説明

遠心ファン装置用ブレード、遠心ファン装置及びそれを備えた電子機器

【課題】ブレード部の先端に発生する空気の渦を分流して小さくし、それらの渦の流れる方向を分けることで分流した渦の再結合を防止して騒音を低減させ、広範囲の冷却を可能にする遠心ファン装置用ブレード、遠心ファン装置及びそれを備えた電子機器を提供することを目的とする。
【解決手段】遠心ファンのブレード部22は、遠心ファンの厚み方向で途中から分割され、第1のブレード部25と第2のブレード部26となり、その第1のブレード部25と第2のブレード部26は互いに遠心ファンの径方向で異なる方向に伸びることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の筐体内部に実装された超小型演算処理装置(以下、MPUと称する)などの発熱体の冷却に用いる遠心ファン装置で、その発熱体と熱接続された受熱体から放熱体までの熱輸送をヒートパイプや液体冷媒の循環などの方式により効率的に行った後、その放熱体を強制的に送風冷却する遠心ファン装置用ブレード、遠心ファン装置及びそれを備えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近のコンピュータにおけるデータ処理の高速化の動きはきわめて急速であり、MPUのクロック周波数は、以前と比較して格段に高いものになってきている。
【0003】
その結果、MPUの発熱量が増大し、従来のように放熱フィンを有するヒートシンクを発熱体に接触させて放熱する方法だけでなく、そのヒートシンクをファンで直接冷却する方法、あるいはその発熱体と熱接続された受熱体から放熱体までをヒートパイプを用いて熱輸送したヒートシンクモジュールを構成して、その放熱体をファンの送風で強制冷却する方法、さらには、熱伝導性の高い液体冷媒をポンプによって強制循環させ受熱体と放熱体との間で熱輸送された放熱体を遠心ファン装置により強制的に送風して放熱する方法などが必要不可欠となっている。
【0004】
一方、前述した遠心ファン装置の冷却性能の向上は、その高風量化、高静圧化などの送風性能の向上に大きく依存し、通常遠心ファン装置の送風性能は遠心ファンの回転速度を上昇させて改善することが可能である反面、その遠心ファンのブレード部の風きり音(以下、ファン騒音と称する)も増大する傾向を示すことから、そのファン騒音を低減するために色々なブレード部の形状やオリフィスの形状などが提案されている。
【0005】
一般的に、そのようなファン騒音は離散周波数騒音と広帯域ランダム騒音に分類されているが、特に離散周波数騒音は、ブレード部(羽根板とも称する)の回転面(正圧面および負圧面)の空気が回転運動するブレード部が通過するたびに生じる空気の圧力変動に起因して発生する空気の渦によるものである。
【0006】
つまり、離散周波数騒音はブレード部の通過に同期して発生するため、ブレード部の枚数とファン回転数の積を基本周波数とする高調波騒音であって、ファン騒音の大部分をこの離散周波数騒音が占めていることから、離散周波数騒音すなわち大きな空気の渦の発生を低減させることがファン騒音の低減に有効であることも知られている。
【0007】
従来の離散周波数騒音を低減する方法として、ファンの対向する2つのブレード外周端に段差を有し、段差にブレードの回転軸を中心とした円環板を設けたものがあった(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−257113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のようにブレード外周端に段差を有し、段差にブレードの回転軸を中心とした円環板を設けたものでは、ファン先端に発生する離散周波数騒音の元となる渦を分流し小さくすることができるが、遠心ファン装置の厚さが薄いために上下の先端で発生する渦同士の距離が近く、また渦の移動方向が同じなので、渦同士が再度合体しやすく分流前の渦に戻ることがある。その結果、騒音を大幅に低減することが困難であった。
【0010】
また、回転するブレードからの風向きは一方向になってしまい、ファン装置から吹き出される風は偏ってしまい、狭い範囲の冷却には好適である一方、広範囲の冷却では課題があった。
【0011】
