説明

遠心分離機および遠心分離方法

【課題】処理物から固液分離された固形分に供給される凝集剤を十分に攪拌混合し、固形分の含水率を効果的に低減する。
【解決手段】軸線O回りに回転駆動させられる回転ボウル1の内部に、この回転ボウル1と差速をもって同軸に回転駆動させられるスクリュウコンベア2を備え、スクリュウコンベア2のスクリュウシャフトに開口する処理物供給口4Aから供給された処理物Pを回転ボウル1の遠心力により固液分離しつつ、分離された固形分をスクリュウコンベア2により軸線O方向一端側に搬送して排出するのに際し、スクリュウシャフトの軸線O方向一端側には外周側に突出する凸壁部2Dを全周に亙って形成し、少なくとも凸壁部2Dと処理物供給口4Aとの間にはスクリュウ羽根を設け、軸線O方向においてこの凸壁部2Dと処理物供給口4Aとの間に、固形分に凝集剤Lを供給する凝集剤供給口8Aを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸線回りに回転駆動させられる回転ボウルの内部に差速をもって同軸に回転駆動させられるスクリュウコンベアが備えられた遠心分離機、および該遠心分離機を用いた遠心分離方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような遠心分離機および遠心分離方法として、例えば特許文献1、2には、円錐状の傾斜部および円筒部からなる回転筒(回転ボウル)と、この回転筒内に同心に配設されて異なる回転速度で回転するスクリュウコンベアとを備えたデカンタ型の遠心分離機を用いて、予め高分子凝集剤が添加されたり、回転筒の円筒部領域において高分子凝集剤が添加されたりした処理物としての汚泥に、さらに回転筒の傾斜部領域において無機凝集剤を供給することにより、固形分(脱水汚泥)の含水率の低減を図ることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2540198号公報
【特許文献2】特公平6−41000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これら特許文献1、2に記載の遠心分離機および遠心分離方法は、回転筒の傾斜部領域において外径が小さくなる方向に固形分を搬送するのに伴い固液分離して脱水するドライビーチ部が形成されるようにしたものであり、この傾斜部領域で供給された凝集剤はスクリュウコンベアのスクリュウによる固形分の搬送に伴う攪拌によって固形分と混合される程度となり、固形分と凝集剤を十分に混合して固形分の含水率を効果的に低減するのは困難である。
【0005】
また、特許文献1には、上記傾斜部領域においてスクリュウコンベアの内筒(スクリュウシャフト)に撹拌羽根を取り付けて固形分と凝集剤とを混合することも提案されているが、この撹拌羽根の固形分に対する回転速度も固形分の搬送する際の回転筒とスクリュウコンベアとの差速に過ぎず、やはり固形分と凝集剤とを十分に攪拌して効果的な含水率の低減を図るのは困難である。
【0006】
本発明は、このような背景の下になされたもので、回転ボウル内に供給された処理物から固液分離された固形分に供給される凝集剤を、この固形分と十分に攪拌して混合することにより、排出される固形分の含水率を効果的に低減することが可能な遠心分離機および遠心分離方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の遠心分離機は、軸線回りに回転駆動させられる回転ボウルの内部に、この回転ボウルと差速をもって同軸に回転駆動させられるスクリュウコンベアが備えられ、このスクリュウコンベアのスクリュウシャフトに開口する処理物供給口から供給された処理物を上記回転ボウルの遠心力によって固液分離しつつ、分離された固形分を上記スクリュウコンベアによって上記軸線方向一端側に搬送して排出する遠心分離機であって、上記スクリュウシャフトの上記軸線方向一端側には該軸線に対する径方向外周側に突出する凸壁部が全周に亙って形成されるとともに、少なくとも上記凸壁部と上記処理物供給口との間にはスクリュウ羽根が設けられ、上記軸線方向においてこの凸壁部と上記処理物供給口との間に、上記固形分に凝集剤を供給する凝集剤供給口が設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の遠心分離方法は、本発明の遠心分離機により、上記処理物供給口から供給された処理物を上記回転ボウルの遠心力によって固液分離しつつ、分離された固形分を上記スクリュウコンベアによって上記軸線方向一端側に搬送するとともに、上記凝集剤供給口から上記固形分に上記凝集剤を供給し、上記凸壁部によって上記固形分と上記凝集剤とを攪拌することを特徴とする。
【0009】
このように、処理物から固液分離された固形分が搬送される上記軸線方向一端側においてスクリュウシャフトに径方向外周側に突出する凸壁部が全周に亙って形成された遠心分離機および該遠心分離機を用いた遠心分離方法では、回転ボウル内周面との間の固形分の流路が凸壁部によって狭くなるために、搬送された固形分は凸壁部の手前で滞留して圧密されることにより含水率の低減が図られるが、こうして固形分が圧密されるときや、圧密された固形分が凸壁部と回転ボウル内周面との間の狭められた流路からさらに一端側に搬送されるときに、該固形分に攪拌作用が生じることになる。
【0010】
従って、この凸壁部に至る手前の、凸壁部と処理物供給口との間に凝集剤供給口を設けて固形分に凝集剤を供給することにより、凸壁部による固形分の攪拌作用によってこの凝集剤を固形分と十分に混合することができる。また、凸壁部の手前で固形分が滞留することで混合時間を確保することができる。さらに、この凸壁部により攪拌作用を受ける固形分は、回転ボウルの遠心力によって固液分離が進んだものである上に、上述の凸壁部による圧密でさらに含水率が低減させられるものであるので、そのような固形分に供給した凝集剤を該固形分と十分に攪拌、混合することにより、この固形分をさらに確実かつ効果的に凝集させて、排出される固形分においてさらなる含水率の低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、処理物から固液分離されて排出される固形分の含水率をより効果的に低減することができる。従って、例えば処理物が下水汚泥の場合には、排出された脱水汚泥を焼却するときに焼却設備における燃費の向上を図ることができる一方、埋め立て処分などで搬出するときには脱水汚泥を減量化することができるので、汚泥搬出の効率化と埋め立て処分地の延命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の遠心分離機の一実施形態の概略を示す側断面図である。
【図2】図1におけるAA拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1および図2は、本発明の遠心分離機の一実施形態を示す概略図である。なお、以下に示す実施の形態の説明は、本質的な例示に過ぎず、本発明、その適用あるいはその用途を制限することを意図するものではない。本実施形態において、回転ボウル1は、軸線Oを中心とした円筒部1Aと、この円筒部1Aの軸線O方向一端側(図1において左側)に連設されて、この一端側に向かうに従い内径が小さくなる軸線Oを中心とした円錐状の傾斜部1Bと、円筒部1Aの軸線O方向他端側(図1において右側)を閉塞する軸線Oに垂直な円環状の端板部1Cと、この端板部1Cの内周縁からさらに軸線O方向他端側に延びる円筒状のボウル軸部1Fとが一体に形成されて概略構成されている。このような回転ボウル1は、軸線Oが水平となるようにしてケーシングC内に収容され、図示されないベアリング等を介して該軸線O回りに回転自在に支持され、やはり図示されないボウル回転駆動手段がケーシングCの外部に延伸させられた上記ボウル軸部1Fに連結されることによって軸線O回りに一方向に高速で回転可能とされる。
【0014】
