辺の後端部は伸長方向において左辺の後端部よりも後ろ側に位置し、前辺及び後辺はそれぞれ外側に向かって突出するように湾曲しているものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の道路縁石によれば、右辺の前端部を左辺の前端部よりも後ろ側に位置させ、右辺の後端部を左辺の後端部よりも後ろ側に位置させて、前辺及び後辺をそれぞれ外側に向かって突出するように湾曲させるようにしたので、除雪作業時に除雪車のプラウが衝突しても、衝撃を緩和することができ、飛散及び変形を抑制することができる。
【0008】
また、底面側から上面側に向かい内側に傾斜した右傾斜部、左傾斜部、前傾斜部、及び後傾斜部を有するようにすれば、衝撃をより緩和することができる。
【0009】
更に、前傾斜部及び後ろ傾斜部を平面状又は外側に向かい突出するように湾曲させるようにすれば、衝突時に、除雪車のプラウが道路縁石の上を滑るように通過するようにすることができ、衝撃をより緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態に係る道路縁石の構成を表す図である。
【図2】図1に示した道路縁石の構成を表す斜視図である。
【図3】従来の道路縁石の構成を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態に係る道路縁石10の構成を表すものであり、(A)は上から見た構成図、(B)は左から見た構成図、(C)は右から見た構成図、(D)は後ろから見た構成図である。図2は、図1に示した道路縁石10の斜視構成を表すものであり、(A)は斜視図、(B)はコンピュータ・グラフィックスを使用した図である。この道路縁石10は、例えば、合成樹脂により構成され、道路の車線に沿って設置されるように一方向に伸長されており、底面11と、上面12と、これらを結ぶ側面13とを備えている。
【0013】
底面11は、伸長方向の一方を前方として上から見て、右辺11Aと、左辺11Bと、前辺11Cと、後辺11Dとを有している。道路縁石10の伸長方向において、右辺11Aの前端部11Eは左辺11Bの前端部11Fよりも後ろ側に位置し、右辺11Aの後端部11Gは左辺11Bの後端部11Hよりも後ろ側に位置している。前辺11C及び後辺11Dはそれぞれ外側に向かって突出するように湾曲している。すなわち、底面11は、例えば、右前方と左後方の角が欠けたような形状を有している。これにより、除雪車のプラウが衝突した時の衝撃を緩和することができるようになっている。
【0014】
上面12には、例えば、道路縁石10を固定するためのアンカーボルト20を挿入する貫通孔12Aが形成されている。上面12の外周は底面11よりも小さく形成されていることが好ましい。側面13は、例えば、底面11の右辺11A、左辺11B、前辺11C、及び後辺11Dに対応する領域に、底面11の側から上面12の側に向かい内側に傾斜した右傾斜部13A、左傾斜部13B、前傾斜部13C、及び後傾斜部13Dをそれぞれ有している。これにより、衝突時の衝撃をより緩和することができるようになっている。なお、側面13は、例えば、右傾斜部13A、左傾斜部13B、前傾斜部13C、及び後傾斜部13Dに加えて、底面11の側に、垂直の立上部13Eを有していてもよい。
【0015】
前傾斜部13C及び後傾斜部13Dは、平面状又は外側に向かい突出するように湾曲していることが好ましい。衝突時に、除雪車のプラウが跳ね上がらずに、道路縁石の上を滑るように通過するようにすることができるからである。右傾斜部13A及び左傾斜部13Bは、例えば、平面状又は外側に向かい突出するように湾曲していることが好ましく、前傾斜部13C及び後傾斜部13Dと滑らかに曲面で連続されていることが好ましい。また、側面13と上面12とは、例えば、滑らかに曲面で連続されていることが好ましい。
【0016】
なお、この道路縁石10は、例えば、底面11を含む面内において底面11を180度回転させると同一の形状となる回転対象体である。道路縁石10の内部は、充填され密実とされていてもよく、一部または全体にわたって中空とされていてもよい。
【0017】
この道路縁石10は、例えば、道路の中央分離や車線分離等のために、道路の車線に沿って、伸長方向に間隔を開けて複数設置して用いられる。例えば、除雪車による除雪作業時には、道路縁石10の近傍を、除雪車のプラウが50km/h程度の速度で通過する。その際、道路縁石10に除雪車のプラウが衝突しても、この道路縁石10では底面11の右前方と左後方の角が欠けた形状となっているので、衝撃が緩和され、飛散及び変形が防止される。
【0018】
このように本実施の形態によれば、右辺11Aの前端部11Eを左辺11Bの前端部11Fよりも後ろ側に位置させ、右辺11Aの後端部11Gを左辺11Bの後端部11Hよりも後ろ側に位置させて、前辺11C及び後辺11Dをそれぞれ外側に向かって突出するように湾曲させるようにしたので、除雪作業時に除雪車のプラウが衝突しても、衝撃を緩和することができ、飛散及び変形を抑制することができる。
【0019】
また、底面11の側から上面12の側に向かい内側に傾斜した右傾斜部13A、左傾斜部13B、前傾斜部13C、及び後傾斜部13Dを有するようにすれば、衝撃をより緩和することができる。
【0020】
更に、前傾斜部13C及び後傾斜部13Dを平面状又は外側に向かい突出するように湾曲させるようにすれば、衝突時に、除雪車のプラウが道路縁石10の上を滑るように通過するようにすることができ、衝撃をより緩和することができる。
【実施例】
