説明

遠心ファンおよびプロジェクター

【課題】落下衝撃による動作不良を防止する遠心ファン、この遠心ファンを備えるプロジェクターを提供する。
【解決手段】遠心ファン5は、回転軸RA方向から吸気口を介して吸気した空気を、回転による遠心力方向に吐出口723を介して吐出する遠心ファン5であって、回転軸RAを中心に複数の羽根62を有する羽根車6と、羽根車6を回転自在に支持する筺体7と、を備え、筺体7は、第1吸気口712を有する第1筺体71を備え、第1吸気口712の縁端部712Aは、断面が羽根車6側に広くなる傾斜部714を有して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心ファン、および遠心ファンを備えるプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクター等では、冷却ファンを有する冷却機構により、外部の空気を吸気して、外装筺体内部の発熱する部品等に吐出することにより、部品の温度上昇を防止している。また、外装筺体内部の空気を吸気して外部に排出し、外装筺体内部の温度上昇を防止している。冷却ファンとしては、回転軸方向から吸気した空気を、同じく回転軸方向に吐出する軸流ファンや、回転軸方向から吸気した空気を、回転による遠心力方向に吐出する遠心ファン等が用いられている。
【0003】
特許文献1の冷却ファン(遠心ファン)では、ファンケースにおいて、吸風口の開口周縁部に肉厚部を有し、少なくとも肉厚部の開口面がファンケースの内部側が狭くなるテーパー状に形成されているか、もしくは凸状の曲面に形成されていることが開示されている、この構成により、気体の吸引量の減少を防止すると共に、ファンケースに発生する共振振動を低減するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−108998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、遠心ファンを備えたプロジェクターを落下させた場合、遠心ファンにも衝撃荷重が加わる。遠心ファンに衝撃荷重が加わった場合、遠心ファンを構成する羽根車が、羽根車を支持する筺体に形成される吸気口としての開口部から部分的に飛び出すことがある。そして、羽根車が元の位置に戻ろうとするとき、開口部のエッジ部分に食い付き、元に戻らなくなるという不具合が発生する場合がある。食い付きが発生することにより、遠心ファンは動作不良になるという課題がある。
従って、落下衝撃による動作不良を防止する遠心ファン、この遠心ファンを備えるプロジェクターが要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係る遠心ファンは、回転軸方向から吸気口を介して吸気した空気を、回転による遠心力方向に吐出口を介して吐出する遠心ファンであって、回転軸を中心に複数の羽根を有する羽根車と、羽根車を回転自在に支持する筺体と、を備え、筺体は、吸気口を有する第1筺体を備え、吸気口の縁端部の少なくとも一部には、断面が羽根車側に広くなる傾斜部を有して形成されていることを特徴とする。
【0008】
このような遠心ファンによれば、第1筺体の吸気口の縁端部の断面が、羽根車側が広くなる傾斜部を有して形成されているため、落下衝撃が加わった場合に、羽根車が傾斜部に当接した後、元の位置に戻ることができ、縁端部に食い付くことを防止できる。従って、落下衝撃による動作不良を防止することができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例に係る遠心ファンにおいて、傾斜部は、凸状の曲線形状の断面を有して形成されていることが好ましい。
【0010】
このような遠心ファンによれば、傾斜部は、凸状の曲線形状の断面を有することで、更に食い付きを防止できる。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係る遠心ファンにおいて、少なくとも一部の縁端部には、吸気方向とは反対側に突出する突出部を備えていることが好ましい。
【0012】
このような遠心ファンによれば、例えば、第1筺体の縁端部の厚さが薄く、傾斜部を十分にとれない場合、縁端部に突出部を備えることにより、傾斜部を備えることができる。これにより、第1筺体の縁端部の厚さが薄い場合でも、羽根車が縁端部に食い付くことを防止でき、落下衝撃による動作不良を防止することができる。さらに縁端部の強度を高めることができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例に係る遠心ファンにおいて、縁端部と当該縁端部に直近となる羽根車の外面との回転軸と垂直な方向における距離をD1とし、羽根車の回転軸に対して前記外面に相対する外面と当該相対する外面の直近となる筺体の内面との距離をD2とした場合、傾斜部は、D1≦D2となるD1側の縁端部領域に備えられていることを特徴とする遠心ファン。