この回転ボウル1の内部には、軸線Oを中心としてスクリュウコンベア2が収容されている。このスクリュウコンベア2は、スクリュウシャフトと図示されないスクリュウ羽根からなり、スクリュウシャフトは、回転ボウル1の上記ボウル軸部1Fの内周部に該ボウル軸部1Fに対して相対回転自在に挿通される円筒状のコンベア軸部2Aと、このコンベア軸部2Aの軸線O方向一端側に連設されて回転ボウル1の円筒部1Aの内径よりも一回り小さな一定外径とされた中空の外形円柱状の直胴部2Bと、この直胴部2Bのさらに軸線O方向一端側に連設されて該一端側に向かうに従い外径が漸次小さくなる外形円錐状のコーン部2Cとからなる。このうち、直胴部2Bとコーン部2Cの外周に、上記スクリュウ羽根が設けられている。
【0015】
このようなスクリュウコンベア2は、直胴部2B部分が回転ボウル1の上記円筒部1A内周に位置するとともに、コーン部2Cが傾斜部1Bの内周に位置するように回転ボウル1内に収容されて、回転ボウル1と同様に図示されないベアリング等を介して該軸線O回りに回転自在に支持され、やはり図示されないコンベア回転駆動手段によって軸線O回りに回転ボウル1と同方向に差速をもって回転可能とされる。
【0016】
ここで、コーン部2Cの外径は、回転ボウル1の傾斜部1B内周との間に軸線Oに対する径方向の間隔があけられるように一回り小さくされ、さらにこの間隔は、回転ボウル1の円筒部1A内周と直胴部2B外周との間の間隔より小さくされている。従って、このコーン部2Cの外径は、その軸線O方向の他端において直胴部2Bの外径よりも大きくされ、これによって直胴部2Bの軸線O方向一端側には、コーン部2Cとの間に、他端側を向いて軸線Oに対する径方向外周側に突出する凸壁部2Dが直胴部2Bの全周に亙って連続するように形成される。本実施形態では、この凸壁部2Dは、軸線Oに垂直に径方向外周側に突出するようにされている。
【0017】
なお、これら直胴部2Bとコーン部2Cの外周に設けられる上記スクリュウ羽根の外径は、回転ボウル1の円筒部1A内周と傾斜部1B内周との間に上記間隔よりも小さな隙間があけられる程度とされている。また、このスクリュウ羽根のピッチは、コーン部2Cにおけるピッチが直胴部2Bにおけるピッチよりも小さくなるようにされている。ピッチを小さくすることで、軸線O方向に対する処理物の移動距離が延び分離時間を確保することができる。さらに、コーン部2C外周面がなす円錐面の軸線Oに対する傾斜角は、回転ボウル1の傾斜部1B内周面がなす円錐面の軸線Oに対する傾斜角と等しいか大きくされ、従ってコーン部2C外周面と傾斜部1B内周面との上記間隔は、軸線O方向一端側に向けて一定か、漸次大きくなるようにされる。
【0018】
また、直胴部2Bの中空部は、軸線O方向他端側の凝集剤供給室3と一端側の処理物供給室4とに隔壁5によって分けられている。ここで、この隔壁5には、スクリュウコンベア2のコンベア軸部2Aの内周部と略等しい内径の円形の貫通穴5Aが軸線Oを中心として形成されている。
【0019】
さらに、コンベア軸部2Aの内周部からこの貫通穴5Aを通して処理物供給室4には、これら内周部および貫通穴5Aの内径より僅かに小さな外径を有する円管状の処理物供給管6が、回転するスクリュウコンベア2に対して非回転に固定されて軸線Oに沿って挿通され、その一端側の開口部が処理物供給室4内に開口させられている。また、処理物供給室4から直胴部2Bの外周面にかけては軸線Oに対する径方向に貫通する処理物供給口4Aが周方向に1ないし複数箇所に形成されている。
【0020】
さらにまた、この処理物供給管6内には、凝集剤供給管7が挿通されている。この凝集剤供給管7は処理物供給管6よりも内外径ともに十分小さくされた円管で、本実施形態では1本のこのような凝集剤供給管7が、処理物供給管6内の底面部に沿って軸線O方向他端側から一端側に凝集剤供給室3の位置まで挿通され、この底面部に溶接等により接合されて固定されている。
【0021】