そこで、本発明は上記課題を鑑みて、ブレード部の先端に発生する空気の渦を分割分流して小さくし、それらの渦の流れる方向を分けることで分流した渦の再結合を防止して騒音を低減させ、広範囲の冷却を可能にする遠心ファン装置用ブレード、遠心ファン装置及びそれを備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために、径方向に伸びるブレード部を備える遠心ファン装置用ブレードであって、ブレード部は、径方向内側において遠心ファン装置用ブレードの厚み方向に一体である第1の領域と、径方向外側において遠心ファン装置用ブレードの厚み方向に複数に分割された第2の領域と、を備え、第2の領域において分割された複数の先端部は、遠心ファン装置用ブレードの周方向において、互いに異なる方向に伸びることを特徴とする遠心ファン装置用ブレードで、それを備えた遠心ファン装置及びその遠心ファン装置を備えた電子機器である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ブレードの先端に発生する空気の渦を分割分流して小さくし、それらの渦の流れる方向を分けることで分割された渦の再結合を防止して騒音を低減させることができる。また、ブレードから押し出される風を分散させることで、吹き出す風を広範囲に送り出すことができ、広範囲の冷却を可能にすることができる。
【0014】
また、ブレードの形状やブレードが途中から2つに分割させる位置を最適化することで、外気を吸入する能力や吹き出して冷却する能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例における遠心ファン装置の概観図
【図2】本発明の実施例における遠心ファン装置のブレードの斜視図
【図3】本発明の実施例における遠心ファン装置のブレードの拡大図
【図4】本発明の実施例における遠心ファン装置のブレードの形状を示す図
【図5】本発明の実施例における遠心ファン装置のブレードの補強板の他の形態の斜視図
【図6】本発明の実施例における遠心ファン装置のブレードの動作を示す図
【図7】本発明の実施例における遠心ファン装置の他のブレードの形状を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
請求項1に記載の発明は、径方向に伸びるブレード部を備える遠心ファン装置用ブレードであって、ブレード部は、径方向内側において遠心ファン装置用ブレードの厚み方向に一体である第1の領域と、径方向外側において遠心ファン装置用ブレードの厚み方向に複数に分割された第2の領域と、を備え、第2の領域において分割された複数の先端部は、遠心ファン装置用ブレードの周方向において、互いに異なる方向に伸びることを特徴とする遠心ファン装置用ブレードであって、ブレード部の先端を途中から分割させブレード部の径方向で互いに異なる方向に伸びさせることにより、吸入された空気を分割しブレード部の先端で発生する騒音の原因となる空気の渦を小さくさせることができる。更に、渦の発生箇所を離すことができ、その分割された渦の再結合を防止し、遠心ファン装置の騒音を低減させることができる。また、ブレード部から押し出される風を分散させることができ、吹き出す風を広範囲に送り出すことができ、広範囲の冷却が可能となる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、駆動部と、駆動部を収納するハブ部と、ハブ部を中心に伸びるブレード部を有するブレードと、ブレードを支持し、吸気口を備えるフレームと、を備え、ブレード部は、径方向内側においてブレードの厚み方向に一体である第1の領域と、径方向外側においてブレードの厚み方向に複数に分割された第2の領域と、を備え、第2の領域において分割された複数の先端部は、ブレードの周方向において、互いに異なる方向に伸びることを特徴とする遠心ファン装置であって、ブレード部の先端を途中から分割させブレードの径方向で互いに異なる方向に伸びさせることにより、吸入された空気を分割しブレードの先端で発生する騒音の原因となる空気の渦を小さくさせることができるとともに、渦の発生箇所を離すことができ、その分割された渦の再結合を防止し、遠心ファン装置の騒音を低減させることができる。