【0014】
このような遠心ファンによれば、傾斜部は、D1≦D2となるD1側の縁端部領域、詳細には、吸気口の縁端部と当該縁端部に直近となる羽根車の外面との回転軸と垂直な方向における距離(D1)が、羽根車の回転軸に対して前記外面に相対する外面と当該相対する外面の直近となる筺体の内面との距離(D2)以下となる距離(D1)側の縁端部領域、に備えられる。これにより、落下衝撃で羽根車が食い付き易い領域(D1≦D2となるD1側の縁端部領域)に傾斜部を備えることができ、効率的に落下衝撃による動作不良を防止することができる。また第1筺体の縁端部の厚さが薄い場合、落下衝撃で羽根車が食い付き易い領域に突出部を設けて傾斜部を備えることができ、落下衝撃による動作不良を効率的に防止することができる。
【0015】
[適用例5]上記適用例に係る遠心ファンにおいて、第1筺体は、板状の金属部材で形成されていることが好ましい。
【0016】
このような遠心ファンによれば、第1筺体が板状の金属部材で形成されて、遠心ファンの薄型化が図られる場合にも、好適に、羽根車が縁端部に食い付くことを防止でき、落下衝撃による動作不良を防止することができる。
【0017】
[適用例6]本適用例に係るプロジェクターは、上述したいずれかの遠心ファンと、光束を射出する光源装置と、光源装置から射出された光束を画像情報に応じて変調する光変調装置と、を備えることを特徴とする。
【0018】
このようなプロジェクターによれば、落下衝撃による動作不良を防止することができる遠心ファンを備えることにより、プロジェクターが落下された場合にも、安定した冷却を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態に係るプロジェクターの概略構成を模式的に示す図。
【図2】遠心ファンの概構成を示す図。
【図3】遠心ファンの概断面図。
【図4】第2実施形態に係る遠心ファンの傾斜部の概断面図。
【図5】第3実施形態に係る遠心ファンの突出部を示す概斜視図。
【図6】第3実施形態に係る遠心ファンを示す概断面図。
【図7】第4実施形態に係る遠心ファンの傾斜部の概断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
【0021】
図1は、第1実施形態に係るプロジェクター1の概略構成を模式的に示す図である。なお、図1は、机上に設置されるプロジェクター1の内部構成を上方から見た図である。図1を参照して、本実施形態のプロジェクター1の概略構成を説明する。
【0022】
図1を含む以降の図面では、説明の便宜上、XYZ直交座標系で記載する。XYZ直交座標系は、光源装置30から射出された光束の進行方向となる照明光軸OAに沿う方向をX(+X)方向とし、X方向に直交し、投写レンズ35から画像光が射出される方向をY(+Y)方向とする。さらに、X方向およびY方向に直交し、かつ、机上設置姿勢での上方向(重力方向に逆らう方向)をZ方向(+Z)とする。また、図1を含む以降の図面では、各構成要素を図面上で認識できる程度の大きさとするため、各構成要素の寸法や比率を実際のものとは適宜異ならせて示している。
【0023】
本実施形態のプロジェクター1は、光源から射出される光束を画像情報(画像信号)に応じて変調してスクリーン等の投写面に拡大投写する電子機器である。このプロジェクター1は、図1に示すように、外装を構成する外装筺体2、外装筺体2内部に配設される光学ユニット3及び冷却ファン(排気ファン)としての遠心ファン5等を備える。
【0024】
外装筺体2は、略直方体形状を有している。外装筺体2の+Y方向の側面には、光学ユニット3の後述する投写レンズ35から投写された画像を通過させるための画像用開口部21が形成されている。また、画像用開口部21の−X方向の側面には、外装筺体2内部の温まった空気を、遠心ファン5により、外部に排出するための排気口22が形成されている。
【0025】
光学ユニット3は、画像情報に応じて光束を変調して投写するものであり、図1に示すように、X方向に沿って延出すると共に、一端側がY方向に向けて延出する平面視略L字形状を有する。
【0026】