【0021】
(実施例1)
前傾斜部13C及び後傾斜部13Dの形状を変えた2種類(A型、B型)の道路縁石10を作製した。A型とB型とでは、前傾斜部13C及び後傾斜部13Dの形状を変化させた。A型では、前傾斜部13C及び後傾斜部13Dを平面状又は外側に向かい突出するように湾曲させ、B型では、前傾斜部13C及び後傾斜部13Dの一部に内側に向かい凹むように湾曲させた凹部を形成した。また、道路縁石10は、共に、合成樹脂により内部を密実として形成し、長さは100cm、幅は20cm、高さは8cmとした。
【0022】
作製したA型、B型の道路縁石10について、それぞれ、伸長方向を縦にし、試験走行路に10m間に4個ずつ縦列に設置した。各道路縁石10の間隔は1.5mである。また、試験走行路には、雪氷路面と同程度の摩擦係数となるように、散水車により水を散布した。そののち、除雪車をプラウが道路縁石10にすれすれに掛るように速度50km/hで3回走行させた。走行中の状況を観察すると共に、1回の走行ごとに、除雪車通過後、A型、B型の各道路縁石10について、飛散の有無、水平方向・縦断方向の移動量、道路縁石10のクラック及び変形等を測定した。その結果を表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
表1に示したように、A型、B型とも、除雪車のプラウの引掛けによる飛散はなかった。また、A型、B型とも、若干のずれは見られたが、アンカーボルトのための貫通孔12Aの遊び分の移動であり、それ以上の移動は確認されなかった。なお、A型の1個については、後傾斜部13Dの側の上部がプラウの後側にある押え板によって薄く削られたが、形状等に影響はなかった。これは、何かの衝撃で跳ねあがったプラウが道路縁石10の上に着地し、その際に削られたものと思われる。
【0025】
また、走行中の状況を観察した結果は、A型の場合、プラウ衝突時に、プラウが道路縁石10の上を滑るように通過し、プラウの弾みは全く見られなかった。一方、B型では、プラウ衝突時に、プラウが道路縁石10の上で跳ねあがり、その衝撃でプラウの押え板が変形した。
【0026】
すなわち、底面11の右前方と左後方の角が欠けた形状とするようにすれば、除雪作業時に除雪車のプラウが衝突しても、衝撃を緩和して、道路縁石10の飛散及び変形を抑制することができることが分かった。また、前傾斜部13C及び後傾斜部13Dを平面状又は外側に向かい突出するように湾曲させるようにすれば、より衝撃が緩和され、好ましいことが分かった。
【0027】
(実施例2)
内部を一部中空のはにかむ構造としたことを除き、他は実施例1のA型と同様にして道路縁石10を作製し、同様にして走行実験を行った。その結果、実施例1と同様に、飛散はなく、本体のひび、割れ、変形等もなかった。移動は若干見られたが、実施例1と同程度であり、遊び分の移動であった。すなわち、道路縁石10の内部を中空状としても同様の効果が得られることが分かった。
【0028】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、道路縁石1の本体の構成について説明したが、例えば、上面又は側面に反射板などが取り付けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
道路の中央分離や車線分離等に用いることができる。
【符号の説明】
【0030】
10…道路縁石、11…底面、11A…右辺、11B…左辺、11C…前辺、11D…後辺、11E,11F…前端部、11G,11H…後端部、12…上面、12A…貫通孔13…側面、13A…右傾斜部、13B…左傾斜部、13C…前傾斜部、13D…後傾斜部、13E…立上部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の車線に沿って設置されるように一方向に伸長され、
底面と、上面と、これらを結ぶ側面とを備え、
前記底面は、伸長方向の一方を前方として上から見て、右辺と、左辺と、前辺と、後辺とを有し、
前記右辺の前端部は伸長方向において前記左辺の前端部よりも後ろ側に位置すると共に、前記右辺の後端部は伸長方向において前記左辺の後端部よりも後ろ側に位置し、
前記前辺及び前記後辺はそれぞれ外側に向かって突出するように湾曲している
ことを特徴とする道路縁石。
【請求項2】
前記上面の外周は前記底面よりも小さく、
前記側面は、前記底面の右辺、左辺、前辺、及び後辺に対応する領域に、前記底面側から前記上面側に向かい内側に傾斜した右傾斜部、左傾斜部、前傾斜部、及び後傾斜部をそれぞれ有する
ことを特徴とする請求項1記載の道路縁石。
【請求項3】
前傾斜部及び後傾斜部は、平面状又は外側に向かい突出するように湾曲している
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の道路縁石。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−91940(P2013−91940A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233511(P2011−233511)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(509077200)株式会社ネクスコ・メンテナンス東北 (3)
【出願人】(395001161)日の丸合成樹脂工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】