また、軸線O方向において凝集剤供給室3に位置するこの凝集剤供給管7の一端部においては、その一端側を向く円管の開口部が閉塞されるとともに、処理物供給管6の底面部に対向する側面部には開口部が形成されている。一方、この凝集剤供給管7の開口部に対向する処理物供給管6の底面部にも開口部が形成されていて、これらの開口部はカバー7A等により処理物供給管6内と隔絶されて連通させられており、これにより凝集剤供給管7の一端部が凝集剤供給室3に開口する凝集剤供給管開口部7Bが形成されている。
【0022】
さらに、凝集剤供給室3は、直胴部2Bの中空部の内壁(内周面)と隔壁5によって囲まれた空間であり、直胴部2Bの外周面との間に間隔をあけて軸線Oに直交する断面が円形をなすように形成されている。凝集剤供給室3を構成する隔壁5の貫通穴5Aには、上記処理物供給管6が挿通されて上記凝集剤供給管開口部7Bが凝集剤供給室3内に位置するように設置される。また、凝集剤供給室3を構成する直胴部2Bの中空部の内壁には、周方向において上記処理物供給口4Aの位置を避けるようにして1ないし複数箇所(例えば、4〜8箇所。本実施形態では図2に示すように周方向に等間隔に6箇所。)に凝集剤供給穴3Aが、直胴部2Bの外周面にかけて貫通するように形成されている。
【0023】
さらにまた、スクリュウコンベア2には、この凝集剤供給穴3Aを介して上記凝集剤供給室3と連通するとともに軸線O方向一端側に延びる凝集剤供給路8が直胴部2Bに形成されている。そして、この凝集剤供給路8は、軸線O方向のスクリュウコンベア2の上記凸壁部2Dと上記処理物供給口4Aとの間において軸線Oの外周方向に開口する凝集剤供給口8Aを形成している。
【0024】
ここで、本実施形態では、直胴部2Bの外周面に、軸線O方向他端側が上記凝集剤供給穴3Aにそれぞれ連通して軸線Oに平行に一端側に延びる凹溝8Bが凝集剤供給穴3Aと同数形成されており、この凹溝8Bは、処理物供給口4Aを周方向に避けつつ軸線O方向に越えて凸壁部2Dの手前にまで延びている。さらに、直胴部2Bの外周面には、この直胴部2B外周面と略等しい半径の断面円弧をなす長板状の封止部材8Cが、凹溝8Bの軸線O方向一端部を除いてその外周側開口部を塞ぐように接合されており、この封止部材8Cによって塞がれた凹溝8B部分が凝集剤供給路8とされ、塞がれずに直胴部2B外周面に開口した一端部が凝集剤供給口8Aとされる。
【0025】
なお、回転ボウル1の軸線O方向一端側には、処理物Pから固液分離されてスクリュウコンベア2によりこの一端側に搬送された固形分が傾斜部1Bとコーン部2Cとの上記間隙を通って排出される固形分排出口1Dが設けられて、ケーシングCの軸線O方向一端側の処理物排出室Dに開口させられている。一方、本実施形態では、回転ボウル1の軸線O方向他端側の上記端板部1Cに、処理物Pから固液分離されて固形分の一端側への搬送とは逆に軸線O方向他端側に押し出される液分の液分排出路1Eが形成されて、ケーシングCの軸線O方向他端側の液分排出室Eに開口させられている。なお、この液分排出路1Eは、スクリュウコンベア2のコンベア軸部2Aに形成されていてもよい。
【0026】
次に、このように構成された遠心分離機により、処理物Pとして例えば下水汚泥等の汚泥を固液分離する本発明の遠心分離方法の一実施形態について説明する。本実施形態では、このような汚泥に予め高分子凝集剤と、必要に応じて無機凝集剤の一部が混合させられた処理物Pが処理物供給管6を通して処理物供給室4に供給され、さらに処理物供給口4Aから、差速をもって高速回転する回転ボウル1とスクリュウコンベア2の間の空間に供給される。
【0027】
こうして回転ボウル1とスクリュウコンベア2の間の空間に供給された処理物Pは、回転ボウル1の遠心力によって固液分離されて、分離した固形分はスクリュウコンベア2のスクリュウ羽根によって軸線O方向一端側に搬送される。一方、処理物Pから固液分離された液分は、この固形分に押し出されるようにして上記空間を軸線O方向他端側に移動させられ、上記液分排出路1Eから排出される。
【0028】