光学ユニット3は、図1に示すように、光源ランプ301、リフレクター302、及びランプハウジング303を有する光源装置30と、レンズアレイ311,312、偏光変換素子313、重畳レンズ314、及び平行化レンズ315を有する照明光学装置31とを備える。また、光学ユニット3は、ダイクロイックミラー321,322、及び反射ミラー323を有する色分離光学装置32と、入射側レンズ331、リレーレンズ333、及び反射ミラー332,334を有するリレー光学装置33とを備える。また、光学ユニット3は、光変調装置としての3つの液晶パネル341、3つの入射側偏光板342、3つの出射側偏光板343、及び色合成光学装置としてのクロスダイクロイックプリズム344を有する光学装置34と、投写光学装置としての投写レンズ35とを備える。また、光学ユニット3は、光源装置30、照明光学装置31、色分離光学装置32、リレー光学装置33、及び光学装置34を内部に収容すると共に、投写レンズ35を所定位置で支持固定する光学部品用筺体36を備える。
【0027】
光学ユニット3における概略の動作を説明する。
上述した構成により、光源装置30から射出されて照明光学装置31を経た光束は、色分離光学装置32により、赤色光、緑色光、青色光の3つの色光に分離される。また、分離された各色光は、各液晶パネル341により画像情報に応じてそれぞれ変調される。変調された各色光は、クロスダイクロイックプリズム344により合成されて画像光を形成し、投写レンズ35によりスクリーン(図示省略)等に投写される。
【0028】
図2は、遠心ファン5の概構成を示す図であり、図2(a)は、遠心ファン5の斜視図であり、図2(b)は、遠心ファン5を上方から見た平面図である。図3は、遠心ファン5の概断面図であり、図3(a)は、図2(b)のI−I断面図であり、図3(b)は、図3(a)のA部拡大図である。図2、図3を参照して、遠心ファン5の構成及び動作を説明する。
【0029】
遠心ファン5は、図1に示すように、排気口22近傍に設置され、外装筺体2内部の温まった空気を、排気口22を介して外部に排出する。遠心ファン5は、図2に示すように、羽根車6と筺体7とを備える。
【0030】
羽根車6は、図2(b)に示すように、円筒状の軸部61に複数の羽根62が設置されて一体化され、筺体7内部において、回転軸RAを中心として回転可能に軸支される。複数の羽根62は、羽根車6の回転方向R1に対して後向きに曲がるように形成されている。本実施形態の遠心ファン5は、いわゆるターボファンで構成されている。
【0031】
筺体7は、羽根車6を内部に収納する部材である。筺体7は、図2に示すように、上面7Aを形成する第1筺体71と、底面7B及び側面7Cを形成する第2筺体72との2体で構成されている。第1筺体71は、板状の金属部材で形成されている。第2筺体72は、合成樹脂部材で概箱状に形成されている。また、第1筺体71は、外周端部に複数の係合孔711を備え、対応して設置される第2筺体72の側面上端部に形成される係合爪721と係合することで、第2筺体72に固定される。
【0032】
第1筺体71には、回転軸RAを中心として円形状に開口する第1吸気口712が形成されている。また、第2筺体72には、同様に、回転軸RAを中心として、底面7Bに3つの円弧状長孔が円状に並ぶ第2吸気口722が形成されている。従って、第1吸気口712、第2吸気口722は、羽根車6を挟み、回転軸RAに沿って並設された状態となる。このように、本実施形態の遠心ファン5は、上面7Aの第1吸気口712と底面7Bの第2吸気口722との2つの吸気口を備えており、2つの吸気口から空気を筺体7内部に吸気する構造となっている。
【0033】
また、筺体7は、第2筺体72の+Y方向側面が形成されておらず開口されている。この第2筺体72の開口と第1筺体71とにより、吐出口723が形成される。なお、底面7Bには、具体的な図示は省略するが、リード線を介して外部から電力が供給され、回転軸RAを中心として羽根車6を回転させるためのドライバー回路(回路基板)が設置されている。
【0034】
従って、遠心ファン5は、羽根車6が回転方向R1に回転軸RAを中心に回転することにより、第1吸気口712及び第2吸気口722を介して空気を内部に吸入し、吐出口723を介して外部に吐出する動作を行う。
【0035】
ここで、図1に戻り、遠心ファン5は、外装筺体2内部の、光源装置30の近傍で、排気口22に隣接して設置されている。また、遠心ファン5は、底面7B(図2参照)を外装筺体2の底面側(−Z方向)に向け、上面7Aを上面側(+Z方向)に向け、吐出口723を排気口22に向けて設置されている。また、遠心ファン5は、上面7Aと外装筺体2の上面との間に隙間が設けられ、同様に、底面7Bと外装筺体2の底面との間にも隙間が設けられて設置されている。