また、ブレードから押し出される風を分散させることができ、吹き出す風を広範囲に送り出すことができ、広範囲の冷却が可能となる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、ブレード部の複数の先端部は、互いに異なる方向に曲線を持って伸び、それぞれの曲線の中心はブレードに対して互いにその回転方向前後に位置することを特徴とする請求項2に記載の遠心ファン装置であって、ブレード部の複数の先端部は互いに逆向きの曲率を有するので、空気の渦の発生箇所や吹き出し箇所を離すことができ、その分割した渦の再結合を防止し、遠心ファン装置の騒音を低減させることができる。さらに、外気は遠心ファン装置に吸い込まれた後、曲面に沿ってブレード部から滑らかに吹き出され、ブレードの送風効率を良くすることができる。また、ブレード部から押し出される風を分散させることができ、吹き出す風を広範囲に送り出すことができ、広範囲の冷却が可能となる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、第1の領域と第2の領域との境界は、フレームに設けられた吸気口の外径よりも外側にあることを特徴とする請求項2に記載の遠心ファン装置であって、ブレード部が分割されている部分と吸気口の面とをオーバーラップさせないことで、ブレード部の分割されていない部分で吸気口から大量に外気を吸気することができ、それを吹き出し冷却のための空気として利用することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の遠心ファン装置を備えたことを特徴とする電子機器であって、ブレード部はブレードの軸方向で分割され、遠心ファンの径方向で互いに異なる方向に伸びる遠心ファン装置を電子機器に備えたことにより、電子機器における遠心ファン装置による騒音を低減することができる。
【0021】
(実施例)
以下本発明の実施例について図面を用いて説明する。なお、各図面において、カバー側を上方、フレーム側を下方として説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施例における遠心ファン装置の概観図であり、(a)は上方からの斜視図であり、(b)は下方からの斜視図である。
【0023】
まず、図1(a)で示したように遠心ファン装置11のファンケーシング12は、下部に位置するフレーム12aと上部に位置するカバー12bとにより構成されている。
【0024】
ただし、カバー12bは必ずしも必須ではなく、例えば他の部材の壁などで代用してもよい。
【0025】
ここで、フレーム12aは、樹脂成型、アルミニウム合金のダイカスト成型、またはプレス成形などにより側壁12aaと底壁12abとが一体的に成形され、その2方向にファンケーシング12内に吸入した空気を外部へ排気する排気口13が配設されており、底壁12abには周囲から吸入する空気を通過させる略円形状の吸気口14aが配設されている(図1(b)参照)。
【0026】
一方、カバー12bは、スチール、アルミニウム、銅などの金属材料の打ち抜き成形や樹脂成型によりプレート状に成形されており、その中央部に周囲から吸入する空気を通過させる略円形状の吸気口14bが配設されている。
【0027】
そして、ファンケーシング12は回転駆動されるブレード15を回転自在に収容するので、一対の吸気口14aと吸気口14bはそのブレード15を挟んで対向配置されている。
【0028】
また、ハブ部21内に収納、取り付けられている駆動部であるモータ(図示せず)はブレード15のブレード部22を回転させる。例えば、コイルを巻回したステータと、ステータの周囲に設けられ環状のマグネットをその内側に備えるロータと、を備え、ステータのコイルに電流を流すなどしてモータを構成する。
【0029】
ここで、ブレード15の素材としては、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂材料を用いた一体成形により形成されている。
【0030】
以上のような構成により、吸気口14aと吸気口14bとの両方から吸入されるそれぞれの空気は、ブレード15のハブ部21の内側中央に固定された回転軸18方向において相互に反対方向(ぶつかりあう方向)となって吸入される。
【0031】