ここで、スクリュウコンベア2の軸線O方向一端側には、コーン部2Cの外径が直胴部2Bの外径よりも大きくされることにより、軸線Oに対する径方向外周側に突出する凸壁部2Dが直胴部2Bの全周に亙って形成されており、この凸壁部2Dよりも一端側では固形分の流路が上記空間の径方向外周側に位置して狭められ、逆に凸壁部2Dの手前側(軸線O方向他端側)では固形分流路が軸線Oに対する径方向内周側に低くなっている。
【0029】
従って、回転ボウル1の一端側に搬送された固形分はこの凸壁部2Dの手前で滞留し、連続的に搬送されてくる固形分によって圧密させられてさらに分離させられ、その含水率が低減させられるとともに、凸壁部2D手前で滞留した固形分が固形分流路の低くなった径方向内周側に流れ込むことによって攪拌作用を生じる。ここで、この攪拌作用は、このように軸線O方向一端側に搬送される固形分がその流路の径方向内周側にも流れ込んで分散することによるものなので、単に回転ボウル1との差速によって固形分を搬送するためのスクリュウコンベア2のスクリュウ羽根の回転による攪拌や、例えばこのスクリュウコンベア2に取り付けた撹拌羽根による攪拌などよりも著しいものとなる。
【0030】
また、凸壁部2Dよりも一端側のコーン部2C外周と傾斜部1B内周との間に形成される固形分流路には、こうして圧密された径方向外周側の固形分が流れ込むが、この固形分流路が狭められているために固形分が凸壁部2Dの外周と回転ボウル1の内周との間を通過するときにも攪拌作用が生じる。さらに、コーン部2Cの外周と傾斜部1Bの内周との間の固形分流路は、一端側に向かうに従い径方向内周側に向かうように延びているためにその断面積は漸次小さくなるので、ここでも固形分は圧密されてさらに分離させられる。
【0031】
そして、上記構成の遠心分離機では、この凸壁部2Dと上記処理物供給口4Aとの間に凝集剤供給口8Aが開口させられており、本実施形態の遠心分離方法では、処理物Pとしての汚泥から回転ボウル1の回転による遠心力によって固液分離された固形分に対し、この凝集剤供給口8Aから凝集剤Lとして無機凝集剤(処理物Pに予め無機凝集剤の一部が混合されている場合は残りの無機凝集剤)が供給される。
【0032】
すなわち、処理物供給管6内に挿通された凝集剤供給管7に供給される凝集剤Lは、凝集剤供給管開口部7Bからスクリュウコンベア2内の凝集剤供給室3に流れ込み、スクリュウコンベア2の回転による遠心力によって軸線Oに対する径方向外周側に押圧されて凝集剤供給穴3Aから凝集剤供給路8に流入する。さらに、こうして凝集剤供給路8に流入した凝集剤Lは、凝集剤供給管7から凝集剤供給室3に連続的に供給される凝集剤Lの押圧力によって凝集剤供給路8を軸線O方向一端側に押し出され、凝集剤供給口8Aから、固形分の流路となる上記空間に供給される。
【0033】
従って、こうして供給された凝集剤Lは、上述した凸壁部2D手前の固形分の攪拌作用と、固形分が凸壁部2D外周と回転ボウル1内周との間を通過するときの攪拌作用とにより該固形分と十分に混合させられ、これによって固形分の凝集が効果的に促されて含水率がさらに低減させられる。このように、上記構成の遠心分離機および該遠心分離機を用いた遠心分離方法によれば、直胴部2Bの凸壁部2Dによる固形分の圧密と凝集剤Lとの攪拌作用によって、処理物Pから固液分離された固形分の含水率を大幅に低減することが可能となる。また、このように固形分の凝集が効果的に促されるため、固形分を所定の含水率まで低減するために要する凝集剤Lの使用量を削減することもできる。
【0034】
このため、処理物Pが上述した下水汚泥のような汚泥である場合に、上記遠心分離機から排出された固形分である脱水汚泥を焼却処理するときには、この脱水汚泥の含水率が低いために焼却設備における燃料の消費も少なく抑えて燃費の向上を図ることができる。また、こうして排出された脱水汚泥を埋め立て処分するときでも、脱水汚泥の減量化を図ることができるので、埋め立て処分地に搬出する際に一度でより多くの脱水汚泥を搬出することができて効率的であるとともに、処分地が埋め立て尽くされるまでの寿命を延長することができる。
【0035】