【0036】
このように設置された遠心ファン5は、羽根車6が回転軸RAを中心として回転することで、外装筺体2内部の空気、特に、光源装置30の温められた空気を、上面7A側の隙間及び底面7B側の隙間から第1吸気口712及び第2吸気口722(図2参照)を介してそれぞれ吸入する。また、遠心ファン5は、吸入した空気を、吐出口723から排気口22を介して外装筺体2外部に吐出する。この遠心ファン5の動作により、プロジェクター1内部の温度を適正な温度に維持している。
【0037】
図3に示すように、第1筺体71の第1吸気口712の縁端部712Aは、全周にわたって吸気方向とは逆側に突出する突出部713が形成されている。なお、吸気方向とは、回転軸RAに沿った方向で、第1吸気口712から羽根車6の方向(−Z方向)となる。従って、突出部713は、+Z方向に突出して形成されている。
【0038】
また、縁端部712Aの突出部713の羽根車6に相対する側の全周にわたって、図3(b)に示すように、断面が羽根車6側に広くなり、凸状の曲線形状714Aを有する傾斜部714が形成されている。なお、本実施形態の突出部713及び傾斜部714は、板状の金属部材で形成される第1筺体71に対して絞り加工を行うことで形成している。
【0039】
上述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
本実施形態の遠心ファン5によれば、第1吸気口712の縁端部712Aは、全周にわたって、吸気方向とは逆側に突出する突出部713を備え、縁端部712Aの羽根車6に相対する側は、断面が羽根車6側に広くなる傾斜部714が形成される。これにより、第1筺体71の第1吸気口712の縁端部712Aの厚さが薄い場合でも、傾斜部714を十分にとることができる。そのため、落下衝撃が加わった場合に、羽根車6が傾斜部714に当接した後、元の位置に戻ることができ、縁端部712Aに食い付くことを防止できる。従って、落下衝撃による動作不良を防止することができる。
【0040】
本実施形態の遠心ファン5によれば、第1筺体71は、板状の金属部材で形成されると共に、突出部713の傾斜部714は、凸状の曲線形状714Aを有している。これにより、第1筺体71に対して、絞り加工を行うことで、凸状の曲線形状714Aを有する突出部713を効率的に形成することができる。
【0041】
本実施形態の遠心ファン5によれば、第1筺体71は、板状の金属部材で形成されると共に、第1吸気口712の縁端部712Aは、全周にわたって突出部713を備えている。これにより、第1筺体71の厚さが薄い場合にも、第1筺体71の剛性力を向上させることができる。
【0042】
本実施形態のプロジェクター1によれば、落下衝撃による動作不良を防止することができる遠心ファン5を備えることにより、プロジェクター1が落下された場合にも、安定した冷却を維持することができる。
(第2実施形態)
【0043】
図4は、第2実施形態に係る遠心ファン5の傾斜部714の概断面図である。図4を参照して、本実施形態の傾斜部714の構成を説明する。
【0044】
本実施形態の遠心ファン5は、突出部713の傾斜部714の形状が、第1実施形態の傾斜部714の形状と異なっている。その他の構成は、第1実施形態と同様となる。傾斜部714は、図4に示すように、断面が羽根車6側に広くなる直線形状714Bに形成されている。
【0045】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する他、以下の効果が得られる。
本実施形態の遠心ファン5によれば、傾斜部714が直線形状714Bの断面を有して形成されていてもよく、第1実施形態での凸状の曲線形状714Aと合わせて、傾斜部714の形状の自由度を向上させることができる。
(第3実施形態)
【0046】
図5は、第3実施形態に係る遠心ファン5の突出部715を示す概斜視図である。図6は、第3実施形態に係る遠心ファン5を示す概断面図である。図5、図6を参照して、本実施形態の突出部715の構成及び突出部715に形成される傾斜部の構成を説明する。
【0047】
本実施形態の突出部715は、基本的に第1実施形態の突出部713と同様の向きで構成される。そして、突出部715は、図5に示すように、第1吸気口712の縁端部712Aの全周には形成されず、一部に形成されていることが第1実施形態と異なる点である。
【0048】