図2は、本発明の実施例における遠心ファン装置のブレードの斜視図であり、(a)は上方からの斜視図であり、(b)は下方からの斜視図である。
【0032】
図2に示すようにブレード15は、ハブ部21とハブ部21から伸びる複数のブレード部22、そしてハブ部21の外周にはブレード部22の強度を補強する環状の補強板30により構成され、ブレード15は、時計周りのR方向に回転するようになっている。
【0033】
ここで、ハブ部21からの伸びたブレード部22は、径方向内側においてブレードの厚み方向に一体である第1の領域と、径方向外側においてブレードの厚み方向に複数に分割された第2の領域とを備える。第2の領域では、第1のブレード部25あるいは第2のブレード部26に分割される。すなわち、補強板30がある所を過ぎてから分割され、第1のブレード部25と第2のブレード部26とに分かれる(詳細は後述する)。
【0034】
また、ハブ部21の外周に設けられた環状の補強板30はハブ部21より外側に伸びているブレード部22の根元の強度をアップさせることができる。すなわち、補強板30の平面部にブレード部22の一部の面を一体化(Bの太線部)で構成することで、ブレード部22はハブ部21と補強板30の両者により固定することができる。こうすることで、ブレード15の性能向上のためにブレード部22のブレード枚数を多くし各ブレードのブレード厚が薄くせざるおえなくなった場合でもブレード15の回転力にブレード部22は耐えうることができる。なお、風の整流効果もある。
【0035】
この補強板30の外径は、吸気口14aや吸気口14b(図1参照)の外径と同一かやや小さくするのが好ましい。すなわち、補強板30の外径≦吸気口14aや吸気口14bの外径の関係とする。この構成にすることで、吸気口14aと吸気口14bの上下方向から吸入した空気を衝突させないで第1のブレード部25と第2のブレード部26とに分割されていないブレード部22の広い側面で空気を効果的に抱き込むことができ、ブレード部22の曲面に沿ってブレード部22の外周側へ送り出すことができる。
【0036】
この補強板30が無い場合もあるが、前述したようにブレード部22の強度に課題を残してしまう。また、補強板30の外径が吸気口14aや吸気口14bの外径より大きい場合もあるが、補強板30の外径を大きくすればそれにつれてブレード15の大きさも大きくなってしまう恐れがある。
【0037】
なお、第1のブレード部25及び第2のブレード部26は本実施例では、第1のブレード部25がハブ部21からの距離が長くブレードの長さが長くなっているが、この場合ブレードが長いほう、つまり第1のブレード部25は吸気口の開口部の大きな吸気口14b側に配置されるほうが好ましい。
【0038】
第1のブレード部25あるいは第2のブレード部26のハブ部21からの距離を両者同じ長さにしてもよいが、ブレードが長いほう、つまり第1のブレード部25を吸気口の開口部の大きな吸気口14b側に配置することで、多く吸入できた空気をブレード15の外側に容易に運び出すことができる。
【0039】
この際、ブレード部22すなわち第1のブレード部25や第2のブレード部26の先端は吸気口14a、14b(図1参照)から見て隠れるように吸気口の外径より外側に位置していることが望ましく、第1のブレード部25と第2のブレード部26との長さの比率に応じて、吸気口の大きさを変えることが好ましい。
【0040】
すなわち、ブレード15の厚み方向におけるブレード部22の上端及び下端はファンケーシング12のカバー12b及び底壁12ab(図1参照)との隙間が狭くなり、ブレード部22の先端で気圧の差により発生する騒音の原因となる空気の渦が、ブレード部22の面を乗り越えて隣のブレードに移動して隣の空気の渦と合体するのを防止することができる。
【0041】
また、第1のブレード部25は、回転方向前側に湾曲する、いわゆる前進翼であり、第2のブレード部26は、回転方向後側に湾曲する、いわゆる後進翼である。
【0042】
このようにブレード部22を湾曲させることで、ブレード部22はその径方向に流線型の面になっているので遠心ファン装置11の軸方向から吸い込んだ空気を抵抗なく滑らかに吐き出すことができ、遠心ファン装置11のブレード部22の送風効率を良化させることができる。
【0043】