一方、本実施形態の遠心分離機では、上述のように軸線O方向においてスクリュウコンベア2の凸壁部2Dと処理物供給口4Aとの間に凝集剤供給口8Aを開口させるのに、このスクリュウコンベア2自体に上記軸線O方向に延びる凝集剤供給路8を形成して凝集剤供給口8Aを開口させるようにしており、これによって遠心分離機の損傷や装置構造の複雑化を防いで、円滑かつ効果的な処理物Pの遠心分離処理を図ることができる。
【0036】
すなわち、本実施形態のように回転ボウル1やスクリュウコンベア2の回転の軸線O方向の一端側に処理物Pから固液分離した固形分を搬送する遠心分離機において、軸線O方向の他端側から処理物供給管6と凝集剤供給管7とを挿通して、この他端側の直胴部2B外周面に処理物供給口4Aを開口させるとともに、該処理物供給口4Aとこれよりも一端側の凸壁部2Dとの間に凝集剤供給口8Aを開口させる場合には、例えば本実施形態とは逆に凝集剤供給室3を処理物供給室4よりも軸線O方向一端側に形成しておいて、隔壁5の貫通穴5Aを通して凝集剤供給管7を軸線Oに沿ってこの凝集剤供給室3まで延長して連通させ、この凝集剤供給室3から直胴部2Bの外周面に凝集剤供給口8Aを直接開口させることも考えられる。
【0037】
しかしながら、そのような遠心分離機では、凝集剤供給管7の長さが長くなってしまうため、構造が複雑となるのは勿論、処理物供給管6よりも小径となるこの凝集剤供給管7を軸線Oに沿って真直ぐ支持し難くなり、高速で回転する回転ボウル1やスクリュウコンベア2の振動によって凝集剤供給管7が隔壁5の貫通穴5Aに接触して場合によっては折損してしまうおそれがある。特に、凝集剤供給管7が長くなるとその固有振動数は低くなるため、回転ボウル1やスクリュウコンベア2の回転による振動と共振して接触を生じ易くなるおそれがある。
【0038】
ところが、そのような遠心分離機に対して、本実施形態では、上述のようにスクリュウコンベア2自体に凝集剤Lを軸線O方向の他端側から一端側に供給する凝集剤供給路8が形成されており、凝集剤供給管7を必要以上に長くすることなく、一端側の凸壁部2Dと処理物供給口4Aとの間に凝集剤供給口8Aを開口させることができる。このため、共振等による凝集剤供給管7と貫通穴5Aとの接触のおそれもなく、凝集剤供給管7に折損等の損傷が生じるのも防ぐことができるとともに、装置構造の簡略化を図りつつも、確実に凝集剤Lを凸壁部2Dと処理物供給口4Aとの間の固形分に供給することができ、従って長期に亙って安定的かつ効果的で円滑な処理物Pの遠心分離処理を図ることができる。
【0039】
また、こうして凝集剤供給路8をスクリュウコンベア2に形成するには、例えば直胴部2Bの周壁部に軸線O方向に延びる長穴を形成して、その他端側を凝集剤供給室3に連通させるとともに一端部を直胴部2B外周面に開口させることも可能ではある。このような場合には直胴部2Bの他端面から上記長穴を凸壁部2Dと処理物供給口4Aとの間まで穿設する必要がある。
【0040】
ところが、これに対して本実施形態では、スクリュウコンベア2の直胴部2B外周面に凹溝8Bを軸線O方向に形成し、この凹溝8Bの他端側を凝集剤供給室3に凝集剤供給穴3Aを介して連通させるとともに、該凹溝8Bの外周側は軸線O方向一端部を除いて封止部材8Cによって塞ぐことにより、この一端部を凝集剤供給口8Aとする凝集剤供給路8を形成している。このため、上述のような長穴を穿設するような場合と比べて、凝集剤供給路8の形成が容易で時間や労力、コストの削減を図ることができる。
【0041】
なお、スクリュコンベア2のスクリュウ羽根は、螺旋状の羽根をスクリュウシャフトの直胴部2Bやコーン部2Cの外周に直接取り付ける構造としてもよく、またスクリュウシャフトにブラケット等の取付部材を複数設け、この取付部材を介して螺旋状の羽根を取り付けるリボンスクリュウ構造を用いてもよい。
【0042】