突出部715は、詳細には、第1筺体71の外形と第1吸気口712との距離Fが狭くなる領域に備えられている。突出部715は、更に詳細には、図5に示すように、B部及びC部の領域に備えられている。また、B部及びC部以外の領域となるE部の領域には、突出部715は備えられていない。
【0049】
そして、突出部715の羽根車6に相対する縁端部712Aには、断面が羽根車6側に広くなる傾斜部(図示省略)を有して形成されている。なお、この傾斜部の断面形状は、第1実施形態の凸状の曲線形状714A(図3(b)参照)または第2実施形態の直線形状714B(図4参照)のいずれかを用いて形成することができる。なお、突出部715が形成されない縁端部712A(E部の領域)には、傾斜部は形成されない。
【0050】
図6を参照して、上述する突出部715及び傾斜部を、第1筺体71の外形と第1吸気口712との距離Fが狭くなる領域に備えるに至った経緯を説明する。
【0051】
図6は遠心ファン5の回転軸RAを含む面で切断した断面を示しており、遠心ファン5に突出部715を備えない状態を基準として、第1吸気口712の縁端部712A(この場合、第1吸気口712の外面)と縁端部712Aに直近となる羽根車6の外面621との回転軸RAと垂直な方向における距離をD1とし、回転軸RAに対して外面621に相対する外面622とこの外面622の直近となる第2筺体72の内面724との距離をD2とする。
【0052】
そして、距離D1≦距離D2の場合、距離D2となる側を落下方向として落下させた場合、落下衝撃により外面622と内面724が衝突する。このとき距離D1≦距離D2であるため、距離D1となる側の羽根車6の外面621が、縁端部712Aより回転軸RA側となり、羽根車6が第1吸気口712から一旦飛び出し、そして元の位置に戻ろうとする。このときに外面621が縁端部712Aに引っ掛かって食い付いてしまう。
【0053】
よって、距離D1が、距離D2以下の場合、距離D2となる側を落下方向として落下させた場合、距離D1となる側は、羽根車6の外面621が縁端部712Aに食い付き易くなる。このため、距離D1≦距離D2となる場合に、距離D1となる側の縁端部712Aの領域に傾斜部を備えることにした。
逆に距離D1>距離D2となる場合では、遠心ファン5を落下させた場合に外面622と内面724が衝突しても距離D1>距離D2であるため、外面621は縁端部712Aよりも第2筺体72側にあり羽根車6は第1吸気口712より飛び出すことは無いので、食い付きも発生せず、傾斜部および突出部を必要としない。
【0054】
なお、本実施形態の第1筺体71は、第1実施形態と同様に、板状の金属部材で形成されており、傾斜部を設置するには薄いため、傾斜部を設置できるように、第1実施形態と同様に、絞り加工を行うことで突出部715を形成し、併せて、傾斜部を形成している。また、第2筺体72の側面7Cの厚さは略同一の厚さに形成されるため、結果的に、突出部715は、第1筺体71の外形と第1吸気口712との距離Fが狭くなる領域に備えることになる。
【0055】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する他、以下の効果が得られる。
本実施形態の遠心ファン5によれば、第1筺体71の第1吸気口712の縁端部712Aの厚さが薄く、傾斜部を十分にとれない場合、B部及びC部の領域の縁端部712Aに突出部715を備えることにより、傾斜部を十分にとることができるため、落下衝撃で羽根車6が食い付き易い領域に突出部715を備えることができ、その領域に傾斜部を備えることができる。言い換えると、傾斜部は、第1吸気口712の縁端部712A(本実施形態では第1吸気口712の外面)と縁端部712Aに直近となる羽根車6の外面621との距離をD1とし、羽根車6の回転軸RAに対して外面621に相対する外面622とこの外面622の直近となる第2筺体72の内面724との距離をD2とした場合、距離D1≦距離D2となる場合に、距離D1となる側の縁端部712Aの領域に傾斜部を備えている。これにより、落下衝撃で羽根車6が食い付き易い領域(D1≦D2となるD1側の縁端部712Aの領域)に傾斜部を備えることができ、効率的に落下衝撃による動作不良を防止することができる。これにより、第1筺体71の第1吸気口712の縁端部712Aの厚さが薄い場合、落下衝撃で羽根車6が食い付き易い領域に突出部715を設けて傾斜部を備えることができ、落下衝撃による動作不良を効率的に防止することができる。
【0056】