図3を用いて、ブレード15のブレード部22の形状について説明する。図3は、本発明の実施例における遠心ファン装置のブレードの拡大図であり、(a)は遠心ファンの上面図、(b)は(a)のA−A方向から見た遠心ファンの側面図である。
【0044】
図3において、上述したように、第1のブレード部25は回転方向前側に湾曲しており、第2のブレード部26は回転方向後側に湾曲している。そして、第1のブレード部25の端部間のピッチPの間に第2のブレード部26の端部Qが位置する(詳細は後述する)。
【0045】
好ましくは、第1のブレード部25の端部間のピッチPの中間に第2のブレード部26の端部Qが位置するのがよい。このように配置することで、第1のブレード部25で発生する空気の渦と第2のブレード部26で発生する空気の渦との距離(ブレード15の周方向の距離)を最も離すことができる(詳細は後述する)。
【0046】
また、第1のブレード部25と第2のブレード部26とに分割され始める境界である位置C点は、ブレード15の径方向で吸気口14aや吸気口14b(図1参照)の外径よりも外側に位置する。
【0047】
このように構成することで、ブレード部22が分割され始める分岐点C点と吸気口14aや吸気口14b(図1参照)の面から外しオーバーラップさせないことで、ブレード部22がまだ分割されていない広い側面部分で吸気口14aや吸気口14b(図1参照)から大量に外気を吸気することができ、それを吹き出し冷却のための空気として利用することができる。
【0048】
なお、ブレード15の大きさに応じて、第1のブレード部25と第2のブレード部26は第1のブレード部25と第2のブレード部26で発生した空気の渦が再結合しない程度の長さ(分岐点C点からブレード15の外周までの長さ)と曲面があればよい。
【0049】
ここで、補強板30の外径、吸気口14aや吸気口14bの外径、ブレード部22の分岐点であるC点の位置そしてブレード15の外径についてまとめておく。ここでは、ブレード15の中心からの半径と距離の大きさで示す。すなわち、補強板30の外径≦吸気口14aや吸気口14bの外径<ブレード部22の分岐点であるC点までの距離<ブレード15の外径である。
【0050】
前述したように第1のブレード部25及び第2のブレード部26において、第1のブレード部25のほうが第2のブレード部26に比べハブ部21からの距離が長くしているので、図3(b)に示すように第1のブレード部25と第2のブレード部26との境目で段差が形成されている。この段差を設けることで、第1のブレード部25で発生する空気の渦と第2のブレード部26で発生する空気の渦との距離(ブレード15の軸方向の距離)を離すことができ、第1のブレード部25で発生する空気の渦と第2のブレード部26で発生する空気の渦との距離を三次元的(斜め上下方向)に離すことができる。
【0051】
また、第1のブレード部25と第2のブレード部26の長さ(径でもある)に関しては第1のブレード部25のほうが長くなっている。これにより遠心ファン装置の冷却性能を向上させることができる。
【0052】
本実施例では、第1のブレード部25の外径が44mmφ、第2のブレード部26の外径は42mmφ、補強板30の外径は32mmφ、吸気口14aと吸気口14bの外径は32mmφ、分岐点を結んだ径は33.5mmφであり、この時に静音と風量のバランスがよく、同一騒音の条件下で冷却性能がベストとなる。
【0053】
なお、第1のブレード部25及び第2のブレード部26の長さはこれに限定されるわけではないが、ファンの騒音の原因となる空気の渦の発生場所を考慮すると本実施例の形態が適切である。
【0054】
また、第1のブレード部25と第2のブレード部26のブレード15の回転軸方向の各々のブレードの幅は、第2のブレード部26側すなわち回転軸受を受ける部分を備えている側の幅を製造上大きくしたほうがブレード15の強度のためには良好である。
【0055】
ここで、図4を用いてブレード部22の先端部の形状について詳細に説明する。図4は本発明の実施例における遠心ファン装置のブレードの形状を示す図である。
【0056】
ブレード部22はハブ部21から伸びており(図2参照)、補強板30に接合または一体的に構成されておりブレード部22の強度アップが図られている。