さらに、本実施形態では、回転ボウル1の傾斜部1Bは、一端側に向けて内外径が漸次小さくなる円錐状とされて円筒部1Aと一体に構成されるとともに、スクリュウコンベア2のコーン部2Cも、軸線O方向一端側に向かうに従い外径が漸次小さくなる外形円錐状とされて直胴部2Bと一体とされているが、これら傾斜部1Bとコーン部2Cは、傾斜部1B内周面とコーン部2C外周面との間の空間が、軸線O方向一端側に向けて少なくとも外周側に向かうことなく、軸線O側に近づく傾向となるように構成されていればよく、例えばこうして軸線O側に近づく傾斜の途中で軸線Oに平行な水平部が設けられていたり、軸線Oに対する傾斜の角度が変化していたりしてもよい。また、傾斜部1Bやコーン部2Cが円筒部1Aや直胴部2Bに対して分割可能に取り付けられていてもよい。さらにまた、分離された固形分が、スクリュウコンベア2の直胴部2Bにおけるスクリュウ羽根の搬送力や、凸壁部2Dの手前で圧密状態となった該固形分に作用する遠心水頭圧によって固形分排出口1Dから排出可能な場合は、コーン部2C外周のスクリュウ羽根は省略することができる。
【0043】
さらにまた、本実施形態では、上記凹溝8Bが図2に示すように断面「コ」字状とされて、封止部材8Cにより覆われた凝集剤供給路8が断面略方形状をなすように形成されているが、凹溝8Bを断面半円状やU字状、V字状などに形成して、その外周側を封止部材8Cにより覆うようにしてもよい。また、このような凹溝8Bを形成するのに代えて、あるいは凹溝8Bと併せて、断面「コ」字状や半円状、U字状、V字状等の長板状の封止部材8Cを直胴部2Bの外周面や凹溝8Bとの間に空間をあけて軸線O方向に延びるように接合し、その軸線O方向他端側の開口部を閉塞するとともにこの他端部内に凝集剤供給穴3Aを連通させて、一端側の開口部を凝集剤供給口8Aとする凝集剤供給路8を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 回転ボウル
1A 円筒部
1B 傾斜部
1C 端板部
2 スクリュウコンベア
2A コンベア軸部
2B 直胴部
2C コーン部
2D 凸壁部
3 凝集剤供給室
4 処理物供給室
4A 処理物供給口
5 隔壁
6 処理物供給管
7 凝集剤供給管
8 凝集剤供給路
8A 凝集剤供給口
8B 凹溝
8C 封止部材
O 回転ボウル1およびスクリュウコンベア2の回転の軸線
P 処理物
L 凝集剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転駆動させられる回転ボウルの内部に、この回転ボウルと差速をもって同軸に回転駆動させられるスクリュウコンベアが備えられ、このスクリュウコンベアのスクリュウシャフトに開口する処理物供給口から供給された処理物を上記回転ボウルの遠心力によって固液分離しつつ、分離された固形分を上記スクリュウコンベアによって上記軸線方向一端側に搬送して排出する遠心分離機であって、上記スクリュウシャフトの上記軸線方向一端側には該軸線に対する径方向外周側に突出する凸壁部が全周に亙って形成されるとともに、少なくとも上記凸壁部と上記処理物供給口との間にはスクリュウ羽根が設けられ、上記軸線方向においてこの凸壁部と上記処理物供給口との間に、上記固形分に凝集剤を供給する凝集剤供給口が設けられていることを特徴とする遠心分離機。
【請求項2】
請求項1に記載の遠心分離機により、上記処理物供給口から供給された処理物を上記回転ボウルの遠心力によって固液分離しつつ、分離された固形分を上記スクリュウコンベアによって上記軸線方向一端側に搬送するとともに、上記凝集剤供給口から上記固形分に上記凝集剤を供給し、上記凸壁部によって上記固形分と上記凝集剤とを攪拌することを特徴とする遠心分離方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−661(P2013−661A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134361(P2011−134361)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000165273)月島機械株式会社 (253)
【Fターム(参考)】