本実施形態の遠心ファン5によれば、突出部715(傾斜部)は、必要以外の領域(E部の領域、言い換えると、D1>D2となるD1側の縁端部712Aの領域)には備えていない。従って、プロジェクター1の薄型化を図る場合にも、突出部715(傾斜部)を備えない領域において、隙間をより多く確保することができ、空気をより多く吸気することができることにより、効率的に冷却を行うことができる。
(第4実施形態)
図7は、第4実施形態に係る遠心ファン5の傾斜部751の概断面図である。図7を参照して、本実施形態の傾斜部751の構成を説明する。
【0057】
本実施形態の遠心ファン5において、筺体7を構成する第1筺体75は、第1実施形態の第1筺体71と比較して、合成樹脂部材により形成され、板厚も厚く形成されている。そのため、第1筺体75は、傾斜部751を形成するに十分な厚さを有し、第1実施形態での突出部713を備えていない。また、第2筺体72との固定構造(図示省略)も若干異なる。その他の構成は、第1実施形態と同様となる。
【0058】
第1筺体75は、第1吸気口712の縁端部712Aの全周にわたって、傾斜部751を備えている。なお、傾斜部751は、断面が羽根車6側に広くなるように形成されている。
【0059】
図7(a)に示す傾斜部751は、断面が凸状の曲線形状751Aに形成されている。図7(b)に示す傾斜部751は、断面が直線形状751Bに形成されている。
【0060】
図7(c)に示す傾斜部751は、第1吸気口712の縁端部712Aの羽根車6に相対する側から上部に向かって形成されている。詳細には、傾斜部751は、断面が凸状の曲線形状751Cに形成されている。図7(d)に示す傾斜部751も、図7(c)に示す傾斜部751と同様に、第1吸気口712の縁端部712Aの羽根車6に相対する側から上部に向かって形成されている。詳細には、傾斜部751は、断面が直線形状751Dに形成されている。
【0061】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する他、以下の効果が得られる。
本実施形態の遠心ファン5によれば、第1筺体75が、傾斜部751を形成するに十分な厚さを有している場合には、第1実施形態での突出部713を備える必要が無く、また、上述したように、傾斜部751の断面形状の自由度を向上させることができる。
【0062】
なお、上述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更や改良等を加えて実施することが可能である。変形例を以下に述べる。
【0063】
前記第1実施形態の遠心ファン5の傾斜部714は、凸状の曲線形状714Aの断面を有して形成されている。また、第2実施形態の遠心ファン5の傾斜部714は、直線形状714Bの断面を有して形成されている。しかし、これに限られることなく、凸状の曲線形状と直線形状とを組み合わせた形状であってもよい。これは、第2、第3、第4実施形態においても同様となる。
【0064】
前記第1実施形態の遠心ファン5における第1筺体71の突出部713は、絞り加工で形成されているが、その他の方法で形成されていてもよい。また、第1筺体71は金属ではなく合成樹脂部材で形成され、突出部も合成樹脂部材で形成されていてもよい。これは、第2、第3実施形態においても同様となる。
【0065】
前記第4実施形態の遠心ファン5における第1筺体75は、傾斜部751が確保できる板厚を有する合成樹脂部材で形成され、突出部を有していない。これは、第2、第3実施形態においても、適用できる。また、第3実施形態においては、図5におけるB部及びC部の領域に傾斜部751を設置することでよい。
【0066】
前記実施形態(第1〜第4実施形態)では、遠心ファン5は、第1吸気口712、第2吸気口722を有する両側吸込み型のターボファンで構成されている。しかし、これに限られず、第1吸気口712、第2吸気口722のいずれか1つを有する片側吸込み型のターボファンで構成されていてもよい。
【0067】
前記実施形態では、遠心ファン5は、いわゆるターボファンで構成されているが、これに限られず、シロッコファンで構成されていてもよい。
【0068】
前記実施形態では、遠心ファン5をプロジェクター1内部(外装筺体2内部)の温まった空気を外装筺体2外部に排気する排気ファンとして使用している。しかし、これに限られず、プロジェクター1外部の空気を吸気して、光学ユニット3の発熱する部品や、その他発熱する部品(例えば、電源装置)等に吐出して冷却させるために使用してもよい。
【0069】