【0057】
そして、図4に示すように補強板30より径方向外側に伸びていくブレード部22は、C点において2つのブレード部に分割される。C点の位置はブレード15の外径と吸気口14aと吸気口14bの外径及び要望されるファン性能により決定される。
【0058】
第1のブレード部25は回転方向前側に湾曲しており、第2のブレード部26は回転方向後側に湾曲している。それぞれのブレード部は、緩やかな曲率をもって湾曲している。第1のブレード部25は円Mの円周の一部に沿って湾曲し、第2のブレード部26は円Nの円周の一部に沿って湾曲している。
【0059】
なお、本実施例ではそれぞれのブレード部が円の円周に沿って湾曲する場合について説明しているが、他に双曲線など滑らかに湾曲するのであれば円に限らなくともよい。
【0060】
それぞれのブレード部の終端である第1のブレード部25の終端をX、Yそして第2のブレード部26の終端をZ、ブレード15の中心をOとしたときに、線分OZは角度XOYを二等分する線分になる点をZとした。これにより、上下のブレードで発生した空気の渦が最も離れた位置で吐き出され、それらの渦が再結合しない効果を特に発揮することができる。
【0061】
なお、本実施例では線分OZは角度XOYを二等分した線にしているが、線分OZが角度XOY内にあって、(1/3)×∠XOY<∠XOZ<(2/3)×∠XOYの関係にあれば、上下のブレードで発生した空気の渦が再結合しない効果を発揮することができ、さらに隣り合った第1のブレード部25と第2のブレード部26のブレードが重なり合わずブレードの送風性能を妨げることがない。
【0062】
すなわち、ブレード部22は径方向においてブレード15の厚み方向に一体である第1の領域(C点より内側)とブレード15の厚み方向に2つに分割された第2の領域(C点より外側)とを備え、第2の領域において分割された2つの先端部は、ブレード15の周方向において互いに異なる方向に伸びている。
【0063】
そして、第1のブレード部25が沿う円Mの中心は回転方向前側にあり、第2のブレード部26が沿う円Nの中心は回転方向後側にある。
【0064】
本実施例では、ブレード15の外径は44mmφ、補強板30の外径は32mmφ、吸気口14aと吸気口14bの外径は32mmφであって、その時の円M及び円Nの直径は33mmφである。
【0065】
ただし、円Mと円Nの直径は必ずしも等しい必要はない。遠心ファン装置11上方から見て、第1のブレード部25と第2のブレード部26とが交互になるように適宜直径の値を決めればよい。
【0066】
また、これらの数値に限られるわけではなく、遠心ファン装置11の大きさや風路抵抗により、ブレード15の外径は40〜60mmφ、補強板30の外径は26〜45mmφ、吸気口14aと吸気口14bの外径は30〜45mmφ内で適宜設定される。
【0067】
図5を用いて、補強板30の他の形態について説明する。図5は、本発明の実施例の遠心ファン装置のブレードの補強板の他の形態の斜視図で、図5(a)は補強板30がリング状になっている補強板であり、図5(b)は補強板30が取り付いていない場合である。
【0068】
図5(a)に示すように、補強板30はリング状になっているためにハブ部21と補強板30の間にあるブレード部22の側面でも吸気口14aや吸気口14bから吸入した外気を抱き込みやすくでき、取り込む外気の量を増加させることができる。
【0069】
なお、補強板30の補強リングはブレード15の先端近いほうに設けられたほうがブレード部22の強度アップに寄与するが、ブレード15の先端に近すぎるとブレード部22の送風効率が低下するとともに、分岐した第1のブレード部25及び第2のブレード部26の長さが確保できなくなる恐れがある。したがって、上述した補強板30の外径の関係式を満足する大きさに設定すればよい。この時の補強板30の内径、すなわち補強板30のリング幅はブレード部22のブレードを強化できる幅に適宜設定すればよい。
【0070】
また、ブレード部22のブレード枚数が少なく各ブレードの厚みを十分大きくでき、ブレード部22の強度が十分な場合には、図5(b)に示すように補強板30を取り付けなくてもよい。
【0071】
このように補強板30をリング状にすることや補強板30を設けないことで、ブレード15の重量をさらに軽量化させることができる。
【0072】
図6を用いて、ブレード15の動作、特にファンでの空気の流れについて説明する。図6は、本発明の実施例の遠心ファン装置のブレードの動作を示す図である。
【0073】
図6において、ブレード15は時計周りのR方向に回転しており、吸気口14aと吸気口14bの両方向から吸気された外気は、その途中から分割されているブレード部22に沿って第1のブレード部25と第2のブレード部26の先端部付近において、太い矢印で示したように渦Aと渦Bとが形成される。
【0074】
そして、第1のブレード部25と第2のブレード部26の先端部付近で発生した渦が再度結合することなく、第1のブレード部25と第2のブレード部26のブレードの先端部から外部に排気される。すなわち、ブレード面の曲線に沿う方向とブレード15の回転方向の合力方向に渦は押し出される。
【0075】
つまり、前進翼である第1のブレード部25から押し出された渦Aは、ブレード15の回転方向寄りに押し出されて渦Cとなり、後進翼である第2のブレード部26から押し出された渦Bは、ブレード15の回転方向後側へ押し出された渦Dとなる。
【0076】
さらに、ブレード15の回転力により押し出された渦Cの移動速度(空気の流れ)は渦Dの移動速度より速い。
【0077】
なお、図6では説明しやすいように渦Aと渦Bを離れた位置に記載しているが、実際はブレード部22の上下の第1のブレード部25と第2のブレード部26でも同様なことが言える。
【0078】
これにより、ブレード部22を分割した第1のブレード部25と第2のブレード部26とで分流された渦は外部へ押し出される方向が異なりかつ速度も異なるので、分流後の渦が容易に再結合することを防止することができる。
【0079】
したがって、形状が異なりその伸びる方向が異なる2つに分割されたブレードをもつことで、大きな1つの渦になるはずだった空気を2つの小さな渦に分割させることができる。このようにして空気の渦を小さくすることで騒音を低減させることができ、遠心ファン装置11の騒音を低減させることができる。
【0080】
すなわち、ブレード部22は互いに異なる方向に曲線を持って伸びる第1のブレード部25と第2のブレード部26を設けることにより、渦の流れる方向を異ならせながら分流し、分流した渦が結合しにくくしているため、ブレード部22の先端に発生する渦が小さくなり、この渦を小さくさせることによって発生する騒音を低減させることができ、遠心ファン装置11の騒音を低減させることができる。
【0081】
また、第1のブレード部25と第2のブレード部26の異なる向きでブレード部22から押し出される風を分散させることができ、吹き出す風を広範囲に送り出すことができ、広範囲の冷却が可能となる。
【0082】
また、広範囲に冷却風を吹き出すことができるので、遠心ファン装置11の周辺に発熱部材やヒートパイプなどの放熱部分を広く配置させ冷却させることができ、それらの放熱や冷却を高めることができる。
【0083】
なお、第1のブレード部25と第2のブレード部26の回転軸方向における高さつまりブレードの幅は同じ幅であることが望ましく、同じ幅であるほうが発生する空気の渦が等分され、大きな騒音の原因となる大きな渦が発生しないので、幅が異なる場合と比較して騒音が小さくなるので同じ幅であるほうが好ましい。
【0084】
また、本実施例では分岐点C点(図3参照)から伸びる方向の異なる第1、第2のブレード部により空気の渦が発生する場所を分割しているが、さらに伸びる方向の異なる第3のブレード部を設けてもよい。
【0085】
また、上述した遠心ファン装置をノートPCなどの電子機器に搭載することで、空冷性能を満足させながら、十分な静音性を確保した電子機器を提供することができる。
【0086】
ここで、第1のブレード部25と第2のブレード部26の他の形状について図7を用いて説明する。図7は、本発明の実施例における遠心ファン装置の他のブレードの形状を示す図である。
【0087】
図7(a)は、第1のブレード部25のブレード形状が平板で、第2のブレード部26のブレード形状が後進翼である。図7(b)は、第1のブレード部25のブレード形状が前進翼で、第2のブレード部26のブレード形状が平板である。
【0088】