前記実施形態のプロジェクター1の光学ユニット3において、光源ランプ301は、超高圧水銀ランプを用いている。しかし、これに限定されず、高輝度発光する種々の放電型のランプを採用することができ、例えば、メタルハライドランプや高圧水銀ランプ等を採用することができる。
【0070】
前記実施形態のプロジェクター1の光学ユニット3において、射出された光束の照度を均一化する光学系として、レンズアレイ311,312からなるレンズインテグレーター光学系を用いているが、これに限定されるものではなく、導光ロッドからなるロッドインテグレーター光学系も用いることができる。
【0071】
前記実施形態のプロジェクター1の光学ユニット3において、光変調装置としての液晶パネル341は、透過型の液晶パネルを用いているが、反射型の液晶パネル等、反射型の光変調装置を用いることも可能である。
【0072】
前記実施形態のプロジェクター1の光学ユニット3において、光変調装置として液晶パネル341を用いている。しかし、これに限られず、一般に、入射光束を画像信号に応じて変調するものであればよく、マイクロミラー型の光変調装置等を用いてもよい。なお、マイクロミラー型光変調装置としては、例えば、DMD(Digital Micromirror Device)を用いることができる。
【0073】
前記実施形態のプロジェクター1の光学ユニット3において、光変調装置は、赤色光、緑色光、青色光に対応して3つの液晶パネル341を用いる、いわゆる3板方式を採用している。しかし、これに限られず、単板方式を採用してもよい。また、コントラストを向上させるための液晶パネルを追加して採用してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…プロジェクター、5…遠心ファン、6…羽根車、7…筺体,光源装置、62…羽根、71,75…第1筺体、712…第1吸気口、712A…縁端部、713…突出部、714…傾斜部、714A…凸状の曲線形状、714B…直線形状、715…突出部、723…吐出口、751…傾斜部、751A,751C…凸状の曲線形状、751B,751D…直線形状、341…液晶パネル、D1,D2…距離、RA…回転軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸方向から吸気口を介して吸気した空気を、回転による遠心力方向に吐出口を介して吐出する遠心ファンであって、
前記回転軸を中心に複数の羽根を有する羽根車と、
前記羽根車を回転自在に支持する筺体と、を備え、
前記筺体は、前記吸気口を有する第1筺体を備え、
前記吸気口の縁端部の少なくとも一部には、断面が前記羽根車側に広くなる傾斜部を有して形成されていることを特徴とする遠心ファン。
【請求項2】
請求項1に記載の遠心ファンであって、
前記傾斜部は、凸状の曲線形状の前記断面を有して形成されていることを特徴とする遠心ファン。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の遠心ファンであって、
前記少なくとも一部の縁端部には、吸気方向とは反対側に突出する突出部を備えていることを特徴とする遠心ファン。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の遠心ファンであって、
前記縁端部と当該縁端部に直近となる前記羽根車の外面との前記回転軸と垂直な方向における距離をD1とし、前記羽根車の回転軸に対して前記外面に相対する外面と当該相対する外面の直近となる前記筺体の内面との距離をD2とした場合、
前記傾斜部は、D1≦D2となるD1側の前記縁端部領域に備えられていることを特徴とする遠心ファン。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の遠心ファンであって、
前記第1筺体は、板状の金属部材で形成されていることを特徴とする遠心ファン。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の遠心ファンと、
光束を射出する光源装置と、
前記光源装置から射出された光束を画像情報に応じて変調する光変調装置と、を備えることを特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−64347(P2013−64347A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202806(P2011−202806)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】