両者とも、先に説明した本実施例の場合と空気の流れや機能に関しては同じで、同様な効果を得ることができる。ただし、本実施例のほうが風を広範囲に送り出すことができ、広範囲の冷却が可能となる。
【0089】
以下の検討結果に述べるように、吸気口14aと吸気口14bから吸気された外気が抵抗なく滑らかに送風されやすいのは、平板を使用したブレードの遠心ファンよりも前進翼と後進翼を組み合わせたブレードの遠心ファンのほうが空冷の冷却性能やファンの騒音値に関して良いという結果を得ている。
【0090】
すなわち、発明者が鋭意検討した結果、従来例と比較して同一回転数時の騒音値においては第1のブレード部25が前進翼で第2のブレード部26が後進翼であるブレードの場合では3dBの改善させることが、第1のブレード部25のブレード形状が平板で第2のブレード部26のブレード形状が後進翼であるブレードの場合では2dBの改善させることができた。
【0091】
また、従来例と比較してファンの同一騒音時の冷却性能においては第1のブレード部25が前進翼で第2のブレード部26が後進翼であるブレードの場合では4.5℃低下させることが、第1のブレード部25のブレード形状が平板で第2のブレード部26のブレード形状が後進翼であるブレードの場合では2.5℃低下させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明による遠心ファン装置用ブレード、遠心ファン装置及びそれを備えた電子機器は、筐体内部に実装されたMPUやさまざまな発熱電子部品を冷却することが可能で、より静音性の求められるノートPC、PCサーバー、音響機器、映像機器などに有用である。
【符号の説明】
【0093】
11 遠心ファン装置
12 ファンケーシング
12a フレーム
12b カバー
12aa 側壁
12ab 底壁
13 排気口
14a 吸気口
14b 吸気口
15 ブレード
21 ハブ部
22 ブレード部
25 第1のブレード部
26 第2のブレード部
30 補強板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向に伸びるブレード部を備える遠心ファン装置用ブレードであって、
前記ブレード部は、径方向内側において前記遠心ファン装置用ブレードの厚み方向に一体である第1の領域と、径方向外側において前記遠心ファン装置用ブレードの厚み方向に複数に分割された第2の領域と、を備え、
前記第2の領域において分割された複数の先端部は、前記遠心ファン装置用ブレードの周方向において、互いに異なる方向に伸びることを特徴とする遠心ファン装置用ブレード。
【請求項2】
駆動部と、
前記駆動部を収納するハブ部と、
前記ハブ部を中心に伸びるブレード部を有するブレードと、
前記ブレードを支持し、吸気口を備えるフレームと、を備え、
前記ブレード部は、径方向内側において前記ブレードの厚み方向に一体である第1の領域と、径方向外側において前記ブレードの厚み方向に複数に分割された第2の領域と、を備え、
前記第2の領域において分割された複数の先端部は、前記ブレードの周方向において、互いに異なる方向に伸びることを特徴とする遠心ファン装置。
【請求項3】
前記ブレード部の複数の先端部は、互いに異なる方向に曲線を持って伸び、それぞれの曲線の中心は前記ブレードに対して互いにその回転方向前後に位置することを特徴とする請求項2に記載の遠心ファン装置。
【請求項4】
前記第1の領域と前記第2の領域との境界は、前記フレームに設けられた吸気口の外径よりも外側にあることを特徴とする請求項2に記載の遠心ファン装置。
【請求項5】
請求項2に記載の遠心ファン装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−53563(P2013−53563A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192666(P2011−192666)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【特許番号】特許第5141808号(P5141808)
【特許公報発行日】平成25年2月13日(2013.2.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】